(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178342
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】自動車のディスクブレーキのパッド保持装置
(51)【国際特許分類】
F16D 65/097 20060101AFI20170731BHJP
F16D 55/226 20060101ALI20170731BHJP
F16D 65/02 20060101ALI20170731BHJP
F16D 65/092 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
F16D65/097 A
F16D55/226 104H
F16D65/02 E
F16D65/092 D
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-556027(P2014-556027)
(86)(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公表番号】特表2015-507155(P2015-507155A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】EP2013052276
(87)【国際公開番号】WO2013117561
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2016年1月29日
(31)【優先権主張番号】102012002734.6
(32)【優先日】2012年2月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597166361
【氏名又は名称】クノール−ブレミゼ ジュステーメ フューア ヌッツファーツォィゲ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KNORR−BREMSE System fuer Nutzfahrzeuge GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】バオムガルトナー,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ペシェル,ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルト,アレクサンダー
【審査官】
山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−145835(JP,A)
【文献】
特開2010−270894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/097
F16D 55/226
F16D 65/02
F16D 65/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキディスクを跨ぐブレーキキャリパと、
走入側と走出側の支持体角部(2、3)とこの支持体角部(2、3)を互いに連結するブリッジ部分(4)を有する車両側に定置されたブレーキ支持体(1)と、
パッド支持板(51)とそれに固定された摩擦パッドを有し、前記支持体角部(2、3)と前記ブリッジ部分(4)によって形成されたパッド用竪穴(7)内で案内されている少なくとも1個のブレーキパッド(5)と、
を備え、
前記ブレーキ支持体(1)の前記支持体角部(2、3)の少なくとも1個と、この支持体角部に隣接する前記パッド支持板(51)の支持面が遊びをもって係合して相互に固定可能であり、
少なくとも1個の前記ブレーキパッド(5)が前記ブレーキディスクの軸方向に対して横向きに延在しかつ前記ブレーキパッド(5)上で半径方向に撓むことができるパッド保持ばね(6)によってばね付勢されて前記パッド用竪穴(7)内で保持されている自動車のディスクブレーキのパッド保持装置において、
前記ブレーキ支持体(1)の前記支持体角部(2、3)に隣接する前記パッド支持板(51)の支持面が突出部(52、53)を備え、該突出部が前記パッド支持板(51)の方に向いた前記支持体角部(2、3)の内面の各アンダーカット部(22、32)内に係合するものであり、
前記少なくとも1個のパッド保持ばね(6)が、前記ブレーキ支持体(1)の前記ブリッジ部分(4)の方に向いた前記ブレーキパッド(5)の側面と、前記ブレーキ支持体(1)の前記ブリッジ部分(4)との間で前記パッド用竪穴内に配置され、
前記パッド保持ばね(6)が組み立て状態で、前記ブレーキパッド(5)を前記ブレーキ支持体(1)の前記ブリッジ部分(4)から離間し、かつ、前記支持体角部の前記アンダーカット部(22、32)に対して前記突出部(52、53)を押圧するよう、少なくとも1個のパッド保持ばね(6)が配置され、
制動時に、前記走出側にある前記突出部(52)より上にある前記支持体角部(2)の方に向いた前記ブレーキパッド(5)の側面と、該走出側にある前記アンダーカット部(22)より上もある前記支持体角部(2)の内面が接触することを特徴とするパッド保持装置。
【請求項2】
前記パッド保持ばね(6)が板ばねとして形成されていることを特徴とする請求項1記載のパッド保持装置。
【請求項3】
前記パッド保持ばね(6)がコイルばねとして形成されていることを特徴とする請求項1記載のパッド保持装置。
【請求項4】
前記パッド保持ばね(6)が皿ばねとして形成されていることを特徴とする請求項1記載のパッド保持装置。
【請求項5】
前記パッド保持ばね(6)がねじりばねとして形成されていることを特徴とする請求項1記載のパッド保持装置。
【請求項6】
該パッド保持装置が、商用車のディスクブレーキのパッド保持装置であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のパッド保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載した、自動車、特に商用車のディスクブレーキのパッド保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキのこのようなパッド保持装置は従来技術において多数の態様が知られている。
【0003】
ブレーキパッドは一般的に、ブレーキ支持体のパッド用竪穴内を案内され、パッド保持ばねによって、ブレーキ支持体を跨ぐブレーキキャリパのパッド保持用湾曲部材に対して保持されている。その際、パッド保持ばねはブレーキパッドをブレーキ支持体に対して力F
Fで押し付ける。制動過程中、ブレーキパッドはブレーキパッドに伝達された回転モーメントMによりパッド保持ばねのばね力に抗して回転点回りに動くことができる。この回転点はブレーキ支持体の走出側の支持体角部の上端範囲に存在する。
【0004】
ブレーキパッドのこの動きにより、ブレーキキャリパの押圧片とそれに配置されたねじ付き管に回転モーメントが伝達されることになるので、ブレーキパッドの回転は予定していない摩耗調整をもたらす。
【0005】
ブレーキキャリパのこのような回転運動を防止するために、ブレーキ支持体の支持体角部と、支持体角部を連結するブレーキ支持体のブリッジ部分とによって形成されたブレーキパッド用竪穴内で、ブレーキパッドを係合して固定保持することは目的を達成しない。なぜなら、ブレーキパッドとブレーキ支持体の製作に起因する公差が最低遊びを必要とするからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、制動過程中のブレーキパッドの上記回転を効果的に防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴を有する自動車のディスクブレーキのパッド保持装置によって解決される。
【0008】
このように形成されたパッド保持装置は特に、少なくとも1個のパッド保持ばねがブレーキ支持体のブリッジ部分の方に向いたブレーキパッドの側面と、ブレーキ支持体のブリッジ部分との間で、パッド用竪穴内に配置されている点を特徴とする。この場合、パッド保持ばねは組み立て状態でブレーキパッドを、ブレーキ支持体のブリッジ部分から離して支持体角部に遊びのないように押し付ける。
【0009】
パッド保持ばねがブレーキパッドをブレーキ支持体のブリッジ部分の方ではなく、反対方向の半径方向外側に押圧するように配置されていることにより、ブレーキパッドは力F
Fによって、ブレーキパッドとブレーキ支持体角部との間の係合部内に直接押圧される。それによって、力がかかっていない状態、すなわち制動過程が発生していない状態で、ブレーキパッドは半径方向外側に向けてブレーキ支持体角部に係合する。この場合、同時に、ブレーキパッド用竪穴内へのブレーキパッドの組み込みおよびブレーキパッド用竪穴からのブレーキパッドの分解のために必要な公差が存在し、必要な熱膨張補償が保証される。制動過程が開始されると、公差に基づいて、走出側の支持体角部の範囲においてブレーキパッドが傾動することができる。しかしこれは、走出側のブレーキ支持体角部に対するブレーキパッド側部の接触による、走出側のブレーキ支持体角部における摩擦力F
Rによって防止される。
【0010】
ブレーキパッドが係合部の半径方向外側の側面に接触することにより 制動過程に基づく回転モーメントの発生時に、ブレーキパッドの回転点が走出側支持体角部から走入側支持体角部へ移動し、それによってブレーキディスクの主回転方向へのブレーキパッドの回転運動が効果的に防止される。
【0011】
本発明の有利な態様が従属請求項の主題である。
【0012】
有利な態様では、パッド保持ばねが、板ばね、コイルばね、皿ばねまたは回転ばねもしくはねじりばねとして形成されている。これらのばねはすべて、ブレーキをかけていない状態で支持体角部またはブレーキパッドの半径方向外側の側面でブレーキパッドを係合保持することができる。
【0013】
他の態様では、パッド保持ばねがブレーキキャリパに固定されたパッド保持用湾曲部材に支持され、パッド保持ばねが引張りばねとして形成されるように、パッド保持装置が形成されている。本発明に係るこの構造によっても、ブレーキパッドは支持体角部の半径方向外側範囲で係合保持される。それによって、ブレーキをかけた際の回転阻止の所望な作用がこの構造によっても効果的に防止される。
【0014】
次に、添付の図に基づいて、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来技術で知られているパッド保持装置の正面図である。
【
図2】本発明に係るパッド保持装置の第一の実施の形態の正面図である。
【
図3】本発明に係るパッド保持装置の他の実施の形態の正面図である。
【
図4】本発明に係るパッド保持装置の他の実施の形態の正面図である。
【
図5】本発明に係るパッド保持装置の他の実施の形態の正面図である。
【
図6】本発明に係るパッド保持装置の他の実施の形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次の図の説明において、上側、下側、左側、右側、前方、後方等のような用語は専ら、パッド保持装置、ブレーキ支持体、パッド保持ばね等の、それぞれの図で選択された例示的な図示および位置に関連している。これらの用語は限定的に理解すべできではない。すなわち、いろいろな作動位置によってあるいは鏡像対称的な設計等によって、この関連は変化し得る。
【0017】
図1は、従来技術で知られている自動車のディスクブレーキのパッド保持装置の正面図である。パッド保持装置は2個の支持体角(つの)部2、3を有するブレーキ支持体1を備えている。この支持体角部はブリッジ部分4によって互いに連結され、一緒にパッド用竪穴7を形成している。このパッド用竪穴内の両側で、図示していないブレーキディスクに付設されたブレーキパッド5が位置決め可能である。
【0018】
ブレーキパッド5自体はブレーキパッド板51と、ブレーキディスク5寄りに設けられた(図示せず)摩擦パッドとからなっている。
【0019】
ブレーキパッドは、組み立て状態でパッド保持ばね6によってばね付勢されてパッド用竪穴7内で定置保持されている。パッド保持ばね6は(図示せず)ブレーキキャリパのパッド保持用湾曲部材8に固定され、ブレーキパッド5をばね力F
Fによってブレーキ支持体1に対して支持体ブリッジ4の方へ押し付けている。
【0020】
制動過程が開始されると、ブレーキパッドがブレーキディスクに対して押し付けられ、それによって主回転方向HDRのブレーキディスクの回転により、ブレーキパッドがパッド保持ばねのばね力に抗して、走出側の支持体角部2の上端に位置する回転点D回りに動く。例えばパッド支持体板51に側方突出部を形成し、ブレーキパッド5の方に向いた支持体角部2、3の内面に、側方突出部に対応する凹部を形成することにより、ブレーキパッド5をブレーキ支持体1の支持体角部2、3に係合させても、上記の回転運動を防止するためには不十分である。なぜなら、これらの部品の製作公差が最低遊びを必要とするからである。
【0021】
図2には、自動車の本発明に係るパッド保持装置の有利な第一の実施の形態が示してある。
【0022】
図1に示したパッド保持装置と異なり、パッド保持ばねは、組み立て状態でブレーキパッド5をブレーキ支持体1のブリッジ部分4から離して支持体角部2、3に対して遊びのないように押し付けるよう配置されている。
【0023】
パッド保持ばねは
図2に示した実施の形態では板ばねとして形成されている。この板ばねはその中央が、ブリッジ部分4に向き合うブレーキパッド5のパッド支持板51の側57に設けた凹部54内で、好ましくは保持用湾曲部材61によって保持されている。この保持用湾曲部材はパッド保持ばね6の長手方向に対して垂直にパッド保持ばねを取り囲んでいる。パッド保持ばね6の両端範囲62はブレーキパッドの方に向いたブリッジ部分4の上面に支持され、それによってブレーキパッド5を力F
Fで押圧する。この押圧により、パッド支持板51の側面55、56に形成された突出部52、53が、ブレーキパッド5の方に向いた支持体角部2、3の内面21、31に形成された凹部22、32の半径方向外側にあるエッジに押し付けられる。
【0024】
上方に押圧されたブレーキパッド5によって発生する、ブレーキパッドの下面57とブリッジ部分4の上面との間およびブリッジ部分4の近くの凹部22、32の範囲とパッド支持板51の突出部52、53との間の隙間71は、このようなパッド保持装置の場合に必要な熱膨張補償と、ブレーキパッド5の組み立て分解のために必要な公差を保証する。
【0025】
ブレーキパッドを持ち上げることによって、大きな利点が生じる。このブレーキパッドの持ち上げは、ブレーキパッド5が支持体角部2、3の凹部22、32の半径方向外側に接触するように行われる。それによって、制動過程の際に作用する回転モーメントMが回転点D1を、走出側の支持体角部2の上側エッジから、パッド支持板51の突出部53と走入側の支持角部3の凹部32の接触範囲へ移動させ、従ってブレーキパッド5は作用する回転モーメントMによって、ブレーキパッド5の走出側で半径方向内側に傾斜させられるであろう。しかしこれは、走出側の支持体角部2に向き合うブレーキパッド5の側面55が、ブレーキパッド5の方に向いた走出側の支持体角部2の内面21に接触することによって防止される。この側面55と内面21の相互の接触により、摩擦力F
Rが回転モーメントMに反作用するので、これにより制動過程中のブレーキパッド5の回転運動が効果的に防止される。
【0026】
図3に示した本発明に係るパッド保持装置の実施の形態の場合には、パッド保持ばね6が同様に皿ばねとして形成されている。パッド保持ばね6の端範囲62はブレーキパッド5の下面57に接触し、板ばねとして形成されたパッド保持ばねの中央範囲はブリッジ部分4に支持されている。
【0027】
図4に示した本発明に係るパッド保持装置の実施の形態の場合には、パッド保持ばねがコイルばねとして形成されている。ここでは各々のブレーキパッド5のために、好ましくは2個のこのようなコイルばねが設けられている。このコイルばねはブリッジ部分4に支持されて、ブレーキパッド5を上方へ押圧し、ブレーキパッドを支持体角部2、3に係合させている。
【0028】
図5に示した本発明に係るパッド保持装置の実施の形態の場合には、パッド保持ばね6が2個の皿ばねの形に形成されている。この皿ばねは
図4に示した実施の形態のように、ブレーキパッド竪穴7内のブレーキパッド5の走入側エッジの近くまたは走出側エッジの近くで、ブリッジ部分4の上面に支持されて、それぞれブレーキパッド5の下面57を押圧し、ブレーキパッドを支持体角部2、3に係合させている。
【0029】
図6には、本発明に係るパッド保持装置の実施の形態が示してある。この実施の形態の場合には、パッド保持ばね6がねじりばねとして形成され、このねじりばねはブリッジ部分4内に固定され、ブレーキパッド5を持ち上げ位置で支持体角部2、3に係合させて保持している。
【0030】
パッド保持ばねを引張りばねとして形成した実施の形態が考えられる。この引張りばねは
図1に示した従来技術に係るパッド保持装置において示すように、ブレーキキャリパに固定したパッド保持用湾曲部材8に支持されている。
【符号の説明】
【0031】
1 ブレーキ支持体
2 支持体角部
3 支持体角部
4 ブリッジ部分
5 ブレーキパッド
6 パッド保持ばね
7 パッド用竪穴
8 パッド保持用湾曲部材
21 側面
22 凹部
32 凹部
51 ブレーキパッド板
52 突出部
53 突出部
54 凹部
55 側面
56 側面
57 下面
61 保持用湾曲部材
62 保持用湾曲部材の端範囲
71 隙間
D 回転点
D1 回転点
F
F 力
F
R 摩擦力
HDR 主回転方向
M 回転モーメント