特許第6178652号(P6178652)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178652
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】カバー
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/34 20060101AFI20170731BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20170731BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   H01M2/34 A
   H01M2/34 B
   H05K5/03 C
   B60R16/02 635
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-155514(P2013-155514)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-26516(P2015-26516A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小野田 伸也
(72)【発明者】
【氏名】青木 達也
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−161999(JP,A)
【文献】 特開平07−192601(JP,A)
【文献】 特開平09−115415(JP,A)
【文献】 特開2008−311089(JP,A)
【文献】 特開2010−108785(JP,A)
【文献】 特開2012−038580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/34
H01H 85/20
B60R 16/02
H05K 5/03
H02G 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の第1面を覆う第1カバーと、前記電子機器の第2面を覆う第2カバーと、前記第1カバーと前記第2カバー間を連結し撓み変形可能な連結ヒンジ部とを備え、
前記連結ヒンジ部の撓み変形によって、前記第2カバーが前記電子機器の第2面を覆う閉位置と第2面より離間する開位置との間で変移するカバーであって、
前記第1カバーと前記第2カバーに連結される前記連結ヒンジ部の各根本部は、前記各根本部より中間箇所の肉厚よりも厚く形成され、各根本部の中間箇所側は、中間箇所に向かって厚みを徐々に薄く形成され
前記連結ヒンジ部は、ベルト状であり、前記各根本部は、帯状の内面側が中間箇所よりも突出して厚く形成され、各根本部の中間箇所側は、帯状の内面側が徐々に突出量を減らして厚みを徐々に薄く形成されたことを特徴とするカバー。
【請求項2】
請求項1記載のカバーであって、
前記連結ヒンジ部の前記各根本部は、前記第1カバーと前記第2カバーの取付面に対して垂直方向よりも相手側のカバー側に傾斜して取り付けされたことを特徴とするカバー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載のカバーであって、
前記電子機器は、バッテリに固定されるヒューズユニット本体であり、前記電子機器の前記第1面が前記ヒューズユニット本体の側面であり、前記電子機器の前記第2面が前記ヒューズユニット本体の上面であることを特徴とするカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などに配設される電子機器を覆うカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば車両のバッテリに直付けされるヒューズユニットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかるヒューズユニットの一従来例が図4図6に示されている。このヒューズユニット50は、バッテリ(図示せず)に固定されるヒューズユニット本体51と、このヒューズユニット本体51を覆うカバー60とを備えている。カバー60は、ヒューズユニット本体51の側面を覆う第1カバー61と、ヒューズユニット本体51の上面を覆う第2カバー62と、第1カバー61と第2カバー62間を連結する連結ヒンジ部63とを備えている。連結ヒンジ部63は、断面が長方形のベルト形状であり、撓み変形可能に形成されている。
【0004】
第2カバー62は、連結ヒンジ部63の撓み変形によって、ヒューズユニット本体51の上面を覆う閉位置(図4の位置)と、ヒューズユニット本体51の上面より離間する開位置(図5の位置)との間で変移する。
【0005】
この従来例では、第1カバー61と第2カバー62が連結ヒンジ部63を介して連結されているので、第2カバー62を閉位置と開位置との間で変移しても第2カバー62が第1カバー61より離脱しないため、メンテナンス時等の作業性が良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−73808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来のカバー60では、ベルト状の連結ヒンジ部63が長手方向の全域に亘って断面均一に形成されている。従って、第2カバー62が閉位置から開位置に変移すると、連結ヒンジ部63が一直線状になる方向に引っ張られる。連結ヒンジ部63は、この引っ張り力によって、図6に詳しく示すように、第1カバー61と第2カバー62からの各根本部63aで急に折れ曲がる形状(曲率半径が小さくなる形状)で撓み変形する。そのため、連結ヒンジ部63の各根本部63aに応力が集中し、破損し易いという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、応力集中に起因する連結ヒンジ部の破損を防止できるカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電子機器の第1面を覆う第1カバーと、前記電子機器の第2面を覆う第2カバーと、前記第1カバーと前記第2カバー間を連結し撓み変形可能な連結ヒンジ部とを備え、前記連結ヒンジ部の撓み変形によって、前記第2カバーが前記電子機器の第2面を覆う閉位置と第2面より離間する開位置との間で変移するカバーであって、前記第1カバーと前記第2カバーに連結される前記連結ヒンジ部の各根本部は、前記各根本部より中間箇所の肉厚よりも厚く形成され、各根本部の中間箇所側は、中間箇所に向かって厚みを徐々に薄く形成され、前記連結ヒンジ部は、ベルト状であり、前記各根本部は、帯状の内面側が中間箇所よりも突出して厚く形成され、各根本部の中間箇所側は、帯状の内面側が徐々に突出量を減らして厚みを徐々に薄く形成されたことを特徴とするカバーである。
【0010】
前記連結ヒンジ部の前記各根元部は、前記第1カバーと前記第2カバーの取付面に対して垂直方向よりも相手側のカバー側に傾斜して取り付けされたものであっても良い。前記電子機器は、バッテリに固定されるヒューズユニットであり、前記電子機器の前記第1面が前記ヒューズユニットの側面であり、前記電子機器の前記第2面が前記ヒューズユニットの上面であるものを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第2カバーが閉位置から開位置に変移すると、連結ヒンジ部が一直線状になる方向に引っ張られるため、連結ヒンジ部の各根本部で折れ曲がる形状(曲率半径が小さくなる形状)で撓み変形する。ここで、各根本部は連結ヒンジ部の中間箇所の肉厚よりも厚く形成されているので、中間箇所に較べて曲げ剛性が高いため、各根本部で急な屈曲形状では曲がらない。そして、根本部の中間箇所側の肉厚が徐々に薄く形成されているので、この箇所の曲げ剛性が中間箇所に向かうに従って徐々に低くなっているため、この箇所で大きく(曲率半径が大きくなる形状で)曲がろうとする。従って、連結ヒンジ部の根本部での応力集中が軽減される。又、連結ヒンジ部の根本部は、中間箇所よりも肉厚が厚いために強度が高い。以上より、応力集中に起因する連結ヒンジ部の破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態を示し、第2カバーが閉位置にある状態のヒューズユニットの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態を示し、(a)は第2カバーが開位置にある状態のヒューズユニットの斜視図、(b)は連結ヒンジ部の拡大側面図である。
図3】本発明の一実施形態を示し、第2カバーが開位置にある状態での連結ヒンジ部の撓み変形を示す要部側面図である。
図4】従来例を示し、第2カバーが閉位置にある状態のヒューズユニットの斜視図である。
図5】従来例を示し、第2カバーが開位置にある状態のヒューズユニットの斜視図である。
図6】従来例を示し、第2カバーが開位置にある状態での連結ヒンジ部の撓み変形を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
この実施形態では、本発明のカバーがヒューズユニットのカバーに適用されている。以下、説明する。
【0015】
図1及び図2(a)に示すように、ヒューズユニット1は、バッテリ(図示せず)にバッテリ端子30を介して固定される電子機器であるヒューズユニット本体2と、このヒューズユニット本体2を覆うカバー10とを備えている。ヒューズユニット本体2は、L字状に折れ曲がったバスバー3と、このバスバー3を絶縁性樹脂材でオーバーモールドして形成された保護樹脂部4とを備えている。バスバー3には、複数の端子部3aと、過電流を阻止する可溶部(図示せず)とが設けられている。各端子部3aは、保護樹脂部4より露出している。
【0016】
カバー10は、ヒューズユニット本体2の第1面である側面を覆う第1カバー11と、ヒューズユニット本体2の第2面である上面を覆う第2カバー12と、第1カバー11と第2カバー12間を連結する連結ヒンジ部13とを備えている。第1カバー11は、ヒューズユニット本体2にロック手段(図示せず)を介して固定されている。第1カバー11には、左右一対のロック部11aが設けられている。第2カバー12には、下記する閉位置でロック部11aに係止される左右一対のロックアーム12aが設けられている。
【0017】
連結ヒンジ部13は、断面が偏平長方形のベルト形状であり、撓み変形可能に形成されている。連結ヒンジ部13は、図2(b)、図3に詳しく示すように、第1カバー11と第2カバー12に連結される2つの根本部13aが中間箇所(根本部13a以外の箇所)13bの肉厚(t1)よりも厚い肉厚(t2)に形成されている。各根本部13aの中間箇所側は、中間箇所13bに向かって厚みを徐々に薄く形成されている。各根本部13aは、帯状の内面側が中間箇所13bよりも突出して厚く形成されている。各根本部13aの中間箇所側は、帯状の内面側が徐々に突出量を減らして厚みを徐々に薄く形成されている。又、各連結ヒンジ部13は、図2(b)、図3に詳しく示すように、第1カバー11と第2カバー12の取付面11b,12bに対して垂直方向ではなく相手側のカバー側に傾斜して取り付けされている。傾斜角度Aは、図2(b)、図3に示すように、取付面11b,12bに対して約45度である。換言すれば、傾斜角度Aは、閉位置における連結ヒンジ部13の各根本部13aの延び方向(取付面11b,12bに対して直角方向)と開位置における連結ヒンジ部13の各根本部13aの引っ張られ方向(取付面11b,12bに対して平行方向)との間に角度に設定されている。
【0018】
このような連結ヒンジ部13で第1カバー11に連結された第2カバー12は、連結ヒンジ部13の撓み変形によって、第2カバー12がヒューズユニット本体2の上面を覆う閉位置(図1の位置)とヒューズユニット本体2の上面より離間する開位置(図2(a)の位置)との間で変移する。第2カバー12の閉位置では、連結ヒンジ部13が全域に亘って同じ曲率で屈曲して全体で大きな円弧形状に撓み変形する。閉位置に位置する第2カバー12にあって、各ロックアーム12aをロック部11aよりロック解除し、第2カバー12が閉位置から開位置に変移すると、連結ヒンジ部13が一直線状になる方向に引っ張られる。連結ヒンジ部13は、この引っ張り力によって、図3に示すように、第1カバー11と第2カバー12の各根本部13aで折れ曲がる形状(曲率半径が小さくなる形状)で撓み変形する。
【0019】
ここで、各根本部13aは連結ヒンジ部13の中間箇所13bの肉厚t1よりも厚い肉厚t2に形成されているので、中間箇所13bに較べて曲げ剛性が高いため、各根本部13aで急な屈曲形状では曲がらない。そして、各根本部13aの中間箇所側の肉厚が徐々に薄く形成されているので、この箇所の曲げ剛性が中間箇所13bに向かうに従って徐々に低くなっているため、この箇所で大きく(曲率半径が大きくなる形状で)曲がろうとする。換言すれば、急な屈曲形状(曲率半径が小さな形状)で曲がらない。従って、連結ヒンジ部13の根本部13aでの応力集中が軽減される。又、連結ヒンジ部13の根本部13aは、中間箇所13bよりも肉厚が厚いために強度が高い。以上より、応力集中に起因する連結ヒンジ部13の破損を防止できる。
【0020】
連結ヒンジ部13は、ベルト状であり、その各根本部13aは、帯状の内面側が中間箇所13bよりも突出して厚く形成されている。各根本部13aの中間箇所側は、帯状の内面側が徐々に突出量を減らして厚みを徐々に薄く形成されている。連結ヒンジ部13の外面は、面一となるため、見た目が良い。
【0021】
連結ヒンジ部13の各根本部13aは、第1カバー11と第2カバー12の各取付面11b,12bに対して相手側のカバー側に傾斜(傾斜角度:A)して取り付けされている。従って、第2カバー12が閉位置から開位置に変移し、連結ヒンジ部13が一直線状になる方向に引っ張り力を受けるが、この引っ張り力による連結ヒンジ部13の各根本部13aとこれに連続する中間箇所との間の折れ曲がり角度を小さくできる。これにより、最大曲げ応力を小さくできる。従来例では、図6に示すように、連結ヒンジ部63の各根本部63aは、第1カバー61と第2カバー62の各取付面61b,62bに対して垂直方向(取付角度:B=約90度)に取り付けされている。従って、第2カバー62が閉位置から開位置に変移し、連結ヒンジ部63が一直線状になる方向に引っ張り力を受けるが、この引っ張り力による連結ヒンジ部63の各根本部63aとこれに連続する中間箇所の折れ曲がり角度が大きくなり、大きな最大曲げ応力が発生する。このように、この実施形態では、連結ヒンジ部13の各根本部13aの取付角度によっても最大曲げ応力を小さくできる。
【0022】
この実施形態では、本発明がヒューズユニット1のカバー10に適用された場合を示したが、ヒューズユニット1以外の電子機器を覆うカバー10にも本発明は適用可能である。
【0023】
この実施形態では、連結ヒンジ部13の中間箇所13bが均一な断面形状であるが、根本部13aよりも曲げ剛性が低ければ不均一な断面形状であっても良い。
【0024】
この実施形態では、連結ヒンジ部13は、断面形状が偏平長方形であるが、偏平楕円形状であっても良く、ベルト状であれば断面形状を問わない。
【符号の説明】
【0025】
2 ヒューズユニット本体(電子機器)
10 カバー
11 第1カバー
11b,12b 取付面
12 第2カバー
13 連結ヒンジ部
13a 根本部
13b 中間箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6