特許第6178369号(P6178369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178369
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】サイディングボード用研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/00 20060101AFI20170731BHJP
   B24D 3/28 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   B24B9/00 601C
   B24D3/28
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-175621(P2015-175621)
(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公開番号】特開2017-52020(P2017-52020A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2016年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】396019631
【氏名又は名称】株式会社チップトン
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 勝康
(72)【発明者】
【氏名】加藤 幸三
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−052944(JP,A)
【文献】 特開平08−323597(JP,A)
【文献】 実開平06−071050(JP,U)
【文献】 実公昭39−011796(JP,Y1)
【文献】 登録実用新案第3064081(JP,U)
【文献】 特開平11−159154(JP,A)
【文献】 特開2002−127102(JP,A)
【文献】 特開平08−118217(JP,A)
【文献】 特開2010−052045(JP,A)
【文献】 特開平03−010715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B9/00
B24D3/28
B27C5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイディングボードの端縁の被研削部を鋭角状に研削する装置であって、
前面が砥面となっていて、前記砥面と略直交する回転軸を中心に回転駆動される砥石と、
前記被研削部が前記砥面と略平行をなすように前記サイディングボードを保持するボード保持機構と、
前記砥石と前記ボード保持機構を、前記被研削部の長さ方向に沿い且つ前記被研削部が前記砥面に摺接するように相対移動させる移動機構とを備え、
前記回転軸と平行で且つ前記被研削部の長さ方向と平行な投影面上においては、前記砥面の両端部のうちいずれか一方の端部である研削機能端部が、他方の端部よりも前方に配され、
前記被研削部に対する前記研削機能端部の摺接方向が、前記サイディングボードの化粧面側から裏面側に向かう方向とされていることを特徴とするサイディングボード用研削装置。
【請求項2】
前記回転軸と平行で且つ前記被研削部の長さ方向と平行な投影面上において、前記砥面の両端部のうち研削直前に前記被研削部と対向する側の端部が、前記研削機能端部とされていることを特徴とする請求項1記載のサイディングボード用研削装置。
【請求項3】
前記ボード保持機構は、前記化粧面が斜め上を向く姿勢で前記サイディングボードを保持し、
前記研削機能端部は、前記被研削部を下向きに擦りながら研削するようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のサイディングボード用研削装置。
【請求項4】
前記砥石が、砥粒を合成樹脂製のボンドで固着したものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のサイディングボード用研削装置。
【請求項5】
前記被研削部に対し先に研削を行う第1の前記砥石と、後に研削を行う第2の前記砥石とが、前記被研削部の長さ方向に間隔を空けて配されており、
前記第1の砥石の研削によって前記被研削部に形成される第1の研削面と前記化粧面とのなす角度は、前記第2の砥石の研削によって前記被研削部に形成される第2の研削面と前記化粧面とのなす角度より小さいことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のサイディングボード用研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイディングボード用研削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物の外壁の角部に、2枚のサイディングボードの端縁部を略直角に付き合わせるように取り付ける構造が開示されている。このような取付け構造では、サイディングボードの端縁部が約45°をなすように斜めに研削される。サイディングボードの端縁部を斜めにカットする手段としては、従来、特許文献2に記載されているように外周にダイヤモンドチップを設けた円板形のダイヤモンドチップソーを用いて、サイディングボードの端縁部を斜めに切断する加工方法が用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−159154号公報
【特許文献1】特開2002−127102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、耐候性が求められるサイディングボードは、その構成の大部分がセメント(ALC)を材料としていて硬いため、ダイヤモンドチップソーで切断すると、サイディングボードの鋭角部が欠けてしまう。そのため、ダイヤモンドチップソーで切断した後、別のカッターで面取りをする必要があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、サイディングボードの端縁部を、欠けのない鋭角状に研削することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のサイディングボード用研削装置は、
サイディングボードの端縁の被研削部を鋭角状に研削する装置であって、
前面が砥面となっていて、前記砥面と略直交する回転軸を中心に回転駆動される砥石と、
前記被研削部が前記砥面と略平行をなすように前記サイディングボードを保持するボード保持機構と、
前記砥石と前記ボード保持機構を、前記被研削部の長さ方向に沿い且つ前記被研削部が前記砥面に摺接するように相対移動させる移動機構とを備え、
前記回転軸と平行で且つ前記被研削部の長さ方向と平行な投影面上においては、前記砥面の両端部のうちいずれか一方の端部である研削機能端部が、他方の端部よりも前方に配され、
前記被研削部に対する前記研削機能端部の摺接方向が、前記サイディングボードの化粧面側から裏面側に向かう方向とされているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
砥面のうち被研削部を主として研削するのは、砥面の両端部のうち前方に配されている側の研削機能端部である。そして、研削工程では、研削機能端部が、サイディングボードの化粧面側から裏面側に向かって被研削部を擦る。これにより、サイディングボードの被研削部を、欠けを生じさせずに鋭角状に研削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のサイディングボード用研削装置の一部切欠側面図
図2】サイディングボード用研削装置の一部切欠平面図
図3】被研削部を第1砥石で研削する前の状態をあらわす一部切欠部分拡大平面図
図4】被研削部を第1砥石で研削している過程をあらわす一部切欠部分拡大平面図
図5】砥面の形状をあらわす正面図
図6】被研削部を第1砥石で研削する前の状態をあらわす一部切欠部分拡大側面図
図7】被研削部を第1砥石で研削した後の状態をあらわす一部切欠部分拡大側面図
図8】被研削部を第1砥面で研削して第1研削面を形成した状態をあらわす部分拡大側面図
図9】被研削部を第2砥面で研削して第2研削面を形成した状態をあらわす部分拡大側面図
図10】砥石の部分拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のサイディングボード用研削装置は、
前記回転軸と平行で且つ前記被研削部の長さ方向と平行な投影面上において、前記砥面の両端部のうち研削直前に前記被研削部と対向する側の端部が、前記研削機能端部とされていてもよい。
この構成によれば、研削機能端部が、砥面の両端部のうち研削直前に被研削部と対向する側の端部であるから、サイディングボードの被研削部を、より確実に、欠けを生じさせずに鋭角状に研削することができる。
本発明のサイディングボード用研削装置は、
前記ボード保持機構は、前記化粧面が斜め上を向く姿勢で前記サイディングボードを保持し、
前記研削機能端部は、前記被研削部を下向きに擦りながら研削するようになっていてもよい。
この構成によれば、研削によって生じた粉塵が上方へ舞い上がり難いので、集塵し易い。
【0010】
本発明のサイディングボード用研削装置は、
前記砥石が、砥粒を合成樹脂製のボンドで固着したものであってもよい。
この構成によれば、砥面の砥粒が被研削部を擦る際に、被研削部に対する砥粒の衝撃が合成樹脂製のボンドによって軽減されるので、被研削部における欠けの発生を、より確実に防止することができる。
【0011】
本発明のサイディングボード用研削装置は、
前記被研削部に対し先に研削を行う第1の前記砥石と、後に研削を行う第2の前記砥石とが、前記被研削部の長さ方向に間隔を空けて配されており、
前記第1の砥石の研削によって前記被研削部に形成される第1の研削面と前記化粧面とのなす角度は、前記第2の砥石の研削によって前記被研削部に形成される第2の研削面と前記化粧面とのなす角度より小さくてもよい。
この構成によれば、被研削部には、第1の砥石で研削されることによってサイディングボードの全厚さに亘る第1の研削面が形成され、その後、第1の研削面のうちサイディングボードの化粧面に隣接する角端領域のみが、第2の砥石によって研削される。第2の砥石による研削工程では、研削領域が比較的狭く、サイディングボードに摩擦熱が籠もり難いので、第2の研削面の仕上がりが良好となる。
【0012】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図10を参照して説明する。以下の説明において、前後の方向については、図1図6図7における左方及び図2〜4における下方を、前方と定義する。また、左右の方向については、図2〜5にあらわれる向きを、そのまま右方、左方と定義する。
【0013】
本実施例のサイディングボード用研削装置(以下、研削装置という)の研削対象であるサイディングボード10は、例えば繊維質を混ぜたセメント原料を平板状に成型してタイル風や石積みの雰囲気を出した外壁材である。建物の外壁の角部(図示省略)に貼り付けられるサイディングボード10は、その端縁部を化粧面11(表面)に対して約45°にカットされる。カットすることによって形成された研削面14A,14Bは、互いに対向した状態で接着剤(図示省略)により貼り合わされる。そして、その後、外壁に固着される。
【0014】
サイディングボード10は、移動機構20により左右方向に移動可能となっているとともに、ボード保持機構23によって所定の姿勢に固定される。移動機構20は、図1,2に示すように、敷設台21と、敷設台21の上に水平に敷設された前後一対のレール22とを備えて構成されている。
【0015】
ボード保持機構23は、移動機構20を構成する図示しない駆動手段によりレール22の上を左右方向に移動する台車24と、台車24の上面に固定された保持台25とを有する。保持台25の上面は、前側が低くなるように水平面に対して45°の角度で傾斜している。図6,7に示すように、保持台25の上面には、一定厚さのゴム板26が貼り付けられている。ゴム板26の上面も水平面に対して45°の角度で傾いている。また、保持台25の下端部(前端部)には、位置決めリブ27が突出形成されている。
【0016】
図1に示すように、ボード保持機構23は、保持台25の上面(ゴム板26)の上端部と対向する押圧機構28を有している。押圧機構28は、ロッド30のを保持台25の上面と直角に向けたエアシリンダ29と、エアシリンダ29のロッド30の先端に固着した押圧板31とを備えている。押圧板31の下面は、ゴム板26の上面と平行をなしている。
【0017】
サイディングボード10は、その下端縁(前端縁)を位置決めリブ27に当接した状態で、保持台25のゴム板26の上面に載置される。このとき、サイディングボード10の化粧面11を上に向け、サイディングボード10の裏面12を下に向けてゴム板26の上面に重ねる。裏面12をゴム板26に重ねるのは、化粧面11よりも裏面12の方が寸法精度が高く、施工時には裏面12が建物の外壁に当接するからである。したがって、この裏面12がサイディングボード10研削時の加工基準面となる。
【0018】
保持台25にサイディングボード10を載せたら、エアシリンダ29のロッド30が伸長して押圧板31がサイディングボード10の化粧面11を押圧する。この押圧作用により、サイディングボード10は、保持台25に固定される。また、保持台25に載せたサイディングボード10は、位置決めリブ27に当接することにより保持台25に対して上下方向及び前後方向に位置決めされる。位置決めされた状態では、図6,7に示すように、サイディングボード10の端縁部(以下、「被研削部13」という)が、保持台25(ゴム板26)の上端縁(後端縁)よりも僅かに斜め上後方へ突出した状態となる。被研削部13は、後述する砥石40A,40Bによって研削される部分であり、サイディングボード10の移動方向と平行をなしている。
【0019】
本実施例の研削装置は、サイディングボード10の被研削部13を斜めにカットする手段として、ダイヤモンドチップソーではなく、2つの砥石40A,40Bを用いて研削する。この砥石40A,40Bによる研削は、サイディングボード10が乾燥した状態、つまり乾式で行われる。そして、1枚のサイディングボード10を移動させながら、被研削部13に対し、初めに第1砥石40A(請求項に記載の第1の砥石)による粗研削を行い、その後に、第2砥石40B(請求項に記載の第2の砥石)による仕上げ研削を行う。研削工程では、サイディングボード10が左方へ移動するため、粗研削用の第1砥石40Aは仕上げ研削用の第2砥石40Bよりも右方に配置されている。
【0020】
第1砥石40Aと第2砥石40Bは、図10に示すように、多数の細かい砥粒41を合成樹脂のボンド42によって固着したレジノイド砥石と称されるものである。両砥石40A,40Bは、軸線43A,43Bを概ね前後方向(つまり、平面視においてサイディングボード10の移動方向に対して略直角な方向)に向けた円筒形をなす。第1砥石40Aの前端面は、サイディングボード10の被研削部13に接触して粗研削を実行する第1砥面44A(請求項に記載の砥面)となっており、第2砥石40Bの前端面は、サイディングボード10の被研削部13に接触して仕上げ研削を実行する第2砥面44B(請求項に記載の砥面)となっている。
【0021】
第1砥石40Aと第2砥石40Bは、基台45の上面に設けた第1回転駆動機構46Aと第2回転駆動機構46Bとにより個別に回転駆動されるようになっている。両回転駆動機構46A,46Bは同一の構成である。回転駆動機構46A,46Bは、サイディングボード10の移動経路よりも後方に配されており、基台45の上面に固定した前後方向のガイドリブ47と、ガイドリブ47に摺接可能に設けたモータ48とを備えている。モータ48の回転軸49(駆動軸)は、概ね前後方向に向けられている。
【0022】
回転軸49の前端部には、砥石40A,40Bが同心状に固着されている。そして、砥面44A,44Bは、サイディングボード10の被研削部13に対し後方から対向するような位置関係となっている。モータ48が駆動すると、砥石40A,40Bはその軸線43A,43Bを中心として回転駆動される。図5に矢線Rで示すように、砥石40A,40Bの回転方向は、正面視において時計回り方向である。したがって、砥面44A,44Bの右端側は、下向きに移動しながら被研削部13を擦って研削する。この砥面44A,44Bの正面視及び平面視における右側の端部領域は、被研削部13を研削するための研削機能端部50A,50B(請求項に記載の一方の端部)となっている。一方、砥面44A,44Bの左端側は、研削機能端部50A,50Bとは逆に上向きに移動する。
【0023】
図1に示すように、モータ48の後端部下面には、軸線を概ね前後方向に向けた雌ネジ部材51が固定されており、この雌ネジ部材51にはネジ棒52がねじ込まれている。ネジ棒52を回転させることにより、モータ48を前後方向に移動させ、砥石40A,40B(砥面44A,44B)をサイディングボード10の被研削部13に対し接近・離間させることができる。
【0024】
また、基台45には、軸線を上下方向に向けたナット53が固定されており、ナット53には、調節ネジ54がねじ込まれている。調節ネジ54の上端部には、雌ネジ部材51の水平な下面が摺接可能に載置されている。そして、調節ネジ54を回転させると、雌ネジ部材51とモータ48の後端部が昇降する。これにより、サイディングボード10の移動方向と平行に視た側面視において、水平方向に対する砥石40A,40Bの軸線43A,43B(モータ48の回転軸49)の傾斜角度を調節することができる。
【0025】
つまり、側面視において、保持台25に固定されたサイディングボード10の裏面12(加工基準面)に対する砥面44A,44Bの角度を調整することができる。そして、図8に示すように、サイディングボード10の化粧面11及び裏面12に対する第1砥面44Aの角度αは、例えば44°(45°よりも僅かに小さい角度)に設定されている。尚、図8における角度αは、便宜上、44°よりも小さい角度で描いている。また、図9に示すように、サイディングボード10の化粧面11及び裏面12に対する第2砥面44Bの角度βは、45°に設定されている。
【0026】
さらに、平面視(つまり、回転軸49と平行であり且つ被研削部13の長さ方向およびサイディングボード10の移動方向Mと平行な投影面上)において、両砥石40A,40Bの軸線43A,43Bは、サイディングボード10の移動方向(図3に矢線Mで示す)に対して直角ではない。換言すると、平面視において、両砥面44A,44Bは、サイディングボード10の移動方向Mと平行ではなく、サイディングボード10の移動方向に対して僅かに傾いている。
【0027】
具体的には、図3に示すように、平面視において、両砥面44A,44Bの左右方向(サイディングボード10の移動方向)における両端部のうち研削機能端部50A,50B(右側の端部)は、他方の端部55A,55B(左側の端部)よりも前方(被研削部13に接近する方向)に位置している。尚、図3では第1砥石40A(第1砥面44A)のみを図示しており、第2砥石40B(第2砥面44B)については図示を省略している。
【0028】
また、移動機構20の敷設台21と、基台45との間には、2つの集塵ホッパ56の集塵口57が上向きに開口している。平面視において、2つの集塵口57は、第1砥面44Aの研削機能端部50Aと第2砥面44Bの研削機能端部50Bのほぼ真下に配置されている。
【0029】
次に、本実施例の研削装置の作用を説明する。サイディングボード10の被研削部13を研削する際には、保持台25を第1砥石40Aよりも右方の待機位置で待機させ、この保持台25にサイディングボード10を位置決めして固定する。また、第1回転駆動機構46Aにおいては、第1砥面44Aの前後方向の位置、第1砥面44Aの平面視における向き、第1砥面44Aの側面視における向きを調整する。同様に、第2回転駆動機構46Bにおいても、第2砥面44Bの前後方向の位置、第2砥面44Bの平面視における向き、第2砥面44Bの側面視における向きを調整する。
【0030】
この後、両砥石40A,40Bを回転駆動し、待機位置(図2を参照)よりサイディングボード10を両砥石40A,40Bに向けて左方へ移動させる。そして、サイディングボード10の被研削部13の左端が第1砥石40Aの右端に接触すると、被研削部13が左端側から次第に第1砥石40Aによって研削される。第1砥石40Aに削り取られた被研削部13の表面は、第1砥面44Aの研削機能端部50Aで擦られることにより、平滑な第1研削面14A(請求項に記載の第1の研削面)となる(図7,8を参照)。第1研削面14Aは、化粧面11に対して鋭角をなし、サイディングボード10の化粧面11から裏面12に至る全厚さ範囲に亘って形成される。
【0031】
ここで、平面視において、第1砥面44Aの右側(研削直前にサイディングボード10の移動方向先端部と対向する側)の研削機能端部50Aは、他方(左側)の端部55Aよりも前側(被研削部13側)に位置している。したがって、被研削部13は、主として研削機能端部50Aだけで研削されるのであり、第1砥面44Aのうち左側の端部55Aでは擦られない。これにより、第1砥面44Aが被研削部13を擦る方向は、概ね下向き(化粧面11側から裏面12側に向かう方向)に限定されるので、第1研削面14Aと化粧面11とによって形成される鋭角状先端縁部15が欠ける虞はない。
【0032】
第1砥石40Aによって研削されたサイディングボード10は、第2砥石40Bの第2砥面44Bで擦られることによって、更に研削され、被研削部13には、第2研削面14B(請求項に記載の第2の研削面)が形成される(図9を参照)。第2砥石40Bによる研削工程でも、第2砥面44Bの研削機能端部50Bが左側の端部55Bよりも前方に位置しているので、サイディングボード10に対する研削も、第1砥面44Aの場合と同様、研削機能端部50Bのみで実行される。そして、第2砥面44B(研削機能端部50B)が被研削部13を擦る方向も、第1砥面44Aと同様、化粧面11側から裏面12側に向かう方向に限定されているので、第1研削面14Aと化粧面11とによって形成されていた鋭角状先端縁部15が欠ける虞はない。
【0033】
また、側面視において、サイディングボード10の裏面12及び化粧面11に対する第1砥面44Aの角度αは、44°であるから、第1研削面14Aと化粧面11とがなす角度αも44°となる。この後、サイディングボード10の移動が進むと、第1研削面14Aが第2砥面44Bの研削機能端部50Bで擦られることにより、被研削部13には第2研削面14Bが形成される。サイディングボード10の裏面12及び化粧面11に対する第2砥面44Bの角度βは、45°であるから、第2研削面14Bが形成されるのは、第1研削面14Aの先端部(化粧面11に隣接する角端領域)だけである。
【0034】
また、第1砥石40Aによる研削工程では、サイディングボード10がその全厚さ範囲に亘って第1砥面44Aで擦られるため、サイディングボード10の全厚さ範囲に亘って大きな摩擦熱が生じる。これに対し、第2砥石40Bによる研削工程で第2砥面44Bで擦られるのは、サイディングボード10の厚さ方向における化粧面11側の狭い領域だけである。したがって、第2砥石40Bによる研削工程で生じる摩擦熱は比較的小さい。したがって、鋭角状先端縁部15が欠ける虞はない。
【0035】
尚、砥石40A,40Bの前面における外周縁には、僅かなC面を形成しておくことが好ましい。このようにすれば、砥石40A,40Bの外周面が被研削部13に突き当たることを回避でき、仕上げが一層綺麗になる。また、研削に使用される前の状態の両砥面44A,44Bは、研削機能端部50A,50Bを含む全領域が回転軸49と直角な平坦面である。しかし、研削を実行していく過程で、砥面44A,44Bの摩耗が次第に進み、砥面44A,44Bのうち研削機能端部50A,50Bとなる外周縁部は回転軸49に対して斜めになっていく。
【0036】
また、第1砥面44Aと第2砥面44Bは被研削部13を下向きに擦るので、研削によって生じた粉塵は、砥石40A,40Bの下方へ飛ばされ、砥石40A,40Bの下方で開口している集塵口57から集塵ホッパ56内に吸引される。したがって、研削の際に生じる粉塵が周囲にまき散らされたり、浮遊したりする虞はない。
【0037】
サイディングボード10を第1砥石40Aと第2砥石40Bで研削した後は、両回転駆動機構46A,46Bのモータ48がサイディングボード10から遠ざかるように後方へ退避し、サイディングボード10は待機位置に復帰する。そして、第1砥石40Aと第2砥石40Bで研削された2枚のサイディングボード10は、互いにほぼ直角に突き合わせた状態で建物の外壁の角部に貼り付けられる。サイディングボード10を貼り付けた状態では、被研削部13同士が接着剤(図示省略)を介して突き合わされる。このとき、化粧面11に隣接する第2研削面14B同士は、互いに平行をなして密着対向する。一方、第1研削面14A同士は、互いに平行に対向するのではなく、頂角が2°の三角形状をなす狭い隙間を空けて対向している。そして、この第1研削面14Aの間の隙間に、接着剤が注入されている。
【0038】
上述のように本実施例の研削装置は、サイディングボード10の端縁の被研削部13を鋭角状に研削する装置であって、砥石40A,40Bと、ボード保持機構23と、移動機構20とを備えている。砥石40A,40Bは、前面が砥面44A,44Bとなっていて、砥面44A,44Bと略直交する回転軸49を中心に回転駆動される。ボード保持機構23は、被研削部13が砥面44A,44Bと略平行をなすようにサイディングボード10を保持する。移動機構20は、被研削部13の長さ方向に沿い且つ被研削部13が砥面44A,44Bに摺接するようにサイディングボード10(ボード保持機構23)を移動(砥石40A,40Bとボード保持機構23を相対移動)させる。
【0039】
また、サイディングボード10の移動方向における砥面44A,44Bの両端部のうち、サイディングボード10が移動する過程で研削直前に被研削部13と対向する側の右端部は、研削機能端部50A,50Bとなっている。そして、回転軸49と平行で且つ被研削部13の長さ方向(サイディングボード10の移動方向)と平行な投影面上(平面視)においては、砥面44A,44Bがサイディングボード10の移動方向に対して僅かに傾いていて、砥面44A,44Bの研削機能端部50A,50Bが、他方(左側)の端部55A,55Bよりも前方に配されている。さらに、被研削部13に対する研削機能端部50A,50Bの摺接方向が、サイディングボード10の化粧面11側から裏面12側に向かう方向とされている。
【0040】
この構成によれば、砥面44A,44Bのうち被研削部13を研削するのは、砥面44A,44Bの両端部のうち他方の端部55A,55Bより前方に配されている側の研削機能端部50A,50Bである。換言すると、被研削部13は、主として、砥面44A,44Bの両端部のうち研削直前に被研削部13と対向する研削機能端部50A,50Bによって研削される。そして、研削工程では、研削機能端部50A,50Bが、サイディングボード10の化粧面11側から裏面12側に向かって被研削部13を擦る。これにより、サイディングボード10の被研削部13を、欠けを生じさせずに鋭角状に研削することができる。尚、砥面44A,44Bの研削機能端部50A,50Bが、他方の端部55A,55Bよりも前方に配されているか否かは、研削機能端部50A,50Bとして機能する砥面44A,44Bの外周縁部が、回転軸49に対して斜めに摩耗しているか否かによって判別できる。
【0041】
また、ボード保持機構23は、化粧面11が斜め上を向く姿勢でサイディングボード10を保持しており、研削機能端部50A,50Bは、被研削部13を下向きに擦ることによって研削するようになっている。この構成によれば、研削によって生じた粉塵が上方へ舞い上がり難いので、集塵し易い。
【0042】
また、砥面44A,44Bは、砥粒41を合成樹脂製のボンド42で固着して構成されている。この構成によれば、砥面44A,44Bの砥粒41が被研削部13を擦る際に、被研削部13に対する砥粒41の衝撃が合成樹脂製のボンド42によって軽減されるので、被研削部13における欠けの発生を、より確実に防止することができる。
【0043】
また、被研削部13に対し先に研削を行う第1砥石40Aと、その後に研削を行う第2砥石40Bとが、被研削部13の長さ方向(サイディングボード10の移動方向)に間隔を空けて配されており、第1砥石40Aの研削によって被研削部13に形成される第1研削面14Aと化粧面11とのなす角度αは、第2砥石40Bの研削によって被研削部13に形成される第2研削面14Bと化粧面11とのなす角度βより小さい。
【0044】
この構成によれば、被研削部13には、第1砥石40Aで研削されることによってサイディングボード10の全厚さに亘る第1研削面14Aが形成され、その後、第1研削面14Aのうちサイディングボード10の化粧面11に隣接する角端領域のみが、第2砥石40Bによって研削される。第2砥石40Bによる研削工程では、研削領域が比較的狭く、サイディングボード10に摩擦熱が籠もり難いので、第2研削面14Bの仕上がりが良好となる。
【0045】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、サイディングボードが化粧面を斜め上向きとなるように保持されているが、サイディングボードは化粧面を斜め下向きにする姿勢で保持されていてもよい。この場合、研削機能端部は、被研削部を上向きに擦りながら研削すればよい。
(2)上記実施例では、回転軸が水平となる向きに砥石を設けたが、回転軸は水平に対して斜めをなす向きであってもよい。
(3)上記実施例では、サイディングボードは、被研削部が回転軸とほぼ同じ高さとなるように保持されているが、サイディングボードは、被研削部が回転軸と異なる高さに位置するように保持されて居ても良い。
(4)上記実施例では、サイディングボードは、被研削部が水平となる向きに保持されているが、サイディングボードは、被研削部が水平に対して斜めとなる向きに保持されていてもよい。
(5)上記実施例では、研削する際に、砥石を固定してボード保持機構を移動さるようにしたが、これとは逆に、ボード保持機構を固定して砥石を移動させるようにしてもよい。
(6)上記実施例では、第1の砥石と第2の砥石を設けたが、砥石の数は1つだけもよく、3つ以上でもよい。
(7)上記実施例では、砥石として、砥粒を合成樹脂製のボンドに固着したレジノイド砥石を用いたが、これに限らず、レジノイド砥石以外の砥石を用いてもよい。
(8)上記実施例では、砥面の両端部のうち研削直前に被研削部と対向する側の端部を研削機能端部としたが、これとは逆に、砥面の両端部のうち研削直前に被研削部と対向する側とは反対側の端部を、研削機能端部としてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…サイディングボード
11…化粧面
12…裏面
13…被研削部
20…移動機構
23…ボード保持機構
14A…第1研削面(第1の研削面)
14B…第2研削面(第2の研削面)
40A…第1砥石(第1の砥石)
40B…第2砥石(第2の砥石)
41…砥粒
42…ボンド
44A…第1砥面(砥面)
44B…第2砥面(砥面)
49…回転軸
50A…第1砥面の研削機能端部(研削機能端部)
50B…第2砥面の研削機能端部(研削機能端部)
55A,55B…砥面における他方の端部
α…第1の研削面と化粧面とのなす角度
β…第2の研削面と化粧面とのなす角度
図1
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図10