特許第6178667号(P6178667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6178667タイヤ挟持装置とそれを備えた自動車搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178667
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】タイヤ挟持装置とそれを備えた自動車搬送装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/24 20060101AFI20170731BHJP
【FI】
   E04H6/24 C
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-171552(P2013-171552)
(22)【出願日】2013年8月21日
(65)【公開番号】特開2015-40405(P2015-40405A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 渉
(72)【発明者】
【氏名】中松 和之
(72)【発明者】
【氏名】信藤 経雄
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−134074(JP,A)
【文献】 特開2002−154609(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0031711(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00 − 6/42
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のタイヤを前後方向から一対のアームで挟持するタイヤ挟持装置であって、
前記タイヤの間に配置される台車に基部を回動可能に支持し、該基部から前後逆方向にそれぞれ延びる一対となった第1アーム及び第2アームと、
前記第1アーム及び第2アームを前記タイヤの前後方向からタイヤに向けて回動させる駆動機構と、を備え、
前記駆動機構は、前記第1アームの回動中心に具備させた第1セクタギア及び第2アームの回動中心に具備させた第2セクタギアと、前記第1セクタギアと噛合するアイドルギアと、前記第2セクタギア及び前記アイドルギアと噛合して第1アーム及び第2アームを逆方向に回動させるラックギアと、前記ラックギアを前記台車の前後方向に所定範囲で直線移動させる駆動機と、を有していることを特徴とするタイヤ挟持装置。
【請求項2】
前記ラックギアと第1セクタギア及び第2セクタギアとアイドルギアとは、同一面内で噛合するように配置されている請求項1に記載のタイヤ挟持装置。
【請求項3】
前記アイドルギアの半径は、前記ラックギアが第1アーム側から第2アーム側に向けて移動するときに、前記ラックギアの移動方向後端が第1アームの第1セクタギアに干渉する前にラックギアが第1セクタギアの回転方向前端から離れる大きさであり、且つ、第2アームの第2セクタギアに干渉する大きさよりも小さく形成されている請求項2に記載のタイヤ挟持装置。
【請求項4】
前記駆動機は、前記ラックギアの移動方向の軸線上に機軸が位置するように配設されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ挟持装置。
【請求項5】
自動車の前タイヤ又は後タイヤを、前後方向から一対のアームで挟持して搬送する自動車搬送装置であって、
前記タイヤの間で自動車の前後方向に移動可能な台車を備え、
前記台車は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤ挟持装置を左右位置にそれぞれ備え、
前記自動車の前後方向に移動可能な走行手段を有していることを特徴とする自動車搬送装置。
【請求項6】
前記台車は、自動車の前タイヤ位置及び後タイヤ位置に配置される2組で構成されている請求項5に記載の自動車搬送装置。
【請求項7】
前記台車は、左右位置に備えたタイヤ挟持装置の間に前記駆動機へ動力を供給する動力供給手段を備えている請求項5又は6に記載の自動車搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、自動車格納設備などにおいて自動車のタイヤを挟持して持上げるタイヤ挟持装置と、それを備えた自動車搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車格納設備などにおいては、例えば、エレベータ式駐車装置や平面往復式駐車装置等のように、自動車をパレットに載せ、そのパレットを搬器で格納場所に格納するものがある。
【0003】
しかしながら、このような装置では、パレットを搬送するために時間を要する場合があり、パレットを要することなく自動車を搬送できるようにした装置も提案されている。例えば、台車の前部と後部にそれぞれ4本1組で設けられた旋回アームを設け、その旋回アームを自動車の下方で水平に90度旋回させて、自動車の前輪と後輪とをそれぞれ挟み込んで支持面から持上げるようにした移載装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他の先行技術として、油圧ピストンシリンダでラックを駆動し、そのラックで左右のピニオンを回動させてアームを旋回させ、そのアームで自動車の車輪を支持面から持上げ、その状態で自動車を搬送できるようにした自動車移動装置もある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−2449号公報
【特許文献2】特開平1−501719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の移載装置では、旋回用モータの出力軸に設けられたねじ歯車に噛合う歯車と旋回アームを回動させる歯車とが、高さ方向に2段で配置されて同一回動軸で回動するようになっているため、移載装置の高さを低くすることが難しく、自動車の下方に挿入して使用する場合、使用できる自動車の最低地上高(例えば、9〜10cm)に制限が生じる場合がある。
【0007】
また、台車の中央部分に駆動用のねじ歯車と駆動装置を設け、このねじ歯車の左右位置に配置した歯車を回動させているが、一方の旋回アームのセクタギアを駆動し、このセクタギアで他方の旋回アームのセクタギアを逆方向に回動させる構成であるため、台車の中央部分に大きな駆動装置と歯車とが配置され、台車の配線などを配置するスペースが限られる。
【0008】
さらに、上記特許文献2の自動車移動装置でも、台車の中央部分に油圧ピストンシリンダ(駆動機)とラック及びピニオン(歯車)が設けられているため、台車の配線などを配置するスペースが限られる。
【0009】
このように、上記先行技術では、台車における油圧ピストンを駆動する油圧配管、電動モータを駆動する電線を搬器から供給するための空スペースが取れないため、台車の外側に動力配管、電線、センサ等を配置する場合があり、装置の小型化を図るのが難しい。
【0010】
そこで、本願発明は、台車の中央部分にスペースを確保できるタイヤ挟持装置と、それを備えた自動車搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本願発明に係るタイヤ挟持装置は、自動車のタイヤを前後方向から一対のアームで挟持するタイヤ挟持装置であって、前記タイヤの間に配置される台車に基部を回動可能に支持し、該基部から前後逆方向にそれぞれ延びる一対となった第1アーム及び第2アームと、前記第1アーム及び第2アームを前記タイヤの前後方向からタイヤに向けて回動させる駆動機構と、を備え、前記駆動機構は、前記第1アームの回動中心に具備させた第1セクタギア及び第2アームの回動中心に具備させた第2セクタギアと、前記第1セクタギアと噛合するアイドルギアと、前記第2セクタギア及び前記アイドルギアと噛合して第1アーム及び第2アームを逆方向に回動させるラックギアと、前記ラックギアを前記台車の前後方向に所定範囲で直線移動させる駆動機と、を有している。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「前後方向」は、自動車の前後方向と同じ方向であり、「左右方向」は、前後方向と直交する水平方向をいう。
【0012】
この構成により、第2アームのセクタギアはラックギアに直接噛合し、第1アームの第1セクタギアはアイドルギアを介してラックギアに噛合しているので、駆動機でラックギアを台車の前後方向に移動させることで、一対のアームの回動中心に設けられたセクタギアは逆方向に回動させられて、一対のアームを逆向きに回動させることができる。これにより、ラックギアの前後方向への移動で、一対のアームを台車の前後方向に向いた状態と、台車から左右方向に突出した状態とにできる。しかも、アームを駆動する各ギアを小型化して省スペース化を図って台車の左右位置にそれぞれ配設することで、台車の中央部分に前後方向の空スペースを形成することができるため、空スペースにガイド機構や給電配線などの動力供給手段を配置することが可能となる。また、この空スペースにセンサを配置することより信頼性の高い製品を構成することができる。
【0013】
また、前記ラックギアとセクタギアとアイドルギアとは、同一面内で噛合するように配置されていてもよい。
【0014】
このように構成すれば、ラックギアとセクタギアとアイドルギアを同一面内で噛合するように配置して、アームの駆動機構の高さを抑えて省スペース化を図ることができる。
【0015】
また、前記アイドルギアの半径は、前記ラックギアが第1アーム側から第2アーム側に向けて移動するときに、前記ラックギアの移動方向後端が第1アームの第1セクタギアに干渉する前にラックギアが第1セクタギアの回転方向前端から離れる大きさであり、且つ、第2アームの第2セクタギアに干渉する大きさよりも小さく形成されていてもよい。
【0016】
このように構成すれば、同一面内で噛合する駆動機構におけるアイドルギアを、省スペースで適切な大きさに設定することができる。
【0017】
また、前記駆動機は、前記ラックギアの移動方向の軸線上に機軸が位置するように配設されていてもよい。
【0018】
このように構成すれば、一対のアームを逆方向に回動させる構成を、台車の前後方向に延びるようにして左右方向の寸法を抑えることができ、台車の中央部分によりスペースを確保することができる。
【0019】
一方、本願発明に係る自動車搬送装置は、自動車の前タイヤ又は後タイヤを、前後方向から一対のアームで挟持して搬送する自動車搬送装置であって、前記タイヤの間で自動車の前後方向に移動可能な台車を備え、前記台車は、前記いずれかのタイヤ挟持装置を左右位置にそれぞれ備え、前記自動車の前後方向に移動可能な走行手段を有している。
【0020】
この構成により、自動車の前タイヤ又は後タイヤのいずれかを挟持して載置面から浮かし、自動車を適切な場所に搬送することができる。
【0021】
また、前記台車は、自動車の前タイヤ位置及び後タイヤ位置に配置される2組で構成されていてもよい。
【0022】
このように構成すれば、自動車の前タイヤと後タイヤの4輪を同時に挟持して載置面から浮かし、安定して適切な場所に搬送することができる。
【0023】
また、前記台車は、左右位置に備えたタイヤ挟持装置の間に前記駆動機へ動力を供給する動力供給手段を備えていてもよい。
【0024】
このように構成すれば、台車を前後方向に走行させる走行手段の動力供給手段を台車の中央部分に配置して、台車の安定した走行を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本願発明によれば、構造が簡単で省スペースを実現できるタイヤ挟持装置を提供することが可能となる。また、自動車搬送装置にそのタイヤ挟持装置を備えさせることにより、台車の左右方向中央部分に広い空スペースを形成して、ガイド機構の配置や給電用スペースなどに利用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は本願発明の一実施形態に係る自動車搬送装置を示す底面図である。
図2図2図1に示す自動車搬送装置の側面図である。
図3図3図1に示す自動車搬送装置のアームを回動させた状態を示す底面図である。
図4図4図1に示す状態のタイヤ挟持装置を示す底面図である。
図5図5図2に示す状態のタイヤ挟持装置を示す底面図である。
図6図6図1に示す自動車搬送装置による自動車搬送前の状態を示す図面であり、(a) は側面図、(b) は平面図である。
図7図7図6に示す状態から自動車搬送装置による自動車搬送前の状態になったときの側面図である。
図8図8図7に示す状態から自動車搬送装置を搬送状態にしたときの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、自動車の前タイヤ及び後タイヤを挟持して持上げて搬送する自動車搬送装置を説明する。また、この実施形態の台車は、台車本体の下面側に各構成が設けられた例であるため、各構成の配置を説明する図では、主に底面視における状態で説明する。
【0028】
図1に示すように、この実施形態の自動車搬送装置1に備えられたタイヤ挟持装置10は、自動車V(図6)のタイヤ間に配置される台車11に設けられている。
【0029】
台車11の台車本体12は、所定の強度を有する板状で平面視が矩形状に形成されており、左右方向(図の上下方向)は自動車のタイヤT(図7)の間に入る大きさで形成されている。この台車本体12の下面の左右位置に、タイヤ挟持装置10がそれぞれ配設されている。これらのタイヤ挟持装置10により、自動車の前タイヤ又は後タイヤの2輪を挟持するようになっている。
【0030】
上記台車本体12の下面には、2つの駆動車輪13と2つの従動車輪14とが左右位置にそれぞれ設けられている。駆動車輪13は、台車本体12の左右位置に設けられた走行手段たる走行用モータ16によって歯車機構15を介して駆動されている。歯車機構15を設けることで、走行用モータ16の機軸を台車11の前後方向Mに向けている。これにより、走行用モータ16の左右方向寸法を抑え、台車11の幅寸法内に収め、且つ台車11の幅方向中央部に位置しないようにしている。この実施形態の台車11は、これらの駆動車輪13と従動車輪14とにより、自動車の前後方向Mに自走可能となっている。
【0031】
そして、上記台車11の下面には、基部が台車11に回動可能に軸支された一対のアーム20,21が左右位置に設けられている。これらのアーム20,21は、水平方向に回動可能となっている。この実施形態の図示する一対のアーム20,21は、図の右側が第1アーム20、図の左側が第2アーム21となっている。台車11の左右位置に設けられた第1アーム20及び第2アーム21は、図の上下位置における構成は台車11の中心に対して線対称であるため、以下の説明では、図1の上部に示された第1アーム20及び第2アーム21について説明する。
【0032】
上記第1アーム20は、基部に第1セクタギア22が設けられ、第2アーム21は、基部に第2セクタギア23が設けられている。第1アーム20は、第1セクタギア22の軸中心26に対して水平面内で回動可能となっており、第2アーム21は、第2セクタギア23の軸中心27に対して水平面内で回動可能となっている。これらの第1アーム20及び第2アーム21は、内部に設けられた支持軸24に対して周囲が回動自在となっている。また、第1アーム20及び第2アーム21の先端部には、それぞれの支持軸24に支持された大径のローラ25が回転自在に設けられている。
【0033】
さらに、台車11の下面には、前後方向Mに延びるラックギア30が設けられている。ラックギア30は、台車11に設けられたリニアガイド31に沿って、台車11の前後方向Mに直線的に移動するようになっている。ラックギア30は、このラックギア30を前後方向Mに移動させるボールねじ33を介して駆動機たる駆動モータ32と連結されている。この駆動モータ32で回転させるボールねじ33によって、ラックギア30が上記リニアガイド31に沿って前後方向Mに移動させられる。
【0034】
上記第1アーム20の第1セクタギア22は、アイドルギア34と噛合しており、このアイドルギア34がラックギア30と噛合している。上記第2アーム21の第2セクタギア23は、ラックギア30と直接噛合している。これら第1セクタギア22と第2セクタギア23のピッチ半径は同一であり、それぞれの軸中心26,27を結ぶ直線28は、ラックギア30と平行となっている。
【0035】
このように構成された第1アーム20及び第2アーム21は、台車11を自動車V(図7)のタイヤ間に配置するときには、台車11の前後方向Mに開いた状態(図1に示す状態)となっている。
【0036】
また、図示するように、台車11の左右位置にタイヤ挟持装置10を備えさせることにより、台車11の中央部分の前後方向に空スペースSを形成することができる。そして、この空スペースSに、走行モータ16と駆動モータ32を駆動するための動力を供給する電気配線40(動力供給手段)が配置されている。図示する電気配線40は、一例としてケーブルベア(登録商標)配線の外形を示している。
【0037】
図2に示すように、上記台車本体12の下面に配設されたタイヤ挟持装置10は、ラックギア30と第1セクタギア22及び第2セクタギア23とアイドルギア34とが、略同一面内に配置されている。つまり、これらの歯車は、高さ方向に1段で形成され、これにより台車11の高さを低く抑えている。しかも、各ギア22,23,30,34の歯幅を確保しているので、大きな面圧を受けることができる。
【0038】
図3は、上記第1アーム20及び第2アーム21をタイヤの挟持状態にした図面である。図示するように、上記タイヤ挟持装置10によれば、ラックギア30を前後方向Mに移動させることにより、このラックギア30に噛合している第2アーム21の第2セクタギア23と、アイドルギア34を介して噛合している第1アーム20の第1セクタギア22とが逆向きに回動させられる。
【0039】
このように、アイドルギア34介して設けた第1アーム20の第1セクタギア22と第2アーム21の第2セクタギア23とをラックギア30に噛合させて、1つのラックギア30の一方向への移動によって第1アーム20と第2アーム21とを逆向きに回動させるラック&ピニオン機構を構成している。この第1アーム20と第2アーム21とを駆動する機構が、駆動機構35である。
【0040】
この第1アーム20及び第2アーム21の回動角は、ラックギア30の移動量で制御されている。この実施形態では、ラックギア30の移動量を、近接スイッチ等で検知することで制御している。
【0041】
図3に示すようにタイヤTを挟持した状態では、タイヤ挟持装置10の第1アーム20及び第2アーム21は、台車11から左右方向に突出して閉じた状態となる。このアーム20,21を閉じたときの距離Wは、タイヤTを所定量浮かして挟持できる距離に設定されている。
【0042】
また、上記アイドルギア34は、半径が他の構成要素に対して以下の条件を満足するものとなっている。後述する図5にも示すが、アイドルギア34の半径は、ラックギア30が第1アーム20側から第2アーム21側に向けて移動するとき、第1アーム20の第1セクタギア22の回転方向前端の(A点)がラックギア30に干渉する前に、ラックギア30の進行方向後端の(B点)が第1セクタギア22から離れるような大きさに設定されている。しかも、このアイドルギア34の半径は、第2アーム21の第2セクタギア23に干渉する大きさよりも小さく設定されている。
【0043】
これにより、ラックギア30と噛合して第1セクタギア22を回動させるアイドルギア34の大きさを、これらのギアを同一面内で噛合させて駆動機構の高さを抑えて省スペース化を図りつつ、適切な大きさに設定することができる。
【0044】
図4及び図5は、上記図1に示す状態と上記図3に示す状態の第1アーム20及び第2アーム21と駆動機構35の状態を示す底面図である。
【0045】
図4に示すように、上記タイヤ挟持装置10は、台車11を自動車Vのタイヤ間に配置するときには(図6)、第1アーム20及び第2アーム21は前後方向M(図1)に開いた状態となっている。この状態では、第1アーム20及び第2アーム21は、台車11の左右方向端部よりも内方に位置した状態となっている(図1)。
【0046】
上記したように、この状態では、第2アーム21の第2セクタギア23はラックギア30と噛合しており、第1アーム20の第1セクタギア22はアイドルギア34と噛合して、このアイドルギア34が上記ラックギア30と噛合している。
【0047】
この状態が第1アーム20及び第2アーム21の待機状態であり、図示する各噛合状態から、以下に説明するようにラックギア30で第1セクタギア22及び第2セクタギア23が駆動されて第1アーム20及び第2アーム21が左右方向に突出するように回動させられる。
【0048】
図5に示すように、上記図4に示す状態から駆動モータ32を駆動してボールねじ33(図3)でラックギア30を図示する左方向に移動させると、このラックギア30と噛合している第2セクタギア23と、アイドルギア34を介して噛合している第1セクタギア22とが逆方向に回動し、第1アーム20及び第2アーム21が台車11から横方向に回動させられる。
【0049】
そして、ラックギア30を所定量移動させると、第1アーム20及び第2アーム21が平行な状態で台車11から突出した状態となる。この状態では、平行となった第1アーム20と第2アーム21との間の距離Wが、タイヤTを載置面4(図6)から所定量浮かす距離となっているため、タイヤTが載置面4から浮いた状態で挟持される。この状態でラックギア30の位置が保たれ、第1セクタギア22及び第2セクタギア23と噛合しているアイドルギア34の回動位置が保たれる。
【0050】
しかも、第1アーム20を回動させる第1セクタギア22及び第2アーム21を回動させる第2セクタギア23、アイドルギア34、ラックギア30を、台車11の下面の同一面内に配置することにより、台車11の高さ寸法を抑えることができ、自動車Vの最低地上高(例えば、9〜10cm)が小さい車両でも台車11をタイヤ間に配置することができる。
【0051】
また、タイヤ挟持装置10の第1アーム20及び第2アーム21の駆動機構35をコンパクトに形成して左右位置に備えさせた台車11は、中央部分に空スペースSを確保することが可能となる。
【0052】
そのため、この台車11の中央部分に確保した前後方向Mの空スペースSに、給電配線や台車11のガイド機構を配置することが可能となる。また、この空スペースSにセンサを配置することより信頼性の高い製品とすることができる。
【0053】
図6(a),(b) と図7及び図8は、上記タイヤ挟持装置10を備えた自動車搬送装置1の使用例を示す図面である。これらの図では、2組の自動車搬送装置1によって自動車Vの前タイヤTF(T)及び後タイヤTR(T)をそれぞれ持上げて搬送する例を説明する。
【0054】
図6(a),(b) に示すように、格納部2に格納された自動車Vの前方に搬器3を移動させて停止させる。この状態の自動車搬送装置1は、アーム20,21が前後方向Mに開いており、台車11の幅方向から突出しないように格納されている。
【0055】
そして、図7に示すように、自動車搬送装置1を搬器3から格納部2の自動車Vの前タイヤTF及び後タイヤTRの間に移動させる。この時、図示する例では、搬器3から台車11に延びる電気配線40は、台車11の中央部分に形成した空スペース40で安定して移動させることができ、台車11の安定した走行が可能となっている。この状態で、一対のアーム20,21を水平方向に回動させる。これにより、一対の第1アーム20及び第2アーム21が左右のタイヤTF,TRを前後から挟み、両アーム20,21を所定の位置まで回動させることで、これらの第1アーム20及び第2アーム21によってタイヤTF,TRが格納部2の載置面4から浮いた状態で挟持される(図3に示す状態)。第1アーム20及び第2アーム21が所定位置まで回動したことは、ラックギア30(図3)の位置をセンサ(図示略)で検知することによって制御される。このアーム20,21が所定位置まで回動したことは、駆動モータ32(図3)の回転角制御などで検知するようにしてもよい。
【0056】
その後、図8に示すように、自動車搬送装置1を搬器3の方向に移動させる。この時も、搬器3から台車11に延びる電気配線40は、台車11の中央部分に形成した空スペース40で安定した移動ができ、台車11の安定した走行が可能となっている。これにより、第1アーム20及び第2アーム21によって載置面4から浮かされた自動車Vが自動車搬送装置1と一体的に搬器3の上部へ移動させられる。このようにして搬器3に載せられた自動車Vは、搬器3によって所望の場所に移動させられる(図の上下方向)。例えば、入出庫口に移動させられた場合、自動車搬送装置1が搬器3から入出庫口に移動することで、この自動車搬送装置1の第1アーム20及び第2アーム21によって挟持されている自動車Vも入出庫口(図示略)に移動させられる。
【0057】
そして、所定位置で一対のアーム20,21の先端が開く方向に回動させられ(図1に示す状態)、タイヤTF,TRが載置面4に載置されて自動車Vの移送が完了する。その後、移送が完了した自動車搬送装置1は、搬器3に載せられて所望の位置に移動させられる。
【0058】
以上のように、上記自動車搬送装置1によれば、台車11の中央部分の前後方向Mに、左右のタイヤTを挟持するタイヤ挟持装置10の間に空スペースSを設けることができるので、この空スペースSを利用してガイド機構の配置や給電用スペースなどに利用することができる。
【0059】
しかも、上記タイヤ挟持装置10によれば、第1,第2セクタギア22,23とラックギア30及びアイドルギア34が水平方向の同一面内で噛合するように配置されているため、各ギアの歯幅を確保しつつ自動車搬送装置1の高さ寸法を小さくして、自動車搬送装置1の省スペース化を図ることができる。
【0060】
なお、上記実施形態では、平面往復式の駐車装置における自動車搬送装置1の動作を例に説明したが、エレベータスライド式、スタッカークレーン式など、他の形式の駐車装置においても適用可能であり、自動車搬送装置1の適用例は上記実施形態に限定されるものではない。
【0061】
また、上記実施形態では、台車本体12の下面側に各構成を配置した例を説明したが、台車本体12の上面側に各構成を配置して台車本体12から下方に車輪13,14のみが出るような構成にしてもよく、台車本体12と各構成の配置は上記実施形態に限定されるものではない。
【0062】
さらに、上記実施形態では、自動車搬送装置1に用いられたタイヤ挟持装置10を例に説明したが、自動車検査装置のように自動車のタイヤTを持上げる必要がある装置であれば同様に用いることができ、タイヤ挟持装置10は上記実施形態の用途に限定されるものではない。
【0063】
また、第1セクタギア22、第2セクタギア23、アイドルギア34及びラックギア30の大きさは一例であり、これら第1セクタギア22、第2セクタギア23、アイドルギア34及びラックギア30は、所定の強度を有し、それぞれのギアが干渉しないように大きさを決定すればよく、上記実施形態に限定されるものではない。
【0064】
また、上記実施形態では、前タイヤTFと後タイヤTRを挟持して持上げて搬送する例を説明したが、タイヤ挟持装置10は、少なくとも自動車の駆動タイヤを挟持して持上げるように構成されていればよい。
【0065】
さらに、上述した実施形態は一例を示しており、本願発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本願発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本願発明に係るタイヤ挟持装置は、駐車設備において車両を搬送する自動車搬送装置、車両検査装置、立体倉庫、自動車格納設備などに利用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 自動車搬送装置
2 格納部
3 搬器
4 載置面
10 タイヤ挟持装置
11 台車
12 台車本体
13 駆動車輪
14 従動車輪
15 歯車機構
16 走行用モータ(走行手段)
20 第1アーム
21 第2アーム
22 第1セクタギア
23 第2セクタギア
24 支持軸
25 ローラ
26,27 軸中心
28 直線
30 ラックギア
31 リニアガイド
32 駆動モータ(駆動機)
33 ボールねじ
34 アイドルギア
35 駆動機構
40 電気配線(動力供給手段)
M 前後方向
S 空スペース
T タイヤ
V 自動車
W 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8