特許第6178707号(P6178707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178707
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】車両用操作ペダル
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/30 20080401AFI20170731BHJP
   G05G 1/50 20080401ALI20170731BHJP
【FI】
   G05G1/30 E
   G05G1/50
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-240870(P2013-240870)
(22)【出願日】2013年11月21日
(65)【公開番号】特開2015-102892(P2015-102892A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2015年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 光
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭39−024920(JP,Y1)
【文献】 特開2005−052878(JP,A)
【文献】 特開2002−224842(JP,A)
【文献】 特開平08−192276(JP,A)
【文献】 実開平07−037475(JP,U)
【文献】 特開平06−234089(JP,A)
【文献】 特開平06−047557(JP,A)
【文献】 特開2013−134513(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/164768(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/30
G05G 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面がU字状に凹み且つ長手方向に彎曲した長手状の彎曲壁と、前記凹みの開口縁から外側へ突き出すフランジ部と、前記フランジ部に設けられ、前記フランジ部の先端が溶接で固着されるときに挟圧される複数のクランプ部位とをそれぞれ有し、前記凹みが相対向して組合せられた一対のプレス成形体から成る中空ペダルアームを備える車両用操作ペダルにおいて、
前記フランジ部の複数のクランプ部位の一部又は全部に替わって前記フランジ部を挟圧するクランプ部位となる平坦なクランプ面が、前記彎曲壁の長手方向の一部に形成されており、
前記彎曲壁は、相対向する一対の側壁部と該一対の側壁部の一側縁を連結する底壁部から成り、
前記平坦なクランプ面は、前記底壁部の外表面から前記フランジ部側へオフセットした位置に形成されている
ことを特徴とする車両用操作ペダル。
【請求項2】
前記平坦なクランプ面は、前記底壁部の幅よりも小さな幅で該底壁部に形成され、
該底壁部には、該平坦なクランプ面にその幅方向において隣接する凸部が形成されていることを特徴とする請求項の車両用操作ペダル。
【請求項3】
前記平坦なクランプ面は、前記中空ペダルアームの操作部側に設けられていることを特徴とする請求項1または2の車両用操作ペダル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用操作ペダルを構成する中空ペダルアームに関し、とりわけ、中空ぺダルアームの構成に際して、互いに溶接される、一対のプレス成形体から突き出すフランジ部の突き出し幅を短縮化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のブレーキ、クラッチおよびアクセルペダルなどの車両用ペダルを構成するペダルアームを、軽量化などを目的として、中空構造とすることが提案されている。たとえば、特許文献1に記載の中空ペダルアームがそれである。
【0003】
特許文献1に記載の中空ペダルアームは、相互に対向する平板状且つ長手状の二つの側板部と、二つの側板部の一側縁を連結する平板部とからそれぞれ成る一対のプレス成形体にて構成される。一対のプレス成形体は、凹みの開口縁から外向きに突き出すフランジ部をそれぞれ有している。そして、一対のプレス成形体は、上記凹みが互いに対向する状態で、重ねあわされたそれぞれのフランジ部が溶接されることにより、相互に固着されて前記中空ペダルアームが構成される。
【0004】
図9は、このような従来の中空ペダルアームにおいて、溶接に際してフランジ部に設けられたクランプ部位が挟圧された一例を説明する左側面図であり、図10は、図9におけるX−X視断面を拡大して示す拡大断面図である。図9および図10において、従来の中空ペダルアーム110は、薄板中空構造を成しており、図9における紙面に垂直な方向から見て手前側と奥側に分割された一対のプレス成形体、すなわち運転者から操作ペダルを見たときの左右に対応する左側プレス成形体112Lおよび右側プレス成形体112Rから構成されている。一対のプレス成形体112L、112Rは、各々、断面がU字状に彎曲した長手状の彎曲壁114L、114Rと、彎曲壁114L、114Rの凹みの開口縁から外向きに突設された、前側フランジ部116L、116Rおよび後側フランジ部118L、118Rとから成る。そして、一対のプレス成形体112L、112Rの先端部には、溶接に際してクランパー120により挟圧される部位として、前側フランジ部116L、116Rに2箇所のクランプ部位122L、122Rおよび124L、124Rと、後側フランジ部118L、118Rに1箇所のクランプ部位126L、126Rとが設定されている。
【0005】
左側プレス成形体112Lおよび右側プレス成形体112Rは、凹みが互いに向かい合うよう前側フランジ部116L、116Rおよび後側フランジ部118L、118Rがそれぞれ重ねあわされ、クランプ部位122L、122R、124L、124Rおよびクランプ部位126L、126Rが、クランパー120により挟圧されて位置決めされる。そして、前側フランジ部116L、116Rおよび後側フランジ部118L、118Rの先端がそれぞれ溶接されて、溶接部W10が形成されることにより、一対のプレス成形体112L、112Rの先端部は相互に固着され、中空ペダルアーム110が構成される。
【0006】
図11は、図10における前側フランジ部の断面を拡大して示す拡大断面図である。プレス成形体112L、112Rの幅方向への前側フランジ部116L、116Rの突き出しの長さすなわち幅寸法dは、前側フランジ部116L、116Rの先端で一体に溶接される溶接部W10を含めた溶接に必要な長さと、クランパー120により挟圧されるクランプ部位122L、122Rの長さとを合わせたものである。なお、このことは、クランプ部位122L、122Rに限らず、他のクランプ部位124L、124Rおよび126L、126Rにおいても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−122610
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1あるいは図9に記載の従来の中空ペダルアームは、一対のプレス成形体の開口が対向するようにフランジ部が重ねあわされ、フランジ部の先端が溶接されることにより相互に固着されて成るものであるが、その溶接に際して、フランジ部が挟圧されるためのクランプ部位がフランジ部に設けられている。そのため、クランプ部位の長さ分だけ、フランジ部の幅寸法が長くなってしまうという問題があった。また、溶接装置がクランプ装置により近接した状態でフランジ部の先端の溶接を行うこととなることから、クランプ装置が障害となる場合があり溶接しにくいという問題があった。
【0009】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、一対のプレス成形体のフランジ部の先端が溶接され、プレス成形体が相互に固着されて構成される中空ペダルアームにおいて、フランジ部の幅寸法を短縮化するとともにフランジ部の先端を溶接しやすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、第1発明の要旨とするところは、断面がU字状に凹み且つ長手方向に彎曲した長手状の彎曲壁と、前記凹みの開口縁から外側へ突き出すフランジ部と、前記フランジ部に設けられ、前記フランジ部の先端が溶接で固着されるときに挟圧される複数のクランプ部位とをそれぞれ有し、前記凹みが相対向して組合せられた一対のプレス成形体から成る中空ペダルアームを備える車両用操作ペダルにおいて、前記フランジ部の複数のクランプ部位の一部又は全部に替わって前記フランジ部を挟圧するクランプ部位となる平坦なクランプ面が、前記彎曲壁の長手方向の一部に形成されており、前記彎曲壁は、相対向する一対の側壁部と該一対の側壁部の一側縁を連結する底壁部から成り、前記平坦なクランプ面は、前記底壁部の外表面から前記フランジ部側へオフセットした位置に形成されていることを特徴とする車両用操作ペダルにある。
【0013】
また、第発明の要旨とするところは、第発明の車両用操作ペダルにおいて、前記平坦なクランプ面は、前記底壁部の幅よりも小さな幅で該底壁部に形成され、該底壁部には、該平坦なクランプ面にその幅方向において隣接する凸部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、第発明の要旨とするところは、第1発明乃至第発明の車両用操作ペダルにおいて、前記平坦なクランプ面は、前記中空ペダルアームの操作部側に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明の車両用操作ペダルによれば、断面がU字状に凹み且つ長手方向に彎曲した長手状の彎曲壁と、前記凹みの開口縁から外側へ突き出すフランジ部と、前記フランジ部に設けられ、前記フランジ部の先端が溶接で固着されるときに挟圧される複数のクランプ部位とをそれぞれ有する一対のプレス成形体が、前記凹みが相対向して組み合わされ、フランジ部が相互に重なるようにフランジ部の先端が溶接され構成される中空ペダルアームの溶接に際し、フランジ部の複数のクランプ部位の一部又は全部に替わって、彎曲壁の長手方向の一部に形成された平坦なクランプ面がフランジ部を挟圧するクランプ部位とされるため、フランジ部のクランプ部位の一部又は全部はクランプされることが不要となる。これにより、クランプ部位の長さの分だけフランジ部の幅寸法を短縮化することができるとともに、溶接されるフランジ部の先端からクランプ装置をより離すことができることから、フランジ部を溶接しやすくすることができる。
また、前記彎曲壁は相対向する一対の側壁部と該一対の側壁部の一側縁を連結する底壁部から成り、平坦なクランプ面が底壁部に形成されているため、フランジ部のクランプ部位の一部に替わって、底壁部に形成された平坦なクランプ面がフランジ部を挟圧するクランプ部位とされることから、フランジ部のクランプ部位の一部はクランプされることが不要となる。これにより、クランプ部位の長さの分だけフランジ部の幅寸法を短縮化することができるとともに、溶接されるフランジ部の先端からクランプ装置をより離すことができることから、フランジ部を溶接しやすくすることができる。
また、前記平坦なクランプ面は底壁部の外表面からフランジ部側へオフセットした位置に形成されているため、フランジ部により近接した位置にクランプ部位が設けられることから、より安定的にフランジ部を挟圧することが可能となる。
【0018】
発明の車両用操作ペダル装置によれば、平坦なクランプ面は底壁部の幅よりも小さな幅で底壁部に形成され、底壁部には平坦なクランプ面の幅方向に隣接する凸部が形成されているため、実質的に平坦なクランプ面の幅方向に隣接して補強リブが形成されることになって一層剛性を確保できる。これにより、クランプ面がオフセットした位置に形成されることによる急激な剛性低下および応力集中を抑制でき、中空ペダルアームの強度を向上することができる。
【0019】
発明の車両用操作ペダル装置によれば、平坦なクランプ面は中空ペダルアームの操作部側に設けられている。このため、上記操作部へのペダルシートの接合に際して、ペダルシート位置の近傍における平坦なクランプ面で、中空ペダルアームが挟圧されることから、中空ペダルアームとペダルシートとの接合位置精度を向上することが可能となるとともに、中空ペダルアームがその回動中心から離れた位置で挟圧されることから、ペダルシートの溶接時に中空ペダルアームの左右の振れが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一例における中空ペダルアームを備えるブレーキペダルの左側面図である。
図2図1の中空ペダルアームのクランプ部位を説明する左側面図である。
図3図2における中空ペダルアームのIII−III視断面を示す拡大断面図である。
図4図3における後側フランジ部の断面を示す拡大断面図である。
図5図2の中空ペダルアームの操作部にペダルシートを接合する際に用いるクランプ部位を説明する左側面図である。
図6図5における中空ペダルアームのVI−VI視断面を示す拡大断面図である。
図7】本発明の他の実施例における中空ペダルアームを説明する左側面図である。
図8図7における中空ペダルアームのVIII−VIII視断面を示す拡大断面図である。
図9】従来の中空ペダルアームにおいて、フランジ部に設けられたクランプ部位が挟圧された一例を説明する左側面図である。
図10図9におけるX−X視断面を示す拡大断面図である。
図11図10における前側フランジ部の断面を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の車両用操作ペダルの一実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は本発明の一実施例の中空ペダルアーム10を備えるブレーキペダル12の左側面図である。車両用操作ペダルとして機能するブレーキペダル12は、中空構造を有し、S字状に長い長手状の中空ペダルアーム10と、中空ペダルアーム10の操作部にあたる先端部に固設され、踏込操作力を受ける平板状のペダルシート14とから構成される。中空ペダルアーム10は、紙面に垂直な方向から見たときの手前側と奥側に対応する、すなわち運転者からブレーキペダル12を見たときの左右に対応する左側半割体16Lおよび右側半割体16Rから構成されている。それら左側半割体16Lおよび右側半割体16Rは、鋼板をプレスにより打ち抜き加工および曲げ成形したものであるので、プレス成形体に相当する。左側半割体16Lおよび右側半割体16Rは、その先端部である操作部側において、図3に示すように、各々、相対向する一対の側壁部18L、20Lおよび18R、20Rと側壁部18L、20Lおよび18R、20Rのそれぞれの一側縁を連結する底壁部22L、22Rとから成り、断面がU字状に凹んで彎曲した長手状の彎曲壁24L、24Rと、凹みの開口縁から外側へ突き出すように設けられた、運転者からブレーキペダル12を見たときの前後に対応する板状の前側フランジ部26L、26Rおよび後側フランジ部28L、28Rとから構成されている。ここで、前側フランジ部26L、26Rは、彎曲壁24L、24Rの幅方向において、溶接の際にクランパー30によりクランプ可能なだけの突き出し寸法すなわち幅寸法を備えている。また、左側半割体16Lおよび右側半割体16Rのそれぞれは、一体に接合され中空ペダルアームが構成された際の先端部に相当する側の底壁部22L、22Rの外表面において、溶接時に上記先端部の前側フランジ部26L、26Rおよび後側フランジ部28L、28Rを相互に挟圧するための長方形状の平坦なクランプ面32L,32Rを備えている。そして、左側半割体16Lおよび右側半割体16Rのそれぞれは、相互に接合されて中空ペダルアーム10が構成された際に、ブレーキペダル12の回動中心となる図示しない支持軸が嵌められる貫通穴を有し、上記支持軸の軸心と中心線が略同心となるように、底壁部22L、22Rのそれぞれとアーク溶接などで一体的に固設される図示しない円筒状のボスが貫通される支持軸穴34L、34Rを長手方向の基端部の低壁部22L、22Rに備えている。また、左側半割体16Lおよび右側半割体16Rは、ペダルシート14への踏込操作力に応じて上記支持軸を中心として図1における右回りにブレーキペダル12が回動させられることに伴いブレーキ油圧を発生させる出力装置たとえばブレーキマスタシリンダのプッシュロッドがクレビスを介して連結される、前記支持軸と略平行な図示しない連結ピンが嵌挿される連結穴36L、36Rを長手方向の基端部側の底壁部22L、22Rに備えている。以下、左右を特に区別しない場合は、たとえば、半割体16と記載する。
【0023】
次に、一対の半割体16が相互に接合されることにより構成された中空ペダルアーム10について図2乃至図4を参照して詳しく説明する。図2は、図1の中空ペダルアーム10の先端部におけるクランプ部位を説明する左側面図であり、図3は、図2における中空ペダルアーム10の先端部のIII−III視断面を示す拡大断面図である。左側半割体16L、右側半割体16Rは、それらの凹みが対向するように相互に組み合わせられ、前側フランジ部26および後側フランジ部28が相互に重ね合わされる。その際、一対の半割体16は、そのそれぞれの支持軸穴34および連結穴36の中心線が略同心となるように位置が決められる。位置決めされた一対の半割体16は図2の斜線で示す3箇所のクランプ部位すなわち底壁部22に設けられた平坦なクランプ面32と、一対の半割体16の長手方向においてクランプ面32を挟む位置にある前側フランジ部26の所定のクランプ部位37L、37Rおよび38L、38Rとにおいて、挟圧治具の一部であるクランパー30がそれぞれ配置され、前側フランジ部26および後側フランジ部28が相互に密着するように図3の矢印方向へ挟圧される。ここで、前側フランジ部26においては、図3のように一対の半割体16の幅方向において、クランパー30は前側フランジ部26の溶接される先端を残すように側壁部20と上記先端との間に配置される。また、クランプ面32は平坦とされているため、クランパー30によりクランプ面32がクランプされることによって、一対の半割体16において相互にずれが生じないように位置決めするに十分な力でもって、前側フランジ部26および後側フランジ部28が相互に挟圧される。クランパー30により挟圧された前側フランジ部26および後側フランジ部28は、その先端が図示しない溶接装置により、アーク溶接などの方法で溶接され、溶接部W1が形成される。これにより、一対の半割体16の先端部は溶接により接合される。なお、たとえば、一対の半割体16の基端部の溶接が行われるに際しては、図示しない上記基端部近傍の底壁部22に設けられた平坦なクランプ面および前側フランジ部26の所定位置がクランプ部位とされてもよい。最終的に、一対の半割体16における前側フランジ部26および後側フランジ部28において溶接されることが必要なすべての箇所におけるそれぞれの先端が一体的に溶接され、中空ペダルアーム10が構成される。
【0024】
図4は、図3における後側フランジ部28の断面を示す拡大断面図である。半割体16の幅方向への後側フランジ部28の突き出しの長さすなわち幅寸法Dは、後側フランジ部28L、28Rの先端で一体に溶接される溶接部W1を含めた溶接に必要な長さのみである。
【0025】
次に、中空ペダルアーム10にペダルシート14を固設する点について、図5および図6を参照して詳細に説明する。図5は、図2の中空ペダルアーム10において、その操作部にペダルシート14を溶接する際のクランプ部位を説明する左側面図である。図6は、図5における中空ペダルアーム10のVI−VI断面を示す拡大断面図である。一対の半割体16の前側フランジ部26および後側フランジ部28の先端が一体的に溶接されて構成された中空ペダルアーム10は、先端部において、左側半割体16Lおよび右半割体16Rのそれぞれの先端縁が、図5における紙面に垂直な方向へ互いに離間してペダルシート14の裏側平面に沿って延びるそれぞれ板状且つ長方形状の一対のシート取付部39L、39Rを有している。中空ペダルアーム10の長手方向の先端部側の底壁部22に設けられたクランプ面32に配置されたクランパー30により、中空ペダルアーム10は図6の矢印方向、すなわち前記支持軸と略平行な方向へ挟圧され、中空ペダルアーム10の一対のシート取付部39とシート受け治具40に設置されたペダルシート14の裏側平面との相対位置が決められる。ここで、クランプ面32は中空ペダルアーム10の先端部側の底壁部22に設けられているため、ペダルシート14が固設されるシート取付部39に近い先端部で、また、前記支持軸が嵌められる支持軸穴を貫通し、一対の半割体16L、16Rを相互に固着させる前記ボスから離れた位置で、中空ペダルアーム10はクランプされる。この状態で、一対のシート取付部39の先端縁を含む3箇所のコの字形状の外端縁とペダルシート14の裏側平面の所定位置がアーク溶接などで溶接され、溶接部W2が形成され、ブレーキペダル12が構成される。
【0026】
上述のように、本実施例のブレーキペダル12によれば、相対向する一対の側壁部18、20と一対の側壁部18、20の一側縁を連結する底壁部22から成り、断面がU字状に彎曲し且つS字状に曲がる長手状の彎曲壁24を有する一対の半割体16が、相互の凹みが対向するように組み合わされ、その凹みの開口縁から外側へ突き出す前側フランジ部26および後側フランジ部28が相互に重なるように前側フランジ部26および後側フランジ部28の先端が一体的に溶接され構成される中空ペダルアーム10の溶接に際し、後側フランジ部28のクランプ部位に替わって、彎曲壁24の底壁部22の長手方向の一部に形成された平坦なクランプ面32が前側フランジ部26および後側フランジ部28を挟圧するクランプ部位とされるため、後側フランジ部28のクランプ部位はクランプされることが不要となる。これにより、クランプ部位の長さの分だけ後側フランジ部28の幅寸法を短縮化することができるとともに、溶接される後側フランジ部28の先端から挟圧治具をより離すことができることから、後側フランジ部28を溶接しやすくすることができ、たとえば、アーク溶接時の溶接品質を確保できる。
【0027】
また、本実施例のブレーキペダル12によれば、平坦なクランプ面32は中空ペダルアーム10の先端部側に設けられているため、中空ペダルアーム10にペダルシート14が接合されるに際し、ペダルシート14が固設されるペダルシート取付部39に近い位置でクランパー30により挟圧されることから、中空ペダルアーム10とペダルシート14の接合位置精度を向上することができる。また、中空ペダルアーム10が、その回動中心である前記支持軸が嵌められる支持軸穴34を貫通し、一対の半割体16を一体的に固着させる前記ボスから離れた位置で、前記支持軸と略平行な方向へ挟圧されることから、支持軸方向すなわち、図5における紙面に垂直な方向への中空ペダルアーム10の振れが抑えられるので、左右方向におけるペダルシート14の中空ペダルアーム10に対しての接合位置精度を向上することができる。
【実施例2】
【0028】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0029】
図7は、本発明の他の実施例における中空ペダルアーム42を説明する左側面図であり、図8は、図7における中空ペダルアーム42のVIII−VIII視断面を示す拡大断面図である。中空ペダルアーム42は、一対の半割体であって、運転者から中空ペダルアーム42を見たときの左右に対応する左側半割体44Lおよび右側半割体44Rから構成されている。一対の半割体44L、44Rは、各々、接合され中空ペダルアーム42が構成された際に、ペダルシート14が固設される先端部側の底壁部22において平坦なクランプ面46L、46Rを備えている。平坦なクランプ面46は、底壁部の一部が、底壁部の幅方向の両端縁から幅方向へ所定の距離だけ相互に接近した位置から、フランジ部側へ凹入されて形成される、前側フランジ部26と後側フランジ部28のそれぞれの板状平面と略平行な四角形状の平面である。すなわち、平坦なクランプ面46は、底壁部の幅よりも小さな幅で、底壁部の外表面からフランジ部側へ所定寸法だけオフセットした位置に形成された平面である。これにより、図8において明らかなように、先端部近傍の底壁部には、クランプ面46の幅方向に隣接する凸部48L、48Rがリブ状に形成されている。
【0030】
一対の半割体44は、凹みが対向するように前側フランジ部26および後側フランジ部28が重ねられて位置が合わせられる。そして、一対の半割体44は、図7における斜線部の3箇所、すなわち底壁部の外表面からオフセットした位置に形成されたクランプ面46と前側フランジ部26の所定のクランプ部位50L、50Rおよび52L、52Rの2箇所とがクランプ部位とされ、挟圧治具の一部であるクランパー30により、前側フランジ部26および後側フランジ部28が相互に挟圧される。ここで、クランプ面46は底壁部22の外表面からオフセットした位置にあるため、前側フランジ部26および後側フランジ部28の板状平面に対して底壁部22よりもより近い位置にクランプ部位が設定される。また、クランプ面46の幅方向に隣接した凸部48は、挟圧されるに際し、補強リブとして機能する。挟圧され位置が決められた一対の半割体44の前側フランジ部26および後側フランジ部28の先端が一体的に溶接され、中空ペダルアーム42が構成される。中空ペダルアーム42の先端部に図示しないペダルシートが固設され、ブレーキペダルが構成される。
【0031】
上述のように、本実施例におけるブレーキペダルによれば、前述の実施例と同様に、クランプ部位の長さの分だけ後側フランジ部28の幅寸法を短縮化することができるとともに、溶接される後側フランジ部28の先端から挟圧治具をより離すことができることから、後側フランジ部28を溶接しやすくすることができ、たとえば、アーク溶接時の溶接品質を確保できる。
【0032】
また、本実施例におけるブレーキペダルによれば、平坦なクランプ面46は底壁部22の外表面から前側フランジ部26および後側フランジ部28の側へオフセットした位置に形成されているため、前側フランジ部26および後側フランジ部28に対してより近接した位置にクランプ部位が設けられることから、より安定的に前側フランジ部26および後側フランジ部28を挟圧することが可能となる。
【0033】
また、本実施例におけるブレーキペダルによれば、平坦なクランプ面46は底壁部22の幅よりも小さな幅で底壁部22に形成され、底壁部22には平坦なクランプ面46の幅方向に隣接する凸部48が形成されているため、平坦なクランプ面46の幅方向に隣接して補強リブが形成されることから所定の剛性を確保できる。これにより、クランプ面46がオフセットした位置に形成されることによる急激な剛性低下および応力集中を抑制でき、中空ペダルアーム42の強度を向上することができる。
【0034】
また、本実施例におけるブレーキペダルによれば、平坦なクランプ面46は中空ペダルアーム42の先端部側に設けられているため、中空ペダルアーム42にペダルシートが固設されるに際し、ペダルシートが固設される部位に近い先端部、換言すれば、中空ペダルアーム42の回動中心である前記支持軸が嵌められる支持軸穴34を貫通し、一対の半割体44を一体的に固着させる前記ボスから離れた位置において、中空ペダルアーム42は前記支持軸に略平行な方向に挟圧されることから、中空ペダルアーム42とペダルシートの接合位置精度を向上することができる。また、平坦なクランプ面46の幅方向に隣接して凸部48が形成されているため、ペダルシート位置近傍に補強リブが形成されることによりアーム強度が向上することから、踏力による中空ペダルアーム42の変形を抑制できる。
【0035】
以上、本発明を表及び図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【0036】
たとえば、前述の実施例1および実施例2では、彎曲壁24の底壁部22の長手方向の一部に形成された平坦なクランプ面32、46が採用されることで後側フランジ部28のクランプ部位が省略されていたが、前側フランジ部26のクランプ部位37L、37Rおよび38L、38Rあるいは50L、50Rおよび52L、52Rの少なくとも一方が省略されてもよい。要するに、中空ペダルアーム10、42の先端部におけるフランジ部26、28の複数のクランプ部位の一部又は全部に替わって、平坦なクランプ面32、46が用いられても良い。
【0037】
また、前述の実施例1のブレーキペダル12および実施例2のブレーキペダルは、クランプ面32およびクランプ面46をそれぞれの先端部側に有する中空ペダルアーム10および中空ペダルアーム42から構成されるものであるが、所定の剛性が保たれる範囲でこれに限定されるものではなく、たとえば、中空ペダルアーム10および中空ペダルアーム42の長手方向における中央付近、あるいは基端部側に形成されるものであっても良い。
【0038】
また、前述の実施例1のブレーキペダル12および実施例2のブレーキペダルは、左側半割体16L、右側半割体16Rあるいは左側半割体44L、右側半割体44Rが接合されて成る中空ペダルアーム10、中空ペダルアーム42から構成されるものであるが、運転者からブレーキペダルを見たときの前後方向に対応する前側と後側に分割される前側半割体および後側半割体とが接合されて成る中空ペダルアームから構成されるものであっても良い。
【0039】
また、前述の実施例1の中空ペダルアーム10および実施例2の中空ペダルアーム42は、ブレーキペダルを構成するものであったが、これに限定されるものではなく、たとえば、クラッチペダルやアクセルペダルなどの他の操作ペダルを構成するものであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
10、42:中空ペダルアーム
12:ブレーキペダル(車両用操作ペダル)
16L、16R、44L、44R:半割体(プレス成形体)
18L、18R、20L、20R:側壁部
22L、22R:底壁部
24L、24R:彎曲壁
26L、26R:前側フランジ部
28L、28R:後側フランジ部
32L、32R、46L、46R:クランプ面(クランプ部位)
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図9
図10
図11