(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、炉本体内において流動媒体が流動することによって形成される流動層で廃棄物を加熱することにより当該廃棄物を燃焼させる流動床炉が知られている。例えば、特許文献1には、炉本体と、炉本体内で流動層を形成する流動媒体と、炉本体内から流動媒体と不燃物との混合物を抜き出すための抜出管と、抜出管内の混合物を排出する排出装置と、を備える流動床式ガス化炉が開示されている。炉本体の底壁には、前記混合物の通過を許容する形状の排出口が形成されている。抜出管は、前記排出口を通じて炉本体内と当該抜出管内とが連通するように上下方向に延びる姿勢で炉本体の底壁に接続されている。排出装置は、抜出管の下端に接続されており、抜出管から落下してくる混合物を排出する。
【0003】
上記流動床式ガス化炉や流動床式焼却炉等の流動床炉では、流動層で廃棄物が燃焼又はガス化されることにより燃焼ガス又は可燃性ガスが発生する。このガスは、炉本体の上部を通って下流側の設備に導入され、適宜処理される。一方、廃棄物のうち流動層で燃焼又はガス化されなかった不燃物と流動媒体との混合物は、抜出管を通って排出装置から排出される。なお、排出装置から排出された混合物は分級装置に送られてここで不燃物と流動媒体とに分離され、流動媒体は炉本体内に戻される。このようにして廃棄物の燃焼又はガス化が継続的に行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるような流動床炉で処理される対象物が廃棄物である場合、炉本体の排出口が閉塞し、流動層で発生したガスが抜出管及び排出装置を経由して外部に漏出するおそれがある。具体的に、設計範囲外の不適物(比較的長い形状のパイプ等の不燃物)を含んだ廃棄物が炉本体に供給されてしまう場合がある。この場合、前記不適物が炉本体の排出口を跨ぐようにして当該炉本体の底部に留まることにより、本来は詰まらずに排出されるべき不燃物が当該不適物に引っかかるなどして堆積することで前記排出口を閉塞するおそれがある。前記排出口が閉塞されると、炉本体内から抜出管への混合物の落下量に比べ、排出装置による抜出管内からの混合物の排出量の方が多くなるため、前記排出口の閉塞前、すなわち抜出管内が混合物で満たされていたときに比べて抜出管内の混合物の量が次第に減少する。このため、流動層で生じたガスが抜出管内を通って外部に漏出するおそれがある。具体的に、抜出管内に混合物が満たされているときは、その混合物が抜出管内をシールしているため、流動層で生じたガスが抜出管を通って外部に漏出することが有効に防止されているが、前記排出口の閉塞に起因して前記シール性が損なわれる程度まで抜出管内の混合物の量が減少すると、前記ガスが抜出管を通じて外部に漏出する懸念がある。
【0006】
本発明の目的は、流動層で生じたガスが抜出管を経由して外部に漏出することを抑制可能な流動床炉の運転方法及び流動床炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、流動媒体を流動化ガスで流動化させることによって形成される流動層で廃棄物を加熱することにより当該廃棄物からガスを取り出す流動床炉の運転方法であって、前記流動床炉として、前記流動媒体と、この流動媒体と前記廃棄物に含まれる不燃物との混合物を下方に向かって排出可能な排出口を有する炉本体と、前記排出口を通じて前記炉本体内から前記混合物が下方に抜き出されるように前記炉本体から下方に向かって延びる形状の抜出管と、を有するものを利用し、前記流動層が形成されるように前記炉本体内の前記流動媒体に対して前記流動化ガスを供給する工程と、前記流動層に前記廃棄物を供給する工程と、前記抜出管の下方の開口から当該抜出管内の前記混合物を排出する工程と、前記抜出管に空洞が生じたときに前記抜出管内からの前記混合物の排出操作を停止する工程と、を備える運転方法を提供する。
【0008】
この運転方法では、抜出管内に空洞が生じたときに当該抜出管内からの混合物の排出が停止されるので、早期に抜出管を通じたガスの漏出を抑制することが可能となる。具体的に、不燃物の堆積に起因して前記排出口が閉塞すると、当該排出口を通じて炉本体内から抜出管に流入する混合物の量よりも排出工程において抜出管内から排出される混合物の量の方が多くなるため、抜出管内の混合物の量が次第に減少し、これにより抜出管の上部に空洞が生じる。前記排出操作を停止する工程では、前記空洞が生じたときに抜出管内からの混合物の排出を停止するので、すなわち抜出管内の混合物によるシール性が損なわれる前の早い段階で抜出管内からの混合物の排出を停止するので、抜出管を通じたガスの漏出が抑制される。なお、排出操作を停止する工程における排出操作の停止は、自動及び手動のいずれで行われてもよい。
【0009】
例えば、前記排出操作を停止する工程では、前記抜出管内の温度又は抜出管の表面の温度が所定値以下になったときに前記抜出管内に前記空洞が生じたと判定して前記排出操作を停止してもよい。
【0010】
このようにすれば、抜出管内の温度又は抜出管の表面の温度を監視するという簡単な構成で抜出管内に空洞が生じたことを検知して前記排出操作を停止することができる。具体的に、排出口が閉塞されておらず、炉本体内の混合物が抜出管を通じて排出されている間は、高温の流動層から抜出管内へ混合物を介して一定の熱量が流入し続けるため、抜出管内の温度又は抜出管の表面の温度はほぼ一定の範囲内で推移するものの、抜出管内に空洞が生じると、高温の流動層から抜出管内への熱の流入量が大きく低減されるため、抜出管内の温度又は抜出管の表面の温度が急激に低下する。よって、その温度が前記所定値以下になったことをもって抜出管内に空洞が生じたと判定することができる。
【0011】
この場合において、前記排出操作を停止する工程では、前記流動層の温度から前記抜出管内の温度又は抜出管の表面の温度を引いた値が閾値以上になったときに前記抜出管内に前記空洞が生じたと判定して前記排出操作を停止することが好ましい。
【0012】
このようにすれば、より正確に抜出管内に空洞が生じたことを検知して前記排出操作を停止することができる。
【0013】
あるいは、前記排出操作を停止する工程では、前記抜出管内の温度又は前記抜出管の表面の温度の特定期間における変化量が、前記抜出管に前記空洞が生じていないときの前記抜出管内の温度又は前記抜出管の表面の温度の前記特定期間における変化量の最大値よりも大きくなったときに、前記抜出管内に前記空洞が生じたと判定して前記排出操作を停止してもよい。
【0014】
このようにしても、抜出管内の温度又は抜出管の表面の温度を監視するという簡単な構成で抜出管内に空洞が生じたことを検知して前記排出操作を停止することができる。具体的に、排出口が閉塞されておらず、炉本体内の混合物が抜出管を通じて排出されている間は、抜出管内の温度又は抜出管の表面の温度の特定期間における変化量はほぼ一定の範囲内(前記最大値以下の範囲内)で推移するものの、抜出管内に空洞が生じると、抜出管内の温度又は抜出管の表面の温度が急激に上昇する場合、つまり、抜出管内に空洞が生じる前よりも前記変化量が大きくなる場合がある。この理由は、流動層から前記空洞にガスが漏出し、当該ガスに含まれる未燃分がそこで燃焼することによるものと推察される。また、排出口が閉塞すると、高温の流動層から混合物を介した抜出管内への熱の流入量が大きく低減されるため、前記未燃分の燃焼に起因する抜出管内の温度又は抜出管の表面の温度の上昇後、当該温度が急激に低下する。よって、抜出管内の温度又は抜出管の表面の温度の特定期間における変化量(上昇量又は低下量)が、抜出管に前記空洞が生じていないときの抜出管内の温度又は抜出管の表面の温度の特定期間における変化量の最大値よりも大きくなったことをもって抜出管内に空洞が生じたと判定することができる。
【0015】
また、本発明は、廃棄物を加熱することにより当該廃棄物からガスを取り出す流動床炉であって、前記廃棄物を加熱可能な流動層を形成する流動媒体と、前記流動媒体を収容可能な形状を有し、かつ前記流動媒体と前記廃棄物に含まれる不燃物との混合物を下方に排出可能な排出口を有する炉本体と、前記流動媒体によって前記流動層が形成されるように当該流動媒体を流動化させる流動化ガスを前記炉本体内に供給するガス供給部と、前記流動層に前記廃棄物を供給する廃棄物供給部と、前記排出口を通じて前記炉本体内から前記混合物が下方に抜き出されるように前記炉本体から下方に向かって延びる形状の抜出管と、前記抜出管内の前記混合物を排出する排出装置と、前記抜出管内に空洞が生じたことを示す空洞条件が成立したか否かを検知し、当該空洞条件が成立したときに報知信号を出力する報知部と、を備える流動床炉を提供する。
【0016】
本流動床炉では、空洞条件が成立したときに報知信号が出力されるので、早期に抜出管を通じたガスの漏出を抑制することが可能となる。具体的に、前記空洞が生じたときに報知信号を出力することにより、抜出管内の混合物によるシール性が損なわれる前の早い段階で抜出管からの混合物の排出を停止する等の操作が可能となり、これにより抜出管を通じたガスの漏出を抑制することができる。
【0017】
例えば、前記報知信号は、管理室で本流動床炉の運転状況を監視するオペレータが知覚可能なアラームとして利用されることが可能である。この場合、そのアラームを確認したオペレータが排出装置の駆動を停止することにより、シール性の低下が抑制され、これによりガスの流出が抑制される。
【0018】
この場合において、前記報知部は、前記流動層の温度を検知する第一温度センサと、前記抜出管内の温度又は前記抜出管の表面の温度を検知する第二温度センサと、前記空洞条件として前記第一温度センサの検出値から前記第二温度センサの検出値を引いた値が予め設定された閾値以上であるという条件の成立の存否を判定する判定部と、前記判定部が前記空洞条件が成立したと判定したときに前記報知信号を出力する信号出力部と、を有してもよい。
【0019】
このようにすれば、安価な温度センサを用い、流動層の温度と、抜出管内の温度又は抜出管の表面の温度と、を監視するという簡単な構成で抜出管内に空洞が生じたことの検知が可能となる。
【0020】
あるいは、前記報知部は、前記抜出管内の温度又は前記抜出管の表面の温度を検知する抜出管温度センサと、前記空洞条件として、前記抜出管温度センサの検出値の特定期間における変化量が、前記空洞条件が成立していないときの前記抜出管温度センサの検出値の前記特定期間における変化量の最大値よりも大きい、という条件の成立の存否を判定する判定部と、前記判定部が前記空洞条件が成立したと判定したときに前記報知信号を出力する信号出力部と、を有してもよい。
【0021】
このようにしても、安価な温度センサを用いて抜出管内に空洞が生じたことの検知が可能となる。また、この場合、抜出管内の温度又は抜出管の表面の温度のみを監視するというより簡単な構成で前記空洞の発生を検知することができる。
【0022】
また、本発明において、前記報知信号は、前記排出装置の駆動を停止させる信号として当該排出装置に入力されることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、抜出管内に空洞が生じたときに自動的に排出装置の駆動が停止されるので、より確実にガスの漏出が抑制される。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、流動層で生じたガスが抜出管を経由して外部に漏出することを抑制可能な流動床炉の運転方法及び流動床炉を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の好ましい実施形態について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0027】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の流動床式ガス化炉について、
図1〜
図4を参照しながら説明する。
【0028】
図1に示されるように、本実施形態の流動床式ガス化炉は、炉本体10と、流動媒体13と、ガス供給部20と、廃棄物供給部24と、抜出管30と、排出装置40と、報知部50と、を備えている。
【0029】
炉本体10は、上下に長い筒状に形成されている。具体的に、炉本体10は、流動媒体13を下方から支持する底壁11と、この底壁から上方に向かって延びる側壁12と、を有する。底壁11の水平方向の略中央には、流動媒体13と廃棄物に含まれる不燃物18との混合物16を下方に排出可能な排出口11aが形成されている。底壁11は、当該底壁11と側壁12との接続部から排出口11aに向かうにしたがって次第に下方に向かって傾斜する形状を有する。なお、本実施形態では、流動媒体13として、二酸化ケイ素を主成分とする珪砂が用いられている。ただし、流動媒体13は、前記珪砂に限られない。
【0030】
ガス供給部20は、底壁11の下部に設置された風箱22を介して底壁11から流動媒体13に対して当該流動媒体13を流動化させる流動化ガスを供給する。底壁11には、多数のガス噴射口をもつ分散板(図示せず)が設けられており、前記ガス噴射口を通じて供給された流動化ガスで流動媒体13が流動することによって流動層14が形成される。この流動層14で廃棄物供給部24から供給された廃棄物が部分燃焼されることによって可燃性ガスが発生する。可燃性ガスは、炉本体10の上部から当該炉本体10外に導出される。一方、流動層14でガス化されずに残った不燃物18を含む混合物16は、底壁11の排出口11aに向かう。
【0031】
抜出管30は、排出口11aを通じて炉本体10内から混合物16が下方に抜き出されるように底壁11から下方に向かって延びる形状を有する。抜出管30は、風箱22を通過する流動化ガスと接するように配置されている。廃棄物は、設計範囲内の大きさ、すなわち排出口11a及び抜出管30内を余裕をもって通過できる大きさとなるように、炉本体10に供給される前に予め破砕機(図示せず)で破砕されている。
【0032】
排出装置40は、抜出管30内の混合物16を排出する装置である。この排出装置40は、抜出管30の下端に接続されており、抜出管30の下側の開口から落下してくる混合物16を分級装置45へ向けて排出する。抜出管30内の混合物16は、排出装置40のスクリュー押し込み機によって分級装置45へ送られる。
【0033】
分級装置45は、排出装置40から送られてきた混合物16から流動媒体13を分離する装置である。ここで分離された流動媒体13は、図示略の循環装置によって炉本体10内に戻される。なお、分級装置45により分離された不燃物18は、別途処理される。
【0034】
これまで説明したように、本流動床式ガス化炉では、廃棄物供給部24から廃棄物が炉本体10内に継続的に供給され、その廃棄物が流動層14で加熱されることにより当該廃棄物から可燃性ガスが継続的に取り出される。
【0035】
このような運転時において、設計範囲外の不適物19(比較的長い形状のパイプ等の不燃物19)を含んだ廃棄物が炉本体10内に供給され、この不適物19が排出口11aを跨ぐようにして炉本体10の底部に留まる場合がある。この場合、その不適物19が起点となり、排出口11aの周囲で不燃物18が網目状に絡まって堆積することで当該排出口11aを閉塞することがある。そうすると、炉本体10内から抜出管30への混合物16の落下量に比べ、排出装置40による抜出管30内からの混合物16の排出量の方が多くなるため、抜出管30内の混合物16の量が次第に減少する。この結果、
図2に示されるように、抜出管30内の上部に空洞Sが生じる。
【0036】
本実施形態の報知部50は、抜出管30内に前記空洞Sが生じたことを示す空洞条件が成立したか否かを検知し、この条件が成立したときに報知信号を出力する。本実施形態では、報知部50は、流動層14の温度と抜出管30内の温度との温度差ΔTに基づいて前記空洞条件が成立したか否かを判定し、この条件が成立していれば報知信号を出力する。具体的に、報知部50は、流動層14の温度を検知する第一温度センサ51と、抜出管30内の温度を検知する第二温度センサ52と、前記空洞条件の成立の存否を判定する判定部53と、報知信号を出力する信号出力部54と、を有する。
【0037】
第二温度センサ52は、抜出管30内の上部の温度を検知可能な位置に設けられる。具体的に、第二温度センサ52は、抜出管30の上下方向の中央部よりも上部に設けられている。本実施形態では、第二温度センサ52は、前記空洞Sの温度を検知する。
【0038】
判定部53は、前記空洞条件として前記温度差ΔT(第一温度センサ51の検出値T1から第二温度センサ52の検出値T2を引いた値)が予め設定された閾値α以上であるという条件の成立の存否を判定する。具体的に、温度差ΔTに基づいて空洞Sの発生を検知可能な理由を
図3を参照しながら説明する。この
図3に示されるように、排出口11aが閉塞されておらず、炉本体10内の混合物16が抜出管30を通じて排出されている間は、高温の流動層14から抜出管30内へ混合物16を介して一定の熱量が流入し続けるため、前記温度差ΔTはほぼ一定の範囲内で推移するものの、抜出管30内に空洞Sが生じると、高温の流動層14から抜出管30内への熱の流入量が大きく低減されるため、前記温度差ΔTが急激に大きくなる。よって、この温度差ΔTが前記閾値α(例えば50℃)以上になったことをもって抜出管30内に空洞Sが生じたと判定することができる。なお、抜出管30は、流動層14の温度よりも低温の流動化ガスに接しているため、当該抜出管30内の温度は流動層14の温度よりも低くなる。
【0039】
信号出力部54は、判定部53が前記空洞条件が成立したと判定したとき、つまり温度差ΔTが閾値α以上となったときに報知信号を出力する。本実施形態では、報知信号は、排出装置40の駆動を停止する信号として排出装置40に入力される。すなわち、
図4に示されるように、判定部53によって温度差ΔTが閾値α以上であるか否かが判断され(ステップST10)、この結果、温度差ΔTが閾値α以上であれば(ステップST10でYES)、信号出力部54は、排出装置40の駆動を停止する(ステップST11)。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の流動床式ガス化炉の運転方法では、抜出管30内に空洞Sが生じたときに自動的に排出装置40の駆動が停止されるので、すなわち抜出管30内の混合物16によるシール性が損なわれる前の早い段階(抜出管30内の混合物16の高さが例えば1m以上確保されている段階)で抜出管30内からの混合物16の排出が停止されるので、抜出管30を通じた可燃性ガスの漏出が抑制される。
【0041】
また、上記実施形態では、安価な温度センサを用いて流動層14の温度及び抜出管30内の温度を監視するという簡単な構成で抜出管30内に空洞Sが生じたことの検知が可能となる。
【0042】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0043】
例えば、上記実施形態では、判定部53が、温度差ΔTが前記閾値α以上になったことをもって抜出管30内に空洞Sが生じたと判定する例が示されたが、判定部53は、温度差ΔTではなく第二温度センサ52の検出値T2が所定値以下となったことをもって抜出管30内に空洞Sが生じたと判定してもよい。ただし、温度差ΔTに基づいた判定の方が、第二温度センサ52の検出値T2のみに基づいた判定に比べて空洞Sの発生の検知精度は高くなる。例えば、抜出管30内に空洞Sが生じていない場合であっても、流動層14の温度が低下すると抜出管30内の温度が低下する。このため、第二温度センサ52の検出値T2のみに基づいて抜出管30内に空洞Sが生じたか否かを判定する場合、流動層14の温度の低下に起因して、抜出管30内に空洞Sが生じていない場合であっても空洞Sが生じたと誤判定する恐れがある。これに対し、上記実施形態のように温度差ΔTに基づいて判定する場合、そのような誤判定は回避される。
【0044】
また、上記実施形態では、第二温度センサ52が抜出管30内の温度を検知する例が示されたが、
図5に示されるように、第二温度センサ52は、抜出管30の表面の温度を検知してもよい。このようにすれば、抜出管30に温度センサを挿通するための穴を設けることなく抜出管30内の空洞Sの発生を検知することが可能となる。また、第二温度センサ52に抜出管30内を落下する不燃物18が引っかかる、あるいは第二温度センサ52と抜出管30内の混合物16とが接触することによって当該第二温度センサ52が摩耗するといった不具合の発生が回避される。
【0045】
また、上記実施形態では、第二温度センサ52が抜出管30の上部に設けられた例が示されたが、第二温度センサ52は、
図6に示されるように、抜出管30の下部に設けられてもよい。換言すれば、前記温度差ΔTの算出に採用される第二温度センサ52の検出値は、抜出管30内の空洞Sの温度ではなく、抜出管30の下部に堆積している混合物16の温度であってもよい。具体的に、前記空洞Sが生じると抜出管30内の混合物16と炉本体10内の流動層14との熱的な縁が断たれるため、当該抜出管30内の混合物16の温度は前記空洞Sが生じる前のそれに比べて低くなる。よって、第二温度センサ52の検出値として抜出管30の下部の混合物16の温度が採用された場合も、上記実施形態と同様の制御が可能である。
【0046】
また、上記実施形態では、前記空洞条件として、前記温度差ΔTが閾値α以上であることが例示されたが、前記空洞条件はこれに限られない。例えば、抜出管30の上部に発光素子と受光素子とが設けられ、前記空洞条件が、受光素子が発光素子からの出射光を検出したこととされてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、報知信号が排出装置40の駆動を停止する信号として用いられた例が示されたが、この報知信号は、管理室で本流動床式ガス化炉の運転状況を監視するオペレータが知覚可能なアラームとして利用されてもよい。この場合、そのアラームを確認したオペレータが排出装置40の駆動を停止することにより、シール性の低下が抑制され、これにより可燃性ガスの流出が抑制される。
【0048】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態の流動床式ガス化炉について、
図7〜
図8を参照しながら説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0049】
本実施形態では、報知部50のうちの判定部53の構成が第1実施形態のそれと異なる。具体的に、判定部53は、抜出管30内の温度を検知する第二温度センサ52(以下、「抜出管温度センサ」という。)の検出値T2のみに基づいて前記空洞条件の成立の存否を判定する。なお、本実施形態においても、抜出管温度センサは、
図5に示されるように、抜出管30の表面の温度を検知してもよい。本実施形態では、判定部53は、抜出管温度センサの検出値T2の特定期間における変化量が、抜出管30に前記空洞Sが生じていないときの抜出管温度センサの検出値T2の前記特定期間における変化量の最大値よりも大きいときに、抜出管30内に前記空洞Sが生じた、つまり、前記空洞条件が成立したと判定する。なお、前記最大値は、廃棄物処理施設ごとに異なる。この値は、廃棄物処理施設ごとに予め求められ、報知部50に記憶されている。
【0050】
以下、判定部53による上記の判定が可能な理由を、
図7及び
図8を参照しながら説明する。
図7は、廃棄物処理施設Aにおいて、抜出管30に空洞Sが生じていない定常状態での抜出管30内の温度の特定期間(この例では5分間)での変化量を示している。
図7に示されるように、抜出管30に空洞Sが生じていない定常状態では、抜出管温度センサの検出値T2(抜出管30内の温度)は、5分間に約30℃以下の範囲で変化(上昇又は低下)している。つまり、前記廃棄物処理施設Aにおいて前記特定期間Δtが5分間である場合、前記最大値は、30℃である。
【0051】
ところが、排出口11aの閉塞によって抜出管30内に空洞Sが生じると、
図8に示されるように、抜出管温度センサの検出値T2の特定期間Δtにおける変化量(上昇量)ΔT2が、前記定常状態時での前記検出値T2の特定期間Δtにおける変化量ΔT2の最大値Tmよりも大きくなる場合がある。例えば、抜出管30内に空洞Sが生じたときの前記検出値T2の特定期間Δtにおける変化量(上昇量)ΔT2は、前記最大値の約2倍となる。この理由は、流動層14から前記空洞Sにガスが漏出し、当該ガスに含まれる未燃分がそこで燃焼することによるものと推察される。
【0052】
その後、
図8に示されるように、抜出管温度センサの検出値T2は低下し続け、前記温度差ΔT(第一温度センサ51の検出値T1から第二温度センサ52の検出値T2を引いた値)が前記閾値α以上となる。このときの前記検出値T2の特定期間Δtにおける低下量は、前記定常状態時の前記検出値T2の特定期間Δtにおける低下量の最大値よりも大きい。
【0053】
よって、抜出管30内の温度の特定期間Δtにおける変化量(上昇量又は低下量)ΔT2が、抜出管30に前記空洞Sが生じていないときの前記検出値T2の特定期間Δtにおける変化量ΔT2の最大値よりも大きくなったことをもって抜出管30内に空洞Sが生じた、つまり、空洞条件が成立した、と判定することができる。
【0054】
以上のように、本実施形態においても、抜出管30内の温度又は抜出管30の表面の温度を監視するという簡単な構成で抜出管30内に空洞Sが生じたことを検知して排出装置40の駆動を停止することができる。さらに、この実施形態では、第1実施形態よりも早期に、つまり、前記温度差ΔTが前記閾値α以上となる前に、抜出管30内への空洞Sの発生を検知することができる。また、この実施形態では、第一温度センサ51の省略が可能となる。