特許第6178706号(P6178706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6178706空容器減容装置、それに用いる減容ロータおよび減容ロータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178706
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】空容器減容装置、それに用いる減容ロータおよび減容ロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 9/32 20060101AFI20170731BHJP
【FI】
   B30B9/32 101B
   B30B9/32ZAB
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-238304(P2013-238304)
(22)【出願日】2013年11月18日
(65)【公開番号】特開2015-98038(P2015-98038A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】596164744
【氏名又は名称】高橋金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 清司
(72)【発明者】
【氏名】村田 猛
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−524575(JP,A)
【文献】 特表2009−534190(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第03806119(DE,A1)
【文献】 特開平09−313972(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0058942(US,A1)
【文献】 米国特許第07823814(US,B2)
【文献】 特開平10−328894(JP,A)
【文献】 特開2002−066794(JP,A)
【文献】 特開2005−161429(JP,A)
【文献】 特開2007−307825(JP,A)
【文献】 特開2009−066632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 9/32
B09B 3/00
B29B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源により回転駆動される駆動軸と、
該駆動軸に沿って配設され該駆動軸により回転駆動されることにより、樹脂または金属からなる塑性変形可能な空容器を圧潰し減容させた圧潰物とする略環盤状の減容ロータと、を備えた空容器減容装置であって、
前記駆動軸は、断面が非円状の嵌合断面からなる嵌合軸部を有し、
前記減容ロータは、中央に形成され該嵌合軸部に嵌通され得る嵌合穴と、外周側に形成され半径方向に対して回転前方側へ傾斜している複数の傾斜歯とを有し、
該傾斜歯は、回転前方側の先端に尖状に形成された切込刃部と該切込刃部から回転後方側へ延在する円弧状周側面からなる圧縮面とを有し、
該切込刃部は、歯幅方向に対して傾斜した傾斜刃線を有し、
同形状の前記減容ロータが前記嵌合軸部に沿って所定の間隙を設けて複数配置されていることを特徴とする空容器減容装置。
【請求項2】
前記嵌合軸部は、断面が略正N角形(N:整数)をした多角軸部であり、
前記嵌合穴は、断面が略正N角形をした多角穴である請求項1に記載の空容器減容装置。
【請求項3】
前記減容ロータ毎に設けられる前記傾斜歯の歯数は、前記Nの倍数以外である請求項2に記載の空容器減容装置。
【請求項4】
さらに、前記減容ロータと一体回転せずに該減容ロータの外周囲から突出しており、前記嵌合軸部上に複数配置された該減容ロータの隣接間に前記圧潰物の排出側から介装されて、該圧潰物を該減容ロータから離脱させ得る離脱部材を備える請求項1〜のいずれかに記載の空容器減容装置。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の空容器減容装置に用いられることを特徴とする減容ロータ。
【請求項6】
鋼板をプレス成形して打ち抜いた素材に熱処理を施して請求項5に記載の減容ロータを得る減容ロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット(PET)ボトルや空き缶などの空容器を、大幅に減容した圧潰物として回収、輸送等できるようにする空容器減容装置およびそれに用いる減容ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
環境意識の高揚や資源価格の高騰等により、飲み物などの空容器を回収して再利用するリサイクルが推進されている。もっとも、空容器そのものは、その重量(質量)に対して占める容積(体積)が大きいため、そのままでは回収や取扱いに不便であり、処理工場等への輸送費用も嵩むことになる。そこで空容器は、圧潰され、減容された状態(このような状態の空容器を本明細書では「圧潰物」という。)で回収、輸送等がされている。空容器を圧潰物とする装置(適宜、単に「減容装置」という。)は種々提案されており、例えば、下記の特許文献に関連した記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−328894号公報
【特許文献2】特開2002−66794号公報
【特許文献3】特開2005−161429号公報
【特許文献4】特表2006−524575号公報
【特許文献5】特開2007−307825号公報
【特許文献6】特開2009−66632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら特許文献で提案されている従来の減容装置は、空容器の引き込み、圧潰、切断などを行う毎に複数の専用ロータ(刃)を設けていたり、軸と専用ロータを一体形成したりしていた。このため、減容装置の複雑化や大型化を招き、またその生産コストのみならず維持管理コストも高くなっていた。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、従来よりも簡素化、小型化、生産コストの低減または維持管理コストの低減等を図れる空容器減容装置およびそれに用いる減容ロータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、駆動軸へ着脱が容易な一種類の減容ロータにより、空容器の引き込みおよび圧潰を併せて行え、ペットボトルのような樹脂製容器であっても圧潰後の復元を大幅に減少できる減容装置を着想した。この着想を具体化すると共に発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
【0007】
《空容器減容装置》
(1)本発明の空容器減容装置(適宜、単に「減容装置」という。)は、駆動源により回転駆動される駆動軸と、該駆動軸に沿って配設され該駆動軸により回転駆動されることにより、樹脂または金属からなる塑性変形可能な空容器を圧潰し減容させた圧潰物とする略環盤状の減容ロータと、を備えた空容器減容装置であって、前記駆動軸は、断面が非円状の嵌合断面からなる嵌合軸部を有し、前記減容ロータは、中央に形成され該嵌合軸部に嵌通され得る嵌合穴と、外周側に形成され半径方向に対して回転前方側へ傾斜している複数の傾斜歯とを有し、該傾斜歯は、回転前方側の先端に尖状に形成された切込刃部と該切込刃部から回転後方側へ延在する円弧状周側面からなる圧縮面とを有し、該切込刃部は、歯幅方向に対して傾斜した傾斜刃線を有し、同形状の前記減容ロータが前記嵌合軸部に沿って所定の間隙を設けて複数配置されていることを特徴とする。
【0008】
(2)本発明の減容装置の場合、減容ロータの嵌合穴と駆動軸の嵌合軸部の嵌合により、駆動軸に嵌挿された減容ロータは嵌合軸部に沿って軸方向に自在に移動できる。一方、断面が非円状の嵌合軸部に嵌合している減容ロータは、周方向の移動(つまり回転)は拘束されるため、減容ロータは駆動軸と一体的に回転する。
【0009】
このような減容ロータと駆動軸の嵌合関係により、例えば、一種類の減容ロータを用意するのみで、減容装置の仕様に応じて、駆動軸上に配設する減容ロータの数、位置(配置)、位相等を容易に調整することができる。また、減容装置の使用により損傷した減容ロータの交換作業等も容易にかつ安価に行える。従って、本発明によれば、減容装置の簡素化を図れると共に、減容装置の生産コストの低減や維持管理費用の低減も図ることが可能となる。加えて本発明の減容装置は、種々の仕様に対応できる自由度も大きい。
【0010】
なお、減容ロータを駆動軸上に複数配設する場合、隣接する減容ロータ間の間隔(間隙)調整は、所望長さのリングまたはカラー(筒状スペーサ)や後述する所望厚さの離脱部材を介装させることにより容易に行うことができる。
【0011】
(3)本発明に係る減容ロータは、半径方向に対して回転前方側へ傾斜した複数の傾斜歯が外周側に形成されており、その傾斜歯の回転前方側の先端には尖状に形成された切込刃部が形成されている。このため、投入口等から誘導されてきた空容器が回転する減容ロータに接触すると、その切込刃部が空容器に食い込み、空容器を減容機構へ巻き込むように誘導する。また、この際、切込刃部は空容器の胴部などに切込みを入れるため、空容器が閉栓(閉蓋)されていた場合(例えばキャップで密閉されたペットボトル等である場合)でも、空容器の密閉状態が解放される。このため本発明の減容装置は、空容器内に密閉された空気を圧縮すること無く、空容器だけを圧潰することが可能となる。つまり本発明の減容装置によれば、閉栓された密閉状態の空容器が投入されるような場合でも、大きな負荷を伴うことなく、その減容化が可能である。従って本発明によれば、例えば100Vの商用電源に対応したモーター等を駆動源として減容装置を稼働させることも可能となり、減容装置のさらなる簡素化、小型化または低価格化等が可能となる。
【0012】
(4)本発明の減容装置を用いると、空容器は、減容ロータの切込刃部によって切込みが入れられた後、その切込刃部から回転後方側へ延在する円弧面状の圧縮面によって圧縮されて、圧潰物となる。この際、その切込みにより空容器の素材自体が部分的に分断されて圧縮された素材自体の復元力が大幅に低減されると共に、切込みにより空容器の素材が部分的に絡み合って圧潰物の圧縮状態が安定的に維持される。従って本発明の減容装置によれば、空容器が金属製の場合は勿論のこと、樹脂製(特にペットボトル)の場合であっても、圧潰物に作用する復元力が大幅に抑制され、空容器の高減容率が安定的に維持される。
【0013】
(5)本発明の場合、減容ロータが配設される駆動軸は、少なくとも1本あれば足るが、一対以上あるとより好ましい。例えば、本発明の減容装置は、並列配置された第一駆動軸と第二駆動軸とを有し、各駆動軸に複数の(同種)減容ロータが所定間隔で配置されていると好適である。この際、第一駆動軸に配設された減容ロータ(第一減容ロータ)の隣接間に、第二駆動軸に配設された減容ロータ(第二減容ロータ)が介装されるように配置されると好ましい。これにより、隣接する第一減容ロータの圧縮面と第二減容ロータの圧縮面とが協働して空容器の大幅な減容が容易になされる。
【0014】
なお、複数の減容ロータが配置された駆動軸が1本の場合でも、減容ロータの圧縮面に対向する対向面を有する対向部材を配置することにより、空容器に切込みを入れつつ、その圧縮面と対向面の間で空容器を圧潰させることが可能である。この際、圧縮面と対向面のクリアランスを変更することにより、空容器の減容に必要な駆動力や空容器の減容率の調整も可能となる。また本発明では、減容ロータを一種類のみとすることができるが、外形状(特に傾斜歯の形状)やサイズ等が異なる二種以上の減容ロータを用いることもできる。
【0015】
《その他》
(1)本発明は、上述した減容装置としてのみならず、それに用いる減容ロータとしても把握できる。減容ロータは消耗部品であるが、本発明によれば、損傷した減容ロータだけ適宜交換できるため、減容装置を低コストで維持管理できる。
【0016】
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例である減容装置の要部を示す正面断面図である。
図2】減容機構部の要部を示す入口側の平面図である。
図3A】本実施例に係る減容ロータを示す斜視図である。
図3B】隣接する減容ロータの傾斜歯間で位相差が生じている様子を示す斜視図である。
図4A】圧潰物の出口側にスクレーパーを配設した様子を示す正面断面図である。
図4B】そのスクレーパーにより、圧潰物が減容ロータから引き離されて排出される様子を示す斜視図である。
図5A】本実施例の減容装置により得られた圧潰物の一例を示す正面写真である。
図5B】その圧潰物の側面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
【0019】
《減容ロータと駆動軸》
(1)減容ロータは、中央に嵌合穴を有し、外周側に切込刃部と円弧状の圧縮面が形成された複数の傾斜歯を有する限り、具体的な形態は問わない。もっとも、切込刃部は、駆動軸の軸方向に対して回転前方側へ傾斜している傾斜刃線を有すると好ましい。これにより、傾斜刃線の回転前方側の最先端に鋭角状の尖塔部が形成され、傾斜歯の切込刃部がその尖塔部から空容器へ鋭く食い込む(掬い込む若しくは噛み込む)ようになる。これにより、空容器が減容ロータ上を滑ったり踊ったりする状況を抑制でき、減容機構内へ空容器をスムーズに誘導できる。
【0020】
(2)減容ロータと駆動軸は、それぞれ嵌合穴と嵌合軸部で嵌合している。その嵌合部の断面形状は問わない。もっとも、キー溝のように駆動軸の外周面の一部のみに嵌合部が形成されているよりも、駆動軸の全外周面に沿って対称的または均等な嵌合部であると、嵌合穴と嵌合軸部の組付自由度が高くなり、またそのような嵌合部の形成も容易となって好ましい。特にその嵌合部が、隣接する減容ロータの配置角度(位相)を変更、調整できるものであると好ましい。この場合、例えば、切込刃部の刃線がらせん状を描くように複数の減容ロータを駆動軸上に配置することができ、減容ロータ上における空容器の滑りまたは踊りを一層抑制して、その減容処理を円滑に行うことが可能となる。
【0021】
このような嵌合部の断面形状は、スプライン溝形状等でもよいが、多角形状、特に正N角形状(N:整数)であると、製作が容易となり、減容装置または減容ロータの生産コストの低減を図れて好ましい。具体的にいうと、嵌合軸部を断面が略正N角形をした多角軸部とし、嵌合穴を断面が略正N角形をした多角穴とするとよい。この場合、減容ロータ毎に設けられる傾斜歯の歯数をNの倍数以外とすると、隣接する減容ロータ間で配置角度(位相)を容易に変更・調整できる。略正N角形は、例えば、3角形、4角形、5角形、6角形、8角形、12角形等であるが、成形性等の観点から6角形が特に好ましい。
【0022】
(3)本発明に係る減容ロータは、空容器に切込刃部を食い込ませつつ、圧縮面で空容器を圧潰する。この際、切込刃部が圧潰物に食い込んだままであると、圧潰物が減容ロータに連れ回って、巧く排出されない恐れがある。そこで本発明の減容装置は、減容ロータと一体回転せずに減容ロータの外周囲から突出しており、嵌合軸部上に複数配置された減容ロータの隣接間に圧潰物の排出側から介装されて、圧潰物を減容ロータから離脱させ得る離脱部材をさらに備えると好適である。この場合、減容ロータは離脱部材に対して相対回転することになるため、減容ロータの傾斜歯(特に切込刃部)に一時的に食い込んでいる圧潰物は、離脱部材に当接して減容ロータから引き離され、圧潰物が減容ロータに連れ回る事態が回避される。
【0023】
《空容器》
(1)本発明の減容装置により減容され得る空容器は、塑性変形可能なものであれば、その詳細は問わない。このような空容器の代表例は、スチールやアルミニウム(合金)等の金属からなる容器または熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート (PET)等の樹脂からなる容器である。特に本発明の減容装置は、圧縮しても復元し易いペットボトルなどの空容器の減容に好適である。本発明では、空容器の容量、形状またはキャップの有無などを問わない。
【0024】
(2)本発明の減容装置では、空容器が切り込みの入った圧潰物になるが、その細断または粉砕等まで行うものではない。このため本発明の減容装置の場合、圧潰物という塊状態で取扱ができ、回収予定外の異物が混入した場合でも、その選別や除去が容易である。勿論、現場または処理工場で別途、回収予定の圧潰物を細断等してもよいことはいうまでもない。
【実施例】
【0025】
《減容装置》
[概要]
一実施例であるペットボトルP(空容器)の減容装置10を取り上げて本発明を具体的に説明する。減容装置10は、図1に示すように、上方に設けた投入口30から誘導されてきたペットボトルP(空容器)を圧潰して減容し、下方に設けた排出口32から圧潰物Qとして放出する装置である。
【0026】
減容装置10は、図1および図2に示すように、駆動源であるモータMと、モータMにより駆動される減容機構部1と、モータMにより駆動される送り機構部2と、減容機構部1および送り機構部2を囲繞する金属製の筐体3とからなる。なお、図1は、減容装置10の要部を示す正面断面図であり、図2は減容機構部1の要部を示す入口側の平面図である。
【0027】
モータMは、一般的な家庭用電源(100Vの交流電源)で稼働する小型交流モータからなる。モータMの動力は、歯車列(図略)により適切な減速比に調整されて減容機構部1および送り機構部2に伝達される。
【0028】
減容機構部1は、モータMにより駆動される第一駆動軸S1と、第一駆動軸S1に従動し第一駆動軸S1と等速で逆回転する第二駆動源S2と、第一駆動軸S1上に嵌挿されて配置される複数の減容ロータR1と、第二駆動軸S2上に嵌挿されて配置される複数の減容ロータR2と、第一駆動軸S1に嵌挿されて各減容ロータR1の隣接間に配置されるカラーC1と、第二駆動軸S2に嵌挿されて各減容ロータR2の隣接間に配置されるカラーC2と、カラーC1の外周側から各減容ロータR1の隣接間に配置されるスクレーパーD1(離脱部材)と、カラーC2の外周側から減容ロータR2の隣接間に配置されるスクレーパーD2とからなる。なお、減容ロータR1と減容ロータR2は、基本的に同一部材であるので、特に必要な場合を除いて、両者を併せて単に減容ロータRという。同様に、特に必要な場合を除いて、第一駆動軸S1と第二駆動軸S2は両者を併せて単に駆動軸Sといい、カラーC1とカラーC2は両者を併せて単にカラーCといい、スクレーパーD1とスクレーパーD2は両者を併せて単にスクレーパーDという。
【0029】
送り機構部2は、モータMにより駆動されるセンターシャフト21と、センターシャフト21の外周側に120°ピッチで取り付けられた3枚の送り羽根221、222、223とからなる。この送り機構部2は、その両側面が筐体3により区画されたペットボトルPの誘導路31内に配設されている。送り機構部2は、投入口30に入れられたペットボトルPを誘導路31へ導き、減容機構部1の入口側へ押し込む。
【0030】
[減容機構部]
(1)減容ロータRを示す斜視図を図3Aに示した。減容ロータRは、中央に設けられた断面が略正六角形状の嵌合穴Rh(多角穴)と、外周側に均等に設けられた10枚の傾斜歯Rtとを有する環状ディスクからなる。なお、嵌合穴Rhは、断面が略正六角形状をしている駆動軸Sの嵌合軸部(多角軸部)に嵌合する。
【0031】
傾斜歯Rtは、減容ロータRの半径方向(中心から延びる放射方向)に対して、その回転前方側へ傾斜して突出している。但し、傾斜歯Rtの最外周側面は、円板側面(または円筒側面)の一部(円弧状周側面)からなる圧縮面Rcとなっている。隣接する傾斜歯Rt間には、歯底Rmと歯底Rmから回転前方側へ延びる前方周壁Rfと歯底Rmから回転後方側へ延びる後方周壁Rbとからなる歯溝Rgが形成されている。
【0032】
歯底Rmは略平坦面または緩やかな円弧状面からなり、前方周壁Rfと歯底Rmは略鈍角状に連なり、後方周壁Rbと歯底Rmは鋭角状に連なっている。前方周壁Rfも後方周壁Rbも回転前方側へ傾斜して延びているため、歯底Rmと後方周壁Rbにより形成される領域は自ずとアンダーカット形状となる。そして後方周壁Rbの外周側先端には尖状の切込刃部Reが形成され、切込刃部Reには当接したペットボトルPに対して食い込むための角度(掬い角)αが与えられ、後方周壁Rbはいわゆる掬い面となる。ちなみに、切込刃部Reと円弧面状の圧縮面Rcとのなす角が逃げ角となる。
【0033】
さらに本実施例に係る切込刃部Reの刃線は、歯幅方向(軸方向)に対して平行ではなく、回転前方側へ所定角度θだけ傾斜した傾斜刃線となっており、その最先端は鋭く尖った尖端部Rpとなっている。切込刃部Reは、刃線の全体が同時にペットボトルPへ当接する訳ではなく、その尖端部RpからペットボトルPへ当接し始める。こうして切込刃部Reは、減容ロータRひいてはモータMに作用する負荷を抑制しつつ、尖端部RpからペットボトルPへ確実に食い込む。
【0034】
また駆動軸Sの嵌合軸部(図略)と減容ロータRの嵌合穴Rhは共に断面が同じ略正六角形状であるから、駆動軸Sと減容ロータRのいずれを60°回転させても、嵌合軸部と嵌合穴Rhは嵌合する。しかし、その駆動軸Sに配置される減容ロータRの外周側に形成される傾斜歯Rtは、ピッチが36°である。このため、同位相に揃った隣接する減容ロータRの一方だけを60°回転させると、図3Bに示すように、隣接する減容ロータRの各傾斜歯Rtには位相差(本実施例の場合なら24°)を生じるようになる。
【0035】
これを利用すれば、各傾斜歯Rt(特に切込刃部Re)の位相が順に所定角ずつズレて螺旋状に連なるように、複数の減容ロータRを駆動軸S上に積層配置することができる。このように配置された各減容ロータRが回転してペットボトルPと接触すると、切込刃部Re(特に尖端部Rp)がペットボトルPに順に(螺旋状に)食い込むようになり、急激な負荷上昇を招くことなく、比較的低負荷でペットボトルPの減容を安定的に行うことが可能となる。
【0036】
なお、本実施例に係る減容ロータRは、厚さ5〜20mm程度の鋼板(炭素鋼板または合金鋼板)を精密プレスにより打ち抜いた素材に、熱処理(焼入れ・焼戻し)を施して得られたものである。適宜、プレス成形後に切削加工を行ったり、熱処理後に研削加工を行ったりしてもよい。
【0037】
(2)図2に示すように、内周側断面が略正六角形状で外周側断面が円形状である円筒状のカラーCが駆動軸Sに嵌挿されている。このカラーCを介して、隣接する減容ロータRは駆動軸S上に所定ピッチで配設されている。このカラーCの長さは減容ロータRの厚さ(歯幅)とほぼ等しく設定されている。このため、図2に示すように、駆動軸S1上に配設される各減容ロータR1と駆動軸S2上に配設される各減容ロータR2とは、それぞれが交互に、軸方向のごく僅かなクリアランスを残して近接して配置された状態となっている。
【0038】
一方、対向するカラーC1の外周面と減容ロータR2の外周面(圧縮面Rc)との間、または対向するカラーC2の外周面と減容ロータR1の外周面(圧縮面Rc)との間には、ペットボトルPの圧縮量に応じた所定の間隙が形成されている。このように配置された減容ロータRとカラーCにより、減容機構部1に導かれたペットボトルPは、圧縮力や剪断力等を受けて、所望の減容率まで圧潰された圧潰物Qにされる。
【0039】
(3)さらに圧潰物Qの排出側には、図4Aに示すように、一端側が駆動軸S1、S2とは別の支柱111、112に枢支されると共に他端側がカラーC1、C2の外周面に摺接しつつ支持されたスクレーパーD1、D2が、軸方向のごく僅かなクリアランスを残して、各減容ロータR1、R2の隣接間にそれぞれ介装されている。従って、スクレーパーD1、D2(適宜、単にスクレーパーDという)も、減容ロータR1、R2とほぼ同じ板厚(カラーC1、C2とほぼ同じ長さ)の鋼板からなる。但し、スクレーパーD1、D2は、圧潰物Qの排出側において減容ロータRよりも外周側へ飛び出している。
【0040】
減容装置10によるペットボトルPの減容は、先ず、切込刃部Reの尖端部RpがペットボトルPに食い込んで切込みを入れる。これにより密閉状態のペットボトルPも解放状態となり、またペットボトルPの素材が部分的に分断されるため、低負荷でペットボトルPを圧縮できるようになる。次に、この状態のペットボトルPが、傾斜歯Rtの圧縮面RcとカラーCの間に巻き込まれて圧縮されたり、異軸に配設された隣接する減容ロータR1と減容ロータR2の間で圧縮または剪断されたりして、圧潰物Qとなる。この際、ペットボトルPに食い込んでいた切込刃部Reが、そのまま圧潰物Qにも食い込んだ状態となり得る。この場合、圧潰物Qは減容ロータRと連れ回る恐れがある。
【0041】
しかし、上述したように圧潰物Qの排出側において、スクレーパーDが隣接する減容ロータRよりも外周側へ飛び出して配設されている。このため図4Bに示すように、圧潰物Qは、スクレーパーDの誘導面D1s、D2sに沿って減容ロータRから引き離され、減容ロータRに連れ回ることはない。こうして圧潰物Qは、排出口32からスムーズに排出される。
【0042】
[圧潰物]
本実施例の減容装置10によりペットボトルPを圧潰して得られた圧潰物Qの一例を図5Aおよび図5Bに示した。図5Aは圧潰物Qの正面写真であり、図5Bは圧潰物Qの側面写真である。本実施例に係る圧潰物Qには、傾斜歯Rtの切込刃部Reによる切込みQcが、ほぼその全周にわたって断続的に形成されている。この切込みQcにより、圧潰されたペットボトル素材は複雑に絡み合い、圧潰物Qは容易に復元しない。よって本実施例に係る減容装置10によれば、ペットボトルPを効率よく減容できると共にその減容状態を安定的に持できる。なお、本実施例ではペットボトルPを減容する場合を例示したが、その他の空容器を減容する場合でも同様である。
【符号の説明】
【0043】
1 減容機構部
2 送り機構部
10 減容装置
S 駆動軸
R 減容ロータ
D スクレーパー(離脱部材)
C カラー
P ペットボトル(空容器)
Q 圧潰物
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B