【実施例】
【0021】
本発明の受電装置に係る実施例について、図面に基づいて説明する。
【0022】
先ず、ワイヤレス電力伝送の基本構成について、
図1乃至
図3を参照して説明する。
図1は、ワイヤレス電力伝送システムの基本構成を示す概念図である。
図2は、
図1に示した基本構成の等価回路を示す図である。
図3は、
図2に示した等価回路をFパラメータ解析に適するように示す図である。
【0023】
図1において、送電側装置は、出力インピーダンスZ
Gの高周波電源と、容量C
1の送電側直列共振コンデンサと、インダクタンスL
1の送電側コイルと、を備えて構成されている。他方、受電側装置は、インダクタンスL
2の受電側コイルと、容量C
2の受電側直列共振コンデンサと、負荷Z
Lと、を備えて構成されている。
【0024】
送電側コイルと受電側コイルとの間の相互インダクタンスL
m、インダクタンスL
1及びインダクタンスL
2を用いて、送電側コイルと受電側コイルとの間の結合係数kは、次の式で表わすことができる。尚、結合係数kは、送電側コイル及び受電側コイル各々の大きさや形態、並びに、送電側コイル及び受電側コイル間の距離に応じて変化する。
【0025】
【数1】
次に、
図1に示したワイヤレス電力伝送システムにおける送電側コイル及び受電側コイル各々の直列等価抵抗r
1及びr
2を反映させた、等価回路を
図2に示す。
図2において、破線で囲まれた部分が、相互に結合した送電側コイル及び受電側コイルの等価回路に該当する。
【0026】
次に、Fパラメータを解析するために、
図2に示した等価回路における要素を、直列接続部分と並列接続部分とに分けた図を
図3に示す。
【0027】
図3において、破線F
1部分におけるインピーダンスZ
1は、次の式で表わすことができる。
【0028】
【数2】
図3において、破線F
2部分におけるアドミタンスYは、次の式で表わすことができる。
【0029】
【数3】
図3において、破線F
3部分におけるインピーダンスZ
2は、次の式で表わすことができる。
【0030】
【数4】
高周波電源からの入力電圧V
in及び入力電流I
inと、負荷にかかる出力電圧V
out及び出力電流I
outと、上記インピーダンスZ
1及びZ
2と、上記アドミタンスYと、の関係をFパラメータで表わすと、次式のようになる。
【0031】
【数5】
出力電圧V
outは、出力電流I
out及び負荷Z
Lを用いて次の式のように表わすことができる。
【0032】
【数6】
送電側装置に係るQ値であるQ
1は、インダクタンスL
1及び直列等価抵抗r
1を用いて次の式で表わすことができる。
【0033】
【数7】
同様に、受電側装置に係るQ値であるQ
2は、インダクタンスL
2及び直列等価抵抗r
2を用いて次の式で表わすことができる。
【0034】
【数8】
相互インダクタンスLmは、上記[数1]を変形して、次のように表わすことができる。
【0035】
【数9】
上記[数6]乃至[数9]を用いると、効率ηは次の式で表わすことができる。
【0036】
【数10】
ここで、[数10]のように示される効率ηを負荷Z
Lについて微分して得られる微分係数がゼロになるときに効率ηは最大となる。効率ηが最大となるときの負荷Z
Lを、最適負荷Z
L_optとすると、該最適負荷Z
L_optは、次の式で表わすことができる。
【0037】
【数11】
本実施例に係る受電装置を含むワイヤレス電力伝送システムは、高周波電源の周波数が、例えば13.56MHz等と比較的高い周波数を用いるシステムであって、送電側コイル及び受電側コイル間の距離(即ち、ギャップ)が比較的大きい磁界共鳴方式を用いたシステムを、前提としている。本実施例に係る受電装置は、該システムにおいて、電力伝送効率を向上させることができるように構成されている。以下、本実施例に係る受電装置について、
図4を参照して具体的に説明する。
【0038】
図4において、実施例に係るワイヤレス電力伝送システムは、送電装置10と、受電装置20とを備えて構成されている。
【0039】
送電装置10は、送電コイル11と、整合回路12と、高周波電源13とを備えて構成されている。尚、送電装置10を構成する各要素については、公知の各種態様を適用可能であるので、その詳細についての説明は割愛する。
【0040】
受電装置100は、受電コイル110と、整合回路120と、整流回路130と、結合係数推定部140と、演算ブロック150と、電流計160と、電圧計170とを備えて構成されている。
【0041】
受電コイル110に含まれる直列共振コンデンサは、独立した素子に限らず、例えば寄生容量であってもよい。受電コイル110は、受電回路の入力端P
inに電気的に接続されている。
【0042】
整合回路120及び整流回路130により、本発明に係る「受電回路」の一例が構成されている。ここで、整合回路120は、可変容量コンデンサと、可変コイルとを備えて構成されている。つまり、整合回路120は、可変整合回路である。受電回路の出力端P
outは、例えばバッテリ等の負荷20に電気的に接続されている。
【0043】
電流計160は、整流回路130の後段における直流電流値を計測し、該計測された直流電流値を示す信号を演算ブロック150に対して送信する。電圧計170は、整流回路130の後段における直流電圧値を計測し、該計測された直流電圧値を示す信号を演算ブロック150に対して送信する。
【0044】
結合係数推定部140は、送電コイル11及び受電コイル110間の相対的な位置関係を示す位置関係情報を取得する。具体的には例えば、送電コイル11及び受電コイル110間の距離を検出することによって、該位置関係情報を取得する。結合係数推定部140は、取得された位置関係情報に基づいて、送電コイル11及び受電コイル110間に係る結合係数kを推定する。
【0045】
結合係数推定部140は、更に、推定された結合係数kに基づいて、最適負荷Z
L_optを演算して、該演算された最適負荷Z
L_optを示す信号を、演算ブロック150に対して送信する。尚、上記[数11]に示すように、最適負荷Z
L_optの演算には、送電コイル11及び受電コイル110各々に係るQ値が必要であるが、該Q値は固有の定数であるので、事前に固定値として設定すればよい。
【0046】
演算ブロック150は、直流電流値、直流電圧値及び最適負荷Z
L_optに基づいて、整合回路120に係る可変コンデンサの値及び可変コイルの値各々を決定して、該決定された値になるように整合回路120を制御する。
【0047】
ここで、本実施例に係る受電装置100の効果について、比較例を参照しつつ説明する。
【0048】
例えば
図5に示すワイヤレス電力伝送システムでは、負荷の変動に対応できないため、電力伝送効率を最大に維持することが困難である。また、
図6に示すワイヤレス電力伝送システムでは、受電側の整流回路の前段に整合回路が設けられているので、特定の負荷に対しては電力伝送効率を最大にすることができる。しかしながら、
図6に示すワイヤレス電力伝送システムでも、負荷の変動に対応できないため、電力伝送効率を最大に維持することが困難である。
【0049】
他方で、本実施例に係る受電装置100では、上述の如く、結合係数推定部140により最適負荷Z
L_optが演算されると共に、演算ブロック150により、直流電流値、直流電圧値及び最適負荷Z
L_optに基づいて、整合回路120に係る可変コンデンサの値及び可変コイルの値各々が決定される。このため、本実施例に係る受電装置100によれば、負荷が変動したとしても、電力伝送効率を最大にすることができる。
【0050】
次に、以上のように構成された受電装置100において実施される整合回路制御処理について、
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0051】
図7において、先ず、結合係数推定部140は、例えば送電コイル11及び受電コイル110間の距離を検出して、送電コイル11及び受電コイル110間に係る結合係数kを推定する(ステップS101)。
【0052】
続いて、結合係数推定部140は、推定された結合係数kと、送電コイル11及び受電コイル110各々に係るQ値等に基づいて、最適負荷Z
L_optを演算する(ステップS102)。
【0053】
上記ステップS101及びS102と並行して、電流計160により直流電流値が計測される。また、電圧計170により直流電圧値が計測される(ステップS103)。尚、電流計160及び電圧計170は、逐次、計測を行っていてよい。
【0054】
次に、演算ブロック150は、計測された直流電流値及び直流電圧値に基づいて、負荷抵抗値R
L=(直流電圧値)/(直流電流値)を算出する(ステップS104)。続いて、演算ブロック150は、負荷抵抗値R
Lに応じた整流回路130の入力複素インピーダンス(又は、複素アドミタンス)を演算する(ステップS105)。
【0055】
尚、複素インピーダンス(又は、複素アドミタンス)は、負荷抵抗値R
Lと複素インピーダンス(又は複素アドミタンス)との関係を示すテーブルを予め、演算ブロック150のメモリ等に格納しておき、該テーブルが参照されることにより取得されてもよいし、逐次演算されてもよい。尚、整流回路130にダイオードが用いられている場合は、ダイオードが非線形素子であるので、整流回路130の出力の消費電力が異なると負荷抵抗値R
Lが同じであっても複素インピーダンスは異なる。
【0056】
次に、演算ブロック150は、整合回路120の可変コンデンサ及び可変コイル各々の値を設定する(ステップS106)。具体的には、可変コンデンサの値C及び可変コイルの値L各々は、下記式により求められる。尚、下記[数12]及び[数13]は、一例であり、該[数12]及び[数13]に限定されるものではない。
【0057】
【数12】
【0058】
【数13】
次に、演算ブロック150は、求められた可変コンデンサの値C及び可変コイルの値Lに基づいて、整合回路120を制御する。その後、ステップS101の処理が再び実施される。
【0059】
尚、本実施例に係る「整流回路130」及び「結合係数推定部140」は、夫々、本発明に係る「整流器」及び「位置関係取得手段」の一例である。本実施例に係る「演算ブロック150」は、本発明に係る「インピーダンス取得手段」及び「制御手段」の一例である。
【0060】
<第1変形例>
実施例に係る受電装置の第1変形例について、
図8を参照して説明する。
図8は、実施例の第1変形例に係るワイヤレス電力伝送システムの構成を示す概略構成図である。
【0061】
図8において、第1変形例に係る受電装置は、受電コイル110と整合回路120との間に電気的に接続された方向性結合器180を備えている。演算ブロック150は、方向性結合器180によって得られる進行波と反射波との情報に基づいて、該進行波及び反射波の振幅比と、該進行波及び反射波の位相差とから、入力複素インピーダンスを求める。
【0062】
<第2変形例>
実施例に係る受電装置の第2変形例について、
図9を参照して説明する。
図9は、実施例の第2変形例に係るワイヤレス電力伝送システムの構成を示す概略構成図である。
【0063】
図9において、第2変形例に係る受電装置は、整合回路120の前段において高周波電流を計測する高周波電流センサ161と、整合回路120の前段において高周波電圧を測定する高周波電圧センサ171と、を備えている。演算ブロック150は、測定された高周波電圧を、測定された高周波電流で除することにより、入力複素インピーダンスを求める。
【0064】
<第3変形例>
実施例に係る受電装置の第3変形例にについて、
図10を参照して説明する。
図10は、実施例の第3変形例に係るワイヤレス電力伝送システムの構成を示す概略構成図である。
【0065】
図10において、第3変形例に係る受電装置は、整流回路130の後段に設けられた、本発明に係る「電源」の一例としての直流電源190と、本発明に係る「切替手段」の一例としての、スイッチSWと、を備えている。スイッチSWが端子aに接続されている場合、受電コイル110を介して受電された電力が負荷20に対して出力される。他方、スイッチSWが端子bに接続されている場合、直流電源190から出力された電力が負荷20に対して出力される。
【0066】
尚、スイッチSWが端子aに接続されている場合の電路が、本発明に係る「第1電路」の一例であり、スイッチSWが端子bに接続されている場合の電路が、本発明に係る「第2電路」の一例である。
【0067】
本変形例に係る受電装置は、整流回路130の出力電圧を計測する電圧計172を更に備えている。演算ブロック150は、電圧計172により計測された整流回路130の出力電圧に基づいて、該整流回路130の出力電圧と、直流電源190の出力電圧とが同じになるように、該直流電源190を制御する。
【0068】
例えば一定周期毎に、スイッチSWが端子bに接続されるように構成すれば、直流電源190から出力される比較的質の高い直流電源により、電流値及び電圧値が得られるので、演算ブロック150により算出される入力複素インピーダンスの精度を向上させることができる。
【0069】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う受電装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。