特許第6178409号(P6178409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178409
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】非接触充電装置及び電力供給制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20170731BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170731BHJP
   H02J 50/20 20160101ALI20170731BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   H02J50/10
   H02J7/00 301D
   H02J7/00 301A
   H02J50/20
   G01N21/88 Z
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-509761(P2015-509761)
(86)(22)【出願日】2013年4月2日
(86)【国際出願番号】JP2013060038
(87)【国際公開番号】WO2014162508
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002332
【氏名又は名称】特許業務法人綾船国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100112760
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 五雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 章
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−230299(JP,A)
【文献】 特開2014−107915(JP,A)
【文献】 特開2014−236540(JP,A)
【文献】 特開2013−027116(JP,A)
【文献】 特開2012−115036(JP,A)
【文献】 特開2012−257404(JP,A)
【文献】 特開2009−55379(JP,A)
【文献】 特開平6−98485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/10
G01N 21/88
H02J 7/00
H02J 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線で外部の受電部に電力を供給する送電部を有する非接触充電装置であって、
前記送電部の上面における送電領域の全域に配置され、無線給電の際に加熱されない材質の複数の突起と;
前記送電部の上面に沿って進行する光を射出する発光部と;
前記発光部から射出された光に基づいて、前記突起の少なくとも1つに支持された物体の有無を検出する物体検出部と;
前記物体検出部による検出結果に基づいて、前記送電部による電力の供給を制御する制御部と;
を備えることを特徴とする非接触充電装置。
【請求項2】
前記複数の突起は、互いに同一の高さを有し、
前記発光部が射出した光は、前記送電部の上面から前記高さの位置を含む領域を進行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の非接触充電装置。
【請求項3】
前記複数の突起は格子状に配置され、隣り合う突起の間隔は、前記物体検出部による検出対象として想定する物体の形状に応じて予め定められる、ことを特徴とする請求項2に記載の非接触充電装置。
【請求項4】
前記複数の突起は千鳥状に配置され、隣り合う突起の間隔は、前記物体検出部による検出対象として想定する物体の形状に応じて予め定められる、ことを特徴とする請求項2に記載の非接触充電装置。
【請求項5】
前記物体検出部は、
前記発光部が射出し、前記送電部の上面に沿って進行した光を反射する反射部と;
前記反射部が反射した光を受光する受光部と;
前記受光部による受光結果に基づいて、前記突起の少なくとも1つに支持された物体の有無を判断する判断部と;
を備えることを特徴とする請求項1に記載の非接触充電装置。
【請求項6】
前記発光部が射出する光は、レーザビーム光であり、
前記発光部は、前記レーザビーム光が前記送電部の上面の全面の上部をスキャンするように、前記レーザビーム光の前記発光部からの射出方向を順次変化させる、ことを特徴とする請求項1に記載の非接触充電装置。
【請求項7】
無線で外部の受電部に電力を供給する送電部を有し、前記送電部の上面における送電領域の全域に配置され、無線給電の際に加熱されない材質の複数の突起と;発光部と;物体検出部と;制御部と;を備える非接触充電装置において使用される電力供給制御方法であって、
前記送電部の上面に沿って進行する光を、前記発光部が射出する発光工程と;
前記物体検出部が、前記発光部から射出された光に基づいて、前記突起の少なくとも1つに支持された物体の有無を検出する物体検出工程と;
前記物体検出工程における検出結果に基づいて、前記制御部が、前記送電部による電力の供給を制御する制御工程と;
を備えることを特徴とする電力供給制御方法。
【請求項8】
無線で外部の受電部に電力を供給する送電部を有する非接触充電装置が有するコンピュータに、請求項7に記載の電力供給制御方法を実行させる、ことを特徴とする電力供給制御プログラム。
【請求項9】
無線で外部の受電部に電力を供給する送電部を有する非接触充電装置が有するコンピュータにより読み取り可能に、請求項8に記載の電力供給制御プログラムが記録されている、ことを特徴とする記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触充電装置、電力供給制御方法、電力供給制御プログラム、及び、当該電力供給制御プログラムが記録された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電池を駆動力源とする電気自動車や、電池を駆動力源の一部とするハイブリッド車といった電池を駆動力源とする車両の普及が進んでいる。こうした車両の普及に伴い、当該車両に装備された電池への充電に際して、充電施設の充電器と車両との間を物理的に接続する送電ケーブルを利用することなく、非接触方式で無線給電する非接触充電システムが登場してきている。
【0003】
こうした非接触充電システムでは、駐車スペース等の地上面に送電部(送電コイル)を有する送電装置(以下、「非接触充電装置」ともいう)が設置され、車両の床下に受電部(受電コイル)を有する受電装置(以下、「車載受電装置」ともいう)が配置される。そして、車両に配置された受電部を、地上面に設置された送電部と対向させて、電池への充電を行うようになっている。こうした非接触方式により無線給電をするものとしては、例えば、電磁誘導を利用したものがある。
【0004】
かかる非接触充電システムでは、非接触充電装置の送電部(送電コイル)の上方に金属製の物体が存置された状態で非接触充電を行うと、高出力の電磁波によって当該金属製の物体が加熱される。こうした状態での非接触充電は、非接触充電装置の故障を引き起こすだけでなく、火災の原因ともなり得る。かかる事態の発生は、非接触充電装置を使用する際の安全面で、問題である。
【0005】
そこで、非接触充電装置の送電部(送電コイル)の上方に金属製の物体(以下、こうした金属製の物体を、単に「物体」又は「異物」ともいう)が存在することを検知する様々な技術が提案されている。こうした提案技術の中には、温度センサの検出結果を利用したものがある(特許文献1参照:以下、「従来例」と呼ぶ)。この従来例の技術では、電磁誘導方式を用いた非接触充電装置において、第1温度検出回路がサーミスタを介して送電コイルの周辺温度を計測するとともに、第2温度検出回路がサーミスタを介して環境温度を計測する。そして、送電コイルの周辺温度から環境温度を差し引いた値が、予め定められた閾値を超えた場合に、送電部上に金属製の物体が存在していると判定し、電力供給の停止、又は、異常の報知を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−229264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来例では、送電コイルの周辺温度を計測するためのサーミスタ(温度センサ)を送電コイルの周辺に配置する必要がする。しかしながら、このような構成を採用した場合には、当該サーミスタを、送電コイルを貫く磁束によっても破損しないものとしなければならない。また、非接触充電装置の出力電力の大きさによっては、サーミスタ自体が誘導加熱で発熱するおそれがある。また、上述した従来例では、送電コイルの周辺温度と環境温度との差が、閾値以上に上昇するまでは、金属製の物体を検知することはできず、さらに、サーミスタと金属製の物体との位置関係によって、精度良く金属製の物体を検知することができない可能性がある。
【0008】
このため、送電コイルの近傍にセンサを配置することなく、かつ、精度良く、非接触充電装置の送電部(送電コイル)の上方に異物が存在することを検知することができる技術が望まれている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0009】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、非接触方式を用いて、安全上問題なく、無線給電することのできる新たな非接触充電装置及び電力供給制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の観点からすると、無線で外部の受電部に電力を供給する送電部を有する非接触充電装置であって、前記送電部の上面における送電領域の全域に配置され、無線給電の際に加熱されない材質の複数の突起と;前記送電部の上面に沿って進行する光を射出する発光部と;前記発光部から射出された光に基づいて、前記突起の少なくとも1つに支持された物体の有無を検出する物体検出部と;前記物体検出部による検出結果に基づいて、前記送電部による電力の供給を制御する制御部と;を備えることを特徴とする非接触充電装置である。
【0011】
本発明は、第2の観点からすると、無線で外部の受電部に電力を供給する送電部を有し、前記送電部の上面における送電領域の全域に配置され、無線給電の際に加熱されない材質の複数の突起と;発光部と;物体検出部と;制御部と;を備える非接触充電装置において使用される電力供給制御方法であって、前記送電部の上面に沿って進行する光を、前記発光部が射出する発光工程と;前記物体検出部が、前記発光部から射出された光に基づいて、前記突起の少なくとも1つに支持された物体の有無を検出する物体検出工程と;前記物体検出工程における検出結果に基づいて、前記制御部が、前記送電部による電力の供給を制御する制御工程と;を備えることを特徴とする電力供給制御方法である。

【0012】
本発明は、第3の観点からすると、無線で外部の受電部に電力を供給する送電部を有する非接触充電装置が有するコンピュータに、本発明の電力供給制御方法を実行させる、ことを特徴とする電力供給制御プログラムである。
【0013】
本発明は、第4の観点からすると、無線で外部の受電部に電力を供給する送電部を有する非接触充電装置が有するコンピュータにより読み取り可能に、本発明の電力供給制御プログラムが記録されている、ことを特徴とする記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る非接触充電装置、及び、車両に装備された車載受電装置の関係を説明するための図である。
図2図1の非接触充電ユニットの外観図である。
図3図1の非接触充電ユニットの構成を説明するための外観図である。
図4】本発明の一実施形態に係る非接触充電装置、及び、車載受電装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図5図3の非接触充電ユニットに配置される突起の間隔を説明するための図である。
図6図2及び図3の受発光部の構成を説明するための図である。
図7】非接触充電装置による車載受電装置への電力供給の制御処理を説明するためのフローチャートである。
図8】非接触充電ユニットの上面に、異物が存在している例を説明するための図(その1)である。
図9】非接触充電ユニットの上面に、異物が存在している例を説明するための図(その2)である。
図10】変形例(その1)を説明するための図である。
図11】変形例(その2)を説明するための図である。
【符号の説明】
【0015】
100 … 非接触充電装置
121 … 発光部
129 … 受光部
129B … 受光部
140 … 反射部
150 … 判断部
170 … 送電部
180 … 制御部
PR … 突起
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図1図9を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
[構成]
本実施形態においては、図1に示されるように、電気自動車(以下、「車両」と記す)CRに装備された車載受電装置200に対して、電磁誘導方式を利用して電力供給を行う非接触充電装置100を例示して説明する。この非接触充電装置100は、駐車スペースの地面に配置される。ここで、図1における座標系(X,Y,Z)は、+Z軸方向を鉛直上方方向とする座標系であり、図示の通りに定義されているものとする。
【0018】
図2及び図3(A),(B)には、こうして駐車スペースの地面に配置された一実施形態に係る非接触充電装置100(より詳しくは、非接触充電ユニット110)の外観図が示されている。ここで、図3(A)は、駐車スペースに配置された非接触充電装置100を、+Z方向側(すなわち、鉛直上方方向側)から眺めた外観図である。また、図3(B)は、駐車スペースに配置された非接触充電装置100を、+Y方向側から眺めた外観図である。
【0019】
さらに、図4には、非接触充電装置100及び車載受電装置200の概略的な構成がブロック図にて示されている。
【0020】
<車載受電装置200の構成>
本発明の非接触充電装置100の構成の説明に先立って、車載受電装置200の構成について説明する。車載受電装置200は、図1,4により総合的に示されるように、受電部210と、受電処理部(RPR)220と、蓄電池(BAT)230とを備えている。
【0021】
受電部210は、車両CRの床下に配置された受電コイルを備えて構成されている。この受電部210は、蓄電池230への充電に際して、非接触充電装置100(より詳しくは、後述する送電部170)から発せされる磁束により交流の起電力を誘起する。そして、誘起された交流の起電力は、受電処理部220に入力される。受電処理部220は、当該交流の誘導起電力を直流電力に変換して、蓄電池230への充電を行う。
【0022】
なお、本実施形態では、車載受電装置200は、充電開始時には給電開始要求を、無線通信を利用して、非接触充電装置100へ向けて送信するようになっている。また、車載受電装置200は、蓄電池230への充電完了時等には給電終了要求を、無線通信を利用して、非接触充電装置100へ向けて送信するようになっている。
【0023】
<非接触充電装置100の構成>
次に、上記の非接触充電装置100の構成について、説明する。
【0024】
非接触充電装置100は、図1〜4により総合的に示されるように、非接触充電ユニット110と、電源装置190とを備えている。そして、非接触充電ユニット110は、ケーブルを介して、電源装置190に接続されている。
【0025】
上記の非接触充電ユニット110の+Z方向側の上面は、車載受電装置200への無線給電時には、車両CRの床下に配置された受電部210と対向するようになっている(図1参照)。また、非接触充電ユニット110における筐体の+Z方向側の上面には、無線給電の際に加熱されない材質の透明な複数の突起PRが配置されている(図2及び図3(A),(B)参照)。なお、非接触充電ユニット110の外観図においては、複数の突起のうち、代表的に1個の突起にのみ、符号(PR)を付すこととする。
【0026】
《突起PRの配置》
上記の複数の突起PRは、図3(A),(B)により総合的に示されるように、互いに同一の高さを有し、後述する送電部170の上面の全面に、格子状に配置されている。そして、隣り合う突起の間隔は、検出対象として想定する物体の形状に応じて定められるようになっている。ここで、複数の突起の高さは、非接触充電ユニット110の筐体上面に水滴がある場合に、当該水滴を異物として検知しない観点から、水滴の高さよりも高くなっている。
【0027】
本実施形態では、検出対象の物体の一形状として、正方形状の金属片を想定している。そして、当該金属片の最小の大きさは、非出力充電装置100の出力電圧の大きさ、当該出力電圧での無線給電時における金属片の発熱量及び放熱量のバランス、非接触充電装置100の許容温度等により、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。
【0028】
また、隣り合う突起の間隔は、検出対象として想定する最小の金属片(以下、「最小異物金属片」ともいう)が非接触充電ユニット110の上面に存置された場合に、図5に示されるように、当該最小異物金属片が少なくとも1個の突起で支持されるよう定められる。すなわち、隣り合う突起の間隔「p」は、最小異物金属片の一辺の長さを「L」、突起の直径を「α」として、次の(1)式で表すことができる。
p=(L/21/2)−α …(1)
【0029】
なお、本実施形態では、L=30.0mmの正方形状の金属片を、最小異物金属片としている。このため、本実施形態では、当該最小異物金属片を検知するために配置する突起の隣り合う間隔「p」は、α=2.0mmとし、上述した(1)式から、p=19.2mmとしている。
【0030】
《非接触充電ユニット110の構成》
次に、非接触充電ユニット110の構成について説明する。
【0031】
非接触充電ユニット110は、図2〜4により総合的に示されるように、受発光部120と、反射部140と、判断部150とを備えている。また、非接触充電ユニット110は、供給部160と、送電部170と、制御部180とを備えている。
【0032】
上記の受発光部120は、非接触充電ユニット110の筐体上面における−X方向側に配置され、構成の詳細を後述する発光部121と受光部129とを備えている。受発光部120における発光部121は、制御部180による制御のもとで、送電部170の上面の全面の上部をスキャンするように、送電部170の上面に沿って進行するレーザビーム光を射出する(図3(A),(B)参照)。本実施形態では、当該レーザビーム光は、複数の突起の上端を含む領域を進行するようになっている。なお、以下の説明においては、発光部121が発光したレーザビーム光を「射出光」とも呼ぶ。
【0033】
また、受発光部120における受光部129は、発光部121が射出し、非接触充電ユニット110の筐体上面における+X方向側に配置された反射部140が反射した光を受光する。受発光部120の構成の詳細については、後述する。
【0034】
上記の反射部140の−X方向側の面には、複数の微小なコーナーキューブが配列されている。このため、反射部140に入射したレーザビーム光は、入射方向のほぼ反対方向へ反射し、受発光部120に向けて進行する。なお、以下の説明においては、反射部140で反射した光を「反射光」とも呼ぶ。
【0035】
上記の判断部150は、受光部129による受光結果を受ける。また、判断部150は、制御部180から送られた発光制御指令及び回転制御指令を受ける。そして、判断部150は、当該受光結果及び制御部180の指令内容に基づいて、非接触充電ユニット110の上面に存在する少なくとも1つの突起に支持された異物の有無を判断する。この判断部150は、非接触充電ユニット110の上面に異物が存在しない場合の受光強度のパターンである正常受光パターンを記憶している。
【0036】
そして、かかる異物の有無の判断に際して、判断部150は、正常受光パターンと、今回の受光パターンとのマッチング処理を行う。引き続き、判断部150は、今回の受光パターンと正常受光パターンとの類似度を評価し、今回の受光パターンが正常受光パターンに類似していると判定した場合には、非接触充電ユニット110の上面に異物が存在しないと判断する。一方、判断部150は、今回の受光パターンが正常受光パターンに類似していないと判定した場合には、非接触充電ユニット110の上面に異物が存在すると判断する。こうして判断された異物の有無の判断結果は、制御部180へ送られる。
【0037】
上記の供給部160は、電力供給源である電源装置190に接続されている。そして、供給部160は、制御部180から送られた供給制御指令に従って、送電部170への交流電流の供給、又は、交流電流の非供給を実行する。
【0038】
上記の送電部170は、非接触充電ユニット110における筐体内に、送電コイルを備えて構成される。そして、車載受電装置200への無線給電時には、送電部170は、車両CRに配置された受電部210と対向するようになっている。送電部170では、供給部160から交流電流の供給を受けると、送電コイルに交流電流が流れる。こうして送電コイルに電流が流れると、当該送電コイルからZ軸方向に平行な磁束が発生する。
【0039】
上記の制御部180は、中央処理装置(CPU)及びその周辺回路を備えて構成されている。この制御部180が様々なプログラムを実行することにより、非接触充電装置100の電力供給機能が実現されるようになっている。
【0040】
制御部180は、異物検知に際して、発光制御指令及び回転制御指令を生成して、発光部121及び判断部150へ送る。また、制御部180は、異物検知に際して、判断部150から送られた異物の有無の判断結果を受ける。
【0041】
そして、制御部180は、非接触充電ユニット110の上面に異物が存在しない旨の判断結果を受けた場合には、車載受電装置200に対して電力供給を行うことを内容とする供給制御指令を生成して、供給部160へ送る。一方、非接触充電ユニット110の上面に異物が存在する旨の判断結果を受けた場合には、制御部180は、車載受電装置200に対して電力供給を行わないことを内容とする供給制御指令を生成して、供給部160へ送る。
【0042】
また、制御部180は、車載受電装置200の充電開始時に、車載受電装置200から、給電開始要求を受信する。また、制御部180は、車載受電装置200の充電完了時等に、車載受電装置200から、給電終了要求を受信する。制御部180が実行する制御処理の詳細については、後述する。
【0043】
なお、制御部180が実行するプログラムは、ハードディスク、CD−ROM、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、当該記録媒体からロードされて実行される。また、このプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配信の形態で取得されるようにしてもよい。
【0044】
(受発光部120の構成)
上述した受発光部120の構成について説明する。
【0045】
受発光部120は、図4,6により総合的に示されるように、発光部121と、受光部129とを備えている。
【0046】
上記の発光部121は、図6に示されるように、発光素子122と、ハーフミラー123と、ミラー124と、回転駆動部125とを備えている。
【0047】
上記の発光素子122は、制御部180から送られた発光制御指令を受けると、コリメートされたレーザビーム光(射出光)を射出する。こうして発光素子122から射出されたレーザビーム光(射出光)は、ハーフミラー123を通過して、ミラー124で反射する。そして、ミラー124で反射したレーザビーム光(射出光)は、送電部170の上面に沿って、複数の突起の上端を含む領域を進行する(図3(B)参照)。
【0048】
上記のハーフミラー123は、発光素子122が射出したレーザビーム光(射出光)を通過させる。また、ハーフミラー123は、反射部140で反射し、かつ、ミラー124で反射した光(反射光)を反射させる。こうしてハーフミラー123で反射した光(反射光)は、受光部129に向けて進行する。
【0049】
上記のミラー124は、回転駆動部125に取り付けられ、当該回転駆動部125とともに、基準軸SA回りに回転する。
【0050】
上記の回転駆動部125は、制御部180から送られた回転制御指令に従って、Z軸と平行であり、発光素子122が発光するレーザビーム光の進行方向と一致する基準軸SA回りにミラー124を回転させる。このミラー124の回転範囲RTは、レーザビーム光(射出光)が送電部170の上面の全面の上部をスキャンする範囲となっている(図3(A)の照射範囲を参照)。
【0051】
このように、発光部121は、制御部180による制御のもとで、送電部170の上面の全面の上部をスキャンするように、レーザビーム光(射出光)の射出方向を順次変化させる。
【0052】
上記の受光部129は、受光センサを備えて構成される。受光部129は、反射部140が反射したレーザビーム光(反射光)をミラー124及びハーフミラー123を介して受光する。そして、受光部129は、受光結果を判断部150へ送る。
【0053】
なお、本実施形態では、受光部129、反射部140及び判断部150が、物体検出部としての機能を果たすようになっている。
【0054】
[動作]
以上のようにして構成された非接触充電装置100の動作について、制御部180による車載受電装置200への電力供給の制御処理に、主に着目して説明する。
【0055】
前提として、車載受電装置200を搭載した車両CRが、非接触充電装置100が設置されている駐車スペースに停車しているものとする。そして、非接触充電装置100の送電部170と、車載受電装置200の受電部210とが対向しているものとする。このような状況のもとで、制御部180が、車載受電装置200が発行した給電開始要求を受信すると、車載受電装置200への電力供給の制御処理が開始される。
【0056】
かかる電力供給の制御処理では、図7に示されるように、まず、ステップS11において、制御部180が、発光制御指令を生成して発光素子122へ送るとともに、回転制御指令を生成して回転駆動部125へ送る。
【0057】
こうした制御部180による指令設定のもとで、射出方向を順次変化させたレーザビーム光(射出光)が、送電部170の上面の全面の上部をスキャンするように射出される(図3参照)。そして、受光部129が、反射部140が反射したレーザビーム光(反射光)を受光し、受光結果を判断部150へ送る。そして、判断部150が、当該受光結果及び制御部180の指令内容に基づいて、非接触充電ユニット110の上面に存在する異物の有無を判断する。引き続き、判断部150は、異物の有無の判断結果を、制御部180へ送る。
【0058】
次に、ステップS12において、制御部180が、判断部150から送られた異物の有無の判断結果に基づいて、非接触充電ユニット110の上面に異物が検知されたか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS12:N)には、処理はステップS13へ進む。
【0059】
ステップS13では、制御部180が、車載受電装置200に対して無線給電中か否かを判定する。この判定の結果が肯定的であった場合(ステップS13:Y)には、処理は後述するステップS15へ進む。
【0060】
一方、ステップS13における判定の結果が否定的であった場合(ステップS13:N)には、処理はステップS14へ進む。このステップS14では、制御部180が、車載受電装置200に対して電力供給を行うことを内容とする供給制御指令を生成して、供給部160へ送る。こうして電力供給を行うことを内容とする供給制御指令が供給部160へ送られると、供給部160は、送電部170への交流電流の供給を実行する。そして、送電コイルに交流電流が流れると、当該送電コイルから+Z方向の磁束が発生する。この結果、車載受電装置200への無線給電が開始される。
【0061】
引き続き、ステップS15において、制御部180が、車載受電装置200から送信された給電終了要求を受信したか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS15:N)には、処理はステップS12へ戻る。
【0062】
一方、ステップS15における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS15:Y)、又は、上述したステップS12における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS12:Y)には、処理はステップS16へ進む。このステップS16では、制御部180が、車載受電装置200に対して電力供給を行わないことを内容とする供給制御指令を生成して、供給部160へ送る。この結果、車載受電装置200への無線給電が中止される。こうして無線給電が中止されると、車載受電装置200への電力供給の制御処理が終了する。
【0063】
ここで、非接触充電ユニット110の上面に金属片が存在し、当該金属片が異物として検知される例、すなわち、ステップS12における判定の結果が肯定的となる状態の例が、図8(A),(B)及び図9(A),(B)に示されている。図8(A),(B)には、9個の突起により支持された金属片に、発光部121が発光するレーザビーム光(em1)を照射したときの例が示されている。こうした例では、発光部121が発光したレーザビーム光(em1)の一部が反射部140に到達し、他の一部は反射部140に到達せずに、金属片で反射する。そして、当該金属片で反射した光(rf1)は、受光部129に到達しない。
【0064】
また、反射部140に到達して反射したレーザビーム光の一部は、受光部129へ向けて進行する。このように受光部129が受光した光がレーザビーム光(em1)の一部のときには、レーザビーム光の全部を受光したときと比べて、受光強度が低くなる。例えば、金属片の厚さを1.0mm、発光部121が発光するレーザビーム光のビーム径を10.0mmとした場合には、受光部129が受光する光の受光強度は、非接触充電ユニット110の上面に当該金属片が存在しないときと比べて、10パーセント程度減少する。こうした受光結果を受けた判断部150は、非接触充電ユニット110の上面に異物が存在すると判断する。
【0065】
また、図9(A),(B)には、1個の突起により支持された金属片に、発光部121が発光するレーザビーム光(em2)を照射したときの例が示されている。こうした例では、当該金属片がXY平面に対して傾いているため、発光部121が発光するレーザビーム光(em2)の殆どが、金属片で反射して、反射部140に到達しない。そして、当該金属片で反射した光(rf2)は、受光部129に到達しない。また、反射部140に到達して反射したレーザビーム光のごく一部は、受光部129へ向けて進行する。このように受光部129が受光した光がレーザビーム光(em2)のごく一部のときには、レーザビーム光の全部を受光したときと比べて、受光強度が大幅に低くなる。こうした受光結果を受けた判断部150は、非接触充電ユニット110の上面に異物が存在すると判断する。


【0066】
以上説明したように、本実施形態では、非接触充電ユニット110の筐体上面には、複数の突起が格子状に配置されている。そして、車両CRに装備された車載受電装置200への無線給電を行うに際して、発光部121が、制御部180による制御のもとで、送電部170の上面の全面の上部をスキャンするように、送電部170の上面に沿って進行するレーザビーム光を射出する。受光部129は、反射した光を受光すると、受光結果を判断部150へ送る。そして、判断部150が、受光部129から送られた受光結果に基づいて、非接触充電ユニット110の上面に存在する少なくとも1つの突起に支持された異物の有無を判断し、当該判断結果を制御部180へ送る。引き続き、制御部180が、非接触充電ユニット110の上面に異物が存在しない旨の判断結果を受けた場合には、車載受電装置200への電力供給を行うことを内容とする供給制御指令を生成して、供給部160へ送る。一方、非接触充電ユニット110の上面に異物が存在する旨の判断結果を受けた場合には、制御部180は、車載受電装置200への電力供給を行わないことを内容とする供給制御指令を生成して、供給部160へ送る。
【0067】
このため、精度良く、非接触充電装置の送電部(送電コイル)の上方に異物が存在することを検知することができる。
【0068】
また、本実施形態では、発光部121及び受光部129が、送電部170の送電コイルから隔てたところに配置されている。このため、発光部121及び受光部129が、送電コイルから発せされる磁束により、誘導加熱で発熱することはない。
【0069】
また、本実施形態では、発光部121が発光するレーザビーム光は、複数の突起の上端を進行するため、非接触充電ユニット110の筐体上面に水滴がある場合に、当該水滴を異物として検知しない。
【0070】
したがって、本実施形態によれば、非接触方式を用いて、安全上問題なく、無線給電することができる。
【0071】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0072】
例えば、上記の実施形態では、車載受電装置200が、充電開始時に給電開始要求を、非接触充電装置100へ向けて送信することとした。これに対して、非接触充電装置100から車載受電装置200に対して給電を開始する旨の情報を送信することで、充電を開始するようにしてもよい。
【0073】
また、上記の実施形態では、複数の突起を、非接触充電ユニット110の筐体上面に、格子状に配置することした。これに対して、図10に示されるように、検出対象として想定する物体の形状に応じて定められる突起間隔で、複数の突起を、非接触充電ユニット110の筐体上面に、千鳥状に配置するようにしてもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、発光部121及び受光部129を備える受発光部120が、非接触充電ユニット110の筐体上面における−X方向側に配置されることとした。これに対して、図11に示されるように、発光部121を非接触充電ユニット110の筐体上面における−X方向側に配置するとともに、受光部129Bを筐体上面における+X方向側に配置するようにしてもよい。この場合には、反射部を省略することができ、受光部129B及び判断部150が、物体検出部としての機能を果たすようになる。また、こうした構成を採用した場合には、受光部129Bの−X方向側の全面に、受光素子を配置する。
【0075】
また、発光部及び受光部の構成については、上記に限定されず、送電部170の上面の全面の上部をスキャンするよう光を射出し、当該射出された光を受光できるものであれば、他の構成であってもよい。例えば、上記の実施形態では、1個の受発光部を備えることとしたが、受発光部の数を2個以上としてもよい。
【0076】
また、上記の実施形態では、車載受電装置200への給電開始直前又は給電中に、異物検知処理を行うこととした。これに対して、非接触充電装置100の保守点検のために、給電の実行の有無にかかわらず、更に、定期的に異物検知処理を行うようにしてもよい。
【0077】
また、上記の実施形態では、非接触充電ユニットの上面に異物が検知された場合に、車載受電装置への無線給電が中止することとしたが、更に、利用者に向けて、非接触充電ユニットの上面に異物が検知された旨を報知するようにしてもよい。
【0078】
また、上記の実施形態の非接触充電装置では、電磁誘導方式により無線給電を行うこととしたが、マイクロ波などの電波方式又は磁界共鳴方式等により、無線給電を行うものであってもよい。
【0079】
また、上記の実施形態では、電気自動車に無線給電する非接触充電装置に本願発明を適用したが、ハイブリッド車への無線給電に本願発明を適用することができるのは、勿論である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11