(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Xが、ハロゲン原子、C1〜10アルキル基、C7〜20アラルキル基、C6〜20アリール基、またはC1〜20炭化水素置換されたアミノ基を表し、rが1より大きい場合はXの意味は互いに独立である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属錯体。
前記捕捉剤c)が、第1〜13族の金属またはメタロイドのヒドロカルビル、またはそれと、第15族または第16族の原子を含む少なくとも1種の立体障害のある化合物との反応生成物である、請求項10に記載の触媒系。
少なくとも1種のオレフィン性モノマーを重合させることによってポリマーを製造する方法であって、前記モノマーを、請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属錯体、または請求項10または11に記載の触媒系と接触させることを含む、製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この目的は、式(1)の金属錯体を用いて達成される。
【化1】
式中、
Mは、第4〜6族の金属であり、
R
1は、第15族のヘテロ原子を含む置換基を意味しているが、そのヘテロ原子を介してR
1がイミンの炭素原子に結合されており;
R
2〜R
5は、同一であるか、または異なっていて、それぞれが、水素原子、場合によっては置換されたC1〜10アルキル基、場合によっては置換されたC1〜10アルコキシ基、場合によっては置換されたC6〜20アリール基、場合によっては置換されたC6〜20アリールオキシ基、場合によっては置換されたC7〜20アラルキル基、場合によっては置換されたC7〜20アラルキルオキシ基、場合によっては置換されたC1〜20炭化水素基で置換されたシリル基、C1〜20炭化水素置換されたアミノ基を表すか、または隣接したR
2〜R
5が、相互に結合して環を形成してもよく;
R
6〜R
9は、同一であるか、または異なっていて、それぞれが、水素原子、ハロゲン原子、場合によっては置換されたC1〜10アルキル基、場合によっては置換されたC1〜10アルコキシ基、場合によっては置換されたC6〜20アリール基、場合によっては置換されたC6〜20アリールオキシ基、場合によっては置換されたC7〜20アラルキル基、場合によっては置換されたC7〜20アラルキルオキシ基、場合によっては置換されたC1〜20炭化水素基で置換されたシリル基、C1〜20炭化水素置換されたアミノ基を表すか、または隣接したR
6〜R
9が、相互に結合して環を形成してもよく;
Lは、場合によっては存在してよい中性のルイス塩基配位子であり、jは、中性の配位子Lの数を表す整数であり;ならびに
Xは、アニオン性の配位子であり、rは、アニオン性の配位子Xの数を表す整数である。
【0013】
M
好ましい実施態様においては、第4族の金属Mが、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはハフニウム(Hf)、最も好ましくはチタン(Ti)であり、最も好ましくはTiが+4の酸化状態にある。
【0014】
R1
本発明の好ましい実施態様においては、R
1が、一般式−NR
10R
11であって、R
10およびR
11が個々に、脂肪族C1〜10ヒドロカルビル、ハロゲン化脂肪族C1〜10ヒドロカルビル、芳香族C6〜20ヒドロカルビル、およびハロゲン化C6〜20芳香族ヒドロカルボニル残基の群から選択される、式(1)の金属錯体に関する。R
10は、場合によっては、R
11と共に、または基R
6〜R
9のいずれか一つ、特にR
9と共に、ヘテロサイクリック構造を形成する。R
1の好ましい例は、ジメチルアミド、ジイソプロピルアミド、ジシクロヘキシルアミド、およびN−ジメチルフェニルN−エチルアミドである。
【0015】
置換基
置換基R
2〜R
9および基Xのための、場合によっては置換されたC1〜10アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、およびn−デシル基が挙げられる。さらには、ハロゲン原子(特にフッ素原子)で置換された上述の置換基も例示でき、その具体例としては以下のものが挙げられる:フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロデシル基、トリクロロメチル基など。それらのなかでも、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、アミル基などが好ましい。
【0016】
R
2〜R
9および基Xのための、場合によっては置換されたC6〜20アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などが挙げられるが、それらの具体例としてはたとえば、以下のものが挙げられる:フェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,3,4,6−テトラメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、n−ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n−ヘキシルフェニル基、n−オクチルフェニル基、n−デシルフェニル基、n−ドデシルフェニル基、n−テトラデシルフェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基。さらに、たとえばハロゲン原子で、例えばフッ素原子で置換された上述の置換基もまた、例に挙げられる。好ましいアリール基としては、フェニル基が挙げられる。
【0017】
R
2〜R
9および基Xの、場合によっては置換されたC7〜20アラルキル基としては、ベンジル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基、ジフェニルメチル基などが挙げられるが、その具体例としては、たとえば次のものが挙げられる:ベンジル基、(2−メチルフェニル)メチル基、(3−メチルフェニル)メチル基、(4−メチルフェニル)メチル基、(2,3−ジメチルフェニル)メチル基、(2,4−ジメチルフェニル)メチル基、(2,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,6−ジメチルフェニル)メチル基、(3,4−ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n−プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n−ブチルフェニル)メチル基、(sec−ブチルフェニル)メチル基、(tert−ブチルフェニル)メチル基、(n−ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n−ヘキシルフェニル)メチル基、(n−オクチルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、(n−ドデシルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基、ジフェニルメチル基、およびハロゲンによって置換された上述の置換基、より具体的にはフッ素−置換されたアラルキル基。ベンジル基が、好ましい置換基の例に挙げられる。
【0018】
置換基R
2〜R
9および基Xのための、場合によっては置換されたC1〜10アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、およびn−デシルオキシ基が挙げられる。さらには、ハロゲンで置換されたアルコキシ基、より具体的にはフッ素原子−置換されたアルコキシ基(そのアルコキシ基がフッ素原子で置換されている)も例に挙げられる。好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基が例に挙げられる。
【0019】
置換基R
2〜R
9および基Xのための、場合によっては置換されたC6〜20アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、およびアントラセノキシ基が挙げられる。さらに、それらの具体例としては、以下のものが挙げられる:フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2,3−ジメチルフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、2,5−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、3,4−ジメチルフェノキシ基、3,5−ジメチルフェノキシ基、2,3,4−トリメチルフェノキシ基、2,3,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,6−トリメチルフェノキシ基、2,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基、3,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,4,5−テトラメチルフェノキシ基、2,3,4,6−テトラメチル−フェノキシ基、2,3,5,6−テトラメチルフェノキシ基、ペンタメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、n−プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、n−ブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、n−ヘキシルフェノキシ基、n−オクチルフェノキシ基、n−デシルフェノキシ基、n−テトラデシルフェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基、およびハロゲン原子で置換された上述の置換基。より具体的には、フッ素で置換されたアリールオキシ基が例に挙げられる。
【0020】
置換基R
2〜R
9および基Xのための、場合によっては置換されたC7〜20アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、ナフチルメトキシ基、アントラセニルメトキシ基、およびジフェニルメトキシ基が挙げられる。さらには、それらの具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる:ベンジルオキシ基、(2−メチルフェニル)メトキシ基、(3−メチルフェニル)メトキシ基、(4−メチルフェニル)メトキシ基、(2,3−ジメチルフェニル)−メトキシ基、(2,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,6−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(ペンタメチルフェニル)メトキシ基、(エチルフェニル)メトキシ基、(n−プロピルフェニル)メトキシ基、(イソプロピルフェニル)メトキシ基、(n−ブチルフェニル)−メトキシ基、(sec−ブチルフェニル)メトキシ基、(tert−ブチルフェニル)メトキシ基、(n−ペンチルフェニル)メトキシ基、(ネオペンチルフェニル)メトキシ基、(n−ヘキシルフェニル)メトキシ基、(n−オクチルフェニル)メトキシ基、(n−デシルフェニル)メトキシ基、(n−ドデシルフェニル)メトキシ基、ナフチルメトキシ基、アントラセニルメトキシ基、ジフェニルメトキシ基、およびハロゲンで置換された上述の置換基。より具体的には、フッ素原子で置換されたアラルキルオキシ基が例に挙げられる。ベンゾイルオキシ基が、好ましい置換基の例に挙げられる。
【0021】
置換基R
2〜R
9および基Xのための、C1〜20炭化水素で置換されたシリル基は、C1〜20炭化水素基で置換されたシリル基である。本明細書で使用するとき、炭化水素基には、たとえば以下のものが含まれる:C1〜10アルキル基、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基など、ならびにC6〜20アリール基たとえば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基など。そのようなC1〜20炭化水素で置換されたシリル基としては、たとえば以下のものが挙げられる:モノ置換されたシリル基たとえば、メチルシリル基、エチルシリル基、フェニルシリル基など、ジ置換されたシリル基たとえば、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジフェニルシリル基など、トリ置換されたシリル基たとえば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−sec−ブチルシリル基、トリ−tert−ブチルシリル基、トリ−イソブチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリ−n−ペンチルシリル基、トリ−n−ヘキシルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基など、好ましくはトリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、およびトリフェニルシリル基。さらには、その中で、炭化水素基がハロゲン原子、たとえば、フッ素原子で置換された、上述の置換されたシリル基も例として挙げられる。
【0022】
置換基R
2〜R
9および基Xのための、C1〜20炭化水素で置換されたアミノ基は、好ましくは、2個の炭化水素基を用いて置換されたアミノ基である。本明細書で使用するとき、炭化水素基には、たとえば以下のものが含まれる:C1〜10アルキル基たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基など、ならびにC6〜20アリール基たとえば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基など。そのようなC1〜20炭化水素で置換されたアミノ基としては、たとえば、以下のものが挙げられる:ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、ジ−イソブチルアミノ基、tert−ブチルイソプロピルアミノ基、ジ−n−ヘキシルアミノ基、ジ−n−オクチルアミノ基、ジ−n−デシルアミノ基、ジフェニルアミノ基など、好ましくは、ジメチルアミノ基、およびジエチルアミノ基。
【0023】
置換基R
2〜R
9および基Xのためのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子、好ましくはフッ素原子および塩素原子が挙げられる。
【0024】
R2〜R5
好ましい実施態様においては、R
2〜R
5は、同一であるか、または異なっていて、それぞれ、水素原子またはC1〜5アルキル基を表し、特にはそれぞれがメチルを表す。
【0025】
R6〜R9
好ましい実施態様においては、R
6〜R
9は、同一であるか、または異なっていて、それぞれ水素原子を表す。
【0026】
X
好ましい実施態様においては、Xは、以下のものを意味している:ハロゲン原子、C1〜10アルキル基、C7〜20アラルキル基、C6〜20アリール基、またはC1〜20炭化水素で置換されたアミノ基、より好ましくは、ハロゲン原子およびC1〜10炭化水素で置換されたアミノ基、最も好ましくはCl、F、Br、メチル、ベンジル、メチルトリメチルシリル、フェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、N,N−ジメチルアミノフェニル、ビス(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、トリフルオロフェニル、テトラフルオロフェニル、ペルフルオロフェニル、トリアルキルシリルフェニル、ビス(トリアルキルシリル)フェニル、およびトリス(トリアルキルシリル)フェニル。最も好ましいのは、Clまたはメチルである。2個以上のXの場合には、与えられる意味合いは独立している。
【0027】
r
アニオン性の配位子Xの数は、rで表され、金属の原子価とアニオン性の配位子の原子価とによって決まる。第5族および第6族の金属の原子価は、高くても+6であるので、好ましい触媒金属は、最も高い酸化状態(すなわち、4+)にある第4族の金属であり、好ましいアニオン性の配位子Xは、モノアニオン性(たとえば、ハロゲンまたはヒドロカルビル基、特にはメチルおよびベンジル)である。したがって、好ましい触媒成分には、橋かけされたシクロペンタジエニルアミジン配位子および2個のR
1、たとえば第4族金属に結合されたクロリド(またはメチル)配位子が含まれている。それとは対照的に、第5族および第6族の金属の最も高い酸化状態は、それぞれ5+および6+であって、電荷全体を中性にするためには、数がより多いか、またはより高い電荷を有するアニオン性の配位子が必要となるであろう。場合によっては、触媒成分の金属が、最高の酸化状態になっていない可能性もある。たとえば、チタン(III)成分は、1個だけのアニオン性の配位子を含むことになるであろうし、チタン(IV)成分では、2個のアニオン性の配位子Xを含むことになるであろう。
【0028】
L
Lが、エーテル、チオエーテル、アミン、三級ホスファン、イミン、ニトリル、イソニトリル、または二座または多座供与体であるような式(1)の金属錯体が好ましい。
【0029】
2個以上の配位子Lが存在している場合、それらは異なった意味合いを有していてもよい。
【0030】
式(1)の金属錯体中の中性の配位子の数「j」は0から、当業者に公知のように、18電子則を満足させる量までであってよい。好ましくは0〜2である。好ましい実施態様においては、中性の配位子の数Lは、0である。
【0031】
好適なエーテルは、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ベラトロール、2−エポキシプロパン、ジオキサン、トリオキサン、フラン、2,5−ジメチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、およびクラウンエーテルである。好適なチオエーテルは、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、チオフェン、およびテトラヒドロチオフェンである。好適なアミンは、たとえば以下のものである:メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、アリルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、トルイジン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピロール、ピペリジン、ピリジン、ピコリン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2,6−ジ(t−ブチル)ピリジン、キノリン、およびイソキノリン、好ましくは三級アミン、たとえば、トリアルキルアミン、ピリジン、ビピリジン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、および(−)−スパルテイン)。好適な三級ホスファンは、トリフェニルホスフィンおよびトリアルキルホスファンである。好適なイミンは、ケチミン、グアニジン、イミノイミダゾリジン、ホスフィンイミン、およびアミジンである。好適な二座配位子は、ジイミン、アルキルもしくはアリールジホスファン、ジメトキシエタンである。好適な多座配位子は、以下のものである:トリイミン(たとえばトリス(ピラゾリル)アルカン)、第13〜17族のヘテロ原子を含む環状多座配位子、たとえば、場合によっては第13〜17族のヘテロ原子を有するクラウンエーテル、場合によっては第13〜17族のヘテロ原子を有するアゾクラウンエーテル、場合によっては第13〜17族のヘテロ原子を有するホスファクラウンエーテル、第15〜16族のヘテロ原子と場合によっては第13〜17族のヘテロ原子との組合せを有するクラウンエーテル、ならびに第14〜17族のヘテロ原子を含むクラウンエーテル、またはそれらの組合せ。
【0032】
好適なニトリルは、式、R
1C≡Nのものであって、ここでR
1は、脂肪族ヒドロカルビル、ハロゲン化脂肪族ヒドロカルビル、芳香族ヒドロカルビル、およびハロゲン化芳香族ヒドロカルボニル残基の群から、個々に選択される。好ましいニトリルは、アセトニトリル、アクリロニトリル、シクロヘキサンジニトリル、ベンゾニトリル、ペンタフルオルベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジブロモベンゾニトリル、4−フルオロ−2−トリフルオロメチル、ベンゾニトリル、3−ピリジンカルボニトリルである。
【0033】
好適なイソニトリルは、式、R
2N≡Cのものであって、ここでR
1は、脂肪族ヒドロカルビル、ハロゲン化脂肪族ヒドロカルビル、芳香族ヒドロカルビル、およびハロゲン化芳香族ヒドロカルボニル残基の群から、個々に選択される。好ましいイソニトリルは、tert−ブチルイソシアニド(
tBuNC)、エチルイソシアノアセテート、p−トルエンスルホニルメチルイソシアニド、およびシクロヘキシルイソシアニド、好ましくはtert−ブチルイソニトリル(
tBuNC)である。
【0034】
好ましい中性のルイス塩基配位子Lとは、t−ブチルイソニトリル(
tBuNC)を意味している。
【0035】
プロセス
本発明はさらに、本発明における金属錯体を製造するためのプロセスにも関し、それには、式(2):
【化2】
[式中、R
1〜R
9は、先に挙げたのと同じ意味合いを有する]
の置換されたシクロペンタジエン化合物を、式(3):
MX
(r+2)L
j (3)
[式中、M、X、L、ならびにrおよびjは、やはり先に挙げたのと同じ意味合いを有し、これは、それらの基の好ましい意味合いにもあてはまる]
で表される金属化合物と反応させることが含まれる。
【0036】
式(3)の遷移金属化合物におけるXの意味合いについてはすでに説明した。XがC1〜5炭化水素置換されたアミノ基および/またはハロゲン原子である上記遷移金属化合物は、金属錯体の製造に好適に使用される。
【0037】
式(3)で表される遷移金属化合物としては、以下のものが挙げられる:テトラキス(ジメチルアミノ)チタン、テトラキス(ジエチルアミノ)チタン、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウム、塩化トリス(ジメチルアミノ)チタン、塩化トリス(ジエチルアミノ)チタン、塩化トリス(ジメチルアミノ)ジルコニウム、塩化トリス(ジエチルアミノ)ジルコニウム、塩化トリス(ジメチルアミノ)ハフニウム、塩化トリス(ジエチルアミノ)ハフニウム、二塩化ビス(ジメチルアミノ)チタン、二塩化ビス(ジエチルアミノ)チタン、二塩化ビス(ジメチルアミノ)ジルコニウム、二塩化ビス(ジエチルアミノ)ジルコニウム、二塩化ビス(ジメチルアミノ)ハフニウム、および二塩化ビス(ジエチルアミノ)ハフニウム。
【0038】
上述の反応は通常、その反応に対して不活性な溶媒の中で実施される。そのような溶媒としては、たとえば以下のものが挙げられる:非プロトン性溶媒、たとえば、芳香族炭化水素溶媒、たとえばベンゼン、トルエンなど;脂肪族炭化水素溶媒、たとえばヘキサン、ヘプタンなど;エーテル溶媒、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなど;アミド溶媒、たとえばヘキサメチルホスホリックアミド、ジメチルホルムアミドなど;極性溶媒、たとえばアセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど;ハロゲン化溶媒、たとえばジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなど、好ましくは芳香族炭化水素溶媒、たとえば、ベンゼン、トルエンなど;脂肪族炭化水素溶媒、たとえばヘキサン、ヘプタンなど。1種の溶媒、または2種以上の溶媒の混合物が使用される。使用される溶媒の量は、通常、式(2)で表される置換されたシクロペンタジエン配位子化合物1重量部あたり、1〜200重量部、好ましくは3〜50重量部の範囲である。
【0039】
この反応は、通常、式(2)で表される置換されたシクロペンタジエンを溶媒に添加し、次いでそれに、式(3)で表される遷移金属化合物を添加することによって実施することができる。そのようにして、式(1)で表される遷移金属錯体を得ることができる。
【0040】
その反応温度は、通常、−100℃から溶媒の沸点まで、好ましくは−80〜120℃の範囲である。
【0041】
2個のXがそれぞれ置換されたアミノ基である遷移金属錯体は、ハロゲン化合物、たとえば、クロロシラン化合物または塩化水素と反応させることによって、ハロゲン化物に転化させることができる。2個のXがハロゲン化物である遷移錯体は、その二ハロゲン化錯体をアルキルリチウムまたはアルキルマグネシウム化合物と反応させることによって、それらのアルキルに転化させてもよい。
【0042】
前駆体
本発明はさらに、先に挙げた式(2)の化合物にも関する。
【0043】
シクロペンタジエニル環の二重結合は、一般式(2)において局在化されていて、それには3種の二重結合異性体(2a)、(2b)および(2c)が含まれている筈である。
【化3】
【0044】
前駆体のためのプロセス
本発明はさらに、式(2)の化合物を製造するためのプロセスにも関し、そこでは、式(4)のニトリルまたは式(5)
【化4】
のオキシムを、有機リチウム化合物LiR
1または有機マグネシウム化合物Mg(Hal)R
1と反応させるが、
ここで、R
1〜R
9は、先に挙げたのと同じ意味合いを有し、
R
10は、水素原子、場合によっては置換されたC1〜10アルキル基、場合によっては置換されたC6〜20アリール基、場合によっては置換されたC7〜20アラルキル基、または、場合によっては置換されたC1〜20炭化水素で場合によっては置換されたシリル基を表すが、ここでそれらの基は、先に挙げた、より好ましい意味合いを有していてもよく、特にはR
10が、水素またはメチルを表し、そして
Halは、ハロゲン(ハライド)、好ましくはCl、Br、I、またはF、特にはBrを意味している。
【0045】
好ましくは、R
1=NMe
2には、リチウム化合物のLiR
1が、そしてR
1=N(iPr)
2またはN(Cyclohexyl)
2には、マグネシウム化合物のMg(Hal)R
1が使用される。
【0046】
求核剤としての有機リチウム化合物LiR
1または有機マグネシウム化合物と、式(4)のニトリルまたは式(5)のオキシムとの反応は、通常、その反応には不活性な溶媒の中で実施される。そのような溶媒としては、たとえば以下のものが挙げられる:非プロトン性溶媒、たとえば、芳香族炭化水素溶媒、たとえばベンゼン、トルエンなど;脂肪族炭化水素溶媒、たとえばヘキサン、ヘプタンなど;エーテル溶媒、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなど;アミド溶媒、たとえばヘキサメチルホスホリックアミド、ジメチルホルムアミドなど;極性溶媒、たとえばアセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど;ハロゲン化溶媒、たとえばジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなど。1種の溶媒、または2種以上の溶媒の混合物が使用される。使用される溶媒の量は、通常、式(4)または(5)の置換されたシクロペンタジエンの重量の、1〜200倍、好ましくは3〜50倍の範囲である。
【0047】
その反応温度は、通常、−100℃から溶媒の沸点まで、好ましくは−80〜120℃の範囲である。
【0048】
反応の後で、必要があれば、得られた反応混合物に水を添加する。次いでその混合物を、有機層と水層とに分離させて、目的の化合物を有機層の溶液として得る。前記反応において、水と親和性のある溶媒を使用したり、溶媒の使用量が少なかったりして、有機層と水層とが容易に分離できない場合には、その反応混合物に水に不溶性の有機溶媒たとえば、トルエン、酢酸エチル、クロロベンゼンなどを添加してから、分離を実施してもよい。式(2)で表されるイミン化合物は、たとえば、前記化合物の溶液を、水を用いて洗浄し、前記溶液を乾燥させ、次いで溶媒を蒸留除去し、さらには、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー処理などの方法で、精製することができる。
【0049】
本発明はさらに、式(1)の有機金属化合物、担持物質、および場合によっては捕捉剤および/または活性化剤を含む、担持触媒にも関する。
【0050】
担持物質とは、その中で本発明のプロセスが実施される不活性な炭化水素溶媒の中には不溶性である無機もしくは有機の化合物と定義される。好適な無機担体としては、シリカ、ハロゲン化マグネシウム、たとえばMgF
2、MgCl
2、MgBr
2、MgI
2、ゼオライト、およびアルミナが挙げられる。好適な有機担体としては、ポリマーが挙げられる。ポリマー担体のいくつかの非限定的な例は、ポリオレフィン、たとえばポリスチレン、ポリプロピレン、およびポリエチレン、重縮合物たとえばポリアミドおよびポリエステル、ならびにそれらの組合せである。
【0051】
本発明はさらに、以下のものを含む触媒系も提供する:
a)本発明による式(1)の金属錯体
および
b)活性化剤、および
c)場合によっては、捕捉剤(スカベンジャー)。
【0052】
化合物a)の好ましい金属錯体については先に述べた。捕捉剤c)は、本発明のプロセス中に存在している、触媒に対して有毒な不純物と反応する化合物である。
【0053】
本発明の好ましい実施態様においては、その触媒系の捕捉剤c)は、第1〜13族の金属またはメタロイドのヒドロカルビルであるか、またはそれと第15族または第16族の原子を含む、少なくとも1種の立体障害のある化合物との反応生成物である。立体障害のある化合物の第15族または第16族の原子が、プロトンを有しているのが好ましい。それらの立体障害のある化合物の例としては、以下のものが挙げられる:tert−ブタノール、イソプロパノール、トリフェニルカルビノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルアニリン、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルアニリン、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルアニリン、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、ジイソプロピルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジフェニルアミンなど。捕捉剤のいくつかの非限定的な例としては、ブチルリチウム(その異性体も含む)、ジヒドロカルビルマグネシウム、およびヒドロカルビル亜鉛、ならびにそれらと立体障害のある化合物または酸、たとえばHF、HCl、HBr、HIとの反応生成物が挙げられる。さらに、以下において定義されるオルガノアルミニウム化合物(E)、特にメチルアルミノキサン(MAO)などのヒドロカルビルアルミノキサンも、活性化剤b)として使用することができる。
【0054】
シングルサイト触媒のための成分b)の活性剤は、当業界では周知である。それらの活性剤には、多くの場合、第13族の原子、たとえばホウ素またはアルミニウムが含まれている。それらの活性剤の例は、Chem.Rev.,2000,100,1391(E.Y−X.Chen and T.J.Marks)に記述されている。好ましい活性化剤b)は、ボラン(C1)、ボレート(C2、C3)、またはオルガノアルミニウム化合物(E)たとえば、メチルアルミノキサン(MAO)などのアルキルアルミノキサンである。活性化のための活性化剤は、好ましくは、以下の(C1)〜(C3)のいずれかのホウ素化合物および/またはオルガノアルミニウム化合物(E)である。オルガノアルミニウム化合物(E)を、捕捉剤および/または活性化剤として用いることも可能である。
(C1)一般式BQ
1Q
2Q
3で表されるホウ素化合物
(C2)一般式G(BQ
1Q
2Q
3Q
4)で表されるホウ素化合物
(C3)一般式(J−H)(BQ
1Q
2Q
3Q
4)で表されるホウ素化合物。
【0055】
Q
1〜Q
3は、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換されたシリル基、アルコキシ基、またはジ置換されたアミノ基であり、それらは、同一であっても、異なっていてもよい。Q
1〜Q
3は、好ましくは、ハロゲン原子、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、1〜20個の炭素原子を有するハロゲン化炭化水素基、1〜20個の炭素原子を有する置換されたシリル基、1〜20個の炭素原子を有するアルコキシ基、または2〜20個の炭素原子を有するアミノ基であり、より好ましくは、Q
1〜Q
3が、ハロゲン原子、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、または1〜20個の炭素原子を有するハロゲン化炭化水素基である。さらに好ましくは、Q
1〜Q
3が、少なくとも1個のフッ素原子を含む1〜20個の炭素原子を有するフッ素化炭化水素基であり、特に好ましくは、Q
1〜Q
3が、少なくとも1個のフッ素原子を含む6〜20個の炭素原子を有するフッ素化アリール基である。Q
4は、基Q
1〜Q
3の一つと同じ意味合いを有し、そしてQ
1〜Q
4は、同一であっても、異なっていてもよい。Gは、無機もしくは有機のカチオンであり、Jは中性のルイス塩基であり、(J−H)は、ブレンステッド酸である。
【0056】
一般式BQ
1Q
2Q
3で表されるホウ素化合物(C1)において、Bは、三価の原子価状態にあるホウ素原子であり、Q
1〜Q
3は、前述の意味合いを有し、同一であっても、異なっていてもよい。
【0057】
化合物(C1)の具体例としては、以下のものが挙げられる:トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボラン、フェニル−ビス(ペンタフルオロフェニル)ボランなど。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが最も好ましい。
【0058】
一般式G(BQ
1Q
2Q
3Q
4)で表されるホウ素化合物(C2)においては、G
+は、無機もしくは有機のカチオンであり、Bは、三価の原子価状態にあるホウ素原子であり、Q
1〜Q
4は、先に(C1)においてQ
1〜Q
3について定義されたものである。
【0059】
一般式G(BQ
1Q
2Q
3Q
4)で表される化合物中の無機カチオンGの具体例としては、フェロセニウムカチオン、アルキル置換されたフェロセニウムカチオン、銀カチオンなどが挙げられ、それらの有機カチオンGの具体例としては、トリフェニルメチルカチオンなどが挙げられる。Gは、好ましくはカルベニウムカチオンであり、特に好ましくはトリフェニルメチルカチオンである。
【0060】
(BQ
1Q
2Q
3Q
4)の例としては、以下のものが挙げられる:テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリス(ペンタフルオロ−フェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなど。
【0061】
それらの具体的な組合せとしては、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチル−テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなども挙げられ、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが最も好ましい。
【0062】
一般式(J−H)
+(BQ
1Q
2Q
3Q
4)で表されるホウ素化合物(C3)において、Jは、中性のルイス塩基であり、(J−H)はブレンステッド酸であり、Bは、三価の原子価状態にあるホウ素原子であり、Q
1〜Q
4は、先にルイス酸(C1)においてQ
1〜Q
4について定義されたものである。
【0063】
一般式(J−H)(BQ
1Q
2Q
3Q
4)で表される化合物の中のブレンステッド酸(J−H)
+の具体例としては、トリアルキル置換されたアンモニウム、N,N−ジアルキルアニリニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアリールホスホニウムなどが挙げられ、(BQ
1Q
2Q
3Q
4)としては、上述と同じ化合物が挙げられる。それらの具体的な組合せとしては、以下のものが挙げられる:トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど。トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが、最も好ましい。
【0064】
金属錯体の、用いられた活性化助触媒C1〜C3に対するモル比は、好ましくは(1:10)から(1:0)までの範囲、より好ましくは(1:5)から(1:0)までの範囲、最も好ましくは(1:3)から(1:1)までである。
【0065】
オルガノアルミニウム化合物(E)は、炭素−アルミニウム結合を有するアルミニウム化合物であって、以下の(E1)〜(E3)から選択される1種または複数のアルミニウム化合物が好ましい。
(E1)一般式T
1aAlZ
3−aで表されるオルガノアルミニウム化合物
(E2)一般式{−Al(T
2)−O−}
bで表される構造を有する環状アルミノキサン
(E3)一般式T
3{−Al(T
3)−O−}
cAlT
32で表される構造を有する直鎖状アルミノキサン
(ここで、T
1、T
2、およびT
3のそれぞれは、炭化水素基であり、すべてのT
1、すべてのT
2、およびすべてのT
3がそれぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。Zは、水素原子またはハロゲン原子を表し、すべてのZが、同一であっても、異なっていてもよい。「a」は、0<a≦3を満足する数を表し、「b」は2以上の整数であり、「c」は、1以上の整数である。)
【0066】
E1、E2、またはE3の中の炭化水素基は、好ましくは1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基、より好ましくはアルキル基である。
【0067】
一般式T
1aAlZ
3−aで表されるオルガノアルミニウム化合物(E1)の具体例としては、以下のものが挙げられる:トリアルキルアルミニウム、たとえば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムなど;塩化ジアルキルアルミニウム、たとえば、塩化ジメチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジプロピルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、塩化ジヘキシルアルミニウムなど;二塩化アルキルアルミニウム、たとえば、二塩化メチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二塩化プロピルアルミニウム、二塩化イソブチルアルミニウム、二塩化ヘキシルアルミニウムなど;水素化ジアルキルアルミニウム、たとえば、水素化ジメチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジプロピルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウムなど。
【0068】
好ましい活性化剤−捕捉剤の組合せは、[CPh
3][B(C
6F
5)
4]/MAOである。
【0069】
一般式{−Al(T
2)−O−}
bで表される構造を有する環状アルミノキサンE2および一般式T
3{−Al(T
3)−O−}
cAlT
32で表される構造を有する直鎖状アルミノキサンE3の具体例としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基などのアルキル基が含まれる。bは、2以上の整数であり、cは1以上の整数である。T
2およびT
3はメチル基またはイソブチル基を表し、bが2〜40であり、cが1〜40であるのが好ましい。
【0070】
上述したアルミノキサンはさまざまな方法で作られる。その方法には特に制限はなく、公知の方法に従ってアルミノキサンを製造すればよい。たとえば、トリアルキルアルミニウム(たとえばトリメチルアルミニウムなど)を適切な有機溶媒(ベンゼン、脂肪族炭化水素など)の中に溶解させることによって調製した溶液を、水と接触させることによって、アルミノキサンが生成する。さらには、トリアルキルアルミニウム(たとえば、トリメチルアルミニウムなど)を、結晶水を有する金属塩(たとえば、硫酸銅水和物など)と接触させてアルミノキサンを生成させるという方法も実証されている。
【0071】
金属錯体(1)の、採用された捕捉剤c)に対するモル比(金属錯体(1):捕捉剤(c))は、好ましくは(0.1:1000)から(0.1:10)までの範囲、より好ましくは(0.1:1000)から(0.1:300)までの範囲、最も好ましくは(0.14:600)から(0.14:400)までである。
【0072】
本発明はさらに、少なくとも1種のオレフィン性モノマーを重合させることによって、ポリマーを重合させるためのプロセスも提供し、そのプロセスには前記モノマーを式(1)の金属錯体と接触させることが含まれる。
【0073】
重合
重合のための好ましいプロセスは、一般的に、少なくとも1種のオレフィン性モノマーを、本発明による、式(1)の金属錯体または触媒系と、気相中、スラリー中、または、不活性な溶媒、好ましくは炭化水素溶媒中の溶液中で接触させることによって実施される。好適な溶媒は、気相、スラリー、または、不活性な溶媒、好ましくは炭化水素溶媒中の溶液である。好適な溶媒は、C
5〜12炭化水素、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、それらの異性体、および混合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ペンタメチルヘプタン、および水素化ナフサである。本発明のプロセスは、製造される生成物に応じて、10〜250℃の温度で実施することができる。
【0074】
モノマーの定義
オレフィン性モノマーとは、少なくとも1個の重合可能な二重結合を含む分子であると理解されたい。
【0075】
好適なオレフィン性モノマーは、C
2〜20オレフィンである。好ましいモノマーとしては、以下のもの挙げられる:エチレン、ならびに非置換であるか、または2個までのC
1〜6アルキル基によって置換されたC
3〜12アルファオレフィン、非置換であるか、またはC
1〜4アルキル基からなる群より選択される2個までの置換基で置換されたC
8〜12ビニル芳香族モノマー、ならびに非置換であるか、またはC
1〜4アルキル基によって置換された、C
4〜12直鎖状または環状ヒドロカルビル基。そのようなα−オレフィンの説明のための非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、および12−エチル−1−テトラデセン。それらのα−オレフィンを組み合わせて使用することも可能である。
【0076】
モノマーは、少なくとも2個の二重結合を有するポリエンであってもよい。それらの二重結合は、鎖、環構造、またはそれらの組合せにおいて、共役していても、非共役であってもよく、またそれらは、エンドサイクリックであっても、および/またはエキソサイクリックであってもよく、さらに異なった量およびタイプの置換基を有していてもよい。このことは、そのポリエンが、少なくとも1個の、脂肪族、脂環族、もしくは芳香族の基、またはそれらの組合せを含んでいてよいということを意味している。
【0077】
好適なポリエンとしては、脂肪族ポリエンおよび脂環族ポリエンが挙げられる。より具体的には、脂肪族ポリエンとしては、たとえば以下のものが挙げられる:1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−エチル−1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、3−メチル−1,5−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘプタジエン、5−エチル−1,4−ヘプタジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、5−エチル−1,5−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン、1,6−オクタジエン、4−メチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,4−オクタジエン、4−エチル−1,4−オクタジエン、5−エチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,5−オクタジエン、5−エチル−1,5−オクタジエン、6−エチル−1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、6−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、6−エチル−1,6−オクタジエン、6−プロピル−1,6−オクタジエン、6−ブチル−1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、4−メチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,4−ノナジエン、4−エチル−1,4−ノナジエン、5−エチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,5−ノナジエン、5−エチル−1,5−ノナジエン、6−エチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,6−ノナジエン、6−エチル−1,6−ノナジエン、7−エチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,7−ノナジエン、8−メチル−1,7−ノナジエン、7−エチル−1,7−ノナジエン、1,8−ノナジエン、5−メチル−1,4−デカジエン、5−エチル−1,4−デカジエン、5−メチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,5−デカジエン、5−エチル−1,5−デカジエン、6−エチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,6−デカジエン、6−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,6−デカジエン、7−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,7−デカジエン、7−エチル−1,7−デカジエン、8−エチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,8−デカジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、8−エチル−1,8−デカジエン、1,9−デカジエン、1,5,9−デカトリエン、6−メチル−1,6−ウンデカジエン、9−メチル−1,8−ウンデカジエン、および1,13−テトラデカジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン。
【0078】
脂環族ポリエンは、少なくとも1個の環状のフラグメントからなっていてよい。これら脂環族ポリエンの例としては、以下のものが挙げられる:ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、2,5−ノルボルナジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルシクロペンタン、1,5−ジビニルシクロオクタン、1−アリル−4−ビニルシクロヘキサン、1,4−ジアリルシクロヘキサン、1−アリル−5−ビニルシクロオクタン、1,5−ジアリルシクロオクタン、1−アリル−4−イソプロペニルシクロヘキサン、1−イソプロペニル−4−ビニルシクロヘキサン、および1−イソプロペニル−3−ビニルシクロペンタン、および1,4−シクロヘキサジエン。好ましいポリエンは、少なくとも1個のエンドサイクリック二重結合と、場合によっては少なくとも1個のエキソサイクリック二重結合とを有するポリエン、たとえば、5−メチレン−2−ノルボルネン、および5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、および2,5−ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、およびビニルシクロヘキセンである。
【0079】
芳香族ポリエンの例は、ジビニルベンゼン(その異性体も含む)、トリビニルベンゼン(その異性体も含む)、およびビニルイソプロペニルベンゼン(その異性体も含む)である。
【0080】
上述のモノマーはいずれも、第13〜17族のヘテロ原子、またはそれらの組合せを含む少なくとも1個の基でさらに置換されていてもよい。
【0081】
ホモポリマー、コポリマー、および3種以上の上述したオレフィン性モノマーをベースとするコポリマー、ならびにそれらのブレンド物は、本発明のプロセスを用いて調製することができる。
【0082】
好ましい実施態様においては、エチレン、少なくとも1種のC
3〜12アルファオレフィン、好ましくはプロピレン、ならびに少なくとも1種の非共役ジエン、好ましくは5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、2,5−ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)およびビニルシクロヘキセンからなる群から、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンおよび5−ビニルノルボルネンからなる群から選択されるジエンをベースとするコポリマーが、本発明の金属錯体を用いて作られる。
【0083】
本発明はさらに、本発明の金属錯体または本発明の触媒系を用いて得ることが可能なポリマーにも関する。以下において、以下の実施例および比較実験を基づいて本発明を説明するが、それらに限定される訳ではない。
【実施例】
【0084】
試験方法
屈折率(RI)および粘度差測定法(DV=Differential Viscometry)検出器と組み合わせた、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(SEC−DV)
装置:
PL220(Polymer Laboratories)SEC:PL220 DRI濃度検出器およびViscotek 220R粘度検出器つき。
検出器は、並列配置で操作。
デガッサー:PL−DG 802
データ処理:
Viscotekデータ処理ソフトウェア、TriSEC 2.7以上のバージョン
カラム:
PLgel Olexis(4×)
較正:
標準線状ポリエチレン(PE)(分子量:0.4〜4000kg/mol)を用いた、一般的較正法
温度:
160℃
流量:
1.0mL/min
注入体積:
0.300mL
溶媒/溶出液:
蒸留した1,2,4−トリクロロベンゼン(約1g/LのIonol安定剤入り)
サンプル調製:
約150℃、4時間かけて溶解
1.2ミクロンのAgフィルターを通して濾過
サンプル濃度:約1.0mg/mL
固有粘度(IV)は、溶媒としてデカヒドロナフタレンを使用し、135℃で測定した。
【0085】
NMR(
1H、300MHz、
13C、75.4MHz)スペクトルは、Varian Mercury−VX 300スペクトロメーターで測定した。
【0086】
フーリエ変換赤外分光光度法(FT−IR)を用いて、当業者に公知の方法に従ってコポリマーの組成を求めた。FT−IR測定から、全組成物を基準にした各種のモノマーの組成が、重量%で得られる。
【0087】
パートI:配位子および化合物の合成
一般
すべての操作は、アルゴンまたは窒素(N
2)の雰囲気下、標準的なSchlenkラインまたはドライボックス法を使用して、溶媒は、窒素を吹き込むことにより脱ガスし、適切な乾燥剤のカラムを通過させて乾燥させた。トルエンは、ナトリウム上で還流させ、蒸留した。重水素を含む溶媒は、カリウム上(C
6D
6)またはP
2O
5上(CDCl
3およびCD
2Cl
2)で乾燥させ、減圧下で蒸留し、Teflonバルブアンプル中、窒素下で貯蔵した。NMRサンプルは、窒素下に、J.Young Teflonバルブ付きの5mmのWilmad 507−PPチューブの中で調製した。
1Hおよび
13C−{
1H}スペクトルは、Varian Mercury−VX 300スペクトロメーターで、特に断らない限り室温で記録し、残存プロトン溶媒(
1H)または溶媒(
13C)の共鳴を内部標準とし、テトラメチルシラン(d=0ppm)との比較で報告する。帰属は、二次元の
1H−
1Hおよび
13C−
1H NMRの相関実験を用いて確認した。ケミカルシフトはδ(ppm)で、カップリング定数はHzの単位で表した。質量スペクトルは、University of Oxfordの質量スペクトルによって記録した。IRスペクトルは、Nicolet Magna 560 E.S.P.FTIR,Perkin−Elmer 1710、または(空気に対して安定な固体のサンプルについては)Bruker Tensor 27 FT−IR(ダイヤモンドATRモジュール上に薄膜析出)スペクトロメーターを用いて記録した。空気の影響を受けやすいサンプルは、ドライボックスの中でNaCl板の間のヌジョールマルとして調製し、データは、4000〜400cm
−1の範囲内で、波数(cm
−1)の形で表した。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【0089】
比較例のための化合物の合成
化合物A(Me
5CpTiCl
2(NC(Ph)(iPr
2N))を、国際公開第2005/090418号パンフレットの化合物6の記述に従って調製した。
【0090】
Me5CpTiMe2(NC(Ph)(iPr2N))の合成(化合物B)
Cp
*Ti{NC(Ph)N
iPr
2}Cl
2(3)(1.00g、2.20mmol)のトルエン(15mL)溶液に、撹拌しながら、滴下によりMeLi(2.80mL、Et
2O中1.6M、4.40mmol)を添加し、そうして得られた溶液を16時間撹拌した。次いで、真空中で揮発分を除去し、次いで黄色の固形物をn−ヘキサン(50mL)に抽出した。その溶液を15mLにまで濃縮し、次いで、−30℃で24時間貯蔵すると、所望の反応生成物の結晶化が起きて大きな黄色の結晶が得られたので、それを単離して、真空中で乾燥させた。収量=0.37g(40%)その反応生成物は、
1H−NMRおよび
13C−NMRにより特性解析した。
【化5】
【0091】
化合物C{η
5、η
1−C
5Me
4−2−C
6H
4C(
tBu)N}TiCl
2を、欧州特許第1426379B1号明細書、実施例48の記載に従って調製した。
【化6】
【0092】
化合物D
化合物C(0.27g)のヘキサン溶液(15mL)に、撹拌しながら2当量のMeMgCl(0.5mL、THF中3.0)を滴下により添加した。その溶液は直ちに、緑から赤に変色し、無色の塩が沈殿した。2時間撹拌してから、真空中で揮発分を除去し、そうして得られた固形物をヘキサンに抽出し、濾過した。次いで真空中でヘキサンを除去し、オイル状の物質を注意深く乾燥させると、所望の反応生成物が、明赤色のワックス状固形物として得られた。収量=0.065g(27%)。その化合物は、以下の分析法により特性解析した:
1H NMR(300MHz)(C
6D
6)δ(ppm):7.7(d,1H),7.2(d,1H),7.1(dd,1H),7.0(dd,1H),2.1(s,6H),1.5(s,6H),1.4(s,9H),0.7(s,6H)および
13C−NMR(75.5MHz)(CDCl
3)δ(ppm):186.0,141.9,138.4,133.3,133.0,129.7,129.3,127.2,126.5,121.4,51.5,31.3,31.1,12.8,12.1。
【化7】
【0093】
本発明の実施例のための化合物の合成
C5Me4H−2−C6H4C(NMe2)NH(化合物1)の合成
【化8】
−78℃に冷却したLiNMe
2(8.26g、162mmol)のTHF(80mL)溶液に、撹拌しながら、THF(60mL)中C
5Me
4H−2−C
6H
4CN(6.03g、27mmol)の溶液を滴下により添加した。徐々に温めて室温にすると、その溶液は極めて暗い色に変化した。次いでその溶液を室温でさらに16時間撹拌すると、その時間の後、溶液が暗赤色に変わっていた。トルエン(100mL)、次いで水(200mL)を添加して反応を停止させ、その水相を除去し、有機層をMgSO
4上で乾燥させた。真空中で溶媒を除去すると粘稠なオレンジ色の油状物が得られ、ペンタンを用いてそれを摩砕し、真空中で乾燥させると、ワックス状のオレンジ色の固形物が得られた。収量=6.86g(95%)。
1H NMR(主たる異性体(80%))(CD
2Cl
2,299.9MHz,243K):7.50−7.16(4H,一連のmの重なり,Ar),3.16(3H,s,N
Me2)),2.87(1H,brq,C
HMe,
3J=7.1Hz),2.54(3H,s,N
Me2),1.88(3H,brs,CMeC
MeCHMe),1.84(3H,brs,CHMeC
MeCAr),1.38(3H,s,CMeC
MeCAr),0.79(3H,d,CH
Me,
3J=7.1Hz)ppm(NHは認められなかった)。
13C−{
1H} NMR(主たる異性体)(CD
2Cl
2,75.4MHz,243K):166.3(
CN(NMe
2)),142.5(CMe
CMeCHMe),140.6(CHMe
CMeCAr),136.0(
CAr),134.4(CMe
CMeCAr),131.4(ArCH),130.9(ArCH),129.0(1−C
6H
4または6−C
6H
4),127.0(ArCH),126.9(ArCH),125.7(6−C
6H
4または1−C
6H
4),50.5(
CHMe),40.4(N
Me2),39.6(N
Me2),15.0(CH
Me),12.5(CMeC
MeCHMe),12.0(CMeC
MeCAr),11.2(CHMeC
MeCAr)ppm。IR(薄膜,cm
−1):3383(s,υ(N−H)),2957(m),2870(m),1632(s),1461(m),1453(m),1432(w),1349(w),1251(s),1128(m),1026(m),821(m),720(s)。FI−HRMS:m/z=268.1938(計算値:[C
18H
24N
2]
+m/z=268.1939)。
【0094】
{η5、η1−C5Me4−2−C6H4C(NMe2)N}TiCl2(化合物2)の合成
【化9】
Ti(NMe
2)
4(6.10mL、25.6mmol)のトルエン(40mL)溶液に、撹拌しながら、C
5Me
4H−2−C
6H
4C(NMe
2)NH(化合物1)(6.86g、25.6mmol)のトルエン(20mL)溶液を滴下により添加した。その溶液は直ちに、オレンジ色から暗赤色に変化したが、室温でさらに6時間撹拌した。次いで、真空で揮発分を除去し、固形物をトルエン(40mL)に抽出した。塩化トリメチルシリル(7.10mL、56.3mmol)を滴下により添加し、その溶液をさらに16時間撹拌した。揮発分を真空中で再度除去し、暗赤色の固形物を暖かい(約50℃)トルエン(80mL)に抽出した。−30℃で2日間貯蔵すると、所望の反応生成物が結晶化した。ペンタン(4×20mL)を用いて完全に洗浄してから、真空中で乾燥させ、その反応生成物を、オレンジ色の微結晶粉体として単離した。収量=4.48g(45%)。
1H NMR(CD
2Cl
2,299.9MHz,293K):7.64−7.46(4H,一連のmの重なり,Ar),3.34(3H,s,NMe
2),3.14(3H,s,NMe
2),2.19(6H,s,C
MeCMeCAr),1.73(6H,s,CMeC
MeCAr)ppm。
13C−{
1H} NMR(CD
2Cl
2,75.4MHz,293K):168.8(CN),138.7(1−C
6H
4),135.8(6−C
6H
4),132.0(ArCH),131.3(ArCH),130.7(
CMeCMeCAr),128.7(CMe
CMeCAr),127.7(ArCH),127.5(ArCH),125.1(
CAr),41.7(NMe
2),40.1(NMe
2),13.1(CMeC
MeCAr),12.4(C
MeCMeCAr)ppm。IR(NaCl板,ヌジョールマル,cm
−1):1573(s),1547(s),1269(m),1248(m),1206(m),1079(w),1019(m),953(w),918(w),880(m),823(s),774(w),760(s),712(m),673(w),595(m),536(m)。分析値(計算値:C
18H
22Cl
2N
2Ti・0.1(C
7H
8)):C,56.98(56.95);H,5.82(5.83);N,7.02(7.10)%。EI−MS:m/z=384(30%,[M]
+),340(20%,[M−NMe
2]
+)。室温でベンゼン溶液から、X線回折に好適な単結晶を成長させた。
【0095】
{η5、η1−C5Me4−2−C6H4C(NMe2)N}TiMe2(化合物3)の合成
【化10】
{η
5、η
1−C
5Me
4−2−C
6H
4C(NMe
2)N}TiCl
2(化合物2)(1.0g、2.60mmol)のトルエン(40mL)溶液に、撹拌しながら、2当量のMeMgCl(1.73mL、3.0M、THF中、5.20mmol)を滴下により添加した。16時間撹拌してから、揮発分を真空中で除去し、そうして得られた固形分をペンタン(4×20mL)に抽出した。濃縮したペンタン溶液(20mL)から30℃で再結晶させて、所望の錯体を黄褐色の粉体として単離し、真空中で乾燥させた。収量=0.27g(30%)。
1H NMR(C
6D
6,299.9MHz,293K):7.29(1H,d,2−C
6H
4,
3J=7.7Hz),7.09(1H,dd,3−C
6H
4,
3J=7.7Hz,7.8Hz),6.95(1H,dd,4−C
6H
4,
3J=6.5Hz,7.8Hz),6.93(1H,d,5−C
6H
4,
3J=6.5Hz),2.65(6H,s,NMe
2),2.19(6H,s,C
MeCMeCAr),1.51(6H,s,CMeC
MeCAr),0.60(6H,s,TiMe)ppm。
13C−{
1H} NMR(C
6D
6,75.4MHz,293K):166.3(CN),138.6(1−C
6H
4),138.5(6−C
6H
4),132.0(2−C
6H
4),129.0(3−C
6H
4),126.8(4−C
6H
4),125.6(5−C
6H
4),123.8(CMe
CMeCAr),120.5(
CMeCMeCAr),119.0(
CAr),43.9(TiMe),39.2(NMe
2),11.9(CMeC
MeCAr),11.7(C
MeCMeCAr)ppm。IR(NaCl板,ヌジョールマル,cm
−1):1596(s),1570(s),1560,918(m),817(s),774(m),757(s),714(s),678(m),643(w)。分析値(計算値:C
20H
28N
2Ti):C,69.82(69.77);H,8.34(8.20);N,7.92(8.14)%。EI−MS:m/z=329(5%,[M−Me]
+),314(40%,[M−2Me]
+),270(20%,[M−2Me−NMe
2]
+)。室温でペンタン溶液から、X線回折に好適な単結晶を成長させた。
【0096】
C5Me4H−2−C6H4C(NiPr2)NH(化合物4)の合成
【化11】
−78℃に冷却した、ジイソプロピルアミン(11.5mL、81mmol)のTHF(60mL)溶液に、撹拌しながら、MeMgBr(27mL、3.0M、Et
2O中、81mmol)を滴下により添加した。そうして得られた白色の懸濁液を放置して、徐々に室温まで温まらせた。室温で10分間撹拌してから、その懸濁液を冷却して−78℃とし、C
5Me
4H−2−C
6H
4CN(3.02g、13.5mmol)のTHF(40mL)溶液を、滴下により添加した。徐々に温めて室温にした後、その溶液は暗赤色−褐色に変化していた。次いでその溶液を室温でさらに16時間撹拌すると、その時間の後、溶液が暗赤色に変わっていた。トルエン(100mL)、次いで水(200mL)を添加して反応を停止させ、その水相を除去し、有機層をMgSO
4上で乾燥させた。溶媒を真空中で除去すると、粘稠なオレンジ色の油状物が得られた。その粗反応生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Et
2O中5〜10%n−ヘキサン)によって精製した。収量=2.22g(51%)
【0097】
化合物4の別な調製法
HN
iPr
2(5.5mL、39.2mmol)のTHF(50mL)溶液に、撹拌しながら、MeMgCl(13.1mL、3.0M、THF中、39.2mmol)を滴下により添加した。その溶液を60℃で5時間撹拌すると、無色の沈殿物が生成した。次いでその懸濁液を冷却して−78℃とし、C
5Me
4H−2−C
6H
4C(H)NOMe(1.0g、3.92mmol)のTHF(25mL)溶液を滴下により添加した。その溶液を徐々に温めて室温にし、3日間撹拌した。水(1mL)を滴下により徐々に添加することによりその反応を停止させ、1.5時間後にそのオレンジ色の懸濁液を濾過した。Et
2O(10×25mL)を用いて、その固形物を洗浄した。次いで、無水硫酸マグネシウム上でその有機相を乾燥させ、真空中で揮発分を除去すると、化合物4(0.95g(75%))がオレンジ色の油状物として得られた。
1H NMR(主たる異性体(70%))(CDCl
3,299.9MHz,293K):7.34−7.08(4H,一連のmの重なり,Ar),3.62(1H,sept,N(C
HMe
2)
2,
3J=6.5Hz),3.44(1H,brq,C
HMe,
3J=7.5Hz),3.19(1H,sept,N(C
HMe
2)
2,
3J=6.5Hz),1.85(3H,s,CMeC
MeCMe),1.83(3H,s,CMeC
MeCAr),1.67(3H,brs,CMeC
MeCHMe),1.08(6H,d,N(CH
Me2),
3J=6.5Hz),0.87(3H,d,CH
Me,
3J=7.5Hz),0.74(6H,d,N(CH
Me2),
3J=6.5Hz)ppm(NHは認められなかった)。
13C−{
1H} NMR(主たる異性体)(CDCl
3,75.4MHz,293K):158.8
CN(N
iPr
2),141.6(CMe
CMeCHMe),139.7(
CAr),138.2(1−C
6H
4または6−C
6H
4),137.6(CMe
CMeCMe),133.6(CMe
CMeCAr),130.7(ArCH),128.2(6−C
6H
4または1−C
6H
4),127.2(ArCH),126.7(ArCH),126.2(ArCH),51.5(N(
CHMe
2)
2),51.4(N(
CHMe
2)
2),51.0(
CHMe),15.3(N(CH
Me2)
2),15.1(CH
Me),14.2(N(CH
Me2)
2),12.3(CMeC
MeCHMe),12.1(CMeC
MeCMe),11.3(CMeC
MeCAr)ppm。IR(薄膜,cm
-1):3389(s,υ(N−H)),2962(s),2855(s),2753(m),1953(m),1697(s),1621(s),1573(s),1447(m),1367(m),1260(m),1179(w),1026(s),921(w),802(s),761(s),733(m),699(m),680(w)。ESI
+−HRMS:m/z=325.2638(計算値:[C
22H
33N
2]
+m/z=325.2638)。
【0098】
{η5、η1−C5Me4−2−C6H4C(NiPr2)N}TiCl2(化合物5)の合成
【化12】
Ti(NMe
2)
4(1.60mL、6.90mmol)のトルエン(30mL)溶液に、撹拌しながら、C
5Me
4H−2−C
6H
4C(N
iPr
2)NH(化合物4)(2.22g、6.90mmol)のトルエン(20mL)溶液を滴下により添加した。その溶液は直ちに、オレンジ色から暗赤色に変化したが、室温でさらに6時間撹拌した。次いで、真空で揮発分を除去し、固形物をトルエン(40mL)に抽出した。塩化トリメチルシリル(1.90mL、15.2mmol)を滴下により添加し、その溶液をさらに16時間撹拌した。揮発分をもう一度真空中で除去し、暗赤色の固形分をベンゼン(25mL)に抽出した。濃縮したベンゼン溶液(15mL)から、所望の反応生成物を、赤/オレンジ色の固形分として結晶化させ、ペンタン(4×20mL)を用いて完全に洗浄してから、単離し、真空中で乾燥させた。収量=1.84g(61%)。
1H NMR(トルエン−d
8,299.9MHz,213K):7.15−7.00(4H,一連のmの重なり,
Ar),3.73(1H,sept,C
HMe
2(Arに対してcis),
3J=6.0Hz),2.75(1H,sept,C
HMe
2(Arに対してtrans),
3J=6.3Hz),2.23(6H,s,C
MeCMeCAr),1.97(3H,s,CMeC
MeCAr(Arにより近い)),1.60(6H,br s,二つのピークが重複:3H,d,CH
Me2(Arに対してtrans)および3H,s,CMeC
MeCAr(Arから遠い)),1.41(3H,d,CH
Me2(Arに対してtrans),
3J=5.9Hz),0.76(3H,br d,CH
Me2(Arに対してcis),
3J=6.0Hz),0.43(3H,br d,CH
Me2(Arに対してcis),
3J=6.0Hz)ppm。
13C−{
1H} NMR(トルエン−d
8,75.4MHz,213K):167.6(CN),139.0(1−C
6H
4),138.1(6−C
6H
4),132.0(ArCH),130.6(ArCH),129.9(ArCH),128.0(
CMeCMeCAr),127.2(
CMeCMeCAr),126.6(CMe
CMeCAr(Arから遠い)),126.4(CMe
CMeCAr(Arにより近い)),126.1(ArCH),124.1(
CAr),53.6(
CHMe
2(Arに対してcis)),48.2(
CHMe
2(Arに対してtrans)),20.8(CH
Me2(Arに対してcis)),20.3(二つのピークが重複:CH
Me2(Arに対してcis)およびCH
Me2(Arに対してtrans)),18.5(CH
Me2(Arに対してtrans)),14.7(CMeC
MeCAr(Arにより近い)),13.0(CMeC
MeCAr(Arから遠い)),12.2(C
MeCMeCAr),11.7(C
MeCMeCAr)ppm。IR(NaCl板,ヌジョールマル,cm
−1):1595(w),1569(w),1304(s),1261(s),1151(m),1083(m),1018(s),966(w),890(m),801(m),771(m)。分析値(計算値:C
22H
30Cl
2N
2Ti・0.1(C
6H
6)):C,60.30(60.45);H,6.84(6.87);N,5.60(6.24)%。EI−MS:m/z=440(3%,[M]
+),397(100%,[M−
iPr]
+),340(70%,[M−N
iPr
2]
+),305(30%,[M−N
iPr
2−Cl]
+),222(50%,[M−TiCl
2−N
iPr
2]
+),78(100%,[Ph]
+)。室温でベンゼン溶液から、X線回折に好適な単結晶を成長させた。
【0099】
{η5、η1−C5Me4−2−C6H4C(NiPr2)N}TiMe2(化合物6)の合成
【化13】
{η
5、η
1−C
5Me
4−2−C
6H
4C(N
iPr
2)N}TiCl
2(化合物5)(0.66g、1.50mmol)のトルエン(30mL)溶液に、撹拌しながら、2当量のMeMgCl(1.00mL、3.0M、THF中、3.00mmol)を滴下により添加した。16時間撹拌してから、揮発分を真空中で除去し、そうして得られた固形分をペンタン(4×20mL)に抽出した。濃縮したペンタン溶液(20mL)から30℃で再結晶させて、所望の錯体を黄色の粉体として単離し、真空中で乾燥させた。収量=0.24g(40%)。
1H NMR(C
6D
6,299.9MHz,293K):7.34(1H,d,2−C
6H
4,
3J=7.6Hz),7.14(1H,d,5−C
6H
4,
3J=7.8Hz),7.08(1H,dd,3−C
6H
4,
3J=7.5Hz,7.6Hz),6.93(1H,dd,4−C
6H
4,
3J=7.5Hz,7.8Hz),3.47(2H,brsept,C
HMe
2,
3J=6.0Hz),2.20(6H,s,C
MeCMeCAr),1.64(6H,s,CMeC
MeCAr),1.28(12H,br d,CH
Me2,
3J=6.0Hz),0.52(6H,s,TiMe)ppm。
13C−{
1H} NMR(C
6D
6,75.4MHz,293K):165.8(CN),141.6(1−C
6H
4),138.5(6−C
6H
4),132.8(2−C
6H
4),128.7(3−C
6H
4),125.8(5−C
6H
4),125.3(4−C
6H
4),123.6(
CMeCMeCAr),120.4(
CAr),119.4(CMe
CMeCAr),50.0(TiMe),45.9(
CHMe
2)),21.1(CH
Me2),12.5(CMeC
MeCAr),11.7(C
MeCMeCAr)ppm。IR(NaCl板,ヌジョールマル,cm
−1):1570(w),1524(s),1313(s),1220(w),1024(m),889(w),783(m),758(m),674(w)。分析値(計算値:C
24H
36N
2Ti):C,71.65(71.99);H,8.84(9.06);N,6.89(7.00)%。EI−MS:m/z=385(5%,[M−Me]
+),370(40%,[M−2Me]
+),270(75%,[M−2Me−N
iPr
2]
+)。室温でベンゼン溶液から、X線回折に好適な単結晶を成長させた。
【0100】
C5Me4H−2−C6H4C(NCy2)NH(化合物7)の合成
【化14】
−78℃に冷却したジシクロヘキシルアミン(26.9mL、135mmol)のTHF(100mL)溶液に、撹拌しながら、MeMgBr(45mL、3.0M、Et
2O中、135mmol)を滴下により添加した。そうして得られた黄色の溶液を放置して、徐々に室温まで温まらせた。室温で10分間撹拌してから、その溶液を冷却して−78℃とし、C
5Me
4H−2−C
6H
4CN(5.02g、22.5mmol)のTHF(40mL)中の溶液を滴下により添加した。徐々に温めて室温とした後、その溶液は暗赤色−褐色に変化していた。次いでその溶液を室温でさらに16時間撹拌すると、その時間の後、溶液が暗赤色に変わっていた。水(400mL)を添加して反応を停止させ、その水相を除去し、有機層をMgSO
4上で乾燥させた。真空中で揮発分を除去すると、粘稠なオレンジ色の油状物が得られた。その粗反応生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(5〜10%n−ヘキサン、5%HN
iPr、Et
2O中)によって精製した。収量=3.07g(34%)。
1H NMR(主たる異性体(70%))(CDCl
3,299.9MHz,293K):7.31−7.08(4H,一連のmの重なり,Ar),5.78(1H,s,NH),3.46(1H,qn,C
HC
5H
10,
3J=7.0Hz),3.44(1H,br q,C
HMe,
3J=7.5Hz),2.99(1H,br m,C
HC
5H
10),1.85(3H,s,CMeC
MeCMe),1.82(3H,s,CMeC
MeCAr),1.60(3H,br s,CMeC
MeCHMe),1.74−0.91(20H,一連のmの重なり、CHC
5H10),0.86(3H,d,CH
Me,
3J=7.5Hz)ppm。
13C−{
1H} NMR(主たる異性体)(CDCl
3,75.4MHz,293K):168.3
CN(NCy
2),142.7(CMe
CMeCHMe),141.6(
CAr),138.2(1−C
6H
4または6−C
6H
4),133.3(CMe
CMeCMe),131.1(CMe
CMeCAr),128.6(ArCH),128.2(6−C
6H
4または1−C
6H
4),127.5(ArCH),127.0(ArCH),126.5(ArCH),59.7(
CHC
5H
10),51.2(
CHMe),46.3(
CHC
5H
10),28.1(CH
C5H
10),26.9(CH
C5H
10),26.8(CH
C5H
10),26.5(CH
C5H
10),26.3(CH
C5H
10),26.2(CH
C5H
10),25.6(CH
C5H
10),25.5(CH
C5H
10),22.8(CH
C5H
10),22.7(CH
C5H
10),15.4(CH
Me),12.8(CMeC
MeCHMe),12.0(CMeC
MeCMe),11.2(CMeC
MeCAr)ppm。IR(薄膜,cm
−1):3311(s,υ(N−H)),3057(m),2926(s),2853(s),1702(s),1573(s),1484(m),1446(s),1379(s),1326(m),1273(m),1255(m),1194(s),1125(s),1042(w),991(m),920(w),894(m),841(w),812(w),760(s),716(w),972(m),602(m)。ESI
+−HRMS:m/z=405.3250(計算値:[C
28H
41N
2]
+m/z=405.3264)。
【0101】
{η5、η1−C5Me4−2−C6H4C(NCy2)N}TiCl2(化合物8)の合成
【化15】
Ti(NMe
2)
4(1.80mL、7.59mmol)のトルエン(30mL)溶液に、撹拌しながら、C
5Me
4H−2−C
6H
4C(NCy
2)NH(化合物7)(3.07g、7.59mmol)のトルエン(20mL)溶液を滴下により添加した。その溶液は直ちに、オレンジ色から暗赤色に変化したが、室温でさらに6時間撹拌した。次いで、真空で揮発分を除去し、固形物をトルエン(40mL)の中に抽出した。塩化トリメチルシリル(2.60mL、20.4mmol)を滴下により添加し、その溶液をさらに16時間撹拌した。真空中でその揮発分をもう一度除去し、ペンタン(3×20mL)を用いてその暗赤色の固形分を洗浄し、次いで、熱トルエン(60mL)に抽出した。−30℃で16時間貯蔵すると、所望の反応生成物が結晶化した。ペンタン(3×20mL)を用いてその結晶を洗浄し、真空中で乾燥させた。収量=1.26g(32%)。
1H NMR(CD
2Cl
2,299.9MHz,293K):7.60−7.39(4H,一連のmの重なり,Ar),3.92(1H,br m,C
HC
5H
10),2.98(1H,br m,C
HC
5H
10),2.16(6H,s,C
MeCMeCAr),1.91−1.10(20H,一連のmの重なり,CHC
5H10),1.81(6H,s,CMeC
MeCAr)ppm。
13C−{
1H} NMR(CD
2Cl
2,75.4MHz,293K):168.7(CN),138.9(1−C
6H
4),138.5(6−C
6H
4),132.6(ArCH),130.5(ArCH),129.3(
CMeCMeCAr),128.5(CMe
CMeCAr),126.8(ArCH),126.3(ArCH),125.3(
CAr),63.2(
CHC
5H
10),59.7(
CHC
5H
10),32.5(CH
C5H
10),32.3(CH
C5H
10),28.9(CH
C5H
10),28.7(CH
C5H
10),26.7(CH
C5H
10),26.6(CH
C5H
10),26.5(CH
C5H
10),26.1(CH
C5H
10),25.9(CH
C5H
10),25.4(CH
C5H
10),13.6(CMeC
MeCAr),12.2(C
MeCMeCAr)ppm。IR(NaCl板,ヌジョールマル,cm
−1):1569(m),1504(s),1332(m),1317(s),1260(m),1249(w),1160(w),1018(m),992(s),895(m),830(s),781(m),759(s),709(w),691(m),646(w)。分析値(計算値:C
28H
38Cl
2N
2Ti):C,64.67(64.50);H,7.35(7.35);N,5.15(5.37)%。EI−MS:m/z=520(3%,[M]
+),437(100%,[M−Cy]
+),340(60%,[M−NCy
2]
+),305(40%,[M−Cl−NCy
2]
+)。ベンゼン溶液を70℃から室温にまで徐々に冷却することによって、X線回折に好適な単結晶を成長させた。
【0102】
{η5、η1−C5Me4−2−C6H4C(NCy2)N}TiMe2(化合物9)の合成
【化16】
{η
5、η
1−C
5Me
4−2−C
6H
4C(NCy
2)N}TiCl
2(化合物8)(1.00g、1.92mmol)のトルエン(30mL)溶液に、撹拌しながら、2当量のMeLi(2.40mL、1.6M、Et
2O中、3.84mmol)を滴下により添加した。3時間撹拌してから、揮発分を真空中で除去し、そうして得られた固形分をn−ヘキサン(4×20mL)に抽出した。濃縮物したn−ヘキサン溶液(30mL)から−30℃で所望の錯体を、黄色の粉体として再結晶させ、それを単離し、真空中で乾燥させた。収量=0.34g(37%)。
1H NMR(C
6D
6,299.9MHz,293K):7.35(1H,d,2−C
6H
4,
3J=7.6Hz),7.21(1H,d,Ar,5−C
6H
4,
3J=7.8Hz),7.07(1H,dd,3−C
6H
4,
3J=7.4Hz,7.6Hz),6.93(1H,dd,4−C
6H
4,
3J=7.4Hz,7.8Hz),3.30(2H,br m,C
HC
5H
10),2.21(6H,s,C
MeCMeCAr),1.69(6H,s,CMeC
MeCAr),1.65−0.85(20H,一連のmの重なり,CHC
5H10),0.53(6H,s,TiMe)ppm。
13C−{
1H} NMR(C
6D
6,75.4MHz,293K):166.0(CN),141.4(1−C
6H
4),138.6(6−C
6H
4),132.9(2−C
6H
4),128.7(3−C
6H
4),125.5(5−C
6H
4),125.2(4−C
6H
4),123.5(
CMeCMeCAr),120.5(
CAr),119.5(CMe
CMeCAr),60.2(br,
CHC
5H
10),46.2(TiMe),32.0(CH
C5H
10),31.4(CH
C5H
10),25.8(CH
C5H
10),23.1(CH
C5H
10),14.3(CH
C5H
10),12.7(CMeC
MeCAr),11.8(C
MeCMeCAr)ppm。IR(NaCl板,ヌジョールマル,cm
−1):2360(s),2340(m),1304(s),1078(m),966(m),892(w),668(s),480(s)。分析値(計算値:C
30H
44N
2Ti):C,74.92(74.98);H,9.52(9.23);N,5.57(5.83)%。EI−MS m/z:465(3%,[M−Me]
+),450(25%,[M−2Me]
+),270(20%,[M−2Me−NCy
2]
+)。室温でベンゼン溶液から、X線回折に好適な単結晶を成長させた。
【0103】
パートII−バッチEPDM共重合(一般的手順)
ダブルインターミグ(double intermig)およびバッフルを備えた2リットルのバッチ式オートクレーブ中でバッチ式共重合を実施した。反応温度は、90±3℃に設定し、Lauda Thermostatにより調節した。フィードストリーム(溶媒およびモノマー)は、各種の吸着媒体と接触させて、当業者には公知の、触媒を失活させる不純物たとえば水、酸素、および極性化合物を除去することにより精製した。重合の際には、エチレンおよびプロピレンモノマーは、その反応器のガスキャップに連続的にフィードした。背圧バルブによって、反応器の圧力を一定に保った。
【0104】
不活性な窒素雰囲気下で、反応器に、ペンタメチルヘプタン(PMH)(950mL)、MAO−10T(Crompton、トルエン中10重量%)、BHT、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)(0.7mL)、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)(0.7mL)、およびジシクロペンタジエン(DCPD)(0.7mL)をそれぞれ、充填した。1350rpmで撹拌しながら、反応器を90℃に加熱した。反応器を加圧し、所定の比率のエチレン、プロピレンおよび水素(0.35NL/h)でコンディショニングした。15分後に、反応器に触媒成分を添加し、次いでPMH(50mL)を用いて触媒容器を洗い流した。(TBF20を使用する場合には、触媒を添加した直後にボレートを添加した)。重合をl0分間させてから、モノマーのフローを停止し、その溶液を、Irganox−1076のイソプロパノール溶液が入っている2Lのエルレンマイヤーフラスコに注意深く移し、減圧下100℃で夜通し乾燥させた。それらのポリマーを、固有粘度(IV)、分子量分布(SEC−DV)、および組成物(FT−IR)について分析した。
【0105】
実験条件および結果を表1に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
表1に見られるポリマーの組成から、本発明による触媒6および9のジエン親和性が、公知の触媒Bのジエン親和性よりも高いと結論づけることができる。
【0108】
結果:
触媒が多いほど熱の発生が多くなり、使用した反応器が90℃±3℃で操作されるように最適化されていたという事実から、熱の発生がこの範囲に収まるように触媒の量を選択した。触媒量が異なってはいるが、それらのデータを使用して、ある程度の結論を得ることが可能である。
【0109】
注目すべきパラメーターは、好ましくはMwおよびMzの数値であるが、その理由は、それらが、どの程度の大きさの分子量に達することができるかを示しているからである。通常は、温度が高いほど、MwまたはMzの値が低くなるので、温度を約90℃までに制限する目的の、上述のような少ない触媒量が、同じ量であるならば、より高い温度となり、それによってMwおよびMzの値が低くなり、この効果を相殺するというよりは、この効果を増大させることになるであろう。
【0110】
本発明の化合物は、欧州特許第1426379B1号明細書から公知のR
1=アルキル(化合物CおよびD参照されたい)を用いて可能となるよりも高いMw値を与える。