特許第6178670号(P6178670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178670
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】ガスバーナー
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/06 20060101AFI20170731BHJP
   F23D 14/64 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   F23D14/06 C
   F23D14/64 A
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-173572(P2013-173572)
(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公開番号】特開2015-40684(P2015-40684A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】石川 善克
(72)【発明者】
【氏名】谷野 涼
(72)【発明者】
【氏名】松本 光輔
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−117805(JP,A)
【文献】 特開平10−205716(JP,A)
【文献】 特開2007−003128(JP,A)
【文献】 米国特許第3817689(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/06
F23D 14/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから噴出された燃料ガスと該燃料ガスの噴出に伴って吸引された一次空気とが供給され、前記燃料ガスと前記一次空気を混合した混合気体を複数の炎孔に供給するガスバーナーであって、前記炎孔に連通し前記混合気体を前記炎孔まで供給する通気路と、サブチャンバーを備え、前記サブチャンバーは、前記通気路に連通する導入口と、前記炎孔に連通する導出口と、前記導入口と前記導出口とを接続し前記通気路に供給された前記混合気体の一部が前記導入口を介して供給される貯留部とを有して、前記通気路のバイパス路となり、前記貯留部に、前記導入口から前記導出口に向かって流れる前記混合気体の流れに対する抵抗となる板状の抵抗部が設けられたことを特徴とするガスバーナー。
【請求項2】
前記抵抗部が、前記貯留部の内面から突出して、前記導入口から前記導出口に向かって流れる混合気体の流れ方向に沿う板状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のガスバーナー。
【請求項3】
前記貯留部における下流側端部に、前記抵抗部よりも下流側に位置して前記抵抗部が存在しない空間が形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスバーナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブチャンバーが設けられたガスバーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ノズルから噴出された燃料ガスとこの燃料ガスの噴出に伴って吸引された一次空気とを混合して得られた混合気体を燃焼させる焜炉用ガスバーナーが開示されている。
【0003】
この焜炉用ガスバーナーは、ノズルから噴出された燃料ガス及び一次空気が供給されるバーナー本体と、バーナー本体上に載置されるバーナーキャップを具備している。バーナーキャップの下面には、バーナーキャップの中心側から外周側に向かって延びる炎孔用溝がバーナーキャップの周方向に複数形成されている。これにより、焜炉用ガスバーナーには、炎孔用溝とバーナー本体の上面とで構成された炎孔がバーナーキャップの周方向に複数設けられている。バーナー本体には、前記混合気体を炎孔用溝に供給する通気路が形成されており、通気路から炎孔用溝に供給された混合気体は炎孔の出口からバーナーキャップの外周側に吐出され、この混合気体が燃焼されるようになっている。
【0004】
この種のガスバーナーの火力を大火から小火に変更するには、ノズルからバーナー本体に供給される燃料ガスの量を減少させればよい。ところが、前記燃料ガスの供給量が急激に減少したときには、ノズルからの燃料ガスの噴出に伴って吸引される一次空気が慣性によりバーナー本体に瞬間的(0.5秒程度)に多く供給される可能性がある。すなわち、この場合、燃料ガスの供給量の変化に対して、一次空気の供給量の変化が僅かに遅れ、これによりバーナー本体には一時的に一次空気が過剰に供給される可能性がある。このため、ガスバーナーの火力が大火から小火に変更された場合には、一次空気の混合比率が高いエアリッチな混合気体が炎孔出口に供給されて燃焼不良が生じる恐れがある。
【0005】
この点を改善するため、特許文献1に開示されるガスバーナーのバーナー本体には、サブチャンバーが形成されている。サブチャンバーは、通気路に連通する導入口と、バーナー本体の上面に形成されて炎孔用溝に臨む導出口を有している。燃焼時におけるサブチャンバーには、通気路に供給された混合気体の一部が導入口から供給され、この混合気体は導出口から炎孔用溝に供給される。このため、ガスバーナーの火力が大火から小火に変更されたときには、大火状態での燃焼時においてサブチャンバーに貯留された混合気体が、後続の混合気体(すなわち、通気路からサブチャンバーに供給されたエアリッチな混合気体)によって炎孔用溝に押し出され、これにより、火力が大火から小火に急激に変更されたときの燃焼が良好に維持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−205716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記火力が大火から小火に急激に変更された際において良好な燃焼が維持される時間は、サブチャンバーの容積を大きくすることで長くすることができる。しかし、サブチャンバーの容積を大きくすると、以下のような不都合が生じる可能性がある。
【0008】
小火の定常状態における混合気体は、大火時に比べて一次空気の少ないガスリッチな状態となっている。このため、火力が小火から大火に急激に変更されたときには、通気路内の混合気体が置換されるまでの過渡期間、一次空気不足になり、各炎孔出口における炎の燃焼速度が適正状態よりも遅くなって炎が大きくなる場合がある。
【0009】
ここで、通気路には前記過渡期間においても火力に応じた混合気体が供給されやすい。しかし、サブチャンバーには小火時におけるエアリッチな混合気体が存在し、この混合気体が後続の混合気体によって押し出されてピストンフロー的に炎孔に供給される。このため、サブチャンバーに通じる炎孔出口では、一次空気不足が生じて他の炎孔出口で形成される炎よりも大きくなる可能性がある。また、このサブチャンバーに通じる炎孔出口において他の炎孔出口よりも炎が大きくなる期間は、サブチャンバーの容積が大きくなる程長くなってしまう。
【0010】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであって、火力が大火から小火に急激に変更されたときに燃焼不良が生じることを十分に抑制でき、しかも、火力が小火から大火に急激に変更されたときに、サブチャンバーに通じる炎孔出口において他の炎孔出口で形成される炎よりも大きな炎が形成され難いガスバーナーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明のガスバーナーは、ノズルから噴出された燃料ガスと該燃料ガスの噴出に伴って吸引された一次空気とが供給され、前記燃料ガスと前記一次空気を混合した混合気体を複数の炎孔に供給するガスバーナーであって、前記炎孔に連通し前記混合気体を前記炎孔まで供給する通気路と、サブチャンバーを備え、前記サブチャンバーは、前記通気路に連通する導入口と、前記炎孔に連通する導出口と、前記導入口と前記導出口とを接続し前記通気路に供給された前記混合気体の一部が前記導入口を介して供給される貯留部とを有して、前記通気路のバイパス路となり、前記貯留部に、前記導入口から前記導出口に向かって流れる前記混合気体の流れに対する抵抗となる板状の抵抗部が設けられたことを特徴とする。
【0012】
また、前記抵抗部が、前記貯留部の内面から突出して、前記導入口から前記導出口に向かって流れる混合気体の流れ方向に沿う板状に形成されることが好ましい。
【0013】
また、前記貯留部における下流側端部に、前記抵抗部よりも下流側に位置して前記抵抗部が存在しない空間が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、板状の抵抗部が、ガスバーナーの燃焼時において貯留部を流れる混合気体の流れに対する抵抗となる。この抵抗力は、貯留部を通過する混合気体の流速が大きい程大きくなる。このため、ガスバーナーの火力が小火から大火に急激に変更された場合、貯留部を流れる混合気体の流れが抑制され、サブチャンバーに通じる炎孔の出口には、一次空気の少ない貯留部の混合気体が供給され難くなる。従って、サブチャンバーに通じる炎孔の出口に形成される炎は、他の炎孔の出口で形成される炎よりも大きくなり難くなる。また、抵抗部を板状にしたことでサブチャンバーの容積の減少をほとんど伴わない。よって、火力が大火から小火に急激に変更されたときに燃焼不良が生じることを、サブチャンバーによって十分に抑制することができる。
【0015】
また、抵抗部を、導入口から導出口に向かって流れる混合気体の流れ方向に沿う板状に形成することで、貯留部における混合気体の流れは、抵抗部によって阻害され難くなる。特に、ガスバーナーの火力が大火から小火に変更されたときには、貯留部における混合気体の流速が小さいため、抵抗部による通過抵抗の増加を抑制することができる。従って、火力が大火から小火に急激に変更されたときに燃焼不良が生じることを抑制するというサブチャンバーの本来の効果を一層損なわれ難くすることができる。また、抵抗部は、貯留部の内面に突設するだけで簡単に設けることができる。
【0016】
また、貯留部における下流側端部に、抵抗部よりも下流側に位置して抵抗部が存在しない空間を形成することで、ガスバーナーの火力が大火から小火に変更された直後には、前記空間に貯留された混合気体が導出口から速やかにサブチャンバーに通じる炎孔用溝に供給されるようになる。従って、火力が大火から小火に急激に変更されたときに燃焼不良が生じることを抑制するというサブチャンバーの本来の効果を一層損なわれ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一例のガスバーナーにおけるサブチャンバー部分を示し、(a)は上方から見たときの説明図であり、(b)は(a)のA−A′断面を表した説明図である。
図2】同上のガスバーナーを焜炉の天板に設けた状態を示す断面図である。
図3】同上のガスバーナーの斜視図である。
図4】同上のバーナーキャップを取り外したガスバーナーの斜視図である。
図5】同上のガスバーナーの導出口から混合気体が供給されない炎孔用溝の形成箇所における断面図である。
図6】本発明の実施形態の一例のガスバーナーの導出口に対応する炎孔用溝の形成箇所における断面図である。
図7】同上のガスバーナーのバーナーキャップを下面側から見た斜視図である。
図8】同上のバーナーキャップを取り外したガスバーナーの平面図において、サブチャンバーの形成される箇所をハッチングで表した説明図である。
図9】サブチャンバー内の混合気体の流れを示し、(a)は抵抗部を設けた場合の説明図であり、(b)は抵抗部を設けない場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。本実施形態のガスバーナー1は、焜炉用ガスバーナーであって、例えばキッチン台等に組み込まれるビルトイン焜炉や、焜炉台等に載置されるテーブル焜炉に設けられる。図2には、ガスバーナー1を焜炉2の天板20に設けたときの断面図が示されている。なお、ガスバーナー1は、焜炉2以外の機器に設けられてもよい。
【0019】
ガスバーナー1は、バーナー本体3、バーナーキャップ4、ノズル5、ダンパー6、及びバーナーカバー7を具備している。バーナー本体3には、燃料ガスと一次空気が供給される通気路30と、サブチャンバー31(図6参照)とが形成されている。
【0020】
本実施形態のバーナー本体3は、バーナーベース8と、バーナーベース8上に載置して取り付けられるバーナーボディ9とで構成されている。バーナーベース8及びバーナーボディ9は、アルミダイキャスト製である。なお、バーナーベース8及びバーナーボディ9は、アルミニウム以外の材質で形成されてもよい。
【0021】
バーナーベース8は、台部81及び管下半部82で構成されている。台部81は、平面視環状であり、その内周縁には、上方に突出した円筒状の内筒部811が形成されている。管下半部82は、台部81から外側方に向かって突出している。
【0022】
バーナーボディ9は、本体部91及び管上半部92で構成されている。本体部91は、平面視環状であり、その内周縁には、上方に突出した円筒状の外筒部910が形成されている。本体部91は、バーナーベース8の台部81上に重ねて載置されている。
【0023】
外筒部910は、バーナーベース8の内筒部811よりも大径の円筒状であり、内筒部811の外周側に隙間32を介して配置されている。隙間32は平面視円環状であり、図4に示されるように、外筒部910の上端部と内筒部811の上端部との間から上方に開放されている。
【0024】
管上半部92は、本体部91から管下半部82の突出方向と同一方向となる外側方に向かって突出している。管上半部92は、管下半部82上に重ねて配置され、管下半部82と合わせて混合管35を構成する。
【0025】
図2に示されるように、バーナーベース8の上面には、管下半部82の突端から台部81に至る下溝83が形成されている。バーナーボディ9の下面には、管上半部92の突端から本体部91に至る上溝93が形成されている。
【0026】
バーナーベース8とこの上に配置されたバーナーボディ9の間には、下溝83とこれに合わせて配置された上溝93とで構成された孔34が形成されている。孔34は、一端が混合管35の突端から開口し、他端が外筒部910と内筒部811の間の隙間32の下端部に連通している。混合管35内の孔は、孔34の一部である。孔34と隙間32により、燃料ガスと一次空気が供給される通気路30が構成されている。通気路30の入口300は、混合管35の突出端部で構成されている。通気路30の出口301は、隙間32の上端部(外筒部910の上端部と内筒部811の上端部の間の部位)で構成されており、平面視円環状である。
【0027】
バーナー本体3は、例えば図2に示されるように、焜炉2の天板20の孔縁に取り付けられたバーナーリング21の内側に嵌め込まれる。
【0028】
バーナーキャップ4はアルミダイキャスト製である。なお、バーナーキャップ4はアルミニウム以外の材質で形成されてもよい。
【0029】
バーナーキャップ4は、平面視略円環状で板状の環状部40と、環状部40の内縁部から下方に向かって突出した筒状部41とを備えている。
【0030】
バーナーキャップ4の上面部を構成する環状部40上には、バーナーカバー7が取り付けられている。バーナーキャップ4の環状部40とバーナーカバー7の下面との間には、バーナーキャップ4の内周側(中心側)と外周側とを連通させる隙間11が形成されている。
【0031】
バーナーキャップ4の環状部40は、バーナー本体3の上面となる外筒部910の上端面に載置されている。環状部40から下方に突出した筒状部41は、バーナー本体3の内筒部811内に嵌め込まれている。
【0032】
ガスバーナー1の燃焼時には、バーナーベース8の下側に存在する空気が、二次空気として、内筒部811内の空間、筒状部41内の空間、及び隙間11を順に経て、燃焼が生じるバーナーキャップ4の外周側に供給されるようになっている。
【0033】
図7に示されるように、バーナーキャップ4の環状部40の下面には、バーナーキャップ4の内周側から外周側に向かって延びる炎孔用溝42がバーナーキャップ4の周方向に多数(複数)形成されている。これら炎孔用溝42は、バーナーキャップ4の径方向と略平行であり、環状部40の中心を基準に放射状に形成されている。
【0034】
環状部40において隣り合う炎孔用溝42の間には、下方に突出する仕切部401が形成されている。隣り合う炎孔用溝42の大部分は、これら仕切部401によって仕切られている。
【0035】
各仕切部401のバーナーキャップ4の内周側の端部には、上方に凹んだ第一凹所402が形成されている。各仕切部401の第一凹所402は、両側の炎孔用溝42のバーナーキャップ4の内周側の端部同士を連通させている。これにより、環状部40の内周側端部には、多数の炎孔用溝42のバーナーキャップ4の内周側の端部と、多数の第一凹所402とで構成されて、筒状部41の周囲を囲む円環状に連続した下方に開口する環状溝403が形成されている。
【0036】
各炎孔用溝42の上底面を構成する環状部40の下面には、下方に向かって突出する区画部422が形成されている。各区画部422は、炎孔用溝42のバーナーキャップ4外周側で且つ溝幅方向中央部に形成されており、炎孔用溝42のバーナーキャップ4の外周側の部分を二条の溝部420に分岐させている。
【0037】
各区画部422のバーナーキャップ4の外周側に臨む面は、各仕切部401のバーナーキャップ4の外周側に臨む面よりも、バーナーキャップ4の内周側に控えた位置にある。このため、各炎孔用溝42における区画部422のバーナーキャップ4の外周側には、バーナーキャップ4の外周側に開口する空所421が形成されている。各区画部422の両側の溝部420のバーナーキャップ4の外周側の端部同士は、空所421を介して連通している。
【0038】
図3に示されるように各仕切部401、及び、各区画部422は、外筒部910の上端面に載置されている。これにより、バーナーキャップ4の環状溝403は、図5図6に示されるようにバーナー本体3の上面に形成された通気路30の出口301に対向する位置に配置され、通気路30と連通している。
【0039】
バーナーキャップ4の各炎孔用溝42は、対向するバーナー本体3の上面である外筒部910の上端面とで炎孔10を形成する。すなわち、ガスバーナー1には、バーナーキャップ4の内周側から外周側に延びる炎孔10がバーナーキャップ4の周方向に多数形成されている。各炎孔10の出口である炎孔出口100は、バーナーキャップ4の外周側に開口している。そして、通気路30と各炎孔10とで、各炎孔出口100に混合気体を供給するガス通路15が構成されている。
【0040】
図2に示されるように、通気路30の入口300には、ノズル5とダンパー6が設けられている。ノズル5及びダンパー6は、バーナーベース8に取り付けられている。なお、ノズル5はバーナー本体3ではなく、焜炉に取り付けられてもよい。また、ダンパー6は省略可能である。
【0041】
ノズル5は、焜炉2に設けられた供給路23に接続され、供給路23から燃料ガスの供給を受ける。供給路23からノズル5への燃料ガスの供給量は、ガスバーナー1の利用者により変更可能とされる。ガスバーナー1が焜炉2に設けられる場合、例えば供給路23に器具栓が設けられ、この器具栓を焜炉2の正面部に設けられた操作部(例えば操作パネルの摘まみ)によって操作することで、ノズル5への燃料ガスの供給量が変更される。
【0042】
ノズル5の先端部には、通気路30の入口300の中心部に臨む噴出口50が形成されている。ノズル5に供給された燃料ガスは、噴出口50から通気路30内に向けて噴出される。また、このノズル5からの燃料ガスの噴出に伴ってノズル5の周囲の空気が吸引され、この空気が一次空気としてノズル5から噴出された燃料ガスと共に通気路30に供給されるようなっている。
【0043】
ダンパー6は、例えば通気路30の入口300に配置される。ダンパー6の開口面積は、使用されるガス燃料に応じた所定の開口面積としてあるが、前記操作部の操作に応じて入口300の開口面積を変更するものを用いてもよい。
【0044】
ノズル5の噴出口50からダンパー6を介して通気路30に供給された燃料ガス及び一次空気は、混合管35において隙間32に向かう過程で混合される。この混合気体は、外筒部910と内筒部811の間の隙間32を介して、各炎孔10に供給される。すなわち、通気路30の混合気体は、図5図6に示される上方のバーナーキャップ4の環状溝403に供給され、この後、環状溝403よりもバーナーキャップ4の外周側に位置する各炎孔用溝42に供給される。そして、このように各炎孔用溝42に供給された混合気体は、区画部422の両側の溝部420を経て空所421を通じて合流して、炎孔出口100から吐出される。
【0045】
図4に示されるようにバーナー本体3の外筒部910の上端面において、バーナーキャップ4の環状部40の外周側端部に対向する部分は、その内周側に位置する部分よりも段落した段落面900となっている。段落面900は、外筒部910の周方向に亘って形成されている。
【0046】
外筒部910の上端面において段落面900よりも内周側の部分は、バーナーキャップ4の各仕切部401の内周側や各区画部422が載置される載置部901となっている。
【0047】
ガスバーナー1には、図3に示されるように、バーナーキャップ4の外周側に開口する保炎孔12が、バーナーキャップ4の周方向に多数(複数)形成されている。各保炎孔12は、バーナー本体3の段落面900と、これに対向するバーナーキャップ4の仕切部401の外周側の下面とで構成されている。以下、炎孔10を主炎孔10と記載する。
【0048】
各保炎孔12は、その両側の主炎孔10のバーナーキャップ4の外周側の端部同士を連通させている。図7に示されるように、バーナーキャップ4の各仕切部401の下面において、第一凹所402よりもバーナーキャップ4の外周側に位置する部分には、上方に凹んだ第二凹所404が形成されている。第二凹所404のバーナーキャップ4の内周側は空所404aを介して第一凹所402に連通している。
【0049】
バーナー本体3の通気路30からバーナーキャップ4の環状溝403に供給された混合気体の一部は、第一凹所402から空所404a及び第二凹所404を順に経て各保炎孔12に供給されるようになっている。
【0050】
バーナーキャップ4の一つの仕切部401は、点火用の混合気体を通過させる仕切部401aとなっている。仕切部401aの第二凹所404は、空所404bを介してバーナーキャップ4の外周側に連通している。バーナー本体3の通気路30からバーナーキャップ4の環状溝403に供給された混合気体の一部は、第一凹所402から、空所404a、第二凹所404、及び空所404bを順に経て、バーナーキャップ4の外周側に供給される。
【0051】
仕切部401aの上部には、バーナーキャップ4の外周側に突出した庇部407が形成されている。庇部407の下面には、スパークターゲット13が設けられている。図2に示されるように、バーナー本体3の台部81には、スパークターゲット13との間において点火スパークを発生させる点火プラグ14が設けられている。
【0052】
ガスバーナー1を燃焼させるには、ノズル5から噴出された燃料ガスと一次空気とがバーナー本体3に供給された状態において、点火プラグ14によって点火スパークを生じさせる。これにより、図7に示される仕切部401aの第二凹所404から空所404bを介してバーナーキャップ4の外周側に供給された混合気体が点火スパークによって点火され、空所404bに対応する箇所に点火炎が形成される。この点火炎は、各保炎孔12からバーナーキャップ4の外周側に供給された混合気体や、各主炎孔10からバーナーキャップ4の外周側に供給された混合気体に次々に火移りする。これにより、ガスバーナー1の各炎孔出口100及び各保炎孔12の出口において火炎が形成される。
【0053】
ガスバーナー1の火力が大火から小火に急激に変更された場合、ノズル5からの燃料ガスの噴出に伴って吸引される一次空気のバーナー本体3に噴出される燃料ガスの量に対する比率が、一次空気の慣性により瞬間的に大きくなる可能性がある。この場合、一次空気の混合比率が高いエアリッチな混合気体が炎孔出口100に供給されて、燃焼不良が生じることが懸念される。なお、本例のようにダンパー6を設けた場合にも、ガスバーナー1の火力が大火から小火に変更されたときには、一次空気が慣性によってバーナー本体3に瞬間的に多く供給される可能性がある。
【0054】
この点を改善するため、本実施形態のガスバーナー1にあっては、図6に示されるようにバーナー本体3にサブチャンバー31が形成されている。
【0055】
サブチャンバー31は通気路30のバイパス路となるもので、バーナーベース8の台部81の上面に形成された凹所と、バーナーボディ9の本体部91の下面に形成された凹所とを合わせることで形成されている。
【0056】
サブチャンバー31は、図8に示されるように通気路30の下流部を構成する水平断面円環状の隙間32の外側に位置し、隙間32に沿って形成されている。
【0057】
サブチャンバー31は、導入口310と、導出口311と、導入口310及び導出口311を接続する貯留部312で構成されている。
【0058】
貯留部312は、平面視で外筒部910の周方向に長い空所部で構成されている。導入口310は、外筒部910の内面に形成され、貯留部312の長手方向の一端部をその内側に位置する隙間32の下部に連通させる。
【0059】
導出口311は、外筒部910の上端面に形成されており、外筒部910の周方向において導入口310と離間している。図6に示されるように、導出口311は、バーナーキャップ4の炎孔用溝42のうちの一つの炎孔用溝42に対向する位置において上方に開口している。
【0060】
以下、導出口311が臨む炎孔用溝42、すなわち、サブチャンバー31から混合気体が供給される炎孔用溝42を、他の炎孔用溝42と区別するために炎孔用溝42aと記載する。また、炎孔用溝42aを用いて構成された主炎孔10を主炎孔10aと記載し、主炎孔10aの炎孔出口100を炎孔出口100aと記載する。
【0061】
図4に示されるように、バーナー本体3の外筒部910の周方向の一部は他部よりも内周側に突出した突出部902となっている。これにより、通気路30の平面視円環状の出口301は、その周方向の一部の幅(外筒部910と内筒部811の間隔)が他部の幅よりも小さくなっている。
【0062】
サブチャンバー31の導出口311は、外筒部910の突出部902の上端面に形成されており、平面視において通気路30の円環状の出口301の最外周縁よりも内側に位置している。導出口311は、平面視で出口301に沿って長い略矩形状に形成されている。
【0063】
導出口311は、炎孔用溝42aの区画部422よりもバーナーキャップ4の内周側に位置している。貯留部312の長手方向において導入口310と反対側の端部は、導出口311を介して炎孔用溝42aに連通している。
【0064】
図6に示されるように、炎孔用溝42aにおいて出口301に対向する箇所を第一箇所423としたとき、導出口311は、炎孔用溝42aにおいて第一箇所423よりもバーナーキャップ4の外周側に位置する箇所に臨んでいる。以下、炎孔用溝42aにおいて導出口311に対向する箇所を第二箇所424と記載する。
【0065】
ガスバーナー1の燃焼時には、通気路30に供給された混合気体の一部が、導入口310から貯留部312に供給され、この混合気体は導出口311から炎孔用溝42aの第二箇所424に供給される。すなわち、ガスバーナー1の燃焼時には、ガス通路15を通じて主炎孔10や保炎孔12に供給される混合気体の一部が、サブチャンバー31内を流動して炎孔出口100aに供給される。
【0066】
導入口310の流路面積は、導出口311の流路面積より小さくすることが好ましい。このようにすることで、サブチャンバー31内の混合気体を導出口311から炎孔用溝42aに安定して供給できるからである。なお、前記流路面積とは混合気体の流れ方向と直交する断面における面積である。
【0067】
サブチャンバー31を設けることで、ガスバーナー1の燃焼時に火力が大火から小火に急激に変更されたときには、大火状態での燃焼時においてサブチャンバー31の貯留部312に貯留された混合気体が、通気路30から導入口310に供給された混合気体により、導出口311から炎孔用溝42aの第二箇所424に押し出されるようになる。
【0068】
一方、通気路30から出口301を介して炎孔用溝42aの第一箇所423に直接供給された混合気体は、炎孔用溝42aに沿って炎孔出口100a側に向かう。この混合気体には前記導出口311から上方に吹き出された混合気体が第二箇所424において合流され、この後、炎孔出口100aからバーナーキャップ4の外周側に吐出される。これにより、火力が大火から小火に急激に変更されたときに、炎孔出口100aから吹き出される混合気体の一次空気の比率が増加し難くなる。従って、炎孔出口100aに形成された火炎は消え難くなり、ガスバーナー1の燃焼を良好に維持することが可能になる。
【0069】
炎孔用溝42aにおける第一箇所423と第二箇所424の間には、サブチャンバー31から炎孔用溝42aの第二箇所424に供給された混合気体の第一箇所423側に向かう流れを遮る堰部33が設けられている。堰部33は、通気路30の出口301から炎孔用溝42aに直接供給された混合気体の流れを基準としたときに、第一箇所423よりも下流側且つ第二箇所424よりも上流側に位置している。
【0070】
図7に示されるように、堰部33は、バーナーキャップ4の炎孔用溝42aの上面を構成する環状部40の下面から下方に突出しており、炎孔用溝42aの長さ方向(バーナーキャップ4の径方向)と略直交した壁状に形成されている。
【0071】
堰部33には、炎孔用溝42aの長さ方向に貫通する空隙330が形成されている。図6に示されるように、炎孔用溝42aの第一箇所423と第二箇所424は空隙330を介して連通している。通気路30の出口301から炎孔用溝42aの第一箇所423に供給された混合気体は、空隙330を通って炎孔出口100a側に供給されるようになっている。
【0072】
炎孔用溝42aに堰部33を設けることで、導出口311から炎孔用溝42aの第二箇所424に供給された混合気体は、第一箇所423側に流動し難くなる。このため、サブチャンバー31内の混合気体が炎孔出口100aに供給されやすくなり、火力が大火から小火に変更されたときの燃焼不良をより一層生じ難くすることができる。
【0073】
なお、堰部33には空隙330を設けなくてもよい。すなわち、この場合は、バーナー本体3の通気路30の出口301からバーナーキャップ4の環状溝403に直接供給された混合気体は、炎孔出口100aに供給されない。
【0074】
図7に示されるように、炎孔用溝42aの両側の仕切部401の炎孔用溝42a側の端部には、バーナーキャップ4の内周側に突出したガイド壁44が形成されている。各ガイド壁44のバーナーキャップ4の内周側の端部は、堰部33の対応する側端部に接続されている。両ガイド壁44は、炎孔用溝42aの第一箇所423と、炎孔用溝42aの両側に位置する仕切部401に形成された第一凹所402とを仕切っている。両ガイド壁44は、炎孔用溝42aにおいて堰部33の空隙330からバーナーキャップ4の外周側に向けて吐出された混合気体を、炎孔出口100a側へ導くガイドとして機能する。
【0075】
サブチャンバー31の貯留部312には、図1に示されるように、抵抗部313が設けられている。抵抗部313は、貯留部312の長手方向における導出口311側の端部(下流側部分)に位置している。また、抵抗部313は、外筒部910の径方向において導出口311よりも外側に位置している。
【0076】
抵抗部313は、導入口310から導出口311に向かって流れる混合気体の流れ方向(貯留部312の長手方向)に沿う板状に形成されており、貯留部312を流れる混合気体の流れ方向と略平行である。抵抗部313は、バーナーベース8の台部81の上面で構成された、貯留部312の底面に立設されており、台部81と一体に形成されている。
【0077】
抵抗部313の上端面は、水平であり、貯留部312の上下方向の中程で且つ導出口311よりも下方に配置されている。抵抗部313は、貯留部312の長手方向の導出口311側の端部における下部にのみ存在し、貯留部312の長手方向の導出口311側の端部における上部には、存在していない。すなわち、貯留部312の長手方向の導出口311側の端部における上部は、抵抗部313が存在せず、抵抗部313が設けられた箇所よりも流れ抵抗の小さい空間317となっている。
【0078】
ガスバーナー1の燃焼時には、貯留部312において抵抗部313近傍を通過した混合気体は、空間317を通過した後、導出口311から炎孔用溝42aに供給されるようになっている。すなわち、空間317は、貯留部312の下流側端部にあり、貯留部312において抵抗部313よりも下流側に位置している。
【0079】
板状の抵抗部313の両面は、ガスバーナー1の燃焼時において貯留部312を流れる混合気体の流れに対する抵抗となる。すなわち、ガスバーナー1の燃焼時において貯留部312の抵抗部313近傍を流れる混合気体と、抵抗部313の板面との間には、抵抗力(粘性摩擦力)が発生する。
【0080】
図9(a)は、抵抗部313が設けられた本実施形態の貯留部312における混合気体の流れを示す模式図であり、図9(b)は、抵抗部313が設けられていない参考例の貯留部312における混合気体の流れを示す模式図である。図9(a)において、S1で示される部分は、抵抗部313によって混合気体の流れが抑制されやすい部分であり、S2で示される部分は、混合気体の流れが抑制され難い部分である。また、図9(b)においてS3で示される部分は、混合気体の流れが抑制され難い部分である。
【0081】
図9から明らかなように、本実施形態の貯留部312にあっては、抵抗部313を設けない場合と比較して、抵抗部313の近傍において混合気体の流れが抑制される。このため、貯留部312における混合気体は、あたかも貯留部312の流路面積が小さくなったように空間317側に偏って流れやすくなる。この傾向は、貯留部312を流れる混合気体の流速が大きい程顕著に表れる。従って、ガスバーナー1の火力が小火から大火に急激に変更された場合、貯留部312に通じる炎孔出口100aには、一次空気の少ない貯留部312の混合気体が供給され難くなり、炎孔出口100aに形成される炎が、他の炎孔出口100で形成される炎よりも大きくなり過ぎることが抑制されるようになっている。
【0082】
また、抵抗部313は板状であってサブチャンバー31の容積の減少をほとんど伴わない。このため、ガスバーナー1の火力が大火から小火に変更された場合に、一次空気の混合比率の高い混合気体が炎孔出口100aに供給されて燃焼不良が生じることを抑制するというサブチャンバー31の本来の効果を損なわれ難くすることができる。
【0083】
また、抵抗部313は、導入口310から導出口311に向かって流れる混合気体の流れ方向に沿う板状に形成されている。このため、貯留部312における混合気体の流れは、抵抗部313によって阻害され難くなる。特に、ガスバーナー1の火力が大火から小火に変更されたときには、貯留部312における混合気体の流速が小さくなるため、抵抗部313による通過抵抗の増加を抑制することができる。従って、前記サブチャンバー31本来の効果を一層損なわれ難くすることができる。
【0084】
また、抵抗部313は、貯留部312の底面に立設するだけの簡単な構成で設けることができる。なお、本実施形態では、抵抗部313を貯留部312の底面に設けたが、抵抗部313は、貯留部312の底面以外の内面(側面や上面)に突設しても構わない。
【0085】
また、貯留部312における下流側端部には、抵抗部313よりも下流側に位置して抵抗部313が存在しない空間317が形成されている。このため、ガスバーナー1の火力が大火から小火に変更された直後には、空間317に貯留された混合気体が導出口311から速やかに炎孔用溝42aに供給されるようになる。従って、前記サブチャンバー31本来の効果を一層損なわれ難くすることができる。
【0086】
また、本実施形態の貯留部312において抵抗部313が設けられた底面314は、図1に示されるように、その上流側の底面315よりも傾斜面316を介して一段上方に位置している。傾斜面316は、貯留部312において下流側程上方に位置するように傾斜している。貯留部312の底面に沿って流れる混合気体の流れは、抵抗部313直前において傾斜面316により斜め上方に向きが変更されるようになっている。このため、貯留部312内の混合気体は、貯留部312上方の導出口311側にスムーズに流れやすくなっている。また、抵抗部313の導入口310側の側端面は、導入口310側に行く程下方に位置するように傾斜しており、傾斜面316によって上方成分を含む向きに変えられた混合気体の流れに対して過度の抵抗にならないようにしてある。
【0087】
なお、本実施形態のガスバーナー1は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で設計変更可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 ガスバーナー
10 炎孔
10a 炎孔
30 通気路
31 サブチャンバー
310 導入口
311 導出口
312 貯留部
313 抵抗部
317 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9