【実施例】
【0025】
《減容装置》
[概要]
一実施例であるペットボトルP(空容器)の減容装置10を取り上げて本発明を具体的に説明する。減容装置10は、
図1に示すように、上方に設けた投入口30から誘導されてきたペットボトルP(空容器)を圧潰して減容し、下方に設けた排出口32から圧潰物Qとして放出する装置である。
【0026】
減容装置10は、
図1および
図2に示すように、駆動源であるモータMと、モータMにより駆動される減容機構部1と、モータMにより駆動される送り機構部2と、減容機構部1および送り機構部2を囲繞する金属製の筐体3とからなる。なお、
図1は、減容装置10の要部を示す正面断面図であり、
図2は減容機構部1の要部を示す入口側の平面図である。
【0027】
モータMは、一般的な家庭用電源(100Vの交流電源)で稼働する小型交流モータからなる。モータMの動力は、歯車列(図略)により適切な減速比に調整されて減容機構部1および送り機構部2に伝達される。
【0028】
減容機構部1は、モータMにより駆動される第一駆動軸S1と、第一駆動軸S1に従動し第一駆動軸S1と等速で逆回転する第二駆動源S2と、第一駆動軸S1上に嵌挿されて配置される複数の減容ロータR1と、第二駆動軸S2上に嵌挿されて配置される複数の減容ロータR2と、第一駆動軸S1に嵌挿されて各減容ロータR1の隣接間に配置されるカラーC1と、第二駆動軸S2に嵌挿されて各減容ロータR2の隣接間に配置されるカラーC2と、カラーC1の外周側から各減容ロータR1の隣接間に配置されるスクレーパーD1(離脱部材)と、カラーC2の外周側から減容ロータR2の隣接間に配置されるスクレーパーD2とからなる。なお、減容ロータR1と減容ロータR2は、基本的に同一部材であるので、特に必要な場合を除いて、両者を併せて単に減容ロータRという。同様に、特に必要な場合を除いて、第一駆動軸S1と第二駆動軸S2は両者を併せて単に駆動軸Sといい、カラーC1とカラーC2は両者を併せて単にカラーCといい、スクレーパーD1とスクレーパーD2は両者を併せて単にスクレーパーDという。
【0029】
送り機構部2は、モータMにより駆動されるセンターシャフト21と、センターシャフト21の外周側に120°ピッチで取り付けられた3枚の送り羽根221、222、223とからなる。この送り機構部2は、その両側面が筐体3により区画されたペットボトルPの誘導路31内に配設されている。送り機構部2は、投入口30に入れられたペットボトルPを誘導路31へ導き、減容機構部1の入口側へ押し込む。
【0030】
[減容機構部]
(1)減容ロータRを示す斜視図を
図3Aに示した。減容ロータRは、中央に設けられた断面が略正六角形状の嵌合穴Rh(多角穴)と、外周側に均等に設けられた10枚の傾斜歯Rtとを有する環状ディスクからなる。なお、嵌合穴Rhは、断面が略正六角形状をしている駆動軸Sの嵌合軸部(多角軸部)に嵌合する。
【0031】
傾斜歯Rtは、減容ロータRの半径方向(中心から延びる放射方向)に対して、その回転前方側へ傾斜して突出している。但し、傾斜歯Rtの最外周側面は、円板側面(または円筒側面)の一部(円弧状周側面)からなる圧縮面Rcとなっている。隣接する傾斜歯Rt間には、歯底Rmと歯底Rmから回転前方側へ延びる前方周壁Rfと歯底Rmから回転後方側へ延びる後方周壁Rbとからなる歯溝Rgが形成されている。
【0032】
歯底Rmは略平坦面または緩やかな円弧状面からなり、前方周壁Rfと歯底Rmは略鈍角状に連なり、後方周壁Rbと歯底Rmは鋭角状に連なっている。前方周壁Rfも後方周壁Rbも回転前方側へ傾斜して延びているため、歯底Rmと後方周壁Rbにより形成される領域は自ずとアンダーカット形状となる。そして後方周壁Rbの外周側先端には尖状の切込刃部Reが形成され、切込刃部Reには当接したペットボトルPに対して食い込むための角度(掬い角)αが与えられ、後方周壁Rbはいわゆる掬い面となる。ちなみに、切込刃部Reと円弧面状の圧縮面Rcとのなす角が逃げ角となる。
【0033】
さらに本実施例に係る切込刃部Reの刃線は、歯幅方向(軸方向)に対して平行ではなく、回転前方側へ所定角度θだけ傾斜した傾斜刃線となっており、その最先端は鋭く尖った尖端部Rpとなっている。切込刃部Reは、刃線の全体が同時にペットボトルPへ当接する訳ではなく、その尖端部RpからペットボトルPへ当接し始める。こうして切込刃部Reは、減容ロータRひいてはモータMに作用する負荷を抑制しつつ、尖端部RpからペットボトルPへ確実に食い込む。
【0034】
また駆動軸Sの嵌合軸部(図略)と減容ロータRの嵌合穴Rhは共に断面が同じ略正六角形状であるから、駆動軸Sと減容ロータRのいずれを60°回転させても、嵌合軸部と嵌合穴Rhは嵌合する。しかし、その駆動軸Sに配置される減容ロータRの外周側に形成される傾斜歯Rtは、ピッチが36°である。このため、同位相に揃った隣接する減容ロータRの一方だけを60°回転させると、
図3Bに示すように、隣接する減容ロータRの各傾斜歯Rtには位相差(本実施例の場合なら24°)を生じるようになる。
【0035】
これを利用すれば、各傾斜歯Rt(特に切込刃部Re)の位相が順に所定角ずつズレて螺旋状に連なるように、複数の減容ロータRを駆動軸S上に積層配置することができる。このように配置された各減容ロータRが回転してペットボトルPと接触すると、切込刃部Re(特に尖端部Rp)がペットボトルPに順に(螺旋状に)食い込むようになり、急激な負荷上昇を招くことなく、比較的低負荷でペットボトルPの減容を安定的に行うことが可能となる。
【0036】
なお、本実施例に係る減容ロータRは、厚さ5〜20mm程度の鋼板(炭素鋼板または合金鋼板)を精密プレスにより打ち抜いた素材に、熱処理(焼入れ・焼戻し)を施して得られたものである。適宜、プレス成形後に切削加工を行ったり、熱処理後に研削加工を行ったりしてもよい。
【0037】
(2)
図2に示すように、内周側断面が略正六角形状で外周側断面が円形状である円筒状のカラーCが駆動軸Sに嵌挿されている。このカラーCを介して、隣接する減容ロータRは駆動軸S上に所定ピッチで配設されている。このカラーCの長さは減容ロータRの厚さ(歯幅)とほぼ等しく設定されている。このため、
図2に示すように、駆動軸S1上に配設される各減容ロータR1と駆動軸S2上に配設される各減容ロータR2とは、それぞれが交互に、軸方向のごく僅かなクリアランスを残して近接して配置された状態となっている。
【0038】
一方、対向するカラーC1の外周面と減容ロータR2の外周面(圧縮面Rc)との間、または対向するカラーC2の外周面と減容ロータR1の外周面(圧縮面Rc)との間には、ペットボトルPの圧縮量に応じた所定の間隙が形成されている。このように配置された減容ロータRとカラーCにより、減容機構部1に導かれたペットボトルPは、圧縮力や剪断力等を受けて、所望の減容率まで圧潰された圧潰物Qにされる。
【0039】
(3)さらに圧潰物Qの排出側には、
図4Aに示すように、一端側が駆動軸S1、S2とは別の支柱111、112に枢支されると共に他端側がカラーC1、C2の外周面に摺接しつつ支持されたスクレーパーD1、D2が、軸方向のごく僅かなクリアランスを残して、各減容ロータR1、R2の隣接間にそれぞれ介装されている。従って、スクレーパーD1、D2(適宜、単にスクレーパーDという)も、減容ロータR1、R2とほぼ同じ板厚(カラーC1、C2とほぼ同じ長さ)の鋼板からなる。但し、スクレーパーD1、D2は、圧潰物Qの排出側において減容ロータRよりも外周側へ飛び出している。
【0040】
減容装置10によるペットボトルPの減容は、先ず、切込刃部Reの尖端部RpがペットボトルPに食い込んで切込みを入れる。これにより密閉状態のペットボトルPも解放状態となり、またペットボトルPの素材が部分的に分断されるため、低負荷でペットボトルPを圧縮できるようになる。次に、この状態のペットボトルPが、傾斜歯Rtの圧縮面RcとカラーCの間に巻き込まれて圧縮されたり、異軸に配設された隣接する減容ロータR1と減容ロータR2の間で圧縮または剪断されたりして、圧潰物Qとなる。この際、ペットボトルPに食い込んでいた切込刃部Reが、そのまま圧潰物Qにも食い込んだ状態となり得る。この場合、圧潰物Qは減容ロータRと連れ回る恐れがある。
【0041】
しかし、上述したように圧潰物Qの排出側において、スクレーパーDが隣接する減容ロータRよりも外周側へ飛び出して配設されている。このため
図4Bに示すように、圧潰物Qは、スクレーパーDの誘導面D1s、D2sに沿って減容ロータRから引き離され、減容ロータRに連れ回ることはない。こうして圧潰物Qは、排出口32からスムーズに排出される。
【0042】
[圧潰物]
本実施例の減容装置10によりペットボトルPを圧潰して得られた圧潰物Qの一例を
図5Aおよび
図5Bに示した。
図5Aは圧潰物Qの正面写真であり、
図5Bは圧潰物Qの側面写真である。本実施例に係る圧潰物Qには、傾斜歯Rtの切込刃部Reによる切込みQcが、ほぼその全周にわたって断続的に形成されている。この切込みQcにより、圧潰されたペットボトル素材は複雑に絡み合い、圧潰物Qは容易に復元しない。よって本実施例に係る減容装置10によれば、ペットボトルPを効率よく減容できると共にその減容状態を安定的に持できる。なお、本実施例ではペットボトルPを減容する場合を例示したが、その他の空容器を減容する場合でも同様である。