【文献】
NISHIGAKI, Takayuki, et al.,Prevention of Dew Condensation occurring in the Oxygenator for Extracorporeal Life Support in vitro Model,World Automation Congress (WAC), 2012,IEEE,2012年,p. 1-6
【文献】
吉田秀人,ほか8名,MENOX AL6000αの設置方向によるガス交換能への影響,体外循環技術,2001年,Vol. 28, No. 4,p. 29-33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における人工肺システムの概略図であり、
図2は、
図1に示す人工肺の模式断面図である。まず、これら
図1および
図2を参照して、本実施の形態における人工肺システム1Aおよびこれに具備される人工肺10について説明する。
【0020】
図1に示すように、人工肺システム1Aは、人工肺10と、制御部としてのコントローラ30と、送血ポンプ40と、送血ポンプ駆動部41と、熱交換器50と、循環ポンプ51と、酸素タンク60と、流量制御弁61と、給電部としてのバッテリー70と、送風ファン80と、送風ファン駆動部81と、体外循環経路90とを主として備えている。
【0021】
人工肺10は、外部灌流方式の中空糸膜型人工肺である。人工肺10は、体外循環経路90上に設けられており、体外循環経路90に接続される血液流入部21および血液流出部22を有している。また、人工肺10には、熱交換水が循環する熱交換回路に接続される熱交換水流入部23および熱交換水流出部24が設けられている。さらに、人工肺10には、酸素を供給するための酸素供給回路に接続されるガス流入部25と、ガス流出部26とが設けられている。
【0022】
図2に示すように、人工肺10は、その内部に熱交換部12とガス交換部13とを含んでおり、熱交換部12において血液の温度調節を行なうとともに、ガス交換部13において血液のガス交換を行なう。なお、人工肺10の詳細な構造については、後述することとする。
【0023】
図1に示すように、送血ポンプ40は、体外循環経路90上に設けられており、患者100の体外に導かれた血液を体外循環経路90中において循環させて体内に戻すために血液を圧送するものである。送血ポンプ40としては、遠心力によって血液の圧送を行なう遠心ポンプが特に好適に利用されるが、スクィーズポンプやローラーポンプ等によって構成されていてもよい。
【0024】
送血ポンプ駆動部41は、送血ポンプ40を駆動するための部位であり、たとえばモータ等によって構成される。送血ポンプ駆動部41は、コントローラ30によってその駆動が制御され、これにより送血ポンプ40の動作が制御される。
【0025】
体外循環経路90は、患者100の体外において血液を循環させるための経路であり、たとえばフレキシブルチューブ等からなる脱血路91および返血路92によって主として構成されている。
【0026】
脱血路91は、その一端が患者100の大腿静脈101に経皮的に挿入されたカニューレ93に接続され、その他端が送血ポンプ40を介して人工肺10の血液流入部21に接続される。返血路92は、その一端が患者100の大腿動脈102に経皮的に挿入されたカニューレ94に接続され、その他端が人工肺10の血液流出部22に接続される。なお、脱血路91に接続されたカニューレ93は、通常、その先端が患者100の右心房103に達するように大腿静脈101に挿入される。
【0027】
熱交換器50は、熱交換回路上に設けられており、熱交換水を加熱するためのものである。循環ポンプ51は、熱交換回路上に設けられており、熱交換水を上記熱交換回路中において循環させるために熱交換水を圧送するものである。当該循環ポンプ51は、図示しない循環ポンプ駆動部によって駆動され、その動作が制御される。
【0028】
酸素タンク60は、酸素供給回路に接続されており、人工肺10に酸素を供給するための酸素供給源となるものである。流量制御弁61は、酸素供給回路上に設けられており、人工肺10に供給される酸素の量を調節するためのものである。当該流量制御弁61は、図示しないレギュレータによってその動作が制御される。
【0029】
送風ファン80は、人工肺システム1Aの外部に位置する空気(すなわち外気)を取り込んでこれを人工肺システム1Aに含まれる発熱部品(たとえばコントローラ30や送血ポンプ駆動部41、バッテリー70等)に吹き付け、これにより当該発熱部品を冷却するためのものである。また、送風ファン80は、上記機能以外にも、後述する人工肺10のガス流出部26において発生し得る結露を防止するための機能も併せ備えるが、この点については後述することとする。送風ファン80としては、図示する如くのプロペラファンが利用でき、これ以外にもシロッコファン等各種のものが利用できる。
【0030】
送風ファン駆動部81は、送風ファン80を駆動するための部位であり、たとえばモータ等によって構成される。送風ファン駆動部81は、コントローラ30によってその駆動が制御され、これにより送風ファン80の動作が制御される。
【0031】
コントローラ30は、人工肺システム1Aの動作の大部分を集中的に制御する部位であり、たとえばマイクロコンピュータ等を含む各種の電子部品が実装された回路基板にて構成される。コントローラ30は、たとえば送血ポンプ駆動部41の駆動を制御することで送血ポンプ40によって圧送される血液の流量を調節したり、送風ファン駆動部81の駆動を制御することで送風ファン80の動作を制御したりする。
【0032】
バッテリー70は、人工肺システム1Aに含まれる各種の構成要素に給電を行なうための独立電源である。ここで、給電が行なわれる各種の構成要素には、上述したコントローラ30、送血ポンプ駆動部41、循環ポンプ駆動部、レギュレータ、送風ファン駆動部81等が含まれる。
【0033】
図2に示すように、人工肺10は、複数の部材が組み合わされることで構成されたケーシング11を有しており、その内部に熱交換部12とガス交換部13とを含んでいる。熱交換部12とガス交換部13とは、互いに連通している。
【0034】
熱交換部12を規定する部分のケーシング11には、上述した血液流入部21が設けられており、ガス交換部13を規定する部分のケーシング11には、上述した血液流出部22が設けられている。これにより、患者100の体外に導かれた血液は、血液流入部21を介して人工肺10の内部に流入し、熱交換部12およびガス交換部13をこの順で経由した後、血液流出部22を介して人工肺10の外部に流出する。
【0035】
熱交換部12の内部には、複数の伝熱管14が配設されている。複数の伝熱管14は、その内部を熱交換水が通流するものであり、熱交換部12を横切るように互いに並行して設けられている。複数の伝熱管14の一端側に対応する部分のケーシング11には、上述した熱交換水流入部23が設けられており、複数の伝熱管14の他端側に対応する部分のケーシング11には、上述した熱交換水流出部24が設けられている。
【0036】
これにより、熱交換器50にて加熱された熱交換水は、熱交換水流入部23を介して人工肺10の内部に流入し、伝熱管14の内部を経由した後、熱交換水流出部24を介して人工肺10の外部に流出する。その際、伝熱管14の内部を通流する熱交換水と伝熱管14の外部を通流する血液との間で熱交換が行なわれることになり、血液が適切な温度に加温されることでその温度調節が行なわれる。なお、熱が奪われることで冷却された熱交換水は、熱交換器50に流入することで再度加熱される。
【0037】
ガス交換部13の内部には、複数の中空糸膜16の束からなる中空糸束15が配設されている。複数の中空糸膜16は、その内部をガスが通流するものであり、ガス交換部13を横切るように互いに並行して設けられている。ここで、中空糸膜16は、酸素および二酸化炭素等のガスが透過可能な筒状の部材からなり、これを数千本から数万本束ねることで上述した中空糸束15が形成されている。
【0038】
複数の中空糸膜16の一端側に対応する部分のケーシング11には、上述したガス流入部25が設けられており、複数の中空糸膜16の他端側に対応する部分のケーシング11には、上述したガス流出部26が設けられている。なお、ガス流出部26は、ケーシング11に設けられた開口部にて構成されており、ガス流入部25とは異なり、ケーシング11の外部に向けて突出する略円筒形状のポートは特に有していない。
【0039】
これにより、酸素タンク60から供給された酸素は、ガス流入部25を介して人工肺10の内部に流入し、ガス交換部13において中空糸膜16の内部を通流することになる。一方、人工肺10の内部に流入した血液は、熱交換部12においてその温度調節が行なわれた後、ガス交換部13において中空糸膜16の外部を通流することになる。
【0040】
その際、酸素と二酸化炭素との分圧差に基づき、中空糸膜16の外部に位置する血液中に含まれる二酸化炭素が中空糸膜16を透過して中空糸膜16の内部に移動し、中空糸膜16の内部に位置する酸素が中空糸膜16を透過して中空糸膜16の外部に移動する。これにより、血液中から二酸化炭素が除去されるとともに血液中に酸素が付加されることになり、静脈血のガス交換が行なわれる。なお、中空糸膜16の内部に移動した二酸化炭素は、中空糸膜16の内部を通流した後、ガス流出部26を介して人工肺10の外部に流出する。
【0041】
ここで、
図1に示すように、本実施の形態における人工肺システム1Aにあっては、人工肺10にて結露水が発生することを抑制するために、結露水の発生箇所である中空糸膜16の上記他端側(すなわち、人工肺10のガス流出部26が設けられた部分近傍)を、送血ポンプ駆動部41、コントローラ30、バッテリー70および送風ファン駆動部81にて生じる廃熱を利用して加熱することとしている。
【0042】
すなわち、本実施の形態における人工肺システム1Aは、その動作時において、モータ等からなる送血ポンプ駆動部41および送風ファン駆動部81、各種電子部品が実装された回路基板等にて構成されたコントローラ30、バッテリー70等の発熱部品を熱源Aとして、当該熱源Aにて生じる熱によって加温された高温の空気により、上述した結露水の発生箇所である加熱対象部位Bを加熱することとし、これにより当該加熱対象部位Bにおける結露水の発生を防止することとしている。
【0043】
より詳細には、比較的低温の外気(すなわち、送風ファン80によって取り込まれた外気)が、上述した熱源Aに接触することで加温され、加温された比較的高温の空気が加熱対象部位Bに送られることにより、当該加熱対象部位Bが加熱される。そのため、人工肺10のガス流出部26付近において中空糸膜15中を通流するガスに含まれる水蒸気が当該ガス流出部26付近において急激に冷却されてしまうことが防止でき、結果として中空糸膜15の内表面において結露水が発生することが未然に防止できる。
【0044】
すなわち、送風ファン80は、上述したように発熱部品を冷却するものであるとともに、同時に熱源Aである送血ポンプ駆動部41、コントローラ30、バッテリー70および送風ファン駆動部81によって加温された高温の空気を強制的に加熱対象部位Bである人工肺10のガス流出部26近傍に向けて送るためのものでもある。
【0045】
ここで、外気(すなわち、送風ファン80によって取り込まれた外気)は、上記熱源Aによって加熱されることでその飽和水蒸気量が高められた状態となるため、水蒸気分圧の低い乾燥した空気として加熱対象部位Bである人工肺10のガス流出部26近傍に送られることになる。したがって、当該乾燥した空気がガス流出部26近傍に送られるように構成することにより、ガス流出部26近傍において水蒸気分圧が未飽和の状態となり、その後に温度低下が生じたとしても直ちに結露水が発生しなくなるため、結露水によってガス流出部26側に位置する中空糸膜16の開口端が閉塞されてしまうことが確実に防止できる。
【0046】
したがって、上記のように構成することにより、別途断熱材やヒータ等を設けずとも加熱対象部位Bであるガス流出部26近傍を加熱することが可能になり、システム構成が複雑化することや装置コストが増大することなく結露水の発生が抑制できることになり、ガス交換効率の低下が抑制できることになる。また、別途ヒータを追加する必要もなく、バッテリー70の電力消費量を抑えることも可能であるため、停電等の不測の事態が生じた場合であっても人工肺システムを長時間にわたって使用することができる。
【0047】
なお、本実施の形態における人工肺システム1Aにおいては、送風ファン80および送風ファン駆動部81を設ける分だけシステム構成が複雑化したり装置コストが増大したりすることになるが、結露水の発生がより確実に抑制できる点において優位なものとなる。また、送風ファン80を高速回転させずとも低速回転で十分に加熱対象部位Bの加熱が行なえるため、送風ファン駆動部81において消費される電力消費量は、別途ヒータを追加する場合に加えて十分に小さく、バッテリー70の電力消費量を抑えることも可能である。
【0048】
図3は、本実施の形態における人工肺システムの好適なユニット構成例に係るプライミング動作時の状態を示す概略図であり、
図4は、体外循環動作時の状態を示す概略図である。次に、これら
図3および
図4を参照して、本実施の形態における人工肺システム1Aの好適なユニット構成例について説明する。
【0049】
一般に、人工肺システムにおいては、患者の血液を実際に体外循環させるに先立ち、プライミングが行なわれる。プライミングとは、生理食塩水等のプライミング液を予め体外循環経路に流入させ、体外循環経路内に位置する空気を体外循環経路の外部へと排出させる処理である。当該プライミングを予め行なうことにより、その後に実施される体外循環の際に患者の体内へ空気が入り込んでしまうことが防止できる。
【0050】
本実施の形態における人工肺システム1Aにおいても、体外循環動作に移行するに先立ってプライミング動作が行なわれる。プライミング動作時においては、脱血路91の開放端にプライミング液が封止された液体パックが接続され、送血ポンプ40が駆動されることで体外循環経路90、送血ポンプ40および人工肺10の内部がプライミング液によって充填される。
【0051】
ここで、本実施の形態における人工肺システム1Aにあっては、好適には、
図3および
図4に示す如くのユニット構成とされる。すなわち、人工肺システム1Aは、第1ユニットとしての非ディスポーザブルユニット2と第2ユニットとしてのディスポーザブルユニット3とに少なくともそのハウジングが分割され、このうちの非ディスポーザブルユニット2の内部に上述した熱源Aとなり得る送血ポンプ駆動部41、コントローラ30およびバッテリー70および送風ファン駆動部81と、送風ファン80とが設置され、残るディスポーザブルユニット3の内部に上述した加熱対象部位Bを含む人工肺10が組付けられる。
【0052】
また、送血ポンプ40は、非ディスポーザブルユニット2の外部の所定位置に着脱自在に組付けられ、熱交換器50や循環ポンプ51、循環ポンプ駆動部、酸素タンク60、流量制御弁等(
図3および
図4においては不図示)は、いずれもこれら非ディスポーザブルユニット2およびディスポーザブルユニット3の外部に設置される。
【0053】
非ディスポーザブルユニット2は、たとえば図示するように略直方体状のハウジングによって覆われており、ディスポーザブルユニット3に対向しない部分の所定位置に吸気口2aを有するとともに、ディスポーザブルユニット3に対向する主面の所定位置に排気口2b1を有している。一方、ディスポーザブルユニット3は、非ディスポーザブルユニット2に対向する部分が開口した箱形状のハウジングによって覆われている。
【0054】
なお、理解を容易とするために、
図3および
図4においては、非ディスポーザブルユニット2とディスポーザブルユニット3とを離隔させてこれらを図示しているが、実際には非ディスポーザブルユニット2とディスポーザブルユニット3とは近接配置され、当該近接配置された状態において、送血ポンプ40は、ディスポーザブルユニット3内に収容されるように構成されている。
【0055】
非ディスポーザブルユニット2に収容された送血ポンプ駆動部41、コントローラ30、バッテリー70、送風ファン80および送風ファン駆動部81は、いずれも患者の血液に接触するものではないため、その繰り返しの使用が可能である。一方、ディスポーザブルユニット3に収容された人工肺10および非ディスポーザブルユニット2に着脱自在に組付けられた送血ポンプ40は、いずれも患者の血液に接触するものであるため、衛生上の観点から使い捨てとされる。そのため、上記のようにハウジングを分割して構成することにより、利便性の面で優れたものとなる。
【0056】
図3および
図4に示すように、ディスポーザブルユニット3は、非ディスポーザブルユニット2に対して回動可能に組付けられている。より具体的には、ディスポーザブルユニット3は、水平方向(図中に示すX軸方向)に延在する回動軸4を中心に
図3中に示す矢印C方向に沿って回動可能となるように非ディスポーザブルユニット2に組付けられており、これにより人工肺10の向きが切り替え可能となるように構成されている。なお、ディスポーザブルユニット3を回動可能にする回動機構としては、たとえばヒンジ等が利用可能である。
【0057】
図3に示す状態は、プライミング動作時において人工肺10が取るべき姿勢を実現可能にする第1状態である。当該第1状態においては、人工肺10は、ガス流入部25およびガス流出部26が水平方向(図中に示すY軸方向)に沿って並ぶとともに血液流入部21および血液流出部22が鉛直方向(図中に示すZ軸方向)に沿って並び、かつ血液流出部22が血液流入部21よりも鉛直上方に配置される姿勢を取る。
【0058】
プライミング動作時において人工肺10が上記姿勢を取ることにより、人工肺10の内部の空間がプライミング液によって鉛直下方から鉛直上方に向けて順次充填されていくことになるため、人工肺10の内部の空気がスムーズに人工肺10の外部に押し出され、人工肺10の内部に空気が残留してしまうことが確実に防止できる。
【0059】
なお、上述した第1状態においては、人工肺10の加熱対象部位Bが非ディスポーザブルユニット2に設けられた排気口2b1に対面しない状態とされる。これは、プライミング動作時において、人工肺10に結露水が発生するおそれがないためである。
【0060】
一方、
図4に示す状態は、体外循環動作時において人工肺10が取るべき姿勢を実現可能にする第2状態である。当該第2状態においては、人工肺10は、ガス流入部25およびガス流出部26が鉛直方向(図中に示すZ軸方向)に沿って並ぶとともに血液流入部21および血液流出部22が水平方向(図中に示すY軸方向)に沿って並び、かつガス流入部25がガス流出部26よりも鉛直上方に配置される姿勢を取る。
【0061】
ここで、上記第2状態においては、人工肺10の加熱対象部位Bが非ディスポーザブルユニット2に設けられた排気口2b1に対面した状態とされる。そして、当該第2状態において、人工肺システム1Aが作動することにより、送風ファン80が駆動されることになる。
【0062】
これにより、送風ファン80の作用によって吸気口2aを介して外気が非ディスポーザブルユニット2の内部に取り込まれ、取り込まれた外気が非ディスポーザブルユニット2の内部において強制的に対流させられることで熱源Aである送血ポンプ駆動部41、コントローラ30、バッテリー70および送風ファン駆動部81によって加温される。そして、加温された高温の空気は、排気口2b1を介してディスポーザブルユニット3内に流入し、加熱対象部位Bである人工肺10のガス流出部26近傍に送られる。そのため、当該排気口2aを介して排気された高温の空気によって加熱対象部位Bの加熱が行なわれることになる。
【0063】
したがって、体外循環動作時において人工肺10が上記姿勢を取ることにより、選択的に加熱対象部位Bが加熱されることになり、効率的に結露水の発生が抑制でき、ガス交換効率の低下が抑制できることになる。
【0064】
加えて、上記構成を採用することにより、万が一にも人工肺10において中空糸膜16中に結露水が発生した場合にも、中空糸膜16中におけるガス圧に加えて重力が当該結露水に作用することになるため、よりスムーズに結露水がガス流出部26に導かれて排出されることになる。したがって、当該観点からも、ガス交換効率の低下を抑制できることになる。
【0065】
なお、以上において
図3および
図4を用いて説明した本実施の形態における人工肺システムの好適なユニット構成例は、あくまでも採り得る構成の一例を例示したものに過ぎず、当然に他の構成を採用することも可能である。すなわち、人工肺システムのハウジングが複数のユニットに分割されている必要や、分割されたユニットが回動可能に構成されている必要はなく、人工肺システムにおいて生じる廃熱を何らかのかたちで利用して結露水の発生箇所に送ることができる構成であれば、どのような構成を採用してもよい。
【0066】
また、以上において説明した本実施の形態においては、送血ポンプ駆動部にて生じる熱のみならず、コントローラやバッテリー、送風ファン駆動部において生じる熱についてもこれを利用することとした場合を例示したが、通常は送血ポンプ駆動部にて生じる熱のみで十分に結露水の発生が抑制できるため、これのみを利用するように構成されていてもよい。
【0067】
図5は、本実施の形態に基づいた変形例に係る人工肺システムのユニット構成例を示す図である。次に、この
図5を参照して、本実施の形態に基づいた変形例に係る人工肺システム1Bのユニット構成例について説明する。
【0068】
上述した本実施の形態においては、体外循環動作時において人工肺10が
図4に示した姿勢をとることを前提とした場合の好適なユニット構成例を例示したが、体外循環動作時において人工肺10が取るべき姿勢は、これに限定されるものではなく、
図3に示した姿勢であってもよい。本変形例に係る人工肺システム1Bは、体外循環動作時において人工肺10が
図3に示す姿勢とされる場合と
図4に示す姿勢とされる場合との両方に対応できるように構成されたものである。
【0069】
具体的には、
図5に示すように、本変形例に係る人工肺システム1Bにおいては、非ディスポーザブルユニット2が、上述した排気口2b1に加え、さらにディスポーザブルユニット3に対向する主面の所定位置に排気口2b2を有している。ここで、排気口2b2が設けられる位置は、上述した第1状態(すなわち、ガス流入部25およびガス流出部26が水平方向(図中に示すY軸方向)に沿って並ぶとともに血液流入部21および血液流出部22が鉛直方向(図中に示すZ軸方向)に沿って並び、かつ血液流出部22が血液流入部21よりも鉛直上方に配置された状態)において、ディスポーザブルユニット3内に設置された人工肺10の加熱対象部位Bに対面する位置とされる。
【0070】
これにより、体外循環動作時において人工肺10が
図5に示す姿勢とされた場合においても、熱源Aである送血ポンプ駆動部41、コントローラ30、バッテリー70および送風ファン駆動部81によって加温された高温の空気が排気口2bを介して加熱対象部位Bである人工肺10のガス流出部26近傍に送られることになり、当該加熱対象部位Bの加熱が行なわれることになる。
【0071】
したがって、本変形例に係る人工肺システム1Bとすることにより、体外循環動作時において人工肺10が
図4に示す姿勢とされた場合と
図5に示す姿勢とされた場合のいずれの場合においても効率的に結露水の発生が抑制できることになり、ガス交換効率の低下が抑制できることになる。なお、熱源Aによって加温された高温の空気をより効率的に加熱対象部位Bの加熱に利用するためには、排気口2b1,2b2のうち、ディスポーザブルユニット3の回動に伴って人工肺10の加熱対象部位Bに対面しなくなる方の排気口が閉塞されることとなるようにハウジングを構成してもよい。
【0072】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における人工肺システムの概略図であり、
図7は、本実施の形態における人工肺システムの好適なユニット構成例に係る体外循環動作時の状態を示す概略図である。以下、これら
図6および
図7を参照して、本実施の形態における人工肺システム1Cおよび当該人工肺システム1Cの好適なユニット構成例について説明する。
【0073】
上述した実施の形態1およびその変形例においては、非ディスポーザブルユニット2とディスポーザブルユニット3とが相対的に回動するように構成された場合を例示したが、上述したように必ずしもそのように構成されている必要はなく、これらが相対的に移動不能に組付けられるように構成されていてもよい。本実施の形態における人工肺システム1Cは、非ディスポーザブルユニット2とディスポーザブルユニット3とが相対的に移動不能に組付けられるように構成された場合を示すものである。
【0074】
図6に示すように、人工肺システム1Cは、上述した実施の形態1における人工肺システム1Aに比べて、送風ファン80および送風ファン駆動部81を備えていない点において相違している。そのため、本実施の形態における人工肺システム1Cにおいては、送血ポンプ駆動部41、コントローラ30およびバッテリー70のみが加熱対象部位Bである人工肺10のガス流出部26近傍を加熱する熱源Aとなる。
【0075】
図7に示すように、この場合には、非ディスポーザブルユニット2とディスポーザブルユニット3とが相対的に移動不能に組付けられるとともに、非ディスポーザブルユニット2には、上述した排気口2b1,2b2のうちの排気口2b2のみが設けられる。
【0076】
このように構成した場合には、人工肺システム1Cが作動することにより、発熱部品である送血ポンプ駆動部41、コントローラ30およびバッテリー70によって非ディスポーザブルユニット2内の空気が加熱されることになり、その比重差に基づいて上昇気流が発生する。これに伴い、吸気口2aから外気が非ディスポーザブルユニット2の内部に取り込まれることになるとともに、加熱された空気が排気口2b2からディスポーザブルユニット3に向けて排気されることになる。そのため、外気が非ディスポーザブルユニット2を経由して人工肺10の加熱対象部位Bに吹き付けられる空気の流れが自ずと発生することになる。
【0077】
したがって、このように構成した場合には、特に送風ファンを設けずとも加熱対象部位Bであるガス流出部26近傍を加熱することが可能になり、上述した実施の形態1の場合と同様に、結露水の発生が抑制できることになり、ガス交換効率の低下が抑制できることになる。
【0078】
以上において開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。