【実施例】
【0034】
以下に本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
【0035】
使用した原材料
成分(a)塩化ビニル樹脂
成分(a−1):
製造会社:株式会社カネカ
種類: ポリ塩化ビニル
平均重合度:700
【0036】
成分(a−2):
製造会社:新第一塩ビ株式会社
種類: ポリ塩化ビニル
平均重合度:1300
【0037】
成分(b):グリセリンエステル系可塑剤
成分(b−1):
製造会社:理研ビタミン株式会社
商品名:BIOCIZER
種類:グリセリン[モノ及びジ脂肪酸(C=8〜18)]酢酸混合エステル
(主成分グリセリンジアセトモノラウレート)
(CAS No:91052−13−0)
【0038】
成分(b’)グリセリンエステル系可塑剤以外の可塑剤(比較成分)
比較成分(b’−1):
製造会社:株式会社ジェイプラス
商品名:DOP
種類:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート(DEHP)
【0039】
比較成分(b’−2):
製造会社:花王株式会社
商品名:TOTM
種類:トリメリット酸2−エチルヘキシル(TOTM)
【0040】
比較成分(b’−3):
製造会社: 株式会社ジェイプラス
商品名:DOA
種類:ジ(2−エチルヘキシル)アジペート(DEHA)
【0041】
比較成分(b’−4):
製造会社: BASFジャパン株式会社
商品名:Hexamoll
R DINCH
種類:ジイソノニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシレート(DINCH)
【0042】
成分(c)シラン化合物
成分(c−1): トリアルコキシシラン化合物
製造会社:東レダウコーニングシリコン株式会社
商品名: Z−6036
種類:3 − メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
【0043】
成分(c−2): トリアルコキシシラン化合物
製造会社:東レダウコーニングシリコン株式会社
商品名: Z−6519
種類:ビニルトリエトキシシラン
【0044】
成分(c−3): テトラアルコキシシラン化合物
製造会社:東レダウコーニングシリコン株式会社
商品名: Z−6697
種類:テトラエトキシシラン
【0045】
成分(d)その他の任意成分1(安定剤)
成分(d−1):ジオクチル錫ジメルカプト系安定剤
製造会社:株式会社ADEKA
種類: ジオクチル錫ジメルカプト
【0046】
成分(d−2):カルシウム亜鉛系複合安定剤
製造会社:株式会社ADEKA
種類: カルシウム亜鉛
【0047】
成分(e)その他の任意成分2(滑材)
成分(e−1): ポリエチレンワックス系滑材
製造会社:三井化学株式会社
種類:ポリエチレンワックス
【0048】
成分(e−2): モンタン酸系滑材
製造会社:クラリアントジャパン株式会社
種類:モンタン酸部分鹸化エステル
【0049】
評価方法
1.耐放射線変色(ΔYI値)
(1)下記で得られた塩化ビニル樹脂組成物からテストロールを用いてシートを作成し、これを更にプレス装置を用いて2mm厚プレスシートに成形してテストサンプルとした。テストサンプルは2片用意した。
(2)上記で得られたテストサンプルについて、照射前の黄色度(YI値)をJIS
K7105に準拠し、コンピュータカラーマッチングシステム〔住化カラー(株)製〕を用いて測定した。
(3)次いで、上記テストサンプルの一つにはコバルト60を線源とするγ線の20KGyの照射を行い、もう一つには40KGyの照射を行った。照射後サンプルを恒温恒湿の条件下(23℃、50%相対湿度)で3日間静置した。これはテストサンプルの着色黄変は、照射後もしばらくは徐々に進行するので、色を安定化させるためである。
(4)その後、照射後サンプルのYI値を上記と同じ方法で測定して、各々の照射後YI値を求めた。変色度の評価指標として、下記式で定義した黄変度(ΔYI値)を各々計算した。
ΔYI値=(照射後YI値)−(照射前YI値)
【0050】
2.耐放射線溶出性
(1)テストサンプルは、上記の1.耐放射線変色(ΔYI値)の測定と同じ方法で作成したものを用いた。
(2)γ線を照射前のテストサンプルと、コバルト60を線源とするγ線を40KGy照射後のテストサンプルについて、日本医療器材協会が定めた医療用プラスチック試験規格の塩化ビニル樹脂コンパウンドI規格に準拠し、ΔpHと紫外吸収スペクトルを測定した。
(3)即ち、テストサンプルを3mm四方に裁断し、所定量精秤して硬質ガラス製容器に投入し、121℃で1時間加熱抽出した。前記抽出液を所定量精秤し、試験液を作成した。またテストサンプルを投入しなかったこと以外は上記と同様の操作を行い、ブランクを作成した。
(4)上記で得た試験液の水素イオン指数(pH)とブランクの水素イオン指数(pH)を測定し、その差(ΔpH)を計算した。
(5)また上記で得た試験液の波長220〜350nmにおける紫外線吸収スペクトルの吸光度の最大値と、ブランクの波長220〜350nmにおける紫外線吸収スペクトルの吸光度の最大値を測定し、その差(ΔUV)を計算した。
(6)上記のようにしてγ線を照射前のテストサンプルのΔpHとΔUV、及びγ線を40KGy照射後のテストサンプルのΔpHとΔUVを求めた
(7)ΔpHについては、照射前、照射後の何れも1.5以下を合格と判断した。
(8)ΔUVについては、照射前、照射後の何れも0.1以下を合格と判断した。
【0051】
3.押出成形性
40mm単軸押出機と平板型の金型を用い、金型出口樹脂温度180℃、スクリュー回転数40rpmの条件で、押出シート成形を行い、ドローダウン性、押出シートの表面外観や形状を観察し、次の基準で評価した。
◎:ドローダウン性、押出シートの表面外観や形状について全く問題ない。
○:押出シートの表面にやや肌荒れがあるが、ドローダウン性や押出シートの形状については問題ない。
△:押出シートの表面に肌荒れがあり、端部の形状に乱れがあるが、ドローダウン性については問題ない。
×:押出シートの表面に顕著な肌荒れがあり、端部の形状に大きな乱れがあり、ドローダウン性も悪い。
【0052】
実施例1〜14、比較例1〜6
表1〜3の何れか1に示す量(質量部)の成分を、加圧ニーダーを用いて約160℃で溶融混練して塩化ビニル樹脂組成物を得た。上記の試験1〜3を行った。結果を表1〜3の何れか1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
表1および表2に示すように、実施例の本発明の医療用塩化ビニル樹脂組成物は、放射線滅菌に対し優れた耐変色性を有し、医療用材料に要求される溶出性試験において問題がなく、押出成形性にも優れる。これに対して比較例では、放射線滅菌に対する耐変色性、医療用材料に要求される溶出性試験、及び押出成形性の少なくとも何れか一つが劣った。