特許第6178674号(P6178674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178674
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】送風機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/58 20060101AFI20170731BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20170731BHJP
   H02K 9/06 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   F04D29/58 P
   F04D29/58 S
   F04D29/42 M
   F04D29/42 H
   H02K9/06 F
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-180103(P2013-180103)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-48754(P2015-48754A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 建基
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−114199(JP,U)
【文献】 米国特許第07977831(US,B2)
【文献】 実開昭61−048995(JP,U)
【文献】 実公昭43−4020(JP,Y1)
【文献】 特開平6−159293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/58
F04D 29/42
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラを収容するブロワケースと固定子及び回転子を収容するモータケースが一体に組み付けられ、これらを貫通するシャフトに前記ブロワケース内にインペラが前記モータケース内に前記回転子が各々組み付けられ、前記インペラの回転により前記ブロワケース内に軸方向から流体を吸い込んで周方向から送風する送風機であって、
前記ブロワケースから圧縮空気の一部を前記モータケースの軸方向一端面から導入する第1通気孔と、
前記モータケース内を通過した圧縮空気を軸方向他端面からケース外に排気する第2通気孔と、
前記モータケースの軸方向他端面を覆い外周縁部が前記モータケースの他端面外周でケース外周方向に沿って湾曲して形成された誘導ガイドが重ねて組み付けられ、前記モータケースの軸方向他端面及び前記モータケースの軸方向他端側外周面との間に形成された排気用の外部誘導路と、を具備し、
ータを起動すると前記ブロワケースから前記第1通気孔より前記モータケースに導入された圧縮空気を前記第2通気孔より排気するとともに、前記第2通気孔より排気された空気を前記外部誘導路を通じて前記モータケースの外周面に吹き出すように誘導することを特徴とする送風機。
【請求項2】
記モータケースの外周面には、放熱フィンが設けられている請求項1記載の送風機。
【請求項3】
前記第1通気孔は前記シャフトの回りに複数箇所に形成されており、前記第2通気孔は、前記第1通気孔とシャフトの回りに中心角で所定角度シフトして形成されている請求項1又は請求項2記載の送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの空冷機構を備えた送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転体を駆動するモータを冷却するためのさまざまなスピンドル装置が提案されている。たとえばデジタル複写機やレーザービームプリンタ等に用いられるポリゴンミラーをモータで高速回転させるため、モータコイルの線径を大きくして大電流を流すことが行われている。しかしながら、モータコイルに流れる電流量が増えると、発熱量も増大し、モータの温度上昇が顕著になる。或いは回転子を回転可能に軸支する軸受部からの発熱も生ずる。
【0003】
このため、例えばポリゴンミラーを収容するミラーケースに吸気孔を設け、モータを収容するモータケースに排気孔を設け、ミラーケースとモータケースを隔離する隔離部材に連通孔を設け、モータコアのスロットより外周位置に連通孔が設けられたスピンドル装置が提案されている。モータコイルに通電すると、回転子を通じてポリゴンミラーが回転し、ポリゴンミラーの外周部に発生する負圧により吸気孔より吸気された空気はポリゴンミラーの回転中心から外周側に流れ、隔壁部材の連通孔を介してモータケース内に流れ込む。そして、モータケース内を空気がモータコアの連通孔を通じて排気孔へ流れることで熱気がモータケース外へ排気されることで、固定子を冷却するようになっている(特許文献1参照)。
【0004】
また、モータ電流(入力)の大きなモータを使用する場合には、モータケース内への空気の取り込みだけでは足りずに熱容量の大きいモータケース自体を冷却する必要がある。このためモータケースより外部に延設された回転軸に冷却用のファンを設けて、当該ファンを覆うファンカバーによりモータケースを冷却することが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−275457号公報
【特許文献2】特開平5−56603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
入力の大きなモータを使用する場合には、モータケース内部の冷却だけでは足りず、熱容量の大きいモータケースを冷却する必要があるが、上述した特許文献1のスピンドル装置は、モータケース内の固定子を冷却することを意図しており、熱容量が大きいモータケースの冷却は考慮されていない。また、固定子の冷却のため、モータコアに貫通孔をあけており、工数がかかり製造コストが嵩むうえに、磁束通路が減ってモータ性能が低下するおそれもある。
また、特許文献2のように回転軸をモータケース外へ延設して冷却ファンを設けるとすれば、装置が大型化して部品点数も増大するうえに、モータケース内ではモータコアなどが発熱しているため、装置全体として効率の良い冷却が行うことができない。
【0007】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、ブロワケースの圧縮空気を利用してモータケース内外を効率よく冷却することが可能な送風機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
インペラを収容するブロワケースと固定子及び回転子を収容するモータケースが一体に組み付けられ、これらを貫通するシャフトに前記ブロワケース内にインペラが前記モータケース内に前記回転子が各々組み付けられ、前記インペラの回転により前記ブロワケース内に軸方向から流体を吸い込んで周方向から送風する送風機であって、前記ブロワケースから圧縮空気の一部を前記モータケースの軸方向一端面から導入する第1通気孔と、前記モータケース内を通過した圧縮空気を軸方向他端面からケース外に排気する第2通気孔と、前記モータケースの軸方向他端面を覆い外周縁部が前記モータケースの他端面外周でケース外周方向に沿って湾曲して形成された誘導ガイドが重ねて組み付けられ、前記モータケースの軸方向他端面及び前記モータケースの軸方向他端側外周面との間に形成された排気用の外部誘導路と、を具備し、前記モータを起動すると前記ブロワケースから前記第1通気孔より前記モータケースに導入された圧縮空気を前記第2通気孔より排気するとともに、前記第2通気孔より排気された空気を前記外部誘導路を通じて前記モータケースの外周面に吹き出すように誘導することを特徴とする。
【0009】
また、前記モータケースの外周面には、放熱フィンが設けられていることが望ましい。これにより、誘導ガイドによってモータケースの外周面に吹き出した空気による冷却と放熱フィンによる冷却を併用することでモータケースを効率よく冷却することができる。
【0010】
また、前記外部誘導路を形成する誘導ガイドは、前記モータケースの軸方向他端面を覆って重ねて組み付けられており、前記モータケースの外周面には、放熱フィンが設けられていることが望ましい。これにより、誘導ガイドによってモータケースの外周面に吹き出した空気による冷却と放熱フィンによる冷却を併用することでモータケースを効率よく冷却することができる。
【0011】
また、前記第1通気孔はモータコア位置に応じて複数箇所に形成されており、前記第2通気孔は、前記第1通気孔とシャフトの回りに中心角で所定角度シフトして形成されていることが好ましい。これにより、第1通気孔からモータケース内に流れ込んだ圧縮空気がまず発熱し易いモータコアを冷却しつつ当該モータケース内を乱流してから第2通気孔より排気されるので、モータケース内を効率よく冷却することができる。
【発明の効果】
【0012】
上述した送風機を用いれば、ブロワケースの圧縮空気を利用してモータケース内外を効率よく冷却することが可能な送風機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】送風機をモータケース側から見た平面図である。
図2】インペラを省略した状態で送風機をブロワケース側から見たてみた平面図である。
図3図1の矢印X−X断面図及び第2通気孔の拡大断面図である。
図4】他例に係る送風機をモータケース側から見た平面図である。
図5図4の矢印X−X断面図及び第2通気孔より排気される誘導ガイドの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る送風機の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。先ず、 送風機の概略構成について図1乃至図3を参照して説明する。
送風機1は、図3に示すように、インペラ2が収容されるブロワケース3と、固定子4及び回転子5(モータM)が収容されるモータケース6が一体に組み付けられている。ブロワケース3及びモータケース6を貫通するシャフト7にブロワケース3内にインペラ2が組み付けられ、モータケース6内に回転子5及び固定子4が各々組み付けられている。送風機1は、モータMを起動すると、インペラ2の回転によりブロワケース3内に軸方向から外気を吸い込んで周方向から圧縮空気を送風するようになっている。
【0015】
図3において、ブロワケース3は、第1ブロワケース3aと第2ブロワケース3bとを組み合わせて形成される。第1ブロワケース3aの中心部には外気を吸込む吸込み口3cが形成されている。第1ブロワケース3a及び第2ブロワケース3bの外周縁部には凹溝が形成されており、これらが対向して重なり合うことで圧縮室3e(流路)が形成される。また、ブロワケース3の外周面には接線方向に延設された吐出口3dが形成されている(図2参照)。ブロワケース3内にはシャフト7の一端が挿入されており、該シャフト7にはインペラ2が一体に組み付けられている。インペラ2はシャフト7の一端にモールド、接着、圧入等により一体に組み付けられている。インペラ2には、ブレード2aが放射状に形成されている。
【0016】
図2において、圧縮室3eに囲まれたブロワケース3の吸込み口3cとは反対側、即ち第2ブロワケース3bには、モータケース6が一体に組み付けられる。図3において、モータケース6は第1モータケース6aと第2モータケース6bを組み合わせて形成されている。モータケース6としては、比較的熱容量の大きいアルミニウム材、アルミ合金材などが用いられる。第1モータケース6aの取付面となる端面Aには段付き部6cが形成されて第2ブロワケース3bの中心孔3fに嵌め込まれて一体に組み付けられている。この第1モータケース6aのブロワケース3内に臨む端面Aには、ブロワケース3から圧縮空気の一部をモータケース6内に導入する第1通気孔6dがシャフト7の回りに等間隔(例えば中心角で120°間隔)で複数箇所(例えば3カ所)に穿孔されている。即ち、第1通気孔6dは、インペラ2のブレード2a形成面とは反対面側に配置されている。
【0017】
次にモータケース6内の構成について説明する。図3において、シャフト7は第1モータケース6aと第2モータケース6bに各々設けられた軸受部6hによって回転可能に支持されている。軸受部6hは転がり軸受のほかすべり軸受(例えばメタル含油軸受、流体動圧軸受等)などが用いられる。シャフト7には、回転子(ロータマグネット)5が同心状に組み付けられている。また、第1モータケース6aの内壁面には、固定子4を形成するモータコア8が固定されており、モータコア8から回転子5に対向して径方向内側に向かって突設された極歯(ティース部)には、インシュレータ9を介してモータコイル10が巻き付けられている。
【0018】
また、第2モータケース6bには、モータ基板11がインシュレータ9より突設された基板保持部9aにより保持されている。モータ基板11には、電子部品(例えばホールIC)12などが基板実装されている。モータ基板11の中心部にはシャフト7を挿通する逃げ孔11aが形成されている。また、シャフト7の他端、即ちインペラ2が設けられた軸端とは反対側の軸端は、第2モータケース6bに設けられたスラスト受け15により支持されている。シャフト7の軸端はR面状に形成されており、スラスト受け15と接触しながら回転する。スラスト受け15としては、シャフト7との摺動特性に優れた樹脂材(例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)材)が用いられる。
【0019】
図1において、第2モータケース6bの端面B(第1モータケース6aの取付面Aと軸方向反対端面)には、モータケース6内を通過した圧縮空気をケース外に排気する第2通気孔6eがシャフト7の回りに等間隔(例えば中心角で120°間隔)で複数箇所(例えば3カ所)に穿孔されている。尚、第2通気孔6eは、第2モータケース6bの軸方向端面Bに限らずその近傍の側面に設けられていてもよい。
また、第2モータケース6bの端面Bには、モータコイル10へ給電するためのリード線13が引き出される引き出し孔6fが穿孔されている。
【0020】
また、図3に示すように、モータケース6の軸方向他端面、即ち第2モータケース6bの端面Bを覆うように重ねて誘導ガイド16がねじ止め固定されている。誘導ガイド16は、第2モータケース6bの端面外周でケース外周方向に沿って湾曲して形成されており、第2モータケース6bの端面B及び外周面Cとの間に外部誘導路17を形成する。即ち、図3の拡大図に示すように、第2通気孔6eより排気された空気は、第2モータケース6bの外周より大きな外径を有する誘導ガイド16に誘導されて外部誘導路17をモータケース6の端面B側から外周面C側に沿って吹き出すように誘導される。尚、誘導ガイド16にもモータコイル10へ給電するためのリード線13が引き出される引き出し孔6fに連通する引き出し孔16aが穿孔されている。また、誘導ガイド16は、第2モータケース6bの外周面Cに沿って更に長く設けるようにしてもよい。
【0021】
また、第1通気孔6d(図2参照)と第2通気孔6e(図1参照)との位置関係は、軸方向に重なり合う位置でもよいが、第2通気孔6eが第1通気孔6dとシャフト7の回りに中心角で所定角度(例えば60°)シフトして形成されていることが好ましい(図1及び図2参照)。これにより、第1通気孔6dからモータケース6内に流れ込んだ圧縮空気の一部がまず発熱し易いモータコア8を冷却しつつモータケース6内を図3の破線矢印のように乱流してから第2通気孔6eより排気されるので、モータケース6内を効率よく冷却することができる。
【0022】
モータMが起動しインペラ2が回転するとブロワケース3からモータケース6の軸方向一端面から第1通気孔6dを通じて圧縮空気の一部をモータケース6内に導入し、当該モータケース6内を通過した圧縮空気が軸方向他端面に設けられた第2通気孔6eを通じてモータケース6外に排気されるので、モータケース6内を送風用の圧縮空気の一部を利用して冷却することができる。
また、第2通気孔6eより排気された空気が外部誘導路17を通じてモータケース6の外周面に吹き出すように誘導されるので、熱容量の大きいモータケース6を外部から冷却することができる。
よって、ブロワケース3で生成した圧縮空気を利用してモータケース6の内外を効率よく冷却することが可能になる。
【0023】
次に、送風機1の他例について図4及び図5を参照して説明する。上述した実施例と同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとする。
ブロワケース3及びモータケース6の内部の構成は上述した実施例と同様である。図4及び図5に示すように、モータケース6のうち、第1モータケース6aの外周面には、放熱フィン18が放射状に形成されている。
【0024】
また、外部誘導路17を形成する誘導ガイド16は、第2モータケース6bの軸方向他端面(端面B)を覆って重ねて組み付けられている構造は同様である。これに加えて、第1モータケース6aの外周面には、放熱フィン18が設けられている。これにより、誘導ガイド16によってモータケース6の外周面に吹き出した空気による冷却と放熱フィン18による冷却を併用することでモータケース6を効率よく冷却することができる。
【0025】
上記実施例は、インナーロータ型のモータを用いて説明したが、ロータヨークの通気性が確保できる構造であれば、アウターロータ型のモータであっても適用することができる。
また、第1通気孔6dと第2通気孔6eの通気孔数(3カ所)と配置関係(互いに60°位相がシフトして配置)は上述した態様に限定されるものではなく、通気孔の数はさらに増減することは可能であり、通気孔どうしの配置関係も変更することが可能である。また、逆止弁14が開閉する第2通気孔6eの形状は円形に限らず他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 送風機 2 インペラ 3 ブロワケース 3a 第1ブロワケース 3b 第2ブロワケース 3c 吸込み口 3d 吐出口 3e 圧縮室 3f 中心孔 4 固定子 5 回転子 6 モータケース 6a 第1モータケース 6b 第2モータケース 6c 段付き部 6d 第1通気孔 6e 第2通気孔 6f,16a 引き出し孔 6h 軸受部 7 シャフト 8 モータコア 9 インシュレータ 10 モータコイル 11 モータ基板 12 電子部品 13 リード線 15 スラスト受け 16 誘導ガイド 17 外部誘導路 18 放熱フィン
図1
図2
図3
図4
図5