(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
レスピレータは、2つの一般的目的のうちの1つ、すなわち(1)不純物若しくは汚染物質が着用者の呼吸器系に入るのを防ぐため、又は(2)他の人若しくは物体が、着用者によって吐き出された病原体及び他の汚染物質に曝されることから守るために、人の呼吸経路を覆って着用される。第1の状況では、レスピレータは、空気が着用者にとって有害な粒子を含む環境、例えば自動車車体修理工場で着用される。第2の状況では、レスピレータは、他の人又は物に対して汚染の危険性がある環境で、例えば手術室又はクリーンルームにおいて着用される。
【0003】
いくつかのレスピレータは、マスク本体そのものが濾過機構として機能するために、「フィルタ式顔面装着」として分類される。取り付け可能なフィルタカートリッジ若しくはフィルタライナー(例えば、米国再発行特許第39,493号(Yuschakら)、及び米国特許第5,094,236号(Tayebi)を参照のこと)、又はインサート成形されたフィルタエレメント(例えば、米国特許第4,790,306号(Braun)を参照のこと)と共にゴム又はエラストマーのマスク本体を使用するレスピレータとは異なり、フィルタ式顔面装着レスピレータは、フィルタカートリッジの取り付け又は交換の必要がないように、濾材がマスク本体全体のほぼ全体に延在する。そのため、フィルタ式顔面装着レスピレータは、重量が比較的軽く、使い易い。
【0004】
フィルタ式顔面装着レスピレータは一般的に、2つのカテゴリ、すなわち、折り畳み式レスピレータ及び成形レスピレータのうちの一方に分類される。折り畳み式レスピレータは平坦な状態で保管されるが、シーム、プリーツ及び/又は折り目を含み、これらはマスクが使用のためにカップ形状の構成へと開かれるのを可能にする。平坦に畳めるフィルタ式顔面装着レスピレータの例は、米国特許第6,568,392号及び同第6,484,722号(Bostockら)並びに同第6,394,090号(Chen)に示されている。
【0005】
対照的に、成形レスピレータは、顔面にフィットする所望の形態にほぼ恒久的に成形され、保管及び使用時にその形態を全体的に保持する。成形されたフィルタ式顔面装着レスピレータは通常、一般に「成形層」と呼ばれる成型された支持シェル構造体を有し、この層は一般的に熱結合繊維又透かしプラスチックメッシュで作られる。成形層は主に、濾過層のための支持をもたらすように設計される。濾過層に対し、成形層はマスク(着用者の顔に隣接する)の内部に存在してもよく、又は成形層はマスクの外部に存在してもよく、又は内部及び外部の両方に存在してもよい。濾過層を支持するための成形層を開示している特許の例としては、米国特許第4,536,440号(Berg)、同第4,807,619号(Dyrudら)、及び同第4,850,347号(Skov)が挙げられる。
【0006】
成形レスピレータのマスク本体を作製する際に、濾過層は通常は成形層に対して並置され、組み立てられた層は、加熱された雄型部と雌型部と間に組み立てられた層を配置することによって(例、米国特許第4,536,440号(Berg)を参照のこと)、又は層を重ね合わせた関係で加熱ステージを通過させ、その後、この重ね合わせた層をフェイスマスクの形状へと冷間成形することによって(米国特許第5,307,796号(Kronzerら)及び同第4,850,347号(Skov)を参照のこと)成型作業が行なわれる。
【0007】
既知の成形フィルタ式顔面装着レスピレータでは、濾過層は、上記の技法のいずれかによってマスク本体へと組み立てた場合でも、本体に結合されたときに、成型された成形層の湾曲した形状をとると概ね考えられる。ハーネスがいったんマスク本体に固定されると、この製品は一般に使用できる。フィットと着用者の快適さを向上させるために、エラストマーの顔面シールを、マスク本体に対してその周辺部において結合することもある。顔面シールは、半径方向内側に延在して、レスピレータが着用されたときに着用者の顔と接触する。エラストマーの顔面シールを記載している文献には、米国特許第6,568,392号(Bostockら)、同第5,617,849号(Springettら)、同第4,600,002号(Maryyanekら)、及びカナダ特許第1,296,487号(Yard)が挙げられる。更に、顔の輪郭に大きな変化がある鼻領域におけるフィットを改善するために、ノーズフォーム及びノーズクリップがマスクに取り付けられている。(例えば、米国特許出願公開第2007/0068529(A1)号(Kalatoorら)及び同第2008/0023006(A1)号(Kalatoor)、国際公開特許WO2007/024865(A1)号(Xueら)及び同WO2008/051726(A1)号(Gebrewoldら)、並びに米国特許第5,558,089号及びドイツ特許第412,573号(Castiglione)を参照のこと。)レスピレータがその耐用年数の終了に達したときに、フィルタ式顔面装着レスピレータにおいて濾過層は交換可能でないため、製品は廃棄される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ハーネスと、マスク本体を備える、成型されたフィルタ式顔面装着レスピレータを提供する。マスク本体は、濾過構造体と、カップ形状の成形層とを含み、この成形層は、内部に配置された複数の通気性開口部を有する独立気泡フォーム層を含む。独立気泡フォーム層は、複数の開口部を包囲する凹部領域も有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明におけるフォーム成形層の開放的性質にも関わらず、(空気経路を包囲する凹部領域を有する)独立気泡フォーム成形層の使用は、構造的一体性、又はレスピレータの使用時にマスク本体が崩壊するのを防ぐ剛性をもたらすことができる。凹部領域、及びかかる領域間に配置された区域は、マスク本体の構造的一体性を増加させる、梁状効果をもたらす。凹部領域はそれぞれ、個々のプレナムのように更に作用し、これは濾過構造体と成形層との間の流体の迅速な分散、並びに、レスピレータ使用時のマスク本体にわたる圧力降下を抑えることを可能にする。圧力降下の抑制及び改善された空気流の分散は、本発明のレスピレータをより快適に着用するのを可能にすることができる。独立気泡フォーム成形層は、マスク本体外周部において十分な程度の柔軟性をもたらすことができ、これは、エラストマーの顔面シール、ノーズフォーム若しくはノーズクリップを取り付ける又は使用することなく、着用者の顔面にマスク本体が快適かつぴったりとフィットするのを可能にする。
【0010】
用語
以下に詳述された用語は、定義された意味を有することになる。
「頂点領域」は、マスク本体が平坦な表面上で、この表面とマスク外周部が接触した状態で表面と接触した状態で置かれているときに、マスク本体上の最も高い点を包囲する区域を意味する。
「含む(又は、含んでいる)」は、特許専門用語において標準的なその定義を意味し、「備える」、「有する」、又は「含有する」とほぼ同義である非限定的用語である。「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「有する」、及び「含有する」、並びにこれらの変形は、一般的に使用される非限定的用語であるが、本発明は、「本質的に〜からなる」などのより狭義の用語を使用して適切に記載されることもでき、これは、本発明のレスピレータがその意図される機能を果たす際の性能に対して悪影響を及ぼす物体又は要素のみを除外するという点で、半限定的(semi open-ended)用語である。
「清浄な空気」は、汚染物質を取り除くために濾過された、ある体積の大気中の周囲空気を意味する。
「同一の広がりを持って」は、他の物体と平行に、かつその表面積の少なくとも80%を被覆しながら延びることを意味する。
「汚染物質」は、粒子(粉塵、ミスト、及び煙気を含む)、並びに/又は、一般に粒子と見なされないことがあるが(例えば、有機蒸気等)、呼気流中の空気を含め、空気中に懸濁されていることがある他の物質を意味する。
「カバーウェブ」は、主に汚染物質の濾過のために設計されていない、不織布繊維層を意味する。
「外部気体空間」は、吐き出された気体が、マスク本体及び/又は呼気弁を通過し、それらを越えた後に入る、周囲大気中の気体空間を意味する。
「フィルタ式顔面装着具」は、マスク本体自体が、マスク本体を通過する空気を濾過するように設計されており、この目的を達成するための別個の識別可能なフィルタカートリッジ、フィルタライナー、又はインサート成形されたフィルタエレメントがマスク本体に取り付けられていない、又は成型されていないことを意味する。
「フィルタ」又は「濾過層」は、通気性材質の1つ以上の層を意味し、その層は、通り抜ける空気流から汚染物質(粒子など)を除去するという主目的に適している。
「濾過構造体」とは、主に空気を濾過するために設計される構造体を意味する。
「ハーネス」は、マスク本体を着用者の顔面上で支持する助けとなる構造体又は部品の組み合わせを意味する。
「一体化」は、当該の複数部分が1つの部品として同時に製造されたものであり、2つの別々の部品を後で合わせて接合したものではないことを意味する。
「内部気体空間」は、マスク本体と人の顔面との間の空間を意味する。
「マスク本体」は、人の鼻及び口を覆ってフィットするよう設計され、かつ外部気体空間から離てられた内部気体空間を画定するのに役立つ通気性構造体を意味する。
「中間領域」は、頂点領域とマスク本体外周部との間の区域を意味する。
「ノーズクリップ」は、少なくとも着用者の鼻の周りの密封性を高めるために、マスク本体上で使用するように適応した(ノーズフォーム以外の)機械的装置を意味する。
「ノーズフォーム」は、レスピレータが着用されるときに、鼻を覆うフィット及び/又はその上での着用者の快適さを改善するために、マスク本体の内部に配置するように適合された多孔質材料を意味する。
「不繊布」とは、繊維が、織る以外の手段で一緒に保持される構造の構造体又は部分を意味する。
「平行」は、全体的に等距離であることを意味する。
「外周部」は、レスピレータが人により着用されるときに、概して着用者の顔面に近接して配置されるであろうマスク本体の外側縁部を意味する。
「ポリマー」及び「プラスチック」はそれぞれ、1つ又はそれ以上のポリマーを主に含み、同様に他の成分を含有してもよい材料を意味する。
「複数」は、2つ以上を意味する。
「凹部領域」は、成形層の外側表面から著しく凹んでいる成形層の一部分を意味する。
「レスピレータ」は、人の鼻及び口を覆って顔面上に着用され、着用者が呼吸するための清浄な空域を提供する空気濾過装置を意味する。
「成形層」は、通常の取扱いのもとで、その望ましい形状(及び成形層によって支持される他の層の形状)を保持するのに十分な構造的一体性を有する層を意味する。
「谷部」すなわち「リブ」は、2つの凹部領域間に配置される、成形層の一部分を意味する。
「ウェブ」は、三次元(高さ)寸法よりも、二次元(平面)寸法において著しく大きく、かつ通気性である構造体を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施において、独立気泡フォーム成形層を含む、フィルタ式顔面装着レスピレータが提供される。レスピレータが着用されるときに、成形層は、マスク本体外周部において人の顔面と接触する。成形層は、典型的に成形層の表面積の少なくとも10%を占有する、複数の十分な寸法の通気性開口部を有し、空気が濾過された後にマスク本体の内部気体空間内を容易に通過し、レスピレータが人によって快適に着用されるのを可能にする。成形層はまた、一連の凹部領域と、谷部、すなわちリブとを有し、これらはマスク本体の剛性を高め、かつ内部気体空間内に吸入された空気の迅速な分散を更に可能にする。
【0013】
レスピレータ使用時に、着用者の肺は、周囲空気がマスク本体を通じて外部気体空間から内部気体空間まで流れるのに必要とされるエネルギーを提供する。圧力降下が低い場合、周囲空気を濾過するのに、より少ないエネルギーが必要とされる。レスピレータが長期間着用されるとき、清浄な空気を呼吸するのに、より少ない労力、すなわちエネルギーが必要とされるため、圧力降下がより小さいことは非常に有益であり得る。圧力降下は、具体的には品質係数(Q
F)の形態で粒子貫通と共に相まって、レスピレータの性能の確立された測定であり、例えば米国特許第6,923,182号(Angadjivandら)を参照のこと。成形層として非通気性の独立気泡フォーム材料を使用しながら、良好なフィット及び性能を呈する、頑丈なフィルタ式顔面装着レスピレータを提供する本発明の能力は、レスピレータの使用者及び製造業者に特に有益であり得る。
【0014】
図1は、マスク本体12及びハーネス14を含む濾過フェイスピースレスピレータ10を示す。ハーネス14は、弾性材料から作製され得る1つ以上のストラップ16を含んでもよい。ハーネスのストラップは、接着手段、接合手段、又は機械的手段を含め、様々な手段によってマスク本体に固定され得る(例えば米国特許第6,729,332号(Castiglione)を参照のこと)。ハーネスは例えば、マスク本体に超音波溶接されるか、マスク本体にホチキス止めされてもよい。マスク本体12は濾過構造体18及び成形層を含む。濾過構造体18は、成形層の外部に配置され、前面から見ることができる。濾過構造体18は、マスク本体外周部19に沿って、成形層に結合され得る。
【0015】
図2は、マスク本体12の、具体的には独立気泡フォーム材料を含む内側成形層20の背面図である。レスピレータが着用されるときに、成形層20は、マスク本体外周部19において着用者の顔面と接触する。成形層20は複数の開口部22を含み、これらの開口部は、概ね約10〜50平方センチメートル(cm
2)、より一般的には12〜30cm
2の等価呼吸開口部(Equivalent Breathing Opening:EBO)を備えた成形層を呈するような寸法である。この開口部は、合計で成形層の総表面の少なくとも5%、典型的には少なくとも8%、より典型的には約12〜40%を占有する。開口部22は、マスク本体の頂点領域24において、並びにその中間領域26において配置され得る。開口部22は、マスク本体の外周領域28まで更に延在することがある。中間領域は典型的に、約300〜500平方ミリメートル(mm
2)を占有する。
図2に示すように、背面からマスク本体12を見るときに、凹部領域31間の谷部として見えるリブ30によって、開口部22は互いから分離される。リブ30は、概ね約2〜15mmの幅であり、より典型的には約3〜7mmの幅である。開口部22は、円形、楕円形(oval)、楕円形(elliptical)、菱型(rhomboid)、正方形、矩形、三角形、菱型(diamond)等を含める様々な形状をとることができる。この開口部はまた、凹部領域31によって包囲される。凹部領域31は、合計で成形層20の総表面積の約10〜70%、より典型的には成形層20の総表面積の約12〜40%を占有し、これには凹部領域が包囲する開口部が含まれる。凹部領域はそれぞれ個々に、内部に配置された開口部を含めた表面積において、典型的に約3〜25平方cm(cm
2)、より典型的には5〜20cm
2を占有する。成形層のこの面積は、凹部区域の側壁を含むように測定される。凹部領域は、濾過構造体から、すなわち成形層の外側表面から3mm〜1cm、より典型的には約4〜7mm凹んでいる。凹部領域31はまた、円形、楕円形(elliptical)、三角形、台形、矩形、及び開口部の形状に関して上記に引用されたものなど、様々な形状で生じてもよい。リブ30は、凹部領域間においてマスクの頂点から概ね半径方向外側に延在する。
【0016】
呼気バルブがフィルタ式顔面装着レスピレータ上に配置されるときに、呼気バルブは頂点領域24においてマスク本体に固定されてもよい。あるいは、呼気バルブを収容するために、マスク本体の頂点領域24内にフレームが成形されてもよい。(米国特許出願公開第2009/0078264(A1)号(Martinら)を参照のこと。)したがって、呼気バルブが所望されるときに、濾過構造体を通じた流体の流れを収容するために成形層に提供される開口部は全体的に、呼気バルブを収容する頂点領域の部分、すなわちフレームが配置される場所にはないであろう。
【0017】
図3は、マスク本体12と凹部領域31間に配置されたリブ30を有する凹部領域31それぞれの前面を示す。リブは、レスピレータが組み立てられるときに、リブを覆って配置される濾過構造体内の材料と接触する。凹部領域31は、成形層20の外側表面32から半径方向内側に凹んでいる。濾過構造体18(
図1及び4)は、したがって凹部領域31の成形層20の外側表面32と接触しない、あるいは実質的に接触しない。
【0018】
図4は、成形層20が複数層を含み得るということを示す。第1の内側柔軟層33は、外側構造体のフォーム層34よりも低い密度を呈する独立気泡フォーム材料から作製され得る。内側柔軟層は、約0.02〜0.1g/cm
3の見かけ密度を呈してもよい。内側層33の圧縮強度は、約0.25〜1キロパスカル(KPa)、より典型的には約0.3〜0.5KPaであってもよい。第2の外側フォーム層34は、約0.05〜0.5g/cm
3並びに約0.25〜3KPa、より一般には約1〜2.5KPaの圧縮強度を呈してもよい。より低密度な内側層33は、より快適で、すなわち顔面形状に対し柔軟であり、ぴったりとした快適なフィットをもたらす傾向にある。内側フォーム層の代わりに、不織布ウェブを使用して、成形層のための顔面と接触する柔軟な層を提供してもよい。適切に顔面と接触する層として機能するために、繊維状内側層は、第2の外側層に接合できる必要があり、並びに、柔らかな感触を有する必要があり、更なる快適さを提供する汗吸収特性を提供し得る。繊維状内側層の例としては、カードウェブ、スパンボンドウェブ、又はポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド若しくはレーヨンの布地を挙げることができる。化学的接合又は物理的接合を含め、層は様々な技法によって一緒に結合され得る。濾過構造体18も、不織布繊維状材料の1つ以上の層、例えば濾過層36並びに内側カバーウェブ38及び外側カバーウェブ38’をフォーム成形層20の外側に、又はフォーム成形層の上流に含んでもよい。カバーウェブ30、38’は、濾過層38を保護するために提供されてもよく、並びに濾過層36の繊維が、マスク本体12から落ちるのを防ぐために提供されてもよい。2つのカバーウェブ38、38’が示されているが、濾過構造体は外側カバーウェブ38のみを有するように、又はカバーウェブを全く有さないように作られてもよい。レスピレータ使用時に、空気は、マスク内部に入る前に、層38、36、38’及び成形層20の開口部22を順次通過する。凹部領域31はそれぞれ、濾過された空気がマスク本体の内部気体空間内に迅速に分散されるのを助けるプレナムとして作用する。マスク本体12の内側気体空間内に存在する空気は、次いで、着用者によって吸入され得る。着用者が息を吐くと、空気は逆方向に層20、38’、36及び38を順次通過する。あるいは、吐き出された空気が濾過構造体18を通過せずに、内部気体空間から迅速に排除され外部気体空間に入ることを可能にする呼気弁(図示せず)をマスク本体12に備えてもよい。典型的にカバーウェブ38、38’は、低い圧力降下をもたらしつつも、最終製品の重量をほとんど追加しない不織布材料の選択することによって作製される。濾過構造体と共に使用できる濾過層とカバーウェブの様々な構成を、以下でより詳細に説明する。本発明のフィルタ式顔面装着レスピレータは、120Pa未満、より好ましくは100Pa未満、更により好ましくは90Pa未満の圧力降下を呈することができる。品質係数、Q
F 0.5超、0.6超、更には0.8超であり得る。濾過構造体18及び成形層20(
図3)を含むマスク本体12は、少なくとも4ニュートン(N)、少なくとも約6N、更には少なくとも8Nの剛性を呈し得る。剛性は、以下に説明するマスク剛性試験に従って測定することができる。
【0019】
本発明に関して使用されるマスク本体は、
図1に示すように湾曲した半球型を有してもよく(米国特許第4,807,619号(Dyrudら)も参照)、又はマスク本体は、様々な異なる形状及び構造をとってもよい(例えば米国特許第4,827,924号(Japuntich)を参照のこと)。上記のとおり、成形層は、異なる密度を有する1つ以上のフォーム層を含んでもよい。またフォーム層は、様々な高分子材料から作製されてもよい。内側層、すなわち顔により近い層は、例えば低密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、又は天然若しくは合成ゴムから作製されてもよい。外側層は、以下のポリマー:ポリプロピレン、エチルビニルアセテート、ポリアミド、又はポリエステルのうちの1つ以上を含んでもよい。複数の成形層は、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレン、若しくはレーヨンの不織布又は織物から作製されてもよい。濾過構造体は、濾過層及びカバーウェブを含む複数の層を備えて図示されているが、濾過構造体は単に、濾過層の組み合わせ、又は濾過層とカバーウェブとの組み合わせを含んでもよい。例えば、前処理フィルタは、より精製され選択された下流の濾過層の上流に配置してもよい。更に、活性炭等の吸着材料が、濾過構造体を含む繊維層及び/又は種々の層の間に配置されてもよいが、このような吸着材料は、所望のぴったりしたフィットを損なわないように鼻領域には存在しなくてもよい。更に、別個の微粒子濾過層を吸着層と共に使用して、微粒子と蒸気の両方のフィルタを提供してもよい。濾過構造体は、使用中にカップ状の構造を提供する補助となる1つ以上の補強層を含んでもよい。濾過構造体はまた、その構造的一体性に寄与する、(溶接線若しくは接合線等の)1つ以上の水平及び/又は垂直の境界線を有してもよい。
【0020】
本発明のマスク本体に使用される濾過構造体は、粒子捕捉型又は気体及び蒸気型のフィルタであってもよい。濾過構造体はまた、例えば、液体エアロゾル又は液体の飛沫(例えば、血液)が濾過層を貫通するのを防ぐために、濾過層の一方の側から他方へと液体が移動するのを防止するバリア層であってもよい。用途に応じて、本発明の濾過構造体の構築には、類似の又は異なるフィルタ媒体の複数の層を使用することができる。本発明の層状マスク本体に有効に使用できるフィルタは、マスク着用者の呼吸負担を最小限に抑えるために、一般に圧力降下が少ない(例えば、面速度13.8cm/秒で約200〜300パスカル未満)。濾過層は更に、予想される使用条件においてそれらの構造を維持するよう可撓性及び十分な剪断強度を有する。粒子捕捉フィルタの例としては、微細な無機繊維(ガラス繊維のような)又はポリマー合成繊維の1つ又はそれ以上のウェブが挙げられる。合成繊維ウェブには、メルトブローン製法などのプロセスによって製造されるエレクトレット帯電ポリマーマイクロファイバーが含まれる。帯電したポリプロピレンから形成されたポリオレフィンマイクロファイバーは、粒子捕捉用途に特に有用である。
【0021】
濾過層は、典型的には、所望の濾過効果を達成するように選択される。濾過層は通常、粒子及び/又はその他の汚染物質を、濾過層を通過する気体流から高い割合で除去する。繊維濾過層に関して、通常は、製造作業中に接着してしまわないように、濾過する物質の種類に基づいて選択された繊維が選ばれる。説明したように、濾過層は様々な形状及び構成であってもよく、一般に約0.2ミリメートル(mm)〜1センチメートル(cm)、より一般的には約0.3mm〜0.5cmの厚さを有し、また略平面状のウェブであっても、又は波形を付けて、拡張した表面積を提供してもよく、これは例えば、Braunらに付与された米国特許第5,804,295号及び同第5,656,368号を参照されたい。濾過層はまた、接着剤又は任意の他の手段により一緒に結合された複数の濾過層を含んでもよい。基本的に、濾過層の形成用として既知の(又は後に開発される)好適な任意の材料を、フィルタ材料として使用することができる。Wente,Van A.の「Superfine Thermoplastic Fibers」(48 Indus.Engn.Chem.,1342 et seq.1956)で教示されているような、メルトブロー繊維のウェブ、特に常時帯電(エレクトレット)状態にあるものは特に有用である(例えば、米国特許第4,215,682号(Kubikら)を参照のこと)。これらのメルトブローン繊維は、約20マイクロメートル(μm)未満(「ブローンマイクロファイバー」をBMFと称する)、典型的には約1〜12μmの有効繊維直径を有するマイクロファイバーであってもよい。有効繊維直径は、Davies,C.N.の「The Separation Of Airborne Dust Particles」(Institution Of Mechanical Engineers,London,Proceedings 1B,1952)に従って測定することができる。特に好ましいのは、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)及びこれらの組み合わせから形成される繊維を含むBMFウェブである。メルトブローンウェブは、米国特許第7,690,902号(Ericksonら)に記載の装置及びダイを使用して作製することができる。ロジンウール繊維ウェブ及びガラス繊維又は溶液吹込み若しくは静電噴射した繊維のウェブ(特にマイクロファイバーの形態のもの)に加えて、米国再発行特許第31,285号(van Turnhout)に教示されるような、帯電解繊繊維(Electrically charged fibrillated-film fibers)も好適であり得る。ナノ繊維ウェブも濾過層として使用することができる。米国特許第7,691,168号(Foxら)を参照のこと。電荷は、米国特許第6,824,718号(Eitzmanら)、同第6,783,574号(Angadjivandら)、同第6,743,464号(Insleyら)、同第6,454,986号及び同第6,406,657号(Eitzmanら)、並びに同第6,375,886号及び同第5,496,507号(Angadjivandら)に開示されているように、繊維を水と接触させることにより、繊維に付与することができる。電荷はまた、米国特許第4,588,537号(Klasseら)に開示されているようなコロナ帯電により、あるいは同第4,798,850号(Brown)に開示されているような摩擦帯電(tribocharging)により、繊維に付与されてもよい。また、水帯電(hydro-charging)プロセスを通して製造されるウェブの濾過性能を高めるために、添加剤を繊維に含むことができる(米国特許第5,908,598号(Rousseau)ら)を参照のこと)。具体的には、油性ミスト環境での濾過性能を高めるために、フッ素原子を濾過層の繊維表面に配置してもよい。(米国特許第6,398,847(B1)号、同第6,397,458(B1)号、及び同第6,409,806(B1)号(Jonesら);米国特許第7,244,292号(Kirkら);同第7,244,291号(Spartzら);並びに米国特許第7,765,698号(Sebastianら)を参照のこと。)エレクトレットBMF濾過層の典型的な坪量は、約10〜100g/平方メートル)(g/m
2)である。帯電し、かつ上記のとおり必要に応じてフッ素化したとき、坪量はそれぞれ約20〜40g/m
2、及び約10〜30g/m
2であり得る。
【0022】
カバーウェブは、遊離繊維を捕捉するのに、また美的観点からも使用することができる。カバーウェブは通常は、いずれかの実質的な濾過の利点を濾過構造体にもたらさないが、濾過層の外側(又は上流)に配置されたときに、前処理フィルタとして作用することができる。カバーウェブは好ましくは、比較的小さな坪量を有し、並びに、比較的微細な繊維から形成される。より具体的には、カバーウェブは約5〜50g/m
2(典型的には10〜30g/m
2)の坪量を有するように作られてもよく、繊維は3.5デニール未満(典型的には2デニール未満、より典型的には1デニール未満であるが0.1デニールを超える)であってよい。カバーウェブに用いられる繊維は、約5〜24μm、典型的には約7〜18μm、より典型的には約8〜12μmの平均繊維直径を有することが多い。カバーウェブ材料は、ある程度の弾性率を有してもよく(一般に、破断点の100〜200%であるが、かならずしもこれでなくてもよい)、可塑的に変形可能であってもよい。
【0023】
カバーウェブに適した材料としては、ブローンマイクロファイバー(BMF)材料、特にポリオレフィンBMF材料、例えばポリプロピレンBMF材料(ポリプロピレンブレンド、及びポリプロピレンとポリエチレンとのブレンドも含む)が挙げられる。カバーウェブ用のBMF材料の好適な製造プロセスは、米国特許第4,013,816号(Sabeeら)に記載されている。ウェブは、繊維を滑らかな表面、典型的には滑らかな表面のドラム又は回転しているコレクタの上に収集して形成することができる(米国特許第6,492,286号(Berriganら)を参照のこと)。スパンボンド繊維を使用することもできる。
【0024】
典型的なカバーウェブは、ポリプロピレン、又は50重量%以上のポリプロピレンを含有するポリプロピレン/ポリオレフィンブレンドから製造することができる。これらの材料は、着用者に高度な柔らかさ及び心地よさをもたらし、またフィルタ材料がポリプロピレンBMF材料である場合、層間に接着剤を必要とすることなく、フィルタ材料を固定された状態に保つことが見出されている。カバーウェブで使用するのに好適なポリオレフィン材料としては、例えば、ポリプロピレン単独、2種のポリプロピレンのブレンド、ポリプロピレンとポリエチレンのブレンド、ポリプロピレンとポリ(4−メチル−1−ペンテン)のブレンド、及び/又はポリプロピレンとポリブチレンのブレンドを挙げることができる。カバーウェブ用の繊維の一例としては、ポリプロピレン樹脂から作製されたExxon Corporation製のポリプロピレンBMF「Escorene 3505G」があり、約25g/m
2の坪量をもたらし、かつ0.2〜3.1の範囲の繊維デニールを有する(約0.8の繊維100本超で測定の平均)。他の好適な繊維はポリプロピレン/ポリエチレンBMF(樹脂「Escorene 3505G」85%と、エチレン/α−オレフィンコポリマー「Exact 4023」(これもExxon Corporation製)15%を含む混合物から製造される)であり、これは約25g/m
2の坪量をもたらし、平均約0.8デニールを有する。好適なスパンボンド材料は、Corovin GmbH(Peine,Germany)から商標「Corosoft Plus 20、「Corosoft Classic 20」、及び「Corovin PP−S−14」で入手可能であり、カードポリプロピレン/ビスコース材料は、J.W.Suominen OY(Nakila,Finland)から商標「370/15」で入手可能である。
【0025】
本発明に使用されるカバーウェブは全体的に、処理後にウェブ表面から突出する繊維が非常に少なく、したがって滑らかな外側表面を有する。本発明で使用することができるカバーウェブの例は、例えば、米国特許第6,041,782号(Angadjivand)、同第6,123,077号(Bostockら)及び国際公開第96/28216A号(Bostockら)に開示されている。
【0026】
ハーネスに使用されるストラップは、様々な材料、例えば熱硬化性ゴム、熱可塑性エラストマー、編組み又は編込みされた織糸/ゴムの組み合わせ、非弾性の編組み構成要素等から作製されてもよい。ストラップは、弾性編組み材料などの弾性材料から作製することができる。ストラップは、好ましくはその全長の2倍より大きく拡張することができ、並びにその弛緩状態に戻ることができる。ストラップはまた、その弛緩状態の長さの3倍又は4倍まで延びることが可能であり、張力が取り除かれると、いずれの損傷を受けずにその元の状態に戻ることができる。弾性限度はしたがって、ストラップの弛緩状態における長さの2倍以上、3倍以上、又は4倍以上である。典型的には、ストラップは、長さ約20〜30cm、幅3〜10mm、厚さ約0.9〜1.5mmである。ストラップは、連続ストラップとして第1端部から第2端部まで延びてもよく、又はストラップは、更なる締結具若しくはバックルにより互いに接合することのできる複数の部品を有してもよい。例えば、ストラップは、マスク本体を顔面から外す際に、着用者が迅速に分離することのできる締結具によって一緒に接合された、第一の部品及び第二の部品を有してもよい。本発明に関して使用することができるストラップの例が、米国特許第6,332,465号(Xueら)に示されている。ストラップの1つ以上の部品を接合するのに使用することができる締結又は留め金機構の実施例は、例えば次の、米国特許第6,062,221号(Brostromら)、同第5,237,986号(Seppala)、及び欧州特許第1,495,785(A1)号(Chien)、並びに米国特許出願公開第2009/0193628(A1)号(Gebrewoldら)及び国際公開第2009/038956(A2)(Spepanら)に示されている。
【0027】
指摘したように、内部気体空間から呼気を排除し易くするために、マスク本体に呼気弁を取り付けてもよい。呼気弁の使用は、マスク内部からの暖かい湿った呼気を迅速に除去することにより、着用者の心地よさを改善し得る。例えば、米国特許第7,188,622号、同第7,028,689号、及び同第7,013,895号(Martinら)、同第7,493,900、同第7,428,903号、同第7,311,104号、同第7,117,868号、同第6,854,463号、同第6,843,248号、及び同第5,325,892(Japuntichら)、同第7,849,856号、同第6,883,518号(Mittelstadtら)、及び同再特許第RE 37,974号(Bowers)を参照のこと。呼気を内部気体空間から外部気体空間へと迅速に運搬するために、好適な圧力降下を提供し、かつマスク本体に適切に固定され得る、本質的に任意の呼気弁が本発明に関して使用することができる。
【実施例】
【0028】
試験方法
以下の試験方法を使用してフィルタウェブ、成型されたフォームエレメント、及び完成したマスクを評価した。
粒子浸透及び圧力降下
フィルタウェブ及び完成したマスクの粒子浸透及び圧力降下の測定は、TSI Incorporated(St.Paul,Minnesota)からのAFT Tester,Model 8130を使用して測定した。20ミリグラム/立方メートル(mg/m
3)の濃度かつ毎秒13.8cm(cm/秒)の面速度で送達される、塩化ナトリウム(NaCl)を試験エアロゾルとして暴露した。試験時に、フィルタウェブ又はマスクの下流側のエアロゾルの濃度を測定し、この暴露濃度と比較した。被験体の%浸透は、投与物の上流の濃度で除された、塩化ナトリウムの下流の濃度の%として示され、%浸透として報告する。フィルタ効率に加えて、被験体全体の圧力降下は、パスカル(Pa)で記録し、報告する。
【0029】
マスクの剛性
マスクの剛性は、J.A.King & Co.(2620 High Point Road,Greensboro,NC)から入手可能なKing Stiffness Tester;model SASD−672を使用して測定する。剛性は、直径2.54cmの平坦面のプローブをフェイスマスクの頂点へ押すのに必要とされる力として測定する。固定具プラットフォーム上に置かれたマスクの頂点の上に、試験を実施するためにプローブを位置合わせする。プローブを次いで、マスクが21mm圧縮されるように、32mm/秒のクロスヘッド速度でマスクに向けて延ばす。プローブが完全に延びた部分の端部において、マスクを圧縮するのに必要とされる力をニュートン(N)で記録した。
【0030】
見かけのフォーム密度
フォーム材料の見かけの密度は、ASTM D3575−08、Suffix W、方法Aによって測定する。見かけ密度の値は、グラム/立方cm(g/cm
3)で報告する。
【0031】
圧縮強度
フォームの圧縮強度は、ASTM D3575−08、Suffix D、方法Aによって測定する。圧縮強度の値は、キロパスカル(kPa)として報告する。
【0032】
等価呼吸開口部
マスクの等価呼吸開口部(EBO)は、まずマスクのフォーム層を通る代表的な呼吸用開口部の動水半径R
hを見つけることによって決定する。開口部の動水半径は、開口部の面積を開口部外周長さによって除すことによって計算する。代表的な開口部の面積及び外周は、光コンパレータ(Union Optical Co.,LTDの高倍率顕微鏡DZ2及びMedia Cybernetics,Inc.のImage−Pro(登録商標)Plus)を使用して求める。マスク内で2つ以上の呼吸用開口部構成が使用される場合、代表的な各開口部の動水半径
【0033】
【数1】
を決定し、式中、nは特定の開口部の寸法を表す。次いでEBOを以下のとおり計算する。
【0034】
【数2】
式中、
【0035】
【数3】
は特定の寸法の代表的な開口部の数である。
【0036】
【数4】
は代表的な開口部nの動水半径である。
【0037】
全て同じ動水半径のn個の開口部を有するマスクに関して、EBOは以下のように計算する。
【0038】
【数5】
【0039】
動水半径の値はセンチメートル(cm)で表され、計算されたEBOの値は平方cm(cm
2)で表される。
【0040】
(実施例1)
本発明のカップ形状のマスクは2つの基本要素、すなわち構造的フォーム成形層及びフィルタプリフォームから調製する。構造的フォーム成形層は、まず2つの材料層(内側柔軟層及び外側構造層)を積層することによって調製する。外側構造層に使用する材料は、Yongbo Chemical,(Daejeon−Si,Korea)により供給された独立気泡ポリプロピレンフォームEPILON(登録商標)Q1001.1 Wだった。外側構造層の見かけ密度及び圧縮強度はそれぞれ、0.1013g/cm
3及び1.14kPaだった。内側柔軟層の材料は、これもまたYongbo Chemical,(Daejeon−Si,Korea)により供給された独立気泡ポリエチレンフォームEPILON(登録商標)R3003だった。フォームの見かけ密度及び圧縮強度はそれぞれ、0.0322g/cm
3及び0.32kPaだった。層の積層は、フレームラミネーション(flame lamination)によって達成した。
【0041】
フレームラミネーションは、外側構造フォーム層の面を連続ロール積層プロセスにおいて、制御された炎(ここではフォームの表面は約200℃まで加熱された)に暴露することを伴った。柔軟なフォーム層を、ラミネータ上のロールから引き出し、次いで、制御されたライン張力下で加熱されたフォーム表面と接触させた。この層を次いで、直径20cmの回転マンドレルの上に45°の進入角で通過させた。ライン張力及び回転マンドレルとの接触による圧縮下で、加熱されたフォームを冷却することで、これらの層をその境界面において粘着して接合させる。ラミネータのライン張力及び速度はそれぞれ(ライン幅に対し)3N/cm及び15.1m/分だった。この積層された構造体を次いで、打ち抜き型を使用して、積層体を貫通して切断される呼吸用開口部のパターンに穿孔した。
【0042】
全体的に均等に離間され、かつ
図2に示された三角形及び台形のパターンを呈する凹部領域によって包囲された12個の三角形及び台形の開口部が存在する。成形された開口部は8mm〜35mmの範囲の辺長を有した。全体的にマスク本体の中央領域を構成する領域にわたって12個の開口部を作製した。成形層の中央領域(この上で穴のパターンが切断された)は、約92mmの大きな外周と、約28mmの小さな外周を有し、約423mm
2の面積を占有した。マスクの鼻梁となる部分に近接する成形層は、切断しないままとした。ダイカットされたフォーム積層体シートを次いで、成型工程によって
図1〜4に示すマスクの構造的カップ形状に成形した。凹部領域。
【0043】
この切断された積層体は、噛み合う雄型半体と雌型半体との間で、積層された層を圧縮することによって成型した。概ね半球体のマスク形状の雌型は約55mmの深さ及び310cm
3の容積を有し、この成形型の雄型部分は、成形型の雌型の半体の鏡像であった。成型工程において、成形型の雄型半体及び雌型半体を約105℃に加熱した。この積層されたシートを次いで、マスクの鼻の部分が正しく方向付けられるように、成形型の半体間に配置し、この型を2.5mmの間隙まで閉じた。成形型を開き、構造カップを取り出す前に、保持時間を約10〜15秒維持した。成型工程の後に、マスクの開口部は概ね寸法が均一であり、1.4〜4.62mmのR
hを有すると測定された。成形層は約15.9cm
2のEBOを有した。開口部は成形層の総表面積の10%を占有した。
図2に示すように、開口部はマスク本体の中央領域に配置した。マスク本体を背面から見たときに、凹部領域間で谷部として現れるリブによって、開口部をそれぞれ互いから分離させた。リブは約4mm幅であった。成形層の外側表面から5mmの深さを呈する凹部領域によって、開口部が包囲された。凹部領域は合計で、成形層の総表面積の約14%を占有した。各凹部領域は、内部に配置された開口部を含め、表面積の約6.4〜14.1cm
2を個々に占有する。
【0044】
マスクの濾過エレメントをプリフォームとして構築し、このエレメントはカップ形状の成形層に取り付けた。プリフォームは、フィルタ及び保護用カバーウェブを一緒に層状にすることによって、そして層を貫通するように成形縁部を超音波溶接することによって作製した。プリフォームを構築するために、198cm×202cmの材料のシートを、カバーウェブ/フィルタウェブ/フィルタウェブ/カバーウェブの順に層状にした。次いで略放物線状の湾曲部を、これらの層を貫通するように溶接し、構造フォームカップの弓状の外形に似た形状が得られた。プリフォームに使用したカバーウェブは、Toray Advanced Material Korea Inc.(Seoul,Korea)から入手可能な30g/平方メートル(gsm)のポリプロピレンのスパンボンド、LIVESEN(登録商標)30SSだった。使用したフィルタウェブは110g/平方メートル(gsm)のブローンマイクロファイバーウェブであり、Davis,C.N.の「The Separation Of Airborne Dust Particles」(Institution Of Mechanical Engineers,London,Proceedings 1B,1952)に説明されている方法に従って計算したとき、9マイクロメートル(μm)の有効繊維直径(EFD)を有した。13.8パスカル(Pa)の圧縮負荷にかけられたとき、このマイクロファイバーウェブは厚さ1.7ミリメートル(mm)を有した。Wente,Van Aの「Superfine Thermoplastic Fibers」(48 Indus.Engn.Chern.,1342 et seq.(1956)に一般に教示されている方法を使用して、ポリプロピレン(Fina Oil and Chemical Co.(Houston,Texas)からの「Fina 3857」)からマイクロファイバーウェブを作製した。米国特許第6,119,691号に全体的に記載される方法によって、帯電状態の静電荷(エレクトレット)をマイクロファイバーに誘導した。得られたウェブは、3.2%の浸透及び73.5Paの圧力降下を有し、0.46の品質係数Q
Fを呈した。実施例のマスクを形成するために、カバーウェブとフィルタ媒体の積層体であるプリフォームを折り畳まずに、フィルタ媒体をカップ部に向けた状態で成形層の上に配置した。次いで、超音波溶接を使用してプリフォームを成形層までその外側のリムにおいて融着させて組立体をマスク基部の周囲で縁部封止し、余分な材料を切り落とした。
【0045】
マスクを、破砕耐性(剛性)、粒子浸透、及び圧力降下について評価した。試験の結果を表1に示すが、これはEBOの値も含んでいる。
【0046】
(実施例2)
得られた開口部が、直径5mmの円形の穴であったということを除き、実施例1に従って実施例2を作製した。これらの穴は上記の凹部領域に配置した。12個の凹部領域に約80の穴があった。マスク本体の開口部は概ね寸法が均一であり、1.3mmのR
hを有すると測定された。成形層のEBOは約15.7cm
2だった。開口部は成形層の総表面積の約26%を占有した。
【0047】
(実施例3)
熱接合した不織布ウェブを柔軟層として使用したことを除き、実施例1のように実施例3を作製した。4デニール(dpf)の低温融解繊維(Huvis Corp.(Seoul,Korea)のLMF4 DE’,51mm)と6デニールのポリエステルのステープルファイバ(Huvis Corp.,(Seoul,Korea)のRSF6 DE’,38mm)のブレンドを使用して、エアレイ装置「Rando Webber」(Rando Machine Corporation(Macedon,N.Y.)から入手可能)上で200gsmの不織布ウェブを調製した。このブレンドの配合は、4dpfの繊維が70重量%と6dpfの繊維が30重量%だった。遊離ウェブは、120℃のオーブンに30秒間、このウェブを通過させて熱接合させた。
【0048】
マスクを、破砕耐性(剛性)、粒子浸透、及び圧力降下について評価した。試験の結果を表1に示すが、これはEBOの値も含んでいる。
【0049】
(実施例4)
実施例2の呼吸開口部のパターンを使用したことを除き、実施例3のように実施例4を作製した。
【0050】
マスクを、破砕耐性(剛性)、粒子浸透、及び圧力降下について評価した。試験の結果を表1に示すが、これはEBOの値も含んでいる。
【0051】
比較実施例1
比較実施例1は、同様の濾過層及び従来の不織布内側層を使用して、実施例に1に記載の方式で調製し、試験した。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例のマスクは全体的に比較用サンプルよりも高い圧力降下を呈したが、実施例のマスクは、快適な付け心地であり、顔に対して良好なフィットをもたらすということが分かった。成形層は、全体のマスクの形状を保持したまま、内側柔軟層が着用者の鼻及び顎の領域の周りに適合し、フィット感を高めるということも認められた。成形層の相当な部分がフォームによって閉鎖されたが、マスクを通る呼吸抵抗は驚く程小さかった。