特許第6178658号(P6178658)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6178658医療用放射線滅菌対応塩化ビニル樹脂組成物およびそれからなる医療用器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178658
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】医療用放射線滅菌対応塩化ビニル樹脂組成物およびそれからなる医療用器具
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/18 20060101AFI20170731BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20170731BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20170731BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20170731BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   A61L31/18
   A61L31/12 100
   C08L27/06
   C08K5/103
   C08K5/54
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-164653(P2013-164653)
(22)【出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2015-33414(P2015-33414A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184653
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 寧
(72)【発明者】
【氏名】坂井昂次
【審査官】 渡邊 倫子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−209149(JP,A)
【文献】 特開昭58−032647(JP,A)
【文献】 特開昭59−225063(JP,A)
【文献】 特開昭58−212449(JP,A)
【文献】 特開2008−195898(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/020105(WO,A1)
【文献】 特開平08−176383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 31/00
C08L 27/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a)塩化ビニル樹脂100質量部;
成分(b)グリセリンエステル系可塑剤20〜250質量部;及び、
成分(c)シラン化合物0.1〜15質量部;
を含有し、ここで上記成分(b)が、グリセリンジアセトモノラウレートを50質量%以上含むことを特徴とする医療用放射線滅菌対応塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項2】
医療用チューブ又は医療用バッグであって、請求項1に記載の医療用放射線滅菌対応塩化ビニル樹脂組成物からなることを特徴とする医療用チューブ又は医療用バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用放射線滅菌対応塩化ビニル樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、γ線や電子線などの放射線を照射して滅菌する方法(以下、放射線滅菌と略すことがある。)に対し優れた耐変色性を有し、医療用材料に要求される溶出性試験において問題がなく、そのため医療用チューブや医療用バック等の医療用器具に好適に用いることのできる医療用放射線滅菌対応塩化ビニル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル等の医療用チューブや、血液バッグ、薬液バッグおよびドレインバッグ等の医療用バックなどの医療用器具は、成形性、接着性、加工性、耐熱性、耐キンク性および低価格性等の観点から、軟質塩化ビニル樹脂製のものが広く用いられている。軟質塩化ビニル樹脂は、柔軟性、弾性及び耐寒性等の性質を付与するために塩化ビニル樹脂に可塑剤を配合し、必要に応じて安定剤などの各種添加剤を添加し、溶融混練することにより得られる。上記可塑剤としては、従来、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(以下、DEHPと略すことがある。)等のフタル酸エステル類が使用されてきた。(例えば、特許文献1)
【0003】
医療用チューブは、血管、消化管、尿道あるいは気管などへ挿入して用いられる。また血液や薬液が医療用チューブを通って体内へと送られる。医療用バッグは、血液あるいは薬液を内容物としており、これらの内容物は、血管等から体内へと輸血あるいは輸液される。そのため医療用チューブや医療用バッグなどの医療用器具は、高度の滅菌処理が不可欠である。滅菌処理の方法としては、高度の滅菌ができること、及び梱包後の滅菌が可能であり、滅菌作業の迅速化やコスト低減を図ることができることから、コバルト60などを線源とするγ線を用いる滅菌方法(以下、γ線滅菌と略すことがある。)や電子線を用いた滅菌方法などのいわゆる放射線滅菌が普及している。特にγ線滅菌は、γ線の透過力が大きいため、滅菌を均一に、ロット振れなく行うことができるので、広く普及している。
【0004】
ところが、可塑剤としてDEHPを用いた軟質塩化ビニル樹脂製の医療用器具は、放射線滅菌を行うと変色する、特にγ線滅菌を行うと大きく変色するという問題があった。また、医療用器具は溶出物試験で問題のないことが不可欠であり、また溶出物の量がより少ないことを要求されている。
【0005】
そこで可塑剤としてDEHPの替わりに、トリメリット酸2−エチルヘキシル(TOTM)やジイソノニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシレート(DINCH)を含む軟質塩化ビニル樹脂が提案されている(例えば、特許文献2〜5)。しかし、これらの可塑剤を用いても、放射線滅菌を行うと変色する問題は依然として残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−218750号公報
【特許文献2】特開2005−230058号公報
【特許文献3】特開2005−40397号公報
【特許文献4】特開2006−61226号公報
【特許文献5】特開2008−195898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、医療用塩化ビニル樹脂組成物であって、放射線滅菌に対する優れた耐変色性を有し、医療用材料に要求される溶出性試験において問題がなく、したがって医療用チューブや医療用バッグなどの医療用器具に好適に用いることのできる塩化ビニル樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究した結果、塩化ビニル樹脂の可塑剤としてグリセリンエステル系可塑剤を用いると、上記目的が達成されることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明の第一の発明によれば、
成分(a)塩化ビニル樹脂100質量部、
成分(b)グリセリンエステル系可塑剤20〜250質量部、
を含有することを特徴とする医療用塩化ビニル樹脂組成物が提供される。
【0010】
第二の発明によれば、上記成分(b)が、グリセリンジアセトモノラウレートを主成分とすることを特徴とする第一の発明に記載の医療用塩化ビニル樹脂組成物が提供される。
【0011】
第三の発明によれば、さらに成分(c)シラン化合物を、上記成分(a)100質量部に対して0.1〜15質量部含有することを特徴とする第一の発明又は第二の発明に記載の医療用塩化ビニル樹脂組成物が提供される。
【0012】
第四の発明によれば、医療用チューブ又は医療用バッグであって、第一の発明から第三の発明の何れか一つに記載の医療用塩化ビニル樹脂組成物からなることを特徴とする医療用チューブ又は医療用バッグが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の医療用塩化ビニル樹脂組成物は、γ線や電子線などの放射線を照射して滅菌する方法、特にγ線滅菌に対する優れた耐変色性を有し、医療用材料に要求される溶出性試験において問題がなく、そのため、経管栄養チューブ、血液透析チューブ、呼吸器チューブ、カテーテル、圧モニターチューブおよびヘパリンチューブ等の医療用チューブ;血液バッグ、薬液バッグおよびドレインバッグ等の医療用バッグ;などの医療用器具に好適に用いられる。また本発明の医療用塩化ビニル樹脂組成物は、押出成形性が極めて良好であるため、医療用チューブに特に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の医療用塩化ビニル樹脂組成物を構成する各成分について、説明する。
【0015】
成分(a)「塩化ビニル樹脂」(必須成分)
本発明の成分(a)として用いる塩化ビニル樹脂は、−CH−CHCl−で表される基を有する全ての重合体を指し、塩化ビニルの単独重合体;塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル・マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・プロピレン共重合体、塩化ビニル・スチレン共重合体、塩化ビニル・イソブチレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・スチレン・無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル・スチレン・アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・イソプレン共重合体、塩化ビニル・塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン・酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル・各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニルと塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの共重合体;後塩素化ビニル共重合体等の塩化ビニル単独重合体や塩化ビニル系共重合体を改質したもの;さらには塩素化ポリエチレン等の構造上塩化ビニル樹脂と類似の塩素化ポリオレフィンを包含する。
【0016】
塩化ビニル樹脂は、数平均重合度が300以上7000以下であるのが好ましく、更には500以上2000以下の重合度を有していることが望ましい。
【0017】
本発明の成分(a)としては、これらの塩化ビニル樹脂の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0018】
成分(b)「グリセリンエステル系可塑剤」(必須成分)
本発明の成分(b)として用いるグリセリンエステル系可塑剤は、グリセリンと酢酸などの炭素数2のカルボン酸;及び/又はカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸などの炭素数8〜18の脂肪酸;とのエステル化合物であり、下記の一般式(I)で示される。
【0019】
【化1】
(式中、R1、R2、R3は、アシル基または水素原子を示し、該アシル基の炭素数は、2又は8〜18である。)
【0020】
上記炭素数2のカルボン酸としては、酢酸が好ましく、上記酢酸としては、例えば、工業用酢酸、食品用酢酸、無水酢酸を用いることができる。上記炭素数8〜18の脂肪酸としては、制限されず、石油等を原料とする脂肪酸、ヤシ油やパーム核油などの天然油脂を原料とする脂肪酸の何れも用いることができる。
【0021】
炭素数3〜7の脂肪酸や炭素数19以上の脂肪酸を用いたのでは、放射線滅菌に対する耐変色性、押出成形性、溶出性試験に劣る。
【0022】
グリセリンエステル系可塑剤としては、例えば、理研ビタミン株式会社の「BIOCIZER(商品名)(主成分グリセリンジアセトモノラウレート)」をあげることができる。該BIOCIZERはパーム核油由来の脂肪酸を用いている。また「主成分」とは、50質量%以上含むという意味である。
【0023】
上記成分(b)の配合量は、医療用塩化ビニル樹脂組成物を放射線滅菌に対する優れた耐変色性を有し、医療用材料に要求される溶出性試験において問題がないものにするために、成分(a)100質量部に対して20〜250質量部である。好ましくは20〜150質量部である。20質量部未満では放射線滅菌に対する耐変色性が不十分である。250質量部を超えると溶出性試験のΔpH値が悪化したり、成分(b)がブリードアウトしたりする。
【0024】
成分(c)「シラン化合物」(任意成分)
本発明の任意成分である成分(c)シラン化合物は、アルコキシシラン化合物、クロロシラン化合物、アセトキシシラン化合物及びオルガノシラン化合物からなる群から選択される1種以上のシラン化合物である。
【0025】
上記成分(c)を、上記成分(a)100重量部に対して0.1〜15重量部用いることにより、放射線滅菌に対する耐変色性を向上させることができる。また押出成形性を極めて安定したものにすることができる。より好ましくは1〜10質量部である。
【0026】
上記アルコキシシラン化合物としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシランなどのモノアルコキシシラン化合物;ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルアミノエトキシプロピルジアルコキシシラン、N−(βアミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどのジアルコキシシラン化合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(フェニル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−(ポリエチレンアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのトリアルコキシシラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物などがあげられる。
【0027】
上記アセトキシシラン化合物としては、例えば、ビニルトリアセトキシシランなどがあげられる。
【0028】
上記クロロシラン化合物としては、例えば、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−クロロプロピルメチルジクロロシランなどがあげられる。
【0029】
上記オルガノシラン化合物は、前記アルコキシシラン化合物、アセトキシシラン化合物、クロロシラン化合物以外の、ケイ素原子に、アルキル基、ビニル基、(メタ)アクリル基、アリル基、酢酸メチル基などの基が直接結合しているシラン化合物を示すものであり、例えば、トリイソプロピルシラン、トリイソプロピルシリルアクリレート、アリルトリメチルシラン、トリメチルシリル酢酸メチルなどがあげられる。
【0030】
これらのシラン化合物の中でも、耐放射線性と押出成形性の点から、モノアルコキシシラン化合物、ジアルコキシシラン化合物、トリアルコキシシラン化合物及びテトラアルコキシシラン化合物からなる群から選択される1種以上のアルコキシシラン化合物が好ましく、トリアルコキシシラン化合物およびテトラアルコキシシランがより好ましく、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランがさらに好ましい。
【0031】
また、本発明においては、これらのシラン化合物を2種以上併用することも可能であり、特に限定されるものではない。
【0032】
また本発明の医療用塩化ビニル樹脂組成物は、任意成分として、医療用途向け塩化ビニル樹脂及びその樹脂組成物に通常用いられる安定剤を配合してもよい。上記安定剤としては、例えば、有機スズ化合物、バリウム−亜鉛系およびカルシウム−亜鉛系の安定剤が挙げられる。安定剤の添加量は、成分(a)100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。
【0033】
本発明の医療用塩化ビニル樹脂組成物は、成分(a)塩化ビニル樹脂、成分(b)グリセリンエステル系可塑剤、及び所望に応じて用いる任意成分を、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ミキサー又は各種のニーダー等を使用して溶融混練することにより得ることができる。好ましくは加圧ニーダーを用い、樹脂温度120〜160℃で、5〜10分間の溶融混練することにより得ることができる。
【実施例】
【0034】
以下に本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
【0035】
使用した原材料
成分(a)塩化ビニル樹脂
成分(a−1):
製造会社:株式会社カネカ
種類: ポリ塩化ビニル
平均重合度:700
【0036】
成分(a−2):
製造会社:新第一塩ビ株式会社
種類: ポリ塩化ビニル
平均重合度:1300
【0037】
成分(b):グリセリンエステル系可塑剤
成分(b−1):
製造会社:理研ビタミン株式会社
商品名:BIOCIZER
種類:グリセリン[モノ及びジ脂肪酸(C=8〜18)]酢酸混合エステル
(主成分グリセリンジアセトモノラウレート)
(CAS No:91052−13−0)
【0038】
成分(b’)グリセリンエステル系可塑剤以外の可塑剤(比較成分)
比較成分(b’−1):
製造会社:株式会社ジェイプラス
商品名:DOP
種類:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート(DEHP)
【0039】
比較成分(b’−2):
製造会社:花王株式会社
商品名:TOTM
種類:トリメリット酸2−エチルヘキシル(TOTM)
【0040】
比較成分(b’−3):
製造会社: 株式会社ジェイプラス
商品名:DOA
種類:ジ(2−エチルヘキシル)アジペート(DEHA)
【0041】
比較成分(b’−4):
製造会社: BASFジャパン株式会社
商品名:Hexamoll DINCH
種類:ジイソノニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシレート(DINCH)
【0042】
成分(c)シラン化合物
成分(c−1): トリアルコキシシラン化合物
製造会社:東レダウコーニングシリコン株式会社
商品名: Z−6036
種類:3 − メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
【0043】
成分(c−2): トリアルコキシシラン化合物
製造会社:東レダウコーニングシリコン株式会社
商品名: Z−6519
種類:ビニルトリエトキシシラン
【0044】
成分(c−3): テトラアルコキシシラン化合物
製造会社:東レダウコーニングシリコン株式会社
商品名: Z−6697
種類:テトラエトキシシラン
【0045】
成分(d)その他の任意成分1(安定剤)
成分(d−1):ジオクチル錫ジメルカプト系安定剤
製造会社:株式会社ADEKA
種類: ジオクチル錫ジメルカプト
【0046】
成分(d−2):カルシウム亜鉛系複合安定剤
製造会社:株式会社ADEKA
種類: カルシウム亜鉛
【0047】
成分(e)その他の任意成分2(滑材)
成分(e−1): ポリエチレンワックス系滑材
製造会社:三井化学株式会社
種類:ポリエチレンワックス
【0048】
成分(e−2): モンタン酸系滑材
製造会社:クラリアントジャパン株式会社
種類:モンタン酸部分鹸化エステル
【0049】
評価方法
1.耐放射線変色(ΔYI値)
(1)下記で得られた塩化ビニル樹脂組成物からテストロールを用いてシートを作成し、これを更にプレス装置を用いて2mm厚プレスシートに成形してテストサンプルとした。テストサンプルは2片用意した。
(2)上記で得られたテストサンプルについて、照射前の黄色度(YI値)をJIS
K7105に準拠し、コンピュータカラーマッチングシステム〔住化カラー(株)製〕を用いて測定した。
(3)次いで、上記テストサンプルの一つにはコバルト60を線源とするγ線の20KGyの照射を行い、もう一つには40KGyの照射を行った。照射後サンプルを恒温恒湿の条件下(23℃、50%相対湿度)で3日間静置した。これはテストサンプルの着色黄変は、照射後もしばらくは徐々に進行するので、色を安定化させるためである。
(4)その後、照射後サンプルのYI値を上記と同じ方法で測定して、各々の照射後YI値を求めた。変色度の評価指標として、下記式で定義した黄変度(ΔYI値)を各々計算した。
ΔYI値=(照射後YI値)−(照射前YI値)
【0050】
2.耐放射線溶出性
(1)テストサンプルは、上記の1.耐放射線変色(ΔYI値)の測定と同じ方法で作成したものを用いた。
(2)γ線を照射前のテストサンプルと、コバルト60を線源とするγ線を40KGy照射後のテストサンプルについて、日本医療器材協会が定めた医療用プラスチック試験規格の塩化ビニル樹脂コンパウンドI規格に準拠し、ΔpHと紫外吸収スペクトルを測定した。
(3)即ち、テストサンプルを3mm四方に裁断し、所定量精秤して硬質ガラス製容器に投入し、121℃で1時間加熱抽出した。前記抽出液を所定量精秤し、試験液を作成した。またテストサンプルを投入しなかったこと以外は上記と同様の操作を行い、ブランクを作成した。
(4)上記で得た試験液の水素イオン指数(pH)とブランクの水素イオン指数(pH)を測定し、その差(ΔpH)を計算した。
(5)また上記で得た試験液の波長220〜350nmにおける紫外線吸収スペクトルの吸光度の最大値と、ブランクの波長220〜350nmにおける紫外線吸収スペクトルの吸光度の最大値を測定し、その差(ΔUV)を計算した。
(6)上記のようにしてγ線を照射前のテストサンプルのΔpHとΔUV、及びγ線を40KGy照射後のテストサンプルのΔpHとΔUVを求めた
(7)ΔpHについては、照射前、照射後の何れも1.5以下を合格と判断した。
(8)ΔUVについては、照射前、照射後の何れも0.1以下を合格と判断した。
【0051】
3.押出成形性
40mm単軸押出機と平板型の金型を用い、金型出口樹脂温度180℃、スクリュー回転数40rpmの条件で、押出シート成形を行い、ドローダウン性、押出シートの表面外観や形状を観察し、次の基準で評価した。
◎:ドローダウン性、押出シートの表面外観や形状について全く問題ない。
○:押出シートの表面にやや肌荒れがあるが、ドローダウン性や押出シートの形状については問題ない。
△:押出シートの表面に肌荒れがあり、端部の形状に乱れがあるが、ドローダウン性については問題ない。
×:押出シートの表面に顕著な肌荒れがあり、端部の形状に大きな乱れがあり、ドローダウン性も悪い。
【0052】
実施例1〜14、比較例1〜6
表1〜3の何れか1に示す量(質量部)の成分を、加圧ニーダーを用いて約160℃で溶融混練して塩化ビニル樹脂組成物を得た。上記の試験1〜3を行った。結果を表1〜3の何れか1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
表1および表2に示すように、実施例の本発明の医療用塩化ビニル樹脂組成物は、放射線滅菌に対し優れた耐変色性を有し、医療用材料に要求される溶出性試験において問題がなく、押出成形性にも優れる。これに対して比較例では、放射線滅菌に対する耐変色性、医療用材料に要求される溶出性試験、及び押出成形性の少なくとも何れか一つが劣った。