(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178712
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】モールド金型及び樹脂モールド装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20170731BHJP
【FI】
H01L21/56 T
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-255261(P2013-255261)
(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公開番号】特開2015-112762(P2015-112762A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 高志
【審査官】
長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−121246(JP,A)
【文献】
特開2012−231080(JP,A)
【文献】
特開2009−292012(JP,A)
【文献】
特開2009−292076(JP,A)
【文献】
特開昭62−024632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が搭載されたワークを載置する一方の金型と、金型クランプ面にキャビティ凹部が形成された他方の金型とでワークがクランプされるモールド金型であって、
前記一方の金型には、キャビティ凹部に位置を合わせて前記ワークが載置されるワーク載置部と前記キャビティ凹部へ供給するモールド樹脂が装填されるポットが設けられ、
前記他方の金型には、前記キャビティ凹部からエアーを逃がすエアーベント溝に臨んでエアー流路を絞り込み可能なエアーベント部が設けられており、前記エアーベント部は前記エアーベント溝に臨む端面に、金型母材であるステンレス鋼材より熱伝導率が高い金属溶射被膜が前記エアーベント溝を横切って複数箇所で積層形成されており、前記一方の金型クランプ面は前記キャビティ凹部及びこれに連なる前記エアーベント溝を含んでリリースフィルムにより覆われていることを特徴とするモールド金型。
【請求項2】
前記エアーベント部に形成される前記金属溶射被膜層は、前記金型母材より熱伝導率が高いアルミニウム金属溶射被膜層若しくはアルミナ金属溶射被膜層である請求項1記載のモールド金型。
【請求項3】
前記エアーベント部は、可動エアーベント部である請求項1又は請求項2記載のモールド金型。
【請求項4】
前記ワーク載置部には、前記ワークにフリップチップ接続された半導体素子の直下に対応する部位に、前記金型母材より熱伝導率が低い金属被膜層が端面に形成された金属部材又は熱伝導率の低い金属部材若しくはセラミック部材が配置されている請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のモールド金型。
【請求項5】
前記他方の金型には、前記ポットに対向し前記キャビティ凹部に接続する樹脂路を形成する金型カルの端面に、前記金型母材より熱伝導率が低い金属被膜層又は熱伝導率の低い金属部材若しくはセラミック部材が用いられる請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のモールド金型。
【請求項6】
前記金属被膜層はジルコニア金属被膜層であり、前記セラミック部材は石英である請求項4又は請求項5記載のモールド金型。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のモールド金型を備えた樹脂モールド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の金型に載置されたワークをキャビティ凹部が形成された他方の金型とでクランプするモールド金型及びこれを備えた樹脂モールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂封止装置は、ワークを型開きしたモールド金型に搬入して位置決めした後クランプして樹脂封止される。ワークとしては、樹脂基板(有機基板)、セラミック基板、アルミ基板やリードフレーム等(以下、単に基板と略す)が用いられ、封止樹脂と共に搬入装置に保持されてモールド金型へ搬入される。基板はモールド金型によりクランプされ、溶融したモールド樹脂が基板を横切って(横断して)キャビティに圧送(注入)されて樹脂モールドされる。
【0003】
樹脂モールドに用いられる成形用樹脂は、ワークによって様々なものが用いられ、樹脂ごとに成形性が異なる。モールド樹脂の溶融時間が短い場合には、ポットからキャビティへ圧送りされる際に、早期に硬化が始まって、未充填が発生しやすく、モールド樹脂の粘度が低すぎればエアーベントから樹脂が漏れだしてしまう。
【0004】
例えば、モールド樹脂の硬化時間を促進するため、上型及び下型のベース材料として鋼材を使用し、キャビティ凹部の底部を熱伝導性の良い銅又はアルミニウム、又はこれらの合金を用いたモールド金型が提案されている。或いは、キャビティを構成する材料よりも熱伝導率が低い異種材からなるゲート部を設け、ゲート部からの樹脂の充填性を改善することなどが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3241553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に示すモールド金型及び樹脂モールド装置において、モールド樹脂として粘度が低い樹脂(LED用透明樹脂など)を用いた場合には、樹脂の流動性が高いため、金型ランナゲートからキャビティに充填された樹脂が、加熱硬化を待たずにエアーベントから漏れ出してしまう。エアーベントから樹脂が漏れ出すと、キャビティ内に所定の樹脂圧が作用しないため充填性が悪くなる。
【0007】
本発明は上記従来技術の課題を解決し、エアーベント部のエアーベント溝に臨む端面に金型母材より熱伝導率が高い金属皮膜層又は熱伝導率の高い部材を設けることでエアーベント溝からの樹脂漏れを低減させてキャビティ内に充填された樹脂に十分な硬化時間を確保することが可能なモールド金型及びこれを備えた微細な空間への樹脂充填性を改良し成形品質を向上させた樹脂モールド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
即ち、
半導体素子が搭載されたワークを載置する一方の金型と、金型クランプ面にキャビティ凹部が形成された他方の金型とでワークがクランプされるモールド金型であって、前記一方の金型には、キャビティ凹部に位置を合わせて前記ワークが載置されるワーク載置部と前記キャビティ凹部へ供給するモールド樹脂が装填されるポットが設けられ、前記他方の金型には、前記キャビティ凹部からエアーを逃がすエアーベント溝に臨んでエアー流路を絞り込み可能なエアーベント部が設けられており、前記エアーベント部は前記エアーベント溝に臨む端面に、金型母材
であるステンレス鋼材より熱伝導率が高い金属溶射被膜が前記エアーベント溝を横切って複数箇所で積層形成されており、前記一方の金型クランプ面は前記キャビティ凹部及びこれに連なる前記エアーベント溝を含んでリリースフィルムにより覆われていることを特徴とする。
【0009】
上記モールド金型を用いれば、エアーベント部はエアーベント溝に臨む端面に、金型母材
であるステンレス鋼材より熱伝導率が高い金属溶射被膜がエアーベント溝を横切って複数箇所で積層形成されているので、たとえ樹脂流動性が高い低粘度の樹脂が使用されたとしても、エアーベント溝から漏れ出すモールド樹脂の熱硬化を早めて漏れ出す樹脂量を低減することができる。従って、キャビティ内の樹脂充填性が向上する。
一方の金型クランプ面はエアーベント溝を含んでリリースフィルムにより覆われているのでエアーベント溝を覆うリリースフィルムの弾性によっても樹脂漏れを低減することができる。
例えば、エアーベント部に形成される金属
溶射被膜層は、金型母材
より熱伝導率が高いアルミニウム金属
溶射被膜層若しくはアルミナ金属
溶射被膜層が積層されていることが好ましい。
また、エアーベント部は、可動エアーベント部であっても固定エアーベント部であってもいずれでもよい。
【0010】
また、前記ワーク載置部には、前記ワークにフリップチップ接続された半導体素子の直下に対応する部位に、
前記金型母材より熱伝導率が低い金属
被膜層が端面に形成された金属部材又は熱伝導率の低い
金属部材若しくはセラミック部材が配置されていることが好ましい。
これにより、ワークの半導体素子が搭載された部位に熱伝導率が低い金属
被膜層又は熱伝導率の低い
金属部材若しくはセラミック部材が当接して金型からの熱伝導を抑えることで、特に半導体素子と基板との狭い隙間にアンダーフィル用モールド樹脂が硬化時間を遅らせて、確実に充填されるのを促進することができる。
この場合の金属
被膜層はジルコニア金属
被膜層であり、セラミック部材は石英であることが好ましい。
【0011】
また、前記他方の金型には、前記ポットに対向し前記キャビティ凹部に接続する樹脂路を形成する金型カルの端面に、
前記金型母材より熱伝導率が低い金属
被膜層又は熱伝導率の低い
金属部材若しくはセラミック部材が用いられることが好ましい。
これにより、キャビティより上流側の樹脂路における金型からの熱伝導を抑えることにより、モールド樹脂のキャビティへの充填性及び樹脂流動性を高めることができる。
この場合の金属
被膜層はジルコニア金属
被膜層であり、セラミック部材は石英であることが好ましい。
【0012】
また、樹脂モールド装置においては、上述したいずれかのモールド金型を備えたことを特徴とする。これによりエアーベントからの樹脂漏れを防ぎ、キャビティ内の微細な空間への樹脂充填性を改良し成形品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記モールド金型を用いれば、エアーベント部のエアーベント溝に臨む端面に金型母材
であるステンレス鋼材より熱伝導率が高い金属溶射被膜がエアーベント溝を横切って複数箇所で積層形成されているのでエアーベント溝からの樹脂漏れを低減させてキャビティ内に充填された樹脂に十分な硬化時間を確保することが可能となる。
また、樹脂モールド装置においては、エアーベントからの樹脂漏れを防ぎ、キャビティ内の微細な空間への樹脂充填性を改良し成形品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】樹脂モールド装置の型閉じ状態の断面説明図である。
【
図4】モールド金型に組み付けられた可動エアーベントピンを示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るモールド金型及び樹脂モールド装置の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。以下の実施形態では、基板を用い、上型側にキャビティ凹部が形成され下型側にポットが形成されるトランスファモールド用のモールド金型及び樹脂モールド装置について説明する。樹脂モールド装置の構成については主に
図4を参照し、モールド金型の構成については主に
図1を参照しながら説明するものとする。
【0016】
図4において、樹脂モールド装置は、可動型である下型1(一方の金型)と固定型である上型2(他方の金型)を備えたモールド金型3と、モールド金型3を開閉する型開閉機構(電動モータ、トグルリンク機構等;図示せず)と、下型2に備えたポット4に挿入されたプランジャ5(
図4参照)を作動させるトランスファ機構と、を備えている。以下、モールド金型3の構成を具体的に説明する。
【0017】
図1において、下型1には、キャビティ凹部に位置を合わせてワークが載置固定される下型インサートブロック6と、下型インサートブロック6に隣接して設けられキャビティ凹部へ供給するモールド樹脂が装填されるポット4(
図4参照)が設けられ、これらが
図4に示す下型チェイスブロック7に組み付けられている。
【0018】
図1に示すように、下型インサートブロック6の下型クランプ面には、基板8(ワーク)が載置されるワーク載置部6a(凹部)が設けられている。基板8には、半導体素子(例えばLED発光素子など)9がフリップチップ実装されている。ワーク載置部6aの深さは、
図4に示す下型チェイスブロック7に下型インサートブロック6が重ね合わせるライナーブロック10の厚みにより調整することができる。
【0019】
また、
図1において、下型インサートブロック6のワーク載置部6aには、基板8にフリップチップ接続された半導体素子9の直下に金型母材(ステンレス鋼等)より熱伝導率が低い金属
被膜層(例えばジルコニア金属
被膜層)が形成された金属部材(柱状鋼材)又は熱伝導性が低い金属部材(柱状鋼材)若しくはセラミック部材(例えば石英柱材)(以下これらを総称して「支持部材11」という)が当接して基板8が支持されていてもよい。これにより、基板8の半導体素子9が搭載された部位に対して支持部材11により下型1からの熱伝導を抑えることで、特に半導体素子9と基板8との狭い隙間にアンダーフィル用モールド樹脂が充填されるのを促進することができる。
【0020】
尚、金属部材に金属
被膜層を形成する場合には金属溶射により端面に一様に金属
被膜層を形成することができる。また下型インサートブロック6に支持部材11が挿入された隙間は、基板8をワーク載置部6aに吸着する吸引孔として好適に用いられる。
【0021】
図1に示すように、上型2は、上型クランプ面にキャビティ凹部2a,2b及びこれに連通する上型ランナゲート2cが彫り込まれた上型キャビティ駒12と、
図4に示すように上型キャビティ駒12を弾性部材13(例えばコイルばね)を介して吊り下げ支持する上型チェイスブロック14を備えている。上型チェイスブロック14のポット4と対向する部位には上型カル2dが上型ランナゲート2cと連通するように彫り込まれている。上型カル2dは、上型チェイスブロック14の上型クランプ面に直接形成されていてもよいが、
図1に示すように上型チェイスブロック14とは別に設けられた上型カルブロック15に形成されていてもよい。
【0022】
また、
図1に示すように、上型キャビティ駒12には、上型ランナゲート2cと連通する第一キャビティ凹部2aが形成されており、その底部に更に深さが深い半球状の第二キャビティ凹部2bが半導体素子9に対向して複数箇所に形成されている。第一キャビティ凹部2aは、複数の半導体素子9を一括して樹脂モールドし、第二キャビティ凹部2bは各半導体素子9(LED発光素子)から発光する光を拡散するレンズ部が形成される。第一キャビティ凹部2aには、複数箇所にフィルム吸引孔2eが形成されている。尚、通常の半導体素子を樹脂モールドする場合には第二キャビティ凹部2bは、省略されてもよい。
【0023】
また、
図2に示すように上型2のクランプ面には、第一キャビティ凹部2aからエアーを逃がすエアーベント溝2fが上型ランナゲート2cとは反対側に形成されている。このエアーベント溝2fに臨んでエアー流路を絞り込み可能な可動エアーベント駒16(可動エアーベント部)が設けられている。
【0024】
この可動エアーベント駒16はエアーベント溝2fに臨む端面に、金型母材(ステンレス鋼材等)より熱伝導率が高い金属被膜層17(アルミニウム金属
被膜層若しくはアルミナ金属
被膜層)が形成されている。
図3において、金属
被膜層17は、エアーベント溝2fを横切るように複数箇所に形成されている。金属
被膜層17は金型母材に予め凹部を形成しており、この凹部に対して溶融した金属(アルミニウム若しくはアルミナ)を溶射することにより形成される。このように可動エアーベント駒16はエアーベント溝2fに臨む端面に、金型母材より熱伝導率が高い金属被膜層17が形成されているので、たとえ樹脂流動性が高い低粘度のモールド樹脂が使用されたとしても、エアーベント溝2fにおける熱硬化を早めて漏れ出す樹脂量を低減することができる。従って、キャビティ内の樹脂充填性が向上する。
【0025】
また、
図1に示すように、上型2には上型チェイスブロック14とは別に上型カルブロック15が設けられていてもよい。上型カルブロック15は、金型母材(ステンレス鋼等)より熱伝導率が低い金属
被膜層(例えばジルコニア金属
被膜層)が形成された金属部材(柱状鋼材)又は熱伝導率が低い部材若しくはセラミック部材(例えば石英柱材)が好適に用いられる。これにより、キャビティより上流側の樹脂路における上型2からの熱伝導を抑えることにより、モールド樹脂の充填性を高めることができる。
尚、本実施例は上型カルブロック15ではあるが、キャビティ間を連通する場合にはスルーゲートに適用してもよい。
【0026】
また、上型2の上型クランプ面には、リリースフィルム18が吸着保持される。リリースフィルム18は、厚さ0.05~0.10mm程度で耐熱性を有するもので、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するもの、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEPフィルム、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリジン等を主成分とした単層又は複層膜が好適に用いられる。なお、ワーク端面精度が高い場合や、フィラー径の大きなモールド樹脂を用いる場合には、リリースフィルム18を省略することも可能である。
【0027】
リリースフィルム18は、上型カル2d、上型ランナゲート2c、上型キャビティ2a,2b、上型エアーベント溝2fを含む上型クランプ面を覆うように吸着保持される。リリースフィルム18は、上型キャビティ駒12と上型チェイスブロック14の隙間や上型キャビティ駒12と上型カル15の隙間を通じて吸着保持される。また、リリースフィルム18は、第一キャビティ凹部2a内ではフィルム吸引孔2eによって吸着保持されている。尚、第二キャビティ凹部2b内には、モールド樹脂が充填される際に樹脂圧によりリリースフィルム18が伸ばされて覆われるようになっている。
【0028】
ここで可動エアーベント駒16のモールド金型3への組み付け構成例について
図4を参照して説明する。可動エアーベント駒16は、上型キャビティ駒12にエアーベント溝2fが形成された上型クランプ面に進退動可能に組み付けられている。具体的にはエアーベント付勢部材19(例えばコイルばね)を介して常時上型クランプ面より突出する方向に付勢されている。よって、モールド金型3が型開きした状態では、可動エアーベント駒16は、エアーベント付勢部材19により付勢されて、先端部が上型クランプ面より突出している。
【0029】
下型1に基板8を載置しポット4に樹脂タブレット20を装填し、上型2にリリースフィルム18が吸着保持された状態で、下型1を上昇して型閉じ動作が行われる。このとき、先端部が上型クランプ面より突出している可動エアーベント駒16は、リリースフィルム18を介して基板8に当接すると、更なる型閉じ動作によりエアーベント付勢部材19の付勢に抗して上型キャビティ駒12内に押し戻される。尚、このとき、基板8の厚みの差分は弾性部材13を押し戻す(圧縮する)ことで調整される。
【0030】
モールド金型3の型閉じ動作が終了すると、トランスファ機構を作動させてプランジャ5が上昇し、ポット4内で溶融したモールド樹脂を
図1の矢印方向に上型カル2d、上型ランナゲート2cを通じて上型キャビティ凹部2a,2bに充填する。このとき、キャビティ内に閉じ込められたエアーはエアーベント溝2fより排出される。このとき可動エアーベント駒16のエアーベント溝2fに臨む端面に、金型母材より熱伝導率が高い金属被膜層17が形成されているので、たとえ樹脂流動性が高い低粘度の樹脂(例えば透明シリコーン樹脂)が使用されたとしても、エアーベント溝2fから漏れ出す樹脂量を低減することができる。従って、キャビティ内の樹脂充填性が向上する。
また、キャビティ内において、基板8の半導体素子9が搭載された部位に対して支持部材11により下型1からの熱伝導を抑えることで、特に半導体素子9と基板8との狭い隙間にアンダーフィル用モールド樹脂が充填されるのを促進することができる。また、樹脂モールド装置においては、エアーベント溝2fからの樹脂漏れを低減させ、キャビティ内の微細な空間への樹脂充填性を改良し成形品質を向上させることができる。
【0031】
上記モールド金型においては、上型2を固定型、下型1を可動型としたが、上型2が可動型、下型1が固定型であってもよいし、双方を可動型としてもよい。また、ポット4が上型2に形成され、キャビティ凹部が下型1に形成されていてもよい。
また、ワークWはLED発光素子が搭載された基板に限らず、半導体チップが基板上にフリップチップ接続、ワイヤボンディング接続されたものなど他の成形品に対しても用いることができる。またモールド樹脂も透明シリコーン樹脂に限らす受発光素子用のリフレクタ成形に用いられるシリカ、アルミナ及び酸化チタンなどのフィラー含有のシリコーン樹脂であってもよいし、シリカなどのフィラー含有のエポキシ樹脂であってもよい。
また、本実施例ではワーク載置部は凹部となっているが、ポットと基板の上下の位置関係に拠っては、載置部は必ずしも凹部である必要は無く、平坦部であっても良い。
さらに本実施例では可動エアーベント駒16を例示したが、固定エアーベント駒であっても良いし、エアーベント駒は必ずしも別体ブロックにする必要は無く、キャビティ駒にエアーベントを彫り込んで熱伝導性の高い金属
被膜層17を溶射しても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 下型 2 上型 2a,2b キャビティ凹部 2c 上型ランナゲート 2d 上型カル 2e フィルム吸引孔 2f エアーベント溝 3 モールド金型 4 ポット 5 プランジャ 6 下型インサートブロック 6a ワーク載置部 7 下型チェイスブロック 8 基板 9 半導体素子 10 ライナーブロック 11 支持部材 12 上型キャビティ駒 13 弾性部材 14 上型チェイスブロック 15 上型カルブロック 16 可動エアーベント駒 17 金属
被膜層 18 リリースフィルム 19 エアーベント付勢部材 20 樹脂タブレット