【文献】
Acta Pharmaceutica Sciencia,2009年,Vol. 51, No. 3,p. 297-312
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
8.42mg/ml〜25mg/mlのアトルバスタチン濃度で沈澱することなく可溶化された形態のアトルバスタチンを提供する、アトルバスタチンカルシウム塩と、6.5〜11のpH範囲を提供するアルカリ化物質、緩衝剤、ならびにアルカリ化物質および緩衝剤の組み合わせからなる群から選択されるpH調整剤と、凍結乾燥粒子が薬学上許容される注射用溶液中で再構成されるときにアトルバスタチンを水溶性にするのに有効量の薬学上許容されるヒドロキシ-プロピル-β-シクロデキストリンである錯化剤と、任意の抗酸化剤とから本質的になる混合物から調製されている、再構成するための凍結乾燥粒子。
【背景技術】
【0002】
血中コレステロール値の上昇が冠動脈性心疾患(CHD)の主要なリスク因子であることがここ数十年間で明らかとなり、CHD事象のリスクを脂質低下療法によって低減できることが多くの研究によって示された。1987年以前には、脂質低下療法は本質的には飽和脂肪およびコレステロールの少ない食事への食生活の改善、胆汁酸抑制薬(コレスチラミンおよびコレスチポール)、ニコチン酸(ナイアシン)、フィブラート系薬およびプロブコールに限定されていた。残念なことに、これらの療法は全て、効率もしくは耐性、またはその双方が限定されていた。1987年に処方薬として利用可能となった最初のHMG-CoAレダクターゼ阻害剤であるロバスタチン(MEVACOR(登録商標)、米国特許第4,231,938号を参照のこと)の導入によって、医師たちは初めて、副作用が非常に少なく、血漿コレステロール値が比較的大きく低下する療法を得ることができた。
【0003】
HMG-CoAレダクターゼ阻害剤は、一般的に知られているのはスタチンであるが、2つのグループに分けることができる:発酵由来物と合成物である。天然産物であるロバスタチンに加え、処方薬としての使用が認可された数種の半合成および完全合成HMG-CoAレダクターゼ阻害剤があり、シンバスタチン(ZOCOR(登録商標)、米国特許第4,444,784号を参照のこと)、プラバスタチンナトリウム塩(PRAVACHOL(登録商標)、米国特許第4,346,227号を参照のこと)、フルバスタチンナトリウム塩(LESCOL(登録商標)、米国特許第5,354,772号を参照のこと)、アトルバスタチンカルシウム塩(LIPITOR(登録商標)、米国特許第5,237,995号を参照のこと)およびセリバスタチンナトリウム塩(BAYCOL(登録商標)、米国特許第5,177,080号を参照のこと)が挙げられる。更に他のHMG-CoAレダクターゼ阻害剤が開発中であることが知られており、例えばNK-104とも呼ばれるピタバスタチン(PCT国際公開番号WO 97/23200号を参照のこと)、およびZD-4522としても知られるロスバスタチン(CRESTOR(登録商標)、米国特許第5,260,440号、およびDrugs of the Future, 1999, 24(5), pp. 511-513を参照のこと)が挙げられる。これらおよび更なるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤の構造式は、M. Yalpani, 「コレステロール低下剤(Cholesterol Lowering Drugs)」 Chemistry & Industry, pp. 85-89 (5 Feb. 1996)の第87頁に記載されている。上記のHMG-CoAレダクターゼ阻害剤は、3-ヒドロキシラクトン環または対応するジヒドロキシ開環酸(open-acid)として存在し得る部分を含む構造の化合物群に属し、しばしば「スタチン」と呼ばれる。
【0004】
米国特許第5,356,896号には、組成物の水溶液または分散液に少なくとも8のpHを与えることができるアルカリ性安定化媒体によって、pHに関連する分解に対して安定化されたHMG-CoAレダクターゼ阻害剤化合物、例えばフルバスタチンナトリウムを含有する医薬投与形態が記載されている。上記第5,356,896号特許には、薬剤物質とアルカリ性媒体とは、好ましくは水性または他の溶媒ベースの調製方法によって密に接触するようにしなければならず、それによって「薬剤物質とアルカリ性媒体とを少量の、例えば水の存在下で混合され、薬剤とアルカリ性物質とを密接な混合物で含有する粒子がもたらされる」ことが記載されている。得られた粒子を乾燥し、次いで該粒子の「外層」を構成するために用意しておいた充填剤および残りの賦形剤と混合し、カプセル化、錠剤化等に好適な組成物を得る。
【0005】
上記第5,356,896号特許に記載された別の実施形態においては、溶媒に基づく方法を利用してその後の流動床での乾燥を補助し、それによって薬剤物質とアルカリ性媒体とを公知の技術で湿式造粒、すなわち一定量の充填剤物質と共に湿潤状態で混合し、乾燥後に得られた顆粒を残りの充填剤および他の賦形剤(set-asides)、例えば結合剤、潤滑剤と組み合わせ、従って、錠剤化、カプセル化、または他の形状の投与形態とすることができる。
【0006】
上記第5,356,896号特許には、組成物の保存期間の延長を達成するために、「粉砕または湿式造粒または他の水性ベースの方法によって調製された粒子は実質的に完全に乾燥されている、すなわち乾燥による重量損失(L.O.D.)が3%以下、好ましくは2%以下であること」が重要である、と記載されている。上記第5,356,896号特許にはまた、トレイ乾燥または流動床によって伝統的に行われてきた乾燥、好ましくは後者は典型的に約50℃の注入口温度、50%以下のRHで行われることが記載されている。上記第5,356,896号特許には更に、上記の粉砕または湿式造粒技術の代替的調製方法が記載されており、その方法では、薬剤製造プロセスのそのままのステップとして、薬剤物質とアルカリ性安定化媒体を水溶液から同時に凍結乾燥することができる。
【0007】
ほとんどのスタチンは相対的に不溶であり、当業者からは溶液中で不安定であると考えられており、従ってこのクラスの薬剤は固形形態で製造されている。しかしながら、摂取、消化、または経口的に医薬を服用できない患者がおり、静脈内投与の必要性がある。スタチンが、抗炎症およびおそらくは他のメカニズムを介して心臓発作、卒中、並びに他の炎症介在性の状態の発生率を低減させることができることが臨床的に示されている。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、静脈内投与することができる、スタチンを含有する安定な製品を提供することである。
【0009】
本発明の更なる目的は、哺乳動物に注入するために好適な水溶液中で再構成することができる、固形スタチン製剤を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、スタチンおよび可溶化剤または錯化剤(complexing agent)の凍結乾燥粒子を提供することである。
【0011】
更なる目的は、スタチンおよび可溶化剤または錯化剤の凍結乾燥粒子の調製方法を提供することである。
【0012】
更なる目的は、本明細書に記載した製剤および方法を使用してスタチンでヒト患者を治療する方法を提供することである。
【0013】
これらの目的、および他の目的は、一部では、少なくとも約3.32mg/mlの可溶化されたスタチン濃度をもたらすために約7〜約9のpHを有する溶液中で十分量の薬学上許容される錯化剤と複合体化した水不溶性スタチンに関する本発明によって達成される。本発明は更に、有効量の上記複合体化スタチンを含有する医薬製剤に関する。
【0014】
特定の実施形態において、可溶化されたスタチン濃度は約1mg/ml〜約25mg/mlである。特定の好ましい実施形態において、可溶化されたスタチン濃度は約5mg/ml〜約15mg/mlである。特定の好ましい実施形態において、可溶化されたスタチン濃度は約10mg/mlである。
【0015】
いくつかの実施形態において、スタチンはロバスタチン、シンバスタチン、メバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチンおよびリバスタチンから選択することができる。
【0016】
いくつかの実施形態において、錯化剤はシクロデキストリンである。特定の好ましい実施形態において、錯化剤はヒドロキシ-プロピル-β-シクロデキストリンである。
【0017】
いくつかの実施形態において、複合化スタチンを凍結乾燥する。
【0018】
本発明はまた、一部では哺乳動物に注入するために好適な水溶液中で容易に可溶化できる水不溶性スタチン含有固形粒子に関し、これは薬学上許容されるスタチンおよび十分量の薬学上許容される錯化剤を含有する凍結乾燥粒子である。
【0019】
本発明は更に、一部では、スタチンに水溶性を与え、水性環境中で再構成したときに製剤に安定性を提供するための、水不溶性スタチンと有効量の錯化剤を含有する凍結乾燥粒子に関する。
【0020】
特定の実施形態において、凍結乾燥粒子は、最初に水不溶性スタチンを錯化剤に添加し、その後この組合せを混合することによって調製する。いくつかの実施形態において、製剤を次いで凍結乾燥して、凍結乾燥粒子を得る。
【0021】
本発明の特定の好ましい実施形態において、水不溶性スタチンおよび錯化剤を含有する凍結乾燥粒子は安定である。「安定」とは、40℃で1ヵ月保存した後に凍結乾燥粒子(製品)の分解が実質的に観察されないことを意味する。好ましい実施形態において、水不溶性スタチンおよび錯化剤を含有する凍結乾燥粒子に関して用いる用語「安定」は、40℃で1ヵ月保存した後に観察される分解が約0.1%未満であることを意味する。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態において、pHは、薬学上許容される緩衝剤またはアルカリ化物質を用いて約7〜約9に調整する。好適なアルカリ化物質および緩衝剤としては、限定するものではないが、NaOH、KOH、トリエチルアミン、メグルミン、L-アルギニン、リン酸ナトリウム緩衝剤(第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸ナトリウム、またはo-リン酸)、重炭酸ナトリウム、およびこれらのいずれかの混合物が挙げられる。本発明の一実施形態において、凍結乾燥粒子は以下のスタチンの1種を含有する:ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、メバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、セリバスタチンおよびリバスタチン。特定の実施形態における凍結乾燥粒子は、錯化剤としてシクロデキストリンを含有して良く、特定の好ましい実施形態において、シクロデキストリンはヒドロキシ-プロピル-β-シクロデキストリンである。
【0023】
本発明はまた、一部では、スタチンを錯化剤と好適な溶媒との混合物に添加し、その後、この組合せを混合する、薬学上許容されるスタチンおよび薬学上許容される錯化剤を含有する凍結乾燥粒子の調製方法に関する。特定の実施形態において、次いで薬学上許容される緩衝剤を用いてpHを約7〜約9のpH範囲に調整する。次いで混合物を凍結乾燥して凍結乾燥粒子を得る。薬学上許容されるスタチンは好ましくは水不溶性であり、かつ、例えばロバスタチン、シンバスタチン、メバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチンおよびリバスタチンからなる群から選択され得る。特定の実施形態において、錯化剤はシクロデキストリンである。
【0024】
特定の好ましい実施形態において、本発明は水不溶性スタチンの使用を意図するが、本発明の更なる実施形態において、スタチンは水不溶性または水溶性であり得る。好適な水溶性スタチンの例としては、限定するものではないが、リスバスタチン、フルバスタチンおよびプラバスタチンが挙げられる。
【0025】
従って、特定の実施形態において、本発明は、溶解性スタチンの安定な製剤、およびその調製方法に関する。このような実施形態において、溶解性スタチンは、本明細書に記載した凍結乾燥ステップを介して安定化される。
【0026】
本発明はまた、スタチンの凍結乾燥粒子を含有する安定な医薬製剤の調製方法に関し、ここでスタチンは有効量の薬学上許容される錯化剤と水溶液中で複合体化され、pHは凍結乾燥に先立って約7〜約9に調整される。
【0027】
特定の実施形態において、凍結乾燥粒子は、ヒト患者に注入するための有効量の薬学上許容される溶液中で再構成される。特定の更なる実施形態において、再構成された凍結乾燥粒子はヒト患者に注入される。
【0028】
本発明はまた、一部では、(a)錯化剤と好適な溶媒との混合物にスタチンを添加し、この混合物を凍結乾燥して凍結乾燥粒子を得ることによって凍結乾燥粒子を調製し、(b)該凍結乾燥粒子を薬学上許容される注射用溶液中で再構成し、そして(c)好適量の溶液を投与して、治療を必要とするヒト患者に有効量のスタチンを提供する、ことを含む治療方法に関する。特定の実施形態において、スタチンは、患者の脂質レベルを低下させ、および/または所望の(治療的に有効な)抗炎症効果もしくは他の治療効果をもたらすのに有効な量で投与される。
【0029】
いくつかの実施形態において、錯化剤と溶媒との混合物にスタチンを添加した後、混合物をボルテックスで混合し、超音波処理して、薬学上許容される緩衝剤を用いて混合物のpHを約7〜約9に調整する。
【0030】
特定の実施形態において、スタチンは、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、メバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、セリバスタチンおよびリバスタチンからなる群から選択され、錯化剤はシクロデキストリンである。
【0031】
本発明の特定の実施形態において、錯化剤は製剤の少なくとも約13.5%で含有される。
【0032】
本発明の特定の実施形態において、少なくとも約3.3mg/mlの可溶化されたスタチン濃度が提供される。
【0033】
上記のように、本発明の目的はまた、少なくとも式(I)の本発明の化合物を、薬学分野で通常用いられる毒性のないアジュバントおよび/または担体と共に含有する医薬組成物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、一部では、十分量の薬学上許容される錯化剤と複合体化した有効量の薬学上許容されるスタチンを含有する医薬製剤、およびその調製方法に関する。
【0036】
本発明は更に、一部では、水不溶性スタチンを水性環境中で溶解性にするための十分量の薬学上許容される錯化剤と複合体化した水不溶性スタチンを含有する製剤に関し、該製剤はまた、水性環境中で可溶化できる水不溶性スタチンの安定な製剤を提供するために凍結乾燥する。
【0037】
本発明において使用するために好適な水不溶性スタチンとしては、限定するものではないが、ロバスタチン、シンバスタチン、メバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチンおよびリバスタチン、薬学上許容されるこれらの塩、および薬学上許容されるこれらの複合体が挙げられる。本明細書で使用する用語「水不溶性」とは、米国薬局方の非常に難溶性〜不溶(1:1000以下(NMT)の溶解度)の定義の範囲を意味する。更に、本発明は、本明細書中の式Iの他のHMG-CoAレダクターゼ阻害剤化合物を含有する組成物を包含することを意図し、これはエリスロラセミ化合物およびその構成異性体の双方を含む(すなわち、3R,5Sおよび3S,5R異性体、好ましくは3R,5S異性体)。
【化1】
【0038】
これらの化合物は、例えば参照により全てを本明細書中に組み入れる以下の同じ出願人による特許、公開された特許出願および文献に開示されている:米国特許第4,739,073号およびEP-A-114,027号(R=インドリルおよびその誘導体);EP-A-367,895号(R=ピリミジニルおよびその誘導体);米国特許第5,001,255号(R=インデニルおよびその誘導体);米国特許第4,613,610号(R=ピラゾリルおよびその誘導体);米国特許第4,851,427号(R=ピロリルおよびその誘導体);米国特許第4,755,606号および4,808,607号(R=イミダゾリルおよびその誘導体);米国特許第4,751,235号(R=インドリジニルおよびその誘導体);米国特許第4,939,159号(R=アザインドリルおよびその誘導体);米国特許第4,822,799号(R=ピラゾロピリジニルおよびその誘導体);米国特許第4,804,679号(R=ナフチルおよびその誘導体);米国特許第4,876,280号(R=シクロヘキシルおよびその誘導体);米国特許第4,829,081号(R=チエニルおよびその誘導体);米国特許第4,927,851号(R=フリルおよびその誘導体);米国特許第4,588,715号(R=フェニルシリルおよびその誘導体);およびF. G. Kathawala, Medicinal Research Reviews, Vol. 11 (2), p.121-146 (1991)およびF. G. Kathawala, Atherosclerosis Research - Review, June 1992, p. B73-B85。
【0039】
式Iの更なる化合物は、例えば参照により本明細書に組み込まれるEP-A-304,063号(R=キノリニルおよびその誘導体);EP-A-330,057号および米国特許第5,026,708号および4,868,185号(R=ピリミジニルおよびその誘導体);EP-A-324,347号(R=ピリダジニルおよびその誘導体);EP-A-300,278号(R=ピロリルまたはその誘導体);および米国特許第5,013,749号(R=イミダゾリルおよびその誘導体)に開示されている。
【0040】
「錯化剤」は、包接錯体を形成することができ、かつ好適な硬化時間(curing time)の後、薬剤を可溶化し、薬剤に更なる安定性を付与することができる小分子量の分子である。従って、本発明の目的のためには、用語「錯化剤」は、水不溶性スタチンを複合体化および/または可溶化する物質を包含することを意味する。本発明の特定の実施形態において、薬学上許容される錯化剤はデキストリンである。他の好適なデキストリンとしては、シクロデキストリン、例えばヒドロキシ-プロピル-β-シクロデキストリンおよびスルホブチル-エーテル-β-シクロデキストリンが挙げられる。更なるシクロデキストリンとして、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、1以上のヒドロキシブチルスルホネート部分を有するβ-シクロデキストリンエーテル、および米国特許第6,610,671号または米国特許第6,566,347号(双方を参照により本明細書に組み入れる)に記載されるシクロデキストリンを挙げることができる。
【0041】
更なる錯化剤としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:フェノール、フェノール性塩、芳香族の酸およびエステル、カルボン酸およびその塩およびエステル、無機酸および塩基およびアミノ酸およびそのエステルおよび塩:メチルパラベン、プロピルパラベン、メチルパラベンカリウム、パラベン類、アスコルビン酸およびその誘導体、アントラニル酸メチル、サリチル酸、アセチルサリチル酸(acetosalicyclic acid)、トコフェロール、有機酸、カルボン酸、芳香族酸、芳香族エステル、アミノ酸の酸性塩、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド(cnnimaldehyde)、イミダゾール、メントール、チオフェノール、m-アミノ安息香酸、アントラニル酸、ピコリン酸およびそのアルキルエステル、トルイジン(toluidide)、安息香酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、リンゴ酸、イソアスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、亜硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、トコフェロールの水溶性および脂溶性誘導体、亜硫酸塩、重硫酸塩および亜硫酸水素塩、プロピル/ガレート、ノルジヒドログアヤレト酸、リン酸、ソルビン酸および安息香酸、メチルパラベン、メチルパラベンナトリウム、パラアミノ安息香酸およびエステル、ソルビン酸および安息香酸、2,6-ジ-t-ブチル-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、t-ブチルヒドロキノン、ジ-t-アミルヒドロキノン、ジ-t-ブチルヒドロキノン、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ピロカテコール、ピロガロール、エステル、これらの異性体化合物、これらの薬学上許容される塩、および上記いずれかの混合物。
【0042】
本発明の特定の実施形態において、錯化剤は製剤の少なくとも13.5%含まれる。
【0043】
特定の実施形態において、スタチンおよび錯化剤は、水溶液中の錯化剤の混合物中にスタチンを添加することによって組み合わされる。水溶液は、例えば注射用水または注射用水中Na
2HPO
4等の好適な薬学上許容される溶媒であって良い。スタチンの複合体化の後、pHを6.5を超えるpHに調整することができる。特定の実施形態において、pHは約7〜約9に調整する。pHを調整するための好適な物質としては、リン酸ナトリウム緩衝剤(第三リン酸ナトリウム(Na
3PO
4)または第二リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4))、o-リン酸、NaOHおよびL-アルギニン(L-Arg)が挙げられる。
【0044】
本発明の特定の実施形態において、混合物は、ボルテックス撹拌および超音波処理等の種々の手段で混合される。混合は1回より多く繰り返すことができる。各混合ステップの間で溶液の体積および/またはpHを調整することが望ましい場合がある。
【0045】
本発明の一実施形態において、スタチンおよび錯化剤の混合物を凍結乾燥する。
【0046】
本発明の製剤の安定性は、当業者に公知の任意の好適な方法で決定される。安定性を試験する好適な方法の一例は、高速液体クロマトグラフィーまたは他の一般的な分析技術を使用するものである。
【0047】
活性成分の1日投与量は単回投与量として投与することができる。本発明の化合物、および/または本発明の医薬組成物を用いて言及した疾患を治療するための投与レジメンおよび投与頻度は、種々の因子、例えば患者の年齢、体重、性別および医学的状態、並びに疾患の重篤度、薬理学的条件、薬剤の半減期、および他の薬剤との結果的な併用療法を考慮して選択される。場合によって、記載した範囲以下または以上、および/またはより頻回の投与レベルが適当であることもあり、理論的にこれは医師の裁量範囲内のことであり、また疾患の状態に依存するであろう。
【0048】
活性成分がアトルバスタチンの場合、1日の総投与量は好ましくは10〜80mgの量であり得るが、必要に応じてより少量またはより多量であっても良い。アトルバスタチンの好ましい最初の投与量は1日1回10または20mgであるが、LDL-Cの大きな低減が必要な場合には1日1回40mgで開始することができる。小児でのアトルバスタチンの最初の投与量は1日1回10mgであり、最大投与量は1日1回20mgである。アトルバスタチン以外のHMG-CoAレダクターゼ阻害剤については、アトルバスタチンでの好ましい投与量に基づいて変換投与量を計算することは当業者が理解する範囲内のことである。更に、そのような計算のための変換表が、公知のスタチンの多くで容易に入手することができる。
【0049】
本発明の化合物は、必要に応じて伝統的な非毒性の薬学上許容される担体、アジュバントおよびベヒクルを最終的に含有する製剤で、経口的、非経口的、経直腸的または局所的に、吸入もしくはエアゾールによって投与することができる。局所投与はまた、経皮パッチまたはイオン導入デバイス等の経皮投与の使用を含む場合もある。本明細書において用いる用語「非経口的」とは、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射または注入技術が含まれる。
【0050】
注入可能な調製物、例えば無菌の注入可能な水性または油性懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて公知の技術に従って製剤化することができる。無菌の注入可能な調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤もしくは溶媒中の無菌の注入可能な溶液または懸濁液であっても良い。許容されるベヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウムがある。更に、溶媒または懸濁媒体として無菌の固定油が伝統的に用いられる。この目的のために、合成モノまたはジグリセリド等の任意のブランドの固定油を用いることができ、更に脂肪酸、例えばオレイン酸が注入可能な調製物で使用可能である。
【0051】
経口投与のための液体投与形態としては、当分野で通常用いられる不活性な希釈剤、例えば水を含有する薬学上許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを挙げることができる。このような組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤等のアジュバント、および甘味剤、香味剤等を含有することもできる。
【0052】
より新しいスタチンニトロ誘導体は、脂質を低下させることに加えて、本来の(native)スタチンと比較して、抗炎症、抗血小板および抗血栓効果の上昇を有する。更に、これらは他の病的状態、例えば急性冠症候群、卒中、末梢虚血等の末梢血管疾患、糖尿病患者における血管合併症およびアテローム性動脈硬化症等の内皮機能不全に関連する全ての疾患、アルツハイマー病(AD)およびパーキンソン病(PD)等の神経変性疾患、多発性硬化症等の自己免疫疾患にも有効であり得る。
【0053】
本明細書に記載した治療方法の別の実施形態において、スタチンを含有する医薬製剤を注入方法を介して患者に投与する。こうした実施形態では、スタチンの医薬製剤は、注入方法を介して患者に投与するために好適な製剤である。好適な注入方法としては、静脈内注射に加えて、動脈内注入、筋肉内注射、経皮注射、および皮下注射が挙げられる。
【0054】
静脈内投与のために好適な担体としては生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、および可溶化剤、例えばグルコース、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールおよびこれらの混合物を含有する溶液が挙げられる。
【0055】
製剤は水性ベヒクルを含有することができる。水性ベヒクルとしては、限定することのない例として、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張デキストロース注射液、無菌水注射液、デキストロース、および乳加リンゲル注射液が挙げられる。非水性の非経口ベヒクルとしては、限定することのない例として、植物起源の固定油、綿実油、コーン油、ゴマ油および落花生油が挙げられる。複数回投与用容器に包装された非経口調製物には静菌または静真菌濃度の抗微生物剤を添加しなければならず、これにはフェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムが挙げられる。等張化剤としては、限定することのない例として、塩化ナトリウムおよびデキストロースが挙げられる。緩衝剤としてはリン酸塩およびクエン酸塩が挙げられる。抗酸化剤としては重硫酸ナトリウムが挙げられる。局所麻酔剤としては塩酸プロカインが挙げられる。懸濁剤および分散剤としてはカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。乳化剤としてはポリソルベート80(TWEEN(登録商標) 80)が挙げられる。金属イオンの封鎖剤またはキレート剤としてはEDTAが挙げられる。薬学的担体としてはまた、限定することのない例として、水混和性のためのベヒクルとしてのエチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコール、およびpH調整のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸が挙げられる。
【0056】
典型的には、治療的有効量は、少なくとも約0.1重量%〜約90重量%以上、例えば1重量%より多い濃度のスタチンを含有するように製剤化される。特定の実施形態において、製剤中の可溶化されたスタチン濃度は少なくとも約3.3mg/mlであろう。
【0057】
本明細書および特許請求の範囲中で使用する成分の量、反応条件等を示す数字は全て、用語「約」によって改変されるものと理解されるべきである。従って、そうではないことが示されていない限り、明細書および特許請求の範囲中で記載される数値パラメーターは、本発明によって得ることが求められる望ましい特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、また請求の範囲に対して均等論を適用することを制限しようとするものではなしに、各数値パラメーターは、有効桁の数および通常の丸め(四捨五入など)のアプローチを考慮して理解すべきである。
【0058】
特定の実施形態において、本発明は、他の脂質低下治療(例えばLDLアフェレーシス)の補助として、またはこうした治療が利用できない場合の、CHDはないが複数のリスク因子を有する患者におけるMI、卒中、血行再建術、狭心症のリスクを低減する方法、CHDはないが複数のリスク因子を有する2型糖尿病患者におけるMIおよび卒中のリスクを低減する方法、CHDを有する患者における非致死性MI、致死性および非致死性卒中、血行再建術、CHFのための入院、および狭心症のリスクを低減する方法、一次脂質異常症患者(ヘテロ接合性家族性および非家族性および混合型脂質異常症)における上昇した総コレステロール、LDL-コレステロール、アポリポタンパク質-B、およびトリグリセリドレベルを低減する方法、高トリグリセリド血症および一次異常βリポタンパク血症の患者における上昇したトリグリセリドレベルを低減する方法、ホモ接合性家族性高コレステロール血症患者における総コレステロールおよびLDL-コレステロールを低減する方法、適切な食事療法試験に失敗した後のヘテロ接合性家族性高コレステロール血症、混合型脂質異常症、およびヘテロ接合性家族性脂質異常症、ホモ接合性家族性高コレステロール血症の10〜17歳の少年および初潮後の少女における上昇した総-C、LDL-C、およびアポBレベルを低減する方法、に関する。
【0059】
特に、本発明の実施において用いるための非スタチン医薬は任意のPPAR受容体アゴニストであり、例えば1種のPPAR受容体サブタイプに対して選択的であるもの、並びに2種以上の受容体サブタイプに対して活性を有するものが挙げられる。より具体的には、非スタチン医薬は、フィブリン酸誘導体等のPPARαアゴニスト、PPARγアゴニスト、およびデュアルPPARα/γアゴニスト、すなわちαおよびγ受容体サブタイプの双方に対して二重の活性を有するもの、である。
【0060】
スタチンおよび非スタチンが酵素または酵素イソ型(アイソザイム)に競合的に結合するものとして記載される場合には、スタチンおよび非スタチンの双方が同じ酵素またはアイソザイムに結合することを意味する。薬物動力学的な薬剤の有害な相互作用は、哺乳動物、特にヒトにおけるスタチンと同時投与された非スタチン医薬とのin vivoの相互作用を意味することが意図され、活性な開環酸(open-acid)スタチンの血漿レベルを、スタチンが単独で投与される、すなわち同時投与される非スタチンが存在しない場合のレベル以上に上げることを意味する。
【0061】
好ましい実施形態の詳細な説明
以下の実施例は、本発明の種々の態様を説明する。これらはいかなる意味においても請求の範囲を制限することを意図するものではない。
【0062】
実施例1−3
実施例1−3は、pHの影響、緩衝剤の強度、および種々の混合方法を評価するために可溶化方法を比較するものである。実施例1では、サンプルをpH5.5、6.5、7.5、および8.5で100mMの第二リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)中に作製した。サンプルはボルテックス撹拌のみ行った。実施例2では、サンプルをpH5.5、6.5、7.5、および8.5で100mMのNa
2HPO
4中に作製し、ボルテックス撹拌と超音波処理を行った。実施例3では、サンプルをpH7.5または8.5で25または50mMのNa
2HPO
4中に作製した。
【実施例1】
【0063】
10mgのアトルバスタチンカルシウム三水和物(「AS-Ca」)を、0.8mlの34.7%ヒドロキシ-プロピル-β-シクロデキストリン(「HPβ-CD」)および0.1mlの超純水中1M Na
2HPO
4を含有するおよそ0.9mlの溶液に添加し、次いで5分間最高速でボルテックス撹拌した。次いで0.85% o-リン酸または0.1M NaOHでサンプルのpHを5.5、6.5、7.5、または8.5に調整した。各サンプルをボルテックス撹拌し、次いで超純水を1.0mlとなるまで添加して、その後、サンプルを0.45μmのナイロンフィルターを通して濾過し、HPLCで分析した(表1を参照のこと)。
【実施例2】
【0064】
実施例2の製剤は、ボルテックス撹拌の後に更に超音波処理する以外は実施例1の製剤と同様にして調製した。サンプルをHPLCで分析した(表1を参照のこと)。
【実施例3】
【0065】
10mgのAS-Caを、0.8mlの34.7% HPβ-CDおよび0.025または0.050mlの超純水中1M Na
2HPO
4を含有するおよそ0.9mlの溶液に添加し、次いで5分間ボルテックス撹拌した。0.1M NaOHを用いてサンプルのpHを7.5または8.5に調整し、次いで超純水を1.0mlとなるまで添加して、その後、サンプルを5分間ボルテックス撹拌し、濾過し、HPLCで分析した(表1を参照のこと)。
【表1】
【0066】
結果:pHを6.5以上に調整することによってAS-Caの溶解度が非常に改善された。
【0067】
実施例4−5
種々のpH調整方法を用いて製剤中のAS-Caの溶解度を実施例4および5で比較し、複合体化の効率を評価した。実施例4では、NaOHを用いてpHを9に調整し、次いでリン酸を添加してpHを7.0−8.5まで下げた。実施例5では、0.85% o-リン酸または0.1M NaOHでpHを7.0−8.5の間に調整した。
【実施例4】
【0068】
27.78%のHPβ-CD、50mMのNa
2HPO
4、および超純水のおよそ0.8mLの混合物に20mgのAS-Caを添加することによって20mg/mlのAS-Caの混合物を調製し、次いでリン酸および/またはNaOHを1mlとなるまで添加した。次いで20mg/mlのAS-Caの混合物を5分間ボルテックス撹拌し、15分間超音波処理した。
【0069】
0.1M NaOHを用いてサンプルのpHを9.0に調整し、その後、0.85% o-リン酸でpHを更に7.0、7.5、8.0、または8.5に調整した。各サンプルをボルテックス撹拌し、超純水で1.0mlとし、濾過し、次いでHPLCで分析した。
【実施例5】
【0070】
27.78%のHPβ-CD、50mMのNa
2HPO
4、および超純水のおよそ0.8mLの混合物に20mgのAS-Caを添加することによって20mg/mlのAS-Caの混合物を調製し、次いでリン酸および/またはNaOHを1mlとなるまで添加した。次いで20mg/mlのAS-Caの混合物を5分間ボルテックス撹拌し、15分間超音波処理した。
【0071】
0.85% o-リン酸または0.1M NaOHを用いてサンプルのpHを7.0、7.5、8.0、または8.5に調整した。各サンプルをボルテックス撹拌し、超純水で1.0mlとし、濾過し、次いでHPLCで分析した。
【0072】
結果:結果を下記の表2に記載する。
【表2】
【実施例6】
【0073】
種々の濃度のHPβ-CDの複合体化効率を評価することによって、AS-CaとHPβ-CDとの関係を調べた。まずHPβ-CDのストック溶液を34.7%で調製し、0.5375% HPβ-CDまで連続希釈した。
【0074】
サンプルは、20mgのAS-Caを0.8mlのHPβ-CD希釈液(1ml中の最終濃度が27.78%〜0.5375%HPβ-CD)および0.05mlの1M Na
2HPO
4に添加することによって調製した。0.1M NaOHで各サンプルをpH9.0に調整し、次いでサンプルを5分間ボルテックス撹拌し、次いで15分間超音波処理した。次いで0.85% o-リン酸でpHを7.5または8.5に調整した。サンプルを再度ボルテックス撹拌および超音波処理し、次いで濾過してHPLCによって分析した(表3を参照のこと)。
【0075】
結果:AS-Caの溶解度はHPβ-CD濃度に伴って直線的に上昇した。線形回帰分析より、10mg/mlのAS-Caを可溶化するために必要なHPβ-CDの最少量はpH7.5で14.4%、pH8.5で13.5%であった(
図1を参照のこと)。
【表3】
【実施例7】
【0076】
強制的分解および予備的安定性研究から、HPβ-CDで可溶化したAS-Caは良好な安定性を示さなかった。従って、マニホールド凍結乾燥器を用いて凍結乾燥を評価し、安定性がこの方法によって改善できるか否かを調べた。
【0077】
37.5%のHPβ-CD 5.333mlおよび1M Na
2HPO
4 0.5mlを含有する溶液およそ9mlに100mgのAS-Caを添加した。サンプルを5分間ボルテックス撹拌し、次いで15分間超音波処理した。次に0.1M NaOHを用いてpHを9.0に調整し、その後、サンプルを再度ボルテックス撹拌および超音波処理した。
【0078】
次に、0.85% o-リン酸を用いてサンプルのpHをpH8.5に調整し、続いてボルテックス撹拌および超音波処理した。サンプルをNaOHおよび1%リン酸で10ml、pH8.47とし、濾過し、次いでHPLCで分析した。最終製剤は10mg/ml AS-Ca
2+、20% HPβ-CD、50mM Na
2HPO
4を含有し、0.1M NaOHおよび1% リン酸でpH8.47とした。
【0079】
結果:HPβ-CDで可溶化したAS-Caを凍結乾燥し、同じ混合物の対照溶液と共に40℃で1ヶ月間の安定性について試験した。凍結乾燥したAS-Caは約3.5%分解し、溶液中のAS-Caは約15.5%分解した。従って、サンプルは溶液中で、またはマニホールド凍結乾燥器を用いて凍結乾燥した場合、安定ではなかった。
【実施例8】
【0080】
最終pHを8.5に調整した100mM リン酸ナトリウム中30% HPβ-CD中で20mg/mLに調製した以外は実施例6に記載したようにしてアトルバスタチンを調製した。次いでサンプルを8%スクロース溶液中に1:1に希釈し、5mLのバイアルに移した。バイアルは凍結乾燥用ストッパーで蓋をした。
【0081】
サンプルをシェルフフリーザーで-40℃に凍結し、60分間保持した。凍結ステップの後、コンデンサーを-85℃に調整し、実験中この温度で保持した。圧力はおよそ20mtorrであった。次いでシェルフ温度を-20℃、-10℃、および0℃に調整し、真空を維持しながら各温度で180分間保持した。次に温度を10℃、次いで20℃まで上昇させた(各ステップ240分間)。次いで温度を40℃に調整し、そして真空状態を解除し、バイアルを取り出して視覚的に検査するまで保持した。
【0082】
結果:AS-CaをHPβ-CDで可溶化し、次いでシェルフ凍結乾燥器を用いて凍結乾燥した場合、40℃で1ヶ月間保存した後に分解が観察されなかった(0.1%未満)。この理論に拘束されることを望むものではないが、安定性の増大は、おそらく水を速やかに除き、凍結乾燥サイクルの条件で得られる残存水分レベルが低いためである。
【0083】
実施例9−10
実施例9および10では、HPβ-CDの代替候補として、スルホブチル-エーテル-β-シクロデキストリン(「SBE-β-CD」)を、SBE-β-CDとのAS-Ca複合体化によって評価した。リン酸ナトリウム塩対超純水のSBE-β-CDによるAS-Caの可溶化に対する効果も種々のpHで評価した。
【実施例9】
【0084】
実施例9では、SBE-β-CDとのAS-Caの複合体化を種々のpH値のリン酸ナトリウム緩衝液中で行った。20mg/mlのAS-Caを、50-100mMのNaH
2PO
4(pH2.13のサンプル)またはNa
2HPO
4(pH7.07、8.75、および11.75のサンプル)中27.78%のSBE-β-CD中に添加した。次いで各サンプルをボルテックス撹拌および超音波処理し、その後、0.85% o-リン酸を用いてpHをpH2.13および7.07に、または0.1M NaOHを用いてpH8.75および11.50に調整した。次いでサンプルをボルテックス撹拌し、超音波処理し、超純水で1.0mlとし、次いで濾過してHPLCで分析した(下記の表4を参照のこと)。
【0085】
結果:SBE-β-CDで複合体化した場合、AS-Caの溶解度は、HPβ-CDで複合体化した場合と比較しておよそ10倍低かった。
【表4】
【実施例10】
【0086】
実施例10では、SBE-β-CDとのAS-Caの複合体化を超純水中で行い、AS-Caを複合体化するSBE-β-CDの能力に対するリン酸緩衝剤の塩の影響を調べた。実施例8の溶解度に関する知見に基づいて、中性および塩基性pHで製剤を試験した。
【0087】
中性pH:超純水中27.78%のSBE-β-CDに20mg/mlのAS-Caを添加した。サンプルをボルテックス撹拌および超音波処理し、その後pHが7.09であると測定された。次いでサンプルを超純水で1.0mlとし、濾過し、HPLCで分析した(表5を参照のこと)。
【0088】
塩基性pH:超純水およそ0.8mL中27.78%のSBE-β-CDに20mg/mlのAS-Caを添加した。0.1M NaOHを用いてpHを11.0に調整し、1.0mLとした以外はサンプルを上記のように処理した。
【0089】
結果:SBE-β-CDと組み合わせたアトルバスタチンの溶解度に対して、リン酸緩衝剤は有意な効果を有さないようである。
【表5】
【実施例11】
【0090】
γ-シクロデキストリンおよびヒドロキシ-プロピル-γ-シクロデキストリンを含む他のシクロデキストリンを用いて更なるAS-Ca製剤を調製した。溶解度はSBE-β-CDまたはHPβ-CDで達成されるものよりも低いことが見出された。
【実施例12】
【0091】
実施例12では、AS-Caを共溶媒で可溶化して共溶媒/水への溶解度をpHの関数として評価した。プロピレングリコールおよびエタノール共溶媒製剤に関するpH依存性を特に調べた。
【0092】
超純水中のプロピレングリコール4.0mlおよびエタノール1.0mlを含有するおよそ0.9mlの溶液に10mgのAS-Caを添加した。サンプルを上記のようにボルテックス撹拌および超音波処理し、次いで0.1M NaOHでpH9.0に調整した。サンプルを再度ボルテックス撹拌および超音波処理し、0.85% o-リン酸でpHを7.0、7.5、8.0、または8.5に調整するか、またはpH9.0のままとした。サンプルをボルテックス撹拌、超音波処理し、超純水で1.0mlとし、濾過し、次いでHPLCで分析した(表6を参照のこと)。
【0093】
結果:pHを7.0から9.0に変化させた場合に溶解度の変化はなかった。しかしながら、サンプルを水に1:1希釈すると、pH7.5および8.0に調整したサンプルで沈澱が生じた。従って、生成物を水性ベヒクル中に希釈する場合には、8.0を超えるpHが好ましい。
【表6】
【実施例13】
【0094】
実施例13では、共溶媒/水への溶解度を共溶媒の比率の関数として評価することによって、AS-Caを可溶化するために必要な溶媒の量を調べた。
【0095】
超純水中に以下の溶媒比率を含有するおよそ0.9mlの溶液に、10mgのアトルバスタチンカルシウムを添加した:
a.40/10、4.0mlのプロピレングリコールおよび1.0mlのエタノール
b.30/10、3.0mlのプロピレングリコールおよび1.0mlのエタノール
c.20/10、2.0mlのプロピレングリコールおよび1.0mlのエタノール
d.40/5、4.0mlのプロピレングリコールおよび0.5mlのエタノール
e.40/0、4.0mlのプロピレングリコールおよび0.0mlのエタノール
サンプルをそれぞれ5分間ボルテックス撹拌し、次いで15分間超音波処理した。サンプルは最初に0.1M NaOHでpH9.00に調整し、ボルテックス撹拌し、次いで超音波処理した。サンプルのpHを0.85% o-リン酸でpH8.50に調整し、サンプルを再度ボルテックス撹拌および超音波処理した。超純水でサンプルを1.0mlとし、濾過し、次いでHPLCで分析した(表7を参照のこと)。
【0096】
結果:最良の溶解度は、40%プロピレングリコール(v/v)および10%エタノール(v/v)で達成された。強制的分解研究から、40%プロピレングリコールおよび10%エタノール未満の場合には、生理食塩水で希釈した際にアトルバスタチンの沈澱が生じることが示された。
【表7】
【実施例14】
【0097】
強制的分解研究から更に、共溶媒/水性ベヒクルによる有意な分解が示された。従って、非水性共溶媒を調べた。
【0098】
10mgのAS-Caを、1.0mlのプロピレングリコールおよびエタノール(4/1)に添加した。サンプルをボルテックス撹拌し、次いで0.1M NaOHでサンプルのpHを11.0に調整した。次いでサンプルを濾過し、HPLCで分析した。
【0099】
結果:サンプルは完全に溶解した(9.34mg/ml)。溶液を食塩水で1:3に希釈すると、沈澱が生じた。
【実施例15】
【0100】
強制的分解分析から、AS-Caが高いpHで比較的安定であることが示された。従って、L-アルギニン(L-Arg)、NaOH、またはリン酸ナトリウム緩衝剤(第三リン酸ナトリウム(Na
3PO
4)またはNa
2HPO
4)でpHを調整した。
【0101】
下記の溶液1-5およそ0.8mLに20mgのAS-Caを添加し、続いてボルテックス撹拌および超音波処理した。サンプルのpHを塩基性pHに調整し、続いて超純水で体積1mLとし、ボルテックス撹拌、超音波処理、濾過、およびHPLC分析を行った。
【0102】
溶液1:20mgのAS-Caを、16.54mM L-Argを含有する水に添加した(アトルバスタチン:L-Argモル比1:1)。10% L-ArgでpHを10.98に調整した。得られたAS-Ca濃度は0.46mg/mlであった。
【0103】
溶液2:20mgのAS-Caを水に添加し、0.1M NaOHでpHを11.68に調整した。得られたAS-Ca濃度は0.222mg/mlであった。
【0104】
溶液3:20mgのAS-Caを、0.1M Na
3PO
4を含有する水に添加した。測定されたpHは11.75であった。得られたAS-Ca濃度は0.46mg/mlであった。
【0105】
溶液4:20mgのAS-Caを、0.1M Na
3PO
4および16.54mM L-Argを含有する水に添加した。測定されたpHは10.79であった。得られたAS-Ca濃度は3.17mg/mlであった。
【0106】
溶液5:20mgのAS-Caを、0.1M Na
2HPO
4および16.54mM L-Argを含有する水に添加した。測定されたpHは10.79であった。得られたAS-Ca濃度は3.43mg/mlであった。
【0107】
結果:HPβ-CDを含まない塩基性溶液中のAS-Caの溶解度は約0.2〜3.5mg/mLで変化した。0.1M Na
3PO
4またはNa
2HPO
4と共に16.54mM L-Argを用いて、>3mg/mLのAS-Ca濃度が得られた。従って、L-ArgとNa
3PO
4またはNa
2HPO
4との組み合わせを用いても、溶液中にAS-Caを調製するための好適な溶解度がもたらされる。
【0108】
実施例16−19
カルシウム三水和物型の代替物としてアトルバスタチン遊離酸の溶解度(「AS」)を調べた。
【実施例16】
【0109】
複合体化したASの溶解度を、0.1M NaOHを用いてpH10.35および10.65にそれぞれ調整した50mMのNa
2HPO
4中27.78%のHPβ-CDまたはSBE-β-CD中のAS-Caの溶解度を調べることによって評価した。実施例4と同じ可溶化方法を使用した。
【0110】
結果:ASの溶解度はHPβ-CDとの複合体化で13.3mg/ml、SBE-β-CDとの複合体化で1.96mg/mlであった。
【実施例17】
【0111】
実施例17では、ASが高いpHにおいて非水性共溶媒中に溶解でき、次いで食塩水中に沈澱することなく希釈できるか否かを試験することによって、共溶媒によるASの可溶化を評価した。先のデータ(実施例13)から、非水性共溶媒中で調製し、次いで食塩水中に希釈するとAS-Caが沈澱するであろうことが示されている。
【0112】
20mgのAS(20mg)を、およそ0.9mlのプロピレングリコールおよびエタノール(4/1比率)共溶媒に添加した。測定されたpHは6.64であった。0.1M NaOHでpHを11.0に調整し、超純水で体積を1mLとした。次いでサンプルをボルテックス撹拌し、濾過し、その後、HPLCで分析した。
【0113】
結果:サンプルは速やかに分解した(2時間でおよそ50%)。アトルバスタチンとその分解産物のピーク間でピーク面積は保たれていた。AS濃度は約20mg/mlであると評価された。
【実施例18】
【0114】
実施例18では、100%プロピレングリコールまたは100%エタノール中のAS溶解度を上記の同じ可溶化方法を用いてプロピレングリコール/エタノール(4/1)溶媒と同様に調べた。アトルバスタチン遊離酸は、プロピレングリコール/エタノール(4/1)溶媒と同様に、100%プロピレングリコールまたは100%エタノールに完全に溶解性であった。双方の溶液は、食塩水で1:1に希釈すると沈澱し、不安定であることが見出された。
【実施例19】
【0115】
実施例19では、L-アルギニン(L-Arg)、NaOH、またはリン酸ナトリウム緩衝剤(Na
3PO
4またはNa
2HPO
4)で高いpHに調整することによってASの溶解度を調べた。
【0116】
20mgのASをおよそ0.8mlの以下の溶液に添加し、続いてボルテックス撹拌と超音波処理を行った。サンプルのpHを塩基性のpHに調整し、続いて超純水で体積1mLまでにした。次いでサンプルをボルテックス撹拌し、超音波処理し、濾過し、そしてHPLC分析を行った。
【0117】
サンプル1:20mgのASを16.54mM L-Arg溶液に添加した。測定されたpHは10.35であり、これをL-Argで10.71に調整した。得られたAS-Ca濃度は1.91mg/mlであった。
【0118】
サンプル2:20mgのASを超純水に添加し、0.1M NaOHでpHを11.15に調整した。得られたAS濃度は0.06mg/mlであった。
【0119】
サンプル3:20mgのASを16.54mM L-Argおよび0.1M Na
3PO
4に添加した。測定されたpHは11.42であった。得られたAS濃度は0.44mg/mlであった。
【0120】
サンプル4:20mgのASを0.05M Na
3PO
4に添加した。測定されたpHは11.55であった。得られたAS濃度は<LOQ(定量限界)であった。
【0121】
結果:Na
3PO
4、NaOH、またはNa
3PO
4およびL-Argを用いた塩基性溶液中のASの溶解度は<1.0mg/mLであった。L-Argを単独で用いた場合のAS溶解度は1.91mg/mLであった。従って、高いpHでL-Argを用いることで、適切な溶解度が提供される。
【0122】
結論
pH11.0でプロピレングリコール/エタノール(4/1)からなる非水性製剤を調べて、観察される分解が減少した。しかしながら、この製剤は生理食塩水中に1:1希釈すると沈澱した。安定性を改善するために、AS-CaのHPβ-CDとの予備的に凍結乾燥した製剤を調べた。この製剤の初期の安定性から、溶液中にサンプルを含んだままのものよりも安定性の改善が示された。
【0123】
関連分野の通常の技術を有するものには、本明細書に記載した方法および適用に対する他の好適な改変物および適応物が好適であり、本発明またはその任意の実施形態の範囲から逸脱することなくなされ得ることが容易にわかるであろう。特定の実施形態と関連付けて本発明を記載したが、記載した特定の形態に本発明を限定することが意図されてはおらず、反対に、そのような代替物、改変物および等価物を特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲に含まれ得るように包含することが意図される。