特許第6178720号(P6178720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178720
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】液体柔軟剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/463 20060101AFI20170731BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20170731BHJP
   D06M 13/325 20060101ALI20170731BHJP
   D06M 13/00 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   D06M13/463
   D06M13/224
   D06M13/325
   D06M13/00
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-266478(P2013-266478)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-120995(P2015-120995A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 典明
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−060070(JP,A)
【文献】 特開2003−301373(JP,A)
【文献】 特開平08−113871(JP,A)
【文献】 特開2012−233281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エステル基を含有し、炭素数9以上、23以下の炭化水素基を分子内に1つ以上有する、第3級アミン又はその中和物もしくは4級化物と、(B)炭素数12以上、22以下の脂肪酸と炭素数6以上、22以下の脂肪族アルコールとのエステルと、水とを含有し、(A)と(B)の質量比が(A)/(B)で2以上、300以下であり、(A)を3質量%以上、30質量%以下含有し、(A)が、(A1)下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物及びその酸塩と(A2)下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物の4級化物を含む混合物であり、(A1)と(A2)の質量比が(A1)/(A2)で5/95以上、50/50以下である、液体柔軟剤組成物。
〔R1−C(=O)−O−(Cp2pO)r−Cq2qmN(R23-m (1)
〔式中、R1は炭素数11以上、23以下の炭化水素基であり、R2は炭素数1以上、3以下の炭化水素基及びHO−(Cp2pO)r−Cq2q基から選ばれる基であり、mは1以上、3以下の数であり、p及びqは2又は3の数であり、rは0以上、5以下の数である。同一分子内にR1、R2、HO−(Cp2pO)r−Cq2q基、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていても良い。〕
【請求項2】
更に油剤を含有する、請求項1に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項3】
更に香料組成物を含有し、香料組成物中のエステル化合物系香料成分の含有量が30質量%以上である、請求項1又は2に記載の液体柔軟剤組組成物。
【請求項4】
更にキレート剤を含有する、請求項1〜の何れかに記載の液体柔軟剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
環境中に排出されても速やかに分解し、環境への負荷を低減することを目的に分子内エステル基を有する柔軟基剤が使用されている。エステル基が水中で加水分解し易いことは周知であり、液体柔軟剤組成物中でエステル基を有する柔軟基剤が加水分解すると、柔軟性能や貯蔵安定性等の品質が悪化し易いことも周知である。
【0003】
特許文献1には、分子内にエステル基を有する、迅速生物分解性四級アンモニウム柔軟化剤を含有した柔軟剤組成物が開示されている。該柔軟剤組成物のpHを調整することで、柔軟基剤のエステル基の加水分解性が抑制されることが開示されている。特許文献2には、分子内にエステル基を有する柔軟基剤に、アルキレンオキシドの付加モル数が比較的大きい高級アルコールアルキレンオキシド付加型非イオン界面活性剤と、脂肪酸エステルとを含ませた上、二者の質量比を規定することにより、柔軟基剤のエステル基の加水分解性が抑制されることが開示されている。特許文献3には、分子内にエステル基を有する柔軟基剤に、ある特定の脂肪酸エステルとある特定の香料を含有することにより、柔軟基剤のエステル基の加水分解性が抑制されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−6168号公報
【特許文献2】特開2012−82538号公報
【特許文献3】特開2012−233281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2、3の柔軟剤組成物では、分子内にエステル基を有する柔軟基剤の加水分解の抑制効果は十分ではない。
【0006】
本発明は、柔軟基剤として含有される、分子内エステル基を有する化合物のエステル基の加水分解を抑制することで、繊維製品に対する高い柔軟性付与効果を維持でき、取り扱いに適した粘度を有する液体柔軟剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(A)エステル基を含有し、炭素数9以上、23以下の炭化水素基を分子内に1つ以上有する、第3級アミン又はその中和物もしくは4級化物〔以下、(A)成分という〕と、(B)炭素数12以上、22以下の脂肪酸と炭素数6以上、22以下の脂肪族アルコールとのエステル〔以下、(B)成分という〕と、水とを含有し、(A)/(B)質量比が2以上、300以下であり、(A)を3質量%以上、30質量%以下含有する、液体柔軟剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液体柔軟剤組成物によれば、柔軟基剤となる(A)成分の化合物中のエステル基の加水分解が抑制されるため、繊維製品に対する高い柔軟性付与効果を安定して維持することができる。また、本発明の液体柔軟剤組成物は、取り扱いに適した粘度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<液体柔軟剤組成物>
[(A)成分]
(A)成分は、エステル基を含有し、炭素数9以上、23以下の炭化水素基を分子内に1つ以上有する第3級アミン、該第3級アミンの中和物、及び該第3級アミンの4級化物から選ばれる1種以上の化合物である。
(A)成分が有する炭化水素基は、好ましくは炭素数11以上、より好ましくは13以上であり、そして、好ましくは炭素数21以下である。
【0010】
(A)成分としては、(A1)下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物及びその酸塩〔以下、(A1)成分という〕、並びに(A2)下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物の4級化物〔以下、(A2)成分という〕から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
〔R1−C(=O)−O−(Cp2pO)r−Cq2qmN(R23-m (1)
〔式中、
1は炭素数11以上、23以下の炭化水素基であり、
2は炭素数1以上、3以下の炭化水素基及びHO−(Cp2pO)r−Cq2q基から選ばれる基であり、
mは1以上、3以下の数であり、
p及びqは2又は3の数であり、
rは0以上、5以下の数である。
同一分子内にR1、R2、HO−(Cp2pO)r−Cq2q基、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていても良い。〕
【0011】
(A)成分は、(A1)成分及び(A2)成分から選ばれる化合物又はそれらを含む混合物として例示できる。
【0012】
1は、繊維製品の柔軟化の観点から、炭素数13以上、21以下の炭化水素基が好ましい。
1の炭化水素基の具体例は、炭素数11以上、更に13以上、21以下のアルキル基及び炭素数11以上、更に13以上、21以下のアルケニル基から選ばれる基である。液体柔軟剤組成物の製造容易性の観点から、R1は炭素数11以上、23以下のアルキル基及び炭素数11以上、23以下のアルケニル基から選ばれる基が好ましい。より好ましくは、R1は炭素数13以上、21以下のアルキル基及び炭素数13以上、21以下のアルケニル基から選ばれる基である。
【0013】
アルケニル基に含まれる不飽和基はシス体とトランス体が存在する。R1について、シス体とトランス体比の具体例は、モル比でシス体/トランス体=30/70以上、99/1以下が挙げられる。アルケニル基の入手性の観点から、50/50以上、97/3以下が好ましい。本発明において、シス体とトランス体の比は1H−NMRの積分比で算出することができる。
【0014】
p及びqは、それぞれ2又は3の数である。(A)成分の製造の容易性の観点から、qは2の数が好ましい。
rは、繊維製品の柔軟化の点から、0以上、2以下の数が好ましく、0がより好ましい。
【0015】
(A1)成分である一般式(1)で表される第3級アミン化合物は、液体柔軟剤組成物のpHにより、一部又は全てが酸塩の状態で存在していても良い。
第3級アミン化合物の酸塩で存在する場合の酸としては、無機酸又は有機酸が挙げられる。無機酸の具体例としては、塩酸、硫酸が使用できる。有機酸の具体例としては、炭素数1以上、10以下の1価又は多価のカルボン酸、又は炭素数1以上、20以下の1価又は多価のスルホン酸が挙げられる。より具体的にはメチル硫酸、エチル硫酸、p−トルエンスルホン酸、(o−、m−、p−)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸が挙げられる。
【0016】
(A1)成分である一般式(1)で表されるアミン化合物を得る製造方法は特に制限されないが、例えば、下記一般式(2)で表わされるアルカノールアミン化合物と脂肪酸とのエステル化反応、又は脂肪酸エステルとのエステル交換反応によって得ることができる。
(HO−Cq2qm'N(R2'3-m' (2)
〔式中、R2'は炭素数1以上、3以下の炭化水素基であり、m’は1以上、3以下の数であり、qは、前記一般式(1)と同じ意味を表す。〕
【0017】
エステル化反応の例としては、例えば、特表2000−510171号公報の8〜9頁目に記載されている方法を適用することができる。
【0018】
エステル交換反応の例としては、例えば、特開平7−138211号公報の〔0013〕〜〔0016〕に記載の方法を適用することができる。
【0019】
(A2)成分である一般式(1)で表される化合物の4級化物は、一般式(1)で表されるアミン化合物とアルキル化剤とを用いた4級化反応により得ることができる。アルキル化剤は、メチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が挙げられる。4級化反応の例としては、例えば、特開平7−138211号公報の〔0017〕〜〔0023〕に記載の方法や、特開平11−106366号公報に記載の製造方法を適用することができる。
【0020】
(A)成分は、1種類の化合物でも良く、2種類以上の化合物の混合物であっても良い。(A)成分が2種類以上の化合物の混合物である場合、前記一般式(1)中のmの数平均の数が1.2以上、2.5以下の混合物を用いることができる。繊維製品の柔軟化の観点から、mの数平均の数は、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.4以上が好ましく、そして、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.9以下である。
【0021】
(A)成分は、(A1)成分と(A2)成分を含む混合物を用いることができる。(A)成分が(A1)成分及び(A2)成分を含む混合物である場合、(A1)成分と(A2)成分の質量比は、(A1)成分/(A2)成分=1/99以上が好ましく、3/97以上がより好ましく、5/95以上がより好ましく、そして、50/50以下が好ましく、40/60以下がより好ましく、35/65以下がより好ましい。
【0022】
[(B)成分]
(B)成分は、炭素数12以上、22以下の脂肪酸と炭素数6以上、22以下の脂肪族アルコールから構成されるエステルが用いられる。脂肪酸としては、炭素数12以上、18以下の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましい。脂肪族アルコールとしては、炭素数6以上、18以下の直鎖又は分岐鎖型アルコールが好ましい。アルコールは、1級アルコールが好ましい。
【0023】
(B)成分の具体例としては、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸ラウリル、ラウリン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸パルミチル、パルミチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸オクチルドデシル等が挙げられる。好ましくは、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、及びステアリン酸ステアリルから選ばれる1種以上の脂肪酸エステルである。
【0024】
(A)成分と(B)成分が水中で共存することで、(A)成分の加水分解が抑制される理由は必ずしも明らかではないが、本発明者は以下のように考えている。
(B)成分が、(A)成分が形成する会合体の間に整列し、(A)成分が有する親水基である第3級アミノ基又は第4級アンモニウム基間の距離を広げることにより水和水の量を低減させる。そのため、(A)成分の親水基に近いエステル基の周りの水も減少することで、エステル基の加水分解が抑制されている。
【0025】
〔(A)成分と(B)成分の含有量等〕
本発明の液体柔軟剤組成物中の(A)成分の含有量は3質量%以上、30質量%以下である。洗濯1回当たりの使用量を少なくできる点から、本発明の液体柔軟剤組成物中の(A)成分の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましく8質量%以上であり、そして、好ましくは28質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0026】
本発明の液体柔軟剤組成物中の(B)成分の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0027】
本発明の液体柔軟剤組成物では、(A)成分の加水分解抑制と組成物に適切な粘度を付与する点から、(A)成分と(B)成分の質量比は、(A)成分/(B)成分で2以上、300以下である。(A)成分/(B)成分の質量比は、好ましくは3以上、より好ましくは5以上であり、そして、好ましくは100以下、より好ましくは80以下である。
【0028】
〔任意成分〕
本発明の液体柔軟剤組成物は、任意成分として、(B)成分以外の油剤〔以下、(C)成分という〕、(A)成分以外の界面活性剤〔以下、(D)成分という〕、キレート剤〔以下、(E)成分という〕、無機電解質〔以下、(F)成分という〕、水溶性有機溶剤〔以下、(G)成分という〕及び香料組成物〔以下、(H)成分という〕から選ばれる1種以上の成分を含有することが好ましい。
また、本発明の液体柔軟剤組成物は、任意成分として、酸化防止剤、染料、防腐剤、シリコーン化合物、ポリマー、(A)成分の安定化に好適なpHに調整するためのpH調製剤を含有することが出来る。
【0029】
[(C)成分:油剤]
本発明の液体柔軟剤組成物は、(C)成分として、(B)成分以外の油剤を含有することが好ましい。本発明において用いられる油剤は、維製品に更に優れた柔軟性能を付与するために用いられ、また(A)成分の加水分解抑制にも効果を有する。例えば、炭素数14以上の炭化水素や脂肪族アルコールが挙げられ、好ましくはオクタデカン、流動パラフィン、ステアリルアルコール等が挙げられる。また、多価アルコールと脂肪酸のエステル化物等が挙げられ、好ましくは、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。柔軟性能向上の点から、脂肪酸の種類としては、パルミチン酸、ステアリン酸、及びその混合物が好ましい。(C)成分の油剤の配合量は、組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0030】
[(D)成分:界面活性剤]
本発明の液体柔軟剤組成物は、(D)成分として、(A)成分以外の界面活性剤を含有することが好ましく、非イオン界面活性剤〔〔以下、(D1)成分という〕及び(A)成分以外の陽イオン界面活性剤(D2)〔〔以下、(D2)成分という〕から選ばれる1種以上の界面活性剤を含有することがより好ましい。
【0031】
(D1)成分の非イオン界面活性剤としては、下記(D11)及び(D12)から選ばれる1種以上が挙げられる。
(D11):下記一般式(3)で表される非イオン界面活性剤
1d−O−[(C24O)s(C36O)t]−H (3)
〔式中、R1dは、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下のアルキル基又はアルケニル基である。s及びtは平均付加モル数であって、sは2以上、好ましくは10以上、そして、50以下、好ましくは40以下の数、tは0以上、好ましくは1以上、そして、5以下、好ましくは3以下の数である。(C24O)と(C36O)はランダム重合体又はブロック重合体であってもよい。〕
(D12):下記一般式(4)で表される非イオン界面活性剤
【0032】
【化1】
【0033】
〔式中、R1dは前記の意味を示す。Aは−N<又は−CON<であり、u及びvはそれぞれ独立に0以上、40以下の数であり、u+vは5以上、そして、60以下、好ましくは40以下の数である。R2d、R3dはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上、3以下のアルキル基である。〕
【0034】
(D2)成分の陽イオン界面活性剤としては、下記(D21)〜(D23)から選ばれる1種以上が好ましく、(D22)から選ばれる1種以上がより好ましい。塩は塩素塩が好ましい。
(D21):アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上、22以下のジ長鎖アルキル又はアルケニルジメチルアンモニウム塩
(D22):アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上、22以下のモノ長鎖アルキル又はアルケニルトリメチルアンモニウム塩
(D23):アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上、22以下のモノ長鎖アルキル又はアルケニルベンジルジメチルアンモニウム塩
【0035】
本発明の柔軟剤組成物は、(D)成分として、(D)成分を含有することが好ましく、前記一般式(3)で表される非イオン界面活性剤(D11)を含有することがより好ましい。
【0036】
(D)成分の界面活性剤の組成物中の含有量は0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、そして10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。この(D)成分の濃度制限において、一般式(3)で表される非イオン界面活性剤(D11)の含有量は、本発明の柔軟剤組成物中に0.5質量%以上、更には1質量%以上が好ましい。
【0037】
[(E)成分:キレート剤]
本発明の液体柔軟剤組成物は、水中の銅や鉄などの金属イオンやアルカリ土類金属イオンを捕捉するために、(E)成分として、キレート剤を含有することが好ましい。
【0038】
本発明において用いられるキレート剤は、水中の銅や鉄などの金属イオンやアルカリ土類金属イオンを捕捉する目的以外に、本発明の液体柔軟剤組成物の保存安定性を向上させるためや柔軟剤組成物の変色や染料の褪色を抑制するためにも用いられる。
【0039】
(E)成分としては、例えば、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、L−グルタミン酸−N,N−二酢酸、N−2−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、クエン酸、コハク酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上が好ましく、更にはエチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸、クエン酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上がより好ましい。塩の場合はアルカリ金属塩が好ましい。これらのキレート剤は、後述するpH調整剤としての役割を果たす場合もある。なおメチルグリシン二酢酸、エチレンジアミン四酢酸及びそれらの塩は、染料の褪色抑制に効果的であり、少量で効果を発揮する。本発明ではメチルグリシン二酢酸及びエチレンジアミン四酢酸から選ばれる一種以上とクエン酸とを併用することが好ましく、該有機酸はアルカリ金属塩であってもよい。
【0040】
(E)成分のキレート剤の組成物中の含有量は、酸構造に仮定して、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、そして1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。メチルグリシン二酢酸、エチレンジアミン四酢酸又はそれらの塩の含有量は、酸構造として、組成物中、好ましくは0.001質量%以上、好ましくは0.05質量%以下であり、この場合、更にクエン酸又はその塩を含有することで前記(E)成分としての含有量範囲を満たすことが好ましい。
【0041】
[(F)成分:無機電解質]
本発明の液体柔軟剤組成物は、(F)成分として、無機電解質を含有することが好ましい。(F)成分の無機電解質は、20℃の水100gに5g以上、溶解するものが好ましい。
(F)成分の無機電解質は、柔軟剤組成物を使用に適した粘度に調整するのに好ましく用いられる。例えば、(F)成分としては、陽イオンが、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる物質のイオンであり、陰イオンが、ハロゲン化合物及び硫酸塩から選ばれる物質のイオンである無機塩が挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。ハロゲン化合物としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、が挙げられる。
(F)成分の無機電解質は、具体的には、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、及び硫酸マグネシウムから選ばれる1種以上の無機電解質が挙げられる。
【0042】
無機電解質(F)の組成物中の含有量は0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、そして1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
【0043】
[(G)水溶性有機溶剤]
本発明の柔軟剤組成物は、組成物の安定性や粘度の観点から、(G)成分として、水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。(G)成分としては、柔軟剤に配合することが知られている水溶性の有機溶剤が挙げられる。(G)成分について「水溶性有機溶剤」とは100gの20℃の脱イオン水に対して20g以上溶解することをいう。(G)成分としては、具体的には、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、モノエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、イソプロパノール、エタノール等を挙げることができる。好ましくはエチレングリコール及びエタノールから選ばれる1種以上の水溶性有機溶剤である。液体柔軟剤組成物の粘度が高い場合や相安定性を調整したいときは水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。本発明の液体柔軟剤組成物は、(G)成分を、好ましくは1.0質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下含有する。
【0044】
[(H)香料組成物]
本発明の柔軟剤組成物は、組成物自体の賦香のためのみならず、繊維製品への賦香目的のために香料組成物を含有することが好ましい。
本発明において用いられる香料組成物は、柔軟剤組成物に対して消費者に高い嗜好性を与えるために用いられる。嗜好性とは、高揚感や鎮静感、爽快感、など単に心地良い感情を与える効果だけではなく、汗臭やタバコ臭、生乾き臭など不快なニオイを防臭する効果、冷涼作用や温熱作用、催眠作用、催淫作用、抗うつ作用、抗菌作用、ダイエット作用など機能的な効果についても含み得る。香料成分としては、例えば「香料と調香の基礎知識、中島基貴 編著、産業図書株式会社発行、2005年4月20日 第4刷」に記載の香料、特表平10−507793号公報記載の香料を使用することができる。
【0045】
香りの質や強度、柔軟剤系での安定性などの点から、適宜香料成分を選択して用いる。以下、本発明に配合できる、香料成分として用いられる化合物を、香料分野で示される分類に分けて挙げると次の通りになる。テルペン化合物系香料成分として、リモネン、p−サイメン、α−ピネン、β−ピネン、β−カリオフィレンが挙げられ、アルコール化合物系香料成分として、シス−3−ヘキセノール、トランス−2−ヘキセノール、メチルトリメチルシクロペンテニルブテノール、ジヒドロミルセノール、l−メントール、フェニルエチルアルコール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、ターピネオール、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロゲラニオール、ジメチルベンジルカルビノール、β−フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、シンナミックアルコール、アニスアルコール、ファルネソール、ネロリドール、ジメチルフェニルエチルカルビノール、o,t−ブチルシクロヘキサノール、p,t−ブチルシクロヘキサノール、サンダルマイソールコア(2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール)(花王(株)製)、バグダノール(IFF社製)、ジャバノール(ジボダン社製)が挙げられ、エステル化合物系香料成分として、酢酸ベンジル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸リナリル、酢酸ネリル、酢酸o,t−ブチルシクロヘキシル、酢酸p,t−ブチルシクロヘキシル、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸テトラヒドロゲラニル、酢酸テルペニル、酢酸イソボルニル、酢酸l−メンチル、酢酸トリシクロデセニル、酢酸2−フェニルエチル、酢酸3−フェニルプロピル、酢酸スチラリル、酢酸シス−3−ヘキセニル、酢酸トランス−2−ヘキセニル、酢酸ヘキシル、酢酸シンナミル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸2−フェニルエチル、プロピオン酸シトロネリル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸トリシクロデセニル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸アリル、酪酸ゲラニル、酪酸シトロネリル、酪酸イソアミル、酪酸アミル、酪酸アリル、イソ酪酸フェノキシエチル、イソ酪酸ゲラニル、イソ吉草酸ゲラニル、カプロン酸エチル、カプロン酸アリル、エナント酸エチル、エナント酸アリル、オクタン酸エチル、アンスラニル酸メチル、安息香酸シス−3−ヘキセニル、安息香酸ベンジル、サリチル酸アミル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸シス−3−ヘキセニル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸2−フェニルエチル、メチルジヒドロジャスモネート、クマリン、γ−オクタラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−デカラクトン、γ−ノナラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、シクロペンタデカノリド、シクロペンタデセノリド(ハバノライド、フィルメニッヒ社製)、シクロヘキサデカノリド、アンブレットリド、11−オキサ−16−ヘキサデカノリド(ムスクR−1、ジボダン社製)、10−オキサ−16−ヘキサデカノリド(オキサリド、高砂香料工業社製)、12−オキサヘキサデカノリド、エチレンブラシレート、エチレンドデカンジオエート(ムスクC−14)が挙げられ、アルデヒド化合物系香料成分として、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、10−ウンデセナール、ドデカナール、シトラール、シトロネラール、アニスアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、マイラックアルデヒド、リリアール、リラール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、ヘリオナールが挙げられ、ケトン化合物類として、フロラロゾン、l−カルボン、メントン、シスジャスモン、ゲラニルアセトンが挙げられ、更にはダマスコン類、ダマセノン類、α−ダイナスコン、イオノン類、メチルイオノン類、β−メチルナフチルケトン、イソEスーパー、ラズベリーケトン、マルトール、エチルマルトール、カシュメラン(IFF社製)、5−シクロヘキセデセノン−1−オン(ムスクTM−II)が香料として知られており、またエーテル化合物系香料成分として、アネトール、オイゲノール、メチルオイゲノール、メチルイソオイゲノール、ジフェニルオキサイド、1,8−シネオール、セドリルメチルエーテル、アンブロキサン(3α,6,6,9α−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン)、エトキシメチルシクロドデシルエーテル(ボアサンブレンフォルテ、花王(株)製)、含窒素化合物系香料成分として、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、インドール、アセチルセドレン、アントラニル酸メチル、N−メチルアントラニル酸メチル、オーランチオール、ペオニル(ジボダン社製)等を挙げることが出来る。
【0046】
この中でもエステル化合物系香料成分は(A)成分の加水分解抑制にも効果を有しており、(H)成分の香料組成物中に30質量%以上含有することが好ましく、40質量%以上含有することがより好ましい。
【0047】
(H)成分の香料組成物には、香りの持続性、残香性を目的として、香料をマイクロカプセル化して配合してもよい。香料のマイクロカプセルは、芯物質の香料を壁材で包んだ球状物質であり、その役割は芯物質の香料を保護し、カプセルに物理的な力が加わった際にカプセルの壁が破れて芯物質の香料を放出するものである。
【0048】
また、香りの持続性、残香性を目的として、ケイ酸と、香料として用いられるアルコール(以下、「アルコール性香料」という。)とのエステル、例えば、特開2009−256818号公報の一般式(1)で表される化合物などを用いることができる。アルコール性香料としては、下記i)〜iii)のアルコールが挙げられる。
【0049】
i)logPが1以上、5以下の脂肪族アルコール
具体的には、シス−3−へキセノール(1.4)、ゲラニオール(2.8)、ネロール(2.8)、2,6−ジメチル−2−ヘプタノール(3.0)、メントール(3.2)、シトロネロール(3.3)、ロジノール(3.3)、9−デセノール(3.5)、テトラヒドロリナロール(3.5)、テトラヒドロゲラニオール(3.7)、4−メチル−3−デセン−5−オール(3.7)、テトラヒドロゲラニオール(3.7)等が挙げられる。ここで、( )内は、logP値〔以下のii)とiii)についても同様〕である。
【0050】
ii)logPが1以上、5以下の芳香族アルコール
具体的には、アニスアルコール(1.0)、ラズベリーケトン(1.1)、フェニルエチルアルコール(1.2)、オイゲノール(2.4)、イソオイゲノール(2.6)、ジメチルベンジルカルビノール(3.0)、フェニルエチルメチルエチルカルビノール(3.0)、3−メチル−5−フェニルペンタノール(3.2)、チモール(3.4)等が挙げられる。
【0051】
iii)logPが1以上、5以下の、飽和又は不飽和の環式アルコール
具体的には、p−tert−ブチルシクロヘキサノール(3.1)、o−tert−ブチルシクロヘキサノール(3.1)、l−メントール(3.2)、4−イソプロピルシクロヘキシルメタノール(3.3)、1−(4−イソプロピルシクロヘキシル)エタノール(3.6)、サンタロール(3.9)、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール(3.9)ベチベロール(4.2)等が挙げられる。
【0052】
本発明において、logP値とは、有機化合物の水と1−オクタノールに対する親和性を示す係数である。1−オクタノール/水分配係数Pは、1−オクタノールと水の2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。多くの化合物のlogP値が報告されており、Daylight Chemical Information Systems, Inc. (Daylight CIS)などから入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。実測のlogP値がない場合には、Daylight CISから入手できるプログラム“CLOGP"等で計算することができる。このプログラムは、実測のlogP値がある場合にはそれと共に、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される“計算logP(ClogP)”の値を出力する。
【0053】
フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(cf. A. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch, P.G. Sammens, J.B. Taylor and C.A. Ramsden, Eds., p.295, Pergamon Press, 1990)。このClogP値を、化合物の選択に際して実測のlogP値の代わりに用いることができる。本発明では、logPの実測値があればそれを、無い場合はプログラムCLOGP v4.01により計算したClogP値を用いる。
【0054】
[その他任意成分]
本発明の柔軟剤組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤は、例えば、分子内にフェノール基を有する酸化防止剤である。分子内にフェノール基を有する酸化防止剤は、香料の臭いの変化を抑制する為に用いられる。酸化防止剤を香料と併用すると、臭いの変化を抑制できるが、酸化を受けたフェノール基を有する酸化防止剤が着色されることで、柔軟剤組成物の変色が促進されることから、酸化防止剤の配合量は、酸化の影響を受けやすい香料成分とその含有量とともに、十分に確認した上で使用される。
入手の容易性の点から、分子内にフェノール基を有する酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種又は2種以上の酸化防止剤が好ましい。変色抑制の点から、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールから選ばれる1種又は2種以上の酸化防止剤が好ましい。
酸化防止剤は(A)成分などの他の基材の保存安定性のために配合されていることがあり(A)成分を配合することで、本発明の柔軟剤組成物に混入することもある。
【0055】
本発明の柔軟剤組成物には、美観のため、或いは基材由来の色や着色のマスキングのための染料を含有してもよい。染料は、柔軟剤組成物に対して消費者に高い嗜好性を与えるために用いられる。例えば、カラーインデックス酸性赤色染料、カラーインデックス酸性黄色染料及びカラーインデックス酸性青色染料から選ばれる1種又は2種以上の染料である。
カラーインデックス酸性赤色染料の具体例としては、C.I.Acid Red 18 C.I.Acid Red 27、C.I.Acid Red 52、C.I.Acid Red 82、C.I.Acid Red 114、C.I.Acid Red 138、C.I.Acid Red 186が挙げられる。
カラーインデックス酸性黄色染料の具体例としては、C.I.Acid Yellow 1 、C.I.Acid Yellow 7、C.I.Acid Yellow 23、C.I.Acid Yellow 141が挙げられる。
カラーインデックス酸性青色染料の具体例としては、C.I.Acid Blue 5、C.I.Acid Blue 9、C.I.Acid Blue 74が挙げられる。
【0056】
なお、本発明では、これら以外の染料を使用することもできる。それらの染料としては、アルコキシル化アントラキノン高分子着色剤、アルコキシル化トリフェニルメタン高分子着色剤、アルコキシル化チオフェン高分子着色剤があげられる。
【0057】
染料はキレート剤と併用することで、香料又は香料及び酸化防止剤を含有する柔軟剤組成物の変色を抑制することが出来る。変色抑制の点で、カラーインデックス酸性赤色染料、及びカラーインデックス酸性黄色染料から選ばれる1種又は2種以上の染料が好ましい。もっとも効果的なキレート剤は、エチレンジアミン4酢酸、メチルグリシン二酢酸又はそれらのアルカリ金属塩である。
【0058】
本発明において用いられる防腐剤は、柔軟剤組成物に防腐性を与えるために用いられる。例えば、ビグアニド系化合物、イソチアゾリン系化合物、イソチアゾリノン系化合物が挙げられる。具体例としては、ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンが挙げられ、それぞれ市販品として、「プロキセルIB」、「ケーソンCG」、「プロキセルBDN」を用いることもできる。
【0059】
本発明には場合により、或いは繊維製品への触感に新たな印象を加えるためにシリコーン化合物を含有することができる。シリコーン化合物は、繊維製品に更に優れた柔軟性能を付与するために用いられる。例えば、ジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、及びアミノ変性シリコーンなどが挙げられる。柔軟効果の観点から、中でもジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンが好ましく、ジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーンがより好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0060】
本発明には重合性モノマーを重合してなる構成単位を有する、ポリマー化合物を含有することができる。ポリマー化合物は、柔軟剤組成物の粘度調整や、柔軟剤仕上げ時の残存洗剤成分を捕捉するために用いられる。具体例としては、カチオン性ポリマーとして、特に制限されるものではないが、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、又はジエチルアミノプロピルメタクリルアミド等をモノマーとして重合し、それらを酸により中和した酸中和物、若しくは4級化剤により4級化した4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0061】
カチオン性ポリマーの中和に用いる酸としては、特に制限されるものではないが、塩酸、硫酸等の無機酸、クエン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸などの有機酸が挙げられる。
カチオン性ポリマーの4級化剤としては、特に制限されるものではないが、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル等のアルキル硫酸一般的なアルキル化剤が挙げられる。
ポリマーとしては、ホモポリマー、コポリマー、ブロックポリマー等、制限されるものではない。
【0062】
本発明の液体柔軟剤組成物のpHは、(A)成分の加水分解安定性の点から、25℃で、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは7以下、より好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。pHはJIS K 3362;2008の項目8.3に従って25℃において測定する。
【0063】
本発明の柔軟剤のpHの調製に用いられるpH調整剤は、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、プロピオン酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、クロトン酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、ポリアクリル酸等の有機酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン等の無機塩基、もしくは有機塩基が挙げられる。pH調整剤は、液体柔軟剤組成物のpHが後述する範囲となるように用いられるのが好ましい。
【0064】
本発明の液体柔軟剤組成物の残部は、水である。水は、脱イオン水、脱イオン水に次亜塩素酸塩を少量配合した滅菌した水、水道水などを用いることができる。
【0065】
本発明の液体柔軟剤組成物は、乳濁状態であってよい。本発明において、乳濁状態の液体柔軟剤組成物とは、配合成分が液体柔軟剤組成物中で可視光を散乱する程度の大きな粒子を形成することで、可視光を散乱し、目視上濁った状態の液体柔軟剤組成物を表す。具体的には、測定セルとして光路長10mmのガラスセルを使用し、対照セルにイオン交換水を入れた際に、紫外可視分光光度計を用いて測定された、試料の可視光線透過率(波長660nm)が25%未満である液体柔軟剤組成物を表す。
【0066】
本発明の液体柔軟剤組成物は、衣料、寝具、布帛、その他の布製品などの繊維製品用として好適である。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例で用いた成分を示す。
〔(A)成分〕
(a−1):下記合成例1で得られたエステル化反応生成物
<合成例1:(a−1)の製造方法>
トリエタノールアミンと脂肪酸(混合脂肪酸、組成は以下に示す)とを、反応モル比(脂肪酸/トリエタノールアミン)1.86/1でエステル化反応させ、一般式(1)で表されるアミン化合物を含むエステル化反応生成物を得た。
エステル化反応生成物のmz〔(A)成分全体における前記一般式(1)中のmの数平均〕は1.77であった。また、エステル化反応生成物中には、未反応の脂肪酸が5質量%含まれていた。エステル化反応生成物中のアミン化合物のアミンに対して、メチル基が0.98等量となるように、ジメチル硫酸で4級化反応を行った。4級化反応後に反応物の質量に対して10質量%のエタノールを添加し、均一に混合した。
得られたエステル化反応生成物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られたエステル化反応生成物は、(A1)成分の第3級アミン化合物、(A2)成分の4級化物、及び未反応の脂肪酸を85質量%含有する混合物であった。該混合物中、脂肪酸は2質量%含まれていたことから、該混合物中の(A1)成分及び(A2)成分の合計は、85質量%−2質量%=83質量%であった。また、該混合物における(A1)成分/(A2)成分の質量比は9/91であり、(A1)成分及び(A2)成分の一般式(1)中のアシル基R1−C(=O)が、それぞれ、不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸の質量比が0.64である脂肪酸から構成されていた。
【0068】
なお、液体柔軟剤組成物の調製にあたり、(a−1)は、(A1)成分、(A2)成分、脂肪酸、エタノール及びその他微量成分を含む混合物として配合されるが、表中の(a−1)の質量%は、(A1)成分、(A2)成分の量に基づく質量%を示し、その他の成分は、イオン交換水の残部に加えた。
【0069】
脂肪酸の組成を以下に示す。
ミリスチン酸:2質量%
パルミチン酸:27質量%
パルミトレイン酸:3質量%
ステアリン酸:32質量%
炭素数18で、不飽和基を1つ有する脂肪酸:33質量%
炭素数18で、不飽和基を2つ有する脂肪酸:3質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。前記不飽和基のシス/トランス体比は85/15(1H−NMRによる、積分比)である。
【0070】
〔(B)成分〕
(b−1):ミリスチン酸オクチルドデシル
(b−2):ステアリン酸2−エチルヘキシル
(b−3):ステアリン酸ステアリル
【0071】
〔(B’)成分〕
(b’−1):パルミチン酸イソプロピル
【0072】
〔(C)成分〕
(c−1):ペンタエリスリトールモノステアレート(エキセパールPEMS(花王(株)))
【0073】
〔(D)成分〕
(d−1):非イオン界面活性剤(オキシエチレン基の平均付加モル数が30モルであるポリオキシエチレンラウリルエーテル)
【0074】
〔(E)成分〕
(e−1):クエン酸
(e−2):メチルグリシン二酢酸3Na(トリロンMリキッド、BASFジャパン(株))(有効分のメチルグリシン二酢酸3Naが表2の値となるように用いた。)
【0075】
〔(F)成分〕
(f−1):塩化カルシウム
【0076】
〔(G)成分〕
(g−1):エチレングリコール
【0077】
〔(H)成分〕
(h−1):表1に示される香料組成物h1
(h−2):表1に示される香料組成物h2
【0078】
〔その他の成分〕
(j−1):1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(プロキセルBDN(アーチ・ケミカル・ジャパン(株)製))
(k−1):高重合ジメチコンエマルジョン:25℃における動粘度が500,000mm2/sのジメチルポリシロキサン60質量%、オキシエチレン基の平均付加モル数(以下、平均EO付加モル数、という)が5モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル1.5質量%、平均EO付加モル数23モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル4.5質量%、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩0.1質量%、水 残部のエマルジョン、分散粒子の平均粒子径500nm(有効分のジメチルポリシロキサンが表2の値となるように用いた。)
【0079】
<乳濁状態の液体柔軟剤組成物の製造方法>
表2に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、乳濁状態の液体柔軟剤組成物を調製した。具体的には、以下の通りである。
300mLビーカーに、乳濁状態の液体柔軟剤組成物のでき上がり質量が200gとなるのに必要な量の90質量%相当量のイオン交換水と、(G)成分、(E)成分、(j−1)を入れ、ウォーターバスを用いてイオン交換水の温度を60±2℃に調温した。これらの成分がイオン交換水中に均一に溶解するように、必要に応じて下記の攪拌羽根を用いて攪拌した。
60±2℃の温度に調温した上記成分を含むイオン交換水を、直径が5mmの攪拌棒の回転中心軸を基準として、長辺が90度方向になるように配置された撹拌羽根(羽根の数:3枚、羽根の長辺/短辺:3cm/1.5cm、羽根の設置:回転面に対して45度の角度)で撹拌(300r/m)しながら、65℃で(B)成分又は(B’)成分、(C)成分、(D)成分とともに加熱溶解させた(A)成分を3分間掛けて投入した。投入終了後に15分間撹拌した。
(F)成分の10質量%水溶液を投入し、10分間攪拌した。5℃のウォーターバスを用いて、内容物の温度が30±2℃になるまで冷却した。
(H)成分を投入し5分間攪拌した。次いで(k−1)成分を投入し5分間攪拌した。出来上がり質量(200g)となるようにイオン交換水を加え、5分間攪拌した。
なお、表2では、便宜的に(B’)成分を(B)成分として(A)/(B)質量比を示した。またpHは塩酸水溶液で最終調整した。
【0080】
<評価方法>
【0081】
(1)粘度
表2に示す液体柔軟剤組成物30gを、容器(ガラス製広口規格ビンNo.6)に充填し、組成物の温度を30℃に調整した。B型粘度計(型番;TVB−10東機産業株式会社製、No.2のローターを使用、60r/min)を用いて、前記温度で液体柔軟剤組成物の粘度測定を開始し、1分後の値を読み取った(粘度の単位は「mPa・s」)。結果を表2に示す。この評価では、粘度は50mPa・s以下が好ましい。
【0082】
(2)(A)成分残存率
〔液体柔軟剤組成物の保存方法〕
表2に示す液体柔軟剤組成物30gを、保存容器(ガラス製広口規格ビンNo.6)に充填した。液体柔軟剤組成物を充填した保存容器を、50±2℃で2ヶ月静置保存した。次いで、25±2℃の部屋で24時間静置したサンプルを評価用サンプルとした。
【0083】
〔エステル基の加水分解率の測定方法〕
(A)成分の経時的な加水分解率を評価するために、液体柔軟剤組成物中のカチオン残存率を下記の方法で測定した。
上記に記した保存容器にて、−5℃で2ヶ月静置保存したサンプルを参照用のサンプルとした。これらのサンプル中の(A)成分(モノエステル体、ジエステル体、トリエステル体)の残存率を測定した。測定は、島津製作所LCMS−2010EVを用いて行った。測定条件は以下の通りである。
*測定条件
カラム:島津製作所製Shim-pack XR-ODS 2.2μm、50mm×2.0mm
溶離液:
A;10mM酢酸アンモニウム添加メタノール
B;10mM酢酸アンモニウム添加メタノール(50%)エタノール(50%)
グラジエント条件:A/B=50/50(0min)−A/B=0/100(3−10min)−A/B=50/50(10−15min)
流量:0.4ml/min
注入量:5μL
カラム温度:40℃
検出器:MS
【0084】
(A)成分には、モノエステル体、ジエステル体、トリエステル体、トリエタノールアミンの4級化物が含まれているが、エステル体はそれぞれが加水分解してしまうため、参照用サンプルから純粋に加水分解率を測定できるのはトリエステル体のみであり、これの残存率を調べた。参照用サンプル中のトリ体成分量を100%とし、評価用サンプル中のトリ体の残存量の割合を残存率とした。商品価値上、保存後のトリ体残存率60%以上であるものを合格とする。結果を表2に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】