特許第6178292号(P6178292)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178292
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/30 20060101AFI20170731BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   H01Q21/30
   H01Q1/38
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-186716(P2014-186716)
(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公開番号】特開2016-63239(P2016-63239A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2016年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松浦 辰也
【審査官】 橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0002490(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/30
H01Q 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスプリット部を挟んで対向した第1の導体と第2の導体を備えたスプリットリング共振器を、GND板の外周に接するように配置したアンテナ装置であって、
前記第1のスプリット部、前記第1または第2の導体及び前記GND板で囲われた前記スプリットリング共振器の開口部内で、前記第1または第2の導体に第1の追加導体を接続し、第2のスプリット部を挟んで前記第1の追加導体に対向する第2の追加導体を前記GND板の外周に接続して、第1の追加スプリットリング共振器を形成することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第2のスプリット部、前記第1または第2の追加導体で囲われた前記第1の追加スプリットリング共振器の開口部内で、前記第2の追加導体に第3の追加導体を接続し、第3のスプリット部を挟んで前記第3の追加導体に対向する第4の追加導体を前記GND板の外周に接続して、第2の追加スプリットリング共振器を形成する請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1の導体または第2の導体に給電部を設けた請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の追加導体および第2追加導体のスプリット部の長さまたは前記第3の追加導体および前記第4の追加導体のスプリット部の長さのうち少なくとも一方を変えることで動作周波数を調整可能にする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1の追加導体および第2追加導体のスプリット部の間の間隔または前記第3の追加導体および前記第4の追加導体のスプリット部の間の間隔のうち少なくとも一方を変えることで動作周波数を調整可能にする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1の導体と前記第2の導体は先端が折れ曲がって対向することで前記第1のスプリット部を構成する請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1の導体または前記第2の導体の前記対向する箇所に前記第1の追加導体が接続されている請求項6に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関し、特に複数の周波数で動作するアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の携帯無線機器は複数の無線通信規格に対応することが多く、アンテナも複数の周波数帯に対応する必要がある。一般的に複数の周波数に対応するためにはアンテナは大型化する傾向にある。一方で今日の携帯無線機器の小型化は著しく、アンテナにも小型化が望まれている。したがって、アンテナサイズを大型化することなく複数の周波数で動作するアンテナを実現することで携帯無線機器を大型化することなく複数の周波数帯に対応可能となる。
【0003】
図11に既存のアンテナの構成例を示す。本図はスプリットリング共振器を有するアンテナ(SRRアンテナ)の基本形態を示す図である。
【0004】
図11はスプリットリング共振器1と、給電部2と、GND板3を有し、スプリット共振器1をGND板3の外周に接するように配置した構成となっている。
【0005】
図12図11に示したSRRアンテナの基本形態のスプリットリング共振器1を拡大した図である。スプリットリング共振器1は、GND板3の外周に接するように配置された開口部11を有し、給電部2には給電導体12が接続され、給電部2から交流電力が給電される。開口縁と給電導体12に接続するように第1の導体13が配置され、開口縁と接続するように第2の導体14を配置した構成となっている。また第1の導体13と第2の導体14が最も接近する部分に第1の導体13と第2の導体14からそれぞれ伸びた導体が対向するスプリット部15を形成している。
【0006】
図13図11および図12で示したSRRアンテナの動作周波数における電流の流れを模式的に表わしたもので、点線の矢印で示しているのが電流である。SRRアンテナの動作周波数は、給電部2と、給電導体12と、第1の導体13の一部と、第2の導体14と、第2の導体14と.開口部11との接続部から給電部2までをつなぐ開口部11の外周で等価的に構成されるコイル部分と、スプリット部15に等価的に構成されるコンデンサ部分とが直列共振回路を構成することで、直列共振回路の共振周波数によって決定される。
【0007】
図14図11および図12に示したSRRアンテナのインピーダンス特性を示す。これはスミスチャートを用いて周波数に対するインピーダンスの軌跡を示した図である。インピーダンスの軌跡がスミスチャートの中心に最接近する点がアンテナの動作周波数である。
【0008】
一方、図15図11および図12に示したSRRアンテナのリターンロス特性を示す。リターンロスとは図14に示したインピーダンス特性と全く同じ測定をするもので、単にチャート(図表)が異なるだけである。インピーダンスが50Ωに近ければ近い程小さな値になる様に作られた図表で、図5では周波数1においてインピーダンスが50Ωに近くアンテナの特性が良くなる事を示す。この谷の部分はアンテナの共振と呼ばれる。すなわち谷の部分がアンテナとして動作している周波数を示していることになる。また、アンテナが良好に動作するためには、一般的にアンテナが動作する周波数においてリターンロスが-5dB以下であることが望ましい。図15からリターンロスが-5dB以下となるような谷の部分は周波数1のみであることが分かる。つまり、このアンテナは図15で示されている周波数範囲内において周波数1でのみ動作するアンテナである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2014/073703
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
今日の携帯無線機器は複数の無線通信規格に対応することが多く、アンテナも複数の周波数帯に対応する必要があるが、上記のSRRアンテナの基本形態では複数の周波数帯に対応することは困難である。
【0011】
上記の問題を解決するために、特許文献1に示されるようなSRRアンテが提案されている。しかしこのSRRアンテナは、複数の周波数帯に対応するために複数のスプリットリング共振器を一つの導体プレーン上に並べて配置する。そのため、アンテナが大型化するという問題がある。
【0012】
本発明の目的は複数の周波数帯に対応ししかも小型のアンテナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、GND板にスプリットリング共振器を配置して前記スプリットリング共振器によって決まる周波数で動作するアンテナ装置であって、前記アンテナ装置を構成する導体に、前記アンテナ装置の開口部内で第1の追加導体部を接続することを特徴とするアンテナ装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の周波数帯に対応ししかも小型のアンテナ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態のアンテナを示す平面図である。
図2図1のアンテナのSRR部分を拡大した平面図である。
図3図1、2のアンテナのインピーダンス特性を示す図である。
図4図1、2のアンテナのリターンロス特性を示す図である。
図5図5(a)、(b)、(c)はそれぞれ図1、2のアンテナの周波数1、周波数2、周波数3におけるSRR上の電流の流れを模式的に示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態のアンテナを示す平面図である。
図7】(a)、(b)、(c)はそれぞれ図6のアンテナの周波数1、周波数2、周波数3におけるSRR上の電流の流れを模式的に示す図である。
図8】本発明の第3の実施形態のアンテナを示す平面図である。
図9図8のアンテナのインピーダンス特性を示す図である。
図10図8のアンテナのリターンロス特性を示す図である。
図11】本発明の背景技術のSRRを有するアンテナの基本形態を示す平面図である。
図12図11のアンテナのSRR部分を拡大した平面図である。
図13図11、12のアンテナの動作周波数における電流の流れを模式的に示す図である。
図14図11、12のアンテナのインピーダンス特性を示す図である。
図15図11、12のアンテナのリターンロス特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
(構成の説明)
図1は第1の実施形態のアンテナを示す平面図である。アンテナは、スプリットリング共振器1と、給電部2と、GND板3を有し、スプリット共振器1をGND板3の外周に接するように配置した構成となっている。図11のアンテナとの相違は、スプリットリング共振器1の開口部11の中に第1の追加導体部4と第2の追加導体部5を追加している事である。
(動作の説明)
図2図1のSRRアンテナのスプリットリング共振器1を拡大した図である。第2の導体14のスプリット部15側の先端に接続するように第1の追加導体41を配置し、開口部11の開口縁に接続し他端は第1の追加導体41と対向するように第2の追加導体42を配置している。第1の追加導体41と第2の追加導体42からそれぞれ伸びた導体が第1の追加スプリット部43を構成している。
【0017】
さらに、第2の追加導体42の第1の追加スプリット部43側の先端に接続するように第3の追加導体51を配置し、開口部11の開口縁に接続し他端は第3の追加導体51と対向するように第4の追加導体52を配置している。第3の追加導体51と第4の追加導体52からそれぞれ伸びた導体が第2の追加スプリット部53を構成している。
【0018】
図3に本実施形態のアンテナのインピーダンス特性を示す。この図3から、周波数1、周波数2、周波数3においてインピーダンスの軌跡がスミスチャートの中心に最接近または中心を通る水平線と交差していることが分かる。
【0019】
また図4に本実施形態のアンテナのリターンロス特性を示す。この図から、図3のインピーダンス特性で示した周波数1、周波数2、周波数3でリターンロス-5dB以下の谷の部分になっていることから、周波数1、周波数2、周波数3でアンテナとして動作していることが分かる。また、図3図11(背景技術)のSRRアンテナのリターンロス特性を示す図15と同じ周波数範囲を示していることから、図11のSRRアンテナに比べて多くの周波数で動作することになる。
【0020】
図5(a)、(b)、(c)はそれぞれ前述の周波数1、周波数2、周波数3におけるスプリットリング共振器上の電流の流れを模式的に示している。これらの図から、各周波数における電流の経路が異なることがわかる。電流の経路が異なることで等価的に構成されるコイルのインダクタンスが変化し、また通過するスプリット部の数が変わることで等価的に構成されるコンデンサの容量が変化する。これによって、スプリットリング共振器に三種類の共振周波数が発生する。したがって、本実施形態に示すアンテナでは3つの異なる周波数で動作することになる。
【0021】
なお第1の追加導体41と第2の追加導体42で構成されるSRR共振器の追加によって共振周波数2が発生する。また第3の追加導体51と第4の追加導体52で構成されるSRR共振器の追加によって共振周波数3が発生する。
【0022】
また、図2の第1の追加スプリット部43および.第2の追加スプリット部53の長さやスプリットの間隔、を変えることで、これらのスプリット部によって等価的に構成されコンデンサの容量が変化し、周波数2、周波数3を変化させることができる。
(効果)
以上説明したように、SRRアンテナの開口部の中に第1の追加導体部4と第2の追加導体部5を追加することで、アンテナサイズを大型化することなくアンテナの動作周波数を増やすことができる。
(第2の実施形態)
図6に第2の実施形態を示す。図6は本実施形態におけるSRRアンテナのスプリットリング共振器部分を拡大した図である。第1の実施形態(図1)との相違は第1の追加導体41を第2の導体14の先端ではなく中間部に接続し、第1の追加導体41と対向するように第2の追加導体42の位置を移動している点である。さらに、第3の追加導体51を第2の追加導体42の先端ではなく中間部に接続し、第3の追加導体51と対向するように第4の追加導体52の位置を移動している点である。このような構成でも第1の実施形態と同様の効果が得られる。図7(a)、(b)、(c)にそれぞれ本実施形態の周波数1、2、3の電流の流れを模式的に示す。
(第3の実施形態)
第1の実施形態では第1の追加導体41はスプリット部13の先端に接続し、第3の追加導体42も第1の追加スプリット部43の先端に接続している。また第2の実施形態では第1の追加導体41を第2の導体14の途中に接続し、第3の追加導体51を第2の追加導体42の途中に接続している。
【0023】
本第3の実施形態はこの両者を折衷したものである。つまり第1の追加導体41はスプリット部13の先端に接続し、第3の追加導体51は第2の追加導体42の途中に接続している。このような構成でも同様の効果が得られる。
(第4の実施形態)
第1〜第3の実施形態では、第1、第2の追加導体部を設けた場合を述べた。しかし第1の追加導体部4だけを追加してもよい。図8にその例を示す。給電部2、給電導体12、第1の導体13,第2の導体14は第1、第2の実施形態と同様である。本実施形態ではそれに第1の追加導体41及び第2の追加導体42だけを追加しており、第3、第4の追加導体51,52は追加していない。
【0024】
図8には周波数2の電流の流れも太い矢印で示している。図9は本実施形態のアンテナのインピーダンス特性を示す。元々の周波数1に加えて周波数2が追加されている。図10はリターンロス特性であり、この図からも周波数2が追加されていることが分かる。
(第5の実施形態)
第1〜第4の実施形態では、スプリット部は、第1、第2の導体の先端、第1の追加導体と第2の追加導体の先端、及び、第3の追加導体と第4の追加導体の先端を曲げて対向させて形成していた。しかし必ずしも先端を曲げる必要はなく、スプリット部が形成された導体を追加すれば動作周波数を増加させることができる。
(第6の実施形態)
第1〜第5の実施形態では、基板層は一層である。しかし本発明は多層基板にも適用できる。具体的には、誘電体基板を挟んだ上下の導体層に同形状のスプリットリングを形成し、層間を導体ビアで接続してアンテナを構成する。
【符号の説明】
【0025】
1 スプリットリング共振器
2 給電部
3 GND板
4 第1の追加導体部
5 第2の追加導体部
11 開口部
12 給電導体
13 第1の導体
14 第2の導体
15 スプリット部
41 第1の追加導体
42 第2の追加導体
43 第1の追加スプリット部
51 第3の追加導体
52 第4の追加導体
53 第2の追加スプリット部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15