特許第6178261号(P6178261)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178261
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】電子制御スロットル装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 9/10 20060101AFI20170731BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   F02D9/10 H
   F02D9/02 351M
   F02D9/02 361J
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-31870(P2014-31870)
(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公開番号】特開2015-158136(P2015-158136A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】村坂 力
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−053713(JP,A)
【文献】 特開2009−041478(JP,A)
【文献】 特開2013−133739(JP,A)
【文献】 特開2008−286098(JP,A)
【文献】 特許第4751366(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/10
F02D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接して配設されて、エンジンの各気筒に対応する吸気通路がそれぞれ画成された一対のスロットルボデーと、
上記両スロットルボデーの吸気通路のエンジン側端部にそれぞれ形成されて、該吸気通路の軸線を基準として互いの軸線を離間する方向に偏芯させ、上記エンジンの対応する気筒から延設されたジョイント部材の一端がそれぞれ嵌め込まれるスピゴットと、
上記両スロットルボデーに回動可能に軸支され、上記各吸気通路内にそれぞれ配設されたスロットルバルブを支持するスロットルシャフトと、
上記両スロットルボデーの間に配設されて上記スロットルシャフトに連結され、内蔵したギヤ列を介してモータからの駆動力により上記スロットルシャフトを回転駆動して上記各スロットルバルブを同期して開閉可能であると共に、その一部を上記両スロットルボデーのスピゴットの間に位置させたギヤユニットと
を備えたことを特徴とする電子制御スロットル装置。
【請求項2】
上記ギヤユニットの一部は、上記両スロットルボデーのスピゴットの先端よりもエンジン側に突出している
ことを特徴とする請求項1に記載の電子制御スロットル装置。
【請求項3】
上記両スロットルボデーにはそれぞれ複数の吸気通路が形成され、各吸気通路のエンジン側端部にそれぞれ形成されたスピゴットの内、上記ギヤユニットの両側に位置する一対のスピゴットの軸線のみが互いに離間する方向に偏芯している
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子制御スロットル装置。
【請求項4】
上記ギヤユニットは、両側に位置する一対の吸気通路の軸線の中間位置から何れか一方側に向けてオフセットして配設され、
上記一対の吸気通路の軸線に対するそれぞれのスピゴットの軸線の偏芯量は、上記ギヤユニットの一方側に位置するスピゴットの軸線の偏芯量が該ギヤユニットの他方側に位置するスピゴットの軸線の偏芯量よりも大きく設定されている
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電子制御スロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの各気筒に対応する複数の吸気通路内にスロットルバルブをそれぞれ配設し、モータによりスロットルシャフトを回転駆動して各スロットルバルブを同期して開閉する二輪車用の電子制御スロットル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
四輪車に比較して二輪車は良好なスロットル応答性が重視されるため、運転者のスロットル操作に応じてエンジンへの吸入空気を調整するスロットル装置として多連スロットル装置が採用される場合がある。このような多連スロットル装置では、エンジンの各気筒に対応してスロットルボデーに吸気通路を画成し、各吸気通路内にスロットルバルブを配設してスロットルシャフトで支持し、スロットル操作に応じてスロットルシャフトを回転駆動して各スロットルバルブを同期して開閉させるように構成されている。
【0003】
また、二輪車に搭載されるエンジンは高回転型の特性のものが多く、より正確且つ適切なスロットル開度調整が要求されることを受けて、近年ではスロットル装置が電子制御化されている。このような電子制御の多連スロットル装置(以下、単に電子制御スロットル装置という)では、モータによりギヤユニットのギヤ列を介してスロットルシャフトを回転駆動して各スロットルバルブを開閉している。回転駆動時のスロットルシャフトの捩れは各スロットルバブルの位相ずれ、ひいては吸入空気量の格差につながる。そこで、モータからの駆動力をスロットルシャフトの長手方向の中程に入力させることで、スロットルシャフトの捩れ抑制を図っている。
【0004】
図5はこのような従来技術の電子制御スロットル装置を示す平断面図、図6は同じくギヤユニット周辺の部分拡大平断面図である。この例の電子制御スロットル装置31は4気筒エンジン用の4連スロットル装置であり、スロットルボデーは第1スロットルボデー2と第2スロットルボデー3とに分割され、図示しないボルトにより互いに結合されている。
第1スロットルボデー2にはエンジンの#1気筒及び#2気筒に対応して一対の吸気通路5#1,5#2がそれぞれ画成され、第2スロットルボデー3にはエンジンの#3気筒及び#4気筒に対応して一対の吸気通路5#3,5#4がそれぞれ画成されている。各吸気通路5#1〜5#4の反エンジン側には図示しないエアクリーナが接続され、また各吸気通路5#1〜5#4内には燃料噴射弁6が先端を臨ませている。
【0005】
第1及び第2スロットルボデー2,3には各吸気通路5#1〜5#4を貫通するように1本のスロットルシャフト8が回動可能に軸支され、各吸気通路5#1〜5#4内に配設されたスロットルバルブ10がスロットルシャフト8に支持されている。第1及び第2スロットルボデー2,3の間にはギヤユニット12が配設され、ギヤユニット12には図示しないモータが連結されている。モータからの駆動力はギヤユニット12に内蔵されたギヤ列14を介してスロットルシャフト8に伝達され、スロットルシャフト8が回転駆動されて各スロットルバルブ10が同期して開閉される。
【0006】
各吸気通路5#1〜5#4のエンジン側の端部には円筒状をなすスピゴット17が形成されており、エンジンの各吸気ポートから延設されたゴムジョイント18の端部がそれぞれスピゴット17に嵌め込まれてホースバンド19等で締付け固定されている。エアクリーナから各吸気通路5#1〜5#4内に導入された吸入空気は、スロットル開度に応じて流量調整されながら燃料噴射弁6から噴射された燃料と混合し、ゴムジョイント18内を経てエンジンの吸気ポートから筒内に導入されて燃焼に供される。
【0007】
各スピゴット17の周辺には、ゴムジョイント18の端部を嵌め込むためのスペース(以下、ゴムジョイント18の取付スペースという)が必要である。しかし、ギヤ列14を内蔵したギヤユニット12はスロットルシャフト8を中心とした半径方向にかなりの領域を占有するため、その一部がスピゴット17に干渉してゴムジョイント18の取付スペースの確保を妨げてしまう。
そこで、従来技術の電子制御スロットル装置31では、図6に示すように、吸気流通方向に沿ったスロットルボデー2,3の全長L2 を延長してスピゴット17の位置をエンジン側に変位(ギヤユニット12から寸法l3だけ離間)させることにより、ギヤユニット12の一部との干渉を防止してゴムジョイント18の取付スペースを確保している。
【0008】
一方、このようなスロットルボデーを分割したスロットル装置として、例えば特許文献1の技術が提案されている。特許文献1のスロットル装置は従来からのワイヤー駆動を採用したものであり、両スロットルボデーの間に連結同調機構を設けている。運転者によるスロットル操作はワイヤーを介して一方のスロットルボデーのスロットルシャフトに伝達され、そのスロットルシャフトの回転が連結同調機構を介して他方のスロットルボデーのスロットルシャフトに伝達されると共に、スロットルシャフト間の位相の微調整が連結同調機構により可能となっている。そして、このスロットル装置では、連結同調機構の設計自由度を向上させるために、連結同調機構の両側に位置する一対の吸気通路のスピゴットを、それぞれ下方に向けてa偏芯させると共に、互いの離間方向にb偏芯させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4751366号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記したように図5,6の従来技術では、ゴムジョイント18の取付スペースを確保するために、スロットルボデー2,3の全長L2 を吸気流通方向に延長している。ところが、スロットルボデー2,3の延長化は、電子制御スロットル装置31の大型化や重量増加の要因になるばかりでなく、二輪車に適したエンジン特性を実現する妨げになってしまう。
即ち、エンジン特性に影響する種々のファクターの一つとして、スロットル装置の吸気通路の長さ(内容積)が知られており、二輪車で望まれる高回転型のエンジン特性のためには吸気通路の短縮化が必要不可欠である。ところが、ゴムジョイント18の取付スペースの確保のためにスロットルボデー2,3の全長L2を延長すると吸気通路5#1〜5#4も延長化されるため、高回転型のエンジン特性に対して電子制御スロットル装置31が不適切な仕様になってしまう。
【0011】
高回転型のエンジン特性に対応するためにスロットルボデー2,3の全長L2を短縮するには、ギヤユニット12を小型化する必要があるが、以下の理由によりギヤユニット12の小型化は非常に困難である。
例えば特許文献1の連結同調機構は、一方のスロットルシャフトの回転軸線から偏芯した位置に調整ボルトを設けると共に、この調整ボルトの先端に対応するように、他方のスロットルシャフトの回転軸線から偏芯した位置に同調プレートを設けている。一方のスロットルシャフトが回転すると、調整ボルトの先端が同調プレートを押圧しながら他方のスロットルシャフトに回転を伝達し、これにより両スロットルシャフトの同期回転が行われる。このような回転伝達のためには、スロットルシャフトの回転軸線に対して調整ボルト及び同調プレートを偏芯させる必要があり、偏芯量が大きくなるほど連結同調機構は大型化する。しかしながら、ある程度の偏芯量があれば何ら問題なく回転伝達できるため、連結同調機構を小型化することは容易である。
【0012】
これに対して図5,6の従来技術では、吸気通路5#1〜5#4内を流通する空気に逆らってスロットルバルブ10を開閉するために、その駆動源であるモータに大きなトルクが要求される。トルク増加に伴ってモータは大型化し、ひいては電子制御スロットル装置全体が大型化してしまう。モータの大型化を回避するために、ギヤユニット12の減速比を増加させてモータトルクを補うことは可能であるが、減速比の増加に伴ってギヤユニット12が大型化してしまう。即ち、モータの小型化とギヤユニットの小型化とがトレードオフの関係にあり、何れか一方のみを優先できないことがギヤユニット12の小型化を妨げる要因となっている。
以上のように従来技術のギヤユニット12は容易に小型化できない点で、特許文献1に記載された連結同調機構と大きく相違し、必然的に特許文献1に記載されている単にスピゴットを偏芯させるだけの対策では問題を解決できない。結果として図5,6の従来技術では、大型のギヤユニット12を両スロットルボデー2,3の間に配設せざるを得ず、ゴムジョイント18の取付スペースの確保に伴うスロットルボデー2,3の全長L2 の延長化により、高回転型のエンジン特性に好適な仕様を実現できないという問題があった。
【0013】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、スロットルボデーの間にギヤユニットを配設したレイアウトとした上で、スロットルボデーを吸気流通方向に延長化することなくスピゴットの周辺にゴムジョイントの取付スペースを確保でき、もって良好な組付性を保ちながら、小型・軽量で且つ高回転型のエンジン特性に好適な仕様を実現することができる電子制御スロットル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明の電子制御スロットル装置は、互いに隣接して配設されて、エンジンの各気筒に対応する吸気通路がそれぞれ画成された一対のスロットルボデーと、両スロットルボデーの吸気通路のエンジン側端部にそれぞれ形成されて、吸気通路の軸線を基準として互いの軸線を離間する方向に偏芯させ、エンジンの対応する気筒から延設されたジョイント部材の一端がそれぞれ嵌め込まれるスピゴットと、両スロットルボデーに回動可能に軸支され、各吸気通路内にそれぞれ配設されたスロットルバルブを支持するスロットルシャフトと、両スロットルボデーの間に配設されてスロットルシャフトに連結され、内蔵したギヤ列を介してモータからの駆動力によりスロットルシャフトを回転駆動して各スロットルバルブを同期して開閉可能であると共に、その一部を両スロットルボデーのスピゴットの間に位置させたギヤユニットとを備えたことを特徴とする。
【0015】
このように構成した電子制御スロットル装置によれば、スロットルボデーの間にギヤユニットを配設したレイアウトとした上で、両スロットルボデーの吸気流通方向の全長が短縮化されると共に、両スピゴットの周辺にジョイント部材の取付スペースを確保可能となる。
【0016】
その他の態様として、ギヤユニットの一部が、両スロットルボデーのスピゴットの先端よりもエンジン側に突出していることが好ましい。
このように構成した電子制御スロットル装置によれば、両スロットルボデーの間により大型のギヤユニットを配設可能になると共に、スロットルボデーの全長を一層短縮可能となる。
【0017】
その他の態様として、両スロットルボデーにそれぞれ複数の吸気通路が形成され、各吸気通路のエンジン側端部にそれぞれ形成されたスピゴットの内、ギヤユニットの両側に位置する一対のスピゴットの軸線のみが互いに離間する方向に偏芯していることが好ましい。
このように構成した電子制御スロットル装置によれば、ギヤユニットの両側に位置する一対のスピゴットの軸線のみが離間方向に偏芯し、他のスピゴットの軸線は偏芯していないため、各気筒のスピゴットの占有スペースが増加する事態を防止して、さらなる小型化が可能となる。
【0018】
その他の態様として、ギヤユニットが、両側に位置する一対の吸気通路の軸線の中間位置から何れか一方側に向けてオフセットして配設され、ギヤユニットの一方側に位置するスピゴットの軸線の偏芯量がギヤユニットの他方側に位置するスピゴットの軸線の偏芯量よりも大きく設定されていることが好ましい。
このように構成した電子制御スロットル装置によれば、ギヤユニットのオフセット状態に応じて両側に位置するスピゴットの軸線の偏芯量を不均等にしているため、各スピゴットの周辺にジョイント部材の取付スペースをより確実に確保可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スロットルボデーの間にギヤユニットを配設したレイアウトとした上で、スロットルボデーを吸気流通方向に延長化することなくスピゴットの周辺にジョイント部材の取付スペースを確保でき、もって良好な組付性を保ちながら、小型・軽量で且つ高回転型のエンジン特性に好適な仕様を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態の電子制御スロットル装置を示す平断面図である。
図2】電子制御スロットル装置をエンジン側より見た図1のA矢視図である。
図3】同じくギヤユニット周辺の部分拡大平断面図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5】従来技術の電子制御スロットル装置を示す平断面図である。
図6】同じく従来技術のギヤユニット周辺の部分拡大平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した電子制御スロットル装置の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態の電子制御スロットル装置を示す平断面図、図2は電子制御スロットル装置をエンジン側より見た図1のA矢視図、図3は同じくギヤユニット周辺の部分拡大平断面図、図4図3のIV-IV線断面図である。図1は二輪車に搭載した姿勢の電子スロットル制御装置を上方から見ており、図示はしないが図中の下側にエンジンが位置し、上側にエアクリーナが位置している。以下の説明では、図1の紙面と直交する方向を上下、図1の左右方向を左右(気筒の列設方向)、図1の下側をエンジン側、上側をエアクリーナ側と規定する。
【0022】
図1,2,4に示すように、本実施形態の電子制御スロットル装置1は4気筒エンジン用の4連スロットル装置として構成されている。電子制御スロットル装置1のスロットルボデーは第1スロットルボデー2と第2スロットルボデー3とからなり、これらのスロットルボデー2,3はそれぞれアルミダイキャストにより製作されて複数のボルト4(図2にその内の1本を示す)により互いに結合されている。
第1スロットルボデー2にはエンジンの#1気筒及び#2気筒に対応して断面円形状をなす一対の吸気通路5#1,5#2がそれぞれ画成され、第2スロットルボデー3にはエンジンの#3気筒及び#4気筒に対応して断面円形状をなす一対の吸気通路5#3,5#4がそれぞれ画成されている。各吸気通路5#1〜5#4は、エンジンの各気筒に対応して所定のピッチで左右方向に並設されている。
【0023】
各吸気通路5#1〜5#4の反エンジン側には共通のエアクリーナが接続され、エンジンの運転中にはエアクリーナにより濾過された空気が各吸気通路5#1〜5#4内に導入されるようになっている。図4に示すように、第1及び第2スロットルボデー2,3の各吸気通路5#1〜5#4の下側位置には、先端を吸気通路5#1〜5#4内に臨ませるように燃料噴射弁6が取り付けられ、エンジンの運転中には、図示しないECU(エンジン制御装置)からの駆動信号に応じて燃料噴射弁6から吸気通路5#1〜5#4内に燃料が噴射されるようになっている。なお、エンジンが筒内噴射型として構成されている場合には、各気筒に対応する燃料噴射弁6は省略される。
【0024】
第1及び第2スロットルボデー2,3には1本のスロットルシャフト8がベアリング9により回動可能に軸支され、このスロットルシャフト8は各吸気通路5#1〜5#4を貫通するように左右方向に延設されている。各吸気通路5#1〜5#4内にはスロットルバルブ10が配設され、これらのスロットルバルブ10はスロットルシャフト8に対してそれぞれ一対のビス11により固定されている。
【0025】
図1〜3に示すように、第1及び第2スロットルボデー2,3の間にはギヤユニット12が配設され、第1スロットルボデー2にはモータ13(図2に破線で示す)が内蔵されている。図示はしないが、モータ13の出力軸はギヤユニット12に内蔵された複数のギヤから構成されるギヤ列14(図2,3に破線で示す)の一端に連結され、ギヤ列14の他端はギヤユニット12内でスロットルシャフト8に連結されている。モータ13からの駆動力はギヤユニット12のギヤ列14を介してスロットルシャフト8に伝達され、スロットルシャフト8が回転駆動されて各スロットルバルブ10が同期して開閉される。
【0026】
スロットルシャフト8の右端は第1スロットルボデー2から突出してスロットル開度センサ15が取り付けられ、このスロットル開度センサ15により実スロットル開度が検出される。エンジンの運転中にはECUによりモータ13が駆動制御され、ECUは運転者によるスロットル操作量から目標スロットル開度を決定し、実スロットル開度との比較に基づきモータ13を駆動制御してスロットル開度を調整する。
【0027】
図2,3に示すように、第1及び第2スロットルボデー2,3の各吸気通路5#1〜5#4のエンジン側の端部には、円筒状をなすスピゴット17が一体形成されている。各スピゴット17には短い円筒状をなすゴムジョイント18(ジョイント部材)の一端がそれぞれ嵌め込まれ、ホースバンド19によりスピゴット17に対して締付け固定されている。また図示はしないが、各ゴムジョイント18の他端はエンジンの対応する気筒の吸気ポートにそれぞれ嵌め込まれ、同じくホースバンドで締付け固定されている。
【0028】
これにより、エアクリーナから各吸気通路5#1〜5#4及びゴムジョイント18を介してエンジンの吸気ポートに至るまでの4本の吸気用の経路が形成されている。従ってエンジンの運転中には、エアクリーナからの吸入空気が電子制御スロットル装置1の各吸気通路5#1〜5#4に導入され、スロットル開度に応じて流量調整されながら燃料噴射弁6から噴射された燃料と混合し、ゴムジョイント18内を経てエンジンの吸気ポートから各気筒の筒内に導入されて燃焼に供される。
【0029】
ところで、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、各スピゴット17の周辺にはゴムジョイント18の取付スペースが必要であるが、スロットルボデー2,3間に配設された大型のギヤユニット12が取付スペースの確保を妨げてしまう。そこで、図5,6の従来技術では、スロットルボデー2,3の吸気流通方向に沿った全長L2 を延長してスピゴット17の位置をエンジン側に変位させる対策を講じているが、高回転型のエンジン特性に対応できないという新たな問題が発生してしまう。
【0030】
このような問題点を鑑みて本発明者は、ギヤユニット12の左右両側に位置する#2気筒及び#3気筒のスピゴット17の軸線C2を互いに離間する方向に偏芯させ、且つそれらのスピゴット17の間にギヤユニット12の一部を位置させれば、スロットルボデー2,3の全長を延長することなく、ゴムジョイント18の取付スペースを確保できることを見出した。この知見の下に本実施形態では、#2気筒及び#3気筒の吸気通路5#2,5#3の軸線C1を基準としてそれぞれのスピゴット17の軸線C2を偏芯させており、以下、その詳細を説明する。
【0031】
まず、スピゴット17の軸線C2の偏芯に関する説明に先立って、両スロットルボデー2,3間に配設されたギヤユニット12の詳細について述べる。
図2,3に示すように、第1スロットルボデー2の左側面と第2スロットルボデー3の右側面とは互いに離間し、その間に形成された空間内にギヤユニット12が配設されている。第1スロットルボデー2の左側面には右側ケーシング21が一体形成されており、右側ケーシング21はスロットルシャフト8を中心として左方に開口する形状をなしている。右側ケーシング21の左方には合成樹脂製の左側ケーシング22が配設され、この左側ケーシング22はスロットルシャフト8を中心として右方に開口する形状をなしている。
左側及び右側ケーシング21,22は互いに外周縁を当接させた状態で図示しないビスで結合され、これによりギヤユニット12のケーシングが形作られている。そして、上記したようにケーシング21,22内にギヤ列14が配設されて、モータ13からスロットルシャフト8への動力伝達が行われる。
【0032】
図3から明らかなように、ギヤ列14を内蔵したギヤユニット12はスロットルシャフト8を中心とした半径方向にかなりの領域を占有しており、一方で本実施形態のスロットルボデー2,3は高回転型のエンジン特性に対応するように全長L1(<L2 )が短く設定されている。
結果として、吸気流通方向においてギヤユニット12の一部はスピゴット17の基端(=ゴムジョイント18のエアクリーナ側の端部)よりも寸法l1 だけエンジン側に突出するだけでなく、さらにスピゴット17の先端よりも寸法l2 だけエンジン側に突出している。この位置関係では、ギヤユニット12の一部(エンジン側の箇所)が左右両側に位置する#2気筒及び#3気筒のスピゴット17に干渉してしまうが、以下に述べるスピゴット17の偏芯によって干渉が防止されている。
【0033】
まず、#1気筒及び#4気筒に対応するスピゴット17については、通常通り吸気通路5#1,5#4の軸線C1を中心として形成されている。これに対して#2気筒及び#3気筒に対応するスピゴット17の軸線C2は、それぞれの吸気通路5#2,5#3の軸線C1を基準として互いに離間する方向に偏芯している。詳しくは吸気通路5#2の軸線C1を基準として#2気筒のスピゴット17の軸線C2 が右方に偏芯量Offだけ偏芯し、吸気通路5#3の軸線C1を基準として#3気筒のスピゴット17の軸線C2 が左方に偏芯量Offだけ偏芯している。結果として、ギヤユニット12の一部が#2気筒及び#3気筒のスピゴット17の間に位置することになる。
【0034】
偏芯量Offは、ギヤユニット12の左右方向の位置を考慮した上で、#2気筒及び#3気筒のスピゴット17の周辺にゴムジョイント18の取付スペースをそれぞれ確保できるように設定されている。図3に示すように本実施形態では、#2気筒の吸気通路5#2の軸線C1と#3気筒の吸気通路5#3の軸線C1との中間位置にギヤユニット12が配設されている。このため、取付スペースの確保のために必要な偏芯量Offは#2気筒のスピゴット17と#3気筒のスピゴット17とで等しくなり、共に同一の偏芯量Offが設定されている。
【0035】
以上のように本実施形態の電子制御スロットル装置1によれば、ギヤユニット12の左右両側に位置する#2気筒及び#3気筒のスピゴット17の軸線C2を、吸気通路5#2,5#3の軸線C1を基準として互いに離間する方向に偏芯させ、且つそれらのスピゴット17の間にギヤユニット12の一部を位置させている。このため、スロットルボデー2,3の吸気流通方向の全長L1を短縮化できると共に、#2気筒及び#3気筒のスピゴット17の周辺にゴムジョイント18の取付スペースを確保できる。
結果としてスロットルボデー2,3の間にギヤユニット12を配設したレイアウトとした上で、良好な組付性を保ちながら、小型・軽量で且つ高回転型のエンジン特性に好適な電子制御スロットル装置1の仕様を実現することができる。
【0036】
しかも本実施形態では、ギヤユニット12の一部をスピゴット17の基端よりもエンジン側に突出させるだけでなく、さらにスピゴット17の先端よりもエンジン側に突出させている。よって、両スロットルボデー2,3の間により大型のギヤユニット12を配設可能になると共に、スロットルボデー2,3の全長L1を一層短縮化することができる。
【0037】
さらに本実施形態では、#1気筒から#4気筒までの各吸気通路のスピゴットの内、ギヤユニット12の両側に位置する#2気筒及び#3気筒のスピゴット17の軸線C2のみを互いに離間する方向に偏芯させている。結果として#2気筒のスピゴット17が#1気筒のスピゴット17に接近し、#3気筒のスピゴット17が#4気筒のスピゴット17に接近するが、それぞれのスピゴット17間にはギヤユニット12のような障害物が存在しないため、ゴムジョイント18の取付スペースを何ら問題なく確保できる。
そして、仮に#2気筒及び#3気筒のスピゴット17の軸線C2の偏芯に対応して#1気筒及び#4気筒のスピゴット17の軸線C2も離間方向に偏芯させた場合には、左右方向において各気筒のスピゴット17が占有するスペースが増加してしまうが、#1気筒及び#4気筒のスピゴット17の軸線C2を偏芯させていないため、このような事態を防止して電子制御スロットル装置1の一層の小型化を達成することができる。
【0038】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、一対の吸気通路5#1,5#2を有する第1スロットルボデー2及び一対の吸気通路5#3,5#4を有する第2スロットルボデー3を結合して4連式の電子制御スロットル装置1を構成したが、これに限るものではない。
例えば第1及び第2スロットルボデー2,3に単一の吸気通路を画成し、それらのスロットルボデー2,3を結合することにより2連式の電子制御スロットル装置1を構成してもよいし、第1スロットルボデー2に一対の吸気通路を画成し、第2スロットルボデー3に3つの吸気通路を画成し、それらのスロットルボデー2,3を結合することにより5連式の電子制御スロットル装置1を構成してもよい。このような場合でも、両スロットルボデー2,3の間に配設されるギヤユニット12の両側のスピゴット17の軸線C2を離間方向に偏芯させれば、上記実施形態と全く同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
また上記実施形態では、第1スロットルボデー2の左側面に右側ケーシング21を一体形成し、その右側ケーシング21に合成樹脂製の左側ケーシング22を結合してギヤユニット12のケーシングとしたが、これに限るものではない。例えば第1及び第2スロットルボデー2,3とは全く別個に独立して汎用のギヤユニットを製作し、気筒数等の仕様が相違する複数種類の電子制御スロットル装置の間で共用してもよい。
【0040】
また上記実施形態では、第1及び第2スロットルボデー2,3に1本のスロットルシャフト8を回動可能に軸支して各気筒のスロットルバルブ10を開閉したが、これに限るものではない。例えばギヤユニット12の箇所でスロットルシャフト8を左右に分割し、特許文献1に記載されたような連結同調機構を介して双方のスロットルシャフト8を連動して回転駆動するように構成してもよい。
【0041】
また上記実施形態では、#2気筒及び#3気筒のスピゴット17の軸線C2の偏芯量Offを同一に設定したが、これに限るものではなく、異なる偏芯量Offを設定してもよい。例えばギヤユニット12は、必ずしも#2気筒の吸気通路5#2の軸線C1と#3気筒の吸気通路5#3の軸線C1との中間位置に配設されるとは限らず、内部のギヤ列14の構成やモータ13との位置関係等の種々の要因に応じて、双方の軸線C1の中間位置から左右方向の何れか一方側に向けて多少オフセットして配設されることもあり得る。
【0042】
この場合には、他方側(ギヤユニット12から離間する側)に位置するスピゴット17に比較して、一方側(ギヤユニット12に接近する側)に位置するスピゴット17では、よりゴムジョイント18の取付スペースを確保し難くなる。そこで、ギヤユニット12の一方側に位置するスピゴット17の軸線C2の偏芯量Offを、ギヤユニット12の他方側に位置するスピゴット17の軸線C2の偏芯量Offよりも大きく設定してもよい。このように、ギヤユニット12のオフセット状態に応じて両側に位置するスピゴット17の軸線C2の偏芯量Offを不均等にすれば、各スピゴット17の周辺に取付スペースをより確実に確保することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 電子制御スロットル装置
2 第1スロットルボデー
3 第2スロットルボデー
#1〜5#4 吸気通路
8 スロットルシャフト
10 スロットルバルブ
12 ギヤユニット
13 モータ
14 ギヤ列
17 スピゴット
18 ゴムジョイント(ジョイント部材)
1,C2 軸線
Off 偏芯量
図1
図2
図3
図4
図5
図6