(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記搬送部による記録紙の搬送中に、該記録紙の定着面における前記各パッチ画像に対して前記摺擦ローラーを当接及び離脱させる移動機構を更に備える請求項1に記載の画像形成装置。
前記制御部は、前記定着部によって一つのパッチ画像が定着される毎に前記搬送部に記録紙の搬送を停止させ、前記定着部の定着温度を変更した後に、後続のパッチ画像を前記定着部により定着させる請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像形成装置の消費電力においては、定着プロセスによる消費電力が占める割合が大きい。このため、定着プロセスでの消費電力を削減するために種々の方策が実施されている。定着システムとしてIH定着等の効率的にトナーと記録媒体(記録紙)に熱エネルギーを供給するものが検討されているが、少なくともトナーが適切に溶融して均一な色味を得られる熱量を与える必要がある。
【0006】
しかし、適切な定着のためにトナー担持体である記録媒体へ供給が必要な熱量は、記録媒体の熱容量によって異なる。使用される記録媒体は、無数の種類があるため、坪量の幅を定めて記録媒体をグループ化し、そのグループごとに、与える熱量(定着温度)を定めている。そのため、問題のない画像定着を多種類の記録媒体に対して達成するために、与える熱量、すなわち、定着の設定温度が高めに設定されている場合が多い。このため、定着に要する消費電力の低減を図ることが期待される。
【0007】
また、上記特許文献1及び特許文献2に開示された技術を用いて適正な定着温度を決定しようとする場合、記録媒体を何枚も使用して定着温度をさまざまに変えて定着性を評価する必要があり、定着性評価のために記録媒体が浪費されるという問題がある。また、適正な定着温度を見つけるまでに多くの時間を要してしまうという問題もある。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、定着性評価に使用する記録媒体を極力少なくし、かつ、短時間で記録媒体の種別毎に適正な定着温度を決定可能とし、これにより定着に要する消費電力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、記録紙を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される記録紙にトナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって記録紙に形成されたトナー像を熱圧着により該記録紙に定着させる定着部と、
前記画像形成部により、1枚の記録紙上に、当該記録紙の搬送方向に予め定められた間隔でパッチ画像を複数形成させ、該形成されたパッチ画像毎に前記定着部の定着温度を変えて該パッチ画像を該記録紙に定着させる制御部と、
前記定着部による定着後の前記各パッチ画像部分を摺擦又は非摺擦する摺擦ローラーと、
前記摺擦ローラーを通過後の前記記録紙における前記各パッチ画像の画像濃度を検出する画像濃度検出部と、
前記定着後の前記各パッチ画像における前記摺擦ローラーによって摺擦される部分及び摺擦されない部分について前記画像濃度検出部によって検出される各画像濃度の比が、予め定められた基準値に収まっているかを判定する判定部と、
前記判定部により前記各画像濃度の比が前記予め定められた基準値に収まっていると判定された前記パッチ画像の定着に用いた定着温度
のうち最も低い温度を、前記画像形成部による通常の画像形成時に用いる定着温度として設定する定着温度設定部と、を備え、
前記画像濃度検出部は、前記パッチ画像に対向する位置に、前記搬送方向に直交する方向に2個並設されており、
前記摺擦ローラーは、前記各パッチ画像において、前記画像濃度検出部の一方に対向する位置を摺擦し、前記画像濃度検出部の他方に対向する位置は摺擦しないものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、定着性評価に使用する記録媒体を極力少なくし、かつ、短時間で、記録媒体に適正な定着温度を決定することができる。これにより、画像形成装置での画像形成に用いられる各種の記録媒体毎に定着条件が適正化され、画像品質を向上・維持させつつ、記録媒体の種別毎に必要最低限の定着温度を設定して消費電力を適正化することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る画像処理装置について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構造を示す正面断面図である。
【0013】
本発明の一実施形態に係る画像形成装置1は、例えば、コピー機能、プリンター機能、スキャナー機能、及びファクシミリ機能のような複数の機能を兼ね備えた複合機である。画像形成装置1は、装置本体11に、操作部47、画像形成部12、定着部13、給紙部14、原稿給送部6、及び原稿読取部5等を備えて構成されている。
【0014】
操作部47は、画像形成装置1が実行可能な各種動作及び処理について操作者から画像形成動作実行指示や原稿読取動作実行指示等の指示を受け付ける。操作部47は、操作者への操作案内等を表示する表示部473を備えている。
【0015】
画像形成装置1が原稿読取動作を行う場合、原稿給送部6により給送されてくる原稿、又は原稿載置ガラス161に載置された原稿の画像を原稿読取部5が光学的に読み取り、画像データを生成する。原稿読取部5により生成された画像データは内蔵HDD又はネットワーク接続されたコンピューター等に保存される。
【0016】
画像形成装置1が画像形成動作を行う場合は、上記原稿読取動作により生成された画像データ、又はネットワーク接続されたコンピューターから受信した画像データ、又は内蔵HDDに記憶されている画像データ等に基づいて、画像形成部12が、給紙部14から給紙される記録媒体としての記録紙Pにトナー像を形成する。カラー印刷を行う場合、画像形成部12のマゼンタ用の画像形成ユニット12M、シアン用の画像形成ユニット12C、イエロー用の画像形成ユニット12Y、及びブラック用の画像形成ユニット12Bkは、それぞれに、上記画像データを構成するそれぞれの色成分からなる画像に基づいて、帯電、露光、及び現像の工程により感光体ドラム121上にトナー像を形成し、当該トナー像を一次転写ローラー126により中間転写ベルト125上に転写させる。
【0017】
中間転写ベルト125上に転写される上記各色のトナー画像は、転写タイミングを調整して中間転写ベルト125上で重ね合わされ、カラーのトナー像となる。二次転写ローラー210は、中間転写ベルト125の表面に形成された当該カラーのトナー像を、中間転写ベルト125を挟んで駆動ローラー125aとのニップ部Nにおいて、給紙部14から搬送路190を搬送されてきた記録紙Pに転写させる。この後、定着部13が、記録紙P上のトナー像を、熱圧着により記録紙Pに定着させる。定着処理の完了したカラー画像形成済みの記録紙Pは、排出トレイ151に排出される。
【0018】
給紙部14は、複数の給紙カセットを備える。制御部100(
図3)は、操作者による指示で指定されたサイズの記録紙が収容された給紙カセットのピックアップローラー145を回転駆動させて、各給紙カセットに収容されている記録紙Pを上記ニップ部Nに向けて搬送させる。
【0019】
なお、画像形成装置1において、両面印刷を行う場合は、画像形成部12より一方の面に画像が形成された記録紙Pを、排出ローラー対159にニップされた状態とした後、当該記録紙Pを排出ローラー対159によりスイッチバックさせて反転搬送路195に送り、搬送ローラー19により、上記ニップ部N及び定着部13に対して記録紙Pの搬送方向上流域に再度搬送する。これにより、画像形成部12により当該記録紙の他方の面に画像が形成される。
【0020】
更に
図2を用いて説明する。
図2は、定着部13及びその搬送下流側に配設された部材を示す正面断面図である。定着部13の搬送下流側には、摺擦ローラー15、画像濃度検出部16、搬送ローラー19が順に配設されている。
【0021】
定着部13は、記録紙Pに転写されたトナー画像を構成するトナーを溶融させて、記録紙Pに定着させる。定着部13は、図略のヒーターが内装された加熱ローラー13aと、加熱ローラー13aに圧接される加圧ローラー13bと、を備える。当該ヒーターは、例えば、ハロゲンヒーター、又は、励磁コイルとコアとを有する誘導加熱部を備えたIHヒーターで構成することができる。
【0022】
加熱ローラー13aに近接する位置には、加熱ローラー13aの表面温度を検出するサーミスター21が配置されている。加熱ローラー13aと加圧ローラー13bとは、トナー画像が転写された記録紙Pを挟持するようにして搬送する。記録紙Pが加熱ローラー13aと加圧ローラー13bとの間に挟持されるように搬送されることによって、記録紙Pに転写されたトナーは、溶融し、定着する。例えば、制御部100(
図3)は、サーミスター21により検出される定着温度に基づいて上記ヒーターの駆動を制御することで、後述する定着部13による定着動作時の定着温度の設定を行う。
【0023】
定着部13に記録紙Pが挿通されて加熱ローラー13aから記録紙Pへ熱が伝わると、加熱ローラー13aにおいて記録紙Pと接触する部分の表面温度は下がり、接触しない部分の表面温度は高いままであるため、加熱ローラー13aを全体的に均一に加熱するとその表面温度は軸方向にばらつきが生じてしまう。そこで、定着部13は、加熱ローラー13aの軸方向の表面温度のばらつきを補償する機構を備えていることが好ましい。
【0024】
摺擦ローラー15は、定着部13によってトナー像が定着された記録紙Pの定着面を摺擦するローラーである。摺擦ローラー15は、例えば、巻き取り式の布を有するローラーで構成することができる。また、摺擦ローラー15は、定着性評価を行うときに記録紙Pに当接し、それ以外のときには記録紙Pから離脱するように、記録紙Pに対して当接位置及び離脱位置に移動可能な移動機構を備えている。特に、定着性評価を行う場合は、摺擦ローラー15は、当該移動機構による移動で記録紙Pを上下から挟み込む。このとき、摺擦ローラー15は、搬送される記録紙Pに対して記録紙Pの搬送速度と同速度又は当該搬送速度よりも遅い周速で回転する等により、記録紙Pの定着面を摺擦する。このとき、適正な温度よりも低い定着温度で定着処理されてトナー画像の定着性が悪い場合には、摺擦ローラー15の摺擦によって記録紙Pからトナーが剥ぎ取られて定着面の画像濃度が低下する。
【0025】
画像濃度検出部16は、摺擦ローラー15を通過後の記録紙Pの定着面の画像濃度を検出する。画像濃度検出部16は、例えば、発光部及び受光部からなるIDセンサー等の光学センサーで構成することができる。この場合、発光部は記録紙Pの定着面に光を照射し、受光部はその反射光を検出する。受光部が受光した光の強度に応じて、記録紙Pの定着面の画像濃度が検出される。
【0026】
搬送ローラー19は、記録紙Pを画像形成部12及び定着部13に向けて搬送するローラー対である。搬送ローラー19は、摺擦ローラー15で摺擦された記録紙Pを排出ローラー対159へ搬送する。搬送ローラー19及び駆動モーター70(
図3)が特許請求の範囲における搬送部の一例となる。
【0027】
図3は、画像形成装置1の主要内部構成を示す機能ブロック図である。画像形成装置1は、制御ユニット10、操作部47、原稿給送部6、原稿読取部5、画像メモリー32、画像形成部12、定着部13、摺擦ローラー15、画像濃度検出部16、駆動モーター70、ファクシミリ通信部71、ネットワークインターフェイス部91、及びHDD92等を備える。
【0028】
原稿読取部5は、制御ユニット10による制御の下、光照射部及びCCDセンサー等を有する読取機構163(
図1)を備える。原稿読取部5は、光照射部により原稿を照射し、その反射光をCCDセンサーで受光することにより、原稿から画像を読み取る。
【0029】
画像メモリー32は、原稿読取部5による読取で得られた原稿画像のデータを一時的に記憶したり、画像形成部12のプリント対象となるデータを一時的に保存する領域である。
【0030】
ファクシミリ通信部71は、図略の符号化/復号化部、変復調部及びNCU(Network Control Unit)を備え、公衆電話回線網を用いてのファクシミリの送信を行うものである。
【0031】
ネットワークインターフェイス部91は、LANボード等の通信モジュールから構成され、当該ネットワークインターフェイス部91に接続されたLAN等を介して、ローカルエリア内又はインターネット上のコンピューター20等と種々のデータの送受信を行う。
【0032】
HDD92は、原稿読取部5によって読み取られた原稿画像等を記憶する大容量の記憶装置である。
【0033】
駆動モーター70は、画像形成部12の各回転部材及び搬送ローラー19等に回転駆動力を付与する駆動源である。
【0034】
移動機構72は、摺擦ローラー15が、定着性評価を行うときに記録紙Pに当接し、それ以外のときには記録紙Pから離脱するように、摺擦ローラー15を、記録紙Pに対して当接位置及び離脱位置に移動させる機構である。制御部100が移動機構72を制御する。
【0035】
制御ユニット10は、CPU(Central Processing Unit)、RAM、ROM及び専用のハードウェア回路等から構成され、画像形成装置1の全体的な動作制御を司る。制御ユニット10は、制御部100を備える。
【0036】
制御部100は、操作部47、原稿給送部6、原稿読取部5、画像メモリー32、画像形成部12、定着部13、摺擦ローラー15、画像濃度検出部16、駆動モーター70、ファクシミリ通信部71、ネットワークインターフェイス部91、及びHDD92等と接続され、これら各部の制御を行う。特に、制御部100は、画像形成部12を制御して1枚の記録紙Pに定着性評価用のパッチ画像を複数形成させる。また、制御部100は、記録紙Pに形成されたパッチ画像毎に定着部13の定着温度をさまざまに変えてパッチ画像を記録紙Pに定着させる。また、制御部100は、摺擦ローラー15を制御してパッチ画像が定着された記録紙Pの定着面を摺擦させる。
【0037】
判定部101は、定着部13による定着後の上記各パッチ画像における摺擦ローラー15によって摺擦される部分及び摺擦されない部分について画像濃度検出部16によって検出される各画像濃度の比が、予め定められた基準値(予め定められた適正定着温度の範囲内)に収まっているかを判定する。すなわち、判定部101は、画像濃度検出部16が検出した摺擦後の記録紙Pの定着面の画像濃度に基づいて、各定着温度での定着性評価を実施する。
【0038】
定着温度設定部102は、判定部101により上記予め定められた基準値に収まっていると判定されたパッチ画像の定着に用いた定着温度を、画像形成部12による通常の画像形成時に用いる定着温度として設定する。通常の画像形成とは、当該パッチ画像の形成ではなく、印刷対象データに基づいて行う画像形成をいう。すなわち、定着温度設定部102は、上記定着性評価の結果に基づいて、定着部13による記録紙Pの適正な定着温度を決定する。
【0039】
本実施形態に係る画像形成装置1では、制御部100による制御の下、定着部13に1枚の記録紙Pを通紙する間に、定着部13の定着温度をさまざまに変更して、定着性評価が判定部101により複数回行われる。以下、本実施形態に係る画像形成装置1による定着性評価の実施形態について説明する。
【0040】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態に係る定着性評価で使用される定着評価用パッチ画像の例を示す図である。
図5は、第1の実施形態に係る定着性評価時の処理の流れを示すフローチャートである。
【0041】
定着性評価は、画像形成部12による通常の画像形成実行前、記録紙Pが変更されたとき、又はトナーコンテナーが交換された場合など、例えば制御部100に設定された任意のタイミングで実施される。
【0042】
定着性評価を行う場合、まず、制御部100は、画像形成部12を制御して、搬送ローラー19による1枚の記録紙P上に、記録紙搬送方向に予め定められた間隔で定着性評価用のパッチ画像PIを複数形成させる(S1)。パッチ画像PIは、予め定められた色、濃度、大きさ、及び形状の画像(例えば、予め定められた濃度からなるグレーの矩形画像)である。記録紙Pの上記搬送方向におけるパッチ画像PIの形成位置は、記録紙Pの定着面からは空隙を有して設けられている摺擦ローラー15及び画像濃度検出部16に対向する位置とされている。
【0043】
パッチ画像PIの形成が完了すると、制御部100は、記録紙Pに形成されたパッチ画像PI毎に、定着部13の定着温度を変えてパッチ画像PIを記録紙Pに定着させる(S2)。このとき、制御部100は、定着部13によって一つのパッチ画像PIが定着される毎に記録紙Pの搬送を停止させ、定着部13の定着温度を変更した後に、後続のパッチ画像を定着部13により定着させる。このとき、定着温度が次の目標温度になるまで、加熱ローラー13a及び加圧ローラー13bは記録紙Pをニップした状態で待機し、サーミスター21により検出される温度が当該次の目標温度に達すると、制御部100が、加熱ローラー13a及び加圧ローラー13bに動作を再開させて記録紙Pに後続のパッチ画像PIを定着させる。
【0044】
例えば、制御部100は、加熱ローラー13aに設けられている上記ヒーターを制御して、S2での定着温度の変化を、予め定められている定着最低温度から、予め定められている定着最高温度まで、パッチ画像毎に段階的に上昇させる。例えば、制御部100は、当該ヒーターにより、定着温度を140℃から170℃の間で、10℃間隔で段階的に上昇させる。この場合、1つ目のパッチ画像PIは140℃、2つ目のパッチ画像PIは150℃、3つ目のパッチ画像PIは160℃、4つ目のパッチ画像PIは170℃とする等により、それぞれ定着される。
【0045】
また、制御部100は、当該ヒーターにより、定着温度を150℃から170℃の間で、5℃間隔で段階的に上昇させる場合、1つ目のパッチ画像PIは150℃、2つ目のパッチ画像PIは155℃、3つ目のパッチ画像PIは160℃、4つ目のパッチ画像PIは165℃、5つ目のパッチ画像PIは170℃とされる等により、それぞれ定着される。あるいは、制御部100は、定着温度を段階的に変化させずに、パッチ画像PI毎に定着温度を任意の温度に設定してもよい。このように、定着温度の変化のさせ方は、これらに限定されず、S2での定着温度の変化を定着最低温度から定着最高温度までパッチ画像毎に段階的に下降させてもよい。但し、加熱ローラー13aの昇温はヒーターを用いるため容易に制御可能であるのに対して、降温は自然冷却によるため時間を要するので、定着温度を段階的に上昇させる方法を採用することが好ましい。
【0046】
なお、S2での定着温度の変化幅をおよそ10℃から40℃とすれば、この温度範囲で定着部13を昇温させるのに要する時間はほんの僅かであるため、記録紙Pへの影響は特に懸念されない。
【0047】
そして、パッチ画像PIが定着された記録紙Pが搬送され、各パッチ画像PIが摺擦ローラー15に対向する位置に達するタイミングで、制御部100は、上記移動機構72を駆動して、記録紙Pに対して摺擦ローラー15を当接及び離脱(上下)させ、各パッチ画像PIにおいて、上記搬送査方向において摺擦された部分(摺擦部W)及び摺擦されていない部分(非摺擦部NW)を形成する(S3)。例えば、
図4に示したように、制御部100は、各パッチ画像PIの搬送方向下流側に摺擦部Wを、搬送方向上流側に非摺擦部NWを形成させる。あるいは、制御部100は、各パッチ画像PIの搬送方向上流側に摺擦部Wを、搬送方向下流側に非摺擦部NWを形成させてもよい。
【0048】
パッチ画像PIに摺擦部W及び非摺擦部NWが形成されると、画像濃度検出部16は、対向する位置を通過するパッチ画像PIの摺擦部W及び非摺擦部NWの各画像濃度を検出する。判定部101は、画像濃度検出部16から各パッチ画像PIについての摺擦部W及び非摺擦部NWの画像濃度を取得し、パッチ画像PI毎に、摺擦部W及び非摺擦部NWの各画像濃度の比が、予め定められた基準値に収まっているかを判定する(S4)。例えば、判定部101は、摺擦部Wの画像濃度をID1、非摺擦部NWの画像濃度をID2として、定着性Rを、定着性R=ID1/ID2の式により算出し、定着性Rが、上記基準値としての一定範囲、例えば、0.8〜0.95の範囲に収まっているか否かを判定する。すなわち、判定部101は、記録紙P上に形成された複数のパッチ画像PIの中から、当該定着性Rが当該範囲内に収まっているパッチ画像PIを判定する。
【0049】
そして、定着温度設定部102は、当該定着性Rが当該範囲内に収まっているパッチ画像PIについての定着温度のうち、最も低い温度を、画像形成部12による通常の画像形成時に用いる定着温度として設定する(S5)。
【0050】
そして、制御部100は、次に行われる通常の画像形成には、当該設定された定着温度により定着部13に記録紙Pに対する定着を行わせる。
【0051】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る定着性評価で使用される定着評価用パッチ画像の例を示す図である。
図7は、第2の実施形態に係る定着性評価時の処理の流れを示すフローチャートである。第2の実施形態は、パッチ画像PIにおける摺擦部W及び非摺擦部NWの形成方法及び画像濃度検出部16の配設が異なるが、それ以外は第1の実施形態と同様である。以下、第2実施形態の説明では、第1の実施形態と同様の点については説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0052】
定着性評価を行う場合、制御部100は、画像形成部12を制御して、搬送ローラー19による1枚の記録紙P上に、記録紙搬送方向に予め定められた間隔で定着性評価用のパッチ画像PIを複数形成させる(S11)。
【0053】
パッチ画像PIの形成が完了すると、制御部100は、記録紙Pに形成されたパッチ画像PI毎に定着部13の定着温度を変えて、定着部13により各パッチ画像PIを記録紙Pに定着させる(S12)。
【0054】
ここで、記録紙Pの当該搬送方向に直交する方向における各パッチ画像PIの形成位置は、摺擦ローラー15及び当該直交する方向に並べて配置された2個の画像濃度検出部16に対向する位置である。なお、パッチ画像PIの幅は摺擦ローラー15の幅よりも十分に広くする。例えば、摺擦ローラー15は、上記直交する方向における、当該形成されるパッチ画像PIの幅の半分程度の幅とされている。すなわち、摺擦ローラー15は、当該直交する方向においてパッチ画像PIの半分程度の領域に摺擦し、他の領域には摺擦しないものとされている。
【0055】
制御部100は、搬送ローラー19により、各パッチ画像PIが定着された記録紙Pを搬送させると、摺擦ローラー15は、上記直交する方向においてパッチ画像PIの半分程度の領域に摺擦する。これにより、各パッチ画像PIには、摺擦ローラー15により摺擦される部分(摺擦部W)及び摺擦されない部分(非摺擦部NW)が、記録紙搬送方向に直交する方向に並んで形成される(S13)。
【0056】
パッチ画像PIに摺擦部W及び非摺擦部NWが形成されると、上述した2個の画像濃度検出部16は、パッチ画像PIの摺擦部W及び非摺擦部NWの各画像濃度を検出する。制御部100は、各画像濃度検出部16からパッチ画像PIの摺擦部W及び非摺擦部NWの各画像濃度を取得し、パッチ画像PI毎に、摺擦部W及び非摺擦部NWの各画像濃度の比が、予め定められた基準値に収まっているかを、第1実施形態と同様にして判定する(S14)。
【0057】
以降、第1実施形態と同様にして、定着温度設定部102は、当該定着性Rが当該範囲内に収まっているパッチ画像PIについての定着温度のうち、最も低い温度を、画像形成部12による通常の画像形成時に用いる定着温度として設定する(S15)。制御部100は、次の記録紙の印刷から、定着部13の定着温度を、ステップS15で決定した温度に設定する。
【0058】
第1の実施形態と第2の実施形態とを比較すると、第1の実施形態は、画像濃度検出部16が1個で済むため部品点数が少なくなり、コストメリットがある。
【0059】
一方、第2の実施形態は、画像濃度検出部16が2個必要であるため、第1の実施例よりもコスト面では劣るが、当該2個の画像濃度検出部16により上記搬送方向に直交する方向に並ぶ摺擦部W及び非摺擦部NWの濃度を同時に検出できるため、濃度検出に要する時間が短縮される。また、第2の実施形態では、各パッチ画像PIの摺擦部W及び非摺擦部NWを上記搬送方向に直交する方向に並べて配置することができるため、第1の実施形態よりも各パッチ画像PIの上記搬送方向の幅を短くして、パッチ画像PI同士の間隔を広く確保することができる。このため、第2の実施形態では、1枚の記録紙Pに第1の実施形態よりも多くのパッチ画像PIを形成して、より多い回数の定着性評価を実施することができるというメリットがある。また、第2実施形態では、画像濃度検出部16の配設位置にパッチ画像PIが搬送されてから次のパッチ画像PIが搬送されるまでの間隔が第1実施形態よりも長くなるので、パッチ画像PIの定着温度変更を確実に行うことができる。
【0060】
以上のように、第1及び第2実施形態によれば、1枚の記録紙Pを用いて複数のパッチ画像PIに対する定着性評価を実施できるため、定着性評価のために使用される記録紙Pの量を極力少なくし、かつ、短時間で、記録紙Pとして画像形成に用いられる記録媒体の種別毎に適正な定着温度、すなわち、画像の定着に必要な最低温度からなる定着温度を設定することができる。これにより、画像形成装置1での画像形成に用いられる各種の記録媒体毎に定着条件が適正化され、画像品質の向上・維持させつつ、記録媒体毎に必要最低限の定着温度を設定して消費電力を適正化することが可能になる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。また、本発明は、上述した複合機以外に、コピー機、ファクシミリ装置、プリンター等に適用可能である。
【0062】
また、
図1乃至
図7を用いて上記実施形態により示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。