特許第6178354号(P6178354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178354
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】すべり軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/08 20060101AFI20170731BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20170731BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20170731BHJP
   F16C 9/02 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   F16C33/08
   F16C17/02 Z
   F16C33/10 Z
   F16C9/02
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-39115(P2015-39115)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-161015(P2016-161015A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年6月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】関 大輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 裕史
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−224601(JP,A)
【文献】 特開2013−194830(JP,A)
【文献】 特開2005−337396(JP,A)
【文献】 特開2009−257370(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/104288(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/098290(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/08
F16C 9/02
F16C 17/02
F16C 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒を軸方向と平行に二分割した半割部材を上下に配置したすべり軸受であって、前記下側の半割部材の軸方向端部に、回転方向下流側において円周方向に細溝を設け、前記細溝の軸方向外側に前記すべり軸受の軸との当接面よりも低くなるように形成した周縁部を設け、
前記細溝の長手方向に平行な断面視において、前記細溝の底面に山部と谷部とが交互に配置され
前記半割部材の内周面にコーティング層を設け、前記コーティング層は、前記細溝の少なくとも軸方向内側側面の内周側端部から中途部までを含む範囲に設けられることを特徴とするすべり軸受。
【請求項2】
前記谷部を、長手方向に平行な断面視において、円弧状となるように形成したことを特徴とする請求項1に記載のすべり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すべり軸受の技術に関し、円筒を軸方向と平行に二分割した半割部材を上下に配置したすべり軸受の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンのクランクシャフトを軸支するための軸受であって、円筒形状を二分割した二つの部材を合わせる半割れ構造のすべり軸受が公知となっているが、冷間時に油の粘度が高いためフリクションが大きいという課題がある。そこで、前記軸受の軸方向両端部に、全周に逃げ部分(細溝)を形成した軸受が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−532036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の細溝を形成した軸受では、油の引き込み量増加と軸方向両端部からの油の漏れ量抑制を両立することができず、更なるフリクション低減効果が期待できなかった。
【0005】
そこで、本発明は係る課題に鑑み、総和の流出油量を抑えることができ、更なるフリクション低減効果を得ることができるすべり軸受を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、円筒を軸方向と平行に二分割した半割部材を上下に配置したすべり軸受であって、前記下側の半割部材の軸方向端部に、回転方向下流側において円周方向に細溝を設け、前記細溝の軸方向外側に前記すべり軸受の軸との当接面よりも低くなるように形成した周縁部を設け、
前記細溝の長手方向に平行な断面視において、前記細溝の底面に山部と谷部とが交互に配置され
前記半割部材の内周面にコーティング層を設け、前記コーティング層は、前記細溝の少なくとも軸方向内側側面の内周側端部から中途部までを含む範囲に設けられるものである。
【0008】
請求項2においては、前記谷部を、長手方向に平行な断面視において、円弧状となるように形成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
すなわち、油膜圧力の発生を妨げない程度の細溝を設けることで、摺動面積を減らしつつ、フリクション低減効果を得ることができ、かつ、総和の流出油量を抑えることができる。また、細溝の底面に山部と谷部とが交互に配置されることにより、潤滑油がスムーズに引き込まれ、吸い戻し油量が増加し、フリクション低減効果を得ることができ、かつ、総和の流出油量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るすべり軸受を示す正面図。
図2】(a)本発明の実施形態に係るすべり軸受を構成する半割部材を示す平面図。(b)同じくA−A線断面図。(c)同じくB−B線断面図。
図3】(a)本発明の実施形態に係る細溝を示すA−A線断面拡大図。(b)同じく細溝を示す斜視一部断面図。
図4】本発明の実施形態に係る細溝及び刃具を示すA−A線断面拡大図。
図5】本発明の別実施形態に係る半割部材を示すB−B線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。なお、図1はすべり軸受1の正面図であり、画面の上下を上下方向、画面の手前方向及び奥方向を軸方向(前後方向)とする。
【0013】
まず、本発明の実施形態に係るすべり軸受1を構成する半割部材2について図1及び図2を用いて説明する。
すべり軸受1は円筒状の部材であり、図1に示すように、エンジンのクランクシャフト11のすべり軸受構造に適用される。すべり軸受1は、二つの半割部材2・2で構成されている。二つの半割部材2・2は、円筒を軸方向と平行に二分割した形状であり、断面が半円状となるように形成されている。本実施形態においては、半割部材2・2は上下に配置されており、左右に合わせ面が配置されている。クランクシャフト11をすべり軸受1で軸支する場合、所定の隙間が形成され、この隙間に対し図示せぬ油路から潤滑油が供給される。
【0014】
図2(a)においては、上側および下側の半割部材2を示している。なお、本実施形態においては、クランクシャフト11の回転方向を図1の矢印に示すように正面視時計回り方向とする。また、軸受角度ωは、図2(b)における右端の位置を0度とし、図2(b)において、反時計回り方向を正とする。すなわち、図2(b)において、左端の位置の軸受角度ωが180度となり、下端の位置の軸受角度ωが270度となるように定義する。
【0015】
上側の半割部材2の内周には円周方向に溝が設けられており、中心に円形の孔が設けられている。また、上側の半割部材2の左右に合わせ面が配置されている。半割部材2は、図2(c)に示すように、コーティング層23を有する。
下側の半割部材2の内周において、その軸方向の端部に細溝3が形成されている。
また、細溝3の軸方向外側面を形成する周縁部2aは、半割部材2の外周面からの高さhが、半割部材2の外周面から当接面までの高さDよりも低くなるように形成されている。すなわち、軸方向外側の周縁部2aが周囲のクランクシャフト11との当接面よりも一段低くなるように形成されている。
【0016】
細溝3について図2(b)及び図2(c)を用いて説明する。
細溝3は下側の半割部材2に設けられる。本実施形態においては、細溝3は軸方向に並列して二本設けられている。詳細には、細溝3は、クランクシャフト11の回転方向下流側合わせ面(軸受角度ωが180度)と離間した位置(軸受角度ωがω1)から軸受角度ωが正となる方向(反時計回り方向)に向けて、軸受角度ω2まで円周方向に設けられる。下側の半割部材2においては、図2(b)の右側の合わせ面が回転方向上流側合わせ面、図2(b)の左側の合わせ面が回転方向下流側合わせ面となる。
細溝3の幅は、図2(c)に示すように、wとなるように形成されている。
また、細溝3の深さdは、半割部材2の外周面から当接面までの高さDよりも短くなるように形成されている。また、細溝3の深さdは、図3(a)に示すように、細溝3の長手方向一端から他端に向かうにつれて変化する。
細溝3の底面3aには、図3(a)に示すように、長手方向に平行な断面であるA−A線断面視において、山部3bと谷部3cとが交互に配置されるように形成されている。
山部3bは、谷部3cと谷部3cとの間に設けられている。山部3bは、谷部3cよりも内周側に突出するように形成されている。
谷部3cは、A−A線断面視において、円弧状となるように構成されている。谷部3cの円弧状の端部と隣接する谷部3cの円弧状の端部は連続しており、谷部3cと谷部3cとの連続する部分が山部3bとなるように形成されている。
【0017】
細溝3の底面3aに、山部3bと谷部3cとが交互に配置されるように形成されていることで、吸い戻される潤滑油の流れが図3(b)の矢印に示すようになるので、細溝3に流入してきた潤滑油が細溝3の側面を乗り越えて半割部材2の軸方向内側へ流入しやすくなる。すなわち、潤滑油が、谷部3cから山部3bに沿って移動することで半割部材2の内周面側への流れを作り出して細溝3の側面を乗り越えやすくするものである。
このように構成することにより、潤滑油の吸い戻し量が多くなり、総和の流出油量を抑えることができる。
【0018】
また、周縁部2aが細溝3の底面3aよりも一段高くなるように形成されていることにより、摺動面から軸方向端部に漏れる油や吸い戻した油が再度漏れないための壁となり、漏れ油量を抑制できる。これにより、特に冷間時の引き込み油量が増加し、早期昇温による低フリクション効果を増大することができる。
【0019】
また、周縁部2aが周囲のクランクシャフト11との当接面よりも一段低くなるように形成されていることにより、クランクシャフト11が傾いて軸方向片側端部にのみ接触する状態(片当りする状態)となったときに、周縁部2aとクランクシャフト11との接触機会を減らすことができるため、周縁部2aの損傷を防止することができる。
【0020】
本実施形態に係る細溝3を設けたことにより、FMEP軽減量が増加する。特に、エンジン回転数が低い領域において、FMEP軽減量が増加する。ここで、FMEPとは、フリクションの傾向を見るための値であり、FMEP軽減量が増加するとフリクションが低減する。例えば、エンジンが冷間始動する際などにおいて、FMEP軽減量が増加し、フリクションが低減する。
【0021】
次に、細溝3の形成方法について説明する。
細溝3は、例えば、切削加工により形成されている。
切削加工においては、刃具により半割部材2の内周面を切削する。本実施形態においては、刃具として丸鋸100を用いている。
より詳しくは、図4に示すように、丸鋸100を細溝3の長手方向と平行に移動することで、半割部材2の内周面を切削するものである。
このように構成することにより、丸鋸100を移動させることにより、丸鋸100の外周(円弧)に合わせて、細溝3の底面3aに、谷部3cが円弧状に形成され、谷部3cと谷部3cとの間に山部3bが設けられる。
【0022】
コーティング層23は、半割部材2の内周面上に塗布されることにより形成される。この際、コーティング層23は、図2(c)に示すように、細溝3の軸方向内側端部を覆うように形成されており、より詳しくは、細溝3の軸方向内側の側面の中途部まで塗布されている。このように構成することにより、細溝3の軸方向内側端部をコーティング層23で覆うことにより、クランクシャフト11が傾いて軸方向片側端部にのみ接触する状態(片当りする状態)となったときに、細溝3の軸方向内側端部とクランクシャフト11との摩擦を軽減させることができる。
【0023】
また、図5に示すように、コーティング層23は、細溝3全体を覆うように形成することもできる。このように構成することにより、クランクシャフト11が傾いて軸方向片側端部にのみ接触する状態(片当りする状態)となったときに、細溝3の軸方向内側端部及び軸方向外側端部と、クランクシャフト11との摩擦を軽減させることができる。
【0024】
以上のように、円筒を軸方向と平行に二分割した半割部材2・2を上下に配置したすべり軸受1であって、下側の半割部材2の軸方向端部に、回転方向下流側において円周方向に細溝3を設け、細溝3の軸方向外側にすべり軸受1のクランクシャフト11との当接面よりも低くなるように形成した周縁部2aを設け、細溝3の長手方向に平行な断面視において、細溝3の底面3aに山部3bと谷部3cとが交互に配置される。
このように構成することにより、油膜圧力の発生を妨げない程度の細溝3を設けることで、摺動面積を減らしつつ、フリクション低減効果を得ることができ、かつ、総和の流出油量を抑えることができる。また、細溝3の底面3aに山部3bと谷部3cとが交互に配置されることにより、潤滑油がスムーズに半割部材2の内周面に引き込まれ、吸い戻し油量が増加し、フリクション低減効果を得ることができ、かつ、総和の流出油量を抑えることができる。
【0025】
また、谷部3cを、長手方向に平行な断面視(A−A線断面視)において、円弧状となるように形成したものである。
このように構成することにより、潤滑油が、細溝3の底面3cの谷部3cに沿って移動することで半割部材2の内周面に引き込まれやすくなり、スムーズに軸方向内側へ潤滑油を送ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 すべり軸受
2 半割部材
2a 周縁部
3 細溝
3a 底面
3b 山部
3c 谷部
11 クランクシャフト
図1
図2
図3
図4
図5