(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スラットはブラケット、典型的にはレールに取り付けられており、上述した位置の微調整は、退避位置においてレールに対するスラットの位置を微調整することにより行われる。ただし、レールは主翼に対して所定の移動経路を進退するので、レールに対するスラットの位置は、主翼に対するスラットの位置と同義になる。展開位置においても同様で、スラットを展開位置まで前進させた状態で、スラットと主翼の間隙が必要なギャップ値になるように、レールに対するスラットの位置を微調整する。
スラットは、この微調整を行うための位置調整機構を備えている。従来の位置調整機構は、レールに対して、円弧状の軌道を描きながらスラットを往復動させるものであり、例えば、
図9に示す構成(非特許文献1)を備えている。
図9に示す位置調整機構100は、スラット103とレール112の間に3点リンク機構を適用することでスラット103を揺動運動させる。
すなわち、スラット103とレール112をピボット軸S101に相対的な回転を許容するように支持することで、ピボット軸S101を揺動の回転中心として機能させる。また、スラット103とレール112の間にリンク部材106を設け、スラット103とリンク部材106を固定軸S102により相対的な回転を許容するように支持するとともに、レール112とリンク部材106を原動軸S103により相対的な回転を許容するように支持する。ここで、原動軸S103は、偏心軸Eを備えており、その偏心軸Eにリンク部材106が係止されているため、原動軸S103を回転させると、ピボット軸S101からなる揺動軸を中心にしてスラット103を揺動運動させることができる。
リギングは、スラット103を退避位置においた状態で、スラット103の後端103bが主翼1に隙間なく接触するように、原動軸S103を回転させる。その後に、スラット103を展開位置に移動させた状態で、スラット103と主翼1の間隙が必要なギャップ値になっているか否かの確認をする。
【0007】
図9の位置調整機構100は、以下の問題を有している。
図9に示すように、3点リンク機構を構成するために、スラット103に対して、ピボット軸S101及び固定軸S102を支持する揺動アーム104が一体的に設けられている。すなわち、揺動アーム104は、ピボット軸S101と固定軸S102の間隔より大きく、主翼本体102の内部に配置される構成となっている。したがって、主翼本体102の前縁102aに揺動アーム104が進退するための切欠きを設けなければならない。この切欠きは、スラット103の展開時にスラット103と主翼本体102の間を流れる気流を乱す要因となるため、小さいことが望まれている。特に、主翼本体102が薄い場合、同じ3点リンク機構を用いても、切欠きの大きさが致命的となる。正面から受けた気流が、切欠きに進入し、渦流となって抵抗になるからである。したがって、主翼を薄くする場合、特に切欠きは小さくして、気流が切欠きを回避して、スラット103、主翼本体102の表面に沿って流す必要がある。
また、位置調整機構100は、ピボット軸S101の位置がスラット103の先端103aから大きく離れ、ピボット軸S101を中心としたスラット103の回転半径が大きいために、リギング時に原動軸S103を回転させると、単位回転角当たりのスラット103の移動量が大きくなる。したがって、位置調整機構100は、スラット103を微少量ずつ移動させてリギングすることが難しい。
そこで、本発明は、位置調整機構を設けるために必要な主翼の切欠きを小さくし、主翼との間を流れる気流の安定化を図ることができるスラットを提供することを目的とする。
さらに本発明は、スラットの揺動運動のピボット位置をスラットの先端に近づけることにより、リギング時のスラットの単位移動量を小さくし、リギング作業を容易にすることができるスラットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的のもとなされた、本発明の航空機のスラットは、航空機の主翼に対して進退可能なブラケットに取り付けられることで、展開位置及び退避位置の間を移動可能なスラット本体と、スラット本体を揺動運動させることで、スラットの主翼に対する取り付け位置を調整する位置調整機構と、を備えることを前提としており、位置調整機構が以下の特徴を有している。
本発明による位置調整機構は、スラット本体の揺動運動の中心となるピボット軸と、ブラケットに回転可能に支持されるとともに、スラット本体の揺動運動を誘起する原動軸と、を備える。この原動軸は、スラット本体に作用して揺動運動をさせる主軸と、ブラケットに対して回転可能に支持され、主軸と一体的に回転する偏心体と、を備える。
本発明において、ピボット軸と原動軸の両方が、スラットと一体の揺動アームと、ブラケットと一体の固定アームと、を貫通して設けられる。
本発明による位置調整機構は、原動軸が偏心機能を備えているため、ピボット軸と併せて、2つの軸だけでスラット本体を揺動運動させることができる。これら2つの軸だけで足りるので、3つの軸を必要とする従来の位置調整機構に比べて占有するスペースを狭くできる。したがって、主翼の前縁に必要な切欠きを、3つの軸を要する位置調整機構に比べて小さくできる。
また、2つの軸で足りるので、3つの軸を備える従来の位置調整機構に比べて、部品点数を少なくでき、また、スラット及びブラケットに取り付ける作業の負担を軽減できる。
【0009】
本発明の偏心体を、ともに円筒状の内側偏心体及び外側偏心体から構成することができる。内側偏心体は、主軸に固定され、主軸に対して偏心している。また、外側偏心体は、内側偏心体に対して偏心するとともに内側偏心体の周囲に回転可能に配置され、かつブラケットに対して回転可能に支持される。この内側偏心体及び外側偏心体を備える偏心体は、いわゆる二重偏心機能を備える。
本発明は、原動軸としていわゆるクランクシャフトを用いることができるが、偏心体を内側偏心体及び外側偏心体から構成すると、メンテナンスが容易であるとともに、コスト低減に資する。
【0010】
本発明の位置調整機構において、ピボット軸を設ける位置は任意であるが、ピボット軸を源動軸よりスラット本体に近い側に配置することが好ましい。原動軸がスラット本体の先端に近い逆の配置に比べて、揺動の回転半径を小さくできるので、内側偏心体及び外側偏心体を回転させる際に、単位回転角当たりのスラットの先端における変位量を小さくできるので、精密なリギングを行うことができる。
【0011】
本発明の位置調整機構において、主軸に対する内側偏心体の偏心量δ1と、内側偏心体に対する外側偏心体の偏心量δ2とが一致することが好ましい。
本発明の位置調整機構は、偏心量δ1と偏心量δ2が相違していても、リギング時において、内側偏心体と内側偏心体の各々の回転角を正しく調整すれば、主軸を必要な位置に合わせることはできる。しかし、回転角を正しく調整することは作業上の負担となる。これに対して、偏心量δ1と偏心量δ2が一致していると、内側偏心体の回転角と内側偏心体の回転角を同じにすれば、主軸を必要な位置に合わせることができる。
【0012】
本発明の位置調整機構において、内側偏心体を、主軸に固定される内側偏心ブッシュとし、外側偏心体を、内側偏心体の周囲に配置される外側偏心ブッシュとすることができる。
主軸と内側偏心体が一体となったものはクランクシャフトと同じ形態とみなせるため、本発明は、主軸と内側偏心体の部分にクランクシャフトを用いることができる。しかし、クランクシャフトを成形するのに比べて、単純な円柱状の主軸に内側偏心ブッシュを固定する方が、製造コストを抑えることができる。また、ブッシュが摩耗した場合にその部分だけを交換すればよいので、メンテナンスコストを下げることもできる。
【0013】
本発明によるスラットにおいてその位置を調整する際には、内側偏心体と外側偏心体を、同じ回転角だけ逆向きに回転させる。そうすれば、主軸が円弧軌道上を揺動運動(往復運動)し、これに追従してスラットを揺動運動させることができるので、スラットの位置を逐次確認しながら、内側偏心体と外側偏心体の回転角を調整することで、リギングを行なうことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、位置調整機構の原動軸が偏心機能を備えているため、ピボット軸と併せて、2つの軸だけで足りるので、これら2つの軸が占める領域を、3つの軸を必要とする従来の位置調整機構に比べて狭くできる。したがって、主翼の前縁に必要な切欠きを、3つの軸を要する位置調整機構に比べて小さくできるため、主翼とスラットの間を流れる気流の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本実施形態は、
図1、
図2に示すように、航空機の主翼1に設けられるスラット3に関するものである。スラット3は、主翼本体2の前縁2aに沿って配置されている。主翼本体2に設けられた駆動機構(図示せず)により、後述する展開位置と退避位置との間を移動することができる。なお、通常、スラット3の他に、主翼本体2の後縁2bにフラップ9が高揚力発生装置として設けられている。
【0017】
航空機が巡航状態にある場合には、
図2(a)に示すように、スラット3は主翼本体2の前縁2aに近接する「退避位置」に退避している。この状態では、主翼本体2とスラット3とがほぼ一体となって主翼1を構成する。なお、
図2(a)は、主翼本体2とスラット3の区別を明らかにするために意図的に離して示している。
一方、航空機が着陸態勢に入ると、着陸時に必要となる空力特性を実現するため、スラット3が、
図2(b)に示すように、主翼本体2の前縁2aから離間した「展開位置」へ展開される。スラット3が展開された場合には、スラット3は主翼本体2の前縁2aから斜め前方に下がり、主翼本体2とスラット3との間に間隔が形成される。
【0018】
スラット3は、その外殻が外皮4とコーブ(cove)5および下面板7とから構成されている。
外皮4は、前縁4aから滑らかに繋がる上面4bと下面4cから構成され、上面4bは下面4cよりも主翼本体2側に突出して延びるように形成されている。また、下面4cには下面板7が一体に形成されている。
【0019】
コーブ5は、主翼本体2と対向する領域に形成された凹部である。スラット3が主翼本体2の前縁2aに近接する「退避位置」において、主翼本体2の前縁2aがコーブ5に収納される。コーブ5は、中心軸線CLに対して直交する面5aと、主翼本体2の上面に対向し、外皮4の上面4bに漸次近づく対向面5bとから構成されている。なお、コーブ5は、上述の構成に限られることなく、一つの曲面から構成されたものであってもよく、特に限定するものではない。
【0020】
下面板7は、下面4cとコーブ5とが交わる稜線部8から主翼本体2に向かって延びる板状の部材であり、下面4cに連続して外皮4と一体に固定状態で形成されている。この下面板7は、例えば、アルミニウム合金、CFRP(Carbon Fiber-Reinforced Plastic;炭素繊維強化プラスチック)、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics;ガラス繊維強化プラスチック)、ステンレス鋼等によって形成することができる。
【0021】
図3及び
図4に示すように、スラット3は、その内部空間に、骨格をなすフレーム材として、主翼1の翼長方向に間隔を隔てて配置された複数枚のリブ材10と、主翼1の翼長方向に延び、複数枚のリブ材10を連結するスパー11とが設けられている。
そして、スラット3には、所定の間隔を隔てた一対のリブ材10に対応して、主翼本体2側に延びる一対のレール(ブラケット)12が設けられている。レール12は、好ましくはスラット3の両端部近傍に設けられる。このレール12には、図示しないラックギヤが設けられており、主翼本体2内には、このラックギヤに噛み合うピニオンギヤと、ピニオンギヤを回転させるモータとが設けられている。そして、モータでピニオンギヤを回転駆動させることで、退避位置及び展開位置の間を、レール12とともにスラット3が進退駆動されるようになっている。
【0022】
次に、本発明のスラット3の位置調整機構20について
図5〜
図7を参照して説明する。
位置調整機構20は、スラット3からレール12に向けて延びる揺動アーム21とレール12との間に設けられ、揺動アーム21を、ピボット軸S1を中心とした円弧軌道上を揺動(往復動)させることにより、揺動アーム21に連なるスラット3を揺動運動させるものである。
【0023】
位置調整機構20は、スラット3からレール12に向けて延びる揺動アーム21を備える。揺動アーム21はスラット3と一体に形成されているので、揺動アーム21の動作に追従してスラット3は揺動運動することができる。揺動アーム21には、
図7に示すように、ピボット軸S1を通す軸孔21aと原動軸S2を通す軸孔21bとが表裏を貫通して形成されている。軸孔21aはスラット3に近い側に設けられ、軸孔21bは軸孔21aから所定の間隔をあけてスラット3から離れた位置に設けられている。
【0024】
位置調整機構20は、また、レール12に一体に形成された固定アーム23を備えている。固定アーム23は、レール12の先端から主翼本体2の前縁2aに向けて延設されている。固定アーム23は、
図7に示すように、所定の間隔をあけて配置される一対のアーム片24からなり、揺動アーム21はこの一対のアーム片24,24の間に配置される。各アーム片24には、揺動アーム21の軸孔21a,軸孔21bの各々に対応する位置に、軸孔25aと軸孔25bとが表裏を貫通して形成されている。
【0025】
ピボット軸S1は、その軸方向に径が一定とされているボルトB1と、ボルトB1に装着されるナットN1とを主要素としている。ピボット軸S1は、一対のアーム片24と揺動アーム21とを、軸孔21a,25aを通って貫通しており、少なくとも、揺動アーム21はピボット軸S1に対して回転が可能に取り付けられている。ピボット軸S1には揺動アーム21の軸孔21aに対応する位置に外形が球状の軸受体34が取り付けられ、軸孔21aは軸受体34の外形に沿った球面をなしている。なお、一対のアーム片24(固定アーム23)は、ピボット軸S1に対して固定されていてもよい。
以上のように揺動アーム21が取り付けられることにより、揺動アーム21はピボット軸S1を中心にして揺動運動が可能である。なお、ボルトB1、ナットN1はあくまで一例であり、本発明は他の部材を用いてピボット軸S1を構成することができる。
【0026】
原動軸S2は偏心機能を備えており、偏心ブッシュを備えた原動軸S2を回転させることにより揺動アーム21を介してスラット3を揺動運動させることができる。
原動軸S2は、一対のアーム片24と揺動アーム21とを、軸孔25b,25bを通って貫通している。揺動アーム21及び固定アーム23は、原動軸S2に対して回転が可能に取り付けられている。
原動軸S2は、主軸30と、主軸30の両端に固定される一対の内側偏心ブッシュ31と、各々の内側偏心ブッシュ31の周囲に回転可能に嵌合される外側偏心ブッシュ32と、を備える。内側偏心ブッシュ31と外側偏心ブッシュ32は、ともに、軸方向の端部側にフランジ31a、32aを備え、フランジ31a,32aの周囲には軸方向に沿うローレットが加工、成形されている(
図6参照)。また、内側偏心ブッシュ31と外側偏心ブッシュ32は、一対のアーム片24(固定アーム23)の軸孔25bに挿通される。そして、外側偏心ブッシュ32はそのフランジ32aがレール12に支持され、また、内側偏心ブッシュ31はそのフランジ31aがフランジ32aに支持されている。内側偏心ブッシュ31と外側偏心ブッシュ32は互いに回転可能とされ、また、外側偏心ブッシュ32はレール12に対して回転可能に支持されている。なお、主軸30は、その軸方向に径が一定とされているボルトB2と、ボルトB2に装着されるナットN2とを主要素としている。
内側偏心ブッシュ31は、主軸30の中心Cに対して偏心量δだけ偏心している(
図8を参照)。また、外側偏心ブッシュ32は、内側偏心ブッシュ31の回転軸に対して偏心量δだけ偏心しており、主軸30の中心Cと回転軸が一致している。
原動軸S2には、揺動アーム21の軸孔21bに対応する位置に、外形が球状の軸受体34が取り付けられている。軸受体34は軸孔25bの内部に配置され、原動軸S2が変位すると変位の向きに軸孔25bの内部から揺動アーム21に作用する。
外側偏心ブッシュ32のフランジ32aには、リギングを終えた後に、外側偏心ブッシュ32及び内側偏心ブッシュ31が動くことを防止するためのストッパ35が嵌合されている。このストッパ35は、外側偏心ブッシュ32を回すときの工具として使用することもできる。
【0027】
[位置調整機構20の動作]
次に、リギング作業時における位置調整機構20の動作を、主に
図8を参照して説明する。リギング作業は、通常、スラット3が退避位置にあるときに行う。
内側偏心ブッシュ31、外側偏心ブッシュ32が、当初、
図8(a)にあるものとする。この状態を回転角=0(360)度とする(=原点位置)。回転角0度から、内側偏心ブッシュ31を時計回りに90°ずつ回転させ、これに同期させて、外側偏心ブッシュ32を反時計回りに90°ずつ回転させたときの、主軸30、内側偏心ブッシュ31、外側偏心ブッシュ32の状態を順に
図8(b)(回転角=90度)、
図8(c)(回転角=180度)、
図8(c)(回転角=270度)に示す。なお、内側偏心ブッシュ31と外側偏心ブッシュ32を逆向きに同じ回転角だけ同期して回転させるのは、主軸30をピボット軸S1を中心とした円弧軌道上を揺動運動させるためである。
【0028】
図8(b)に示すように、内側偏心ブッシュ31を時計回りに90度、外側偏心ブッシュ32を反時計回りに90度回転させると、主軸30は外側偏心ブッシュ32の回転中心から偏心量が2δとなるように、図中、上向きに移動する。
さらに、内側偏心ブッシュ31を時計回りに90度(回転角180度)、外側偏心ブッシュ32を反時計回りに90度(回転角180度)回転させると、
図8(c)に示すように、主軸30は回転角が0度の原点位置に戻る。ただし、内側偏心ブッシュ31は、原点位置とは線対称の位置に移動している。
さらにまた、内側偏心ブッシュ31を時計回りに90度(回転角270度)、外側偏心ブッシュ32を反時計回りに90度(回転角270度)回転させると、
図8(d)に示すように、主軸30は、原点位置から外側偏心ブッシュ32の回転中心から偏心量が2δとなるように、図中、下向きに移動する。
図8(a)〜(d)及び以上の説明から明らかなように、偏心機能を備える位置調整機構20は、主軸30をピボット軸S1を中心とした円弧軌道上を揺動運動させることができる。
この主軸30の揺動運動にしたがって、揺動アーム21がピボット軸S1をピボットとして揺動運動し、さらにこの揺動アーム21の揺動運動に追従してスラット3が主翼1の幅(前後)方向及び主翼1の厚さ(上下)方向に変位することで、リギングを行うことができる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態は偏心機能を有する位置調整機構20を用いているので、ピボット軸S1及び原動軸S2の2つの軸があれば足りる。しかも、ピボット軸S1及び原動軸S2を主翼1の翼弦方向に沿って直線状に配置できる。したがって、3つの軸を必要としていた従来の位置調整機構100の揺動アーム104に比べて、揺動アーム21の幅(翼厚方向)を小さくできるので、主翼1の前縁2aに必要な切欠きを、3軸を要する位置調整機構100に比べて小さくできる。なお、位置調整機構20と位置調整機構100の偏心量を同じに設定すると、位置調整機構20は位置調整機構100と同程度のスラット3の変位量を無理なく得られることを確認している。
【0030】
また、位置調整機構20は、ピボット軸S1がスラット3の近くに配置されている。したがって、位置調整機構20は、ピボット軸S101がスラット3から離れている位置調整機構100よりも、揺動の回転半径を小さくできる。そのため、位置調整機構20は、内側偏心ブッシュ31、外側偏心ブッシュ32の単位回転角当たりのスラット3の変位量を小さくできるので、精密なリギングを行うことが容易となる。
ただし、ピボット軸S1がスラット3の近くに配置することは本発明の必須要件ではない。原動軸S2をスラット3の近くに配置し、原動軸S2を挟んでピボット軸S1をスラット3から離して配置するというように、本発明はピボット軸S1と原動軸S2の位置関係を位置調整機構20と逆にすることもできる。この場合でも、上述した前縁2aに形成する切欠きを小さくできるという効果を享受できる。
【0031】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はここで説明した形態に限定されない。
例えば、位置調整機構20は、二重偏心機能を持たせるために、主軸30の周りに内側偏心ブッシュ31、外側偏心ブッシュ32と二つのブッシュを設けたが、主軸30と二つのブッシュの部分をクランクシャフトのように一体的な構造としてもよい。ただし、クランクシャフトを成形するのに比べて、単純な円柱状の主軸に内側偏心ブッシュを固定する方が、製造コストを抑えることができる。また、ブッシュが摩耗した場合にその部分だけを交換すればよいので、メンテナンスコストを下げることもできる。
また、位置調整機構20は、リギング時のスラット3の動作を安定させるために、一対のアーム片24の間に揺動アーム21を挟む対称の形態としたが、アーム片24(固定アーム23)を1枚のみとしても揺動アーム21の揺動動作自体に相違はない。
さらに、主軸30に軸受体34を設けているが、主軸30自体が揺動アーム21と直接接触するようにしてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。