【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ところで、このような流量制御弁10において、その基本特性として、弁開度と流量との関係を表す固有流量特性が用いられている。このような固有流量特性として、従来から、JIS規格にも規定されており、
図5のグラフに示したように、
(1)リニア特性
(2)イコールパーセント特性
(3)クイックオープン特性
の3種類の固有流量特性が用いられている。
【0023】
このうち、(1)のリニア特性は、例えば、特許文献1(特開平6−174129号公報)にも開示されているように、流量(%)(Cv値)が弁開度に対して比例的に変化する固有流量特性である。このようなリニア特性を有する流量制御弁は、その特性を生かして、例えば、流量制御弁の差圧が一定の場合などに用いられている。
【0024】
また、(3)のクイックオープン特性は、弁が開き始めると、流量(%)(Cv値)が急激に増加する固有流量特性である。このようなクイックオープン特性を有する流量制御弁は、例えば、遮断弁、開放弁などのオンオフ的な流量制御弁に用いられる。
【0025】
ところで、近年、冷凍機、空調機の省エネ性の向上のため、圧縮機などの回転数の制御性や、熱交換器の熱交換率の向上が課題となっている。また、冷凍サイクルの効率向上のためには、流量制御弁などの省エネ性向上も求められている。
【0026】
従って、
従来の流量制御弁に対して、流量の制御を向上させることで、省エネ性が確保できると考えられている。このため、流量の制御性を高めるために微小流量の制御が可能な流量制御弁の開発が求められている。
【0027】
しかしながら、流量制御弁10では、ニードル弁36の径のバラツキ、弁ポート22の径のバラツキ、ローター軸52の雄ネジ54aとガイド部材40の雌ネジ40bなどからなるネジ送り機構のガタツキ、ガイド部材40の弁開ストッパー62とローターマグネット58の弁開ストッパー60とのストッパー位置のガタツキなどの影響(以下、単に「弁寸法や弁開点のバラツキ」と言う)により流量のバラツキが発生する。
【0028】
このような流量のバラツキは、(1)のリニア特性を有する流量制御弁では、
図6に示したように、弁リフト100%(全開状態)(以下、単に「弁リフト100%」と言う)における流量のバラツキb2と、例えば、弁リフト50%の流量のバラツキb1とは同じであって、微小流量域から全開流量域まで、流量のバラツキが大きい。
【0029】
従って、このような(1)のリニア特性を有する流量制御弁は、流量の制御性を高めるために微小流量の制御域で使用するには、流量のバラツキが大きく、正確に流量を制御すすることができず不向きである。
【0030】
その結果、細かな流量制御ができず、微小流量の制御が可能な流量制御弁を提供することができない。
【0031】
これに対して、(2)のイコールパーセント特性を有する流量制御弁では、制御面から省エネ性向上を考えた場合、制御弁としては流量変化率を一定に保つ特性を有しており、
図7に示したように、微小流量の制御域での流量のバラツキが小さく好ましいものである。
【0032】
なお、(2)のイコールパーセント特性とは、相対トラベル(弁開度)の等量増分が相対容量係数(Cv値=流量)の等比率の増分を生じる固有流量特性を言う。下記の式で示される。
【数1】
【0033】
ここで、Фは、相対容量係数(Cv値=流量)、Ф
0は、h=0の時の相対容量係数(Cv値=流量)、hは、相対トラベル(弁開度)、nは、hに対してlog
eФをプロットするときの固有イコールパーセント特性の傾きである。
【0034】
しかしながら、このような(2)のイコールパーセント特性を有する流量制御弁では、
図7の弁開度と流量の関係を示すグラフに示したように、弁リフトが上昇するにしたがって、弁寸法や弁開点のバラツキなどの影響により流量のバラツキが大きく、流量制御弁として、流量のバラツキを極力抑えるようにすることが望まれる。
【0035】
ところで、流量のバラツキが最も顕著に現れるのは、弁開度の変化に対する流量変化量が最も大きくなる弁リフト100%の状態(位置)である。
【0036】
すなわち、弁リフト100%の付近は、流量変化量が大きいので、弁寸法や弁開点のバラツキによる流量のバラツキが大きくなる。
【0037】
この弁リフト100%の状態での流量のバラツキが大きい場合、流量過多、流量不足(弁能力不適)の要因となってしまう。
【0038】
また、流量のバラツキを考慮した場合に、全開状態での流量を確保するためには、弁口径を拡大する必要があるが、弁口径の拡大は弁作動に対し、高い推力が必要となってしまう。
【0039】
すなわち、
図7、
図8の実線で示した状態は、弁寸法や弁開点のバラツキがない状態(流量中心)を示している。なお、
図8は、
図4の弁リフト100%(全開状態)の状態を説明する
図4のA部分の部分拡大断面図である。
【0040】
また、
図7、
図8の一点鎖線で示した状態は、弁リフト100%において、弁寸法や弁開点のバラツキによって、全開流量が最も大きい状態(全開流量上限)を示している。すなわち、弁リフト100%において、ニードル弁36が、最も上方の位置に位置しており、弁ポート22から最も離間している状態を示している。
【0041】
さらに、
図7、
図8の二点鎖線で示した状態は、弁リフト100%において、弁寸法や弁開点のバラツキによって、全開流量が最も小さい状態(全開流量下限)を示している。すなわち、弁リフト100%において、ニードル弁36が、最も
下方の位置に位置しており、弁ポート22から最も近接している状態を示している。
【0042】
このように、
図7に示したように、例えば、弁リフト50%の状態において、弁リフト50%の流量のバラツキB1よりも、弁リフト100%の状態において、弁リフト100%の流量のバラツキB2が大きくなってしまう。
【0043】
なお、
図7、
図8において、弁リフト100%の状態は、流量制御弁10の使用上の全開状態(ニードル弁36の作動範囲の上限位置)にあることを意味している。すなわち、実際には、ガイド部材40の弁開ストッパー62とローターマグネット58の弁開ストッパー60とが当接した状態である機械的な全開状態は、
図7のグラフのより右側の弁開口度が大きい点に位置している。
【0044】
ところで、
図8において、ハッチングで示したように、弁リフト100%の状態において、弁ポート22の弁ポート面積S1と、ニードル弁36の
制御部36cの外周と弁ポート22の最短距離Mのなす弁開口面積S2との関係は、弁ポート面積S1>弁開口面積S2である。
【0045】
なお、
図8のハッチングでは、模式的に示しているが、
図9に示したように、ニードル弁36の
制御部36cの外周と弁ポート22の最短距離Mのなす弁開口面積S2は、上面から見た断面視で円環状である。
【0046】
この状態では、流量のバラツキは、弁開口面積S2に依存するため、弁寸法や弁開点のバラツキの影響を受けて、流量のバラツキが大きくなってしまう。
【0047】
なお、弁ポート22の弁ポート面積S1と、ニードル弁36の
制御部36cの外周と弁ポート22の最短距離Mの弁開口面積S2とが等しくなる点を、以下、「流量飽和点」と言う)。
【0048】
本発明は、このような現状に鑑み、弁寸法や弁開点のバラツキによる流量のバラツキが小さく、微小流量の制御が可能で、流量の制御性を高めることができ、冷凍機、空調機の省エネ性の向上を図ることができる流量制御弁を提供することを目的とする。
【0049】
また、本発明は、流量過多、流量不足(弁能力不適)をきたすことがなく、しかも、全開状態での流量を確保するために、弁口径を拡大する必要がなく、弁作動に対し、高い推力も不要で、コンパクトな流量制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0051】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の流量制御弁は、
弁体が弁座に対して離接することによって、前記弁座に設けられた弁ポートを開閉することにより流量を制御するように構成するとともに、イコールパーセント特性の固有流量特性を有する流量制御弁であって、
弁リフト100%以下の位置において、弁ポートの弁ポート面積S1と、弁体の
制御部の外周と弁ポートの最短距離Mのなす弁開口面積S2との関係が、
弁ポート面積S1≦弁開口面積S2となるように設定したことを特徴とする。
【0052】
このように構成することによって、弁リフト100%において、弁ポートの弁ポート面積S1と、弁体の外周と弁ポートの最短距離Mのなす弁開口面積S2との関係が、弁ポート面積S1≦弁開口面積S2であるので、弁体が弁座(弁ポート)に対して流量飽和点以上に位置することになる。
【0053】
従って、この状態では、流量のバラツキは、弁ポート面積S1に依存する。すなわち、全開状態である弁リフト100%での流量のバラツキが、弁ポートの径にのみ影響を受けることになり、流量のバラツキを小さくすることができる。
【0054】
その結果、弁寸法や弁開点のバラツキによる流量のバラツキが小さく、微小流量の制御が可能で、流量の制御性を高めることができ、冷凍機、空調機の省エネ性の向上を図ることができる流量制御弁を提供することができる。
【0055】
また、流量過多、流量不足(弁能力不適)をきたすことがなく、しかも、全開状態での流量を確保するために、弁口径を拡大する必要がなく、弁作動に対し、高い推力も不要で、コンパクトな流量制御弁を提供することができる。
また、本発明の流量制御弁は、前記流量制御弁のニードル弁の先端に、円錐形状の先端部分を備えることを特徴とする。
【0056】
また、本発明の流量制御弁は、前記流量制御弁において、弁リフト30%〜
100%の位置で、弁ポートの弁ポート面積S1と、弁体の外周と弁ポートの最短距離Mのなす弁開口面積S2との関係が、
弁ポート面積S1≦弁開口面積S2となるように設定したことを特徴とする。
【0057】
このような範囲において、弁ポート面積S1≦弁開口面積S2であれば、全開状態である弁リフト100%での流量のバラツキが、弁ポートの径にのみ影響を受けることになり、流量のバラツキを小さくすることができる。
【0058】
これにより、弁寸法や弁開点のバラツキによる流量のバラツキが小さく、微小流量の制御が可能で、流量の制御性を高めることができ、冷凍機、空調機の省エネ性の向上を図ることができる流量制御弁を提供することができる。
【0059】
また、本発明の流量制御弁は、前記流量制御弁において、弁リフト50%〜
90%の位置で、弁ポートの弁ポート面積S1と、弁体の外周と弁ポートの最短距離Mのなす弁開口面積S2との関係が、
弁ポート面積S1≦弁開口面積S2となるように設定したことを特徴とする。
【0060】
このような範囲において、弁ポート面積S1≦弁開口面積S2であれば、全開状態である弁リフト100%での流量のバラツキが、弁ポートの径にのみ影響を受けることになり、流量のバラツキを小さくすることができる。
【0061】
これにより、弁寸法や弁開点のバラツキによる流量のバラツキが小さく、微小流量の制御が可能で、流量の制御性を高めることができ、冷凍機、空調機の省エネ性の向上を図ることができる流量制御弁を提供することができる。
また、本発明の流量制御弁は、
前記流量制御弁において、弁リフト50%〜
90%の位置で、弁ポートの弁ポート面積S1と、弁体の外周と弁ポートの最短距離Mのなす弁開口面積S2との関係が、
弁ポート面積S1≦弁開口面積S2となるように設定するとともに、
前記流量制御弁のニードル弁の先端の制御部の長さLを、弁リフトが100%である全弁リフトの場合の制御部の長さLに対して、40%〜70%の範囲となるように設定したことを特徴とする。
【0062】
また、本発明の流量制御弁は、
前記弁リフト100%が、流量制御弁の使用上の全開状態であることを特徴とする。
【0063】
このように
構成することによって、流量制御弁の使用上の全開状態において、全開状態である弁リフト100%での流量のバラツキが、弁ポートの径にのみ影響を受けることになり、流量のバラツキを小さくすることができる。
【0064】
これにより、流量制御弁の使用上の全開状態において、弁寸法や弁開点のバラツキによる流量のバラツキが小さく、微小流量の制御が可能で、流量の制御性を高めることができ、冷凍機、空調機の省エネ性の向上を図ることができる流量制御弁を提供することができる。
【0065】
また、本発明の流量制御弁は、前記弁リフト100%が、弁開ストッパーが当接した状態である機械的な全開状態であることを特徴とする。
【0066】
このように構成することによって、弁開ストッパーが当接した状態である機械的な全開状態において、全開状態である弁リフト100%での流量のバラツキが、弁ポートの径にのみ影響を受けることになり、流量のバラツキを小さくすることができる。
【0067】
これにより、弁開ストッパーが当接した状態である機械的な全開状態において、弁寸法や弁開点のバラツキによる流量のバラツキが小さく、微小流量の制御が可能で、流量の制御性を高めることができ、冷凍機、空調機の省エネ性の向上を図ることができる流量制御弁を提供することができる。