(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178489
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】雑音調整を有するETシステム
(51)【国際特許分類】
H04B 1/04 20060101AFI20170731BHJP
H03F 1/32 20060101ALI20170731BHJP
H03F 1/06 20060101ALI20170731BHJP
H03F 3/24 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
H04B1/04 R
H03F1/32
H03F1/06
H03F3/24
H04B1/04 P
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-501714(P2016-501714)
(86)(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公表番号】特表2016-516353(P2016-516353A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】US2014024999
(87)【国際公開番号】WO2014159753
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年3月9日
(31)【優先権主張番号】61/783,665
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508233401
【氏名又は名称】クアンタンス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥロギ,セルジュ・フランソワ
【審査官】
佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−184866(JP,A)
【文献】
特表2001−522565(JP,A)
【文献】
特開平10−209770(JP,A)
【文献】
特開2011−55364(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/43282(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
H03F 1/06
H03F 1/32
H03F 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンベロープトラッキングトランシーバであって、
入力信号を受信し、増幅された出力信号を生成する電力増幅器を備え、前記電力増幅器は、電力を前記電力増幅器に供給する供給電圧を受けるように構成され、
前記電力増幅器を動作させるために、前記入力信号の推定振幅および圧縮レベルを示すフィードバック信号に基づき、電力供給制御信号を生成するように構成されたルックアップ回路と、
前記電力供給制御信号に基づき、前記供給電圧を前記電力増幅器に提供するように構成された電源と、
受信信号を受信し、前記受信信号の雑音マージンを表す雑音マージン信号を生成するように構成された受信器と、
前記雑音マージン信号に基づき、前記フィードバック信号を生成し、前記雑音マージンの減少を示す前記雑音マージン信号に応答して前記電力供給制御信号のフィルタリングを増強するためのフィルタ制御信号を生成し、前記雑音マージンの増加を示す前記雑音マージン信号に応答して前記電力供給制御信号のフィルタリングを減弱するためのフィルタ制御信号を生成するように構成された設定回路とを備える、エンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項2】
前記雑音マージン信号は、受信器により受信した受信信号の強度を示す受信信号強度指標に依存する、請求項1に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項3】
前記雑音マージン信号は、前記受信器が特定の雑音スペックを有する公共安全ネットワークと通信していることを示す公共安全指標に依存する、請求項1に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項4】
前記雑音マージン信号は、前記受信信号の誤り率に依存する、請求項1に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項5】
前記設定回路は、さらに、前記雑音マージンの増加を示す前記雑音マージン信号に応答して前記電力増幅器の雑音感受性を増強するように、前記電力増幅器のバイアスを調整するためのバイアス制御信号を生成し、前記雑音マージンの減少を示す前記雑音マージン信号に応答して前記電力増幅器の雑音感受性を減弱するように、前記電力増幅器のバイアスを調整するためのバイアス制御信号を生成するように構成されている、請求項1に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項6】
前記設定回路は、さらに、前記雑音マージンの減少を示す前記雑音マージン信号に応答して、1つ以上の送信周期において前記供給電圧を一定に維持するように、電源を制御する制御信号を生成するように構成されている、請求項1に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項7】
前記設定回路は、前記雑音マージンが増加していることに応答して前記圧縮レベルを増加するためのフィードバック信号を生成し、前記雑音マージンが減少していることに応答して前記圧縮レベルを減少するためのフィードバック信号を生成するように構成されている、請求項1に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項8】
エンベロープトラッキングトランシーバであって、
入力信号を受信し、増幅された出力信号を生成する電力増幅器を備え、前記電力増幅器は、電力を前記電力増幅器に供給する供給電圧を受けるように構成され、
前記入力信号の推定振幅に基づき、電力供給制御信号を生成するように構成されたルックアップ回路と、
前記電力供給制御信号に基づき、前記供給電圧を前記電力増幅器に提供するように構成された電源と、
受信信号を受信し、前記受信信号の雑音マージンを表す雑音マージン信号を生成するように構成された受信器と、
前記雑音マージン信号に基づき、前記電力増幅器と前記ルックアップ回路と前記電源とのうち少なくとも1つのパラメータを制御するように、1つ以上の制御信号を生成するように構成された設定回路とを備え、前記1つ以上の制御信号は、前記電源を制御し、前記雑音マージンの減少を示す前記雑音マージン信号に応答して前記電力供給制御信号のフィルタリングを増強し、前記雑音マージンの増加を示す前記雑音マージン信号に応答して前記電力供給制御信号のフィルタリングを減弱するためのフィルタ制御信号を含む、エンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項9】
前記1つ以上の制御信号は、前記雑音マージンが増加していることに応答して前記電力増幅器の電力効率を増加するように、前記パラメータを制御し、
前記1つ以上の制御信号は、前記雑音マージンが減少していることに応答して前記増幅された出力信号を減少するように、前記パラメータを制御する、請求項8に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項10】
前記雑音マージン信号は、受信器により受信した受信信号の強度を示す受信信号強度指標に依存する、請求項8に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項11】
前記雑音マージン信号は、前記受信器が特定の雑音スペックを有する公共安全ネットワークと通信していることを示す公共安全指標に依存する、請求項8に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項12】
前記雑音マージン信号は、前記受信信号の誤り率に依存する、請求項8に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項13】
前記設定回路は、さらに、前記雑音マージンの増加を示す前記雑音マージン信号に応答して前記電力増幅器の雑音感受性を増強するように、前記電力増幅器のバイアスを調整するためのバイアス制御信号を生成し、前記雑音マージンの減少を示す前記雑音マージン信号に応答して前記電力増幅器の雑音感受性を減弱するように、前記電力増幅器のバイアスを調整するためのバイアス制御信号を生成するように構成されている、請求項8に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項14】
エンベロープトラッキングトランシーバであって、
入力信号を受信し、増幅された出力信号を生成する電力増幅器を備え、前記電力増幅器は、電力を前記電力増幅器に供給する供給電圧を受けるように構成され、
前記電力増幅器を動作させるために、前記入力信号の推定振幅および電圧ヘッドルームの量を示すフィードバック信号に基づき、電力供給制御信号を生成するように構成されたルックアップ回路と、
前記電力供給制御信号に基づき、前記供給電圧を前記電力増幅器に提供するように構成された電源と、
前記増幅された出力信号の雑音測度を生成し、前記雑音測度に応答して前記フィードバック信号を生成するように構成されたフィードバック受信器とを備え、前記フィードバック信号は、閾値より下がった前記雑音測度に応答して前記電圧ヘッドルームの量を減少させ、前記閾値を超えた前記雑音測度に応答して前記電圧ヘッドルームの量を増加させる、エンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項15】
前記フィードバック受信器は、前記入力信号および前記増幅された出力信号を表す信号に基づき、前記雑音測度を決定するように構成されている、請求項14に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項16】
前記フィードバック受信器は、さらに、前記増幅された出力信号を表す前記信号をダウンサンプリングし、前記ダウンサンプリングされた信号と前記入力信号との比較を実行するように構成されている、請求項15に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項17】
前記雑音測度は、隣接チャネル電力を表す、請求項14に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項18】
前記電力増幅器の出力と少なくとも1つのアンテナとの間に結合されるデュプレクサフィルタをさらに備える、請求項14に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項19】
前記電力増幅器の出力と少なくとも1つのアンテナとの間に結合されるカプラをさらに備え、前記カプラは、結合信号を生成するように構成される、請求項14に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【請求項20】
フィードバック受信器は、前記入力信号および前記結合信号に依存して前記雑音測度を生成する、請求項19に記載のエンベロープトラッキングトランシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2013年3月14日に出願され、「雑音調整を有するETシステム」と題された米国仮特許出願第61/783665号に基づく優先権の利益を主張し、その開示の全体が引用により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
本開示は、無線周波トランシーバに関し、特に、無線周波トランシーバに用いられるエンベロープトラッキングシステムに関する。
【0003】
エンベロープトラッキング(ET)システムは、一般に、電力効率が重要である無線機の無線周波(RF)送信部、たとえば携帯電話に用いられる携帯無線機に使用される。典型的なETシステムは、可変電源を利用するRF電力増幅器(PA)を含む。この可変電源は、変調振幅に追跡して動的に変化する供給電圧をPAに供給する。一般的に、このようなETシステムの目的は、低いヘッドルームを用いてPAを動作させることによって、効率を改善することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
実施形態は、所望の雑音性能および電力効率を達成するようにエンベロープトラッキングパラメータを調整するエンベロープトラッキングトランシーバを含む。第1実施形態において、エンベロープトラッキングトランシーバは、電力増幅器と、ルックアップ回路と、電源と、受信器と、設定回路とを備える。電力増幅器は、入力信号を受信し、増幅された出力信号を生成する。また、電力増幅器は、電力を電力増幅器に供給する供給電圧を受ける。ルックアップ回路は、電力増幅器を動作させるために、入力信号の推定振幅および圧縮レベルを示すフィードバック信号に基づき、電力供給制御信号を生成する。電源は、電力供給制御信号に基づき、供給電圧を電力増幅器に提供する。受信器は、受信信号を受信し、受信信号の雑音マージンを表す雑音マージン信号を生成する。設定回路は、雑音マージン信号に基づき、フィードバック信号を生成する。
【0005】
第2の実施形態において、エンベロープトラッキングトランシーバは、電力増幅器と、ルックアップ回路と、電源と、受信器と、設定回路とを備える。電力増幅器は、入力信号を受信し、増幅された出力信号を生成する。また、電力増幅器は、電力を電力増幅器に供給する供給電圧を受ける。ルックアップ回路は、入力信号の推定振幅に基づき、電力供給制御信号を生成する。電源は、電力供給制御信号に基づき、供給電圧を電力増幅器に提供する。受信器は、受信信号を受信し、受信信号の雑音マージンを表す雑音マージン信号を生成する。設定回路は、雑音マージン信号に基づき、電力増幅器とルックアップ回路と電源とのうち少なくとも1つのパラメータを制御するように、1つ以上の制御信号を生成する。
【0006】
第3の実施形態において、エンベロープトラッキングトランシーバは、電力増幅器と、ルックアップ回路と、電源と、ィードバック受信器とを備える。電力増幅器は、入力信号を受信し、増幅された出力信号を生成する。また、電力増幅器は、電力を電力増幅器に供給する供給電圧を受ける。ルックアップ回路は、電力増幅器を動作させるために、入力信号の推定振幅および圧縮レベルを示すフィードバック信号に基づき、電力供給制御信号を生成する。電源は、電力供給制御信号に基づき、供給電圧を電力増幅器に提供する。フィードバック受信器は、増幅された出力信号の雑音測度を生成し、生成された雑音測度に応答してフィードバック信号を生成する。
【0007】
本明細書は、すべての特徴および利点を含むように記載しておらず、特に、図面および明細書を鑑みて多くの特徴および利点を追加できることは、当業者にとって明らかであろう。また、留意すべきことは、本明細書に使用された用語は、主として読み易さおよび説明の目的のために選択されたものであり、本発明の主旨を限定または制限するために選択されたものではないことである。
【0008】
以下の詳細な説明を添付の図面と併せて考慮することによって、本明細書により開示された実施形態からの教示を容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ETトランシーバの第1実施形態を示す回路図である。
【
図2】ETトランシーバの第2実施形態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
さまざまな実施形態に関連した図面および以下の説明は、単に例示のみである。留意すべきことは、以下の説明から、本明細書に開示された構造および方法の代替実施形態は、本明細書に説明した原理から逸脱することなく、実行可能な代替物として使用することができることを容易に認識することができることである。
【0011】
添付の図面に示されている例示を参照して、いくつかの実施形態を詳細に説明する。なお、実用上類似または同様の参照番号は、図面に使用され、類似または同様の機能を示すことができる。図面は、例示のみの目的のために、さまざまな実施形態を示す。当業者なら、以下の説明から、本明細書に記載の原理から逸脱することなく、本明細書に例示された構造および方法の代替的な実施形態を使用できることを認識できるであろう。
【0012】
エンベロープトラッキングトランシーバは、雑音性能と電力効率との間に所望のトレードオフを達成するように、エンベロープトラッキングパラメータを動的に調整する。具体的に、トランシーバの送信信号および受信信号の雑音性能を犠牲にすることによって、送信器のより良い電力効率を得ることができる。より高いレベルの雑音が許容される場合に、エンベロープトラッキングトランシーバは、より良い電力効率を達成するために、雑音性能を犠牲にしながら、送信パラメータを動的に調整する。より低いレベルの雑音が望まれる場合に、エンベロープトラッキングトランシーバは、より良い雑音性能を達成するために、効率を犠牲にしながら、パラメータを動的に調整する。
【0013】
図1は、ETシステムを備えるRFトランシーバ100の一実施形態を示している。送信変調器110は、デジタル送信信号101を生成する。このデジタル送信信号101は、RFアップコンバータ102によってアップコンバート入力信号103にアップコンバートされる。このアップコンバート入力信号103は、PA 104の入力端に提供される。PA 104は、アップコンバート入力信号103を増幅することにより、増幅RF信号105を生成する。PA 104からの増幅RF信号105は、デュプレクサフィルタ106を通過した後、出力信号107としてアンテナ112に到達する。アンテナ112は、さらに、受信信号113を受信する。受信信号113は、デュプレクサフィルタ106を通過した後、受信器114に到達する。デュプレクサフィルタ106は、増幅RF信号105とアンテナ112により受信した受信信号113との間にフィルタリングを提供する。カプラ108は、出力信号107を表す
結合信号115をフィードバック受信器116に提供する。
【0014】
また、デジタル送信信号101は、振幅推定器118に提供され、この振幅推定器118は、デジタル送信信号101の振幅を推定する。たとえば、一実施形態において、振幅推定器118は、振幅=√(I2+Q2)という関係式に基づき、振幅を推定する。式中、IおよびQは、それぞれデジタル送信信号101の同相成分および直交成分である。推定振幅信号119は、インデックスとしてルックアップテーブル120に提供される。ルックアップテーブル120は、推定振幅信号119およびフィードバック受信器116からのフィードバック信号117に基づき、信号121を出力する。ルックアップテーブル120には、典型的にはPA特徴付けによって決定された推定振幅信号119およびフィードバック信号117のさまざまな値に応じたPA供給電圧値を取込んでもよい。
【0015】
デジタル−アナログ変換器(DAC)122は、ルックアップテーブル120から出力されたPA供給電圧値をアナログ信号123に変換する。アナログ信号123は、ET電源124を制御して、特定の電圧たとえば供給電圧125をPA 104に出力する。よって、PA 104は、低いヘッドルームで効率良く動作することができる。一実施形態において、遅延調整回路(図示せず)は、ET電源124またはRFアップコンバータ102に遅延時間を挿入することによって、ET電源124により提供された供給電圧125と、PA 104の出力端からの増幅RF信号105との間の適切な時間整列を確保する。
【0016】
ルックアップテーブル120内の値は、フィードバック信号117によって指定された所望の圧縮レベルに合わせて調整することができる。圧縮とは、PA 104の電圧作動ヘッドルームを意味する。たとえば、一実施形態において、ルックアップテーブル120内の値は、ルックアップテーブル120内の値にxを乗算することによって調整される。xが1未満の場合、圧縮が増加され、xが1より大きい場合、圧縮が減少される。たとえば、x=0.9の場合、PA 104に供給される供給電圧125は、10%に効果的に減少される。x=1.1の場合、PA 104に供給される供給電圧125は、10%に効果的に増加される。所望の圧縮レベルは、一般的には、PAおよびシステムの特徴付けによって決定される。良好な効率を得るために、PA 104が高圧縮レベルで作動されてもよいが、PA 104からの出力信号が許容可能な歪みレベルを超えてはならない。さもなければ、許容可能な歪みレベルを超えた場合、歪みレベルが許容可能になるまで圧縮レベルを低下しなければならない。隣接チャネル電力(ACP)は、PAの歪みを示す一般的な指標である。代替的に、フィードバック信号117は、ルックアップテーブル120内の値を調整するの代わりに、振幅推定器118のパラメータを調整することによって、圧縮を制御してもよい。たとえば、振幅推定器の出力にx値を乗算して、xが1未満の場合に圧縮が増加され、xが1より大きい場合に圧縮が減少されるようにしもよい。
【0017】
フィードバック受信器116は、圧縮を制御するために、送信信号101およびカプラ108を介して受信した結合信号115に基づき、フィードバック信号117を生成する。フィードバック受信器116は、通常の送信動作中に連続的に動作し、または送信動作中に定期的に動作し、または較正モード中に動作する。フィードバック受信器116は、結合信号115をダウンコンバートすることによって、ダウンコンバートされたベースバンド信号を回復する。フィードバック受信器116は、ダウンコンバートされた信号を評価し、出力信号107の歪みを表す信号115の歪みを測定する。たとえば、一実施形態において、フィードバック受信器116は、隣接チャネルの電力を監視すること(たとえば、高速フーリエ変換を行い、信号115の所望周波数のチャネルの電力と隣接チャネルの電力との比を計算すること)によって、ACPを計算する。一実施形態において、フィードバック受信器116は、送信変調器110によって生成された所望のベースバンド送信信号101と比較することによって、結合信号115の曲線における誤差を測定し、たとえば最小平均二乗技術を用いて、これらの信号間の差を算出する。このような歪み評価に基づき、フィードバック受信器116は、フィードバック信号117を提供することによって、ルックアップテーブル120内の値を調整する。これにより、圧縮レベルが十分低く調整され、歪みレベルが許容可能であることを保証する。
【0018】
図1に示されたトランシーバ100のようなETシステムにおいて、PA 104は、所望のRF送信帯域の外側に位置するいくつかの雑音を生成することがある。これらの雑音は、(a)PA 104に固有のAM−AMおよびAM−PM特性、(b)低い供給電圧ヘッドルームを用いてPA 104を動作させることによって生じた非線形度、(c)可変供給電圧を生成するためのPAモデルの不完全性、および(d)ET電源124の帯域幅制限を含む多数の要因によって生成される。
【0019】
特に、生成された雑音がRF受信帯域に含まれた場合、トランシーバのRF受信器114が受信信号113を受信するときの感度を低下することができる。多くの場合、携帯電話の携帯無線機に使用された無線システムは、全二重(すなわち、RF受信器114が送信器と同時に動作する)である。したがって、PA 104により生成された雑音は、動作中に受信器114に与えることができる。PA 104の圧縮を増加するときに、受信信号113の受信帯域内の雑音を増加することがある。デュプレクサフィルタ106は、この雑音を制限するように機能するが、そのフィルタリングがまだ不十分である可能性がある。
【0020】
図2は、ETトランシーバ200の第2の実施形態を示している。ETトランシーバ200において、RF受信器114の感度の低下を制限するために、エンベロープトラッキングシステムのパラメータが、受信径路における許容雑音(受信雑音マージン)の関数として調整される。このシステムは、設定ブロック254および雑音マージン推定器252を備える以外、
図1のものと同様である。よって、前述したいくつかの詳細を省略する。
【0021】
一般的に、現代の無線システムにおいて、無線回線の品質は、たとえば雑音マージン推定器252により監視される。回線の品質は、受信信号の強度もしくはビット誤り率またはフレーム誤り率などの無線回線パラメータを用いて評価されることができる。したがって、雑音マージン推定器252は、RF受信器114の受信雑音マージンを推定することができ、設定ブロック254に1つ以上のフィードバック信号251および253を提供することができる。それに応じて、設定ブロック254は、エンベロープトラッキングシステムのパラメータを調整する。
【0022】
一般的に、受信雑音マージンは、無線状態の変化に応じて動的に変化する。たとえば、多くのシステムは、高データレート伝送のために送信器を使用する場合、高い受信雑音マージンで動作する。最も高いデータレートは、悪い受信条件または最低受信条件にほとんど使用されない。高データレートにおいて、送信器は、最高電力レベルで動作する。よって、効率的なPAからは、全体的電力の実質的な節約が実現される。これらの条件下では、受信雑音マージンが高いため、設定ブロック254は、公称よりも高い受信帯域の雑音を許容しながら、効率を最大化するように、ETシステムのパラメータを調整する。逆に、無線条件が悪いと、受信雑音マージンが低くなり、設定ブロック254は、PA効率を犠牲にしても受信帯域の雑音を最小化するように、ETシステムのパラメータを調整する。
【0023】
一実施形態において、雑音マージン推定器252は、受信雑音マージンの推定値として、受信信号の強度指標(RSSI)レベル251を設定ブロック254に提供する。信号251から高レベル(たとえば、雑音マージンの閾値を超える)のRSSIが検出された場合、設定ブロック254は、受信帯域雑音を犠牲にしても効率を増加するように、ETシステムのパラメータを調整する。その理由は、高レベルのRSSIがRF受信器の入力端における高い受信雑音マージンに対応するため、付加的な雑音を許容することができるからである。たとえば、一実施形態において、設定ブロック254は、圧縮を増加するようにルックアップテーブル120のパラメータを調整することができ、制御信号257を介してET電源124のフィルタリングを低減することができ、および/または制御信号259を介して電力増幅器のバイアスを調整することができる。受信帯域雑音および効率に対して行われたこれらの調整の効果は、以下にさらに詳細に説明する。
【0024】
逆に、信号251から低レベル(たとえば、雑音マージンの閾値を下回る)のRSSIが検出された場合、設定ブロック254は、効率を犠牲にしても受信帯域雑音を低減するように、ETシステムのパラメータを調整する。その理由は、低レベルのRSSIがRF受信器の入力端における低い受信雑音マージンに対応するため、多くの付加的な雑音を許容することができないからである。たとえば、一実施形態において、設定ブロック254は、ルックアップテーブル120のパラメータを調整することによって、圧縮を増加し、制御信号257を介してET電源124のフィルタリングを増強し、および/または制御信号259を介して電力増幅器のバイアスを調整することができる。以下、受信帯域雑音および効率に対して行われたこれらの調整の効果をさらに詳細に説明する。
【0025】
別の実施形態において、雑音マージン推定器252は、システムが公共安全ネットワークに存在するか否かを検出する。検出結果は、セルラ基地局を介して無線機に通信することができる。この場合、追加の発射および雑音要件を無線機に追加してもよい。一実施形態において、雑音マージン推定器252は、PA 104からの発射および雑音を低減すべきであることを設定ブロック254に指示する公共安全指標(PSI)信号253を設定ブロック254に提供する。設定ブロック254は、発射および雑音を低減するために、効率をトレードオフしながら、ETパラメータを調整することができる。
【0026】
さらに他の実施形態において、雑音マージンを表す異なる信号、たとえば、ビット誤り率またはフレーム誤り率を表す信号または上記要素の組合わせを表す信号を設定ブロック254に提供することができる。
【0027】
設定ブロック254は、雑音マージンに基づき、ETシステムのさまざまなパラメータを調整することができる。たとえば、前述したように、設定ブロック254は、ルックアップテーブル120を介してPA 104の圧縮を増強または減弱することができ、フィードバック信号255を介して、(受信雑音の増加または減少に応じて)効率を増加または減少することができる。代替的には、前述したように、設定ブロック254は、振幅推定器118のパラメータを調整することによって、圧縮を制御することができる。
【0028】
PAの圧縮をより低くすれば、供給電圧を印加した場合、PAのゲインに変化がより少なくなる。したがって、ルックアップテーブル120からPA 104に供給される供給電圧125までの経路におけるエラーは、PA 104のゲインを不利に変化させた場合に、通常雑音および歪みを引起す。PAの圧縮をより低くした場合、より少ない雑音および歪みを引起す。しかしながら、PAの圧縮をより低くした場合、PA 104は、より低い効率で動作する。逆に、PAの圧縮をより高くすれば、供給電圧を印加した場合、PAのゲインに変化がより多くなる。したがって、PAの圧縮をより高くした場合、PA 104に印加した供給電圧における誤差がより多くの雑音および歪みを引起す。しかしながら、PAの圧縮をより高くした場合、PA 104は、より高い効率で動作する。
【0029】
また、設定ブロック254は、制御信号257をフィルタリングすることによって、ET電源124内で、電圧制御信号123のフィルタリングを調整してもよい。このフィルタリングは、ET電源124への制御帯域幅を制限するために使用される。これにより、ET電源124が急激な電圧変化を生成し、この急激な電圧変化をPA 104に与えることが防止されるため、雑音が低減される。このフィルタリングがない場合、ET電源124内の固有の帯域幅制限により、急激な電圧変化が誤って生成されるため、PA 104に雑音が生成される。しかしながら、フィルタリングを減弱した場合、ET電源124からより低い供給電圧をPA 104に提供することを達成することができるため、効率を増加する。よって、設定ブロック254は、受信雑音マージンが低い場合、電圧制御信号123にたいするフィルタリングをより大きくするように指示することができ、受信雑音マージンが高い場合、電圧制御信号123にたいするフィルタリングをより小さくするように指示することができる。
【0030】
また、設定ブロック254は、バイアス制御信号259を介して、PA 104のバイアスを調整してもよい。PA 104のバイアスに対する制御は、PA 104のAM/AM特性およびAM/PM特性を変更することができる。いくつかのAM/AM形状は、雑音の生成に対する高い感受性を有するだけではなく、より高い効率を有することもできる。
【0031】
さらに、設定ブロック254は、動的なETシステムを完全に無効にして、PA 104に静的な供給電圧を提供するように、ET電源124に指示することができる。このことは、送信性能に関係なく、同一のPA供給電圧値を提供するように、ルックアップテーブル120を調整することによって達成することができる。代替的には、特定の送信期間中にPAの供給電圧を一定に維持し、PA 104からの出力性能が変化している期間中にPAの供給電圧を変化してもよい。このように、動的なETシステムの無効化は、ET電源124に関連した雑音を低減することができ、受信雑音マージンが低いと示された場合、設定ブロック254により指令されることができる。
【0032】
当業者は、本開示を読むことにより、雑音調整を有するエンベロープトラッキングシステムに追加的な代替設計ができるというころを理解するであろう。したがって、特定の実施形態および応用が例示され説明してきたが、本明細書に説明された実施形態は、本明細書に開示された明確な構成および要素に限定されず、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された方法および装置の配置、動作および詳細に対して実施され得るさまざまな修正、変更および変形は、当業者にとって明らかであることは、理解すべきである。