特許第6178704号(P6178704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6178704計測点高付与システム、計測点高付与方法および計測点高付与プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178704
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】計測点高付与システム、計測点高付与方法および計測点高付与プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20170731BHJP
   G01S 17/89 20060101ALI20170731BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20170731BHJP
   G06T 17/05 20110101ALI20170731BHJP
   G01C 5/00 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   G01C15/00 102Z
   G01S17/89
   G08G1/00 A
   G06T17/05
   G01C5/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-236699(P2013-236699)
(22)【出願日】2013年11月15日
(65)【公開番号】特開2015-96824(P2015-96824A)
(43)【公開日】2015年5月21日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】591074161
【氏名又は名称】アジア航測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】本間 亮平
(72)【発明者】
【氏名】織田 和夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 辰也
(72)【発明者】
【氏名】新名 恭仁
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−507127(JP,A)
【文献】 特開2001−50743(JP,A)
【文献】 特開2005−62083(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/17115(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01C 1/00− 1/14
G01C 5/00−15/14
G01S 7/48− 7/51
G01S 17/00−17/95
G06T 1/00
G06T 11/60−13/80
G06T 17/05
G06T 19/00−19/20
G08G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測車両に慣性計測装置、GNSS受信装置、レーザスキャナが接続されたデータ演算装置を搭載したモービルマッピングシステムによって生成される走行点の通過時刻と車両位置座標、高度を含む走行点データを蓄積した3次元軌跡情報を利用する計測点高付与システムであって、
記憶手段と、
前記3次元軌跡情報と、前記モービルマッピングシステムによって生成される各計測点の計測時刻と計測点位置座標を含む計測点データが蓄積した3次元点群データを前記記憶手段に保存するデータ読込み部と、
前記記憶手段に保存された前記3次元点群データから前記計測点データを順次読み出し、前記記憶手段に保存された前記3次元軌跡情報を前記計測点データに含まれる前記計測時刻によって検索し、当該計測時刻の直近の通過時刻を含む前記走行点データから、前記計測点の最近傍の走行点を決定する走行点決定部と、
前記記憶手段に保存された前記3次元軌跡情報から、前記最近傍の走行点の高度と、前記最近傍の走行点の前記通過時刻から所定の時間前および時間後の走行点の少なくとも一方の高度とを読み出して比較し、前記高度が時間とともに上昇または下降している場合、道路面が傾斜していると判定して前記最近傍の走行点の車両位置座標と前記所定の時間前の走行点の車両位置座標から前記道路面の傾斜角を算出する坂道判定部と、
前記道路面が水平の場合、前記計測点の高度と前記最近傍の走行点の高度の高度差分を求め、当該高度差分に前記計測車両の車高を加算して前記計測点の計測点高を算出して前記計測点データに付与し、計測点高付3次元点群データとして前記記憶手段に保存する水平面計測点高算出部と、
前記道路面が傾斜している場合、前記計測点の高度と前記最近傍の走行点の高度の前記高度差分に、前記計測車両の車高を前記傾斜角の余弦で割った補正車高を加算して前記計測点の鉛直方向の計測点高を算出して前記計測点データに付与し、前記計測点高付3次元点群データとして前記記憶手段に保存する傾斜面計測点高算出部
とを含むことを特徴とする計測点高付与システム。
【請求項2】
計測車両に慣性計測装置、GNSS受信装置、レーザスキャナが接続されたデータ演算装置を搭載したモービルマッピングシステムによって生成される走行点の通過時刻と車両位置座標を含む走行点データが蓄積された3次元軌跡情報を利用する計測点高付与システムであって、
記憶手段と、
前記3次元軌跡情報と、前記モービルマッピングシステムまたは航空レーザ測量システムによって生成される各計測点の計測時刻と計測点位置座標を含む計測点データが蓄積された3次元点群データを前記記憶手段に保存するデータ読込み部と、
前記記憶手段に保存された前記3次元点群データから前記計測点データを順次読み出し、前記計測点データに含まれる前記計測点位置座標から、前記計測点から所定の距離離れた検索範囲を設定し、前記記憶手段に保存された前記3次元軌跡情報の前記車両位置座標により前記検索範囲内の走行点を抽出して前記計測点との距離を算出し、前記計測点の最近傍の走行点を決定する走行点決定部と、
前記記憶手段に保存された前記3次元軌跡情報から、前記最近傍の走行点の高度と、前記最近傍の走行点の前記通過時刻から所定の時間前および時間後の走行点の少なくとも一方の高度とを読み出して比較し、前記高度が時間とともに上昇または下降している場合、道路面が傾斜していると判定して前記最近傍の走行点の車両位置座標と前記所定の時間前の走行点の車両位置座標から前記道路面の傾斜角を算出する坂道判定部と、
前記道路面が水平の場合、前記計測点の高度と前記最近傍の走行点の高度の高度差分を求め、当該高度差分に前記計測車両の車高を加算して前記計測点の計測点高を算出して前記計測点データに付与し、計測点高付3次元点群データとして前記記憶手段に保存する水平面計測点高算出部と、
前記道路面が傾斜している場合、前記計測点の高度と前記最近傍の走行点の高度の前記高度差分に、前記計測車両の車高を前記傾斜角の余弦で割った補正車高を加算して前記計測点の鉛直方向の計測点高を算出して前記計測点データに付与し、前記計測点高付3次元点群データとして前記記憶手段に保存する傾斜面計測点高算出部
とを含むことを特徴とする計測点高付与システム。
【請求項3】
前記傾斜面計測点高算出部は、さらに、前記計測点の高度と前記最近傍の走行点の高度の前記高度差分に前記傾斜角の余弦をかけて補正高度差分を求め、前記計測車両の車高を加算して前記計測点の前記道路面に対して垂直方向の計測点高を算出して前記計測点データに付与し、前記計測点高付3次元点群データとして前記記憶手段に保存する請求項1または2に記載の計測点高付与システム。
【請求項4】
前記記憶手段に保存された前記計測点高付3次元点群データを端末画面に表示するデータ表示部をさらに含む請求項3に記載の計測点高付与システム。
【請求項5】
計測車両に慣性計測装置、GNSS受信装置、レーザスキャナが接続されたデータ演算装置を搭載したモービルマッピングシステムによって生成される走行点の通過時刻と車両位置座標を含む走行点データが蓄積された3次元軌跡情報を利用する計測点高付与方法であって、
前記3次元軌跡情報と、前記モービルマッピングシステムによって生成される各計測点の計測時刻と計測点位置座標を含む計測点データが蓄積された3次元点群データを記憶手段に保存するデータ読込みステップと、
前記記憶手段に保存された前記3次元点群データから前記計測点データを順次読み出し、前記記憶手段に保存された前記3次元軌跡情報を前記計測点データに含まれる前記計測時刻によって検索し、当該計測時刻の直近の通過時刻を含む前記走行点データから、前記計測点の最近傍の走行点を決定する走行点決定ステップと、
前記記憶手段に保存された前記3次元軌跡情報から、前記最近傍の走行点の高度と、前記最近傍の走行点の前記通過時刻から所定の時間前および時間後の走行点の少なくとも一方の高度とを読み出して比較し、前記高度が時間とともに上昇または下降している場合、道路面が傾斜していると判定して前記最近傍の走行点の車両位置座標と前記所定の時間前の走行点の車両位置座標から前記道路面の傾斜角を算出する坂道判定ステップと、
前記道路面が水平の場合、前記計測点の高度と前記最近傍の走行点の高度の高度差分を求め、当該高度差分に前記計測車両の車高を加算して前記計測点の計測点高を算出して前記計測点データに付与し、計測点高付3次元点群データとして前記記憶手段に保存する水平面計測点高算出ステップと、
前記道路面が傾斜している場合、前記計測点の高度と前記最近傍の走行点の高度の前記高度差分に、前記計測車両の車高を前記傾斜角の余弦で割った補正車高を加算して前記計測点の鉛直方向の計測点高を算出して前記計測点データに付与し、前記計測点高付3次元点群データとして前記記憶手段に保存する傾斜面計測点高算出ステップ
とを含むことを特徴とする計測点高付与方法。
【請求項6】
計測車両に慣性計測装置、GNSS受信装置、レーザスキャナが接続されたデータ演算装置を搭載したモービルマッピングシステムによって生成される走行点の通過時刻と車両位置座標を含む走行点データが蓄積された3次元軌跡情報を利用する計測点高付与方法であって、
前記3次元軌跡情報と、前記モービルマッピングシステムまたは航空レーザ測量システムによって生成される各計測点の計測時刻と計測点位置座標を含む計測点データが蓄積された3次元点群データを記憶手段に保存するデータ読込みステップと、
前記記憶手段に保存された前記3次元点群データから前記計測点データを順次読み出し、前記計測点データに含まれる前記計測点位置座標から、前記計測点から所定の距離離れた検索範囲を設定し、前記記憶手段に保存された前記3次元軌跡情報の前記車両位置座標により前記検索範囲内の走行点を抽出して前記計測点との距離を算出し、前記計測点の最近傍の走行点を決定する走行点決定ステップと、
前記記憶手段に保存された前記3次元軌跡情報から、前記最近傍の走行点の高度と、前記最近傍の走行点の前記通過時刻から所定の時間前および時間後の走行点の少なくとも一方の高度とを読み出して比較し、前記高度が時間とともに上昇または下降している場合、道路面が傾斜していると判定して前記最近傍の走行点の車両位置座標と前記所定の時間前の走行点の車両位置座標から前記道路面の傾斜角を算出する坂道判定ステップと、
前記道路面が水平の場合、前記計測点の高度と前記最近傍の走行点の高度の高度差分を求め、当該高度差分に前記計測車両の車高を加算して前記計測点の計測点高を算出して前記計測点データに付与し、計測点高付3次元点群データとして前記記憶手段に保存する水平面計測点高算出ステップと、
前記道路面が傾斜している場合、前記計測点の高度と前記最近傍の走行点の高度の前記高度差分に、前記計測車両の車高を前記傾斜角の余弦で割った補正車高を加算して前記計測点の鉛直方向の計測点高を算出して前記計測点データに付与し、前記計測点高付3次元点群データとして前記記憶手段に保存する傾斜面計測点高算出ステップ
とを含むことを特徴とする計測点高付与方法。
【請求項7】
前記傾斜面計測点高算出ステップは、さらに、前記計測点の高度と前記最近傍の走行点の高度の前記高度差分に前記傾斜角の余弦をかけて補正高度差分を求め、前記計測車両の車高を加算して前記計測点の前記道路面に対して垂直方向の計測点高を算出して前記計測点データに付与し、前記計測点高付3次元点群データとして前記記憶手段に保存する請求項5または6に記載の計測点高付与方法。
【請求項8】
計測車両に慣性計測装置、GNSS受信装置、レーザスキャナが接続されたデータ演算装置を搭載したモービルマッピングシステムによって生成される走行点の通過時刻と車両位置座標を含む走行点データが蓄積された3次元軌跡情報を利用する計測点高付与プログラムであって、
コンピュータに、
前記3次元軌跡情報と、前記モービルマッピングシステムによって生成される各計測点の計測時刻と計測点位置座標を含む計測点データが蓄積された3次元点群データを記憶手段に保存するデータ読込み手段と、
前記記憶手段に保存された前記3次元点群データから前記計測点データを順次読み出し、前記記憶手段に保存された前記3次元軌跡情報を前記計測点データに含まれる前記計測時刻によって検索し、当該計測時刻の直近の通過時刻を含む前記走行点データから、前記計測点の最近傍の走行点を決定する走行点決定手段と、
前記記憶手段に保存された前記3次元軌跡情報から、前記最近傍の走行点の高度と、前記最近傍の走行点の前記通過時刻から所定の時間前および時間後の走行点の少なくとも一方の高度とを読み出して比較し、前記高度が時間とともに上昇または下降している場合、道路面が傾斜していると判定して前記最近傍の走行点の車両位置座標と前記所定の時間前の走行点の車両位置座標から前記道路面の傾斜角を算出する坂道判定手段と、
前記道路面が水平の場合、前記計測点の高度と前記最近傍の走行点の高度の高度差分を求め、当該高度差分に前記計測車両の車高を加算して前記計測点の計測点高を算出して前記計測点データに付与し、計測点高付3次元点群データとして前記記憶手段に保存する水平面計測点高算出手段と、
前記道路面が傾斜している場合、前記計測点の高度と前記最近傍の走行点の高度の前記高度差分に、前記計測車両の車高を前記傾斜角の余弦で割った補正車高を加算して前記計測点の鉛直方向の計測点高を算出して前記計測点データに付与し、前記計測点高付3次元点群データとして前記記憶手段に保存する傾斜面計測点高算出手段
としての機能を実行させるための計測点高付与プログラム。
【請求項9】
計測車両に慣性計測装置、GNSS受信装置、レーザスキャナが接続されたデータ演算装置を搭載したモービルマッピングシステムによって生成される走行点の通過時刻と車両位置座標を含む走行点データが蓄積された3次元軌跡情報を利用する計測点高付与プログラムであって、
コンピュータに、
前記3次元軌跡情報と、前記モービルマッピングシステムまたは航空レーザ測量システムによって生成される各計測点の計測時刻と計測点位置座標を含む計測点データが蓄積された3次元点群データを記憶手段に保存するデータ読込み手段と、
前記記憶手段に保存された前記3次元点群データから前記計測点データを順次読み出し、前記計測点データに含まれる前記計測点位置座標から、前記計測点から所定の距離離れた検索範囲を設定し、前記記憶手段に保存された前記3次元軌跡情報の前記車両位置座標により前記検索範囲内の走行点を抽出して前記計測点との距離を算出し、前記計測点の最近傍の走行点を決定する走行点決定手段と、
前記記憶手段に保存された前記3次元軌跡情報から、前記最近傍の走行点の高度と、前記最近傍の走行点の前記通過時刻から所定の時間前および時間後の走行点の少なくとも一方の高度とを読み出して比較し、前記高度が時間とともに上昇または下降している場合、道路面が傾斜していると判定して前記最近傍の走行点の車両位置座標と前記所定の時間前の走行点の車両位置座標から前記道路面の傾斜角を算出する坂道判定手段と、
前記道路面が水平の場合、前記計測点の高度と前記最近傍の走行点の高度の高度差分を求め、当該高度差分に前記計測車両の車高を加算して前記計測点の計測点高を算出して前記計測点データに付与し、計測点高付3次元点群データとして前記記憶手段に保存する水平面計測点高算出手段と、
前記道路面が傾斜している場合、前記計測点の高度と前記最近傍の走行点の高度の前記高度差分に、前記計測車両の車高を前記傾斜角の余弦で割った補正車高を加算して前記計測点の鉛直方向の計測点高を算出して前記計測点データに付与し、前記計測点高付3次元点群データとして前記記憶手段に保存する傾斜面計測点高算出手段
としての機能を実行させるための計測点高付与プログラム。
【請求項10】
前記傾斜面計測点高算出手段は、さらに、前記計測点の高度と前記最近傍の走行点の高度の前記高度差分に前記傾斜角の余弦をかけて補正高度差分を求め、前記計測車両の車高を加算して前記計測点の前記道路面に対して垂直方向の計測点高を算出して前記計測点データに付与し、前記計測点高付3次元点群データとして前記記憶手段に保存する請求項8または9に記載の計測点高付与プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モービルマッピングシステムによって計測される車両の3次元軌跡情報と、モービルマッピングシステムまたは航空レーザ測量システムによって計測される道路沿線の地物の3次元点群データを利用して、道路面から地物までの高さを得る計測点高付与の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、全世界的航法衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)を利用して地理空間情報を取得し、地理情報システム(Geographic Information System:GIS)により、取得した地理空間情報を分析・編集・検索・表示等を可能とする技術が開発されている。道路管理(電線、電柱高さ等)においても、こうした地理空間情報の取得およびその利用が進んでいる。
【0003】
例えば、特許文献1のモービルマッピングシステム用空間情報生成装置は、マルチラインカメラと、DGPS受信器と、レーザスキャナと、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit:以下IMUという)とオドメーター(車両移動量計測装置)の機材とを組み合わせて車両に搭載し、走行しながら、車両周辺の地理空間情報を3次元計測する。このとき、走行中の車両の走行位置を記録した3次元軌跡情報を同時に取得する。
【0004】
また、MMSは、取得した3次元点群データをマルチラインカメラで撮影した画像に投影し、この画像上におけるピクセル座標の色情報(RGB)を抽出して、この色情報を3次元点群データに付与している。
【0005】
MMSは、一般道を車両で走行しながら地理空間情報の取得が可能なため安全にかつ短期間で作業できるという利点があり、道路管理において利用が増加している。
【0006】
道路沿線には、電柱、電線、看板、標識、街路樹などの道路周辺施設が集中的に配置されていて、3次元点群データから、これらの施設を含む道路沿線の状況を画像として表示できるようになり、MMSによって取得した地理空間情報を利用することで道路管理を効率的に行えるようになってきている。
【0007】
一方、特許文献2の地図データ生成システムには、俯瞰画像を生成するために地面からある高さ以上の計測点のデータを3次元点群データから除去する目的で、区域ごとの地面高を特定する処理が開示されている。
【0008】
この特許文献2の地図データ生成システムの地面高特定処理では、MMSによって計測した地域を一定範囲(例えば、100m×100m)に区分けし、各区域内の計測点の3次元点群データのうち高度が最も低い点の高度を、当該区域の地面高としたり、区域内の3点を通る平面の路面方程式から当該区域の地面高を算出したりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4486737号公報
【特許文献2】特開第5319741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】

道路周辺の施設(電線、電柱等)の管理を行う上では、道路沿線の施設の道路面からの高さを知ることが重要である。
【0011】
しかしながら、特許文献1のモービルマッピングシステム用空間情報生成装置は、取得した地物の3次元点群データの高度は、平均海水面もしくは地球楕円体面を基準面とするものであるから、道路面から地物(例えば電線、柱等)までの高さは3次元点群データからは、経験を有していないと容易には分からない。
【0012】
このため、道路面と地物との高さを実際の高さよりも高く算出した場合は、工事車両が通過できない場合が発生し、結果として、交通の支障となったり、工事時に危険を招いたりする場合がある。
【0013】
従って、平均海水面もしくは地球楕円体面を基準面から求めた計測点の高度から道路面の高度を差し引いた値が必要となる。
【0014】
しかし、道路面には横断面方向にも縦断面方向にも起伏があり、どの位置の高さを基準にすべきかを決定することは難しい。
【0015】
また、道路面に勾配がある場合は、その勾配を考慮する必要があり、単に計測点の高度から道路面の高度を差し引いただけでは、必要な道路面からの高さにはならない。
【0016】
一方、特許文献1、2は、各計測点の地面からの高さまでは算出していない。
【0017】
たとえ当該区域内の測定点の高度から地面高を差し引いて各計測点の地面からの高さを算出したとしても、広い範囲内の1点のみの高度を基準としているため、基準とした1点から離れた位置では精度が低いものとなる。
【0018】
以上の課題を解決するために、本発明は、3次元点群データではなく、車両の3次元軌跡情報を利用することにより、各計測点の最近傍の走行点の高さを決定し、各計測点の道路面からの高さ(計測点高という)を算出して3次元点群データに付与する計測点高付与システム、計測点高付与方法および計測点高付与プログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の計測点高付与システムは、記憶手段と、3次元軌跡情報とモービルマッピングシステムによって生成される各計測点の計測時刻と計測点位置座標を含む計測点データが蓄積された3次元点群データを記憶手段に保存するデータ読込み部と、記憶手段に保存された3次元点群データから計測点データを順次読み出し、記憶手段に保存された3次元軌跡情報を計測点データに含まれる計測時刻によって検索し、当該計測時刻の直近の通過時刻を含む走行点データから、計測点の最近傍の走行点を決定する走行点決定部と、記憶手段に保存された3次元軌跡情報から、最近傍の走行点の高度と、最近傍の走行点の通過時刻から所定の時間前および時間後の走行点の少なくとも一方の高度とを読み出して比較し、高度が時間とともに上昇または下降している場合、道路面が傾斜していると判定して最近傍の走行点の車両位置座標と所定の時間前の走行点の車両位置座標から道路面の傾斜角を算出する坂道判定部と、道路面が水平の場合、計測点の高度と最近傍の走行点の高度の高度差分を求め、当該高度差分に計測車両の車高を加算して計測点の計測点高を算出して計測点データに付与し、計測点高付3次元点群データとして記憶手段に保存する水平面計測点高算出部と、道路面が傾斜している場合、計測点の高度と最近傍の走行点の高度の高度差分に、計測車両の車高を傾斜角の余弦で割った補正車高を加算して計測点の鉛直方向の計測点高を算出して計測点データに付与し、計測点高付3次元点群データとして記憶手段に保存する傾斜面計測点高算出部とを含むことを要旨とする。
【0020】
また、本発明の他の形態の計測点高付与システムは、3次元軌跡情報とモービルマッピングシステムまたは航空レーザ測量システムによって生成される各計測点の計測時刻と計測点位置座標を含む計測点データが蓄積された3次元点群データを記憶手段に保存するデータ読込み部と、記憶手段に保存された3次元点群データから計測点データを順次読み出し、計測点データに含まれる計測点位置座標から、計測点から所定の距離離れた検索範囲を設定し、記憶手段に保存された3次元軌跡情報の車両位置座標により検索範囲内の走行点を抽出して計測点との距離を算出し、計測点の最近傍の走行点を決定する走行点決定部とを含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、MMSによって計測された車両の3次元軌跡情報を利用することにより、各計測点の最近傍の走行点の高さを決定することで、3次元点群データから精度の高い各計測点の計測点高を算出することができる。
【0022】
また、本発明では、3次元点群データから道路面の状態を解析して道路面の高さを推定する処理が不要なため、コンピュータの処理負荷が小さく、大量のデータを含む3次元点群データであっても、容易にかつ短時間に各計測点の計測点高を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】計測点高付与システムの構成図
図2】レーザスキャナによる計測操作の模式図
図3】3次元軌跡情報の構成図
図4】道路上の走行点の位置を示した平面図
図5】水平な道路上の走行点の位置を示した側面図
図6】坂道上の走行点の位置を示した側面図
図7】3次元点群データの構成図
図8】計測点に対する最近傍の走行点決定方法の模式図
図9】水平面での計測点高算出方法の模式図
図10】傾斜面での計測点高算出方法の模式図
図11】計測点高付3次元点群データの構成図
図12】計測時刻による最近傍の走行点決定処理のフローチャート図
図13】レーザスキャナによる計測点と軌跡の位置関係を示す模式図
図14】距離による最近傍の走行点決定処理のフローチャート図
図15】水平な道路上の各走行点の高度を示した側面図
図16】起伏のある道路上の各走行点の高度を示した側面図
図17】上り坂の各走行点の高度を示した側面図
図18】下り坂の各走行点の高度を示した側面図
図19】第1の坂道判定処理のフローチャート図
図20】傾斜角の算出方法の模式図
図21】第2の坂道判定処理のフローチャート図
図22】水平面計測点高算出処理のフローチャート図
図23】鉛直方向の傾斜面計測点高算出処理のフローチャート図
図24】計測点高付3次元点群データを表示した端末画面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
(システム利用形態)
本発明の実施の形態にかかる計測点高付与システム20は、図1に例示すように、ジャイロセンサー11aや非接触車速計11bを含む慣性計測装置11、GNSSアンテナ12aを含むGNSS受信装置12、レーザスキャナ13aを含む測距装置13、全天周カメラ14aや高精細カメラ14bなどのデジタルカメラを含む画像撮影装置14が接続されたデータ演算装置15を計測車両17に搭載したMMS10によって取得して、これらの取得データを記憶媒体16に蓄積し、計測点高付与システム20がデータ読込み部22によって記憶手段21に取り込まれた3次元点群データ21aと3次元軌跡情報21bを利用するシステムである。
【0025】
3次元点群データ21aとしては、MMS10に代わって、航空レーザ測量システムによって計測された同じデータ構成の3次元点群データ21aを利用することもできる。
【0026】
まず、本発明の実施の形態にかかる計測点高付与システム20の説明の前に、ここではMMS10を例として、その概要と生成される3次元点群データ21aと3次元軌跡情報21bについて説明する。
【0027】
(各装置によるデータの計測)
計測車両17に搭載された慣性計測装置11は、ジャイロセンサー11aによって3軸の角度(または角速度)を計測し、非接触車速計11bによって加速度を計測する装置で、走行中の計測車両17の3次元の角速度と加速度のデータをデータ演算装置15に出力する。
【0028】
また、計測車両17に搭載されたGNSS受信装置12は、複数の測位衛星から発信された測位信号の搬送波を受信し、この搬送波の受信情報をデータ演算装置15に出力する。
【0029】
さらに、計測車両17に搭載された測距装置13は、図2に示したように、360度連続回転式(140度、270度であってもよい)のレーザスキャナ13a(ラインスキャナ)から所定の時間間隔で合計30万点/秒のレーザパルスを発射し、計測点Pn(P1、P2、P3、P4、P5、・・・)との間をレーザパルスが往復する時間を計測し、同時にレーザパルスを発射した方向を計測することで、レーザスキャナ13aの搭載位置を原点とした計測点Pnの3次元極座標を求める。
【0030】
そして、この3次元極座標とともに、レーザパルスに対する計測点Pnの反射強度Pn(f)と、レーザパルスの発射時刻Pn(t)を計測点Pn(P1、P2、P3、P4、P5、・・・)の計測点データとしてデータ演算装置15に出力する。
【0031】
同様に、計測車両17に搭載された画像撮影装置14は、一定の画像撮影時刻(画像撮影時刻<レーザパルスの発射時刻Pn(t))毎に撮影した走行中の計測車両周囲の映像を画像データとしてデータ演算装置15に出力する。
【0032】
(3次元軌跡情報21bの生成)
データ演算装置15に実装された位置姿勢算出部15aは、GNSS受信装置12から搬送波の受信情報が入力されると、慣性計測装置11から入力される計測車両17の3次元の角速度と加速度のデータを読み取り、これらの情報から計測車両17の位置(GNSSアンテナ12aが設置されている位置)の平面直角座標系等の3次元座標を算出する。
【0033】
位置姿勢算出部15aは、算出した3次元座標を走行点Rmの車両位置座標(x座標値Rm(x)、y座標値Rm(y)、高度Rm(z))として、通過時刻Rm(t)とともに走行点データを生成し、図3にデータ構成を示す3次元軌跡情報21bとして記憶媒体16に蓄積していく。
【0034】
図4から図6に、地理空間のどの位置のデータが走行点データとして蓄積されるのかを模式的に示す。
【0035】
図4は、道路面Dを計測車両17が矢印方向へ走行している状態を上空から見た平面図であり、計測車両17に搭載されたGNSSアンテナ12aが通過する位置が走行点Rm(R1、R2、R3、・・・)となり、それぞれの車両位置座標が通過時刻R1(t)、R2(t)、R3(t)、・・・とともに記録される。
【0036】
図5は、水平な道路面Dを計測車両17が矢印方向へ走行している場合に、車両位置座標の高度Rm(z)がどの高さになるかを示した側面図であり、3次元軌跡情報21bでは、平均海水面もしくは地球楕円体面を基準面Eとして、基準面Eから走行点Rmまでの鉛直方向の高さを車両位置座標の高度Rm(z)としている。
【0037】
図6は、傾斜のある道路面Dを計測車両17が矢印方向へ走行している場合に、車両位置座標の高度Rm(z)がどの高さになるかを示した側面図であり、3次元軌跡情報21bでは、前述したように基準面Eから走行点Rmまでの鉛直方向の高さを車両位置座標の高度Rm(z)としているため、走行点Rmから道路面Dに対して垂直方向に計測した高さとは異なることを示している。
【0038】
(3次元点群データ21aの生成)
データ演算装置15に実装された反射強度付点群データ作成部15bは、計測点データに含まれるレーザパルスの発射時刻Pn(t)をキーに、位置姿勢算出部15aによって記憶媒体16に蓄積された3次元軌跡情報21bから同時刻の車両位置座標を読み出す。
【0039】
次に、反射強度付点群データ作成部15bは、読み出した車両位置元座標を、あらかじめ測定してあるレーザスキャナ13aのGNSSアンテナ12aに対する相対位置により補正して、3次元極座標の原点であるレーザスキャナ13aの平面直角座標系等の3次元座標を決定する。
【0040】
つづいて、反射強度付点群データ作成部15bは、計測点データに含まれる計測点の3次元極座標を平面直角座標系等の3次元座標に変換し、計測点位置座標(x座標値Pn(x)、y座標値Pn(y)、高度Pn(z))を求め、計測点データに含まれる計測点の反射強度Pn(f)とともに反射強度付3次元点群データを作成する。
【0041】
データ演算装置15に実装された色情報付点群データ作成部15cは、画像データを読み出し、位置姿勢算出部15aによって記憶媒体16に蓄積された3次元軌跡情報21bから画像が撮影された時刻にあたる車両位置座標を読み出す。
【0042】
次に、色情報付点群データ作成部15cは、読み出した車両位置座標を、あらかじめ測定してあるカメラ位置のGNSSアンテナ12aに対する相対位置により補正して、カメラ位置の平面直角座標系等の3次元座標を決定する。
【0043】
色情報付点群データ作成部15cは、計測点データの3次元座標に対応する画像データ内の位置を、カメラ位置の平面直角座標系等の3次元座標をもとに特定し、その位置の色情報(RGB)を抽出して、その色情報を反射強度付3次元点群データの各計測点データに付加して、色情報付3次元点群データとして記憶媒体16に記録する。
【0044】
図7に、3次元点群データ21aの構成図として色情報付3次元点群データの例を示すが、本発明においては、色情報は必須ではないため、色情報を付与する前の反射強度付3次元点群データであっても良いし、他の要素が付与されていても構わない。よって、以下の説明においては、単に3次元点群データ21aという。
【0045】
例えば、図7では、計測点の計測時刻として、レーザの発射時刻Pn(t)を示しているが、レーザの反射を受信した受信時刻を含める場合もあり、以下の説明においては、計測時刻として発射時刻Pn(t)を使用しているが、受信時刻を使用してもよい。
【0046】
以上、MMSの構成と、各計測点Pnの発射時刻Pn(t)、計測点位置座標(Pn(x)、Pn(y)、高度Pn(z))、反射強度Pn(f)、および色情報Pn(RGB)を含む計測点データを蓄積した3次元点群データ21aと、各走行点Rmの通過時刻Rm(t)と車両位置座標(Rm(x)、Rm(y)、高度Rm(z))を含む走行点データを蓄積した3次元軌跡情報21bの生成方法の例を説明したが、図7に示した3次元点群データ21aと図3に示した3次元軌跡情報21bを出力できるレーザ測量システムであれば、特許文献1、特許文献2等に記載されているようなMMSの構成や各種データの生成方法であってもよい。
【0047】
なお、図7に示した3次元点群データ21aには計測点Pnの連続番号P1、P2、P3、・・・、図3に示した3次元軌跡情報21bには走行点Rmの連続番号R1、R2、R3、・・・を含めて示しているが、以下の説明において各点を明確にするために記載した番号であって、それぞれ必ずしも含める必要はない。
【0048】
つづいて、本発明の実施の形態にかかる計測点高付与システム20の説明を行う。
【0049】
(計測点高付与システムの構成)
図1に示すように、本発明の実施の形態にかかる計測点高付与システム20の構成は、MMS10によって計測された3次元点群データ21aと3次元軌跡情報21bを読み込んで記憶手段21に保存するデータ読込み部22と、3次元点群データ21aと3次元軌跡情報21bから各計測点Pnに対する最近傍の走行点Rmを決定する走行点決定部23と、最近傍の走行点Rmと、当該走行点Rmから所定の時間△t前の走行点Rm−1および所定の時間△t後の走行点Rm+1の各高度Rm−1(z)、Rm(z)、Rm+1(z)を比較して道路面Dが坂道か判定する坂道判定部24とを備えている。
【0050】
また、道路面Dが水平の場合、各計測点Pnの高度Pn(z)と最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)の高度差分△zに計測車両17の車高Hcarを加算して、各計測点Pnの道路面Dからの高さ(計測点高Pn(h))を算出し、計測点高付3次元点群データ21cとして記憶手段21に保存する水平面計測点高算出部25とを備えている。
【0051】
さらに、道路面Dが傾斜している場合、各計測点Pnの高度Pn(z)と最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)の差分に、計測車両17の車高Hcarを道路面Dの傾斜角θの余弦で割った補正車高Hcar’を加算して、各計測点Pnの計測点高Pn(h)を算出し、計測点高付3次元点群データ21cとして記憶手段21に保存する傾斜面計測点高算出部26と、計測点高付3次元点群データ21cを端末画面30に表示するデータ表示部27とを備えている。
【0052】
(各部の機能の説明)
データ読込み部22は、データ通信回線や外部記憶媒体を介して、MMS10によって生成された図3に示した3次元軌跡情報21bと図7に示した3次元点群データ21aを取込み、計測点高付与システム20に実装された記憶手段21に保存する。
【0053】
走行点決定部23は、記憶手段21に保存された3次元点群データ21aから計測点データを順次読み出し、記憶手段21に保存された3次元軌跡情報21bを計測点データに含まれる発射時刻Pn(t)によって検索し、当該発射時刻Pn(t)の直近の通過時刻Rm(t)を含む走行点データから、計測点Pnの最近傍の走行点Rmを決定する。
【0054】
または、走行点決定部23は、図8に示すように、記憶手段21に保存された3次元点群データ21aから計測点データを順次読み出し、計測点データに含まれる計測点位置座標(Pn(x)、Pn(y)、高度Pn(z))から、計測点Pnから所定の距離L離れた検索範囲を設定し、記憶手段21に保存された3次元軌跡情報21bの車両位置座標(Rm(x)、Rm(y)、高度Rm(z))により検索範囲内の走行点Rmを抽出して計測点Pnとの距離を算出し、計測点Pnの最近傍の走行点Rmを決定する。
【0055】
坂道判定部24は、記憶手段21に保存された3次元軌跡情報21bから最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)と、最近傍の走行点Rmの通過時刻Rm(t)から所定の時間△t前の走行点Rm−1の高度Rm−1(z)を読み出して比較し、同じ場合、道路面Dが水平であると判定する。
【0056】
また、坂道判定部24は、異なっている場合、道路面Dが傾斜していると判定して最近傍の走行点Rmの車両位置座標(Rm(x)、Rm(y)、高度Rm(z))と所定の時間△t前の走行点Rm−1の車両位置座標(Rm−1(x)、Rm−1(y)、高度Rm−1(z))から道路面Dの基準面Eとの勾配の傾斜角θを算出する。
【0057】
または、坂道判定部24は、記憶手段21に保存された3次元軌跡情報21bから最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)と、最近傍の走行点Rmの通過時刻Rm(t)から所定の時間△t前の走行点Rm−1の高度Rm−1(z)と、最近傍の走行点Rmの通過時刻Rm(t)から所定の時間△t後の走行点Rm+1の高度Rm+1(z)を読み出して比較する。
【0058】
そして、この比較結果がそれぞれの高度が時間とともに連続して上昇または下降していない場合、道路面Dが水平であると判定する。
【0059】
そして、連続して上昇または下降している場合、道路面Dが傾斜していると判定して、車両位置座標(Rm(x)、Rm(y)、高度Rm(z))と所定の時間△t前の走行点Rm−1の車両位置座標(Rm−1(x)、Rm−1(y)、高度Rm−1(z))から道路面Dの基準面Eとの勾配の傾斜角θを算出する。
【0060】
水平面計測点高算出部25は、道路面Dが水平、つまり道路面Dが基準面Eと平行である場合、図9に示すように、計測点Pnの高度Pn(Z)から走行点Rmの高度Rm(z)を差し引いた高度差分△zに計測車両17の車高Hcarを加算して計測点Pnの計測点高Pn(h)を算出する。
【0061】
さらに、水平面計測点高算出部25は、図11に示すように、算出した計測点Pnの計測点高Pn(h)を付与した計測点高付3次元点群データ21cを記憶手段21に保存する。
【0062】
傾斜面計測点高算出部26は、道路面Dが坂道である場合の計測点高Pn(h)の算出を行う処理であるが、傾斜面での計測点高Pn(h)には2種類あり、計測点Pnから道路面Dまでの鉛直方向の高さと、計測点Pnから道路面Dまでの垂直方向の高さである。
【0063】
歩道などの場合は、そこで作業する人や通行する人に対して道路周囲の施設等が障害とならないかをチェックするためには、鉛直方向の高さが適している。
【0064】
一方で、車道などの場合は、作業車両等の車両が走行するのに、車道に張り出した施設等が障害とならないかをチェックするためには、垂直方向の高さが適している。
【0065】
そこで、鉛直方向の高さが求められる場合、傾斜面計測点高算出部26は、図10(a)に示すように、坂道の傾斜角θを用いて、計測車両17の車高Hcarをcosθで割って鉛直方向の道路面Dまでの高さに補正した補正車高Hcar’を求め、計測点Pnの高度Pn(Z)から走行点Rmの高度Rm(z)を差し引いた高度差分△zに補正車高Hcar’を加算して計測点Pnの計測点高Pn(h)を算出する。
【0066】
垂直方向の高さが求められる場合、傾斜面計測点高算出部26は、図10(b)に示すように、坂道の傾斜角θを用いて、計測点Pnの高度Pn(Z)から走行点Rmの高度Rm(z)を差し引いた高度差分△zにcosθをかけて道路面Dに対して垂直方向の距離に補正した補正高度差分△z’を求め、計測車両17の車高Hcarを加算して計測点Pnの計測点高Pn(h)を算出する。
【0067】
前述の図10の(a)は傾斜面での鉛直方向の計測点高算出方法の模式図を示し、図10の(b)は傾斜面での垂直方向の計測点高算出方法の模式図を示している。
【0068】
その後、傾斜面計測点高算出部26は、図11に示すように、算出した計測点Pnの計測点高Pn(h)を付与した計測点高付3次元点群データ21cを記憶手段21に保存する。
【0069】
データ表示部27は、計測点高付3次元点群データ21cの各計測点PnのPn(x)、Pn(y)、計測点高Pn(h)の値にしたがって、端末画面30に各計測点Pnを点描して、道路周辺の状況を画像表示する。
【0070】
(各部の処理の説明)
次に、走行点決定部23、坂道判定部24、水平面計測点高算出部25、傾斜面計測点高算出部26、およびデータ表示部27の処理について具体的に説明する。
【0071】
なお、以下の説明において、走行点決定部23から坂道判定部24への引数として走行点Rmの番号mを用いているが、該当する走行点Rmへの3次元軌跡情報21bのインデックス値など、走行点Rmを指し示すデータであればいかなるものでも構わない。
【0072】
(走行点決定部23の計測時刻による決定処理)
通常、3次元点群データ21aと3次元軌跡情報21bは、同一の計測車両17により一緒に計測されるデータであることから、計測点Pnに最も近い走行点Rmは、計測点Pnについて計測した時刻、つまり計測点Pnに対するレーザパルスの発射時刻Pn(t)と同時またはその直近の時刻に計測された走行点Rmということができる。
【0073】
そこで、走行点決定部23は、計測点Pnの発射時刻Pn(t)に最も近い通過時刻Rm(t)の走行点Rmを検索して、計測点Pnの最近傍の走行点Rmを決定する処理を備える。
【0074】
まず、図12のフローチャートに示したように、走行点決定部23は、図7に例示した3次元点群データ21aに記録された計測点Pnの計測点データを読み出す(ステップS100)。
【0075】
次に、走行点決定部23は、計測点Pnの計測点データに設定された発射時刻Pn(t)を読み出す(ステップS101)。
【0076】
走行点決定部23は、読み出した発射時刻Pn(t)で、3次元軌跡情報21bの通過時刻Rm(t)のデータを検索し、発射時刻Pn(t)と同一か直近の時刻である走行点Rmを最近傍であると決定する(ステップS102)。
【0077】
走行点決定部23は、決定した最近傍の走行点Rmの番号mを坂道判定部24に引渡し、坂道判定部24を起動する(ステップS103)。
【0078】
走行点決定部23は、最後の計測点Pnかどうかを判定し、最後の計測点Pnの処理が完了した場合、処理を終了する(ステップS104)。
【0079】
走行点決定部23は、まだ未処理のデータが3次元点群データ21aに存在する場合は、計測点Pnの番号nに1を加算して最初の読み出し処理に戻る(ステップS105)。
【0080】
なお、計測点データにレーザパルスの反射を受信した受信時刻が設定されている場合、発射時刻Pn(t)に代わって、当該受信時刻を計測時刻として利用しても構わない。
【0081】
(走行点決定部23の距離による決定処理)
また、図13に示すように、幅員の広い道路では、計測車両17により同一の計測区域について往復の計測を行って3次元点群データ21aと3次元軌跡情報21bを記録する場合がある。
【0082】
図13に示した往路軌跡T1上を走行して計測した計測点P1、P2、P3、P4およびP5の場合、計測点P1、P2およびP3は往路軌跡T1上の走行点Rmが最近傍となるが、計測点P4とP5は復路軌跡T2上の走行点Rmが最近傍となる。
【0083】
しかし、復路軌跡T2上の走行点Rmの通過時刻Rm(t)は、計測点P4、P5の発射時刻P4(t)、P5(t)の直近ではない。
【0084】
このように、計測時間が異なる3次元点群データ21aと3次元軌跡情報21bを蓄積しておき、計測点高付与システム20にまとめて入力して処理する場合もある。
【0085】
さらに、MMS10によって計測される3次元点群データ21aと同様の3次元点群データ21aを航空レーザ測量システムによって計測することも可能であるため、MMS10によって記録した3次元軌跡情報21bと、同区域を航空レーザ測量システムによって計測した3次元点群データ21aを計測点高付与システム20に入力して処理する場合もある。
【0086】
そこで、走行点決定部23は、このような条件下でも最近傍の走行点Rmを決定することができるように、計測点Pnと走行点Rmとの距離によって、計測点Pnの最近傍の走行点Rmを決定する処理を備える。
【0087】
計測点Pnと走行点Rmの距離による決定処理の例として、水平面上での距離を利用する場合について図14にフローチャートを示した。
【0088】
まず、走行点決定部23は、図7に例示した3次元点群データ21aに記録された計測点Pnの計測点データを読み出す(ステップS200)。
【0089】
次に、走行点決定部23は、計測点Pnの計測点データに設定された計測点位置座標(Pn(x)、Pn(y)、高度Pn(z))を読み出す(ステップS201)。
【0090】
走行点決定部23は、図8に示したように、3次元軌跡情報21bから近傍の走行点Rmを抽出するために、所定の距離Lをあらかじめ設定しておき、計測点PnのPn(x)とPn(y)から、計測点Pnを中心とする検索範囲(Pn(x)±L,Pn(y)±L)を決定する(ステップS202)。
【0091】
走行点決定部23は、3次元軌跡情報21bを検索して、車両位置座標の(Rm(x),Rm(y))が検索範囲(Pn(x)±L,Pn(y)±L)内である走行点Rmを抽出する(ステップS203)。
【0092】
走行点決定部23は、計測点Pnの計測点位置座標の(Pn(x),Pn(y))と抽出された各走行点Rmの車両位置座標の(Rm(x),Rm(y))から、計測点Pnと抽出された各走行点Rmの水平面上での距離を算出する(ステップS204)。
【0093】
図8の例では、検索範囲(Pn(x)±L,Pn(y)±L)内で、走行点Rm−1、Rm、Rm+1の3点が3次元軌跡情報21bから抽出されていて、計測点Pnと走行点Rm−1、Rm、Rm+1の間の距離が、それぞれ計測点Pnの(Pn(x),Pn(y))と走行点Rm−1の(Rm−1(x),Rm−1(y))、走行点Rmの(Rm(x),Rm(y))、走行点Rm+1の(Rm+1(x),Rm+1(y))によって算出される。
【0094】
走行点決定部23は、算出した計測点Pnと各走行点Rmとの距離をそれぞれ比較して、最も短い距離になっている走行点Rmを最近傍と決定する(ステップS205)。
【0095】
図8の例では、例えば、計測点Pnから走行点Rm−1とRm+1までの距離よりも、走行点Rmまでが短い場合は、走行点Rmが最近傍と決定される。
【0096】
走行点決定部23は、決定した最近傍の走行点Rmの番号mを坂道判定部24に引渡し、坂道判定部24を起動する(ステップS206)。
【0097】
走行点決定部23は、最後の計測点Pnかどうかを判定し、最後の計測点Pnの処理が完了した場合、処理を終了する(ステップS207)。
【0098】
走行点決定部23は、まだ未処理のデータが3次元点群データに存在する場合は、計測点Pnの番号nに1を加算して最初の読み出し処理に戻る(ステップS208)。
【0099】
なお、水平面上での2点間の距離に代わって、空間中での計測点Pnと走行点Rmの3次元距離を利用する場合は、上述のステップS204の計算において、走行点決定部23は、計測点Pnの計測点位置座標の(Pn(x),Pn(y),高度Pn(z))と抽出された各走行点Rmの車両位置座標の(Rm(x),Rm(y),高度Rm(z))から、計測点Pnと抽出された各走行点Rmの3次元距離を算出することになる。
【0100】
つづいて、道路面Dから計測点Pnまでの計測点高Pn(h)の算出方法は、図9図10を参照しながら前述したように、道路面Dが水平の場合と坂道の場合では異なるため、計測点高Pn(h)を求める前に道路面Dが水平か否かを判定することが必要である。
【0101】
そこで、坂道判定部24は、3次元軌跡情報21bを用いて道路面Dが水平か否かを判定する処理を行う。
【0102】
図15から図18に、道路面Dが水平の状態、道路面Dに起伏のある状態、道路面Dが上り坂の状態、および道路面Dが下り坂の状態について横から見た模式図を示す。
【0103】
模式図には、走行点決定部23によって決定された最近傍の走行点Rmと、走行点Rmの通過時刻Rm(t)より所定の時間△t前の走行点Rm−1と、走行点Rmの通過時刻Rm(t)より所定の時間△t後の走行点Rm+1を示している。
【0104】
図15に示したように、道路面Dが水平の場合、走行点Rm−1、Rm、Rm+1のそれぞれの高度Rm−1(z)、Rm(z)、Rm+1(z)は同一となる。
【0105】
一方、図17図18に示したように、道路面Dが上り坂や下り坂の場合、走行点Rm−1、Rm、Rm+1のそれぞれの高度Rm−1(z)、Rm(z)、Rm+1(z)は時間とともに連続して上昇または下降する。
【0106】
(坂道判定部24の第1の坂道判定処理)
道路面Dが水平か否かを最も簡易に判定する第1の坂道判定処理として、最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)と所定の時間△t前の走行点Rm−1の高度Rm−1(z)、または最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)と所定の時間△t後の走行点Rm+1の高度Rm+1(z)を比較して、同じ場合は水平、それ以外は坂道であると判定する。
【0107】
なお、計測車両17の走行する道路面Dの起伏の状態やMMS10の計測精度によって計測データの誤差が生じ得るため、比較する際には、誤差分△gを考慮することが望ましい。
【0108】
第1の坂道判定処理の具体例として、図19にフローチャートを示した。
【0109】
まず、坂道判定部24は、走行点決定部23から引渡された最近傍の走行点Rmの番号mをキーに、3次元軌跡情報21bから走行点Rmの車両位置座標(Rm(x),Rm(y),高度Rm(z))を読み出す(ステップS300)。
【0110】
次に、坂道判定部24は、走行点Rmの通過時刻Rm(t)から所定の時間△t前の走行点Rm−1の車両位置座標(Rm−1(x),Rm−1(y),高度Rm−1(z))を3次元軌跡情報から読み出す(ステップS301)。
【0111】
このステップS301を、走行点Rmの通過時刻Rm(t)から所定の時間△t後の走行点Rm+1の車両位置座標(Rm+1(x),Rm+1(y),高度Rm+1(z))を3次元軌跡情報から読み出すように変更して、以下の比較するデータを高度Rm+1(z)に置き換えてもよい。
【0112】
坂道判定部24は、高度Rm−1(z)が高度Rm(z)±△gの範囲内かどうか比較する(ステップS302)。
【0113】
高度Rm−1(z)が高度Rm(z)±△gの範囲内である場合、坂道判定部24は道路面Dが水平であると判定し、最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)のみを水平面計測点高算出部25に引き渡し、水平面計測点高算出部25を起動する(ステップS303)。
【0114】
一方、高度Rm−1(z)が高度Rm(z)±△gの範囲外である場合、坂道判定部24は道路面Dが坂道であると判定し、走行点Rm−1と走行点Rmの車両位置座標から坂道の傾斜角θを算出する(ステップS304)。
【0115】
坂道判定部24は、最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)とともに傾斜角θを傾斜面計測点高算出部26に引き渡し、傾斜面計測点高算出部26を起動する(ステップS305)。
【0116】
ここで、傾斜角θの算出は、図20に示したように、走行点Rm−1の車両位置座標(Rm−1(x),Rm−1(y),Rm−1(z))と走行点Rmの車両位置座標(Rm(x),Rm(y),Rm(z))から、2点間のx軸方向の距離|Rm(x)−Rm−1(x)|、y軸方向の距離|Rm(y)−Rm−1(y)|、およびz軸方向の距離|Rm(z)−Rm−1(z)|を求め、三平方の定理と三角関数により行うことができる。
【0117】
(坂道判定部24の第2の坂道判定処理)
坂道判定部24は、道路面Dが水平か否かを第1の坂道判定処理より厳密に判定するために、第2の坂道判定処理を備える。
【0118】
具体的には、図16に示した道路面Dに起伏のある状態の場合のように、道路面Dが局所的に盛り上がっていたり、くぼんでいたりして、計測車両17の位置が上下することが考えられる。
【0119】
第1の坂道判定処理では、計測車両17の位置の上下が誤差分△g以内であれば、道路面Dを水平と判定できるが、そうでない場合は坂道と判定されることになる。
【0120】
図16のような場合、計測車両17の位置の上下がわずかであれば、傾斜角θが小さくなるため、第1の坂道判定処理で坂道と判定されて計測点高Pn(h)が算出されても、水平面として算出される計測点高Pn(h)との差は小さく、道路管理上で支障がでるほどの誤ったデータとはならない。
【0121】
しかし、図16のような場合、常に道路面Dとしては水平であると捉え、水平である時の簡単な計測点高算出の処理を適用できるようにしたほうが、処理するデータ量が多い分、処理の負荷を軽減することができる。
【0122】
そこで、坂道判定部24の第2の坂道判定処理では、走行点Rm−1、Rm、Rm+1の3点の高度Rm−1(z)、Rm(z)、Rm+1(z)を比較することで、道路面Dが水平か否かを判定する。
【0123】
高度Rm−1(z)、Rm(z)、Rm+1(z)の関係が、図17に示した上り坂のように連続して高くなる、すなわち、Rm−1(z)<Rm(z)−△gかつRm(z)+△g<Rm+1(z)であるか、図18に示した下り坂のように連続して低くなる、すなわち、Rm−1(z)>Rm(z)+△gかつRm(z)−△g>Rm+1(z)である時のみ、道路面Dが坂道であると判定する。
【0124】
第2の坂道判定処理の具体例として、図21にフローチャートを示す。
【0125】
まず、坂道判定部24は、走行点決定部23から引渡された最近傍の走行点Rmの番号mをキーに、3次元軌跡情報21bから走行点Rmの車両位置座標(Rm(x),Rm(y),高度Rm(z))を読み出す(ステップS400)。
【0126】
次に、坂道判定部24は、走行点Rmの通過時刻Rm(t)から所定の時間△t前の走行点Rm−1の車両位置座標(Rm−1(x),Rm−1(y),高度Rm−1(z))を3次元軌跡情報21bから読み出す(ステップS401)。
【0127】
さらに、坂道判定部24は、走行点Rmの通過時刻Rm(t)から所定の時間△t後の走行点Rm+1の車両位置座標(Rm+1(x),Rm+1(y),高度Rm+1(z))を3次元軌跡情報21bから読み出す(ステップS402)。
【0128】
坂道判定部24は、高度Rm−1(z)が高度Rm(z)±△gの範囲内かどうか比較する(ステップS403)。
【0129】
高度Rm−1(z)が高度Rm(z)±△gの範囲内である場合、走行点Rm+1の車両位置座標に関わらず道路面Dが水平であると判定できるので、坂道判定部24は最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)のみを水平面計測点高算出部25に引き渡し、水平面計測点高算出部25を起動する(ステップS404)。
【0130】
高度Rm−1(z)が高度Rm(z)±△gの範囲外である場合、坂道判定部24は、高度Rm−1(z)が高度Rm(z)−△gより低いか判定する(ステップS405)。
【0131】
高度Rm−1(z)が高度Rm(z)−△gより低い場合、道路が上り坂の可能性があるので、坂道判定部24は、さらに高度Rm+1(z)が高度Rm(z)+△gより高いか判定する(ステップS406)。
【0132】
ここで高いと判定できた場合、坂道判定部24は道路面Dが上り坂と判定し、走行点Rm−1と走行点Rmの車両位置座標から坂道の傾斜角θを算出する(ステップS407)。
【0133】
坂道判定部24は、最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)とともに傾斜角θを傾斜面計測点高算出部26に引き渡し、傾斜面計測点高算出部26を起動する(ステップS408)。
【0134】
もし高度Rm+1(z)が高度Rm(z)+△g以下に戻っている場合、坂道判定部24は、図16に示したような道路面Dの局所的な盛り上がりであると判断し、最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)のみを水平面計測点高算出部25に引き渡し、水平面計測点高算出部25を起動する(ステップS409)。
【0135】
一方、ステップS405で高度Rm−1(z)が高度Rm(z)−△gより低くないということは、高度Rm−1(z)が高度Rm(z)+△gより高いことになり、道路面Dが下り坂の可能性があるので、坂道判定部24は、さらに高度Rm+1(z)が高度Rm(z)−△gより低いか判定する(ステップS410)。
【0136】
ここで低いと判定できた場合、坂道判定部24は道路面Dが下り坂と判定し、走行点Rm−1と走行点Rmの車両位置座標から坂道の傾斜角θを算出する(ステップS411)。
【0137】
坂道判定部24は、最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)とともに傾斜角θを傾斜面計測点高算出部26に引き渡し、傾斜面計測点高算出部26を起動する(ステップS412)。
【0138】
もし高度Rm+1(z)が高度Rm(z)−△g以上に戻っている場合、坂道判定部24は、図16と逆の道路面Dの局所的なくぼみであると判断し、最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)のみを水平面計測点高算出部25に引き渡し、水平面計測点高算出部25を起動する(ステップS413)。
【0139】
(水平面計測点高算出部25の処理)
水平面計測点高算出部25は、道路面Dが水平である場合の計測点高Pn(h)の算出を行う処理であり、図9図22を参照しながら具体的な処理について説明する。
【0140】
水平面計測点高算出部25は、坂道判定部24から引き渡された最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)を読み出す(ステップS500)。
【0141】
また、水平面計測点高算出部25は、計測点Pnの高度Pn(z)を読み出す(ステップS501)。
【0142】
水平面計測点高算出部25は、計測点Pnの高度Pn(z)から最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)を減算し、2点間の高度差分△zを得る(ステップS502)。
【0143】
水平面計測点高算出部25は、あらかじめ計測してある計測車両17の地面からGNSSアンテナ12aまでの高さを車高Hcarとして、ステップS502で得た高度差分△zに加算して、計測点Pnの計測点高Pn(h)を算出する(ステップS503)。
【0144】
水平面計測点高算出部25は、算出した計測点Pnの計測点高Pn(h)を計測点データに付与して、計測点高付3次元点群データ21cとして記憶手段21に保存する(ステップS504)。
【0145】
(傾斜面計測点高算出部26の処理)
傾斜面計測点高算出部26は、道路面Dが坂道である場合の計測点高Pn(h)の算出を行う処理である。
【0146】
前述したように、傾斜面での計測点高Pn(h)には2種類あり、図10(a)に示した計測点Pnから道路面Dまでの鉛直方向の高さと、図10(b)に示した計測点Pnから道路面Dまでの垂直方向の高さである。
【0147】
まず図10(a)と図23を参照しながら、鉛直方向の高さを計測点高Pn(h)として求める具体的な処理について説明する。
【0148】
傾斜面計測点高算出部26は、坂道判定部24から引き渡された最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)を読み出す(ステップS600)。
【0149】
また、傾斜面計測点高算出部26は、計測点Pnの高度Pn(z)を読み出す(ステップS601)。
【0150】
傾斜面計測点高算出部26は、計測点Pnの高度Pn(z)から最近傍の走行点Rmの高度Rm(z)を減算し、2点間の高度差分△zを得る(ステップS602)。
【0151】
傾斜面計測点高算出部26は、坂道判定部24から引き渡された傾斜角θを読み出す(ステップS603)。
【0152】
図10(a)に示したように、あらかじめ計測してある計測車両17の地面からGNSSアンテナ12aまでの高さを車高Hcarとすると、車高Hcarは道路面Dに対して垂直方向の高さであり、鉛直線に対して坂道の傾斜角θと同じ傾斜がある。
【0153】
そこで、傾斜面計測点高算出部26は、車高Hcarをcosθで割り算し、補正車高Hcar’を算出する(ステップS604)。
【0154】
傾斜面計測点高算出部26は、補正車高Hcar’をステップS602で得た高度差分△zに加算して、計測点Pnの計測点高Pn(h)を算出する(ステップS605)。
【0155】
傾斜面計測点高算出部26は、算出した計測点Pnの計測点高Pn(h)を計測点データに付与して、計測点高付3次元点群データ21cとして記憶手段21に保存する(ステップS606)。
【0156】
次に、図10(b)に示したように、垂直方向の高さを計測点高Pn(h)として求める場合は、高度差分△zは鉛直方向の高さから求めているため、道路面Dへの垂直線に対して坂道の傾斜角θと同じ傾斜がある。
【0157】
したがって、ステップS604で車高Hcarをcosθで割り算し、補正車高Hcar’を算出する代わりに、高度差分△zにcosθを掛け算し、補正高度差分△z’を算出する。
【0158】
その後、ステップS605に代わって、補正高度差分△z’に車高Hcarを加算して、計測点Pnの計測点高Pn(h)を算出する。
【0159】
垂直方向の高さを求める場合のそれ以外の処理ステップは、鉛直方向の高さを求める処理と同じである。
【0160】
傾斜面計測点高算出部26で計測点高Pn(h)として鉛直方向の高さか垂直方向の高さのどちらを求めるかは、ユーザの選択によって決定するようにしてもよいし、鉛直方向の高さと垂直方向の高さの両方を算出して計測点データに付与して、計測点高付3次元点群データ21cとして記憶手段21に保存するようにしてもよい。
【0161】
(データ表示部27による表示処理)
データ表示部27は、ユーザからの命令に従って、記憶手段21に保存された計測点高付3次元点群データ21cから、ユーザから指定された区域に該当するデータを抽出して、図24に例示したように道路沿線の状況を端末画面30に画像表示する。
【0162】
図24ではグレースケールとなっているが、データ表示部27は、計測点高Pn(h)によってグラデーションの色彩表示を行い、計測点高Pn(h)の違いを強調することもできる。
【0163】
さらに、データ表示部27は、ユーザが端末画面30に表示された画像上にカーソルを移動させクリックすると、その位置の座標(x、y、z)と計測点高Pn(h)を画像上に表示することもできる。
【0164】
そのほかに、データ表示部27は、ユーザからの命令に従って、記憶手段21に保存された計測点高付3次元点群データ21cを一覧表形式で、端末画面30に表示することもできる。
【0165】
以上に示した本実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するためのシステムや処理手順を例示するものであって、構成部品の配置や処理の順番等を限定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。図面は模式的なものであり、システムの構成等は現実のものとは異なることに留意すべきである。
【符号の説明】
【0166】
10 モービルマッピングシステム(MMS)
11 慣性計測装置
11a ジャイロセンサー
11b 非接触車速計
12 GNSS受信装置
12a GNSSアンテナ
13 測距装置
13a レーザスキャナ
14 画像撮影装置
14a 全天周カメラ
14b 高精細カメラ
15 データ演算装置
15a 位置姿勢算出部
15b 反射強度付点群データ作成部
15c 色情報付点群データ作成部
16 記憶媒体
17 計測車両
20 計測点高付与システム
21 記憶手段
21a 3次元点群データ
21b 3次元軌跡情報
21c 計測点高付3次元点群データ
22 データ読込み部
23 走行点決定部
24 坂道判定部
25 水平面計測点高算出部
26 傾斜面計測点高算出部
27 データ表示部
30 端末画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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