特許第6178247号(P6178247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪クレーンエンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6178247-立ち乗り式自転車 図000002
  • 特許6178247-立ち乗り式自転車 図000003
  • 特許6178247-立ち乗り式自転車 図000004
  • 特許6178247-立ち乗り式自転車 図000005
  • 特許6178247-立ち乗り式自転車 図000006
  • 特許6178247-立ち乗り式自転車 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178247
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】立ち乗り式自転車
(51)【国際特許分類】
   B62M 1/36 20130101AFI20170731BHJP
   B62M 3/00 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   B62M1/36
   B62M3/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-4273(P2014-4273)
(22)【出願日】2014年1月14日
(65)【公開番号】特開2015-131575(P2015-131575A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】514011192
【氏名又は名称】大阪クレーンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】片上 公正
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3170287(JP,U)
【文献】 実開昭62−110093(JP,U)
【文献】 実開昭51−059664(JP,U)
【文献】 特開2002−058778(JP,A)
【文献】 実開昭58−008691(JP,U)
【文献】 実開昭63−108887(JP,U)
【文献】 実公昭50−000858(JP,Y1)
【文献】 米国特許第03913944(US,A)
【文献】 英国特許出願公開第02343870(GB,A)
【文献】 国際公開第2008/056869(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 1/24, 1/26, 1/36, 3/00
B62K 5/02,17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルによって操作可能な前輪と、駆動伝達機構を介して駆動される後輪と、前記前輪及び前記後輪が取付けられる本体フレームと、前記本体フレームに対して第1クランク軸を中心として回転可能な第1クランクと、前記本体フレームに対して第2クランク軸を中心として回転可能であり、前記駆動伝達機構の入力側に連結された第2クランクと、前記第1クランクと前記第2クランクとを連結し、搭乗者からの踏力を受けて前記第1クランク及び前記第2クランクを連動して回転させる連結部材とを備える立ち乗り式自転車であって、
少なくとも前記第1クランク軸に、その逆転方向の回転を防止する逆転防止器を設けたことを特徴とする立ち乗り式自転車。
【請求項2】
前記第2クランク軸を、前記第1クランク軸よりも高い位置に配設した請求項1に記載の立ち乗り式自転車
【請求項3】
ハンドルによって操作可能な前輪と、駆動伝達機構を介して駆動される後輪と、前記前輪及び前記後輪が取付けられる本体フレームと、前記本体フレームに対して第1クランク軸を中心として回転可能な第1クランクと、前記本体フレームに対して第2クランク軸を中心として回転可能であり、前記駆動伝達機構の入力側に連結された第2クランクと、前記第1クランクと前記第2クランクとを連結し、搭乗者からの踏力を受けて前記第1クランク及び前記第2クランクを連動して回転させる連結部材とを備え、前記第1クランク、前記第2クランク、および前記連結部材が平行クランク機構を形成する立ち乗り式自転車であって、
前記第1クランク軸を、前記第2クランク軸よりも前方に配置し、かつ前記第2クランク軸を、前記第1クランク軸よりも高い位置に配設したことを特徴とする立ち乗り式自転車。
【請求項4】
前記連結部材は、搭乗者の足を載置可能なペダルを有し、
前記ペダルの踏力作用点を、前記連結部材と前記第2クランクとの連結部よりも前方に配置した請求項1又は3に記載の立ち乗り式自転車。
【請求項5】
前記ペダルを、上方に凸となる曲部を有する凸型形状とした請求項4に記載の立ち乗り式自転車。
【請求項6】
前記本体フレームに、搭乗者の足を載置可能なステップ部を設けた請求項1〜5のいずれか1項に記載の立ち乗り式自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サドル等の座席部を有しない、立ち乗り式自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
サドル等の座席部を有しない立ち乗り式自転車は、図5(a)に示すものが提案されている。具体的には、立ち乗り自転車100は、本体フレーム110に、ハンドル120によって操作される前輪130と、駆動伝達機構140によって駆動される後輪150とが取付けられ、また、本体フレーム110には、第1クランク部材111及び第2クランク部材112が、それぞれ回転可能に配設される。また、第1クランク部材111と第2クランク部材112とは、ペダル113によって連結され、ペダル113を漕ぐことで、第1クランク部材111及び第2クランク部材112を連動して回転する。ここで、駆動伝達機構140は、第2クランク部材112に取付けられる駆動伝達機構140の入力部としての駆動ホイール141と、後輪150の駆動軸151に取付けられる従動ホイール142と、駆動ホイール141及び従動ホイール142の間に架け渡される伝動チェーン143とで構成される。このような立ち乗り式自転車100では、搭乗者がペダル113を漕ぐことで、駆動伝達機構140の伝動チェーン143を介して後輪150が駆動されて、立ち乗り式自転車100を走行する。
【0003】
このような立ち乗り式自転車100においては、ペダル113の回転の際に、引っ掛かりが生じ、スムーズな回転が行えないという問題があった。図5(b)に示すように、第1クランク部材111及び第2クランク部材112が共に水平になった状態でペダル113に下向きの力を加えると、前方の第1クランク部材111に上向きの力が加わり(図に矢印で示す)、第2クランク部材112とペダル113とが逆くの字形状となることで、回転が引っ掛かることがあった。そのため、実用新案登録第3170287号公報(特許文献1)には、第1クランク部材と第2クランク部材とを駆動ベルトによって連結することで、第1クランクの逆回転を防止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3170287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に示すように、特許文献1に記載の立ち乗り式自転車200は、第1クランク部材211と第2クランク部材212とにそれぞれ駆動チェーンホイール213、214を設け、これらの各駆動チェーンホイール213、214を駆動ベルト215によって連結することによって、ペダル216の駆動を第1クランク部材211と第2クランク部材212とに同時に伝達する発明が開示されている。しかしながら、特許文献1の構成では、第1クランク部材211及び第2クランク部材212の双方に駆動チェーンホイール213、214を設ける必要があり、これらのスペースを必要とするため、立ち乗り式自転車200のコンパクト化が妨げられる。また、第2クランク部材212においては、第1クランク部材211との連結だけでなく、後輪の駆動のための駆動ホイール217とも連結されるため、立ち乗り式自転車200の駆動伝達機構が複雑化する。
【0006】
そこで、本発明は、省スペースで、駆動伝達機構を複雑化することなく、回転をスムーズに行うことができるクランク機構を備えた立ち乗り式自転車を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる立ち乗り式自転車は、ハンドルによって操作可能な前輪と、駆動伝達機構を介して駆動される後輪と、前輪及び後輪が取付けられる本体フレームと、本体フレームに対して第1クランク軸を中心として回転可能な第1クランクと、本体フレームに対して第2クランク軸を中心として回転可能であり、駆動伝達機構の入力側に連結された第2クランクと、第1クランクと第2クランクとを連結し、搭乗者からの踏力を受けて第1クランク及び第2クランクを連動して回転させる連結部材とを備える立ち乗り式自転車であって、少なくとも第1クランク軸に、その逆転方向の回転を防止する逆転防止器を設け、逆転防止器を本体フレームに取付けることで、第1クランク軸及び第2クランク軸の逆転方向の回転を防止したことを特徴とする。なお、以下の説明において、クランクの回転は、自転車を漕ぎ進めるように回転する回転方向を正転方向と呼び、正転方向とは反対の回転方向を逆転方向と呼ぶ。
【0008】
このような構成によれば、少なくとも第1クランク軸に逆転防止器を設けたため、連結部材によって連結されて連動して回転する第1クランク及び第2クランクは、逆転方向への回転が防止される。そのため、第1クランク及び第2クランクが共に水平となった際に、踏力(正転方向の力)を加えても、第1クランクが逆転方向に回転することはない。したがってクランクの回転の際の引っ掛かりを防止することができ、スムーズにクランクを回転することができる。また、第1クランクと第2クランクとのそれぞれに、駆動チェーンホイールを設ける必要はなく、駆動ベルト等による連結も要しないため、省スペース化できると共に、駆動伝達機構を簡素化できる。
【0009】
上記のような立ち乗り式自転車において、第2クランク軸を、第1クランク軸よりも高い位置に配設してもよい。これによれば、第1クランク及び第2クランクが水平になった状態で踏力(正転方向の力)を加えると、第2クランク軸よりも低い位置に配設される第1クランク軸に対しても、正転方向の力が加わる。そのため、第1クランクの逆転方向に力が加わることを防止できる。したがって、クランクの回転をスムーズに行うことができる。
【0010】
また、上記課題を解決するために、ハンドルによって操作可能な前輪と、駆動伝達機構を介して駆動される後輪と、前輪及び後輪が取付けられる本体フレームと、本体フレームに対して第1クランク軸を中心として回転可能な第1クランクと、本体フレームに対して第2クランク軸を中心として回転可能であり、駆動伝達機構の入力側に連結された第2クランクと、第1クランクと第2クランクとを連結し、搭乗者からの踏力を受けて第1クランク及び第2クランクを連動して回転させる連結部材とを備える立ち乗り式自転車であって、第2クランク軸を、第1クランク軸よりも高い位置に配設してもよい。
【0011】
このような構成によれば、第2クランク軸が第1クランク軸よりも高い位置に配設されるため、上記と同様に、第1クランク及び第2クランクが水平になった状態で踏力(正転方向の力)を加えると、第2クランク軸よりも低い位置に配設される第1クランク軸に対しても、正転方向の力が加わる。そのため、第1クランクの逆転方向に力が加わることを防止できる。したがって、クランクの回転をスムーズに行うことができる。また、第1クランクと第2クランクとに駆動チェーンホイールを設ける必要がなく、駆動ベルト等による連結も要しないため、省スペース化できると共に、駆動伝達機構を簡素化できる。
【0012】
さらに、連結部材は、搭乗者の足を載置可能なペダルを有し、ペダルの踏力作用点を、連結部材と第2クランクとの連結部よりも前方に配置することが好ましい。ここで、踏力作用点とは、搭乗者のペダルを踏み込む力が伝わる点である。これによれば、各クランクが垂直になり、ペダルが上死点及び下死点に位置する状態であっても、ペダルの踏力作用点が、連結部材と第2クランクとの連結部よりも前方に位置するため、上死点に位置するペダルに対して、正転方向の力(斜め下方に向かう力)を容易に加えることができる。これによって、ペダルが上死点で停止することを抑制でき、ペダルが上死点及び下死点に位置した状態においても、クランクの回転をスムーズに行うことができる。
【0013】
また、ペダルは、上方に凸となる曲部を有する凸型形状とすることが好ましい。ここで、ペダルは、第1クランクと第2クランクとを連結する連結部材に取付けられているため、同じ角度を保ったまま回転させることができる。そのため、ペダルの形状が上方に凸となる凸型形状とすることで、坂道などの傾斜した状態であっても、足を水平にした状態でペダルに足を載置することができる。
【0014】
加えて、本体フレームに、搭乗者の足を載置可能なステップ部を設けることが好ましい。これによって、走行の初期には、ステップ部に片足を置いた状態で、他方の足で地面を蹴ることでスケーティングを行うことができる。そのため、ある程度スピードが出た状態で搭乗してペダルを漕ぎ始めることができるため、停止時からペダルを漕ぎ始める場合に比べて、漕ぎ出し時の力を省力化することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、省スペースで、駆動伝達機構を複雑化することなく、クランクの回転をスムーズに行うことができるクランク機構を備えた立ち乗り式自転車を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態にかかる立ち乗り式自転車を示す側面図である。
図2図1の立ち乗り式自転車を上方から見た平面図である。
図3図1の立ち乗り式自転車のペダルの回転を示す要部概略図である。
図4図1の立ち乗り式自転車を折り畳んだ状態を示す要部概略図である。
図5】(a)従来の立ち乗り式自転車を示す側面図である。(b)従来の立ち乗り式自転車のペダルの回転を示す要部拡大図である。
図6】従来の他の立ち乗り式自転車を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる立ち乗り式自転車の一実施形態を各図面に基づいて説明する。図1、2に示すように、本発明の立ち乗り式自転車1は、本体フレーム10、操作部20、操作部20によって操作される前輪30、駆動伝達機構40、駆動伝達機構40によって駆動される後輪50、及びステップ部60等を有する。なお、本実施形態においては、前後左右の方向は、立ち乗り式自転車1の進行方向に対する方向として呼ぶ。例えば、図1においては、左側を前方向と呼ぶ。また、クランク部材等の回転の方向は、立ち乗り式自転車1を漕ぎ進めるように回転する回転方向を、正転方向と呼び、正転方向とは反対の回転方向を逆転方向と呼ぶ。例えば、図1においては、反時計方向の回転を正転方向と呼ぶ。
【0018】
本体フレーム10は、立ち乗り式自転車1の車体本体を構成する部材であり、剛性を有する金属性のパイプ材等で形成される。本体フレーム10は、操作部20が回動可能に保持される軸支部11、後述するクランク部材14、15のクランク軸14A、15Aが取付けられる軸受部12、及び後輪50が支持される後輪支持部13を有する。
【0019】
本体フレーム10の軸受部12には、第1クランク部材14及び第2クランク部材15が、回転可能に取付けられる。なお、軸受部12は、第1クランク部材14の軸受を12Aで示し、第2クランク部材15の軸受を12Bで示す(図1参照)。第1クランク部材14と第2クランク部材15とは、連結部材16で連結され、連結部材16には、さらにペダル17が取付けられる。
【0020】
第1クランク部材14と第2クランク部材15とは、前後方向には、回転した際に、他方のクランクに当たらない程度に離間して配置され、上下方向には、第2クランク部材15が、本体フレーム10に取付けられる支持部材を介して、第1クランク部材14よりも高い位置に配置される(図1参照)。また、第1クランク部材14と第2クランク部材15とは同様の構成であり、左右それぞれに同じ構成部材を有するため、以下では、左右の各構成部材には同じ番号を付与して纏めて説明する。なお、図1においては、上面視右側のクランク、連結部材、及びペダル(詳細は後述)を1点鎖線で示す。
【0021】
第1クランク部材14及び第2クランク部材15は、軸受部12(軸受12A、12B)に回転可能に支持されるクランク軸(第1クランク軸14A、第2クランク軸15A)と、各クランク軸14A、15Aの上面視における左右の両端に、それぞれのクランク軸14A、15Aに対して直交する方向、かつ反対方向に延びるアーム(第1アーム14B、第2アーム15B)とをそれぞれ有する。各アーム14B、15Bは、同じ長さ寸法であり、先端部には、連結部材16が回転可能に取付けられる取付け孔(図示せず)が形成される。
【0022】
連結部材16は、第1クランク部材14の第1アーム14Bに取付けられる第1支持部16Aと、第2クランク部材15の第2アーム15Bに取付けられる第2支持部16Bと、各支持部16A、16Bを連結する連結部16Cとを有する(図2参照)。第1支持部16A及び第2支持部16Bは、回転可能な回転軸(図示せず)をそれぞれ内装しており、この回転軸を、第1アーム14B及び第2アーム15Bの先端部に形成される図示しない取付け孔に取付けることで、連結部材16は、回転可能に第1クランク部材14及び第2クランク部材15に回転可能に取付けられる。また、連結部16Cは、図2に示すように、第1支持部16Aの端部と、第2支持部16Bの中央部とを連結するように形成される。なお、本実施形態においては、第1クランク部材14の第1アーム14Bと、第2クランク部材15の第2アーム15Bと、連結部材16とによって、平行クランク機構を形成する。
【0023】
ペダル17は、立ち乗り式自転車1を漕ぐために搭乗者の足を載置する載置部17A、及び載置部17Aを第2支持部16Bに取付ける取付部17Bを有し、連結部材16の第2支持部16Bに取付けられる。本実施形態においては、載置部17Aは、上方に凸となる凸型(かまぼこ型)形状をなしており、取付部17Bは、第2支持部16Bに取付けられて、第2支持部16Bよりも前方に向かう湾曲形状をなしている。このような取付部17Bの形状によって、ペダル17は、載置部17Aに搭乗者の足から受ける踏力の作用点(踏力作用点)が、連結部材16の第2支持部16B(連結部材16と第2クランク部材15との連結部)よりも前方に位置する。また、ペダル17及び連結部材16は、第1クランク部材14及び第2クランク部材15に対して所定角度で取付けられる。
【0024】
ここで、第1クランク部材14の第1クランク軸14Aには、逆方向への回転を防止する、例えばラチェットホイール機構のような逆転防止器18が取付けられる。詳しくは、図2に示すように、上面視において、本体フレーム10よりも右側の第1クランク軸14A上に取付けられる。これによって、第1クランク部材14、及びこれに連結される連結部材16と第2クランク部材15とは正転方向のみに回転可能となる。
【0025】
一方、第2クランク部材15には、駆動伝達機構40が連結される。詳しくは、駆動伝達機構40は、駆動力の入力側としての大径の駆動ギア41、駆動ギア41の外周に取付けられる伝動チェーン42、及び伝動チェーン42が取付けられる従動ホイール43を有する。
【0026】
駆動ギア41は、第2クランク部材15の第2クランク軸15Aに固着され、第2クランク軸15Aの回転に伴って回転する。本実施形態においては、図2に示すように、上面視において、本体フレームよりも左側の第2クランク軸上に取付けられる。駆動ギア41の外周部には、伝動チェーン42が取付けられる。伝動チェーン42は環状のチェーンであり、駆動ギア41と従動ホイール43との間に架け渡される。従動ホイール43は、後述する後輪駆動軸51に連結される。また、駆動伝達機構40には、駆動ギア41、伝動チェーン42、及び後述する後輪50を覆うカバー44が取付けられる。なお、カバー44は、本体フレーム10の左右両側に取付けられる。
【0027】
本体フレーム10の軸支部11は、上述の軸受部12よりも前方に形成される。軸支部11は、操作部20が回動可能に保持され、操作部20の下端側には、前輪30が取付けられる。操作部20は、左右方向に延びるハンドル部21と、ハンドル部21に直交して下方に延びるシャフト22と、シャフト22に連結される前輪支持部23とを有する。
【0028】
操作部20のハンドル部21は、前輪30の向きを変更するハンドル操作を行うものであり、ハンドル部21の両端部には、搭乗者が把持するグリップ24と、ブレーキ機構を作動させるブレーキレバー25が設けられる。また、ハンドル部21の中央付近には、前方に光を照射する前灯26が取付けられる。これらのグリップ24、ブレーキレバー25及び前灯26は、周知のものであるため、詳細な説明を省略する。なお、ハンドル部21には、周囲に警告音を発するベル等を取付けてもよい。
【0029】
シャフト22は、上下方向に延びる支軸であり、本体フレーム10の軸支部11に回動可能に保持される。本実施形態においては、シャフト22には、軸支部11よりも若干上方に、シャフト22を折り畳み可能な折り畳み機構27が設けられる。折り畳み機構27は、シャフト22に折り畳みの際の回動中心となる支軸が取付けられることで、シャフト22折り畳み可能としている。また、シャフト22を伸ばした状態と折り畳んだ状態で固定する機構を備えている。詳しくは、一方(図示では固定側)のシャフト22の先端部に、扇形のプレート27Aが取付けられ、他方(図示では可動側)のシャフト22の先端部には、固定ネジ28が取付けられる。また、扇形のプレート27Aには、シャフト22を伸ばした状態と折り畳んだ状態のそれぞれにおいて、固定ネジ28が貫通するネジ孔(第1ネジ孔27B、第2ネジ孔27C)が2箇所に形成される。なお、固定ネジ28及びプレート27Aは、上面視において左右側の2箇所に設けられる。
【0030】
前輪支持部23は、下部が左右に分岐した形状であり、図1に示すように、前輪30が、前輪支持軸30Aによって回転可能に支持される。また、前輪支持部23には、一方側のブレーキレバー25に連結されるブレーキ機構29が取付けられる。ブレーキ機構29は、周知の機構であるため、詳細な説明を省略する。なお、図示においては、ブレーキレバー25とブレーキ機構29とを連結するブレーキワイヤーは省略している。
【0031】
一方、後輪支持部13は、本体フレーム10の後方側に形成される。本実施形態においては、後輪支持部13は、本体フレーム10が左右に分岐した分岐フレーム10Aと、各分岐フレーム10Aの後端側に設けられる後輪軸受10Bとを有する。各後輪軸受10Bには、後輪駆動軸51が回転可能に支持される。後輪駆動軸51には、2個の後輪50と、上述の駆動伝達機構40の従動ホイール43等が取付けられる。各後輪50は、上面視で左右2箇所に相対向するように配置される。これによって、立ち乗り式自転車1は、三輪となり、安定した走行を行うことができる。
【0032】
また、図示はしないが、従動ホイール43と後輪駆動軸51とは、従来の自転車と同様に、ラチェットホイール機構を介して取付けられる。これにより、立ち乗り式自転車1は、ペダル17によって漕がなくても慣性で走行することができる。さらに、後輪支持部13には、周知のブレーキ機構が取付けられ、ブレーキ機構は、ブレーキワイヤーによって操作部20のブレーキレバー25に連結される。
【0033】
ステップ部60は、搭乗者の足を載置可能な部材であり、立ち乗りステップ61と待機ステップ62を有する。立ち乗りステップ61は、2個の後輪50の間に配置される平坦な板状の部材である。詳しくは、立ち乗りステップ61は、分岐フレーム10Aに取付けられる支持フレーム63及び支持板64によって支持される(図1及び図2参照)。また、立ち乗りステップ61は、後輪駆動軸51よりも上方に配置され、前端側は、第2クランク部材15の第2クランク軸15Aの軸受12B付近まで延びると共に、後端側は、後輪支持部13の分岐フレーム10Aの後端を若干越える位置まで延びる。
【0034】
一方、待機ステップ62は、軸受部12の軸受12Aと軸受12Bとの間に架け渡して配置される。本実施形態においては、待機ステップ62は、図2に示すように、薄板状の部材を左右両側に対向して配置し、その間に同様の薄板状部材を、所定間隔空けて配置することで、はしご形状に形成する。また、待機ステップ62の上部は、上方に凸となる曲部を有する凸型形状をなす。
【0035】
次に、本発明の立ち乗り式自転車1の走行動作について説明する。走行動作は、片足で地面を蹴って走行する押し乗り(スケーティング)と、ペダル17を漕いで走行するペダル走行とを行うことができる。押し乗り(スケーティング)は、例えば、走行を開始する際に行われる。詳しくは、操作部20のハンドル部21のグリップ24を把持して、片足を立ち乗りステップ61上に乗せ、他方の足で地面を蹴ることで、車体を前進させる。走行が開始すると、搭乗者は、立ち乗りステップ61に両足を乗せて、慣性による走行を行う。必要に応じて、さらに片足によって地面を蹴ることで、押し乗りによる走行を継続してもよい。
【0036】
ペダル走行は、左右のペダル17上に各足を載置して、下方に踏み込み、踏力(正転方向の力)を加えることで行うことができる。例えば、押し乗りによって走行を開始した状態で、ステップ部60に両足を乗せている状態から、ペダル17に乗り移ってペダル17を漕ぎ始めることができる。この時、立ち乗りステップ61からペダルに乗り移る際に、後方側に位置しているペダル17上に足を載置して、下方(逆回転方向)に加重を与えたとしても、第1クランク部材14の第1クランク軸14Aは、逆転防止器18が取付けられているため、逆転方向には回転しない。そのため、ペダル17を逆方向に回転することなく、立ち乗りステップ61の近くに位置するペダル17に乗り移ることができる。また、押し乗りによって、ある程度スピードが出た状態でペダル走行を開始すれば、ペダル17を漕ぎ始めるための力は少なくてよい。
【0037】
ここで、立ち乗り式自転車1のペダル17による連続走行は、従来の自転車の立ち乗りと同様であり、左右の足で交互にペダル17を踏み込むことで、漕ぎ進めることができる。ここで、従来の自転車においては、ペダルは、一本の軸によって回転可能に支持されており、ペダルに足を載せ際には、回転方向に自由に回転可能であるため、載置した足の安定性がよくなく、足首に負担をかけるおそれがある。しかし、本発明の立ち乗り式自転車1においては、ペダル17は、同じ長さ寸法のアーム14B、15Bを有する2本のクランク部材14、15によって支持されているため、所定角度を維持した状態で回転することができる。そのため、安定した姿勢でペダル17を踏み込んでクランク部材14、15回転させることができ、足への負担も軽減することができる。さらに、本実施形態においては、ペダル17の載置部17Aの上部を、上方に凸となる凸型形状としたため、例えば坂道であったとしても、足を水平にした状態でペダル17上に足を載置することができるため、搭乗者は足首に負担をかけることなく、ペダル17を漕ぐことができる。なお、第1クランク部材14の第1アーム14B及び第2クランク部材15の第2アーム15Bの長さ寸法は同じ長さ寸法でなくてもよい。
【0038】
一時停止する際には、操作部20のブレーキレバー25を操作することで、停止することができる。このとき、搭乗者は、両足をペダル17から外し、待機ステップ62に両足を載置することで待機することができる。なお、ペダル17は、逆回転方向には回転できないが、後輪50には、ラチェットホイール機構を備えているため、ペダル17を漕がない状態でも慣性で走行することができる。そのため、ペダル17は、任意の位置で停止させた状態とすることができる。また、待機ステップ62の上部は、ペダル17と同様に、上方に凸の凸型形状をなしているため、上記と同様に、坂道で停止しても、地面の傾斜の影響を受けることなく、待機ステップ62上に足を載置することができる。
【0039】
一時停止状態から走行を再開する際には、待機ステップ62から各ペダル17に両足を載置して、前方に位置するペダル17を踏み込むことで、走行を開始できる。このとき、停止した際のペダル17及びクランク部材14、15の状態によっては、従来の立ち乗り式自転車においては、漕ぎ出すことが困難な場合があったが、本発明にかかる立ち乗り式自転車1においては、ペダル17がどのような位置で停止していても、スムーズに漕ぎ始めることができる。
【0040】
例えば、図3に示すように、第1クランク部材14及び第2クランク部材15の各アーム14B、15Bが、共に水平になった状態(左右のペダル17が前後方向に位置した状態)で停止していると、従来の立ち乗り式自転車では、図5(b)に示すように、ペダル113を踏み込むことにより、第1クランク部材111に上向きの力が加わることで、ペダル113と第2クランク部材112とが逆くの字形状となり、回転が引っ掛かってしまうという不具合があった。この不具合は、ペダル113において、第2クランク部材112に近い位置に足を載置すると、顕著に発生する。しかしながら、本実施形態においては、第1クランク部材14に、逆転防止器18を取付けたため、例え、第1クランク部材14に上向きの力がかかったとしても、逆方向に回転することはないため、回転の引っ掛かりを防止することができる。そのため、ペダル17を第2クランク部材15側に取付けることができる。
【0041】
また、本実施形態においては、第2クランク部材15の第2クランク軸15Aを、第1クランク部材14の第1クランク軸14Aよりも高い位置となるように配設したため、第1クランク部材14と第2クランク部材15の各アーム14B、15Bが共に水平な状態で、ペダル17に下向きの力を加えると、第1クランク部材14にも下向きの力が加わる。そのため、第1クランク部材14に対して逆転方向に力が加わることを抑制でき、ペダル17の回転をよりスムーズにすることができる。なお、第1クランク軸と第2クランク軸とは、同じ高さとなるように設けてもよい。図4に、第1クランク軸14Aと第2クランク軸15Aとを、同じ高さになるように配設した例を示す。
【0042】
一方、図1に示すように、第1クランク部材14及び第2クランク部材15の各アーム14B、15Bが、上下方向に位置した状態で停止していると、左右のペダル1は、上死点及び下死点に位置する。従来の立ち乗り式自転車であれば、上死点に位置するペダルを踏み込むと、下方かかる力が大きいため、回転を開始することが困難であった。しかしながら、本実施形態においては、ペダル17を、第2クランク部材15よりも前方に位置するように配置したため、上死点に位置するペダル17を、回転方向である斜め下方に向けて容易に力を加えることができる。さらに、ペダル17の載置部17Aの形状を凸型形状としたため、載置部17Aに載置した足の踵で、載置部17Aの後端側を前に押し出すように力を加えることで、容易にペダル17の回転を開始することができる。
【0043】
この他、第1クランク部材14及び第2クランク部材15が、水平でも上下方向でもない位置でペダル17が停止した場合では、左右のペダル17のうち、前方に位置する側のペダル17を下方に踏み込むことによって、容易に走行を開始することができる。このように、一時停止した際において、ペダル17がどのような位置であったとしても、確実にペダル17を踏み込んで走行を再開することが可能となる。また、走行中にペダル17の位置が平行になった場合でも、回転に引っ掛かりを生じることがないため、スムーズな回転を維持することができる。
【0044】
なお、一時停止状態でなく、走行開始時であっても、搭乗者が待機ステップ62に乗った状態から、上記と同様にペダル17を踏み込んで走行を開始してもよい。このように、本発明の立ち乗り式自転車1は、押し乗りのようなスケーティングによる走行も、ペダル17による走行も可能であるため、様々な乗り方を楽しむことができる。また、搭乗した状態で一時停止しても、安定しており、走行の再開も容易である。そのため、本発明の立ち乗り式自転車1は、例えば、観光地等での使用に適する。
【0045】
さらに、立ち乗り式自転車1を駐輪する際には、操作部20の折り畳み機構27を操作することで、シャフト22を後方に折り畳むことができる。折り畳みの動作は、折り畳み機構27の左右の固定ネジ28を緩めて第1ネジ孔27Bから外す。これによって、シャフト22を後方に向けて倒すことができる。シャフト22を折り畳むと、固定ネジ28を、第2ネジ孔27Cに挿入して固定する。図4にシャフト22を折り畳んだ状態を示す。このように、シャフト22を折り畳んだ状態では、駐輪時に強風や突風による転倒を防止することができる。また、シャフト22を折り畳むことで、車体をコンパクト化できるため、立ち乗り式自転車1を乗用車のトランク等に搭載して運ぶことができる。
【0046】
なお、シャフト22の折り畳み機構27は、これに限ることはない。例えば、扇形のプレート27Aに、複数のスリットを形成して、固定ネジに替えてシャフト22が延びる方向に移動可能な係合ピンを設け、スリットと係合ピンの係合によって各状態で固定してもよい。この場合には、係合ピンと一方のスリットとの係合を外した状態で、シャフト22を倒して折り畳むことが可能となり、一方、シャフト22を折り畳んだ状態で、他方のスリットに係合ピンを係合することで、固定することができる。
【0047】
以上述べてきたように、本実施形態においては、立ち乗り式自転車1において、第1クランク部材14を、逆転防止器18を介して本体フレーム10に接続したため、例え、第1クランク部材14と第2クランク部材15とが水平となった状態で、第2クランク部材15側に下向きの力を加えても、第1クランク部材14が逆方向に回転することはないため、ペダル17によるクランク部材14、15の回転に引っ掛かりを生じることはない。このように、クランク機構を複雑化することなく、クランク部材14、15の回転をスムーズに行うことができる。
【0048】
なお、上記実施形態においては、図2に示すように、第1クランク部材14の第1クランク軸14Aに取付けられる逆転防止器18を、上面視において、本体フレーム10よりも右側に設け、駆動伝達機構40(駆動ギア41、伝動チェーン42、及び従動ホイール43)を上面視において、本体フレーム10よりも左側に取付けたが、これに限ることはない。逆転防止器18を、本体フレーム10よりも左側に取付けてもよく、駆動伝達機構40を本体フレーム10よりも右側に取付けてもよい。逆転防止器18及び駆動伝達機構40は、右側又は左側のどちらか一方の同じ側に取付けてもよい。また、逆転防止器18は、別体とすることに限ることはなく、第1クランク部材14の軸受12Aに、一体的に組み込んでもよい。さらに、逆転防止器18は、第1クランク部材14の第1クランク軸14A、及び第2クランク部材15の第2クランク軸15Aの両方に取付けてもよい。また、第2クランク軸15Aを、第1クランク軸14Aよりも高い位置に配設した場合には、逆転防止器18は必ずしも設けなくてもよい。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。なお、上記実施形態においては、前輪を1個、後輪を2個備える三輪の立ち乗り式自転車の例を示したが、これに限ることはなく、前輪を2個備える四輪としてもよく、それ以上の数の前輪又は後輪を有していてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 立ち乗り式自転車
10 本体フレーム
14 第1クランク
14A 第1クランク軸
15 第2クランク
15A 第2クランク軸
16 連結部材
18 逆転防止器
21 ハンドル部
30 前輪
40 駆動伝達機構
50 後輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6