特許第6178448号(P6178448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6178448
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】だし抽出用装置、並びだし抽出方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 23/00 20160101AFI20170731BHJP
【FI】
   A23L23/00
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-41483(P2016-41483)
(22)【出願日】2016年3月3日
【審査請求日】2016年9月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591171884
【氏名又は名称】アリアケジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124235
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 恵子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 甲子男
【審査官】 小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−136199(JP,A)
【文献】 特開平08−214815(JP,A)
【文献】 特開昭58−036378(JP,A)
【文献】 特開平09−248161(JP,A)
【文献】 特開2011−056142(JP,A)
【文献】 特開2000−126508(JP,A)
【文献】 特開平10−258395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 − 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
だし抽出用の材料及び水を収容するタンクの底部に連結されるだし抽出用装置であって、
前記タンクの底部に連結された管状の本体に収容された、スクリューコンベアと、
前記管状の本体の側壁に設けられた、だし汁抜出口と、
前記管状の本体の底部に設けられた、前記材料の残渣を排出するための残渣排出口と、
前記スクリューコンベアを駆動させる駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、前記スクリューコンベアの羽根の上に前記残渣を堆積させ、前記羽根の下に前記だし汁を通すための空間を形成するために、前記だし汁を抜出すときは前記スクリューコンベアを停止させ、
前記だし汁抜出口は、前記空間を介して前記だし汁を前記管状の本体から抜出す構成を有する、
だし抽出用装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記残渣を排出するときは、前記スクリューコンベアを回転させて前記羽根の上に堆積した前記残渣を前記残渣排出口まで搬送する構成を有する、
請求項1に記載のだし抽出用装置。
【請求項3】
前記だし汁抜出口の鉛直方向の位置が、前記スクリューコンベアの羽根の上端の鉛直方向の位置と下端の鉛直方向の位置の間にある、
請求項1又は2に記載のだし抽出用装置。
【請求項4】
前記残渣排出口、開閉可能な蓋を有する開口部である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のだし抽出用装置。
【請求項5】
前記管状の本体は、前記スクリューコンベアの羽根が収容される第1の部分と、前記第1の部分の下側に設けられ、前記第1の部分に対して傾斜した第2の部分を有する、
請求項1〜のいずれか1項に記載のだし抽出用装置。
【請求項6】
前記管状の本体の表面を覆う蒸気ジャケットを有する、
請求項1〜のいずれか1項に記載のだし抽出用装置。
【請求項7】
前記スクリューコンベアの羽根の上端の鉛直方向の位置が、前記管状の本体の上端の開口部の鉛直方向の位置と同じ、又は前記開口部の鉛直方向の位置よりも高い、
請求項1〜のいずれか1項に記載のだし抽出用装置。
【請求項8】
だし抽出用の材料からだしを抽出し、前記だしが水に溶け出しただし汁を抜出すとともに、前記材料の残渣を排出するだし抽出方法であって、
タンク内に収納された前記材料からだしを抽出する工程と、
前記タンクの底部に連結された管状の本体に収容されたスクリューコンベアを停止させた状態で、前記スクリューコンベアの羽根の上に前記材料の残渣を堆積させ、前記羽根の下に形成された空間を介して、前記管状の本体に取付けられただし汁抜出口から前記だし汁を抜出す工程と
含む、だし抽出方法。
【請求項9】
前記だし汁を抜出した後、前記スクリューコンベアを回転させることにより、前記羽根の上に堆積した残渣を前記管状の本体の残渣排出口まで搬送し、排出する工程、
を含む、請求項8に記載のだし抽出方法。
【請求項10】
前記だしの抽出過程及び前記だし汁の抜出し過程において、前記管状の本体を加熱する、
請求項8又は9に記載のだし抽出方法。
【請求項11】
前記だしの抽出過程において前記タンクの内部を密閉することにより、前記タンク内の水から発生した水蒸気を前記タンク内で圧縮し、前記水蒸気の圧力により、前記だしの抽出を促進する、
請求項8〜10のいずれか1項に記載のだし抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、だし抽出用装置、並びだし抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、だしを抽出するための鶏ガラ、豚骨等のだしの材料を収容するタンクが傾斜可能な構造を有するスープ製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたような装置によれば、だしの抽出後、回転軸を用いてタンクを傾けることにより、だし汁及びだしの材料の残渣をタンクから取り出すことができる。
【0003】
また、従来、豚骨を収容した網篭をタンク内に入れて、だしを抽出する骨スープ生成装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載されたような骨スープ生成装置によれば、だし汁をタンクの抜出口から抜出した後、タンクから網篭を吊り上げることにより、だしの材料の残渣をタンクから取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−248161号公報
【特許文献2】特開2009−136199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたようなタンクが傾斜可能な構造を有する装置は、大型化すると操作が困難になり、取扱者の作業環境が危険、きつい、汚い等の過酷なものになる。このため、キッチン等における小規模なだしの抽出に用いることは容易であるが、工業的に用いることは環境的、経済的に困難である。
【0006】
特許文献2に記載されたようなタンク内に網篭が設置された装置は、大型化した場合、網篭の吊り上げ、横移動による残渣の排出が大変な作業になる。また、その構造上、タンク内に十分な撹拌機能を有する撹拌装置を取り付けることが困難であるため、大型化された場合にはタンク内の水温が不均一になり、だしの品質にばらつきが生じるおそれがある。
【0007】
また、上記のいずれの形式の装置においても、少なくともタンク内の残渣の排出時にはタンク内の高温のだし汁が大気中に露出するため、発生した蒸気が施設の天井で結露し、汚染された水滴となって落ち、だし汁や床を汚染する。このため、非衛生的であり、使用する国によっては生産設備の使用許可が下りない。また、取扱者にとっての危険性や、室温を規則で定められた温度(例えば8℃以下)に保つことができないという問題もある。なお、高温下でのだし汁の抜出しや残渣の排出を避けるためには、これらの冷却を待たなければならないが、時間が掛かる上に微生物の増殖が避けられない。
【0008】
このように、上記のいずれの形式の装置も、工業的に用いるには効率が悪く不経済であり、かつ衛生面や安全性に大きな欠陥がある。
【0009】
本発明の目的は、経済的、衛生的、かつ安全なだしの生産を行うことができるだし抽出用装置、及びだし抽出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]〜[]のだし抽出用装置、及び下記[]〜[11]のだし抽出方法を提供する。
【0011】
[1]だし抽出用の材料及び水を収容するタンクの底部に連結されるだし抽出用装置であって、前記タンクの底部に連結された管状の本体に収容された、スクリューコンベアと、前記管状の本体の側壁に設けられた、だし汁抜出口と、前記管状の本体の底部に設けられた、前記材料の残渣を排出するための残渣排出口と、前記スクリューコンベアを駆動させる駆動部と、を備え、前記駆動部は、前記スクリューコンベアの羽根の上に前記残渣を堆積させ、前記羽根の下に前記だし汁を通すための空間を形成するために、前記だし汁を抜出すときは前記スクリューコンベアを停止させ、前記だし汁抜出口は、前記空間を介して前記だし汁を前記管状の本体から抜出す構成を有する、だし抽出用装置。
[2]前記駆動部は、前記残渣を排出するときは、前記スクリューコンベアを回転させて前記羽根の上に堆積した前記残渣を前記残渣排出口まで搬送する構成を有する、上記[1]に記載のだし抽出用装置。
【0012】
]前記だし汁抜出口の鉛直方向の位置が、前記スクリューコンベアの羽根の上端の鉛直方向の位置と下端の鉛直方向の位置の間にある、上記[1]又は[2]に記載のだし抽出用装置。
【0013】
]前記残渣排出口、開閉可能な蓋を有する開口部である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のだし抽出用装置。
【0014】
]前記管状の本体は、前記スクリューコンベアの羽根が収容される第1の部分と、前記第1の部分の下側に設けられ、前記第1の部分に対して傾斜した第2の部分を有する、上記[1]〜[]のいずれか1項に記載のだし抽出用装置。
【0015】
]前記管状の本体の表面を覆う蒸気ジャケットを有する、上記[1]〜[]のいずれか1項に記載のだし抽出用装置。
【0016】
]前記スクリューコンベアの羽根の上端の鉛直方向の位置が、前記管状の本体の上端の開口部の鉛直方向の位置と同じ、又は前記開口部の鉛直方向の位置よりも高い、上記[1]〜[]のいずれか1項に記載のだし抽出用装置。
【0021】
]だし抽出用の材料からだしを抽出し、前記だしが水に溶け出しただし汁を抜出すとともに、前記材料の残渣を排出するだし抽出方法であって、タンク内に収納された前記材料からだしを抽出する工程と、前記タンクの底部に連結された管状の本体に収容されたスクリューコンベアを停止させた状態で、前記スクリューコンベアの羽根の上に前記材料の残渣を堆積させ、前記羽根の下に形成された空間を介して、前記管状の本体に取付けられただし汁抜出口から前記だし汁を抜出す工程と、を含む、だし抽出方法。
[9]前記だし汁を抜出した後、前記スクリューコンベアを回転させることにより、前記羽根の上に堆積した残渣を前記管状の本体の残渣排出口まで搬送し、排出する工程、を含む、上記[8]に記載のだし抽出方法。
【0023】
10]前記だしの抽出過程及び前記だし汁の抜出し過程において、前記管状の本体を加熱する、上記[8]又は[9]に記載のだし抽出方法。
【0024】
11]前記だしの抽出過程において前記タンクの内部を密閉することにより、前記タンク内の水から発生した水蒸気を前記タンク内で圧縮し、前記水蒸気の圧力により、前記だしの抽出を促進する、上記[8]〜[10]のいずれか1項に記載のだし抽出方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、経済的、衛生的、かつ安全なだしの生産を行うことができるだし抽出用装置、及びだし抽出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、実施の形態に係るだし抽出用装置、及びタンクの外観図である。
図2図2は、実施の形態に係るだし抽出用装置の垂直断面図である。
図3図3は、だし抽出用装置が連結されるタンクの垂直断面図である。
図4図4は、だし汁の抜出し及び残渣の排出の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(だし抽出用装置の構成)
図1は、実施の形態に係るだし抽出用装置1、及びタンク2の外観図である。図2は、実施の形態に係るだし抽出用装置1の垂直断面図である。図3は、だし抽出用装置1が連結されるタンク2の垂直断面図である。
【0031】
だし抽出用装置1は、だし抽出用の牛、豚、鶏等の動物の骨及び水を収容するタンクの底部に連結される装置であって、骨から抽出されるだしが水に溶け出しただし汁(抽出液)を抜出すとともに及び骨の残渣(スープ抽出後に残る不溶物)を排出することのできる装置である。
【0032】
だし抽出用装置1は、タンク2の底部に連結された、だし抽出の過程においてタンク2からだし汁及び残渣が流入する管状の本体10と、本体10に設けられた、だし汁を抜出すためのだし汁抜出口12と、本体10に設けられた、残渣を排出するための残渣排出口13と、本体10の内部に設置された、本体10の内部に堆積した残渣を残渣排出口13に向けて搬送するためのスクリューコンベア11と、を有する。
【0033】
スクリューコンベア11は、回転軸11aと回転軸11aに螺旋状に巻回された羽根11bを有する。スクリューコンベア11は、だし汁の抜出しを助ける役割と、残渣の排出を助ける役割を併せ持つ。
【0034】
まず、スクリューコンベア11のだし汁の抜出しを助ける役割について具体的に説明する。だし汁をだし汁抜出口12から取出す際、本体10内には細かい砂状の骨片である残渣が流入し、堆積する。このため、スクリューコンベア11がなければ、タンク2からだし汁抜出口12までの経路が堆積した残渣により塞がれ、また、残渣がだし汁抜出口12から大量に流れ出して、だし汁抜出口12に接続された図示されていない配管を詰まらせるため、だし汁を抜出すことができない。
【0035】
一方、スクリューコンベア11が設けられている場合、スクリューコンベア11の羽根11bが残渣の落下を抑える邪魔板として機能するため、羽根11bの下には残渣が入り込み難く、だし汁の抜出経路となる空間ができる。また、だし汁抜出口12からの残渣の流出を抑えることができる。このため、だし汁の抜出しが容易になる。
【0036】
なお、スクリューコンベア11の羽根11bがだし汁の抜出経路を形成するため、だし汁抜出口12の鉛直方向の位置が、羽根11bの上端の鉛直方向の位置と下端の鉛直方向の位置の間にある場合、つまり、だし汁抜出口12が本体10の第1の部分10aに設けられている場合、タンク2からだし汁抜出口12までのだし汁の抜出経路が形成されやすい。
【0037】
特に、本体10の上端の開口部からの鉛直方向の距離(タンク2の底面からの鉛直方向の距離)がなるべく短い方が好ましく、例えば、200mm以下であることが好ましい。これは、だし汁抜出口12よりも低い領域(図2におけるだし汁抜出口12の下方の領域)の全てが残渣で埋められてしまった場合、残渣がだし汁抜出口12から流れ出易くなるためである。
【0038】
なお、タンク2の底にだし汁抜出口を取り付けた場合、タンク2の底に堆積した残渣が障害となり、だし汁を抜出すことができない。
【0039】
また、スクリューコンベア11の羽根11bにより、より効果的に残渣の落下を抑えるためには、羽根11bの上端の鉛直方向の位置が、本体10の上端の開口部の鉛直方向の位置(タンク2の底面の鉛直方向の位置)と同じ、又はそれよりも高いことが好ましい。
【0040】
スクリューコンベア11の羽根11bと本体10の内壁との間隔は、好ましくは5mm以上80mm以下であり、例えば5mmである。この間隔が5mmよりも小さい場合、だし汁が羽根11bと本体10の内壁との間を流れにくくなる。また、80mmよりも大きい場合、残渣が羽根11bと本体10の内壁との間を流れ易くなり、だし汁抜出口12から流れ出易くなる。
【0041】
スクリューコンベア11の羽根11bのピッチは、好ましくは100mm以上200mm以下であり、例えば150mmである。ピッチが100mm以上200mm以下の範囲にあるとき、だし汁の抜出し及び残渣の排出を効果的に助けることができる。
【0042】
なお、例えば、残渣排出機構にスクリューコンベア11を用いない場合には、残渣の落下を抑える邪魔板として、スクリューコンベア11の羽根11b以外の部材、例えば羽根11bと似た形状を有する螺旋状の板、を用いることができる。すなわち、スクリューコンベア11の羽根11b以外の部材からなる邪魔板を用いた場合であっても、だし汁の抜出しを助けることができる。
【0043】
次に、スクリューコンベア11の残渣の排出を助ける役割について具体的に説明する。スクリューコンベア11がなければ、細かい砂状の骨片である残渣は自重により本体10内に高密度で堆積するため、残渣の排出は極めて困難である。また、通常、だしを加圧抽出するため、上方向からの圧力により、堆積した残渣が締まり、より排出が難しくなる。
【0044】
一方、スクリューコンベア11が設けられている場合、上述のように、スクリューコンベア11の羽根11bが残渣の落下を抑える邪魔板として機能するため、堆積した残渣の高密度化を抑えることができる。また、残渣の排出時に羽根11bを回転させて、残渣を残渣排出口13に向けて搬送することができるため、残渣を容易に排出することができる。
【0045】
スクリューコンベア11は、だし抽出用装置1の外部に設置された外部撹拌モーター19により回転させられる。外部撹拌モーター19がだし抽出用装置1の外部に設置されているため、スクリューコンベア11の回転速度(残渣の排出速度)や回転方向の制御を容易に行うことができる。
【0046】
図2に示される例では、外部撹拌モーター19のスプロケット20の回転がスプロケットチェーン22を介してスクリューコンベア11の回転軸11aに固定されたスプロケット21に伝わり、スクリューコンベア11が回転する。なお、図2に示されるように、スプロケット21の取り付けられた回転軸11aの下端は本体10の外部にあるが、本体10の気密性は守られている。
【0047】
だし抽出用装置1は、スクリューコンベア11により自動的に残渣を排出できるので、大容量のタンク2を用いて大量の骨から大量のだしを一度に抽出し、だし汁として抜出すことができる。これにより、だし汁の製造コストを低減することができる。
【0048】
本体10は、図1、2に示されるように、スクリューコンベア11の羽根11bが収容される第1の部分10aと、第1の部分10aの下側に設けられ、回転軸11a又は第1の部分10aに対して所定の角度θで傾斜した第2の部分10bを有することが好ましい。
【0049】
第2の部分10bには、スクリューコンベア11の羽根11bと本体10の内壁との間を通って流れ落ちた残渣を貯めておくことができる。また、第2の部分10bは、水平方向からの傾きを有するため、上部からの圧力による第2の部分10b内の残渣の圧縮を緩和することができ、また、残渣の排出時に残渣を滑らせることができる。
【0050】
第2の部分10bの傾斜角度θは、30°以上50°以下であることが好ましい。水平方向からの傾きが50°よりも大きい場合、残渣の排出時に残渣が第2の部分10bの内壁を滑り難くなり、30°よりも小さい場合、スクリューコンベア11の回転軸11aとの干渉が大きくなるため、第2の部分10bの容量が小さくなり、だし抽出の際に貯めることのできる残渣の量が少なくなる。
【0051】
残渣排出口13は、残渣の排出を容易にするため、本体10のタンク2の反対側の端部に設けられた、開閉可能な蓋14を有する開口部であることが好ましい。図1、2に示される例では、蓋14は、クランプ15により固定される耐圧特性を有する蓋である。また、蓋14の代わりに、スリースバルブやボールバルブ等の他の開閉機構を用いて残渣の排出を行ってもよい。なお、残渣排出口はスクリューコンベア11の下方に位置しなければならないため、残渣排出口をタンク2の底に設けたとしても、そこから残渣を排出することはできない。
【0052】
だし抽出用装置1は、本体10を加熱するための加熱装置として、例えば、本体10の表面を覆う蒸気ジャケット16を有する。本体10を加熱することにより、だしの抽出過程及びだし汁の抜出し過程における本体10内のだし汁の凝固や、だし汁及び残渣の腐敗を防ぐことができる。蒸気は蒸気流入口17から蒸気ジャケット16内に送られ、蒸気が冷えることにより生じる水は水排出口18から排出される。なお、蒸気ジャケット16の代わりに電気ヒーター等の他の加熱装置を用いてもよい。
【0053】
だし抽出用装置1が連結されるタンク2の形状は特に限定されず、縦型であっても横型であってもよい。また、タンク2の容量も特に限定されず、例えば、10トン用のタンクを用いることができる。
【0054】
図3は、だし抽出用装置1の本体10とタンク2の関係を示す。タンク2は蓋21を有し、だしを抽出する際に蓋21を閉めることにより、タンク2内を密閉することができる。
【0055】
また、タンク2内に撹拌機22が備えられていることが好ましい。撹拌機22は、回転軸22aと撹拌部22bを有する。だしを抽出する際に、タンク2内の骨及び水を撹拌機で撹拌することにより、水温を均一に保ち、均一な品質のだし汁をより効率的に得ることができる。
【0056】
常温でもだしを抽出してだし汁を得ることができるが、効率的にだしを抽出するために、タンク2を加熱することが好ましい。加熱には蒸気ジャケット20を用いることができる。
【0057】
(だし汁の抜出し及び残渣の排出方法)
以下、本実施の形態に係るだし抽出用装置1を用いただし汁の抜出し及び残渣の排出方法の一例について説明する。
【0058】
図4は、だし汁の抜出し及び残渣の排出の流れを示すフローチャートである。以下、図4のフローチャートをも用いてだし汁の抜出し及び残渣の排出方法を説明する。
【0059】
まず、タンク2の蓋21を開け、牛、豚、鶏等の動物の骨と水をタンク2内に投入する(ステップS1)。牛骨等のサイズの大きい骨は、抽出を効率的に行うため、だし抽出用装置1の本体10の内径に応じたサイズに切断してからタンク2内に投入することが好ましい。
【0060】
タンク2内に供給される水の重量は、通常、骨の重量以上である。例えば、骨と水の重量比は1:1.15に設定される。また、通常、水を投入した後に骨が投入される。
【0061】
次に、タンク2内に収容された骨からだしを抽出する(ステップS2)。このとき、蒸気ジャケット16、20内に高温の蒸気を供給して、タンク2及びだし抽出用装置1の本体10を加熱する。タンク2を加熱することにより、タンク2内の水から発生した水蒸気が密閉されたタンク2内で圧縮され、その水蒸気の圧力により、だしの抽出を促進することができる。
【0062】
また、タンク2に備えられた攪拌機22により、骨及び水を30〜60分ごとに所定の時間、所定の回数で撹拌して、熱伝導を速やかに進め、均一な品質のだし汁を得る。ここで、所定の時間、所定の回数とは、撹拌による濁りが発生しない程度の撹拌時間及び撹拌回数であり、例えば30秒以上1分以下で5回以上10回以下である。
【0063】
次に、だし抽出用装置1のだし汁抜出口12からだし汁を抜出す(ステップS3)。
【0064】
次に、だし抽出用装置1の残渣排出口13の蓋14を開いて、スクリューコンベア11を動作させ、残渣排出口13から残渣を排出する(ステップS4)。残渣排出口13から排出された残渣は、例えば、だし抽出用装置1外に設置されたコンベアーにより搬送される。
【0065】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態によれば、外部に露出しない環境で自動的に大量のだし汁の抜出し及び残渣の排出を行うことができるため、経済的、衛生的、かつ安全にだしを生産することができる。つまり、段落[0005]〜[0008]で述べた課題を解決することができる。また、上記実施の形態に係るだし抽出用装置は、人力による作業を必要としないため、コンピュータを用いた自動制御等の総合生産方式による完全自動化を行うことができる。
【0066】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0067】
また、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0068】
1 だし抽出用装置
2 タンク
10 本体
10a 第1の部分
10b 第2の部分
11 スクリューコンベア
11a 回転軸
11b 羽根
12 だし汁抜出口
13 残渣排出口
14 蓋
【要約】
【課題】経済的、衛生的、かつ安全なだしの生産を行うことができるだし抽出用装置、及びだし抽出方法を提供する。
【解決手段】一実施の形態として、だし抽出用の材料及び水を収容するタンク2の底部に連結される、材料から抽出されるだしが水に溶け出しただし汁を抜出すだし汁抜出部と材料の残渣を排出する残渣排出部とを備えただし抽出用装置であって、だし汁抜出部は、タンク2の底部に連結される、だし抽出の過程においてタンク2からだし汁及び残渣が流入する管状の本体10と、管状の本体10の内部に設置されたスクリューコンベア11と、管状の本体10に設けられた、管状の本体10内のだし汁を抜出すためのだし汁抜出口12と、を含み、残渣排出部は、スクリューコンベア11と、管状の本体10に設けられた、残渣を排出するための残渣排出口13と、を含む、だし抽出用装置1を提供する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4