特許第6178404号(P6178404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178404
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】受電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20170731BHJP
【FI】
   H02J50/12
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-504084(P2015-504084)
(86)(22)【出願日】2013年3月8日
(86)【国際出願番号】JP2013056463
(87)【国際公開番号】WO2014136257
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2015年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】柴田 晃司
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−244530(JP,A)
【文献】 特開2010−141976(JP,A)
【文献】 特開2011−199975(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/169014(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/061821(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイルを備える送電装置から出力された電力を非接触で受電する受電装置であって、
前記送電コイルと間隔をあけて対向して配置される受電コイルと、
前記受電コイルに電気的に接続された入力端と、負荷に対して電力を出力可能な出力端と、前記入力端に接続され、特性可変に構成された整合回路と、前記整合回路及び前記出力端間に接続された整流器と、を有する受電回路と、
前記送電コイル及び前記受電コイル間の相対的な位置関係を示す位置関係情報を取得する位置関係取得手段と、
前記整流器から出力される電流値及び電圧値に基づいて前記出力端に接続される負荷の負荷抵抗を取得すると共に、前記負荷抵抗に基づいて前記負荷の複素インピーダンスを取得するインピーダンス取得手段と、
記位置関係情報、前記負荷抵抗及び前記複素インピーダンスに基づいて、前記整合回路に係る特性を変更する制御手段と、
を備え
前記受電回路は、
前記受電回路に電力を供給可能な電源と、
前記入力端及び前記出力端間が、前記整合回路及び前記整流器を介して接続される第1電路と、前記電源及び前記出力端間が電気的に接続される第2電路とを相互に切り替える切替手段と、
を更に有し、
前記インピーダンス取得手段により前記複素インピーダンスが取得される際、前記切替手段は前記第2電路を選択する
ことを特徴とする受電装置。
【請求項2】
前記位置関係取得手段は、前記送電コイル及び前記受電コイル間における結合係数を前記位置関係情報として取得することを特徴とする請求項1に記載の受電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車や電子機器等に搭載され、非接触で電力を充電可能な受電装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、2次側共鳴コイルと、整流器と、該2次側共鳴コイル及び整流器間に設けられた2次側整合器と、該整流器により整流された電力が供給される充電器と、コントローラと、を含む受電側設備が提案されている。ここでは特に、該コントローラの記憶装置に、1次側共鳴コイル及び2次側共鳴コイル間の距離が予め設定された状態におけるバッテリの充電状態と、その状態に対応する2次側整合器のインピーダンスとの関係を示すデータを記憶させておき、充電時に、検出されバッテリの充電状態と記憶されたデータとに基づいて、2次側整合器の調整を行うことが開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
或いは、受信アンテナと、整流器と、該整流器の後段に接続されたDC−DC変換器と、を備える電力受信機が提案されている。ここでは特に、DC−DC変換器のデューティ比を変更することによって、該電力受信機に係るACインピーダンスを調整することが開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−244530号公報
【特許文献2】特表2012−521737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、受電時に、1次側共鳴コイル及び2次側共鳴コイル間の距離が変化した場合に、最適な状態での電力の受電が困難になる可能性があるという技術的問題点がある。また、特許文献2に記載の技術では、DC−DC変換器を使用しなければならず制御が複雑になる可能性があるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、比較的簡便にインピーダンスを調整でき、且つ、受電中にコイル間の距離が変化した場合であっても適切に受電を継続することができる受電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の受電装置は、上記課題を解決するために、送電コイルを備える送電装置から出力された電力を非接触で受電する受電装置であって、前記送電コイルと間隔をあけて対向して配置される受電コイルと、前記受電コイルに電気的に接続された入力端と、負荷に対して電力を出力可能な出力端と、前記入力端に接続され、特性可変に構成された整合回路と、前記整合回路及び前記出力端間に接続された整流器と、を有する受電回路と、前記送電コイル及び前記受電コイル間の相対的な位置関係を示す位置関係情報を取得する位置関係取得手段と、前記整流器から出力される電流値及び電圧値に基づいて前記出力端に接続される負荷の負荷抵抗を取得すると共に、前記負荷抵抗に基づいて前記負荷の複素インピーダンスを取得するインピーダンス取得手段と、前記位置関係情報、前記負荷抵抗及び前記複素インピーダンスに基づいて、前記整合回路に係る特性を変更する制御手段と、を備え、前記受電回路は、前記受電回路に電力を供給可能な電源と、前記入力端及び前記出力端間が、前記整合回路及び前記整流器を介して接続される第1電路と、前記電源及び前記出力端間が電気的に接続される第2電路とを相互に切り替える切替手段と、を更に有し、前記インピーダンス取得手段により前記複素インピーダンスが取得される際、前記切替手段は前記第2電路を選択する。
【0008】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ワイヤレス電力伝送システムの基本構成を示す概念図である。
図2図1に示した基本構成の等価回路を示す図である。
図3図2に示した等価回路をFパラメータ解析に適するように示す図である。
図4】実施例に係るワイヤレス電力伝送システムの構成を示す概略構成図である。
図5】比較例に係る一のワイヤレス電力伝送システムの構成を示す概略構成図である。
図6】比較例に係る他のワイヤレス電力伝送システムの構成を示す概略構成図である。
図7】実施例に係る整合回路制御処理を示すフローチャートである。
図8】実施例の第1変形例に係るワイヤレス電力伝送システムの構成を示す概略構成図である。
図9】実施例の第2変形例に係るワイヤレス電力伝送システムの構成を示す概略構成図である。
図10】実施例の第3変形例に係るワイヤレス電力伝送システムの構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の受電装置に係る実施形態について説明する。
【0011】
実施形態に係る受電装置は、送電コイルを備える送電装置から出力された電力を、例えば磁気共鳴方式等により非接触で受電する。該受電装置は、受電コイル、受電回路、位置関係取得手段、インピーダンス取得手段及び制御手段を備えて構成されている。
【0012】
受電コイルは、送電装置の送電コイルと間隔をあけて、該送電コイルと対向するように配置される。
【0013】
受電回路は、受電コイルに電気的に接続された入力端と、例えばバッテリ等の負荷に対して電力を出力可能な出力端と、入力端及び出力端間に配置された整合回路及び整流器と、を備えて構成されている。ここで特に、整合回路は、その特性(例えば、整合回路定数等)を変更可能に構成されている。
【0014】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる位置関係取得手段は、送電コイル及び受電コイル間の相対的な位置関係を示す位置関係情報を取得する。ここで、相対的な位置関係は、例えば送電コイル及び受電コイル間の垂直方向の距離及び水平方向の距離として示されてもよいし、例えば結合係数等、送電コイルに対する受電コイルの位置に応じて変化する物理量若しくはパラメータとして示されてもよい。尚、位置関係情報の取得は、一定周期又は不定周期毎に行われる。
【0015】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなるインピーダンス取得手段は、受電コイルに係る負荷インピーダンスを取得する。尚、負荷インピーダンスの取得は、一定周期又は不定周期毎に行われる。
【0016】
ここで、負荷インピーダンスは、例えば受電回路に係る電流値及び電圧値を検出し、該検出された電流値及び電圧値に基づいて取得すればよい。尚、受電回路に係る電流値及び電圧値の検出は、例えば受電回路の入力端において行ってもよいし、整流回路の後段において行ってもよい。
【0017】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる制御手段は、位置関係取得手段により取得された位置関係情報と、インピーダンス取得手段により取得された負荷インピーダンスに基づいて、整合回路に係る特性を変更する。具体的には例えば、制御手段は、位置関係情報及び負荷インピーダンスに基づいて、受電効率が向上するように整合回路に係る特性を変更する(つまり、所謂インピーダンスマッチングを行う)。尚、整合回路に係る特性の変更は、一定周期又は不定周期毎に行われる。
【0018】
以上の結果、本実施形態に係る受電装置によれば、仮に受電中に送電コイル及び受電コイル間の位置関係が変化したとしても、適切に受電を継続することができる。加えて、上記特許文献2に記載の技術のように、DC−DC変換器を用いない場合でもインピーダンスを調整することができる。
【0019】
実施形態に係る受電装置の一態様では、受電回路は、該受電回路に電力を供給可能な電源(典型的には、直流電源)と、該受電回路の入力端及び出力端間が電気的に接続される第1電路と、該電源及び該出力端間が電気的に接続される第2電路とを相互に切り替える切替手段と、を更に有し、インピーダンス取得手段により負荷インピーダンスが取得される際、切替手段は第2電路を選択する。
【0020】
この態様によれば、比較的精度の良い負荷インピーダンスを取得することができ、実用上非常に有利である。
【実施例】
【0021】
本発明の受電装置に係る実施例について、図面に基づいて説明する。
【0022】
先ず、ワイヤレス電力伝送の基本構成について、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、ワイヤレス電力伝送システムの基本構成を示す概念図である。図2は、図1に示した基本構成の等価回路を示す図である。図3は、図2に示した等価回路をFパラメータ解析に適するように示す図である。
【0023】
図1において、送電側装置は、出力インピーダンスZの高周波電源と、容量Cの送電側直列共振コンデンサと、インダクタンスLの送電側コイルと、を備えて構成されている。他方、受電側装置は、インダクタンスLの受電側コイルと、容量Cの受電側直列共振コンデンサと、負荷Zと、を備えて構成されている。
【0024】
送電側コイルと受電側コイルとの間の相互インダクタンスL、インダクタンスL及びインダクタンスLを用いて、送電側コイルと受電側コイルとの間の結合係数kは、次の式で表わすことができる。尚、結合係数kは、送電側コイル及び受電側コイル各々の大きさや形態、並びに、送電側コイル及び受電側コイル間の距離に応じて変化する。
【0025】
【数1】
次に、図1に示したワイヤレス電力伝送システムにおける送電側コイル及び受電側コイル各々の直列等価抵抗r及びrを反映させた、等価回路を図2に示す。図2において、破線で囲まれた部分が、相互に結合した送電側コイル及び受電側コイルの等価回路に該当する。
【0026】
次に、Fパラメータを解析するために、図2に示した等価回路における要素を、直列接続部分と並列接続部分とに分けた図を図3に示す。
【0027】
図3において、破線F部分におけるインピーダンスZは、次の式で表わすことができる。
【0028】
【数2】
図3において、破線F部分におけるアドミタンスYは、次の式で表わすことができる。
【0029】
【数3】
図3において、破線F部分におけるインピーダンスZは、次の式で表わすことができる。
【0030】
【数4】
高周波電源からの入力電圧Vin及び入力電流Iinと、負荷にかかる出力電圧Vout及び出力電流Ioutと、上記インピーダンスZ及びZと、上記アドミタンスYと、の関係をFパラメータで表わすと、次式のようになる。
【0031】
【数5】
出力電圧Voutは、出力電流Iout及び負荷Zを用いて次の式のように表わすことができる。
【0032】
【数6】
送電側装置に係るQ値であるQは、インダクタンスL及び直列等価抵抗rを用いて次の式で表わすことができる。
【0033】
【数7】
同様に、受電側装置に係るQ値であるQは、インダクタンスL及び直列等価抵抗rを用いて次の式で表わすことができる。
【0034】
【数8】
相互インダクタンスLmは、上記[数1]を変形して、次のように表わすことができる。
【0035】
【数9】
上記[数6]乃至[数9]を用いると、効率ηは次の式で表わすことができる。
【0036】
【数10】
ここで、[数10]のように示される効率ηを負荷Zについて微分して得られる微分係数がゼロになるときに効率ηは最大となる。効率ηが最大となるときの負荷Zを、最適負荷ZL_optとすると、該最適負荷ZL_optは、次の式で表わすことができる。
【0037】
【数11】
本実施例に係る受電装置を含むワイヤレス電力伝送システムは、高周波電源の周波数が、例えば13.56MHz等と比較的高い周波数を用いるシステムであって、送電側コイル及び受電側コイル間の距離(即ち、ギャップ)が比較的大きい磁界共鳴方式を用いたシステムを、前提としている。本実施例に係る受電装置は、該システムにおいて、電力伝送効率を向上させることができるように構成されている。以下、本実施例に係る受電装置について、図4を参照して具体的に説明する。
【0038】
図4において、実施例に係るワイヤレス電力伝送システムは、送電装置10と、受電装置20とを備えて構成されている。
【0039】
送電装置10は、送電コイル11と、整合回路12と、高周波電源13とを備えて構成されている。尚、送電装置10を構成する各要素については、公知の各種態様を適用可能であるので、その詳細についての説明は割愛する。
【0040】
受電装置100は、受電コイル110と、整合回路120と、整流回路130と、結合係数推定部140と、演算ブロック150と、電流計160と、電圧計170とを備えて構成されている。
【0041】
受電コイル110に含まれる直列共振コンデンサは、独立した素子に限らず、例えば寄生容量であってもよい。受電コイル110は、受電回路の入力端Pinに電気的に接続されている。
【0042】
整合回路120及び整流回路130により、本発明に係る「受電回路」の一例が構成されている。ここで、整合回路120は、可変容量コンデンサと、可変コイルとを備えて構成されている。つまり、整合回路120は、可変整合回路である。受電回路の出力端Poutは、例えばバッテリ等の負荷20に電気的に接続されている。
【0043】
電流計160は、整流回路130の後段における直流電流値を計測し、該計測された直流電流値を示す信号を演算ブロック150に対して送信する。電圧計170は、整流回路130の後段における直流電圧値を計測し、該計測された直流電圧値を示す信号を演算ブロック150に対して送信する。
【0044】
結合係数推定部140は、送電コイル11及び受電コイル110間の相対的な位置関係を示す位置関係情報を取得する。具体的には例えば、送電コイル11及び受電コイル110間の距離を検出することによって、該位置関係情報を取得する。結合係数推定部140は、取得された位置関係情報に基づいて、送電コイル11及び受電コイル110間に係る結合係数kを推定する。
【0045】
結合係数推定部140は、更に、推定された結合係数kに基づいて、最適負荷ZL_optを演算して、該演算された最適負荷ZL_optを示す信号を、演算ブロック150に対して送信する。尚、上記[数11]に示すように、最適負荷ZL_optの演算には、送電コイル11及び受電コイル110各々に係るQ値が必要であるが、該Q値は固有の定数であるので、事前に固定値として設定すればよい。
【0046】
演算ブロック150は、直流電流値、直流電圧値及び最適負荷ZL_optに基づいて、整合回路120に係る可変コンデンサの値及び可変コイルの値各々を決定して、該決定された値になるように整合回路120を制御する。
【0047】
ここで、本実施例に係る受電装置100の効果について、比較例を参照しつつ説明する。
【0048】
例えば図5に示すワイヤレス電力伝送システムでは、負荷の変動に対応できないため、電力伝送効率を最大に維持することが困難である。また、図6に示すワイヤレス電力伝送システムでは、受電側の整流回路の前段に整合回路が設けられているので、特定の負荷に対しては電力伝送効率を最大にすることができる。しかしながら、図6に示すワイヤレス電力伝送システムでも、負荷の変動に対応できないため、電力伝送効率を最大に維持することが困難である。
【0049】
他方で、本実施例に係る受電装置100では、上述の如く、結合係数推定部140により最適負荷ZL_optが演算されると共に、演算ブロック150により、直流電流値、直流電圧値及び最適負荷ZL_optに基づいて、整合回路120に係る可変コンデンサの値及び可変コイルの値各々が決定される。このため、本実施例に係る受電装置100によれば、負荷が変動したとしても、電力伝送効率を最大にすることができる。
【0050】
次に、以上のように構成された受電装置100において実施される整合回路制御処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0051】
図7において、先ず、結合係数推定部140は、例えば送電コイル11及び受電コイル110間の距離を検出して、送電コイル11及び受電コイル110間に係る結合係数kを推定する(ステップS101)。
【0052】
続いて、結合係数推定部140は、推定された結合係数kと、送電コイル11及び受電コイル110各々に係るQ値等に基づいて、最適負荷ZL_optを演算する(ステップS102)。
【0053】
上記ステップS101及びS102と並行して、電流計160により直流電流値が計測される。また、電圧計170により直流電圧値が計測される(ステップS103)。尚、電流計160及び電圧計170は、逐次、計測を行っていてよい。
【0054】
次に、演算ブロック150は、計測された直流電流値及び直流電圧値に基づいて、負荷抵抗値R=(直流電圧値)/(直流電流値)を算出する(ステップS104)。続いて、演算ブロック150は、負荷抵抗値Rに応じた整流回路130の入力複素インピーダンス(又は、複素アドミタンス)を演算する(ステップS105)。
【0055】
尚、複素インピーダンス(又は、複素アドミタンス)は、負荷抵抗値Rと複素インピーダンス(又は複素アドミタンス)との関係を示すテーブルを予め、演算ブロック150のメモリ等に格納しておき、該テーブルが参照されることにより取得されてもよいし、逐次演算されてもよい。尚、整流回路130にダイオードが用いられている場合は、ダイオードが非線形素子であるので、整流回路130の出力の消費電力が異なると負荷抵抗値Rが同じであっても複素インピーダンスは異なる。
【0056】
次に、演算ブロック150は、整合回路120の可変コンデンサ及び可変コイル各々の値を設定する(ステップS106)。具体的には、可変コンデンサの値C及び可変コイルの値L各々は、下記式により求められる。尚、下記[数12]及び[数13]は、一例であり、該[数12]及び[数13]に限定されるものではない。
【0057】
【数12】
【0058】
【数13】
次に、演算ブロック150は、求められた可変コンデンサの値C及び可変コイルの値Lに基づいて、整合回路120を制御する。その後、ステップS101の処理が再び実施される。
【0059】
尚、本実施例に係る「整流回路130」及び「結合係数推定部140」は、夫々、本発明に係る「整流器」及び「位置関係取得手段」の一例である。本実施例に係る「演算ブロック150」は、本発明に係る「インピーダンス取得手段」及び「制御手段」の一例である。
【0060】
<第1変形例>
実施例に係る受電装置の第1変形例について、図8を参照して説明する。図8は、実施例の第1変形例に係るワイヤレス電力伝送システムの構成を示す概略構成図である。
【0061】
図8において、第1変形例に係る受電装置は、受電コイル110と整合回路120との間に電気的に接続された方向性結合器180を備えている。演算ブロック150は、方向性結合器180によって得られる進行波と反射波との情報に基づいて、該進行波及び反射波の振幅比と、該進行波及び反射波の位相差とから、入力複素インピーダンスを求める。
【0062】
<第2変形例>
実施例に係る受電装置の第2変形例について、図9を参照して説明する。図9は、実施例の第2変形例に係るワイヤレス電力伝送システムの構成を示す概略構成図である。
【0063】
図9において、第2変形例に係る受電装置は、整合回路120の前段において高周波電流を計測する高周波電流センサ161と、整合回路120の前段において高周波電圧を測定する高周波電圧センサ171と、を備えている。演算ブロック150は、測定された高周波電圧を、測定された高周波電流で除することにより、入力複素インピーダンスを求める。
【0064】
<第3変形例>
実施例に係る受電装置の第3変形例にについて、図10を参照して説明する。図10は、実施例の第3変形例に係るワイヤレス電力伝送システムの構成を示す概略構成図である。
【0065】
図10において、第3変形例に係る受電装置は、整流回路130の後段に設けられた、本発明に係る「電源」の一例としての直流電源190と、本発明に係る「切替手段」の一例としての、スイッチSWと、を備えている。スイッチSWが端子aに接続されている場合、受電コイル110を介して受電された電力が負荷20に対して出力される。他方、スイッチSWが端子bに接続されている場合、直流電源190から出力された電力が負荷20に対して出力される。
【0066】
尚、スイッチSWが端子aに接続されている場合の電路が、本発明に係る「第1電路」の一例であり、スイッチSWが端子bに接続されている場合の電路が、本発明に係る「第2電路」の一例である。
【0067】
本変形例に係る受電装置は、整流回路130の出力電圧を計測する電圧計172を更に備えている。演算ブロック150は、電圧計172により計測された整流回路130の出力電圧に基づいて、該整流回路130の出力電圧と、直流電源190の出力電圧とが同じになるように、該直流電源190を制御する。
【0068】
例えば一定周期毎に、スイッチSWが端子bに接続されるように構成すれば、直流電源190から出力される比較的質の高い直流電源により、電流値及び電圧値が得られるので、演算ブロック150により算出される入力複素インピーダンスの精度を向上させることができる。
【0069】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う受電装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
10…送電装置、11…送電コイル、12、120…整合回路、13…高周波電源、20…負荷、100…受電装置、110…受電コイル、130…整流回路、140…結合係数推定部、150…演算ブロック、160…電流計、161…高周波電流センサ、170…電圧計、171…高周波電圧センサ、180…方向性結合器、190…直流電源、Pin…入力端、Pout…出力端、SW…スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10