【実施例1】
【0031】
以下、本発明の第1の実施例を、
図1〜
図7を用いて説明する。
【0032】
(回転位置センサの概略)
図1及び
図2に、第1の実施例に係る回転位置センサ10の概略構成を示す。
図1(A)に正面図、
図1(B)に基準線BB(
図1(C)参照)に関する断面図、及び
図1(C)に基準線CC(
図1(A)参照)に関する断面図を示す。
図2に、回転軸Lを基準とする回転位置センサ10の構成各部の分解斜視図を示す。なお、制御弁等の被検物及び被検物を回転駆動するギアモータは図示せず、ギアモータ(不図示)の出力軸21a及びその先端(−Z端)に固定されたギア21のみを図示している。
【0033】
回転位置センサ10は、ベース11、摺動具12、軸支持具13、基板14、軸固定具15、検出部(不図示)等を含んで構成されている。
【0034】
ベース11は、ギア(平歯車)であり、その周囲に回転軸Lに平行な歯筋を有する複数の歯が形成されている。ベース11は、ベース11と同様の平歯車であるギア21に係合している。これにより、ギアモータ(不図示)の出力軸21aの回転、すなわち被検物の回転がギア21を介してベース11に伝達され、回転軸Lを中心にベース11が回転駆動される。
なお、ベース11は、被検物に結合して回転するものであればよく、ギア21を介して回転駆動されるもののほか、出力軸21aに直接に結合されたもの(この場合、必ずしもギアではない形状でよい。)であってもよい。また、ギアモータのギア列を構成するギアのうちの1つをベース11としてもよい。ギアの回転角は出力軸21aの回転角との間に比例関係を有するので、該ギアの回転ストロークが360度以下である限り出力軸21aの回転角を求めることが可能だからである。
【0035】
なお、ベース11の裏面(−Z面)には、その中心に−Z方向に延伸する円筒状の回転軸11c(
図1(C)参照)が形成され、その+Y側にX軸方向に並ぶ2つの円筒状のピン(不図示)が−Z方向に突出して形成されている。
【0036】
(摺動部分の詳細)
摺動具12は、銅等の導電性金属を用いて略四分円状に形成された平板状の部材である。その略四分円の中心近傍に円形の開口12cを有する略半円状の固定部12dが−Y方向に突出して形成され、略四分円のほぼ中央にX軸方向に並ぶ2つの円形の開口12eが形成されている。開口12c及び2つの開口12eにそれぞれベース11の裏面に形成された回転軸11c及び2つのピン(不図示)を挿通することで、摺動具12がベース11の裏面上でXY方向に位置決めされる。さらに2つのピン(不図示)の先端(−Z端)を例えば加熱して変形することで或いは留め具を用いることで、摺動具12がベース11の裏面に固定される。
【0037】
摺動具12のX軸に平行な一辺(−Y辺)には、Y軸方向を長手とする4つの摺動子(ブラシ)が−Y方向に延伸して形成されている。4つのブラシは、略四分円の中心(開口12c)側に配置された2つのブラシからなるコモン側ブラシ(第1摺動部材)12aと円弧側に配置された2つのブラシからなるリミッタ側ブラシ(第2摺動部材)12bを含む。(コモン側ブラシ12aとリミッタ側ブラシ12bとを特に区別する必要のないときには単にブラシと総称する。)なお、コモン側ブラシ12a及びリミッタ側ブラシ12bは、必ずしも2つの摺動子から構成される必要はなく、1つまたは3つ以上の摺動子(ブラシ)から構成されてもよい。1つのみの摺動子(ブラシ)の場合には、図示された2つを摺動子(ブラシ)の右側半分及び左側半分と解する。
【0038】
これらブラシ12a,12bには、基板14の表面に平行な接触部が形成されている(
図2参照)。この接触部が後述する基板14上のパターンに接触することで、それらのパターンがブラシ12a,12bにより摺動される(例えば
図6参照)。ブラシ12a,12bの基端側から(時計回りに)だけでなく先端側から(反時計回りに)もパターンを摺動することができる。ブラシ12a,12bによるパターンの摺動の詳細は後述する。
【0039】
軸支持具13は、例えばプラスチック等の非導電性部材を用いて構成された円筒状の部材である。その中心には円形の開口13cが形成され、その内部にベース11の回転軸11cが回転可能に挿通される(
図1(C)参照)。それにより、ベース11が基板14上で回転可能に支持される。
【0040】
(基板部分の詳細)
基板14は、平板状の部材で、その中心には円形の開口14cが形成されている。その内部にベース11の回転軸11cが回転可能に挿通される(
図1(C)参照)。
【0041】
基板14の表面(+Z面)には、導電性のパターンが複数形成されている(
図1(B)、
図2等参照)。これらのパターンは、例えば、基板上14の表面に銅等の導電性物質を用いて層状の膜を形成し、その形成膜上にパターンと同形状のレジストパターンを形成し、エッチング工程によりレジストパターンをマスクとして形成膜を食刻することで、形成される。なお、形成膜、すなわちパターンの厚さは、上記工程による形成に適当な16〜35μmに定められる。ただし、ブラシの厚さ、材質等に応じて酸化被膜を削剥するのに適当な厚さに適宜変更することとしてもよく、例えば100μmとしてもよい。なお、このような厚みのパターンを基板14上に形成することができれば、上記工程以外の方法でパターンを形成することとしてもよい。なお、基板上14の表面にステンレス、タングステン系金属等硬い金属を用いる場合には、エッチング材としてフッ化水素酸や硝酸混合液等基板14自体を腐食しやすい薬剤を用いなければならない場合があるので、そのような場合には、基板14自体を例えばセラミックス等エッチング材で腐食しないものを用いることが好ましい。
【0042】
上述の導電性のパターンは、コモンパターン(第1パターン)14aとリミッタパターン(第2パターン)14b1,14b2,14b3の2種類のパターンを含む。(コモンパターン14aとリミッタパターン14b1,14b2,14b3とを特に区別する必要のないときには単にパターンと総称する。)コモンパターン14aは、ベース11の回転軸Lが通る開口14cの中心(
図2参照)を中心とする円環状の領域(第1領域)内に、約120度の角度範囲内で連設されている(ひとつながりに形成されている)。コモンパターン14aに形成されている2つのスリットについては後述する。リミッタパターン14b1,14b2,14b3は、コモンパターン14aが形成された領域の外側の円環状の領域(第2領域)内に、一定の角度、離間して配設されている。本実施例では、リミッタパターン14b1,14b2,14b3は、約20度の離間角度を設けて、それぞれ開口14cの中心に対して−90度、−135度、及び−180度の位置に配設されている。
【0043】
なお、本実施例の回転位置センサ10では、ベース11(摺動具12)の回転ストロークが約90度であることに応じて、上述の通り、コモンパターン14aとリミッタパターン14b1,14b2,14b3を基板14上に配設したが、ベース11の回転ストロークに応じて、適宜、パターンの配設範囲を拡張又は縮小することとする。例えば、ベース11の回転ストロークが360度に亘る場合、コモンパターン14aは円環状の領域内に360度の角度範囲で連設され、リミッタパターン14b1,14b2,14b3は円環状の領域内に一定の離間角度を設けて複数配設される。また、リミッタパターン14b1,14b2,14b3の数、離間角度も、披検物の回転位置の検出精度に応じて適宜定めることとする。
【0044】
コモンパターン14aとリミッタパターン14b1,14b2,14b3は、これらとともに基板14上に形成された配線を介して、それぞれ個別に、検出部(不図示)に接続されている。検出部(不図示)内では、例えば、コモンパターン14aが電流センサを介して電源の一極に、リミッタパターン14b1,14b2,14b3が切換え素子を介して電源の他極に接続されている。切換え素子は一定の時間周期でリミッタパターン14b1,14b2,14b3を切換えて電源に接続する。リミッタパターン14b1,14b2,14b3がブラシ12a,12bによりコモンパターン14aと導通すると、切換え素子がその導通したリミッタパターンに切換えた際に電流センサが電流(電気信号)を検知する。
【0045】
軸固定具15は、例えばプラスチック等の非導電性部材を用いて構成された円環状の部材である。その中心の開口15cにベース11の回転軸11cの先端が嵌入される。ベース11が回転するとともに軸固定具15も回転する。
【0046】
検出部(不図示)は、ブラシ12a,12b及びパターン14a,14b1,14b2,14b3を介して電気信号を検出することで、被検物の回転位置を求める。回転位置の検出原理については後述する。
【0047】
(摺動部分と基板部分の関係)
回転位置センサ10は、ベース11の回転軸11cを軸支持具13の開口13c及び基板14の開口14cに挿通し、基板14の裏面(−Z面)から送出される回転軸11cの先端を軸固定具15の開口15cに嵌入してZ軸方向(回転軸Lに平行な方向)に固定することで、ベース11が回転軸Lについて回転可能に組み立てられる(
図1(C)参照)。それにより、ベース11に固定されたブラシ12a,12bの先端(接触部)がその弾性により一定の押圧力で基板14の表面に当接し、ベース11が回転軸Lについて回転することによりブラシ12a,12bが基板14上のパターン14a,14b1,14b2,14b3を摺動する。
【0048】
図1(B)、
図3(A)及び(B)、並びに
図4(A)及び(B)に、ベース11の回転に伴うブラシ12a,12bの動き、すなわちブラシ12a,12bによるパターン14a,14b1,14b2,14b3の摺動を示す。
【0049】
コモン側ブラシ12a(先端の接触部)は、ベース11が回転軸Lについて回転することにより、回転軸Lを中心とする円弧状の軌道La(第1軌道)に沿って基板14上を摺動する。それにより、コモン側ブラシ12aにより、軌道La上に位置するコモンパターン14aが摺動される。ここで、コモンパターン14aは軌道La上に連設されているため、コモン側ブラシ12aはベース11の回転ストローク内で、常時、コモンパターン14aに接触する。
【0050】
また、リミッタ側ブラシ12b(先端の接触部)は、ベース11が回転軸Lについて回転することにより、回転軸Lを中心とする円弧状の軌道Lb(第2軌道)に沿って基板14上を摺動する。それにより、リミッタ側ブラシ12bにより、軌道Lb上に位置するリミッタパターン14b1,14b2,14b3が摺動される。ここで、リミッタパターン14b1,14b2,14b3は軌道Lb上に一定の離間角度を設けて配設されているため、リミッタ側ブラシ12bはベース11の回転ストローク内でリミッタパターン14b1,14b2,14b3のいずれかに接触する又はいずれとも接触しない。
【0051】
先述の通りコモン側ブラシ12aとリミッタ側ブラシ12bは電気的に接続されている。従って、ベース11の回転位置により、コモンパターン14aはブラシ12a,12bを介してリミッタパターン14b1,14b2,14b3のいずれかと導通する又はいずれとも導通しない。従って、コモンパターン14aと導通したリミッタパターン14b1,14b2,14b3を検知することで、それらの配設位置に対応するベース11の回転位置を検出することができる。
【0052】
なお、ブラシ12a,12bが導通を確保しつつパターン14a,14b1,14b2,14b3を円滑に摺動するように、基板14の表面に導電性グリスを塗布するとよい。
【0053】
(回転位置の検出)
回転位置の検出原理について、より詳細に説明する。
【0054】
図1(B)に示す状態では、ベース11は基準角度に位置し、コモン側ブラシ12aはコモンパターン14aに、リミッタ側ブラシ12bはリミッタパターン14b3に接触する。このとき、ブラシ12a,12bによりコモンパターン14aとリミッタパターン14b3が導通する。従って、検出部(不図示)は、リミッタパターン14b3から電気信号を検出する。それによりリミッタパターン14b3がコモンパターン14aと導通したことが検知され、リミッタパターン14b3の配設位置に対応するベースの回転位置(基準角度)が検出される。
【0055】
ベース11が基準角度(
図1(B))から反時計回りに約20度回転すると、
図3(A)に示すように、コモン側ブラシ12aは継続してコモンパターン14aに接触するのに対し、リミッタ側ブラシ12bはリミッタパターン14b3,14b2間の離間領域(非導電領域)に待避し、いずれのパターンとも接触しない。このとき、コモンパターン14aはリミッタパターン14b1,14b2,14b3のいずれとも導通していない。従って、電気信号は検出されない。
【0056】
ベース11がさらに回転し、基準角度(
図1(B))から反時計回りに45度に変位すると、
図3(B)に示すように、コモン側ブラシ12aは継続してコモンパターン14aに接触し、リミッタ側ブラシ12bはリミッタパターン14b2に接触する。このとき、ブラシ12a,12bによりコモンパターン14aとリミッタパターン14b2が導通する。従って、検出部(不図示)は、リミッタパターン14b2から電気信号を検出する。それによりリミッタパターン14b2がコモンパターン14aと導通したことが検知され、リミッタパターン14b2の配設位置に対応するベースの回転位置(45度変位)が検出される。
【0057】
ベース11がさらに回転し、基準角度(
図1(B))から反時計回りに約65度に変位すると、
図4(A)に示すように、コモン側ブラシ12aは継続してコモンパターン14aに接触するのに対し、リミッタ側ブラシ12bはリミッタパターン14b2,14b1間の離間領域(非導電領域)に待避し、いずれのパターンとも接触しない。このとき、コモンパターン14aはリミッタパターン14b1,14b2,14b3のいずれとも導通していない。従って、電気信号は検出されない。
【0058】
ベース11がさらに回転し、基準角度(
図1(B))から反時計回りに90度に変位すると、
図4(B)に示すように、コモン側ブラシ12aは継続してコモンパターン14aに接触し、リミッタ側ブラシ12bはリミッタパターン14b1に接触する。このとき、ブラシ12a,12bによりコモンパターン14aとリミッタパターン14b1が導通する。従って、検出部(不図示)は、リミッタパターン14b1から電気信号を検出する。それによりリミッタパターン14b1がコモンパターン14aと導通したことが検知され、リミッタパターン14b1の配設位置に対応するベースの回転位置(90度変位)が検出される。
【0059】
(スリットによる異物除去)
上述の構成の回転位置センサ10において、特にコモン側ブラシ12aは常時コモンパターン14aに接触しているため、コモン側ブラシ12a(接触部)にゴミ等の異物が付着した場合に、クリーニング部材等を用いてその異物を除去することができない。また、酸化被膜が形成された場合に、それを除去することもできない。それにより、ブラシとパターンの接触不良及びこれに伴う回転位置センサの動作不良を生じるおそれがある。
【0060】
そこで、本実施例における回転位置センサ10では、コモンパターン14aに2つのスリット14s1,14s2が設けられている。
【0061】
図5(A)に、基板14上のパターン14a,14b1,14b2,14b3及び基準位置(
図1(B))にある摺動具12(ブラシ12a,12b)を示す。また、
図5(B)に、コモンパターン14a(スリット14s1)及びコモン側ブラシ12aを拡大して示す。
【0062】
スリット14s1,14s2は、軌道Laに交差する方向、詳細には回転軸Lに対する径方向に延びる基準軸L1の一側及び他側に基準軸L1に平行な縁部を設け、それらを含んでコモンパターン14a内に形成される。本実施例では、エッチング工程により、スリット14s1,14s2を有する形状でコモンパターン14aが基板14上に形成される。
図5(B)に示すように、スリット14s1,14s2の幅Dはコモン側ブラシ12aの接触部の幅dよりも十分大きい。また、スリット14s1,14s2の長さL0は、コモン側ブラシ12aの接触部の最遠端の幅l0より十分長い。
【0063】
スリット14s1,14s2は、コモンパターン14a内に軌道Laに交差する方向の一側(本実施例では回転軸Lに対する径方向)に開いて(コモンパターン14aの端に達して)形成されている。すなわち、スリット14s1,14s2はコモンパターン14a内に切欠き状に形成されている。それにより、後述するように、コモンパターン14aの縁部により擦剥された異物等がスリット14s1,14s2の開口からコモンパターン14a外に排出される。
【0064】
なお、スリット14s1,14s2は、コモンパターン14a内に回転軸Lに対する径方向(外向き)に開いて形成されているが、回転軸Lに対向する方向(内向き)に開いて形成することとしてもよい。
【0065】
(導電性の確保)
スリット14s2は、リミッタ側ブラシ12bがリミッタパターン14b3,14b2間の離間領域(非導電領域)に待避し、その領域内の軌道Lb上を摺動する際に、コモン側ブラシ12aが摺動するコモンパターン14a内の軌道La上の一部に形成される。本実施例では、コモン側ブラシ12aとリミッタ側ブラシ12bは回転軸Lに対する径方向に並設されており、スリット14s2は、リミッタパターン14b3,14b2間の離間角度内、基準角度(
図1(B))から反時計回りに22.5度の位置に形成されている。
【0066】
スリット14s1は、リミッタ側ブラシ12bがリミッタパターン14b2,14b1間の離間領域(非導電領域)に待避し、その領域内の軌道Lb上を摺動する際に、コモン側ブラシ12aが摺動するコモンパターン14a内の軌道La上の一部に形成される。本実施例では、スリット14s1は、リミッタパターン14b2,14b1間の離間角度内、基準角度(
図1(B))から反時計回りに67.5度の位置に形成されている。
【0067】
回転位置センサ10の検出原理より、コモン側ブラシ12aは、少なくともリミッタ側ブラシ12bがリミッタパターン14b1,14b2,14b3を摺動(接触)する間、コモンパターン14aを摺動(接触)する必要がある。さもなければ、コモンパターン14aとリミッタパターン14b1,14b2,14b3の導通が確保されず、リミッタ側ブラシ12bがリミッタパターン14b1,14b2,14b3を摺動(接触)しているにも関わらず電気信号が検知できないこととなる。そこで従来技術では、コモン側ブラシ12aが常時コモンパターン14aを摺動(接触)する構成を採用している。本実施例では、上述のようにスリット14s1,14s2の位置を定めることで、コモン側ブラシ12aがスリット14s1,14s2内に位置する際には、必ず、リミッタ側ブラシ12bがリミッタパターン14b1,14b2,14b3の離間領域内に位置することから、導通が確保されず電気信号を検知できないという不具合は生じない。
【0068】
なお、スリット数は、2に限らず、1のみでも3以上でも適当数のスリットを形成してよい。
【0069】
(異物除去の詳細)
スリット14s1(14s2)を用いてコモン側ブラシ12aに付着した異物等を除去する方法を説明する。
【0070】
図6(A)〜(C)に、コモン側ブラシ12aが軌道La上を時計回り(矢印方向)に回転し、コモンパターン14a及びその内に形成されたスリット14s1(14s2)を摺動する様子を示す。
【0071】
図6(A)に示すように、コモン側ブラシ12aがコモンパターン14aを摺動することにより、コモンパターン14aに付着した異物Oが擦剥され、摺動方向に掃引される。
図6(B)に示すように、コモン側ブラシ12aがスリット14s1内を摺動し、その接触部の一側がスリット14s1を形成するコモンパターン14aの縁部に衝突する。ここで、コモン側ブラシ12aは、その弾性により基板表面を押圧しているため、
図6(C)に示すように、スリット14s1からコモンパターン14aに乗り上げる際に掃引された異物Oがコモンパターン14aの縁部により擦り落とされる。また、コモン側ブラシ12aに酸化被膜が形成された場合においても、コモン側ブラシ12aがスリット14s1からコモンパターン14aに乗り上げる際に、酸化被膜がコモンパターン14aの縁部により削剥される。
【0072】
(給湯装置)
図7に、本実施例の回転位置センサ10が備えられる給湯装置100の概略構成を示す。入水管121に流入した水は、主管122とバイパス管123とに分流する。主管122を流れる水はバーナーにより加熱される。主管流量制御弁111及びバイパス管流量制御弁112(以下、制御弁と総称する)を用いて、給湯出水管124に流れる水の流量及び主管122とバイパス管123とからの水量の比率を制御する。主管122とバイパス管123とからの水量の比率によって、湯温が制御される。
【0073】
制御弁111,112は、ギアモータ(不図示)の出力軸21aに結合し、その動力により開閉される。先述の通り、出力軸21aの先端にはギア21が固定されている。それにより出力軸21aの回転が回転位置センサ10(ベース11)に伝達され、制御弁111,112の回転位置(開閉)が検出される。
【0074】
給湯装置100を制御する制御装置(不図示)は、回転位置センサ10を用いて制御弁111,112の回転位置(開閉)を検出し、その結果に従ってギアモータ(不図示)を制御することで、制御弁を開閉する、或いは目標の回転位置に駆動する。それにより、水の流量(湯温)が調整される。
【0075】
(本実施例のまとめ)
なお、本実施例では、給湯の流量及び温度の制御に用いられる制御弁111,112について回転位置センサ10を使用する場合について説明したが、これらの流量制御弁に限らずあらゆる制御弁について使用することができる。
【0076】
また、本実施例では、回転位置センサ10を給湯装置100に使用する場合について説明したが、給湯装置100に限らずデジタルカメラ等の電子機器など、他の装置にも使用することができる。
【0077】
以上詳細に説明したように、本実施例の回転位置センサ10によると、基板14上に、被検物の動きに伴って回転駆動されるコモン側ブラシ12aにより軌道Laに沿って摺動されるコモンパターン14aが、軌道Laに交差する方向に延びる縁部を含んで形成されるスリット14s1,14s2を介して連設されている。これにより、コモン側ブラシ12aがスリット14s1,14s2を形成するコモンパターン14aの縁部を摺動することで、コモン側ブラシ12aに付着する異物等が削剥される、又はコモン側ブラシ12aにより掃引された異物等が擦り落とされる。従って、ブラシとパターンの接触不良及びこれに伴う動作不良を回避することができる。
【0078】
また、本実施例の給湯装置100によると、本実施例の回転位置センサ10を用いて制御弁の回転位置を検出することで、動作不良を起こすことなく制御弁を開閉し、水の流量を調整することが可能となる。
【実施例2】
【0079】
第2の実施例に係る回転位置
次に、本発明の第2の実施例を、
図8及び
図9を用いて説明する。
【0080】
第2の実施例に係る回転位置センサ10の主要構成は先述の第1の実施例におけるそれとほぼ同様のため、以下では、相違点を中心に説明する。また、第1の実施例と同一又は同等の部分については、同一の符号を用いるとともにその説明を省略する。
【0081】
図8(A)に、基板14上のパターン14a,14b1,14b2,14b3及び基準位置(
図1(B))にある摺動具12(ブラシ12a,12b)を示す。また、
図8(B)に、コモンパターン14a(スリット14s1)及びコモン側ブラシ12aを拡大して示す。
【0082】
第2の実施例におけるコモンパターン14aは、第1の実施例におけるそれとスリット14s1,14s2の形状が異なる。
【0083】
スリット14s1(14s2)は、
図8(B)に拡大して示すように、第1の実施例におけるそれと同様に(
図5参照)、リミッタパターン14b3,14b2(14b2,14b1)間の離間角度内、すなわち基準角度(
図1(B))から反時計回りに22.5度(67.5度)の位置に、軌道Laに交差する方向の一側(本実施例では回転軸Lに対する径方向)に開いて形成されている。ここで、スリット14s1(14s2)の+Y縁部及び−Y縁部のいずれも、軌道Laに対して開く方向(すなわち径方向)に角度θ傾けて形成されている。すなわち、スリット14s1(14s2)は開く方向に拡幅されている。(スリットの開幅D1はその内辺の長さD2よりも大きい。)
【0084】
なお、本実施例の回転位置センサ10では、ベース11(ブラシ12a,12b)は時計回り及び反時計回りのいずれの方向にも回転するため、スリット14s1,14s2を形成するコモンパターン14aの+Y縁部及び−Y縁部のいずれも、スリット14s1,14s2の開いて形成されている側が軌道Laの前方となるよう傾けて形成されているが、ベース11(ブラシ12a,12b)が時計回り(反時計回り)にのみ回転する場合、コモンパターン14aの+Y縁部(−Y縁部)のみを傾けて形成すればよい。
【0085】
このスリット14s1,14s2の形状より、コモンパターン14aの縁部によりコモン側ブラシ12aから擦り落とされた酸化被膜、コモン側ブラシ12aによってコモンパターン14a上からスリットに移動されたゴミ、その他の異物がスリット14s1,14s2内に堆積することなく、その内を開いている方向(径方向)に移動し、コモンパターン14a外に排出される。
図9(A)に示すように、異物O(及び削剥された酸化被膜)は、コモン側ブラシ12aが+Y方向に摺動することにより、コモン側ブラシ12aの接触部の+Y端とコモンパターン14a(スリット14s1)の+Y縁部とによりY軸方向に挟圧される。コモンパターン14aの+Y縁部が径方向に傾けられていることにより異物Oに加わる圧力が径方向に向く。そのため、
図9(B)に示すように、コモン側ブラシ12aが+Y方向に摺動するにつれて、このスリット14s1内の異物Oは径方向に移動する。コモン側ブラシ12aが摺動する度に次の異物が径方向に移動することで、
図9(C)に示すように、スリット内に堆積することなく、スリット14s1の開口を介してコモンパターン14a外に排出される。
【0086】
以上詳細に説明したように、第2の実施例の回転位置センサ10によると、第1の実施例の回転位置センサ10と同様の効果が得られる。さらに、スリット14s1,14s2を形成するコモンパターン14aの縁部によりコモン側ブラシ12aから削剥された酸化被膜その他の異物は、コモン側ブラシ12aがスリット14s1,14s2の縁部を摺動することで、その開口を介してコモンパターン14a外に排出されやすくなる。
【実施例3】
【0087】
第2の実施例に係る回転位置
次に、本発明の第3の実施例を、
図10を用いて説明する。
【0088】
第3の実施例に係る回転位置センサ10の主要構成は先述の第1及び第2の実施例におけるそれとほぼ同様のため、以下では、相違点を中心に説明する。また、第1及び第2の実施例と同一又は同等の部分については、同一の符号を用いるとともにその説明を省略する。
【0089】
図10(A)に、基板14上のパターン14a,14b1,14b2,14b3及び基準位置(
図1(B))にある摺動具12(ブラシ12a,12b)を示す。また、
図10(B)及び(C)に、コモンパターン14a(スリット14s1)及びコモン側ブラシ12aを拡大して示す。
【0090】
第3の実施例におけるコモンパターン14aは、第1及び第2の実施例におけるそれらとスリット14s1,14s2の大きさ及び形状が異なる。
【0091】
スリット14s2は、
図10(B)に示すように、第1及び第2に実施例におけるそれら(
図5及び
図8参照)と相違して、リミッタパターン14b2の配設角度内に、軌道Laに交差する方向の一側(回転軸Lに対する径方向)に開いて、形成されている。ここで、スリット14s2の+Y縁部及び−Y縁部のいずれも、軌道Laに対して開く方向(すなわち径方向)に角度θ傾けて形成されている。すなわち、スリット14s2は開く方向に拡幅されている。(スリットの開幅D1はその内辺の長さD2よりも大きい。)ただし、スリット14s2の長さL2は、コモン側ブラシ12aの2つの接触部のうち(回転軸Lに対する)外側の接触部のみがスリット14s2を摺動し、内側の接触部はコモンパターン14aに接触する長さに定められている。
【0092】
これに対して、スリット14s1は、
図10(C)に示すように、軌道Laに交差する方向の他側(回転軸Lに対向する向き)に開いて、形成されている。ここで、スリット14s1の+Y縁部及び−Y縁部のいずれも、軌道Laに対して開く方向(回転軸Lに対向する向き)に角度θ傾けて形成されている。すなわち、スリット14s1は開く方向に拡幅されている。(スリットの開幅D3はその内辺の長さD4よりも大きい。)ただし、スリット14s1の長さL1は、コモン側ブラシ12aの2つの接触部のうち(回転軸Lに対する)内側の接触部のみがスリット14s1を摺動し、外側の接触部はコモンパターン14aに接触する長さに定められている。
【0093】
スリット14s1,14s2の形状より、第1及び第2の実施例と同様に、異物等がスリット14s1,14s2内に堆積することなく、その内を開いている方向(それぞれ回転軸Lに対して外向き及び内向き)に移動し、そしてコモンパターン14a外に排出される。
【0094】
さらに、本実施例のスリット14s1,14s2の配置及び大きさより、コモン側ブラシ12aの2つの接触部の少なくとも一方が必ずコモンパターン14aに接触することから、常にコモン側ブラシ12aとコモンパターン14aとの導通が確保される。従って、リミッタパターン14b1,14b2,14b3の離間領域(22.5度及び67.5度の近傍)に対応する角度範囲に限らず、任意の角度範囲にスリット14s1,14s2を設けることができる。また、コモン側ブラシ12aの2つの接触部のそれぞれが各1以上摺動できるよう適当数のスリットを設けることができる。
【0095】
以上詳細に説明したように、第3の実施例の回転位置センサ10によると、第1及び第2の実施例の回転位置センサ10と同様の効果が得られる。さらに、コモン側ブラシ12aの2つの接触部の少なくとも一方が必ずコモンパターン14aに接触することから、常に常にコモン側ブラシ12aとコモンパターン14aとの導通が確保される。
【0096】
なお、本実施例では、コモン側ブラシ12aの2つの接触部は回転軸Lに対する径方向に並設されているが、必ずしも並設されている必要はなく、任意の位置に配置することとしてもよい。
【0097】
(実施例のバリエーション)
なお、上記第1〜第3の実施例の回転位置センサ10では、ベース(平歯車)11に、出力軸21aを介して被検物の回転に伴って回転するギア(平歯車)21を係合することで、被検物の回転位置を検出する。ここで、ギア(平歯車)21に限らず、かさ歯車等を用いて被検物の回転をベース11に伝達することとしてもよい。また、ベース(平歯車)11に被検物の並進に伴って並進するラック等を係合することで、被検物の並進位置を検出する回転位置センサとして構成することとしてもよい。
【0098】
また、上記第1〜第3の実施例の回転位置センサ10では、ベース11、すなわち摺動具12が回転駆動されることから基板14上の円環状(円弧状)の領域内にコモンパターン14aを連設、リミッタパターン14b1,b2,b3を配設した。これに限らず、ベース11(或いは基板14)が併進駆動される場合には、併進方向に延びる基板14上の矩形状(或いは帯環状)の領域内にコモンパターン14aを連設、リミッタパターン14b1,b2,b3を配設すればよい。
【0099】
また、上記第1〜第3の実施例の回転位置センサ10では、コモン側ブラシ12aとリミッタ側ブラシ12bとを平板状に形成したが、これに限らず銅等の導電性金属線を平板状に束ねて形成してもよい。
【0100】
また、上記第1〜第3の実施例の回転位置センサ10では、コモン側ブラシ12aとリミッタ側ブラシ12bとを摺動具12に一体的に形成する構成を採用したが、ベース11に固定され、ベース11の回転に伴いパターンを摺動することができればその構成に限らず、例えば個別に形成されたブラシをベース11の裏面に固定し、それらの基端を導線等を用いて接続する構成を採用してもよい。
【0101】
また、上記第1〜第3の実施例の回転位置センサ10では、基板14上の内側及び外側にそれぞれコモンパターン14aリミッタパターン14b1,14b2,14b3を配設したが、それぞれ外側及び内側に配設してもよい。
【0102】
また、上記第1〜第3の実施例においては回転角を検出したが、直線状の移動に対する位置を検出してもよい。直線状のギアによってベース11を回転させること、往復する被検物と回転位置センサとの間にクランクを設けること等で、直線状の往復運動を回転運動に変換できる。上記第1〜第3の実施例と同様にして該回転運動の回転位置を検出でき、これによって該往復運動における位置の検出が可能である。
【0103】
図11(A)に、直線運動と回転運動の変換を示す。ギア21aは、直線状である。ギア21aの往復は、ベース11を回転させる。ベース11の回転を上記実施例と同様に検出することができ、直線状の往復運動をするギア21aの位置を検出することができる。
【0104】
図11(B)は駆動機構を示す図である。駆動機構はギアモータに限定されない。図に示すように、シリンダ21b(エア駆動、電気駆動、その他任意の駆動源によるもの)であってもよい。また、把持部21cを手で動かしてもよい。プーリー、ロータリーソレノイド等を利用してもよい。