特許第6178708号(P6178708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178708
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】インクジェット画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20170731BHJP
【FI】
   B41J2/01 201
   B41J2/01 209
   B41J2/01 301
   B41J2/01 401
   B41J2/01 451
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-243469(P2013-243469)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-101004(P2015-101004A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】番匠 利裕
【審査官】 牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−190862(JP,A)
【文献】 特開2010−184380(JP,A)
【文献】 特開2010−188632(JP,A)
【文献】 特開2013−103339(JP,A)
【文献】 特開2012−061808(JP,A)
【文献】 特開2006−137040(JP,A)
【文献】 特開2011−218657(JP,A)
【文献】 特開2011−83992(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0007905(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の階調でインクを吐出可能なノズルを複数有するインクヘッドが、用紙の搬送方向に直交する方向に複数配列されたインクジェット画像形成装置において、
前記各インクヘッドの駆動電圧を制御することにより各インクヘッドのノズルから吐出されるインク量を変更して前記複数のインクヘッド間の濃度を調整する駆動電圧制御手段と、
前記複数のインクヘッドの各ノズルから吐出される液滴数をハーフトーン処理によって変更して濃度を調整するハーフトーン制御手段と、
前記複数のインクヘッドに対しそれぞれの各ノズルから異なる領域に同一密度でインクを吐出させて前記複数のインクヘッド毎に複数の濃度階層で所定の濃度調整パターンを印字させると共に、前記印字された濃度調整パターンを読み取って各濃度階層において前記複数のインクヘッド間の濃度差を小さくするための調整値を算出する濃度調整制御手段とを備え、
前記濃度調整制御手段は、
前記複数の濃度階層のうち最も濃度が薄い濃度階層における調整値を少なくとも含む基準値に基づいて、前記駆動電圧制御手段が、その最も濃度が薄い濃度階層における各インクヘッドの駆動電圧を制御して前記複数のインクヘッド間の濃度を調整するように制御し、
前記複数の濃度階層のうち最も濃度が薄い濃度階層以外の濃度階層において、前記ハーフトーン制御手段が、各濃度階層における調整値と前記駆動電圧制御手段による調整結果とに基づいて前記複数のインクヘッドの各ノズルから吐出される液滴数をハーフトーン処理によって変更して濃度を調整するように制御する
ことを特徴とするインクジェット画像形成装置。
【請求項2】
前記濃度調整制御手段は、
各濃度階層で前記複数のインクヘッドによってそれぞれ印字された各濃度調整パターンの濃度を読み取り、各濃度階層で読み取った各濃度調整パターンのうち最も濃度が薄い濃度階層における濃度の平均値を少なくとも含む基準値に基づいて、前記駆動電圧制御手段が、その最も濃度が薄い濃度階層における各インクヘッドの駆動電圧を制御して前記複数のインクヘッド間の濃度を調整するように制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白抜け部を発生させることなく、全ての濃度階層においてインクヘッド間の濃度差を小さくするように濃度調整を行うインクジェット画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ライン型のインクジェット画像形成装置は、用紙の搬送方向に直交する方向に複数のインクヘッドが配列されており、搬送される用紙に対して複数のインクヘッドからインクを吐出することにより印字する。このようなインクジェット画像形成装置では、インクヘッド毎に吐出の特性が異なり、この特性により隣接するインクヘッド間で印字した際の濃度が異なる場合がある。このように隣接するインクヘッド間で濃度差が発生すると目立ち易いため、隣接するインクヘッドの濃度差を小さくする必要がある。
【0003】
そこで、従来のインクジェット画像形成装置では、濃度差が見えやすいパターンや中間ドロップで印字し、読取装置でその印字物の濃度を読み取り、隣接するインクヘッド間で駆動電圧(吐出電圧)などを相対的に変更してインクの吐出量を増減させることによって、濃度調整を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。具体的には、図7に示すように、画素データ101に対して、駆動電圧を上げることにより、印字された画素103のドットゲインを大きくし画素列105のように画素間隔を短くして濃度を上げる。一方、画素データ101に対して、駆動電圧を下げることにより、印字された画素107のドットゲインを小さくし画素列109のように画素間隔を長くして濃度を下げる。
【0004】
また、駆動電圧の変更による濃度調整以外に、単位面積当たりのインクの液滴数を増減するハーフトーン処理などの画像処理によって濃度調整を行う方法がある(例えば、特許文献3参照。)。具体的には、図8に示すように、4×4のマトリックスの画素データ201に対して、ハーフトーン処理により濃度像となったとき、画素203a〜203dの液滴数(ドロップ数)が増加されて画素列203が印字され、ハーフトーン処理により濃度像となったとき、205a〜205dの液滴数が増加されて画素列205が印字される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−137040号公報
【特許文献2】特開2011−218657号公報
【特許文献3】特開2011−83992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1,2に記載されたインクジェット画像形成装置では、読み取るパターンが高濃度階層、中濃度階層、低濃度階層の3つの濃度階層を含む場合、吐出電圧(駆動電圧)を変更して濃度調整を行う際、全体的な濃度のバランスを考慮して中濃度階層に着目して濃度調整する場合が多い。そのため、高濃度階層及び低濃度階層では、濃度調整が不十分となっていた。
【0007】
また、上述の特許文献3に記載されたインクジェット画像形成装置では、ハーフトーン処理などの画像処理によって濃度調整を行うため、各インクヘッド毎に吐出するインクの液滴数を増減させることによって隣接するインクヘッド間の濃度調整を行うと白抜け部が発生する場合があった。具体的には、図9に示すように、最小液滴数レベルの薄い濃度の画素データ211を、さらに濃度を薄く調整する場合、何も印字されないいわゆる白抜け部215a〜215dが発生し、画質が悪化する問題がある。その一方、最大液滴数の液滴を吐出する部分では、濃度の低いヘッドに合わせる必要があるので、全体的に最大濃度が低くなってしまうという問題もある。
【0008】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、白抜け部を発生させることなく、全ての濃度階層においてインクヘッド間の濃度差を小さくするように濃度調整を行うインクジェット画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット画像形成装置の第1の特徴は、複数の階調でインクを吐出可能なノズルを複数有するインクヘッドが、用紙の搬送方向に直交する方向に複数配列されたインクジェット画像形成装置において、前記各インクヘッドの駆動電圧を制御することにより吐出されるインク量を変更して前記複数のインクヘッド間の濃度を調整する駆動電圧制御手段と、前記複数のインクヘッドの各ノズルから吐出される液滴数をハーフトーン処理によって変更して濃度を調整するハーフトーン制御手段と、前記複数のインクヘッドに対しそれぞれの各ノズルから異なる領域に同一密度でインクを吐出させて前記複数のインクヘッド毎に複数の濃度階層で所定の濃度調整パターンを印字させると共に、前記印字された濃度調整パターンを読み取って各濃度階層において前記複数のインクヘッド間の濃度差を小さくするための調整値を算出する濃度調整制御手段とを備え、前記濃度調整制御手段は、前記複数の濃度階層のうち少なくとも最も濃度が薄い濃度階層における調整値を少なくとも含む基準値に基づいて、前記駆動電圧制御手段が、その最も濃度が薄い濃度階層における各インクヘッドの駆動電圧を制御して前記複数のインクヘッド間の濃度を調整するように制御し、前記複数の濃度階層のうち最も濃度が薄い濃度階層以外の濃度階層において、前記ハーフトーン制御手段が、各濃度階層における調整値と前記駆動電圧制御手段による調整結果とに基づいて前記複数のインクヘッドの各ノズルから吐出される液滴数をハーフトーン処理によって変更して濃度を調整するように制御することにある。
【0010】
また、本発明に係るインクジェット画像形成装置の第2の特徴は、前記濃度調整制御手段は、各濃度階層で前記複数のインクヘッドによってそれぞれ印字された各濃度調整パターンの濃度を読み取り、各濃度階層で読み取った各濃度調整パターンのうち少なくとも最も濃度が薄い濃度階層における濃度の平均値を少なくとも含む基準値に基づいて、前記駆動電圧制御手段が、その最も濃度が薄い濃度階層における各インクヘッドの駆動電圧を制御して前記複数のインクヘッド間の濃度を調整するように制御することにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るインクジェット画像形成装置の第1の特徴によれば、複数の濃度階層のうち最も濃度が薄い濃度階層においては、その最も濃度が薄い濃度階層における調整値を少なくとも含む基準値に基づいて複数のインクヘッド間の濃度が小さくなるように、駆動電圧制御手段によって複数のインクヘッドの各ノズルの駆動電圧を制御して複数のインクヘッド間の濃度を調整し、複数の濃度階層のうち最も濃度が薄い濃度階層以外の濃度階層においては、各濃度階層における調整値と駆動電圧制御手段による調整結果とに基づいてハーフトーン制御手段により複数のインクヘッドの各ノズルから吐出される液滴数をハーフトーン処理によって変更して複数のインクヘッド間の濃度を調整する。そのため、最も濃度が薄い濃度階層ではハーフトーン処理が実行されないので、白抜け部を発生させずに濃度差を小さくすることができると共に、最も濃度が薄い濃度階層以外の領域では、駆動電圧制御手段による濃度調整の後に、ハーフトーン処理が実行されるので、濃度差を小さくすることができ、結果的に、全ての濃度階層において、インクヘッド間の濃度差を小さくするように濃度調整を行うことができる。
【0012】
また、本発明に係るインクジェット画像形成装置の第2の特徴によれば、複数のインクヘッドによってそれぞれ印字された各濃度調整パターンの濃度を読み取り、各濃度階層で読み取った各濃度調整パターンのうち最も濃度が薄い濃度階層における濃度の平均値を少なくとも含む基準値に基づいて、その最も濃度が薄い濃度階層における複数のインクヘッドの各ノズルの駆動電圧を制御して複数のインクヘッド間の濃度を調整するように制御するため、より正常吐出範囲内で濃度を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置における画像形成部を側方から示す説明図である。
図2】(a)は図1に示すヘッドホルダーを下方から示す説明図、(b)は同ヘッドホルダーの側断面を拡大して示す説明図である。
図3図1に示すインクヘッドのインク吐出動作を示す説明図である。
図4】本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置における画像形成制御部の構成をヘッドユニットと共に示す図である。
図5】本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置における濃度調整処理の手順を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置におけるヘッド間濃度調整方法による濃度調整前後の状態等を示しており、(a)は濃度調整前の状態、(b)は低濃度階層のみ駆動電圧処理により濃度調整を行った後の状態、(c)は中濃度階層および高濃度階層についてハーフトーン処理により濃度調整を行った後の状態を示す図である。
図7】駆動電圧によるヘッド間濃度調整の一例を示す図である。
図8】ハーフトーン処理によるヘッド間濃度調整の一例を示す図である。
図9】最小液滴数レベルの薄い濃度でハーフトーン処理によってさらに濃度を薄く調整した場合に白抜け部が発生した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る一実施例に係るインクジェット画像形成装置について説明する。なお、以下に説明するインクジェット画像形成装置は、本発明に係るインクジェット画像形成装置の一例であり、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更可能である。
【0015】
以下、本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置1において、画像形成が行われる画像形成経路CR1を側方から示す説明図であり、図2(a)は、画像形成経路CR1の上方に配置される図1のヘッドホルダー11を下方から示す説明図であり、図2(b)は、ヘッドホルダー11の側断面を拡大して示す説明図である。
【0017】
なお、本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置1は、画像形成部であるヘッドユニット10に備えられたインクヘッド12のノズルから、黒又はカラーインクを吐出してライン単位で印刷を行うインクジェット方式のラインカラープリンタであるものとする。また、本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置1は、一つのノズルから同一画素に連続して複数の液滴(ドロップ)を吐出させるマルチドロップ形式のインクヘッド12を有している。マルチドロップ形式のインクヘッド12を有するインクジェット画像形成装置1では、一つのノズルから同一画素に吐出したインク滴の液滴数(液滴量)に応じてその画素の濃度を濃度階層変化させることができる。
【0018】
図1に示すように、本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置1は、その搬送経路として画像形成経路CR1を含んでおり、この画像形成経路CR1では、プラテンベルト20によって、印刷条件により定められる速度で印刷用紙Pが搬送される。この画像形成経路CR1の上方には、ヘッドユニット10が、プラテンベルト20に対向配置され、ヘッドユニット10に備えられた各インクヘッド12のノズルから、プラテンベルト20上の印刷用紙P上に対し、ライン単位で各色のインクを吐出し、複数の画像を互いに重なり合うように形成する。
【0019】
詳述すると、画像形成経路CR1は、無端状の搬送ベルトであるプラテンベルト20、プラテンベルトの駆動機構である駆動ローラー21及び従動ローラー22等から構成される。この画像形成経路CR1の上方には、ヘッドホルダー11が設けられ、インクヘッド12が保持されている。
【0020】
プラテンベルト20は、駆動ローラー21により周回移動され、インクヘッド12と対向する範囲において摺動し、印刷用紙Pを搬送する。具体的に、このプラテンベルト20は、搬送方向に直交させて配置された一対の駆動ローラー21及び従動ローラー22間に掛け回されて、駆動ローラー21の駆動力により、搬送方向に周回される。
【0021】
ヘッドホルダー11は、ヘッドホルダー面を底面に有する函体であり、インクヘッド12を保持して固定するとともに、インクヘッド12からインクを吐出させるための他の機能部分をユニット化して収納する。このヘッドホルダー11の底面は、搬送経路に対して平行となるように対向配置されている。
【0022】
インクヘッド12は、図2(a)及び(b)に示すように、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の色別にそれぞれ複数個ずつ設けられている。CMYK各色のインクヘッド12は、搬送方向(副走査方向)に間隔をおいてそれぞれ配置されている。各色の複数のインクヘッド12は、搬送方向と直交する方向(主走査方向)に並べて配置されており、かつ、1つおきに搬送方向の位置をずらして配置されている。
【0023】
また、これらインクヘッド12は、図3に示すように、インクの吐出液滴数を変えることができる。この吐出するドロップの数(液滴数)によりドットの濃度が変化する。なお、本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置1は、ドロップのサイズを液滴量として調整する機能を備えている。インクヘッド12における液滴量の調整は、インクヘッド12の駆動電圧を調整することにより行うことができる。
【0024】
図4は、本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置1における画像形成制御部30の機能構成をヘッドユニット10やスキャナ40と共に示した機能構成図である。
【0025】
図4に示すように、本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置1は、ヘッドユニット10のCMYK各色のインクヘッド12(12a,12b,12c,12d)に対しそれぞれの色のインクを吐出させて画像を形成させる画像形成制御部30を備えており、画像形成制御部30は、濃度調整部31と、印刷ジョブ受信部32と、画像処理部33とを備えている。
【0026】
濃度調整部31は、濃度調整制御部31aと、濃度調整パターン記憶部31bと、駆動電圧制御部31cと、ハーフトーン制御部31dとを備えている。
【0027】
濃度調整パターン記憶部31bは、濃度を調整する際に濃度を確認するためテスト的に印字させる所定の濃度調整パターン(テストパターン)を記憶する。
【0028】
駆動電圧制御部31cは、各インクヘッド12の駆動電圧を制御することによって吐出されるインク量を変更して複数のインクヘッド12間の濃度を調整する。
【0029】
ハーフトーン制御部31dは、複数のインクヘッド12間や各インクヘッド12内における各ノズルから吐出される液滴数をハーフトーン処理によって変更して複数のインクヘッド12間や各インクヘッド12内における濃度を調整する。
【0030】
濃度調整制御部31aは、濃度調整部31全体の動作を制御する。具体的には、濃度調整制御部31aは、後述する複数の濃度階層のうち最も濃度が薄い濃度階層において、駆動電圧制御部31cが、その濃度階層における調整値に基づいて、複数のインクヘッド12間の濃度差を小さくするように、各インクヘッド12の駆動電圧を制御して複数のインクヘッド12間の濃度を調整するように制御する。
【0031】
また、濃度調整制御部31aは、複数の濃度階層のうち最も濃度が薄い濃度階層以外の濃度階層において、ハーフトーン制御部31dが、各濃度階層における調整値と駆動電圧制御部31cによる調整結果とに基づいて、複数のインクヘッド12の各ノズルから吐出される液滴数をハーフトーン処理によって変更して複数のインクヘッド12間や各インクヘッド12内における濃度を調整するように制御する。
【0032】
印刷ジョブ受信部32は、端末装置2が送信した印刷ジョブを受信して記憶して、画像処理部33へ出力する。
【0033】
画像処理部33は、印刷ジョブ受信部32からの印刷ジョブのRGB印刷画像をCMYK印刷画像に変換する色変換部33aと、CMYK印刷画像に変換された画像データに基づいてヘッドユニット10の各インクヘッド12に印刷を実行させる画像形成制御部33bとを備えている。
【0034】
次に、本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置1における濃度調整方法について、フローチャートを参照して説明する。
【0035】
図5は、本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置1における濃度調整処理の手順を示すフローチャートである。
【0036】
まず、このインクジェット画像形成装置1では、例えば、濃度調整モード等においてヘッドユニット10において各インクヘッド12の濃度調整を実行する場合、まず、濃度調整部31の濃度調整制御部31aが、例えば、濃度調整パターン記憶部31bに予め記憶しておいた所定の濃度調整パターン(テストパターン)を読み出し、所定の駆動電圧およびハーフトーン処理でヘッドユニット10において各インクヘッド12の全ノズルから複数濃度階層に対応したインクを、後述する図6(a)に示すように異なる領域に同一密度で印字ドットを形成する濃度調整パターンを印字させる(ステップS101)。なお、図2(a)のようにCMYK各色のインクヘッド12(12a,12b,12c,12d)が、印刷用紙Pの搬送方向に対し直交方向に6つずつ配列されている場合には、6つ毎にインクヘッド12それぞれによって複数濃度階層の濃度調整パターンを印字させる。本発明の一実施例では、後述する図6(a)〜(c)に示すように、低濃度階層401と、中濃度階層403と、高濃度階層405の3段階程度の複数濃度階層について、正方形の濃度調整パターンを印字する。従って、この3つの濃度階層401〜405のうちで低濃度階層401が最も濃度が薄い濃度階層となる。
【0037】
次に、濃度調整部31の濃度調整制御部31aは、スキャナ40に対し読み取り指示を出力して、まず、各インクヘッド12のノズルによって印字された各濃度階層401〜405の濃度調整パターンを形成した印字画像を読み取らせる(ステップS103)。なお、図2(a)のように各色のインクヘッド12が6つ並んでいる場合には、各インクヘッド12によってそれぞれ印字された各濃度階層401〜405の6つの濃度調整パターンの印字画像をCMYK各色毎に読み取らせる(ステップS103)。
【0038】
次に、濃度調整制御部31aは、スキャナ40が各インクヘッド12によってそれぞれ印字された各濃度階層の濃度調整パターンの読み取りデータから調整値を算出する(ステップS105)。ここで、調整値としては、CMYK各色毎の全インクヘッド12、すなわち図2(a)の場合であれば搬送方向に対し直交方向に並んだ6個のインクヘッド12により印字した濃度調整パターンの濃度の平均値等に合わせるように設定される駆動電圧補正値等が用いられる。
【0039】
次に、濃度調整制御部31aは、CMYK各色毎に算出した調整値に基づいて、CMYK各色毎の各インクヘッド12における低濃度階層の濃度がその濃度平均値等に近付くように駆動電圧制御部31cに各インクヘッド12の駆動電圧を調整させ、各インクヘッド12から吐出される複数の階調に対応したインク量を同時に調整する(ステップS107)。
【0040】
その際、駆動電圧制御部31cは、正常吐出範囲内で調整されるように調整値(駆動電圧補正値)の最大補正値・最小補正値を予め設定し、調整対象ヘッドの調整値(駆動電圧補正値)に最大補正値又は最小補正値を超えるものが含まれる場合は目標濃度を変更し正常吐出範囲内で調整する。
【0041】
その結果、最も濃度が薄い濃度階層である低濃度階層では、ハーフトーン処理による濃度調整を行うことなく、ノズルの駆動電圧による濃度調整を実行するので、図9に示すような白抜け部215a〜215dの発生を防止できる。
【0042】
次に、濃度調整制御部31aは、ステップS103で読取り、ステップS105で算出した中濃度階層および高濃度階層におけるCMYK各色毎の全インクヘッド12による印字画像の読み取りデータの濃度の平均値に合わせるように設定された調整値と駆動電圧制御部31cによる調整結果とに基づいて、CMYK各色毎の各インクヘッド12で中濃度階層403および高濃度階層405における印字濃度がその濃度平均値等に近付くようにハーフトーン制御部31dに対して各インクヘッド12によるハーフトーン処理を実行して中濃度階層403および高濃度階層405の濃度を調整する(ステップS109)。
【0043】
その際、ハーフトーン制御部31dは、中間濃度ドロップ及び高濃度ドロップの読み取り結果に応じた中間濃度補正係数、高濃度補正係数を算出し、各ヘッドの各ノズルから吐出される液滴数をハーフトーン処理によって補正して中間濃度階層および高濃度階層それぞれで濃度補正を行う。
【0044】
その結果、低濃度階層以外の中濃度階層403と高濃度階層405では、駆動電圧制御部31cにより濃度調整された上で、ハーフトーン処理による濃度調整が実行されるので、低濃度階層401以外の中濃度階層403および高濃度階層405においても、インクヘッド12間の濃度差を十分に小さくすることができる。
【0045】
以上で濃度調整が終了する。その後、このインクジェット画像形成装置1では、端末装置2から印刷ジョブが送信されてくると、印刷制御部30の印刷ジョブ受信部32がその印刷ジョブを受信して、画像処理部33の色変換部33aがRGB印刷画像をCMYK印刷画像に変換して画像形成制御部33bに送り、画像形成制御部33bはCMYK印刷画像に基づいてヘッドユニット10の各インクヘッド12に印刷を実行させる。
【0046】
図6は、本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置1におけるヘッド間濃度調整方法による濃度調整前後の状態等を模式的に示した図であり、(a)は濃度調整前の状態、(b)は低濃度階層のみ駆動電圧処理によって濃度調整を行った後の状態、(c)は中濃度階層および高濃度階層についてハーフトーン処理によって濃度調整を行った後の状態を示している。
【0047】
なお、図6(a)〜(c)では、説明のため、図2(a)とは異なりCMYKのいずれかの色で印刷用紙Pの搬送方向に対し直行方向に配列された4つのインクヘッド12がそれぞれ濃度調整パターンの正方形の印字画像である1濃度階層等の低濃度階層401、3濃度階層等の中濃度階層403、5濃度階層等の高濃度階層405の3濃度階層で印字した印字画像を示している。
【0048】
図6(a)に示すように、CMYKのいずれかの色で印刷用紙Pの搬送方向に対し直行方向に配列された4つのインクヘッド12(12a,12b,12c,12d)のそれぞれ濃度調整前の状態で濃度調整パターンの正方形の印字画像を、低濃度階層401、中濃度階層403、高濃度階層405の3濃度階層で印字した例を示している。この場合、図6(a)に示すように、4つのインクヘッド12(12a,12b,12c,12d)では、低濃度階層401、中濃度階層403、高濃度階層405のいずれの濃度階層においても濃度に差があることがわかる。
【0049】
図6(b)は、図5におけるステップS107の処理によって駆動電圧制御部31cがCMYKのいずれかの色で印刷用紙Pの搬送方向に対し直行方向に配列された4つのインクヘッド12(12a,12b,12c,12d)のそれぞれで低濃度階層401、中濃度階層403、高濃度階層405のうち最も濃度が薄い低濃度階層401を駆動電圧によって濃度調整した後の状態を示している。
【0050】
この場合、最も濃度が薄い低濃度階層401では、駆動電圧制御部31cの駆動電圧による濃度調整によって4つのインクヘッド12(12a,12b,12c,12d)のそれぞれで濃度が調整されてほぼ一致することになる。
【0051】
しかしながら、この状態では、最も濃度が薄い低濃度階層401の濃度に基づいて、駆動電圧によって濃度調整したものの、インクヘッド12毎に吐出の特性が異なるので、中濃度階層403、高濃度階層405については、CMYK各色の4つのインクヘッド12(12a,12b,12c,12d)に濃度差が残っている。
【0052】
そこで、濃度調整制御部31aは、ステップS103で読取り、ステップS105で算出した中濃度階層403および高濃度階層405におけるCMYK各色毎の全インクヘッド12(12a,12b,12c,12d)による印字画像の読み取りデータの濃度の平均値等の調整値と駆動電圧制御部31cによる調整結果とに基づいて、CMYK各色毎の各インクヘッド12(12a,12b,12c,12d)で中濃度階層403および高濃度階層405における印字濃度がその濃度平均値に近付くように、ハーフトーン制御部31dが、ステップS109におけるハーフトーン処理を実行して中濃度階層および高濃度階層の濃度を調整する。
【0053】
図6(c)は、図5におけるステップS109の処理によってハーフトーン制御部31dがCMYKのいずれかの色で印刷用紙Pの搬送方向に対し直行方向に配列された4つのインクヘッド12において中濃度階層403および高濃度階層405についてハーフトーン処理により濃度調整を行った後の状態を示している。
【0054】
図6(c)から明らかなように、駆動電圧による低濃度階層401に対する濃度調整により中濃度階層403および高濃度階層405において図6(b)に示すように残った濃度差は、中濃度階層403および高濃度階層405においてハーフトーン処理による濃度調整を行うことにより解消できる。
【0055】
以上のように、本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置1によれば、濃度調整制御部31aは複数のインクヘッド12に対し異なる領域に同一密度でインクを吐出させて複数の濃度階層で所定の濃度調整パターンを印字させると共に、印字された各濃度調整パターンを読み取って各濃度階層における調整値を算出し、最も濃度が薄い低濃度階層では、その濃度階層における調整値に基づいて駆動電圧制御部31cによって各インクヘッド12の駆動電圧を制御して複数のインクヘッド12間の濃度を調整し、最も濃度が薄い濃度階層以外の中濃度階層および高濃度階層では、各濃度階層における調整値に基づいてハーフトーン制御部31が複数のインクヘッド12の各ノズルから吐出される液滴数をハーフトーン処理によって変更して複数のインクヘッド12間や各インクヘッド12内における濃度を調整する。
【0056】
そのため、最も濃度が薄い低濃度階層ではハーフトーン処理による濃度調整ではなく、ノズルの駆動電圧による濃度調整を実行するので、図9に示すような白抜け部215a〜215dが発生することを防止でき、かつ低濃度階層以外の中濃度階層および高濃度階層では、各濃度階層における調整値に基づいてハーフトーン処理によりインクヘッド12間や各インクヘッド12内における濃度調整を実行するので、全濃度階層で濃度差が大きくならずに濃度調整を行うことができる。
【0057】
特に、本発明の一実施例に係るインクジェット画像形成装置1では、複数のインクヘッド12によってそれぞれ印字された各濃度調整パターンの濃度を読み取り、各濃度階層で読み取った各濃度調整パターンの濃度の平均値を各濃度階層における調整値とするため、正常吐出範囲内で濃度を調整できる。
【0058】
なお、上記実施例の説明では、濃度調整制御部31aは、複数の濃度階層のうち最も濃度が薄い濃度階層において、駆動電圧制御部31cが、その最も濃度が薄い濃度階層における濃度の平均値等の調整値に基づいて、各インクヘッド12間の濃度差が小さくなるように、各インクヘッド12の駆動電圧を制御して説明したが、本発明では、これに限らず、最も濃度が薄い濃度階層では、その最も濃度が薄い濃度階層における調整値を少なくとも含む基準値に基づいて、各インクヘッド12間でその基準値が小さくなるように各インクヘッド12の駆動電圧を制御しても良い。例えば、図6に示すように3段階の濃度階層401,403,405がある場合、最も濃度が薄い濃度階層401の調整値と最も濃度が濃い濃度階層405の調整値とを、例えば3:1の割合にした基準値に基づいて、駆動電圧制御部31cが各インクヘッド12間でその基準値が小さくなるように各インクヘッド12の駆動電圧を制御しても良い。このようにすると、最も濃度が薄い濃度階層401の調整値だけでなく、最も濃度が濃い濃度階層405の調整値も反映させて濃度の調整を実行することができる。
【符号の説明】
【0059】
10…ヘッドユニット
11…ヘッドホルダー
12…インクヘッド
30…画像形成制御部
31…濃度調整部
31a…濃度調整制御部
31b…濃度調整パターン記憶部
31c…駆動電圧制御部
31d…ハーフトーン制御部
32…印刷ジョブ受信部
33…画像処理部
33a…色変換部
33b…画像形成制御部
40…スキャナ
2…端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
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図9