特許第6178372号(P6178372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6178372シーラント材の厚さの測定方法及びシーラント材の厚さの測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178372
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】シーラント材の厚さの測定方法及びシーラント材の厚さの測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/08 20060101AFI20170731BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20170731BHJP
   B60C 19/12 20060101ALI20170731BHJP
   B29C 73/02 20060101ALI20170731BHJP
   G01B 11/06 20060101ALI20170731BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20170731BHJP
【FI】
   G01B21/08
   B60C19/00 K
   B60C19/12 Z
   B60C19/00 H
   B29C73/02
   G01B11/06 Z
   B29L30:00
【請求項の数】13
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2015-183126(P2015-183126)
(22)【出願日】2015年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-80695(P2016-80695A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2015年12月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-212950(P2014-212950)
(32)【優先日】2014年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗友 直樹
(72)【発明者】
【氏名】湯川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】杉本 睦樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 聡
【審査官】 ▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−037322(JP,A)
【文献】 特開2006−181566(JP,A)
【文献】 米国特許第04398583(US,A)
【文献】 特開昭56−034509(JP,A)
【文献】 特開2002−036813(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0260016(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/105410(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/08
G01B 11/06
B60C 1/00−19/12
B29C 73/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーラント材をタイヤの内周面に塗布する前に、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る塗布前スキャン工程と、
シーラント材をタイヤの内周面に塗布する塗布工程と、
シーラント材をタイヤの内周面に塗布した後に、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る塗布後スキャン工程とを含み、
前記塗布前スキャン工程により得られたプロファイルと、前記塗布後スキャン工程により得られたプロファイルとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出することにより、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材の厚さを測定するシーラント材の厚さの測定方法。
【請求項2】
前記塗布前スキャン工程及び前記塗布後スキャン工程において、タイヤの幅方向にスキャンを行う請求項1記載のシーラント材の厚さの測定方法。
【請求項3】
前記塗布工程が、略紐状形状のシーラント材を連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布する工程であり、
前記塗布前スキャン工程及び前記塗布後スキャン工程が、らせん状にタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る工程である請求項1又は2記載のシーラント材の厚さの測定方法。
【請求項4】
前記塗布工程が、タイヤのビード部の幅を広げた状態で、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する工程であり、
前記塗布前スキャン工程及び前記塗布後スキャン工程が、前記塗布工程と同様にタイヤのビード部の幅を広げた状態で、タイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る工程である請求項1〜3のいずれかに記載のシーラント材の厚さの測定方法。
【請求項5】
前記変位センサが、非接触式変位センサである請求項1〜4のいずれかに記載のシーラント材の厚さの測定方法。
【請求項6】
前記塗布工程と、前記塗布前スキャン工程、及び/又は、前記塗布後スキャン工程とを同時に行う請求項1〜5のいずれかに記載のシーラント材の厚さの測定方法。
【請求項7】
前記塗布前スキャン工程及び前記塗布後スキャン工程において、タイヤを回転させながらスキャンを行う請求項1〜6のいずれかに記載のシーラント材の厚さの測定方法。
【請求項8】
変位センサと、演算処理装置とを備え、
前記演算処理装置は、
(A)シーラント材がタイヤの内周面に塗布される前のタイヤに対して、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る処理、
(B)シーラント材がタイヤの内周面に塗布された後のタイヤに対して、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る処理、及び
(C)前記処理(A)により得られたプロファイルと、前記処理(B)により得られたプロファイルとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出する処理
を実行するものである
タイヤの内周面に塗布されたシーラント材の厚さの測定装置。
【請求項9】
前記処理(A)及び前記処理(B)において、タイヤの幅方向にスキャンを行う請求項記載のシーラント材の厚さの測定装置。
【請求項10】
前記処理(B)においてスキャンを行うタイヤが、略紐状形状のシーラント材が連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布されたタイヤであり、
前記処理(A)及び前記処理(B)が、らせん状にタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る処理である請求項又は記載のシーラント材の厚さの測定装置。
【請求項11】
前記処理(B)においてスキャンを行うタイヤが、タイヤのビード部の幅を広げた状態で、シーラント材がタイヤの内周面に塗布されたタイヤであり、
前記処理(A)及び前記処理(B)が、タイヤのビード部の幅を広げた状態で、タイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る処理である請求項10のいずれかに記載のシーラント材の厚さの測定装置。
【請求項12】
前記変位センサが、非接触式変位センサである請求項11のいずれかに記載のシーラント材の厚さの測定装置。
【請求項13】
前記処理(A)及び前記処理(B)において、タイヤを回転させながらスキャンを行う請求項8〜12のいずれかに記載のシーラント材の厚さの測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材の厚さを測定するシーラント材の厚さの測定方法及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パンク防止機能を備えた空気入りタイヤ(以下、空気入りタイヤを単にタイヤとも記載する)として、タイヤの内周面にシーラント材が塗布されたシーラントタイヤが知られている。シーラントタイヤでは、パンク時に形成される穴がシーラント材によって自動的に塞がれる。
【0003】
シーラントタイヤの製造方法としては、シーラント材に有機溶剤を添加し、粘度を低下させ取扱いしやすくした希釈シーラント材をタイヤ内面に貼り付け、貼り付け後に希釈シーラント材から有機溶剤を除去する方法やバッチ式混練装置で調製した主剤と硬化剤とを静的ミキサー又は動的ミキサーを用いて混合してシーラント材を調製した後にタイヤの内周面に貼り付ける方法(例えば、特許文献1)等が知られている。
【0004】
これらの方法等により、タイヤの内周面にシーラント材が塗布され、シーラントタイヤが製造されるが、充分なシール性を発揮するためには、シーラント材が適切な厚さで貼り付けられている必要がある。
【0005】
一方、タイヤの厚さを測定する方法や装置として、例えば、特許文献2には、互いに向き合うように、タイヤ内面側と、タイヤ外面側とに配置された2個の変位センサにより、タイヤの厚さを測定する方法や装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2010−528131号公報
【特許文献2】特開2008−196881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の方法や装置では、タイヤの厚さは測定できるものの、シーラント材の厚さを測定することはできない。
【0008】
シーラント材の厚さを測定する方法として、タイヤを切断する方法が考えられるが、タイヤを破壊して測定するため、該タイヤを製品として販売することができなくなる。また、タイヤの切断に時間もかかる。
【0009】
シーラント材の厚さを測定する他の方法として、CTスキャンを使用する方法も考えられるが、CTスキャンの原理上、撮影後の断面画像の作成に時間がかかり、シーラント材の厚さ、特に、シーラント材の厚さの分布を簡便に測定することができない。
【0010】
本発明は、上記課題を解決し、シーラント材の厚さを非破壊で簡便に測定する方法及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する前に、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る塗布前スキャン工程と、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する塗布工程と、シーラント材をタイヤの内周面に塗布した後に、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る塗布後スキャン工程とを含み、上記塗布前スキャン工程により得られたプロファイルと、上記塗布後スキャン工程により得られたプロファイルとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出することにより、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材の厚さを測定するシーラント材の厚さの測定方法に関する。
【0012】
上記塗布前スキャン工程及び上記塗布後スキャン工程において、タイヤの幅方向にスキャンを行うことが好ましい。
【0013】
上記塗布工程が、略紐状形状のシーラント材を連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布する工程であり、上記塗布前スキャン工程及び上記塗布後スキャン工程が、らせん状にタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る工程であることが好ましい。
【0014】
上記塗布工程が、タイヤのビード部の幅を広げた状態で、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する工程であり、上記塗布前スキャン工程及び上記塗布後スキャン工程が、上記塗布工程と同様にタイヤのビード部の幅を広げた状態で、タイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る工程であることが好ましい。
【0015】
上記変位センサが、非接触式変位センサであることが好ましい。
【0016】
上記塗布工程と、上記塗布前スキャン工程、及び/又は、上記塗布後スキャン工程とを同時に行うことが好ましい。
【0017】
本発明は、変位センサと、演算処理装置とを備え、上記演算処理装置は、(A)シーラント材がタイヤの内周面に塗布される前のタイヤに対して、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る処理、(B)シーラント材がタイヤの内周面に塗布された後のタイヤに対して、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る処理、及び(C)上記処理(A)により得られたプロファイルと、上記処理(B)により得られたプロファイルとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出する処理を実行するものである、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材の厚さの測定装置に関する。
【0018】
上記処理(A)及び上記処理(B)において、タイヤの幅方向にスキャンを行うことが好ましい。
【0019】
上記処理(B)においてスキャンを行うタイヤが、略紐状形状のシーラント材が連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布されたタイヤであり、
上記処理(A)及び上記処理(B)が、らせん状にタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る処理であることが好ましい。
【0020】
上記処理(B)においてスキャンを行うタイヤが、タイヤのビード部の幅を広げた状態で、シーラント材がタイヤの内周面に塗布されたタイヤであり、
上記処理(A)及び上記処理(B)が、タイヤのビード部の幅を広げた状態で、タイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る処理であることが好ましい。
【0021】
上記変位センサが、非接触式変位センサであることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のシーラント材の厚さの測定方法は、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する前に、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る塗布前スキャン工程と、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する塗布工程と、シーラント材をタイヤの内周面に塗布した後に、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る塗布後スキャン工程とを含み、上記塗布前スキャン工程により得られたプロファイルと、上記塗布後スキャン工程により得られたプロファイルとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出することにより、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材の厚さを測定するため、シーラント材の厚さを非破壊で簡便に測定できる。
【0023】
本発明のシーラント材の厚さの測定装置は、変位センサと、演算処理装置とを備え、上記演算処理装置は、(A)シーラント材がタイヤの内周面に塗布される前のタイヤに対して、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る処理、(B)シーラント材がタイヤの内周面に塗布された後のタイヤに対して、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る処理、及び(C)上記処理(A)により得られたプロファイルと、上記処理(B)により得られたプロファイルとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出する処理を実行するものであるため、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材の厚さを測定することができ、シーラント材の厚さを非破壊で簡便に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】塗布装置の一例を模式的に示す説明図である。
図2図1に示す塗布装置を構成するノズルの先端付近の拡大図である。
図3】タイヤに対するノズルの位置関係を模式的に示す説明図である。
図4】略紐状形状のシーラント材が連続的にタイヤの内周面にらせん状に貼り付けられた状態の一例を模式的に示す説明図である。
図5図1に示す塗布装置を構成するノズルの先端付近の拡大図である。
図6】シーラントタイヤに貼り付けられているシーラント材の一例を模式的に示す説明図である。
図7】シーラントタイヤの製造方法に用いる製造設備の一例を模式的に示す説明図である。
図8図4のシーラント材をシーラント材の塗布方向(長さ方向)と直交する直線AAで切断した際のシーラント材の断面の一例を模式的に示す説明図である。
図9】空気入りタイヤの断面の一例を模式的に示す説明図である。
図10】タイヤの内周面のプロファイルの一例を示す説明図である。
図11】シーラント材の厚さの測定結果の一例を示す説明図である。
図12】シーラント材の厚さの測定装置の一例を模式的に示す説明図である。
図13】本発明の一実施形態に係るシーラント材の厚さの測定装置の内部構成の一部を示すブロック図である。
図14】本発明の一実施形態に係るシーラント材の厚さの測定装置において行われる入力受付処理を示すフローチャートである。
図15】本発明の一実施形態に係るシーラント材の厚さの測定装置において行われる計測処理を示すフローチャートである。
図16】本発明の一実施形態に係るシーラント材の厚さの測定装置において行われるスキャン処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
図17】本発明の一実施形態に係るシーラント材の厚さの測定装置において行われる計算処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のシーラント材の厚さの測定方法は、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する前に、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る塗布前スキャン工程と、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する塗布工程と、シーラント材をタイヤの内周面に塗布した後に、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る塗布後スキャン工程とを含み、上記塗布前スキャン工程により得られたプロファイルと、上記塗布後スキャン工程により得られたプロファイルとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出することにより、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材の厚さを測定する。
【0026】
本発明のタイヤの内周面に塗布されたシーラント材の厚さの測定装置は、変位センサと、演算処理装置とを備え、上記演算処理装置は、(A)シーラント材がタイヤの内周面に塗布される前のタイヤに対して、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る処理、(B)シーラント材がタイヤの内周面に塗布された後のタイヤに対して、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る処理、及び(C)上記処理(A)により得られたプロファイルと、上記処理(B)により得られたプロファイルとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出する処理を実行するものである。
【0027】
本発明では、シーラント材を塗布する前後のタイヤの内周面のプロファイルに基づいて、シーラント材の塗布に起因したタイヤの内周面の厚さの変化を算出することにより、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材の厚さを測定する。すなわち、本発明のシーラント材の厚さの測定方法及び測定装置は、シーラント材の塗布に起因したタイヤの内周面の厚さの変化が、シーラント材の厚さを意味する点に着目したことに基づくものであり、非破壊で簡便に測定することが困難なシーラント材の厚さを直接測定するのではなく、シーラント材の塗布に起因したタイヤの内周面の厚さの変化からシーラント材の厚さを間接的に測定するものである。これにより、シーラント材の厚さを非破壊で簡便に測定できる。
【0028】
具体的には、例えば、シーラント材を塗布する前に、変位センサによって、該センサからタイヤの内周面までの距離を測定しておき、シーラント材を塗布した後に、変位センサによって、該センサからタイヤの内周面までの距離を測定し、両者の距離の差を算出することにより、シーラント材の厚さを測定できる。変位センサによる測定を例えば、タイヤの幅方向に渡って行うことにより、タイヤの幅方向におけるシーラント材の厚さの分布を測定することができる。
【0029】
このように、本発明では、任意の位置のシーラント材の厚さを知ることができ、複数の位置についてシーラント材の厚さを測定することにより、シーラント材の厚さの分布も非破壊で簡便に測定できる。
【0030】
本発明の方法及び測定装置により、例えば、製造されたシーラントタイヤについて、シーラント材の厚さが基準を満たすかどうかの評価やシーラント材の均一性(例えば、タイヤの幅方向へのシーラント材の厚さの変動等)を評価できる。一方、タイヤの重量測定及びシーラント材の比重から、シーラント材の厚さの計算値が得られる。該計算値と本発明の方法及び測定装置による測定結果とを比較することで、変位センサの異常や形成されたシーラント層の異常(例えば、シーラント材の厚さが小さい等)などの検出も容易に行うことが可能となる。
【0031】
まず、以下において、シーラントタイヤの製造方法の好適例について説明する。
【0032】
シーラントタイヤは、例えば、シーラント材を構成する各成分を混合してシーラント材を調製し、次いで、得られたシーラント材を塗布等によりタイヤ内周面に貼り付け、シーラント層を形成することにより、製造できる。該シーラントタイヤは、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有する。
【0033】
シーラント材はゴム成分と架橋の量により、硬さ(粘度)をコントロールして、使用温度に応じた粘度にコントロールする必要がある。そこでゴム成分のコントロールとして、液状ゴム、可塑剤、カーボンブラックの種類や量を調整する。一方、架橋の量のコントロールのために、架橋剤と架橋助剤の種類や量を調整する。
【0034】
シーラント材としては、粘着性を有するものであれば特に限定されず、タイヤのパンクシールに用いられる通常のゴム組成物を使用することができる。ゴム組成物の主成分を構成するゴム成分として、ブチル系ゴムが用いられる。ブチル系ゴムとしては、ブチルゴム(IIR)の他、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)などのハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)等も挙げられる。なかでも、流動性等の観点から、ブチルゴム、若しくはハロゲン化ブチルゴムのどちらか一方、又は両方を好適に使用できる。また、ブチル系ゴムは、ペレット化されたものを使用することが好ましい。これにより、連続混練機にブチル系ゴムを精度良く好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
【0035】
ブチル系ゴムとして、シーラント材の流動性の低下抑制の観点から、125℃のムーニー粘度ML1+8が20以上40未満のブチル系ゴムA及び/又は125℃のムーニー粘度ML1+8が40以上80以下のブチル系ゴムBの使用が好ましく、なかでも、少なくともブチルゴムAを用いることが好適である。なお、ブチル系ゴムA及びBを併用する場合、配合比は適宜設定すれば良い。
【0036】
ブチル系ゴムAの125℃のムーニー粘度ML1+8は、より好ましくは25以上、更に好ましくは28以上であり、また、より好ましくは38以下、更に好ましくは35以下である。20未満であると、流動性が低下するおそれがあり、40以上であると、併用する場合、その効果が得られないおそれがある。
【0037】
ブチル系ゴムBの125℃のムーニー粘度ML1+8は、より好ましくは45以上、更に好ましくは48以上であり、また、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下である。40未満であると、併用する場合、その効果が得られないおそれがある。80を超えると、シール性が低下するおそれがある。
【0038】
なお、125℃のムーニー粘度ML1+8は、JIS K−6300−1:2001に準拠し、試験温度125℃で、L形の形状を有するロータを余熱時間1分間とし、ロータの回転時間を8分間として測定されるものである。
【0039】
ゴム成分として、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴム等、他の成分を併用しても良いが、流動性等の観点から、ゴム成分100質量%中のブチル系ゴムの含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0040】
シーラント材中の液状ポリマーとして、液状ポリブテン、液状ポリイソブテン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、液状ポリα−オレフィン、液状イソブチレン、液状エチレンα−オレフィン共重合体、液状エチレンプロピレン共重合体、液状エチレンブチレン共重合体等が挙げられる。なかでも、粘着性付与等の観点から、液状ポリブテンが好ましい。液状ポリブテンとしては、イソブテンを主体とし、更にノルマルブテンを反応させて得られる長鎖状炭化水素の分子構造を持った共重合体等が挙げられ、水素添加型液状ポリブテンも使用可能である。
【0041】
液状ポリブテン等の液状ポリマーとして、高速走行時のシーラント材の流動を防止する観点から、100℃の動粘度が550〜625mm/sの液状ポリマーA及び/又は100℃の動粘度が3540〜4010mm/sの液状ポリマーBの使用が好ましく、該液状ポリマーA及びBの併用がより好ましい。
【0042】
液状ポリブテン等の液状ポリマーAの100℃における動粘度は、好ましくは550mm/s以上、より好ましくは570mm/s以上である。550mm/s未満であると、シーラント材の流動が生じるおそれがある。該100℃における動粘度は、好ましくは625mm/s以下、より好ましくは610mm/s以下である。625mm/sを超えると、シーラント材の粘度が高くなり、押し出し性が悪化するおそれがある。
【0043】
液状ポリブテン等の液状ポリマーBの100℃における動粘度は、好ましくは3600mm/s以上、より好ましくは3650mm/s以上である。3540mm/s未満であると、シーラント材の粘度が下がり過ぎて、タイヤ使用中に流動しやすくなり、シール性、ユニフォミティーが悪化するおそれがある。
該100℃における動粘度は、好ましくは3900mm/s以下、より好ましくは3800mm/s以下である。4010mm/sを超えると、シール性が悪化するおそれがある。
【0044】
液状ポリブテン等の液状ポリマーAの40℃における動粘度は、好ましくは20000mm/s以上、より好ましくは23000mm/s以上である。20000mm/s未満であると、シーラント材が柔らかく、流動が生じるおそれがある。該40℃における動粘度は、好ましくは30000mm/s以下、より好ましくは28000mm/s以下である。30000mm/sを超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
【0045】
液状ポリブテン等の液状ポリマーBの40℃における動粘度は、好ましくは120000mm/s以上、より好ましくは150000mm/s以上である。120000mm/s未満であると、シーラント材の粘度が下がり過ぎて、タイヤ使用中に流動しやすくなり、シール性、ユニフォミティーが悪化するおそれがある。
該40℃における動粘度は、好ましくは200000mm/s以下、より好ましくは170000mm/s以下である。200000mm/sを超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
【0046】
なお、動粘度は、JIS K2283−2000に準拠し、100℃、40℃の条件で測定される値である。
【0047】
液状ポリマーの含有量(液状ポリマーA、B等の合計量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは150質量部以上である。50質量部未満では、粘着性が低下するおそれがある。該含有量は、好ましくは400質量部以下、より好ましくは300質量部以下、更に好ましくは250質量部以下である。400質量部を超えると、シーラント材の流動が生じるおそれがある。
【0048】
液状ポリマーA、Bを併用する場合、これらの配合比(液状ポリマーAの含有量/液状ポリマーBの含有量)は、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは30/70〜70/30、更に好ましくは40/60〜60/40である。上記範囲内であると、良好な粘着性が付与される。
【0049】
有機過酸化物(架橋剤)としては特に限定されず、従来公知の化合物を使用できる。有機過酸化物架橋系において、ブチル系ゴムや液状ポリマーを用いることで、粘着性、シール性、流動性、加工性が改善される。
【0050】
有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド等のアシルパーオキサイド類、1−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシフタレートなどのパーオキシエステル類、メチルエチルケトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、ジ−t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,3−ビス(1−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのアルキルパーオキサイド類、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、粘着性、流動性の観点から、アシルパーオキサイド類が好ましく、ジベンゾイルパーオキサイドが特に好ましい。また、有機過酸化物(架橋剤)は、粉体状態のものを使用することが好ましい。これにより、連続混練機に有機過酸化物(架橋剤)を精度良く好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
【0051】
有機過酸化物(架橋剤)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。0.5質量部未満では、シール性が低下するおそれがある。該含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。40質量部を超えると、シーラント材の流動が生じるおそれがある。
【0052】
架橋助剤(加硫促進剤)としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオ尿素系、グアニジン系、ジチオカルバミン系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、キサントゲン酸系、及びキノンジオキシム化合物(キノイド化合物)からなる群より選択される少なくとも1種を使用することができるが、例えば、キノンジオキシム化合物(キノイド化合物)を好適に使用可能である。有機過酸化物に更に架橋助剤を添加した架橋系において、ブチル系ゴムや液状ポリマーを用いることで、粘着性、シール性、流動性、加工性が改善される。
【0053】
キノンジオキシム化合物としては、p−ベンゾキノンジオキシム、p−キノンジオキシム、p−キノンジオキシムジアセテート、p−キノンジオキシムジカプロエート、p−キノンジオキシムジラウレート、p−キノンジオキシムジステアレート、p−キノンジオキシムジクロトネート、p−キノンジオキシムジナフテネート、p−キノンジオキシムスクシネート、p−キノンジオキシムアジペート、p−キノンジオキシムジフロエート(difuroate)、p−キノンジオキシムジベンゾエート、p−キノンジオキシムジ(o−クロロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(p−クロロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(p−ビトロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(m−ビトロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(3,5−ジニトロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(p−メトキシベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(n−アミルオキシベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(m−ブロモベンゾエート等が挙げられる。なかでも、粘着性、シール性、流動性の観点から、p−ベンゾキノンジオキシムが好ましい。また、架橋助剤(加硫促進剤)は、粉体状態のものを使用することが好ましい。これにより、連続混練機に架橋助剤(加硫促進剤)を精度良く好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
【0054】
キノンジオキシム化合物等の架橋助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。0.5質量部未満では、シーラント材の流動が生じるおそれがある。該含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。40質量部を超えると、シール性が低下するおそれがある。
【0055】
シーラント材には、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ等の無機充填剤、芳香族系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル等の可塑剤を添加しても良い。
【0056】
紫外線による劣化を防止する観点から、無機充填剤としてカーボンブラックが好ましい。この場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。1質量部未満では、紫外線による劣化により、シール性が低下するおそれがある。該含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。50質量部を超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
【0057】
可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。1質量部未満では、タイヤへの粘着性が低下し、充分なシール性が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。40質量部を超えると、混練機内ですべりが生じ、シーラント材を混練することが困難となるおそれがある。
【0058】
シーラント材としては、ペレット化したブチル系ゴム、粉体の架橋剤、及び粉体の架橋助剤を混合することにより調製されたものであることが好ましく、ペレット化したブチル系ゴム、液状のポリブテン、可塑剤、粉体のカーボンブラック、粉体の架橋剤、及び粉体の架橋助剤を混合することにより調製されたものであることがより好ましい。これにより、連続混練機に各原料を好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
【0059】
シーラント材としては、ブチルゴムを含むゴム成分に対して、所定量の液状ポリマー、有機過酸化物、架橋助剤を配合したものが好ましい。
【0060】
シーラント材に、ブチルゴムに液状ポリブテン等の液状ポリマーを配合したものを用いること、特にブチルゴム、液状ポリマーとして、それぞれ異なる粘度の2種以上の材料を併用することで、粘着性、シール性、流動性、加工性がバランス良く改善される。これは、ゴム成分としてブチルゴムを用いた有機過酸化物架橋系に、液状ポリマー成分を導入して粘着性が付与されるとともに、特に異なる粘度の液状ポリマーや固形ブチルゴムにより高速走行時のシーラント材の流動が抑制されることで、粘着性、シール性、流動性、加工性がバランス良く改善される。
【0061】
シーラント材の粘度(40℃)は特に限定されないが、粘着性、流動性、及びシーラント材がタイヤの内周面に塗布された時点で、シーラント材が略紐状形状を好適に保持する等の観点から、好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは5000Pa・s以上であり、また、好ましくは70000Pa・s以下、より好ましくは50000Pa・s以下である。3000Pa・s未満であると、シーラント材の塗布後にタイヤを停止したときにシーラント材が流動し、膜厚を維持できないおそれがある。また、70000Pa・sを超えると、ノズルからシーラント材を吐出させることが困難となる。
なお、シーラント材の粘度は、JIS K 6833に準拠し、40℃の条件で、回転式粘度計により測定される値である。
【0062】
前述の各材料を混合してシーラント材を調製し、作製されたシーラント材をタイヤ内周面(好ましくはインナーライナーのタイヤ半径方向内側部分)に適用することにより、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有するシーラントタイヤを製造できるが、シーラント材を構成する各材料の混合は、例えば、公知の連続混練機を用いて実施できる。なかでも、同方向回転又は異方向回転の多軸混練押出機、特に二軸混練押出機を用いて混合することが好ましい。
【0063】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)は、原料を供給する供給口を複数有することが好ましく、少なくとも3つの供給口を有することがより好ましく、少なくとも上流側、中流側、下流側の3つの供給口を有することが更に好ましい。連続混練機(特に、二軸混練押出機)に上記各種原料を順次供給することにより、上記各種原料が混合され、順次連続的にシーラント材が調製される。
【0064】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)への原料の供給は、粘度の高い材料から順に行うことが好ましい。これにより、各材料が充分に混合され、品質が一定のシーラント材を調製できる。また、粉体材料を投入すると混練性が良くなる為なるべく上流で投入する事が望ましい。
【0065】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)への有機過酸化物の供給は、下流側の供給口から行うことが好ましい。これにより、有機過酸化物を供給してからシーラント材をタイヤに塗布するまでの時間を短くできるので、シーラント材の硬化が進む前にタイヤに塗布でき、より安定的にシーラントタイヤを製造できる。
【0066】
液状ポリマーを一度に多量に連続混練機(特に、二軸混練押出機)へ投入すると混練がうまくいかないため、連続混練機(特に、二軸混練押出機)への液状ポリマーの供給は、複数の供給口から行うことが好ましい。これにより、シーラント材の混練をより好適に行うことができる。
【0067】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)を用いる場合、シーラント材は、少なくとも3つの供給口を有する連続混練機(特に、二軸混練押出機)を用い、当該連続混練機(特に、二軸混練押出機)の上流側の供給口から、ブチル系ゴム等のゴム成分、無機充填剤、及び架橋助剤を供給し、中流側の供給口から、液状ポリマーBを供給し、下流側の供給口から、液状ポリマーA、有機過酸化物、及び可塑剤を供給し、混練押出することにより調製されることが好ましい。なお、各供給口からは、液状ポリマー等の各材料の全量又は一部を供給してもよいが、各材料の全量中の95質量%以上を供給することが好ましい。
【0068】
連続混練機に投入される全ての原料が、定量供給制御可能な供給装置により制御されて、連続混練機に投入されることが好ましい。これにより、連続的かつ自動化された状態でシーラント材を調製することが可能となる。
【0069】
供給装置は、定量供給制御可能であれば特に限定されず、公知の供給装置を使用でき、例えば、スクリュー式フィーダー、プランジャーポンプ、ギアポンプ、モーノポンプ等を使用できる。
【0070】
ペレット化されたブチル系ゴム、粉体のカーボンブラック、粉体の架橋剤、及び粉体の架橋助剤等の固形原料(特に、ペレットや粉体)は、スクリュー式フィーダーを用いて定量供給することが好ましい。これにより、固形原料を精度良く定量供給することが可能となり、より品質の高いシーラント材、ひいてはより品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
【0071】
また、各固形原料は、それぞれ別個の供給装置で供給することが好ましい。これにより、事前に各原料をブレンドする必要が無いため、量産時の材料の供給が容易になる。
【0072】
可塑剤は、プランジャーポンプを用いて定量供給することが好ましい。これにより、可塑剤を精度良く定量供給することが可能となり、より品質の高いシーラント材、ひいてはより品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
【0073】
液状ポリマーは、ギアポンプを用いて定量供給することが好ましい。これにより、液状ポリマーを精度良く定量供給することが可能となり、より品質の高いシーラント材、ひいてはより品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
【0074】
供給される液状ポリマーは、定温管理されていることが好ましい。定温管理することにより、より精度良く液状ポリマーを定量供給することが可能となる。供給される液状ポリマーの温度は、好ましくは20〜90℃、より好ましくは40〜70℃である。
【0075】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の混合は、混合の容易性、押し出し性の観点から、バレル温度50〜150℃で実施することが好ましい。
【0076】
充分な混合性の観点から、上流側で供給する材料の混合時間は、1〜3分、中流側で供給する材料の混合時間は、1〜3分であることが好ましい。一方、架橋を防止する観点から、下流側で供給する材料の混合時間は、0.5〜2分であることが好ましい。なお、各混合時間は、連続混練機(特に、二軸混練押出機)に供給されてから排出されるまでの滞留時間をいい、例えば、下流側で供給された材料の混合時間は、下流側の供給口への供給時から排出されるまでの滞留時間である。
【0077】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)のスクリューの回転数や、温調機の設定で、排出口から吐出されるシーラント材の温度を調整でき、ひいてはシーラント材の硬化促進速度をコントロールできる。連続混練機(特に、二軸混練押出機)は、スクリューの回転数を上げると混練性と材料温度が上がる。なお、スクリューの回転数は吐出量には影響しない。スクリューの回転数は、充分な混合性、及び硬化促進速度のコントロールの観点から、50〜550rpmであることが好ましい。
【0078】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口から吐出されるシーラント材の温度は、充分な混合性、及び硬化促進速度のコントロールの観点から、70〜150℃であることが好ましく、90〜130℃であることがより好ましい。シーラント材の温度が上記範囲内であると、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、架橋反応がより好適に進行し、シール性の高いシーラントタイヤを製造できる。また、後述の架橋工程を必要としない。
【0079】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口から吐出されるシーラント材の量は、供給口への原料の供給量に基づいて決定される。供給口への原料の供給量は、特に限定されず、当業者であれば適宜設定可能である。ユニフォミティー及びシール性により優れたシーラントタイヤが好適に得られるという理由から、排出口から吐出されるシーラント材の量(吐出量)が実質的に一定であることが好ましい。
ここで、本明細書において、吐出量が実質的に一定とは、吐出量の変動が98〜102%(好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
【0080】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口にはノズルを接続することが好ましい。連続混練機(特に、二軸混練押出機)は材料を高圧で吐出できるので、ノズル(好ましくは抵抗の大きい小径ノズル)を排出口に取付けることにより、調製したシーラント材を細い略紐状形状(ビード状)にしてタイヤに貼り付けることができる。すなわち、シーラント材を連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口に接続されたノズルから吐出して順次タイヤの内周面に塗布することで、シーラント材の厚さが実質的に一定となり、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
【0081】
次いで、混合したシーラント材を連続混練機(特に、二軸混練押出機)等押出機の排出口に接続されたノズルから吐出することで、加硫成形済みのタイヤの内周面に直接フィードし、内周面に適用すること等により、シーラントタイヤが製造される。これにより、二軸混練押出機等で混合され、かつ押出機内での架橋反応の進行が抑制されたシーラント材を、そのままタイヤ内周面に塗布できるため、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、好適に架橋反応が進行する。これにより、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材は、好適に略紐状形状を保持したままシーラント層を形成する。従って、一連の工程でシーラント塗布加工が可能になり、生産性もより向上する。また、加硫成形済みのタイヤの内周面にシーラント材を塗布することにより、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。更に、連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口に接続されたノズルから吐出されるシーラント材を順次タイヤの内周面に直接塗布することが好ましい。これにより、連続混練機(特に、二軸混練押出機)内での架橋反応の進行が抑制されたシーラント材を、そのままタイヤ内周面に連続的に塗布できるため、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、好適に架橋反応が進行し、より生産性良く重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
【0082】
タイヤの内周面へのシーラント材の塗布は、少なくともトレッド部に対応するタイヤの内周面、より好ましくは、少なくともブレーカーに対応するタイヤの内周面に行えばよい。シーラント材の塗布が不要な部分への塗布を省略することにより、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。
ここで、トレッド部に対応するタイヤの内周面とは、路面に接するトレッド部のタイヤ半径方向内側に位置するタイヤの内周面を意味し、ブレーカーに対応するタイヤの内周面とは、ブレーカーのタイヤ半径方向内側に位置するタイヤの内周面を意味する。なお、ブレーカーとは、トレッドの内部で、かつカーカスの半径方向外側に配される部材であり、具体的には、図9のブレーカー16などに示される部材である。
【0083】
通常、未加硫タイヤは、ブラダーを使用して加硫する。このブラダーは、加硫時に膨張し、タイヤの内周面(インナーライナー)に密着することとなる。そこで、加硫が終了した際に、ブラダーとタイヤの内周面(インナーライナー)とが癒着しないように、通常、タイヤの内周面(インナーライナー)には離型剤が塗布されている。
【0084】
離型剤としては、通常、水溶性ペイントや離型用ゴムが使用される。しかしながら、タイヤの内周面に離型剤が存在すると、シーラント材とタイヤの内周面との粘着性が低下するおそれがある。そのため、タイヤの内周面から予め離型剤を除去しておくことが好ましい。特に、タイヤの内周面のうち、少なくともシーラント材の塗布を開始する部分において、予め離型剤を除去しておくことがより好ましい。なお、タイヤの内周面のうち、シーラント材を塗布する全ての部分から予め離型剤を除去しておくことが更に好ましい。これにより、シーラント材のタイヤの内周面への付着性がより向上し、よりシール性の高いシーラントタイヤを製造できる。
【0085】
タイヤの内周面から離型剤を除去する方法としては、特に限定されず、バフ処理、レーザー処理、高圧水洗浄、洗剤(好ましくは中性洗剤)による除去等の公知の方法が挙げられる。
【0086】
ここで、図7を使用して、シーラントタイヤの製造方法に用いる製造設備の一例を簡単に説明する。
製造設備は、二軸混練押出機60、二軸混練押出機60に原料を供給する材料フィーダー62、タイヤ10を固定して回転させるとともに、タイヤの幅方向及び半径方向に移動させる回転駆動装置50を有する。二軸混練押出機60は、供給口61を5個有している。具体的には、上流側の供給口61aを3個、中流側の供給口61bを1個、下流側の供給口61cを1個有している。更に、二軸混練押出機60の排出口にはノズル30が接続されている。
【0087】
原料が材料フィーダー62から、二軸混練押出機60が有する供給口61を介して二軸混練押出機60に順次供給され、各原料が二軸混練押出機60により混練され、シーラント材が順次調製される。調製されたシーラント材は、二軸混練押出機60の排出口に接続されたノズル30から連続的に吐出される。タイヤ駆動装置でタイヤを回転させながらトラバース及び/又は昇降させ(タイヤの幅方向及び/又は半径方向に移動させ)、ノズル30から吐出されるシーラント材を順次タイヤの内周面に直接塗布することにより、タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることが可能となる。すなわち、タイヤを回転させながらタイヤの幅方向及び/又は半径方向に移動させつつ、連続混練機(特に、二軸混練押出機)から連続的に吐出されるシーラント材を順次タイヤの内周面に直接塗布することにより、タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることが可能となる。
【0088】
タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることにより、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。また、タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることにより、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向(特に、タイヤ周方向)においてシーラント材が均一なシーラント層を形成できるため、シール性に優れたシーラントタイヤを安定的に生産性良く製造できる。なお、シーラント材は、幅方向に重ならないように貼り付けられていることが好ましく、隙間なく貼り付けられていることがより好ましい。これにより、タイヤのユニフォミティーの悪化をより防止できると共に、より均一なシーラント層を形成できる。
【0089】
また、原料を連続混練機(特に、二軸混練押出機)に順次供給し、連続混練機(特に、二軸混練押出機)によりシーラント材が順次調製され、調製されたシーラント材が、連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口に接続されたノズルから連続的に吐出され、シーラント材が順次タイヤの内周面に直接塗布される。これにより、生産性良くシーラントタイヤを製造できる。
【0090】
シーラント層は、略紐状形状のシーラント材を、連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することにより形成されることが好ましい。シーラント層は、シーラント材が積層されて形成されてもよいが、シーラント材1層からなることが好ましい。
【0091】
シーラント材が、略紐状形状であると、シーラント材を連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することにより、シーラント材1層からなるシーラント層を形成できる。シーラント材が、略紐状形状であると、塗布されるシーラント材にある程度の厚さがあるため、シーラント材1層からなるシーラント層であっても、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れると共に、良好なシール性を有するシーラントタイヤを製造できる。また、シーラント材を何層も積層することなく、1層塗布するだけでよいため、より生産性よくシーラントタイヤを製造できる。
【0092】
シーラント材をタイヤの内周面に巻き付ける回数は、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れると共に、良好なシール性を有するシーラントタイヤをより生産性よく製造できるという理由から、好ましくは20〜70回、より好ましくは20〜60回、更に好ましくは35〜50回である。ここで、巻き付ける回数が2回とは、タイヤ内周面を2周するようにシーラント材が塗布されていることを意味し、図4において、シーラント材を巻き付ける回数は、6回である。
【0093】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)を使用する事により、シーラント材の調製(混練)とシーラント材の吐出(塗布)を同時に連続的に行うことができ、高粘度で粘着性が高く取り扱いが難しいシーラント材をハンドリングすることなく直接タイヤの内周面に塗布でき、生産性良くシーラントタイヤを製造できる。また、バッチ式混練装置で硬化剤も含めて混練し、シーラント材を調製した場合、シーラント材の調製からタイヤに貼り付けるまでの時間が一定とならないが、有機過酸化物を含む原料を連続混練機(特に、二軸混練押出機)により混合することにより順次調製されるシーラント材を順次タイヤの内周面に塗布することにより、シーラント材の調製からタイヤに貼り付けるまでの時間が一定となるため、ノズルを使用してシーラント材を塗布する場合には、ノズルからのシーラント材の吐出量が安定し、更には、シーラント材のタイヤへの粘着性の低下を抑制しつつ一定の粘着性となり、高粘度で粘着性が高く取り扱いが難しいシーラント材を使用しても精度良くタイヤの内周面に塗布でき、安定的に一定の品質のシーラントタイヤを製造できる。
【0094】
次に、以下において、タイヤの内周面にシーラント材を塗布する方法について説明する。
【0095】
<第1実施形態>
第1実施形態では、シーラントタイヤは、タイヤを回転させ、かつ、上記タイヤ及びノズルの少なくとも一方をタイヤの幅方向に移動させながら、粘着性のシーラント材を上記ノズルによって上記タイヤの内周面に塗布する際、非接触式変位センサによって上記タイヤの内周面と上記ノズルの先端との距離を測定する工程(1)と、測定結果に基づき、上記タイヤ及びノズルの少なくとも一方をタイヤの半径方向に移動させることで、上記タイヤの内周面と上記ノズルの先端との間隔を所定の距離に調整する工程(2)と、上記間隔が調整されたタイヤの内周面に上記シーラント材を塗布する工程(3)とを行うこと等により、製造できる。
【0096】
非接触式変位センサを用いてタイヤの内周面とノズルの先端との距離を測定し、その測定結果をフィードバックすることで、タイヤの内周面とノズルの先端との間隔を一定の距離に保つことができる。そして、上記間隔を一定の距離に保ちながらタイヤの内周面にシーラント材を塗布していくため、タイヤ形状のばらつきやジョイント部等の凹凸による影響を受けることなく、シーラント材の厚さを均一にすることができる。さらに、従来のようにタイヤサイズごとに座標値を入力する必要がないため、効率良くシーラント材を塗布することができる。
【0097】
図1は、本発明のシーラントタイヤの製造方法で用いる塗布装置の一例を模式的に示す説明図である。また、図2は、図1に示す塗布装置を構成するノズルの先端付近の拡大図である。
【0098】
図1は、タイヤ10の一部を子午線方向に切った断面(タイヤの幅方向及び半径方向を含む平面で切った断面)を示しており、図2は、タイヤ10の一部をタイヤの周方向及び半径方向を含む平面で切った断面を示している。図1及び図2においては、X方向がタイヤの幅方向(軸方向)、Y方向がタイヤの周方向、Z方向がタイヤの半径方向である。
【0099】
タイヤ10は、タイヤを固定して回転させるとともに、タイヤの幅方向及び半径方向に移動させる回転駆動装置(図示せず)にセットされている。この回転駆動装置により、タイヤの軸周りの回転、タイヤの幅方向の移動及びタイヤの半径方向の移動が独立して可能になっている。
【0100】
また、回転駆動装置は、タイヤの半径方向の移動量を制御可能な制御機構(図示せず)を備えている。制御機構は、タイヤの幅方向の移動量及び/又はタイヤの回転速度を制御可能であってもよい。
【0101】
ノズル30は、押出機(図示せず)の先端に取り付けられており、タイヤ10の内側に挿入することが可能である。そして、押出機から押し出された粘着性のシーラント材20が、ノズル30の先端31から吐出される。
【0102】
非接触式変位センサ40は、ノズル30に取り付けられており、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間の距離dを測定する。
このように、非接触式変位センサが測定する距離dとは、タイヤの内周面とノズルの先端とのタイヤの半径方向の距離である。
【0103】
本発明のシーラントタイヤの製造方法では、まず、加硫工程で成形されたタイヤ10を回転駆動装置にセットし、ノズル30をタイヤ10の内側に挿入する。そして、図1及び図2に示すように、タイヤ10を回転させ、かつ、タイヤ10を幅方向に移動させながら、シーラント材20をノズル30から吐出することによってタイヤ10の内周面11に連続的に塗布する。タイヤ10の幅方向の移動は、予め入力しておいたタイヤ10の内周面11のプロファイル形状に沿って行う。
【0104】
後述するように、シーラント材20は略紐状形状であることが好ましく、より具体的には、シーラント材がタイヤの内周面に塗布された時点で、シーラント材が略紐状形状を保持することが好ましく、この場合、略紐状形状のシーラント材20は、連続的にタイヤ10の内周面11にらせん状に貼り付けられることになる。
【0105】
なお、本発明において、略紐状形状とは、幅よりも長さの方が長く、ある程度の幅及び厚さを有する形状を意味する。略紐状形状のシーラント材が連続的にタイヤの内周面にらせん状に貼り付けられた状態の一例を図4に模式的に示す。また、図4のシーラント材をシーラント材の塗布方向(長さ方向)と直交する直線AAで切断した際のシーラント材の断面の一例を図8に模式的に示す。このように、略紐状形状のシーラント材は、ある程度の幅(図8中、Wで示される長さ)とある程度の厚さ(図8中、Dで示される長さ)を有する。なお、ここで、シーラント材の幅とは、塗布後のシーラント材の幅を意味し、シーラント材の厚さとは、塗布後のシーラント材の厚さ、より具体的には、シーラント層の厚さを意味する。
【0106】
略紐状形状のシーラント材は、具体的には、後述する、シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、図8中、Dで示される長さ)の好ましい数値範囲、及びシーラント材の幅(塗布後のシーラント材の幅、図4中、Wで示される長さ、図6中、Wで示される長さ)の好ましい数値範囲を満たすシーラント材、より好ましくは、後述する、シーラント材の厚さと、シーラント材の幅の比率(シーラント材の厚さ/シーラント材の幅)の好ましい数値範囲を満たすシーラント材である。また、後述する、シーラント材の断面積の好ましい数値範囲を満たすシーラント材でもある。
【0107】
本発明のシーラントタイヤの製造方法では、以下の工程(1)〜(3)により、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する。
【0108】
<工程(1)>
図2に示すように、非接触式変位センサ40により、シーラント材20を塗布する前のタイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との距離dを測定する。距離dの測定は、シーラント材20を各タイヤ10の内周面11に塗布する度に行い、シーラント材20の塗布開始から塗布終了まで行う。
【0109】
<工程(2)>
距離dの測定データを回転駆動装置の制御機構に転送する。制御機構では、測定データに基づき、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間隔が所定の距離になるように、タイヤの半径方向の移動量を調整する。
【0110】
<工程(3)>
シーラント材20は、ノズル30の先端31から連続的に吐出されているので、上記間隔が調整されたタイヤ10の内周面11に塗布されることになる。以上の工程(1)〜(3)により、タイヤ10の内周面11に均一な厚さのシーラント材20を塗布することができる。
【0111】
図3は、タイヤに対するノズルの位置関係を模式的に示す説明図である。
本発明では、図3に示すように、ノズル30がタイヤ10に対して(a)〜(d)で示す位置に移動する間、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間隔を所定の距離dに保ちながらシーラント材を塗布することができる。
【0112】
本発明の効果がより好適に得られるという理由から、調整後の間隔dは、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1.0mm以上である。0.3mm未満であると、ノズルの先端がタイヤの内周面に近すぎるため、所定の厚さを有するシーラント材を塗布することが困難となる。また、調整後の間隔dは、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。3.0mmを超えると、シーラント材をタイヤにうまく貼り付けられず、製造効率が低下するおそれがある。
ここで、調整後の間隔dとは、上記工程(2)により調整された後のタイヤの内周面とノズルの先端とのタイヤの半径方向の距離である。
【0113】
また、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、調整後の間隔dは、塗布後のシーラント材の厚さの30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、また、塗布後のシーラント材の厚さの5%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。
【0114】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、図8中、Dで示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上、特に好ましくは2.5mm以上であり、また、好ましくは10mm以下、より好ましくは8.0mm以下、更に好ましくは5.0mm以下である。1.0mm未満であると、タイヤがパンクした際にパンク穴を確実に塞ぐことが困難となる。また、10mmを超えても、パンク穴を塞ぐ効果はあまり変わらず、タイヤの重量が増加してしまうため好ましくない。なお、シーラント材の厚さは、タイヤの回転速度、タイヤの幅方向の移動速度、ノズルの先端とタイヤの内周面との距離等を調整することにより調整することができる。
【0115】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ)は、実質的に一定であることが好ましい。これにより、タイヤのユニフォミティーの悪化をより防止でき、より重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
ここで、本明細書において、厚さが実質的に一定とは、厚さの変動が98〜102%(好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
【0116】
本発明では、ノズルも目詰まりが少なく、操業安定性に優れるという理由、及び、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、略紐状形状のシーラント材を使用することが好ましく、略紐状形状のシーラント材をタイヤの内周面にらせん状に貼り付けることがより好ましい。しかし、略紐状形状ではないシーラント材を使用し、タイヤの内周面にスプレーすることでシーラント材を塗布してもよい。
【0117】
略紐状形状のシーラント材を使用する際、シーラント材の幅(塗布後のシーラント材の幅、図4中、Wで示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.3mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。0.8mm未満であると、シーラント材をタイヤの内周面に巻き付ける回数が多くなり、製造効率が低下するおそれがある。また、シーラント材の幅は、好ましくは18mm以下、より好ましくは13mm以下、更に好ましくは9.0mm以下、特に好ましくは7.0mm以下、最も好ましくは6.0mm以下、より最も好ましくは5.0mm以下である。18mmを超えると、重量アンバランスが発生しやすくなるおそれがある。
【0118】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、図8中、Dで示される長さ)と、シーラント材の幅(塗布後のシーラント材の幅、図4中、Wで示される長さ)の比率(シーラント材の厚さ/シーラント材の幅)は、好ましくは0.6〜1.4、より好ましくは0.7〜1.3、更に好ましくは0.8〜1.2、特に好ましくは0.9〜1.1である。該比率が1.0に近いほど、シーラント材の形状が理想的な紐状形状となり、シール性の高いシーラントタイヤをより生産性良く製造できる。
【0119】
シーラント材の断面積(塗布後のシーラント材の断面積、図8では、D×Wで算出される面積)は、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.95mm以上、更に好ましくは3.0mm以上、特に好ましくは3.75mm以上であり、好ましくは180mm以下、より好ましくは104mm以下、更に好ましくは45mm以下、特に好ましくは35mm以下、最も好ましくは25mm以下である。
【0120】
シーラント材を塗布する際におけるタイヤの回転速度は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは5m/min以上、より好ましくは10m/min以上であり、また、好ましくは30m/min以下、より好ましくは20m/min以下である。5m/min未満である場合及び30m/minを超える場合には、均一な厚さのシーラント材を塗布することが困難となる。
【0121】
本発明では、非接触式変位センサを用いることにより、シーラント材がセンサに付着することによる故障のリスクを低減させることができる。本発明で使用する非接触式変位センサとしては、タイヤの内周面とノズルの先端との距離を測定できるものであれば特に限定されないが、例えば、レーザセンサ、光センサ、静電容量センサ等が挙げられる。これらのセンサは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ゴムを測定するという観点から、レーザセンサ、光センサが好ましく、レーザセンサがより好ましい。レーザセンサを使用する場合、タイヤの内周面にレーザを照射し、レーザの反射からタイヤの内周面とレーザセンサの先端との距離を測定し、その値からレーザセンサの先端とノズルの先端との距離を差し引くことにより、タイヤの内周面とノズルの先端との距離を求めることができる。
【0122】
非接触式変位センサの位置は、シーラント材を塗布する前のタイヤの内周面とノズルの先端との距離を測定できる位置であれば特に限定されないが、ノズルに取り付けることが好ましく、シーラント材が付着しない位置に設置することがより好ましい。
【0123】
その他、非接触式変位センサの個数、大きさなどについても、特に限定されない。
【0124】
非接触式変位センサは、熱に弱いため、ノズルから吐出される高温のシーラント材からの熱影響を防止するために、断熱材等を用いた保護及び/又はエアー等を用いた冷却を行うことが好ましい。これにより、センサの耐久性を向上させることができる。
【0125】
第1実施形態の説明では、タイヤの幅方向及び半径方向の移動として、ノズルは移動せずタイヤが移動する例を説明したが、本発明においては、タイヤが移動せずノズルが移動してもよいし、タイヤ及びノズルの両方が移動してもよい。
【0126】
また、回転駆動装置は、タイヤのビード部の幅を広げる手段を有することが好ましい。シーラント材をタイヤに塗布する際に、タイヤのビード部の幅を広げることにより、シーラント材をタイヤに容易に塗布することができる。特に、タイヤを回転駆動装置にセットした後に、タイヤの内周面近傍にノズルを導入する際に、ノズルを平行移動するだけでノズルを導入でき、制御が容易となり、生産性が向上する。
【0127】
タイヤのビード部の幅を広げる手段としては、タイヤのビード部の幅を広げることが可能であれば特に限定されないが、互いに位置の変わらない複数(好ましくは2個)のロールを有する装置2組を用い、それぞれがタイヤ幅方向に動く機構等が挙げられる。該装置をタイヤ開口部両側からタイヤ内に入れてタイヤのビード部の幅を広げればよい。
【0128】
上記製造方法では、二軸混練押出機等で混合され、かつ押出機内での架橋反応の進行が抑制されたシーラント材を、そのままタイヤ内周面に塗布するため、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、架橋反応がより好適に進行し、シール性の高いシーラントタイヤを製造できる。そのため、シーラント材を塗布したシーラントタイヤを更に架橋する必要がなく、良好な生産性が得られる。
【0129】
なお、本発明では、必要に応じて、シーラント材を塗布したシーラントタイヤを更に架橋する架橋工程を行なってもよい。
架橋工程では、シーラントタイヤを加熱することが好ましい。これにより、シーラント材の架橋速度を向上でき、架橋反応をより好適に進行でき、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。加熱方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用できるが、オーブンを使用する方法が好適である。架橋工程は、例えば、シーラントタイヤを70℃〜190℃(好ましくは150℃〜190℃)のオーブン内に2〜15分間入れればよい。
なお、塗布直後の流動しやすいシーラント材でも流動を防ぎユニフォミティーを悪化させずに架橋反応を行うことができるという理由から、架橋する際に、タイヤをタイヤ周方向に回転させることが好ましい。回転速度は、好ましくは300〜1000rpmである。具体的には、例えば、オーブンとして回転機構付きオーブンを使用すれば良い。
【0130】
また、架橋工程を別途行わない場合であっても、シーラント材の架橋反応が終了するまでタイヤをタイヤ周方向に回転させることが好ましい。これにより、塗布直後の流動しやすいシーラント材でも流動を防ぎユニフォミティーを悪化させずに架橋反応を行うことができる。回転速度は、架橋工程の場合と同様である。
【0131】
シーラント材の架橋速度を向上させるために、シーラント材を塗布する前に予めタイヤを温めておくことが好ましい。これにより、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。タイヤの予熱温度は、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜70℃である。タイヤの予熱温度を上記範囲内とすることにより、塗布時から架橋反応が好適に始まり、架橋反応がより好適に進行し、シール性の高いシーラントタイヤを製造できる。また、タイヤの予熱温度を上記範囲内とすることにより、架橋工程を行う必要がなくなるため、生産性良くシーラントタイヤを製造できる。
【0132】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)は一般に連続運転を行う。一方、シーラントタイヤを製造する際には、1のタイヤへの塗布が終了するとタイヤを取り替える必要がある。この際に、生産性の低下を抑制しつつ、より品質の高いシーラントタイヤを製造するために、以下の(1)、(2)の方法を採用すればよい。(1)の方法では、品質の低下、(2)の方法では、コストの増大というデメリットがあるため、状況に応じて適宜使い分ければ良い。
(1)連続混練機、全ての供給装置を同時に稼働、停止させることにより、シーラント材のタイヤの内周面への供給を制御する
すなわち、1のタイヤへの塗布が終了すると、連続混練機、全ての供給装置を同時に停止させ、タイヤを交換し(1分以内に交換することが好ましい)、連続混練機、全ての供給装置を同時に稼働させ、タイヤへの塗布を再開すればよい。タイヤの交換を速やかに(好ましくは1分以内に)行うことにより、品質の低下を抑制できる。
(2)連続混練機、全ての供給装置を稼働させたまま、流路を切り替えることにより、シーラント材のタイヤの内周面への供給を制御する
すなわち、連続混練機に、タイヤの内周面に直接フィードするノズルとは別の流路を設けておき、1のタイヤへの塗布が終了すると、タイヤの交換が終了するまで、調製されたシーラント材を別の流路から排出すれば良い。この方法では、連続混練機、全ての供給装置を稼働させたままシーラントタイヤを製造できるため、より品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
【0133】
<第2実施形態>
第1実施形態の方法のみでは、シーラント材が略紐状形状の場合に、タイヤの内周面へのシーラント材の貼り付けが難しい場合があり、特に、貼り付け開始部分のシーラント材が剥離しやすいという問題があることが本発明者の検討の結果明らかとなってきた。第2実施形態では、上記シーラントタイヤの製造方法において、タイヤの内周面とノズルの先端との間隔を距離dにしてシーラント材を貼り付けた後、上記間隔を距離dより大きい距離dにしてシーラント材を貼り付けることを特徴としている。これにより、貼り付け開始時においてタイヤの内周面とノズルの先端との間隔を近づけることで、貼り付け開始部分に対応するシーラント材の幅を広くすることができ、少なくともトレッド部に対応するタイヤの内周面に、粘着性を有し、かつ略紐状形状のシーラント材が連続的にらせん状に貼り付けられており、シーラント材の長さ方向における端部の少なくとも一方が、長さ方向に隣接する部分よりも幅が広い幅広部であることを特徴とするシーラントタイヤを容易に製造することができる。該シーラントタイヤでは、貼り付け開始部分に対応するシーラント材の幅を広くすることにより、当該部分の接着力を改善し、当該部分におけるシーラント材の剥離を防止することができる。
なお、第2実施形態の説明では、主に第1実施形態と異なる点のみを説明し、第1実施形態と重複する内容については記載を省略する。
【0134】
図5は、図1に示す塗布装置を構成するノズルの先端付近の拡大図であり、(a)がシーラント材の貼り付け開始直後の状態、(b)が所定時間経過後の状態を示している。
【0135】
図5は、タイヤ10の一部をタイヤの周方向及び半径方向を含む平面で切った断面を示している。図5においては、X方向がタイヤの幅方向(軸方向)、Y方向がタイヤの周方向、Z方向がタイヤの半径方向である。
【0136】
第2実施形態では、まず、加硫工程で成形されたタイヤ10を回転駆動装置にセットし、ノズル30をタイヤ10の内側に挿入する。そして、図1及び図5に示すように、タイヤ10を回転させ、かつ、タイヤ10を幅方向に移動させながら、シーラント材20をノズル30から吐出することによってタイヤ10の内周面11に連続的に塗布する。タイヤ10の幅方向の移動は、例えば、予め入力しておいたタイヤ10の内周面11のプロファイル形状に沿って行う。
【0137】
シーラント材20は、粘着性を有し、かつ略紐状形状であるため、トレッド部に対応するタイヤ10の内周面11に、連続的にらせん状に貼り付けられることになる。
【0138】
この際、貼り付け開始から所定時間の間は、図5(a)に示すように、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間隔を距離dにしてシーラント材20を貼り付ける。そして、所定時間経過後、図5(b)に示すように、タイヤ10を半径方向に移動させることで上記間隔を距離dより大きい距離dに変更してシーラント材20を貼り付ける。
【0139】
なお、シーラント材の貼り付けを終了する前に、上記間隔を距離dから距離dに戻してもよいが、製造効率、タイヤの重量バランスの観点からは、シーラント材の貼り付けを終了するまで距離dであることが好ましい。
【0140】
また、貼り付け開始から所定時間の間は上記距離dの値を一定に保ち、所定時間経過後は上記距離dの値を一定に保つことが好ましいが、d<dの関係を満たす限り、距離d及びdの値は必ずしも一定でなくてもよい。
【0141】
上記距離dの値は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上である。0.3mm未満であると、ノズルの先端がタイヤの内周面に近すぎるため、シーラント材がノズルに付着しやすくなり、ノズルを掃除する頻度が高くなるおそれがある。また、上記距離dの値は、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下である。2mmを超えると、幅広部を設ける効果が充分に得られないおそれがある。
【0142】
上記距離dの値も特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下である。距離dは、上述の調整後の間隔dと同一であることが好ましい。
【0143】
なお、本明細書において、タイヤの内周面とノズルの先端との距離d、dとは、タイヤの内周面とノズルの先端とのタイヤの半径方向の距離である。
【0144】
シーラント材を貼り付ける際におけるタイヤの回転速度は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは5m/min以上、より好ましくは10m/min以上であり、また、好ましくは30m/min以下、より好ましくは20m/min以下である。5m/min未満である場合及び30m/minを超える場合には、均一な厚さのシーラント材を貼り付けることが困難となる。
【0145】
以上の工程により、第2実施形態のシーラントタイヤを製造することができる。
図6は、第2実施形態のシーラントタイヤに貼り付けられているシーラント材の一例を模式的に示す説明図である。
【0146】
略紐状形状のシーラント材20は、タイヤの周方向に巻き付けられており、連続的にらせん状に貼り付けられている。そして、シーラント材20の長さ方向における一方の端部が、長さ方向に隣接する部分よりも幅が広い幅広部21となっている。この幅広部21が、シーラント材の貼り付け開始部分に対応している。
【0147】
シーラント材の幅広部の幅(塗布後のシーラント材の幅広部の幅、図6中、Wで示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、幅広部以外の幅(図6中、Wで示される長さ)の103%以上が好ましく、110%以上がより好ましく、120%以上が更に好ましい。103%未満では、幅広部を設ける効果が充分に得られないおそれがある。また、シーラント材の幅広部の幅は、幅広部以外の幅の210%以下が好ましく、180%以下がより好ましく、160%以下が更に好ましい。210%を超えると、幅広部を形成するためにノズルの先端をタイヤの内周面に過度に近づける必要があるため、シーラント材がノズルに付着しやすくなり、ノズルを掃除する頻度が高くなるおそれがある。また、タイヤの重量バランスが崩れるおそれがある。
【0148】
なお、シーラント材の幅広部の幅は、長さ方向において実質的に一定であることが好ましいが、実質的に一定でない箇所があってもよい。例えば、幅広部は、貼り付け開始部分の幅が最も広く、長さ方向につれて幅が狭くなっていく形状であってもよい。ここで、本明細書において、幅が実質的に一定とは、幅の変動が98〜102%(好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
【0149】
シーラント材の幅広部の長さ(塗布後のシーラント材の幅広部の長さ、図6中、Lで示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは650mm未満、より好ましくは500mm未満、更に好ましくは350mm未満、特に好ましくは200mm未満である。650mm以上であると、タイヤの内周面にノズルの先端を近づけている時間が長くなるため、シーラント材がノズルに付着しやすくなり、ノズルを掃除する頻度が高くなるおそれがある。また、タイヤの重量バランスが崩れるおそれがある。なお、シーラント材の幅広部の長さは短いほど好ましいが、タイヤの内周面とノズルの先端との距離を制御することを考慮すると、10mm程度が限界である。
【0150】
シーラント材の幅広部以外の幅(塗布後のシーラント材の幅広部以外の幅、図6中、Wで示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.3mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。0.8mm未満であると、シーラント材をタイヤの内周面に巻き付ける回数が多くなり、製造効率が低下するおそれがある。また、シーラント材の幅広部以外の幅は、好ましくは18mm以下、より好ましくは13mm以下、更に好ましくは9.0mm以下、特に好ましくは7.0mm以下、最も好ましくは6.0mm以下、より最も好ましくは5.0mm以下である。である。18mmを超えると、重量アンバランスが発生しやすくなるおそれがある。Wは、上述のWと同一であることが好ましい。
【0151】
なお、シーラント材の幅広部以外の幅は、長さ方向において実質的に一定であることが好ましいが、実質的に一定でない箇所があってもよい。
【0152】
シーラント材が貼り付けられている領域の幅(以下、貼り付け領域の幅ともいい、図6ではW+6×Wで表される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、トレッド接地幅の80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、100%以上が更に好ましく、また、120%以下が好ましく、110%以下がより好ましい。
【0153】
本明細書において、トレッド接地幅は、以下のように定められる。まず、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置を「接地端」Teと定める。そして、この接地端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離をトレッド接地幅TWと定める。特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0154】
上記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めているリムであり、JATMAであれば“標準リム”、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”となる。また、上記「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば“最高空気圧”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”とするが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
【0155】
また、「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば“最大負荷能力”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”であるが、タイヤが乗用車用の場合には上記荷重の88%に相当する荷重とする。
【0156】
第2実施形態のシーラントタイヤでは、シーラント材は、幅方向に重ならないように貼り付けられていることが好ましく、隙間なく貼り付けられていることがより好ましい。
【0157】
また、第2実施形態のシーラントタイヤでは、シーラント材の長さ方向におけるもう一方の端部(貼り付け終了部分に対応する端部)も、長さ方向に隣接する部分よりも幅が広い幅広部となっていてもよい。
【0158】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、図8中、Dで示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上、特に好ましくは2.5mm以上であり、また、好ましくは10mm以下、より好ましくは8.0mm以下、更に好ましくは5.0mm以下である。1.0mm未満であると、タイヤがパンクした際にパンク穴を確実に塞ぐことが困難となる。また、10mmを超えても、パンク穴を塞ぐ効果はあまり変わらず、タイヤの重量が増加してしまうため好ましくない。
【0159】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ)は、実質的に一定であることが好ましい。これにより、タイヤのユニフォミティーの悪化をより防止でき、より重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
【0160】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、図8中、Dで示される長さ)と、シーラント材の幅広部以外の幅(塗布後のシーラント材の幅広部以外の幅、図6中、Wで示される長さ)の比率(シーラント材の厚さ/シーラント材の幅広部以外の幅)は、好ましくは0.6〜1.4、より好ましくは0.7〜1.3、更に好ましくは0.8〜1.2、特に好ましくは0.9〜1.1である。該比率が1.0に近いほど、シーラント材の形状が理想的な紐状形状となり、シール性の高いシーラントタイヤをより生産性良く製造できる。
【0161】
シーラント材の断面積(塗布後のシーラント材の断面積、図8では、D×Wで算出される面積)は、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.95mm以上、更に好ましくは3.0mm以上、特に好ましくは3.75mm以上であり、好ましくは180mm以下、より好ましくは104mm以下、更に好ましくは45mm以下、特に好ましくは35mm以下、最も好ましくは25mm以下である。
【0162】
第2実施形態では、シーラント材の粘度が上記範囲内であっても、特に、粘度が比較的高くても、貼り付け開始部分に対応するシーラント材の幅を広くすることにより、当該部分の接着力を改善し、当該部分におけるシーラント材の剥離を防止することができる。
【0163】
第2実施形態のシーラントタイヤは、上記の製造方法で製造することが好ましいが、シーラント材の少なくとも一方の端部を幅広部とすることができる限り、他の任意適当な製造方法で製造してもよい。
【0164】
上述の説明、特に、第1実施形態の説明では、タイヤの内周面にシーラント材を塗布する際に、非接触式変位センサを用いる場合について説明したが、本発明では、非接触式変位センサによる測定を行わずに、予め入力しておいた座標値に基づいて、ノズル及び/又はタイヤの移動を制御してタイヤの内周面にシーラント材を塗布してもよい。
【0165】
上述の製法等により、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有するシーラントタイヤが製造される。
【0166】
本発明では、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する前に、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る塗布前スキャン工程と、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する塗布工程と、シーラント材をタイヤの内周面に塗布した後に、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る塗布後スキャン工程とを含み、上記塗布前スキャン工程により得られたプロファイルと、上記塗布後スキャン工程により得られたプロファイルとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出することにより、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材の厚さを測定する。
【0167】
(塗布前スキャン工程)
塗布前スキャン工程では、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する前に、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る。
【0168】
変位センサとしては、タイヤの内周面と変位センサとの距離を測定できるものであれば特に限定されず、例えば、上述の非接触式変位センサが挙げられる。接触式変位センサを使用してもよいが、接触式変位センサを使用すると、センサと、シーラント材やタイヤの内周面とが直接接触することとなり、シーラントタイヤの品質が悪化するおそれがあるため、非接触式変位センサが好ましい。また、直線上を同時に測定できるという理由から、ラインセンサも好適に使用できる。変位センサの具体例としては、例えばキーエンス社製のLJ−V7300、LJ−V7000等が挙げられる。センサは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ゴムを測定するという観点から、レーザセンサ、光センサが好ましく、レーザセンサがより好ましい。レーザセンサを使用する場合、タイヤの内周面にレーザを照射し、レーザの反射からタイヤの内周面とレーザセンサの先端との距離が測定される。
【0169】
変位センサの位置は、タイヤの内周面と変位センサとの距離を測定できる位置であれば特に限定されない。例えば、上述の塗布装置を構成するノズルに取り付ければよい(図1参照)。なお、もちろん上述の塗布装置とは別に変位センサを設けてもよい。また、塗布前スキャン工程により得られたプロファイルと、塗布後スキャン工程により得られたプロファイルとを容易に対比できるため、塗布前スキャン工程と塗布後スキャン工程とにおいて、変位センサの相対的な位置を揃えておくことが好ましい。具体的には、例えば、両工程において、変位センサとタイヤの外周面との距離を揃えておけばよい。
【0170】
塗布前スキャン工程では、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する前に、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る。タイヤの内周面のどの場所をスキャンするかは、目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、簡便性を重視するのであれば、任意の1点のみをスキャンすればよいし、ある部分のシーラント材の厚さの分布を測定したいのであれば、測定したい部分をスキャンすればよい。また、タイヤ全体に渡ってシーラント材の厚さの分布を測定したいのであれば、タイヤの全内周面をスキャンすればよい。
【0171】
ここで、スキャンとしては、例えば、変位センサからタイヤの内周面までの距離を測定すればよい。
【0172】
スキャンを行う際は、変位センサを移動させてもタイヤを移動させても両者を移動させてもよい。
【0173】
塗布前スキャン工程では、タイヤが上述の回転駆動装置にセットされていることが好ましい。具体的には、回転駆動装置にセットされたタイヤの内側に変位センサを挿入し、回転駆動装置によりタイヤの動作を制御し、タイヤの内周面のスキャンを行えばよい。
【0174】
以上のように、塗布前スキャン工程では、シーラント層が形成される前のタイヤの内周面のスキャンを行い、シーラント層が形成される前のタイヤの内周面のプロファイルが得られる。
【0175】
(塗布工程)
塗布工程では、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する。塗布工程は、シーラント材をタイヤの内周面に塗布できるかぎり特に限定されないが、上述の製法のように、略紐状形状のシーラント材を連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することが好ましい。
【0176】
(塗布後スキャン工程)
塗布後スキャン工程では、シーラント材をタイヤの内周面に塗布した後に、変位センサによってタイヤ(シーラント層が形成されたタイヤ)の内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る。
【0177】
塗布後スキャン工程では、塗布前スキャン工程と測定対象が異なる点を除いて、塗布前スキャン工程と同様に行えばよい。
【0178】
本発明では、塗布前スキャン工程により得られたプロファイルと、塗布後スキャン工程により得られたプロファイルとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出するため、塗布後スキャン工程と、塗布前スキャン工程とは同様の条件でスキャンを行うことが好ましい。例えば、塗布前スキャン工程において、シーラント層の一方の端から他方の端までタイヤの幅方向に渡ってスキャンを行った場合、塗布後スキャン工程においてもシーラント層の一方の端から他方の端までタイヤの幅方向に渡ってスキャンを行うことが好ましい。
【0179】
また、少なくとも両工程においてスキャンした箇所が重複していることが好ましく、両工程において同一の場所や領域をスキャンすることがより好ましい。これにより、より精度良くシーラント材の厚さの分布を測定できる。
なお、タイヤの任意の場所を特定してスキャンするためには、例えば、タイヤの内面に刻印されている文字等を目印としてスキャンする箇所を決定したり、バーコードリーダーを利用したり等、当業者であれば適宜実施することが可能である。
また、両工程においてスキャンした箇所は、厳密な意味で重複している必要はなく、両工程においてスキャンした結果からシーラント材の厚さを有意な結果として測定できる限り、両工程においてスキャンした箇所が異なっていてもよい。これにより、より生産性良くシーラント材の厚さの分布を測定できる。
【0180】
以上のように、塗布後スキャン工程では、シーラント層が形成されたタイヤの内周面のスキャンを行い、シーラント層が形成されたタイヤの内周面のプロファイルが得られる。
【0181】
次いで、塗布前スキャン工程により得られたプロファイルと、塗布後スキャン工程により得られたプロファイルとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出することにより、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材の厚さを間接的に測定できる。
【0182】
具体的には、例えば、塗布前スキャン工程において、変位センサからタイヤの内周面までの距離を測定しておき、塗布後スキャン工程において、変位センサからタイヤの内周面までの距離を測定し、両者の距離の差を算出することにより、シーラント材の厚さを測定できる。変位センサによる測定を例えば、タイヤの幅方向に渡って行うことにより、タイヤの幅方向におけるシーラント材の厚さの分布を測定することができる。
【0183】
このように、本発明では、任意の位置のシーラント材の厚さを知ることができ、複数の位置についてシーラント材の厚さを測定することにより、シーラント材の厚さの分布も非破壊で簡便に測定できる。
【0184】
本発明では、製造したシーラントタイヤの品質保証をより簡便により精度よく行うという観点から、塗布前スキャン工程及び塗布後スキャン工程において、タイヤの幅方向に向かってスキャンを行うことが好ましい。この場合、タイヤの内周面に形成されたシーラント層の一方の端から他方の端までタイヤの幅方向に渡ってスキャンを行うことがより好ましい。これにより、製造したシーラントタイヤの品質を好適に評価することができる。また、タイヤの全周に渡ってプロファイルを得ることにより、シーラント層の体積も算出することが可能となる。
【0185】
特に、上述の製法のように、略紐状形状のシーラント材を連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することによりシーラント層が形成されている場合、塗布前スキャン工程及び塗布後スキャン工程において、タイヤの幅方向に渡ってスキャンを行うこと、特に、シーラント層の一方の端から他方の端までタイヤの幅方向に渡ってスキャンを行うことにより、製造したシーラントタイヤの品質をより好適に評価することができる。
【0186】
また、上述の製法のように、略紐状形状のシーラント材を連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することによりシーラント層が形成されている場合、塗布前スキャン工程及び塗布後スキャン工程においても、らせん状の軌道を描くようにタイヤの内周面のスキャンを行うことが好ましい。これにより、シーラント材を貼り付ける軌道と、スキャンする軌道が類似することとなり、より精度良くシーラント材の厚さの分布を測定できる。
ここで、塗布前スキャン工程及び塗布後スキャン工程において、らせん状の軌道を描く際の送り幅は、塗布工程におけるらせん状の軌道を描く際の送り幅の50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。これにより、より精度良くシーラント材の厚さの分布を測定できる。
ここで、塗布前スキャン工程及び塗布後スキャン工程において、らせん状の軌道を描く際の送り幅とは、らせんがタイヤ内面を1周する際に、スキャンする位置がタイヤの幅方向に移動する距離を意味する。
また、塗布工程におけるらせん状の軌道を描く際の送り幅とは、らせんがタイヤ内面を1周する際に、シーラント材を塗布する位置(例えば、ノズルの位置)がタイヤの幅方向に移動する距離を意味する。
【0187】
また、上述の製法のように、塗布工程が、タイヤのビード部の幅を広げた状態で、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する工程である場合、塗布前スキャン工程及び塗布後スキャン工程においても、上記塗布工程と同様にタイヤのビード部の幅を広げた状態で、タイヤの内周面のスキャンを行うことが好ましい。これにより、シーラント材を貼り付ける際のタイヤの形状と、スキャンする際のタイヤの形状が一致することとなり、より精度良くシーラント材の厚さの分布を測定できる。
【0188】
また、本発明では、スポットタイプのセンサよりもラインセンサを使用することが好ましい。ラインセンサを使用した場合、例えばタイヤ周方向に測定を行うことで、スポットタイプのセンサを使用した場合のような線の測定結果ではなく面の測定結果を得ることができる。その結果、線の測定結果では漏れてしまうほどの小さな異常も検出できる。また、測定時間を短縮でき、生産性が向上し、タイヤ内周面全面の測定結果であっても生産性よく得ることもできる。
【0189】
更には、面の測定結果に基づいて、シーラント層の体積を精度よく算出することも可能である。そして、シーラント材の比重を測定しておけば、シーラント層の体積からシーラント層の重量を算出することが可能となる。これにより、以下のことが可能となる。
(1)シーラント層の形成前後において重量を測定しておかなくても、シーラント層の体積とシーラント材の比重から、シーラント層の重量を算出することが可能となる。
(2)シーラント層の形成前後において重量を測定しておくことにより、シーラント層の体積とシーラント材の比重から算出したシーラント層の重量と、実測した重量との差により、センサや設備の異常を検出できる。
【0190】
また、本発明では、タイヤの内周面のスキャンを行う際、タイヤを回転させながら行うことが好ましい。これにより、タイヤの浮き上がり等を抑制でき、より精度よくスキャンを行うことができる。
【0191】
本発明の具体的な方法としては、例えば、上述の塗布装置を構成するノズルに変位センサを設けておき(図1参照)、まず、シーラント層が形成される前のタイヤの内周面のスキャンを行い、シーラント層が形成される前のタイヤの内周面のプロファイルを得る(塗布前スキャン工程)。得られたタイヤの内周面のプロファイルの一例としては、例えば、図10に描かれたBeforeと示された曲線である。次に、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する(塗布工程)。そして、シーラント層が形成されたタイヤの内周面のスキャンを行い、シーラント層が形成されたタイヤの内周面のプロファイルを得る(塗布後スキャン工程)。得られたタイヤの内周面のプロファイルの一例としては、例えば、図10に描かれたAfterと示された曲線である。最後に、塗布前スキャン工程において得られたタイヤの内周面のプロファイルと、塗布後スキャン工程において得られたタイヤの内周面のプロファイルの差分を算出することにより、シーラント材の厚さを測定できる。シーラント材の厚さの測定結果の一例としては、例えば、図10に描かれたBeforeと示された曲線と、図10に描かれたAfterと示された曲線との差分を算出することにより得られる図11に描かれた曲線である。
【0192】
上記具体的な方法では、塗布前スキャン工程、塗布工程、塗布後スキャン工程とを別々に行う場合、すなわち、塗布前スキャン工程を終了後に、塗布工程を行い、塗布工程終了後に塗布後スキャン工程を行う場合について説明したが、これらの工程のうち少なくとも2つの工程を同時に行ってもよい。すなわち、塗布工程と、塗布前スキャン工程、及び/又は、塗布後スキャン工程とを同時に行ってもよい。これにより、生産性の低下を抑制しつつ、シーラント材の厚さを測定できる。また、より精度良くシーラント材の厚さの分布を測定できる。
【0193】
具体的には、塗布前スキャン工程及び塗布工程を同時に、又は、塗布工程及び塗布後スキャン工程を同時に行うことが好ましく、塗布前スキャン工程、塗布工程、及び塗布後スキャン工程を同時に行うことがより好ましい。
【0194】
ここで、同時とは、塗布工程を行いながらスキャン工程も行うことを意味し、厳密な意味での同時(すなわち、タイヤの内周面のある位置において塗布工程とスキャン工程を同じ瞬間に行う)でなくても構わない。
【0195】
塗布工程と、塗布前スキャン工程、及び/又は、塗布後スキャン工程とを同時に、特に、これら3工程を同時に行うことにより、シーラント材を塗布する際にリアルタイムでシーラント材の厚さを把握することができる。
【0196】
3工程を同時に行う場合の具体的な方法としては、例えば、上述の塗布装置を構成するノズルに2個の変位センサを設けておき、一方の変位センサは、シーラント材の塗布方向の進行方向側に設け、他方の変位センサは、シーラント材の塗布方向の進行方向反対側に設ける。そして、一方の変位センサにより、スキャンを行いつつ(塗布前スキャン工程)、順次シーラント材を塗布し(塗布工程)、更に、他方の変位センサにより、スキャンを行う(塗布後スキャン工程)ことにより、一方の変位センサによるスキャン(塗布前スキャン工程)、シーラント材の塗布(塗布工程)、及び他方の変位センサによるスキャン(塗布後スキャン工程)を連続的に同時に行うことができる。
【0197】
なお、上述の製法のようにノズルとタイヤの内周面との距離を変化させながらシーラント材の塗布を行う場合は、この変化した距離に基づいて変位センサにより測定したプロファイルを適宜修正すればよい。
【0198】
また、製造されたシーラントタイヤのシーラント材の厚さ(シーラント層の厚さ)は、本発明の測定装置を使用することにより、非破壊で簡便に測定できる。
【0199】
具体的には、本発明のシーラント材の厚さの測定装置は、変位センサと、演算処理装置とを備え、上記演算処理装置は、(A)シーラント材がタイヤの内周面に塗布される前のタイヤに対して、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る処理、(B)シーラント材がタイヤの内周面に塗布された後のタイヤに対して、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る処理、及び(C)上記処理(A)により得られたプロファイルと、上記処理(B)により得られたプロファイルとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出する処理を実行するものであるため、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材の厚さを測定することができ、シーラント材の厚さを非破壊で簡便に測定できる。
【0200】
本発明のシーラント材の厚さの測定装置は、変位センサを備える。本発明のシーラント材の厚さの測定装置は、変位センサ以外にも、ビード固定装置を有することが好ましい。更には、本発明のシーラント材の厚さの測定装置は、起立状態でタイヤを保持する機構、タイヤを回転させる機構も有することがより好ましい。
【0201】
変位センサとしては、シーラント材の厚さの測定方法と同様のものを同様の態様で好適に使用できる。
【0202】
変位センサの位置は、タイヤの内周面と変位センサとの距離を測定できる位置であれば特に限定されない。また、上記処理(A)により得られたプロファイルと、上記処理(B)により得られたプロファイルとを容易に対比できるため、上記処理(A)と上記処理(B)とにおいて、変位センサの相対的な位置を揃えておくことが好ましい。具体的には、例えば、両処理において、変位センサとタイヤの外周面との距離を揃えておけばよい。
【0203】
ビード固定装置としては、上述のタイヤのビード部の幅を広げる手段と同様に、タイヤのビード部の幅を広げることが可能なものであれば特に限定されないが、互いに位置の変わらない複数(好ましくは2個)のロールを有する装置2組を用い、それぞれがタイヤ幅方向に動く機構等が挙げられる。該装置をタイヤ開口部両側からタイヤ内に入れてタイヤのビード部の幅を広げればよい。ビード部の幅を広げることにより、タイヤ幅方向端部におけるスキャンを行いやすくなる。
また、ビード固定装置としては、例えばモーターとボールねじ、エンコーダの構成のように、規定の開き幅に対し、再現性が高い装置が好ましい。
【0204】
起立状態でタイヤを保持する機構、タイヤを回転させる機構としては、上述の回転駆動装置と同様の機構を採用できる。
【0205】
タイヤの回転については例えばモーターのような機構を使用すればよい。測定結果を用いて貼り付けたシーラント層の体積を演算する用途に使用する場合は、正確な1回転を検出する必要があるため、バーコードを基準としてバーコードリーダーや白黒センサを用いて検出を行ったり、さらに精度を求めるならば回転機構にエンコーダを設置し、タイヤの外周長の設計値で測定を終了させる、もしくはビード部分を保持する内径駆動とすることで、エンコーダーと合わせ、1周回転した事の検出精度を向上させればよい。
【0206】
図12は、シーラント材の厚さの測定装置の一例を模式的に示す説明図である。
シーラント材の厚さの測定装置100は、変位センサであるラインセンサ102、ビード固定装置であるビード固定具101(ビード固定具101a、ビード固定具101b)、起立状態でタイヤを保持する機構(図示せず)、タイヤを回転させる機構(図示せず)を有する。
【0207】
ビード固定具101a、ビード固定具101bはそれぞれ、タイヤ幅方向に可動可能であり、図12では、タイヤ10のビード部の幅を広げた状態にしている。
【0208】
シーラント材の厚さの測定装置100は、ラインセンサ102が、タイヤの幅方向の直線上を同時にスキャン可能なように取り付けられているため、生産性よくスキャンを行うことができる。このように、変位センサとしてラインセンサを使用することにより、生産性よくスキャンを行うことができる。また、変位センサとしてラインセンサを使用し、更にタイヤを回転させながらスキャンすることにより、タイヤの全周に渡ってプロファイルを得ることができる。
【0209】
本発明のシーラント材の厚さの測定装置は、更に、内部構成として演算処理装置を備える。本発明のシーラント材の厚さの測定装置は、内部構成として演算処理装置と共に記憶装置を備えることが好ましい。
【0210】
図13は、本発明の一実施形態に係るシーラント材の厚さの測定装置の内部構成の一部を示すブロック図である。
シーラント材の厚さの測定装置100は、CPU141と、ROM142と、RAM143と、ハードディスク144と、グラフィックボード147と、画像表示パネル148と、タッチパネル146、ラインセンサ102とを備えている。
なお、シーラント材の厚さの測定装置100は、CPU141から出力される信号に基づいてビード固定具101の動作を制御する駆動回路等の構成も備えているが、図13では説明を分かりやすくするために、これらの構成を省略している。
CPU141は、本発明における演算処理装置に相当する。
RAM143、ハードディスク144は、本発明における記憶装置に相当する。
【0211】
ROM142は、シーラント材の厚さの測定装置の動作を制御するためのシステムプログラムや恒久的なデータ等が記憶されている。
【0212】
グラフィックボード147は、CPU141から出力される制御信号に基づいて、画像表示パネル148における画像表示を制御する。画像表示パネル148には、測定結果を示す画像やタイヤの管理番号の入力等を促す画像等が表示される。
【0213】
タッチパネル146は、画像表示パネル148の前面に設けられており、シーラント材の厚さの測定装置100のオペレーターは、タッチパネル146を操作して各種の指示を入力することができる。
【0214】
ラインセンサ102は、ラインセンサ102から対象物までの距離を測定できる。
【0215】
ハードディスク144には、塗布前のタイヤの内周面のプロファイルと、塗布後のタイヤの内周面のプロファイルの差分を算出するプログラムや、タイヤの管理番号の値を示すデータ(管理番号データ)と関連付けられた、スキャン処理により得られたプロファイルを示すデータ等が記憶されている。これらのデータ及びプログラムは所定のタイミングでRAM143に読み出されて実行等される。
【0216】
RAM143は、タイヤの管理番号の値を示すデータ(管理番号データ)等の各種データ等を一時的に記憶する。
【0217】
本発明のシーラント材の厚さの測定装置では、シーラント材の厚さの測定装置が、内部構成として有する演算処理装置により、
(A)シーラント材がタイヤの内周面に塗布される前のタイヤに対して、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る処理、
(B)シーラント材がタイヤの内周面に塗布された後のタイヤに対して、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る処理、及び
(C)上記処理(A)により得られたプロファイルと、上記処理(B)により得られたプロファイルとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出する処理
が実行される。
【0218】
すなわち、演算処理装置により、シーラント材がタイヤの内周面に塗布される前のタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る上記処理(A)と、シーラント材がタイヤの内周面に塗布された後のタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る上記処理(B)と、上記処理(A)により得られたプロファイルと、上記処理(B)により得られたプロファイルとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出する上記処理(C)とを行うことにより、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材の厚さを測定することができる。
【0219】
(処理(A))
上記処理(A)では、シーラント材がタイヤの内周面に塗布される前のタイヤに対して、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る。
タイヤの内周面のどの場所をスキャンするかは、目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、簡便性を重視するのであれば、任意の1点のみをスキャンすればよいし、ある部分のシーラント材の厚さの分布を測定したいのであれば、測定したい部分をスキャンすればよい。また、タイヤ全体に渡ってシーラント材の厚さの分布を測定したいのであれば、タイヤの全内周面をスキャンすればよい。
【0220】
ここで、スキャンとしては、例えば、変位センサからタイヤの内周面までの距離を測定すればよい。
【0221】
スキャンを行う際は、変位センサを移動させてもタイヤを移動させても両者を移動させてもよい。
【0222】
上記処理(A)では、タイヤを回転させる機構によりタイヤが回転していることが好ましい。これにより、タイヤの浮き上がり等を抑制でき、より精度よくスキャンを行うことができる。具体的には、タイヤを回転させる機構にセットされたタイヤの内側に変位センサを挿入し、タイヤを回転させる機構によりタイヤの動作を制御し(タイヤを回転させ)、タイヤの内周面のスキャンを行えばよい。
【0223】
以上のように、上記処理(A)では、演算処理装置が変位センサを用いて、シーラント層が形成される前のタイヤの内周面のスキャンを行い、シーラント層が形成される前のタイヤの内周面のプロファイルが得られる。そして、演算処理装置は、スキャン処理により得られたプロファイルを示すデータ(塗布前のタイヤの内周面のプロファイルを示すデータ)を記憶装置に記憶させる。
【0224】
(処理(B))
上記処理(B)では、シーラント材がタイヤの内周面に塗布された後のタイヤに対して、変位センサによってタイヤ(シーラント層が形成されたタイヤ)の内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る。
【0225】
上記処理(B)では、上記処理(A)と測定対象が異なる点を除いて、上記処理(A)と同様に行えばよい。
【0226】
本発明では、上記処理(A)により得られたプロファイルと、上記処理(B)により得られたプロファイルとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出するため、上記処理(B)と、上記処理(A)とは同様の条件でスキャンを行うことが好ましい。例えば、上記処理(A)において、シーラント層の一方の端から他方の端までタイヤの幅方向に渡ってスキャンを行った場合、上記処理(B)においてもシーラント層の一方の端から他方の端までタイヤの幅方向に渡ってスキャンを行うことが好ましい。
【0227】
また、少なくとも両処理においてスキャンした箇所が重複していることが好ましく、両処理において同一の場所や領域をスキャンすることがより好ましい。これにより、より精度良くシーラント材の厚さの分布を測定できる。
なお、タイヤの任意の場所を特定してスキャンするためには、例えば、タイヤの内面に刻印されている文字等を目印としてスキャンする箇所を決定したり、バーコードリーダーを利用したり等、当業者であれば適宜実施することが可能である。
また、両処理においてスキャンした箇所は、厳密な意味で重複している必要はなく、両処理においてスキャンした結果からシーラント材の厚さを有意な結果として測定できる限り、両処理においてスキャンした箇所が異なっていてもよい。これにより、より生産性良くシーラント材の厚さの分布を測定できる。
【0228】
以上のように、上記処理(B)では、演算処理装置が変位センサを用いて、シーラント層が形成された後のタイヤの内周面のスキャンを行い、シーラント層が形成されたタイヤの内周面のプロファイルが得られる。そして、演算処理装置は、スキャン処理により得られたプロファイルを示すデータ(塗布後のタイヤの内周面のプロファイルを示すデータ)を記憶装置に記憶させる。
【0229】
(処理(C))
上記処理(C)では、上記処理(A)により得られたプロファイルと、上記処理(B)により得られたプロファイルとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出することにより、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材の厚さを間接的に測定できる。具体的には、演算処理装置は、記憶装置に記憶されている塗布前のタイヤの内周面のプロファイルを示すデータと、塗布後のタイヤの内周面のプロファイルを示すデータとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出する。この厚さの変化量がシーラント材の厚さ(シーラント層の厚さ)に相当する。
【0230】
具体的には、例えば、上記処理(A)において、変位センサからタイヤの内周面までの距離を測定しておき、上記処理(B)において、変位センサからタイヤの内周面までの距離を測定し、両者の距離の差を算出することにより、シーラント材の厚さを測定できる。変位センサによる測定を例えば、タイヤの幅方向に渡って行うことにより、タイヤの幅方向におけるシーラント材の厚さの分布を測定することができる。
【0231】
このように、本発明では、任意の位置のシーラント材の厚さを知ることができ、複数の位置についてシーラント材の厚さを測定することにより、シーラント材の厚さの分布も非破壊で簡便に測定できる。
【0232】
本発明では、製造したシーラントタイヤの品質保証をより簡便により精度よく行うという観点から、上記処理(A)及び上記処理(B)において、タイヤの幅方向に向かってスキャンを行うことが好ましい。この場合、タイヤの内周面に形成されたシーラント層の一方の端から他方の端までタイヤの幅方向に渡ってスキャンを行うことがより好ましい。これにより、製造したシーラントタイヤの品質を好適に評価することができる。また、タイヤの全周に渡ってプロファイルを得ることにより、シーラント層の体積も算出することが可能となる。
【0233】
特に、上述の製法のように、略紐状形状のシーラント材を連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することによりシーラント層が形成されている場合、上記処理(A)及び上記処理(B)において、タイヤの幅方向に渡ってスキャンを行うこと、特に、シーラント層の一方の端から他方の端までタイヤの幅方向に渡ってスキャンを行うことにより、製造したシーラントタイヤの品質をより好適に評価することができる。
【0234】
また、上述の製法のように、略紐状形状のシーラント材を連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することによりシーラント層が形成されている場合、上記処理(A)及び上記処理(B)においても、らせん状の軌道を描くようにタイヤの内周面のスキャンを行うことが好ましい。これにより、シーラント材を貼り付ける軌道と、スキャンする軌道が類似することとなり、より精度良くシーラント材の厚さの分布を測定できる。
ここで、上記処理(A)及び上記処理(B)において、らせん状の軌道を描く際の送り幅は、塗布工程におけるらせん状の軌道を描く際の送り幅の50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。これにより、より精度良くシーラント材の厚さの分布を測定できる。
ここで、上記処理(A)及び上記処理(B)において、らせん状の軌道を描く際の送り幅とは、らせんがタイヤ内面を1周する際に、スキャンする位置がタイヤの幅方向に移動する距離を意味する。
また、塗布工程におけるらせん状の軌道を描く際の送り幅とは、らせんがタイヤ内面を1周する際に、シーラント材を塗布する位置(例えば、ノズルの位置)がタイヤの幅方向に移動する距離を意味する。
【0235】
また、上述の製法のように、塗布工程が、タイヤのビード部の幅を広げた状態で、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する工程である場合、上記処理(A)及び上記処理(B)においても、上記塗布工程と同様にタイヤのビード部の幅を広げた状態で、タイヤの内周面のスキャンを行うことが好ましい。これにより、シーラント材を貼り付ける際のタイヤの形状と、スキャンする際のタイヤの形状が一致することとなり、より精度良くシーラント材の厚さの分布を測定できる。
【0236】
また、本発明では、上述の理由から、スポットタイプのセンサよりもラインセンサを使用することが好ましい。
【0237】
本発明の具体的な態様の一例としては、例えば、まず、シーラント層が形成される前のタイヤの内周面のスキャンを行い、シーラント層が形成される前のタイヤの内周面のプロファイルを得る(上記処理(A))。得られたタイヤの内周面のプロファイルの一例としては、例えば、図10に描かれたBeforeと示された曲線である。次に、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する。そして、シーラント層が形成されたタイヤの内周面のスキャンを行い、シーラント層が形成されたタイヤの内周面のプロファイルを得る(上記処理(B))。得られたタイヤの内周面のプロファイルの一例としては、例えば、図10に描かれたAfterと示された曲線である。最後に、上記処理(A)において得られたタイヤの内周面のプロファイルと、上記処理(B)において得られたタイヤの内周面のプロファイルの差分を算出する(上記処理(C))ことにより、シーラント材の厚さを測定できる。シーラント材の厚さの測定結果の一例としては、例えば、図10に描かれたBeforeと示された曲線と、図10に描かれたAfterと示された曲線との差分を算出することにより得られる図11に描かれた曲線である。
【0238】
以下において、演算処理装置により行われる処理の一例をフローチャートを用いて説明する。
【0239】
図14は、本発明の一実施形態に係るシーラント材の厚さの測定装置において行われる入力受付処理を示すフローチャートである。
入力受付処理は、予め実行されているメインルーチンから所定のタイミングで呼び出されて実行されるものである。
【0240】
まず、CPU141は、入力受付画面を画像表示パネル148に表示する(ステップS1)。この処理では、CPU141は、グラフィックボード147に制御信号を送信して、画像表示パネル148において、入力受付画面を表示するように制御する。
入力受付画面には、タイヤの管理番号の入力等を促す画像等が表示される。
【0241】
次に、CPU141は、タイヤの管理番号の値が入力されたか否かを判断する(ステップS2)。この処理では、CPU141は、タッチパネル146からタイヤの管理番号を示すデータを受信したか否かを判断する。タイヤの管理番号の値が入力されていないと判断した場合、CPU141は、処理をステップS1に戻す。
【0242】
一方、タイヤの管理番号の値が入力されたと判断した場合、CPU141は、タイヤの管理番号の値を示すデータ(管理番号データ)をRAM143に記憶する(ステップS3)。
【0243】
次に、CPU141は、RAM143に記憶した管理番号データが示す数値(タイヤの管理番号)と同一の番号(タイヤの管理番号)の値を示すデータ(管理番号データ)が、ハードディスク144に記憶されているか否かを判断する(ステップS4)。同一のタイヤの管理番号の値がハードディスク144に記憶されていないと判断した場合、CPU141は、処理をステップS6に移す。
【0244】
一方、同一のタイヤの管理番号の値がハードディスク144に記憶されていると判断した場合、CPU141は、計算フラグをセットする(ステップS5)。ここで、同一のタイヤの管理番号の値がハードディスク144に記憶されているということは、同一の管理番号のタイヤについて、後述するステップS13において、スキャン処理により得られたプロファイルを示すデータが、タイヤの管理番号の値を示すデータ(管理番号データ)と関連付けてハードディスク144に既に記憶されていることを意味する。すなわち、同一の管理番号のタイヤについて、シーラント材がタイヤの内周面に塗布される前のタイヤに対して、変位センサによってタイヤの内周面のスキャンが既に行われていることを意味する。
【0245】
ステップS4において、同一のタイヤの管理番号の値がハードディスク144に記憶されていないと判断した場合、及びステップS5を実行した後、CPU141は、スキャン開始フラグをセットする(ステップS6)。CPU141は、ステップS6の処理を実行した後、入力受付処理を終了する。
【0246】
図15は、本発明の一実施形態に係るシーラント材の厚さの測定装置において行われる計測処理を示すフローチャートである。
計測処理は、本実施形態では、入力受付処理が終了した後、所定のタイミングで呼び出されて実行される。
【0247】
まず、CPU141は、スキャン開始フラグがセットされているか否かを判断する(ステップS11)。スキャン開始フラグがセットされていないと判断した場合、CPU141は、計測処理を終了する。
【0248】
一方、スキャン開始フラグがセットされていると判断した場合、CPU141は、スキャン処理を実行する(ステップS12)。この処理では、タイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る。スキャン処理については、後で図面を用いて説明する。スキャン処理は、上記処理(A)、上記処理(B)に相当する。すなわち、シーラント層が形成される前のタイヤに対してスキャン処理を行った場合は上記処理(A)に相当し、シーラント層が形成された後のタイヤに対してスキャン処理を行った場合は上記処理(B)に相当する。
【0249】
次に、CPU141は、ステップS12の処理を実行した後、スキャン処理により得られたプロファイルを示すデータを、ステップS3においてRAM143に記憶したタイヤの管理番号の値を示すデータ(管理番号データ)と関連付けてハードディスク144に記憶する(ステップS13)。この際に、計算フラグがセットされている場合は、塗布後のタイヤの内周面のプロファイルを示すデータとして保存し、計算フラグがセットされていない場合は、塗布前のタイヤの内周面のプロファイルを示すデータとして保存する。
【0250】
次に、CPU141は、スキャン開始フラグをクリアする(ステップS14)。
【0251】
次に、CPU141は、計算フラグがセットされているか否かを判断する(ステップS15)。計算フラグがセットされていないと判断した場合、CPU141は、計測処理を終了する。
【0252】
一方、計算フラグがセットされていると判断した場合、CPU141は、計算処理を実行する(ステップS16)。この処理では、塗布前のタイヤの内周面のプロファイルを示すデータと、塗布後のタイヤの内周面のプロファイルを示すデータとに基づいて、タイヤの内周面の厚さの変化を算出する。計算処理については、後で図面を用いて説明する。計算処理は、上記処理(C)に相当する。
【0253】
ステップS16の処理を実行した後、CPU141は、計算フラグをクリアし(ステップS17)、更に、計算処理により得られた結果を示す画像を画像表示パネル148に表示する(ステップS18)。この処理では、CPU141は、グラフィックボード147に制御信号を送信して、画像表示パネル148において、計算処理により得られた結果を示す画像を表示するように制御する。
画像表示パネル148には、例えば、図11に示される画像が表示される。
CPU141は、ステップS18の処理を実行した後、計測処理を終了する。
【0254】
図16は、本発明の一実施形態に係るシーラント材の厚さの測定装置において行われるスキャン処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
まず、CPU141は、スキャンを実行する(ステップS21)。この処理では、CPU141は、ラインセンサ102を稼働させ、タイヤの内周面のスキャンを行い、プロファイルを得る。スキャンの具体例は、上述のとおりである。スキャン終了後、CPU141は、スキャン処理により得られたプロファイルを示すデータをラインセンサ102から受信する。プロファイルを示すデータでは、変位センサからタイヤの内周面までの距離を示すデータが、該距離が測定された内周面の位置を特定するデータと関連付けられている。なお、プロファイルを示すデータは、変位センサからタイヤの内周面までの距離を示すデータを複数含むデータ群であってもよい。すなわち、プロファイルを示すデータが、複数箇所のスキャン結果を示すデータであってもよい。
【0255】
次に、CPU141は、スキャン処理により得られたプロファイルを示すデータをRAM143に記憶する(ステップS22)。
CPU141は、ステップS22の処理を実行した後、スキャン処理を終了する。
【0256】
図17は、本発明の一実施形態に係るシーラント材の厚さの測定装置において行われる計算処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
まず、CPU141は、ハードディスク144に記憶された塗布前のタイヤの内周面のプロファイルを示すデータをRAM143に読み出す(ステップS31)。
【0257】
次に、CPU141は、ハードディスク144に記憶された塗布後のタイヤの内周面のプロファイルを示すデータをRAM143に読み出す(ステップS32)。ここで、ステップS32では、ステップS31において読み出したデータに関連付けられているタイヤの管理番号の値を示すデータ(管理番号データ)と同一のタイヤの管理番号の値を示すデータ(管理番号データ)と関連付けられているデータを読み出す。
【0258】
次に、CPU141は、RAM143に読み出された塗布前のタイヤの内周面のプロファイルを示すデータと、RAM143に読み出された塗布後のタイヤの内周面のプロファイルを示すデータを用いて、塗布前のタイヤの内周面のプロファイルと、塗布後のタイヤの内周面のプロファイルの差分を算出する(ステップS33)。
【0259】
次に、CPU141は、ステップS33により算出した結果を示すデータをタイヤの管理番号の値を示すデータ(管理番号データ)と関連付けてハードディスク144に記憶する(ステップS34)。
CPU141は、ステップS34の処理を実行した後、計算処理を終了する。
【符号の説明】
【0260】
10 タイヤ
11 タイヤの内周面
14 トレッド部
15 カーカス
16 ブレーカー
17 バンド
20 シーラント材
21 幅広部
30 ノズル
31 ノズルの先端
40 非接触式変位センサ
50 回転駆動装置
60 二軸混練押出機
61(61a 61b 61c) 供給口
62 材料フィーダー
100 シーラント材の厚さの測定装置
101(101a 101b) ビード固定具
102 ラインセンサ
141 CPU
142 ROM
143 RAM
144 ハードディスク
146 タッチパネル
147 グラフィックボード
148 画像表示パネル
d、d、d、d タイヤの内周面とノズルの先端との距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17