(54)【発明の名称】フォノニック・メタマテリアル・デバイス、及び、フォノニック・デバイスにおける弾性的及び/または音響的なバンドギャップの周波数を減衰するプロセス
【文献】
A. -C. Hladky-Hennion, et al.,Recent Advances in the Negative Refraction of Longitudinal Waves in an Elastic Phononic Crystal,2011 IEEE International Ultrasonics Symposium Proceedings,米国,IEEE,2012年 9月 5日,pp.1316-1319,URL,http://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=6293351
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分散相の充填割合(ff)は、前記周期的に反復する熱可塑性樹脂の複数の分域の内で隣接する分域同士の間に前記エラストマの内接体積をもたらすべく構成される、請求項4に記載のデバイス。
前記分散相の充填割合(ff)は、前記周期的に反復する複数の分域の内で隣接する分域同士の間に前記エラストマの内接体積をもたらすべく構成される、請求項8に記載のデバイス。
前記エラストマは、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレン・ブタジエン・ゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、ケイ素含有エラストマ、ポリウレタン、それらの独立気泡もしくは連続気泡発泡体の内の少なくとも一種類である、請求項1に記載のデバイス。
前記熱可塑性樹脂は、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリオキシフェニレン(POP)、ポリスルホン、ポリスチレン(PS)、ポリアリールエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、アセタール、ポリイミド、ポリアリーレンスルフィド、または、それらの共重合体の内の少なくとも一種類である、請求項1に記載のデバイス。
【背景技術】
【0002】
フォノニック・メタマテリアルによれば、種々の媒体において、(吸収及び反射を含む)減衰から、結合、貫通、負の屈折、及び、焦点合わせに至るまで、弾性波及び音響波の両方の操作が可能とされる。特に、固体を通るベクトル的な機械的振動、または、空気中もしくは水中における如き媒体内でのスカラー的な音響的振動の如き振動の減衰は、斯かる振動の存在が、限定的なものとしてで無く、車両の如き、問題となるデバイスまたは構成体の意図された性能に影響するという用途に対し、技術的に重要である。これの別の例は、音響的な補聴器における高周波(>2KHz)の音の減衰である。
【0003】
概略的に、音響材料は、音に対するそれらの効果に従って分類され得る。遮音材料は、固体材料(換言すると、弾性波)とは対照的に、空気の如き流体媒体を通して伝搬する音波を遮り且つ反射し得る音響材料である。遮音材は典型的に、例えば、レンガ及びコンクリートなどの、大きな表面密度を有する材料である。
【0004】
吸音材料は典型的に、空中の音波が当該音響材料内へと伝搬し得、該音波の機械的もしくは振動的なエネルギが、該エネルギを当該材料内で摩擦により熱的エネルギへと変換することにより低減される如き、多孔質の音響材料である。吸音材料の例としては、連続気泡式発泡プラスチック、ガラス繊維、毛布などが挙げられる。
【0005】
同様に、振動緩和材料は、空気とは対照的に固体材料を通り伝搬する音波を捕捉し得る音響材料である。音波の機械的もしくは振動的なエネルギは、音のエネルギを該緩和材料の変形に依り熱的エネルギへと変換することにより低減される。振動緩和材料は典型的に、固体材料の表面に対して直接的に装着される。振動緩和材料の例としては、ゴム、プラスチック、歴青質もしくは装荷質のエチレン酢酸ビニル(EVA)材料などが挙げられる。
【0006】
弾性的なPCに関する殆どの研究は、完全な及び/または部分的なフォノニック・バンドギャップの特定、縦振動及び横振動の伝搬の方向の制御、及び、音響信号間の位相関係の減衰に対して、焦点を合わせてきた。他の研究では、フォノニック構造において伝搬のバルクモードを改変する上で剛体回転が演ずる役割(ミー散乱の結果)が考察された。回転共鳴モードは、ブラッグ・ギャップと強く相互作用し、非常に広範である全体的な音響的バンドギャップをもたらし得る。2次元的(2D)な固体/固体PCにおける回転共鳴の基礎となる物理的性質の理解を提供するために、有限サイズの複数の質量と、無質量の複数のスプリングとで構成された1次元(1D)の集中化モデルが更に使用され得る。
【0007】
弾性の連続体理論はコッセラ兄弟により確立され、該理論は、古典的な弾性理論において使用された標準的な並進の自由度に加え、個々の要素の回転の自由度を考慮した。コッセラ(Cosserat)のモデルにおいて、各材料要素は、6つの自由度、すなわち、(xyz方向における)並進に対する3つの自由度、及び、回転(ピッチ、ヨー及びロール)に対する3つの自由度を有する。上記理論は、トルクに対し、古典的な弾性の応力テンソルが力に対して演ずるのと同一の役割を遂行する偶応力テンソル(回転波及び剪断波の結合から生ずる成分)を導入する。一実施形態において、コッセラの連続体の弾性理論は、回転の自由度(例えば回転波モード)が剪断波の拡散を強く改変し得ることを予測すべく使用され得る。3次元(3D)の粒状のPC、すなわち、球状の弾性粒子の事前圧縮された規則的な配置物から成る構造においては、回転弾性波の特性記述が存在する。これらにおいては、上記PCの各要素間の接続を表すために、ヘルツ−ミンドリンの接触モデルが使用され得る。
【0008】
関連する見地において、車両の本体構造は、車両の操作性と、衝撃に耐える能力とを高めるために、大きな剛性を以て設計される。車両本体構造の剛性がその様に増大されるので、該本体構造を通るノイズ及び振動の伝達度も同様に増大される。振動の伝達度を最小限度に抑えるために、典型的には、振動及びノイズが最も行き渡り、車両の構成要素の性能と、乗員に対する該構成要素の相互作用とに影響し易いという領域には、振動緩和材料及び/または音響減衰材料の薄寸体が載置される。この手法は成果が限られたものとなり、ノイズの管理は、依然として大きな問題のままである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、媒体を通して伝搬する機械的振動の減衰ならびに音からの音響的振動の遮断に適したフォノニック・デバイス、及び、弾性的及び/または音響的なバンドギャップ周波数を減衰するプロセスとしての有用性を有している。
【0018】
別の均一な弾性的マトリクス材料の全体にわたり分散された一種類の材料から成る周期的に配置された弾性的散乱体から、発明的な複合構造が形成され、音響波及び弾性波の伝搬に強力に影響し得る。これらの、一般的にはフォノニック結晶(PC)と称される(自然には見られない特性を呈する材料を指す)複合メタマテリアルは、音響波及び弾性波の操作/制御に関する独特の特性を示すべく設計され得る。
【0019】
構造における横振動の存在により、球状粒子に対する回転の考察が必要とされる。上記構造における各粒子に対する回転の自由度によれば、個別的な回転モード、並びに、分散関係において結合された回転/並進モードが許容される。
【0020】
本明細書において、少なくとも一つの特定実施形態においては、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)の連続相マトリクスであって、その複数の構成要素の個別的な回転共鳴モードを呈するというマトリクスにおいて分散相を形成する複数の柱状のポリスチレン(PS)の散乱体から成る単位セルで構成された2DのPCが提供される。これらの回転波は、弾性バンド構造及び変位場の有限差分時間分域(FDTD)計算により特性記述される。驚くべきことに、上記計算は、上記PCのPS及びPDMS構成要素は、1次元解析による離散的なコッセラ格子モードにより記述され得る独特の周波数依存的な回転共鳴モードを有することを示す。長波長限界において、PS/PDMS製のPCは、物理的に実現可能なコッセラの連続体として説明される。別実施形態において、本明細書中に開示されたフォノニック・デバイス、及び、弾性的及び/または音響的なバンドギャップ周波数を減衰するプロセスは、散乱及び干渉の如き波の基本特性を利用し、“バンドギャップ”、すなわち、当該範囲内では波が構造を通して自由に伝搬し得ないという波長もしくは周波数の範囲を生成する。光子結晶(photonic crystal)におけるバンドギャップは、人工的に構造化された材料の屈折率の周期的変化により引き起こされ得る。フォノニック結晶においては、構造の密度及び/または弾性定数が周期的に変化する。これにより、上記結晶における音の速度が変化され、すると、このことは、フォノニック・バンドギャップの形成に繋がる。
【0021】
長波長限界において、上記PS/PDMS製のPCは、コッセラの連続体における回転の自由度の基礎におけるものと同様の横回転波をサポートし得る。これらの回転の自由度は、均質化されたPCにおいて効果的である非対称的な弾性係数に繋がる。これらのフォノニック材料は、材料の音響特性の設計及び制御において独特の可能性を提供し得る。例えば、固体中における音響的な変換において、非対称的な応力テンソル(すなわち、非対称的な弾性係数)を備えた材料における如き、非常に特殊な場合においては、不変性が達成され得る。故に、上記PS/PDMS製のPCの如き、ナノスケールのエラストマ/強靱ポリマの周期的構造の開発によれば、固有的に減衰された音響特性を備えた新規で効果的な媒体の開発が可能とされ得る。これらのフォノニック・デバイスは引き続き、大型の複合メタマテリアルの作製における弾性的もしくはコッセラ的な弾性マトリクスの役割を果たし得る。
【0022】
従って、一実施形態において、本明細書においては、マトリクス材料とインピーダンスが不整合である2次元的及び/または3次元的な格子を形成すべく周期的に反復する複数の熱可塑性樹脂から成る単位セルの分散相で構成されたエラストマの配列を含むフォノニック・メタマテリアル・デバイスであって、上記熱可塑性樹脂と上記エラストマ樹脂との間における縦方向音速(C
L)及び横方向音速(C
T)の比率が、夫々、約2.0以上及び約40.0以上であるというフォノニック・メタマテリアル・デバイスが提供される。マトリクスと分散分域との間で熱可塑性物質及び弾性的物質を逆にして、本明細書中に記述された緩和効果を達成することによっても、発明的なフォノニック・メタマテリアルが容易に形成されることは理解される。
【0023】
値の範囲が与えられた場合、その範囲は、該範囲の終点値だけでなく、該範囲の中間値も、該範囲内に明示的に含まれ且つ該範囲の最後の有効数字により変化する如く包含することが意図されることは理解されるべきである。一例として、記述された1〜4の範囲は、1〜2、1〜3、2〜4、3〜4、及び、1〜4を含むことが意図される。
【0024】
本明細書において、“ゴム”という語句と互換的に使用され得る“エラストマ”という語句は、外部力により変形されても自身の初期寸法に戻り得るポリマを指している。本明細書において使用されるポリマは、該ポリマ及び/またはポリマの組合せ物がASTM D1566の定義に一致するとき、エラストマと考えられる。ASTM D1566は、言及したことによりその全体が本明細書中に援用される。本明細書において使用される適切なエラストマとしては、5〜90のショアA硬度、及び、例えば、約100Mpa以下、特に10Mpa以下、または、1Mpa以下、更に詳細には0.9Mpa以下、または、約0.3〜0.9Mpaなどの、約500Mpa以下の弾性率(ヤング率)を有する熱可塑性エラストマが挙げられる。該エラストマは、選択的に、適切な可塑剤または発泡剤と混合されることで、更に圧縮可能とされ得る。本明細書において作用し得るエラストマ及び/またはゴムとしては、例示的に、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレン・ブタジエン・ゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、ケイ素含有エラストマ、ポリウレタン、及び、それらの独立気泡もしくは連続気泡発泡体、及び/または、それらの任意の組み合わせが挙げられる。本明細書中で用いられる如く、“ケイ素含有エラストマ”という語句は、ケイ素を含有すエラストマである。ケイ素含有エラストマの例は、ポリシロキサン;ポリシロキサン及びポリマのセグメントを含むブロック共重合体(例えばポリ(カーボネート−シロキサン));及び、ケイ素変性エラストマ;であり得る。代表的実施形態において、上記ケイ素含有エラストマは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0025】
本明細書中で用いられる如く、“樹脂”という語句は、本開示内容において使用されるに適した業界公知である任意の有機樹脂を指す。樹脂としては、とりわけ、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、及び、ポリマ性樹脂が挙げられる。本明細書中に記述された如き樹脂とは、全ての適切なポリマ、誘導体、溶媒和物、共重合体、及び、それらの混合物を包含することが意図される。熱可塑性樹脂として本明細書中で作用するポリマとしては、例示的に、ポリ(アリーレンエーテル);ポリスチレン;アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの、非水素化もしくは水素化されたブロック共重合体;ポリアミド;ポリイミド;ポリエーテル;ポリエーテルイミド;ポリオレフィン;及び、ポリエステル;が挙げられる。同様に考察されるのは、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリオキシフェニレン(POP)、ポリスルホン、ポリアリールエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、アセタール、ポリアリーレンスルフィド、または、上述の内の少なくとも一種類の共重合体である。
【0026】
一実施形態において、形成された格子が、例えば、3次元的なエラストマ・マトリクスの境界面の内の少なくとも2つの境界面間に延在するロッドを包含すべく周期的に反復する複数の単位セルによる2次元的(2D)であるとき、周期的に反復する熱可塑性樹脂の複数の単位セルは、柱状である。各柱状体は、円形、楕円形、または、n個の辺を有する多角形であって、例えば、四角形(n=4)、五角形(n=5)、六角形(n=6)など、nは3以上であるという多角形の断面形状を以て容易に形成される。同様に、別実施形態において、周期的に反復する複数の単位セルにより形成された格子が3次元的(3D)であるとき、周期的に反復する熱可塑性樹脂の複数の単位セルは、球状であるか、または、3次元多面体であり得る。分散分域に対する代表的な多面体形状としては、四面体、直方体、二十面体、または、それらの組み合わせが挙げられる。故に、本明細書中に記述された、反復する複数の単位セルにより形成された3次元的格子は、nは4以上として、n個の辺と、形成されたマトリクス材料の格子間空隙であって、フォノニック周波数を捕捉し得るという格子間空隙とを有する、任意の組合せであり得る。上記分散分域は、隣り合う分散分域同士は、マトリクス材料を通るフォノニック伝達を欠く直接接触を回避するという条件で、例えば、立方晶、最密充填六方晶、または、斜方晶の充填から成る充填配置で、容易に載置される。
【0027】
(分散相により占有された、2Dの原始的な周期的に反復する単位セルにおける面積割合を指す)充填割合(ff)は、熱可塑性のインピーダンス不整合の柱状体、または、他の分域形状の半径に反比例する。反復する単位セルを形成する個別分域の半径が小さいほど、充填割合は大きい。例えば、3.175mm((1/8)インチ)の直径を有する柱状ロッドに対し、方形格子に対する所望のffは0.72〜0.98であり得る一方、6.35mm(0.25インチ)の直径を有する柱状ロッドに対し、所望のffは0.67〜0.90であり得る。特定実施形態において、上記格子は、0.72以上の充填割合にて、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)中に分散されたポリスチレン(PS)の2D方形格子である。同様に、3次元的格子に関連して、(分散相により占有された、3Dの周期的に反復する単位セルにおける体積割合を指す)ffは、熱可塑性のインピーダンス不整合の球体の半径に反比例する。
【0028】
別実施形態において、本明細書中に記述された2DのPCメタマテリアルに対し、充填割合は、不整合インピーダンスを有する熱可塑性樹脂の各ロッドを表す隣接する各円の間に内接する領域を実現する様に構成される(例えば、
図1dの差込み図を参照)。上記メタマテリアルにおいて、上記内接領域は、内接領域と上記ロッドの長さとの積に等しい体積を表すことを理解すべきである。同様に、本明細書中に記述された如き3DのPCメタマテリアルに対し、充填割合(ff)は、隣接する球体同士の間に内接体積を実現する様に構成される。
【0029】
更なる別実施形態において、上述のフォノニック・デバイスは、本明細書中に記述されたプロセスにおいて使用されることで、振動を緩和する。フォノニック・デバイスにおける弾性的及び/または音響的なバンドギャップの周波数を減衰すべく開示された上記プロセスは、2次元的格子を形成すべく周期的に反復する複数の熱可塑性樹脂の柱状分域の分散相を含むエラストマ・マトリクスを有することで、熱可塑性樹脂分域とエラストマとの間における縦方向音速(C
L)及び横方向音速(C
T)の比率が、夫々、2.0以上及び40.0以上であることを達成するというフォノニック・デバイスを配備する段階を含む。上記分散相の充填割合(ff)及び上記柱状分域半径を変更することにより、弾性的及び/または音響的なバンドギャップの周波数が減衰される。上記分散相の充填割合(ff)は、柱状分域半径に逆比例すると共に、隣接する熱可塑性樹脂の柱状ロッド間にエラストマの内接体積を形成すべく構成されることを銘記されたい。
【0030】
別実施形態において、本明細書においては、フォノニック・デバイスにおいて弾性的及び/または音響的なバンドギャップの周波数を減衰するプロセスであって、3次元的格子を形成すべく周期的に反復する複数の熱可塑性樹脂の球状または多面体状の分域の分散相を含むエラストマ・マトリクスで構成されたフォノニック・デバイスであって、熱可塑性樹脂分域とエラストマとの間における縦方向音速(C
L)及び横方向音速(C
T)の比率が、夫々、約2.0以上及び約40以上であるというフォノニック・デバイスを配備する段階を含むというプロセスが提供される。上記分散相の充填割合(ff)、及び、分域半径を変更することにより、上記弾性的及び/または音響的なバンドギャップの周波数が減衰される。
【0031】
本明細書中で用いられる如く、“減衰する”という語句、及び、(例えば、“調節する”などの)該語句の変化形は、バンドギャップを処理操作する(換言すると、測定可能な量だけ、増大もしくは減少する)ことにより、関心対象となる所望の周波数バンドにおいて、文脈に依存して“吸収”及び/または“遮断”及び/または“反射”及び/または“緩和”及び/または“隔離”する役割を果たすプロセスを指しており、所望の効果を生み出す単一のメカニズムを意味すると厳密に解釈されるべきではない。
【0032】
ヤング率は、格子における弾性振動に影響を与え得る。従って、発明的なプロセスは、上記エラストマのヤング率を制御することにより促進される。エラストマのヤング率の改変は、例えば、該エラストマを架橋させることにより行われ得る。本明細書中に記述された方法及びデバイスの目的に対して有用な架橋剤は、例えば、例えば約5〜15、または、8〜12などの、約5〜20の重合度(n)を有する終端ポリ(ジメチルシロキサン)オリゴマであり得る。他のものは、例えば、メチルトリクロロシラン;トリメチルシリル終端ポリ(水素メチルシロキサン);または、上述の内の少なくとも一種類を備える架橋剤組合せ物であり得る。
【0033】
本明細書中に記述された方法を用いて形成されたデバイスは、例えば、音響的振動緩和材料;音響吸収材料;振動緩和材料;音響的ミラー;シーラント;絶縁体;結合器;薄膜;厚板;フォノニック熱電対;導波路;または、上述の内の少なくとも一種類を含むフォノニック・デバイス;であり得る。
【0034】
本明細書中に記述されたフォノニック結晶デバイスは、例示的に、集積回路業界により開発されたマイクロ加工及び光学リソグラフ技術などの、種々の習用の技術を用いて形成され得る。これに加え、電子ビーム、及び、焦点調整されたイオンビーム・リソグラフィを用いることにより、ナノスケールのフォノニック結晶が作製され得る。同様に、本明細書中に記述された如き、室温を中心としたフォノニック結晶デバイスは、イオン注入、拡散、及び、自己組織化の如き技術により形成され得る。
【0035】
特定実施形態において、本明細書中に開示された、PDMSのホスト・マトリクス中におけるPSの柱状含有物の方形格子で構成された2DのPCの振動特性は、FDTD技術を用いてモデル化される。計算されたバンド構造は、回転波の存在を示す。これらの波の存在は、柔軟なPDMSの横方向音速と、堅固なPSのそれとの間における大きな対比により、許容され得る。これらの回転モードは、2つの最低回転バンドに対するガンマ点にて特性記述される。更に、上記最低周波数においては、PDMS及びPSの各領域が異相の振動性回転を受けるというモードが特定され得る。次の最低周波数は、PDMS及びPSの各領域の同相の振動性回転を呈する。これらのモードを解析するために、1Dの離散的なコッセラ格子モデルが適用される。この格子モデルは、並進及び回転の自由度を取入れ得る。後者は、ガンマ(Γ)点において、FDTD計算において観測されるものと匹敵する、有限の周波数を備えた回転モードに繋がり得る。
【0036】
長波長限界において、上記PS/PDMS製のPCは、コッセラの連続体における回転の自由度の基礎におけるものと同様の横回転波をサポートし得る。これらの回転の自由度は、均質化されたPCにおいて効果的である非対称的な弾性係数に繋がる。これらのフォノニック材料は、材料の音響特性の設計及び制御において独特の可能性を提供し得る。例えば、固体中における音響的な変換において、非対称的な応力テンソル(すなわち、非対称的な弾性係数)を備えた材料における如き、非常に特殊な場合においては、不変性が達成され得る。故に、上記PS/PDMS製のPCの如き、ナノスケールのエラストマ/強靱ポリマの周期的構造の開発によれば、固有的に減衰された音響特性を備えた新規で効果的な媒体の開発が可能とされ得る。これらのフォノニック・デバイスは引き続き、大型の複合メタマテリアルの作製における弾性的もしくはコッセラ的な弾性マトリクスの役割を果たし得る。
【0037】
本明細書における“一つの(a)”、“一つの(an)”、及び、“その(the)”という語句は、量の限定を表さず、且つ、本明細書において別様に示され、または、文脈により明確に相反されるのでなければ、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書中で用いられる如く“単一もしくは複数の)”という表現(添え字(s))は、該表現が修飾する語句の単数形及び複数形の両方を包含することで、その語句の一つ以上を包含することが意図される(例えば、単一もしくは複数の薄膜とは、一枚以上の薄膜を包含する)。存在するときに、本明細書の全体にわたる“一実施形態”、“別実施形態”、“実施形態”などの言及は、その実施形態に関して記述された(例えば、特徴、構造、及び/または、特性などの)特定の要素が、本明細書中に記述された少なくとも一つの実施形態に含まれ、且つ、他の実施形態においては存在してもしなくても良いことを意味する。これに加え、記述された各要素は、種々の実施形態において任意の適切な様式で組み合わされ得ることが理解されるべきである。
【0038】
記述された、フォノニック結晶デバイス、及び、フォノニック結晶におけるバンドギャップの周波数を減衰する方法は、以下の非限定的な例により更に例証される。
【0039】
具体例
例1:FDTDバンド構造及び変位場
FDTDモデル及びプロセス
関心対象となるPCは、PDMSの均質な弾性マトリクス中に埋設されたPSの複数の柱状ロッドの方形配列で構成される。各材料のこの組み合わせは、回転波に対応するモードを備えた独特の弾性バンド構造を提供する。FDTD計算において使用されたPS及びPDMSに対する弾性パラメータは、以下に列挙される:ρ,
PS=1,050kg/m
3、C
L,
PS=2,350m/s、C
T,
PS、ρ,
PDMS=965kg/m
3、C
L,
PDMS=1,076m/s、及び、C
T,
PDMS=27.6m/s、その場合、ρ、C
L及びC
Tは、夫々、密度、縦方向音速、及び、横方向音速を表す。異なる充填割合(ff)の数種のPCが考察され、その場合、ffは、PS/PDMS製のPCに対する2Dの原始的な単位セルにおけるPSの面積割合を表す。上記FDTD法は、本明細書において考察される固体/固体複合体に対するバンド構造及び変位場を生成する有効な手段である。
【0040】
上記FDTD法においては、2DのPCの反復可能な単位セルを記述するために、複数のメッシュ点から成る方形グリッドで構成された離散的なシミュレーション空間が構築された。各メッシュ点は、密度、及び、一群の弾性パラメータ値(C
11、C
44及びC
12)と一致し、その場合、C
11=ρC
L2、C
44=ρC
T2、及び、C
12=C
11−2C
44である。PCから成る反復可能な単位セルにおける異なる材料間の境界の幾何学的な特徴は、x及びy方向における数百個のノードで構成されたFDTDグリッドにより、良好に解像される。各グリッド点の変位は、弾性波方程式に従う時間にて展開する。上記FDTDメッシュにおける各ノードの動態は、古典的な弾性理論に一致する(例えば、各グリッド点は、並進の自由度のみを有すると考えられる)。上記弾性波方程式は、空間的及び時間的な導関数が有限差分により近似されるとき、離散的なFDTDメッシュと互換的である。全ての空間方向において無限であるPCをシミュレートすべく、周期的な境界条件が実現される。これらの境界条件によれば、上記弾性波方程式は、ブロッホ(Bloch)の定理を満足する形態で書かれ得る。上記FDTD法により弾性バンド構造を表現するために、先ず波動ベクトルが特定される。この波動ベクトルに対し、上記FDTDグリッドに対して課された初期条件は、メッシュにおける特定のノードに対する変位におけるデルタ関数である。この摂動は、無限のPC内における全ての基準モードの振動を励起する。空間的な導関数から、応力テンソルの発散が計算され、これにより、時間的な次の段階における変位場の予測が許容される。上記FDTDメッシュにおける数個の異なる点に対する変位の時間的進展に対するデータは、シミュレーションの全長に対して記憶される。この離散的なデータ群に対して高速フーリエ変換を適用すると、各ピークが、特定された波動ベクトルに対する固有周波数と一致する、というスペクトルが明らかとなる。この計算を、上記PCの既約ブリュアン域における高対称方向に沿う数個の異なる波動ベクトルに対して実施すると、上記複合体に対する弾性バンド構造が生成される。FDTDシミュレーションは、aを上記PCの格子定数であるとして、離散的な時間段階(Δt=0.003a/C
L,
PDMS)及び離散的な空間段階Δx=Δy=a/150を以て、2
21回にわたり実行される。
【0041】
結果
図1は、4つの異なるff値((a)ff=0.5、(b)ff=0.6、(c)ff=0.7、(d)ff=0.8)において上記PS/PDMS製のPCに対する既約ブリュアン域における高対称方向に沿う分散曲線を示している。ff=0.8に対し、PSの柱状ロッドの半径は、上記PCの格子パラメータの半分より大きい。この場合、隣り合う単位セルからのPSの柱状ロッド同士の間には僅かな重なり合いが許容され、隔離されたPDMSのポケットが効果的に生成される((d)の差込み図を参照)。
図1における全てのバンド構造の垂直軸心は、Ω
0=va/C
Lとした換算周波数単位で表現されている。此処で、C
L値は、PDMSに対するそれである(1,076.5m/s)。
【0042】
図1aから
図1dにおいては、Γ点から生ずる縦及び横のバンドが観察される。
図1aから
図1cに示された如く、縦バンドの勾配は、横バンドと比較して相当に大きい。このことは、PS/PDMS製のPCにおいて、縦振動に対する実効音速は横波に対するそれよりも大きいことを明示している。但し、
図1dに示された如く、ホストの(換言すると、連続的な)マトリクス材料はPDMSからPSへと急激に切換わり、且つ、横バンドの勾配は劇的に増大する。
図1dはまた、数個のフラットバンドの出現も示している。これらのフラットバンドは、独特であり、且つ、PDMSポケットにおける振動のローカル・モードを意味している。これらの共鳴の周波数は、PDMSポケットのサイズ、ならびに、PDMSのC
T値に依存する。これらのフラットバンドの周波数は、Rを、PDMSポケットの内側に内接し得る最大の円の半径に等しいものとして、1/Rの増加関数、及び、C
T,
PDMSの線形関数であることが見出される。PDMSポケットのC
L値を変化させても、分散図におけるこれらのフラットバンド・モードの位置は変わらないことが確認され、これらの共鳴は剪断に関するものとされた。
図2は、
図1dにおける最初の4つのフラットバンド(Γ点におけるモードd1、d2、d3及びd4)に対する特定の時間的なスナップショットにおけるFDTDグリッドにおける変位場の計算を示している。
【0043】
これの様なベクトル場は、Ω
0(関心対象となる周波数)にて振動する点源によりFDTDメッシュを摂動させ、且つ、選択された波動ベクトルk
0(関心対象となる波動ベクトル)に対して運動の各方程式を統合することにより、生成され得る。PDMSとPSとの間の境界に沿う各ノードの変位ベクトル値は、非常に小さい。PSの各柱状ロッドが重なり合わないとき(例えば、
図1における0.5、0.6及び0.7のff値)と同様に、PS材料が自由に回転することが許容されたなら、これらの局所的共鳴と、他のモードの振動(特に剪断モード)との間の‘混合’が生じ得る。この概念は、
図1a、
図1b及び
図1cにおける特定モードの振動を識別することにより説明される。
【0044】
以下においては、
図1a、
図1b及び
図1cにおけるΓ点における自身の原点からの横バンド、すなわち、第1ブリュアン域境界におけるこのモードの第1折り目(X点、例えば
図7を参照)が特定される。
図1a、
図1b及び
図1cにおけるΓ点でのモードa1、b1及びc1は、夫々、PDMSマトリクス、ならびに、PS包含物における回転を示す。
図3において、モードa1は、原始的な単位セルにおける変位ベクトル場のFDTD計算により明示される。モードb1及びc1に対しては、同様の変位場が明らかである。
【0045】
図3の左側の図は、空間内で周期的に反復された9本のPS円筒状ロッドで構成されたスーパーセルを示している。
図3の右側は、左側の拡大区画、すなわち、中央の単位セルを示している。左側のプロット図における点A、B、C及びDは、材料塊がその回りで回転する中心点をマーク付けしている。この時間的なスナップショットに対し、材料(PDMS)は点A、B、C及びDの回りで反時計方向様式で回転するが、点Eにおいて材料(PS)は時計方向に回転する。上記PCのPS及びPDMSの領域において観察された振動性回転は、πの値だけ位相シフトされる。
図4は、
図1aのΓ点におけるa1の直上のモード(モードa2)をFDTDにより示している。
図1b及び
図1cにおけるモードb2及びc2に対しては、夫々、同様の変位場が明らかである。
図4の左側のプロット図は、空間内で周期的に反復された9本のPS円筒状ロッドで構成されたスーパーセルを示している。
図4の右側のプロット図は、左側のプロット図の拡大部分を示している。
【0046】
左側のプロット図における点A、B、C、D及びEは、材料塊がその回りで回転する中心点をマーク付けしている。PDMS材料は、点A、B、C及びDの回りで時計方向様式で回転することが観察された。興味深いことに、点Eにおいて、PS材料は同一方向に回転する。上記PCのPS及びPDMSの領域において観察された振動性回転は同相である。
図3及び
図4に見られる回転の原点は、コッセラの弾性理論に基礎を置く現象学的な根拠による単純モデルを導入することにより説明される。
【0047】
例2:離散的なコッセラ格子モデル
単原子格子及び二原子格子
複数の調和振動スプリングにより接続された矩形要素(コッセラ要素)の無限鎖から成る1Dの離散的なコッセラ格子モデルが使用された。上記モデルにおける各要素は、2つの並進の自由度、及び、1つの回転の自由度(xy平面に対して直交する軸心の回りの回転)を有すると考えられる。
図5aの左側及び
図5bの頂部は、夫々、単原子及び二原子のコッセラ格子モデルに対する反復可能な単位セルを示している。
図5aは周期性(h)を示し、且つ、
図5bは周期性(2h)を示している。
【0048】
各コッセラ要素の異なる部分を、3つの異なる調和振動スプリング(バネ定数k
0、k
1及びk
2)が接続する。
図5aにおけるコッセラ要素は、質量(m)及び慣性モーメント(I)を有している。二原子の単位セルを構成するコッセラ要素は質量(m
1及びm
2)、及び、慣性モーメント(I
1及びI
2)を有している。
図5aの右側は、1Dの単原子鎖における第n番目の単位セルに対する表記法を示している。第n番目の単位セルにおけるコッセラ要素は、x変位(u
n)、y変位(v
n)、及び、回転成分(φ
n)を有している。u
n及びv
nは夫々、縦振動及び横振動に関連する変位を表す。単位セル(n)及び(n+1)におけるコッセラ要素の弾性接続に関連する位置エネルギは、以下の如く記述される:
【数1】
従って、上記単原子格子の第n番目の単位セルにおけるコッセラ要素に対する運動の方程式は、以下の如く記述される:
【数2】
【数3】
【数4】
【0049】
式(3)及び式(4)は、上記単原子格子における横振動と基本回転との間の結合を示しており、同時に解かれねばならない。これらの離散的な運動方程式に対する解は、次式の形態であると考えられる:
【数5】
【0050】
上記二原子格子における第n番目の単位セル(
図5bの底部)は、2つのコッセラ要素を含む。u
n及びb
nは、縦振動に関連する変位を表し、v
n及びp
nは横振動に関連付けられた変位を表し、且つ、φ
n及びθ
nは回転を表す。上記二原子格子の第n番目の単位セルにおける各コッセラ要素に対する運動方程式は、式(2)、(3)及び(4)を二原子格子構成に対して拡張することで見出され得る:
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
【0051】
単原子の場合と同様に、二原子の場合に対する運動方程式は、剪断運動及び回転運動の間における結合を示す。式(5)に示されたのと同様の形態の平面波が、二原子格子に対する分散曲線を解くものと思われる。
【0052】
結果
図6aには、単原子コッセラ格子に対する分散曲線が示される。長さパラメータ(a、h)、ならびに、スプリング剛性パラメータk
0、k
1及びk
2に対しては、任意の値が選択される。
【0053】
図6aには、3つのバンドが描かれる。2つのバンドはΓ点からゼロ周波数にて始まるが、第3のバンドは、有限の周波数値から開始する。“L”によりラベル表示されたバンドは、式(2)に関連する分散曲線である。これは、純粋に縦モードである。他の各モードは、単原子格子において結合された横振動/回転振動を表す混合モードである。
図6aにおいては、2つのモード(a1及びa2)が強調されている。回転波の解は、これらのモードに対するものと考えられる。モードa1(k=π/h)に対し、時間依存の回転波の解は、式(12)として記述される。モードa2(k=0)に対し、回転波に対する解は式(13)により表される:
【数12】
【数13】
【0054】
もし、式(12)と、単位セル(n-1)及び(n+1)に配置されたコッセラ要素とを考慮するなら、以下の関係が記述され得る:
【数14】
【数15】
【0055】
式(14)及び(15)は、単位セル(n)において観測された振動性回転と、(n)に隣接する単位セル、特に、単位セル(n-1)及び(n+1)において観測された振動性回転との間におけるπの位相シフトを示している。所定のコッセラ要素、及び、その直近の隣接物に対し、モードa1は、それらはπラジアンだけ位相がずれて振動することを示す。もし、式(13)(モードa2)と、単位セル(n)に隣接するコッセラ要素(単位セル(n-1)及び(n+1)における要素)を考慮するなら、単原子鎖における全ての振動は同相であることは明らかである。
【0056】
モードa1及びa2の知見を以て、二原子コセラート格子を参照するものとする。もし、二原子格子に対する反復可能な単位セルにおける各コッセラ要素が、上記の単原子の場合に使用されたものと等しくされるなら、結果的な単位セルは、2つの構成要素から成るスーパーセルである。このスーパーセルに対するバンド構造は、
図6aを考慮し、且つ、第1ブリュアン域境界((π/2h)及び(−π/2h))にて各バンドを内側に折り重ねたものと同一である。その様にする上で、
図6aからのモードa1は、それが今や
図6bのk=0に位置される如く移動される。
図6aからのモードa2は、その同一箇所に留まる。
図6bに示されたバンド構造は、
図1aにおけるΓM方向に沿う回転波を記述するための強力なモデルである。
図6bのモードa1は、
図1aのモードa1に対して観測された振動性回転と類似している。
図6bのモードa2は、
図1aのモードa2に対して観測された回転と類似している。
【0057】
本明細書において、一実施形態においては、
フォノニック・デバイスにおける弾性的及び/または音響的なバンドギャップの周波数を減衰する方法であって、
3次元的な格子を形成すべく周期的に反復する複数の熱可塑性樹脂から成る球状の単位セルの分散相を備えるエラストマの配列を備えるフォノニック・デバイスを配備する段階であって、
上記熱可塑性樹脂と上記エラストマとの間における縦方向音速(C
L)及び横方向音速(C
T)の比率が、夫々、約2.0以上及び約40以上である、
という段階と;
上記分散相の分画濃度と、球体の半径とを変更する段階であって、
上記分散相の分画濃度は上記柱状ロッドの半径に反比例し、且つ、該分画濃度は、隣接する熱可塑性樹脂の球体同士の間にエラストマの内接体積を形成すべく構成されることで、上記弾性的及び/または音響的なバンドギャップの周波数を減衰し、
(i)上記格子は、2次元的であると共に、該格子を形成すべく周期的に反復する複数の熱可塑性樹脂の単位セルは(例えばロッドなどの)柱状であり、(ii)上記格子は矩形及び/または六角形であり、
(iii)上記分散相の充填割合(ff)は、上記柱状ロッドの半径に反比例し、(iv)隣接する熱可塑性樹脂の柱状ロッド同士の間に上記エラストマの内接体積をもたらすべく構成され、
(v)上記格子は3次元的であると共に、該格子を形成すべく周期的に反復する複数の熱可塑性樹脂の単位セルは球状であり、(vi)上記格子は立方晶、及び/または、最密六方晶の配列であり、(vii)上記分散相の充填割合(ff)は、上記球体の半径に反比例し、(viii)隣接する熱可塑性樹脂の球体同士の間に上記エラストマの内接体積をもたらすべく構成され、
(ix)上記エラストマは、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレン・ブタジエン・ゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、ケイ素含有エラストマ、ポリウレタン、及び、それらの独立気泡もしくは連続気泡発泡体、及び/または、それらの任意の組み合わせであり、(x)上記熱可塑性樹脂は、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリオキシフェニレン(POP)、ポリスルホン、ポリスチレン(PS)、ポリアリールエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、アセタール、ポリイミド、ポリアリーレンスルフィド、または、上述の内の少なくとも一種類の共重合体であり、
(xi)上記エラストマはポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)であり、且つ、上記熱可塑性樹脂はポリ(スチレン)(PS)であり、
(xii)上記分散相の充填割合(ff)は0.72以上であり、且つ、
(xiii)上記デバイスは、音響的振動緩和材料;音響吸収材料;振動緩和材料;音響的ミラー;シーラント;絶縁体;結合器;薄膜;厚板;熱電対;導波路;または、上述の内の少なくとも一種類を含むフォノニック・デバイス;である、
という段階と;
を有する方法が提供される。
【0058】
本明細書において、別実施形態においては、
フォノニック・デバイスにおける弾性的及び/または音響的なバンドギャップの周波数を減衰するプロセスであって、該プロセスは、
2次元的な格子を形成すべく周期的に反復する複数の熱可塑性樹脂から成る柱状分域の分散相を含有するエラストマのマトリクスで構成されたフォノニック・デバイスを配備する段階を含み、
上記熱可塑性樹脂の柱状分域と上記エラストマとの間における縦方向音速(C
L)及び横方向音速(C
T)の比率が、夫々、2.0以上及び40.0以上であり、
上記2次元的格子は矩形もしくは六角形であり、
(xv)上記エラストマは、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレン・ブタジエン・ゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、ケイ素含有エラストマ、ポリウレタン、及び、それらの独立気泡もしくは連続気泡発泡体、及び/または、それらの任意の組み合わせであり、(xvi)上記熱可塑性樹脂は、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリオキシフェニレン(POP)、ポリスルホン、ポリスチレン(PS)、ポリアリールエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、アセタール、ポリイミド、ポリアリーレンスルフィド、または、上述の内の少なくとも一種類の共重合体であり、
(xvii)該プロセスは、上記エラストマの弾性率(ヤング率)を改変する段階を更に備え、
(xviii)上記エラストマはポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)であり、且つ、上記熱可塑性樹脂はポリ(スチレン)(PS)であり、且つ、
(xix)上記分散相の充填割合(ff)は0.72以上である、
というプロセスが提供される。
【0059】
本明細書において、更なる別実施形態においては、
フォノニック・デバイスにおける弾性的及び/または音響的なバンドギャップの周波数を減衰するプロセスであって、該プロセスは、
3次元的格子を形成すべく周期的に反復する複数の熱可塑性樹脂から成る球状または多面体状の分域の分散相を含有するエラストマ・マトリクスで構成されたフォノニック・デバイスを配備する段階を含み、
上記熱可塑性樹脂と上記エラストマとの間における縦方向音速(C
L)及び横方向音速(C
T)の比率が、夫々、2.0以上及び40以上であり、
該プロセスにおいて、
(xix)上記3次元的格子の充填は、立方晶、最密充填六方晶、または、斜方晶であり、
(xx)上記エラストマは、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレン・ブタジエン・ゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、ケイ素含有エラストマ、ポリウレタン、及び、それらの独立気泡もしくは連続気泡発泡体、及び/または、それらの任意の組み合わせであり、(xxi)上記熱可塑性樹脂は、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリオキシフェニレン(POP)、ポリスルホン、ポリスチレン(PS)、ポリアリールエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、アセタール、ポリイミド、ポリアリーレンスルフィド、または、上述の内の少なくとも一種類の共重合体であり、
(xxii)該プロセスは、幾つかの実施形態において、上記エラストマの弾性率(ヤング率)を改変する段階を伴い、
(xxiii)上記エラストマはポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)であり、且つ、上記熱可塑性樹脂はポリ(スチレン)(PS)である、
というプロセスが提供される。
【0060】
特定実施形態が記述されてきたが、出願人または他の当業者であれば、現在において想定されない又はされないかも知れない代替例、改変例、変更例、改良例、及び、実質的な均等物が想起され得よう。従って、出願された添付の各請求項、及び、補正されていることもある各請求項は、斯かる代替例、改変例、変更例、改良例、及び、実質的な均等物の全てを包含することが意図される。