特許第6178727号(P6178727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178727
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】核酸リガンドを固定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20170731BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20170731BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20170731BHJP
   G01N 33/548 20060101ALI20170731BHJP
   G01N 33/552 20060101ALI20170731BHJP
   G01N 33/566 20060101ALI20170731BHJP
   C12N 15/115 20100101ALN20170731BHJP
【FI】
   G01N33/543 525U
   C07K1/22
   G01N33/53 D
   G01N33/548 Z
   G01N33/552
   G01N33/566
   !C12N15/00 HZNA
【請求項の数】14
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2013-546818(P2013-546818)
(86)(22)【出願日】2011年12月30日
(65)【公表番号】特表2014-505867(P2014-505867A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】IB2011056028
(87)【国際公開番号】WO2012090183
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年12月11日
(31)【優先権主張番号】1061366
(32)【優先日】2010年12月30日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】1159604
(32)【優先日】2011年10月24日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511216008
【氏名又は名称】ラボラトワール フランセ デュ フラクショヌマン エ デ ビオテクノロジ
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ボスケッティ, エジスト
(72)【発明者】
【氏名】ペレ, ジェラルド
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−506108(JP,A)
【文献】 特開2005−283572(JP,A)
【文献】 特表2010−535853(JP,A)
【文献】 ALLERSON CHARLES R,A HIGH-CAPACITY RNA AFFINITY COLUMN FOR THE PURIFICATION OF HUMAN IRP1 AND IRP2 OVEREXPRESSED IN PICHIA PASTORIS,RNA,米国,COLD SPRING HARBOR LABORATORY PRESS,2003年 3月 1日,V9 N3,P364-374
【文献】 GOSS THOMAS A,HIGH-PERFORMANCE AFFINITY CHROMATOGRAPHY OF DNA,JOURNAL OF CHROMATOGRAPHY,NL,ELSEVIER SCIENCE PUBLISHERS B.V,1990年 1月 1日,V508,P279-287
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
C07K 1/22
C12N 15/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上に活性化されたカルボン酸基を有する固体担体上にグラフトすることによって、少なくとも一つの反応性アミン基を有する核酸を固定する方法であって、
上記核酸の少なくとも一つの第一アミン基をpH5.5以下で上記固体担体の上記活性化されたカルボン酸基と共有結合でカップリングさせ、
上記固体担体の上記活性化されたカルボン酸基がN−ヒドロキシスシニイミドまたはその誘導体である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
下記の(a)〜(c)の段階から成る、固体担体上に少なくとも一つの第一アミン基を有する核酸リガンドを固定する方法:
(a) 表面に活性化されたカルボン酸基を有する固体担体を用意し、この活性化されたカルボン酸基をN−ヒドロキシスシニイミドまたはその誘導体とし、
(b) 少なくとも一つの第一アミン基を有する核酸リガンドを用意し、
(c) 上記記核酸リガンドの少なくとも一つの第一アミン基を上記固体担体の表面上に存在する活性化されたカルボン酸基とpH5.5以下で共有結合でカップリングする、
ただし、段階(a)と(b)の順番はどちらでもよい。
【請求項3】
カップリング段階のpHを3.5〜4.5の範囲にする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
カップリング段階を0℃〜35℃の温度で実行する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
上記核酸リガンドが3'または5'末端に少なくとも一つの第一アミンを有する5〜120ヌクレオチドのポリヌクレオチドである請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
上記核酸リガンドが(i)長さが5〜120ヌクレオチドのポリヌクレオチドと(ii)このポリヌクレオチドに結合したスペーサ鎖とから成り、上記第一アミン基は上記記ポリヌクレオチドの3'または5'末端またはスペーサ鎖に結合している請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
スペーサ鎖をC−C20直鎖アルキルおよび第一アミン基で置換したC−C20ポリエチレングリコールからなる群の中から選択する請求項に記載の方法。
【請求項8】
上記固体担体がクロマトグラフィに適したものである請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
固体担体がシリカゲル、デキストランゲル、アガロースゲルおよびこれらの誘導体から成る群の中から選択する請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
カップリング段階(c)が下記(cl)および(c2)の2つの段階から成る請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法:
(cl)上記核酸リガンドを上記固体担体の表面上の活性化されたカルボン酸基とpH5.5以下で反応させ、
(c2)上記核酸リガンドを上記固体担体の表面上に存在する活性化されたカルボン酸基にカップリングする反応をpH7.5以上の条件下で続ける。
【請求項11】
カップリング段階の後にカップリング反応をブロックする段階(d)が続く請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも一つの第一アミン基を有する核酸リガンドが核酸アプタマーから成る請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
核酸リガンドが下記の式(1)のアプタマーから成る請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法:
NH2−[SPAC]n−[NUCL] (I)
(ここで、
nは0または1であり、
[SPAC]はスペーサ鎖を意味し、
[NUCL]は標的分子に特異的に結合する核酸を意味し、この核酸は5〜120のヌクレオチドから成る。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の固定化方法を実行して固体担体上に核酸リガンドをグラフトすることから成る親和性担体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親和性(affinity)担体を用いて、所定の重要物質(substances of interest)、特に精製された医学的に重要な物質を得るための工業的スケールで使用可能な精製分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出発材料中の重要物質を選択的に濃縮できるアフィニティークロマトグラフィ担体に対するニーズは常にある。医療分野ではアフィニティークロマトグラフィ担体は医薬活性成分として使用される物質を精製するために用いられ、主として抗体を固定する免疫アフィニティークロマトグラフィ担体が使用されている。免疫親和性担体(immunoaffinity supports)は標的分子に対して優れた保持能と高い選択性を有しているので工業的スケールで医学的に重要な物質を精製するのに適している。この免疫親和性担体は精製方法の終わりにその保持能または選択性を実質的に失なわずに再生でき、従って、長期間にわたって使用できるだけでなく、その高い保持能によって免疫親和性担体は標的物質を大量に精製できるので、その使用は医薬物生産の技術的および経済的条件を満足させることができる。しかし、免疫親和性担体には、医学的に重要な物質の精製に用いた場合にいくつかの欠点、特に(i) 以前に保持した標的物質の溶出時に固定した抗体に由来する免疫原の蛋白断片が放出され、(ii)溶出条件および定期的な抗菌、抗ウイルス殺菌処理に対して抗体が脆弱であるという欠点がある。
【0003】
公知の免疫親和性担体に代わるものを見つけるための研究が種々行われてきた。しかし、標的タンパクを含む標的物質を精製するためのアフィニティーリガンドとしてアプタマー(aptamer)を使用する研究は少ない。その例としはストレプトアビジン-ビオチンペアリングを介して抗- L-セレクチン(anti-L-selectin)DNAアプタマーが固定されクロマトグラフィ担体でL-セレクチンを精製する非特許文献1を挙げることができる。
【0004】
標的分子のためのアプタマーの親和性および特異性は抗体のそれと同程度であるということは古くから知られている。さらに、アプタマーは化学合成で得ることができるので、その生産コストは抗体の生産コストよりはるかに低い。しかし、アフィニティーリガンドとしてのアプタマーの有する経済的および技術的な利点にもかかわらず、標的物質を精製するためのアプタマー親和性担体の経済の使用は現時点では補助的なものである。本出願人が知る限り、アプタマー親和性担体の使用をベースにした段階を含む、標的タンパクを含む標的物質の精製を行う方法は存在しない。
【0005】
工業的スケールの精製方法でアプタマーが使用されていない理由の一つはアプタマーを安定的かつ定量的に取り付けることができる親和性担体を得ることが困難であることにある。
【0006】
アプタマーを固定するための従来の主たる技術はビオチン-ストレプトアビジンまたはビオチン-アビジンペアリングを使用するものである。この技術はそのアビジンまたはストレプトアビジン・リガンドに対するビオチンの選択性および強い親和性と、その会合で生じる非共有性(noncovalent)複合体の安定性とを利用することができる。しかし、このタイプの親和性担体は使用するカップリング剤のタンパクの種類と、担体とアプタマーとの間に形成される非共有性結合の種類とに起因する技術的限界がある。事実、ビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジンは蛋白変性を誘導する処理に対して敏感である。さらに、ビオチン/ストレプトアビジン複合体は低温で非イオン物質または低塩濃度水溶液で分離する。これらの理由からビオチン/ストレプトアビジン複合体を用いてリガンドとして核酸アプタマーを固定した親和性担体は精製方法、特に各精製サイクル間で親和性担体を再生し、消毒することが必須である工業的精製プロセスに適していない。
【0007】
固体担体上に核酸を共有結合性グラフトする方法もいくつか知られている。これは基本的に分析のための新しいツールを目的にしたものである。臭化シアンで活性化させたセファロース担体上に反応性アミン基を有する核酸アプタマーをグラフする方法が非特許文献2に記載されている。
アジピン酸ジヒドラジド基で活性化させたアガロース担体への過沃素酸塩-酸化RNAアプタマーのグラフトは非特許文献3に記載されている。また、SIABのような二官能性カップリング剤による核酸アプタマーのグラフト方法も公知である(非特許文献4)。
【0008】
N-ヒドロキシスシニイミド(NHS)で予備活性化したカルボン酸基を有するシリカまたはアガロース・タイプの固体担体に核酸、特にアプタマーを共有結合させる方法も従来技術に開示されている (非特許文献5〜非特許文献7)。これらの共役結合によるカップリング方法は蛋白質を固体担体上にカップリングするのに従来から使われていた方法を直接適用したものである。
【0009】
非特許文献5(Goss et al. 1990, Jchromatogr, Vol. 508:279-287)にはpH=7.4のリン酸ナトリウム緩衝液中でNHSを用いてシリカのマクロポーラス担体上に5'-アミノエチル-ポリ(dT)18オリゴヌクレオチドのグラフト方法が記載されている。このGoss et al.の方法で得られる親和性担体は1gのシリカ当たり0.5μmolのポリ(dT)18のグラフト度を有する。これは1gのシリカゲル当たりのカルボキシレート基の数が非常に低いことを表している(1gのシリカ当たり500μmol)。換言すれば、担体表面上に存在するカルボキシレート基の0.1%しかアミド結合を介してポリ(dT)18オリゴヌクレオチドに結合していない。Goss et al.の方法では得られた親和性担体を用いての少量のモデルligo-(dA)12-18核酸混合物を捕捉した後、塩勾配溶出緩衝液中に順次溶出させている。
【0010】
Allerson et al.は2003年に当時の親和性担体はキャパシティが低く、および/または、安定度が低いために、アフィニティーリガンドとして核酸を使用したクロマトグラフィにおいて工業的スケールで蛋白精製に使用できないことを嘆いている (非特許文献7)。この著者は公知のカップリング方法では最大でもほんの少量のナノモルのRNAしか固定できないことを記載している。Goss et al.の方法に類似したAllerson et al. (非特許文献7)の方法ではIRP1またはIRP2調節タンパクに対する核酸アプタマーをNHS-予備活性化したアガロース担体上にカップリングする試みが記載されている。Allerson et al.はこのカップリング方法を「アガロース担体メーカの推薦」としており、カップリング反応はpH8.3で実行される。このメーカ推薦方法は今日ではpH6〜9でNHS-予備活性化された担体上にリガンドをカップリングしている(例えばthe NHS-activated SepHarose 4 Fast Flowに関するGE Healthcareの文書No. 71-5000-14 AC を参照)。Allerson et al.自身は第一アミン基を有するRNAアプタマーをNHS-予備活性化した担体とカップリングする反応のカップリング収率はカップリング反応時間または使用した緩衝液とは無関係に非常に低く、約2%であることに気がついているが、この欠点を克服する方法は記載がない。Allerson et al.(上記2003)は、最終的にはこのグラフト技術から離れて、(i) 担体にアルキル・チオール基を導入し、(ii) Sulfo-SIAB二官能剤を用いてアプタの5'位置に5'-ヨウドアセタミド基を導入し、(iii) 担体のチオール基とアプタマーのヨードアセタミド基との間で実際のカップリングを行ってチオール結合を作る段階から成る多段グラフト方法を勧めている。同様な方法で、Ruta et al. (非特許文献8)はNHS-活性化されたシリカ担体上にD-アデノシンに対するDNAアプタマーをグラフトして得られる安定期はD-アデノシンに対して非常に低い結合能を有することを示した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Romig et al. (J.Chromatogra. B Biomed Sci Appl, 1999, 731(2):275-84)
【非特許文献2】Madru et al., 2009, Anal.Chem., Vol. 81: 7081-7086)
【非特許文献3】Caputi et al., 1999, The EMBO Journal, Vol. 18(14): 4060-4067
【非特許文献4】Rehder et al., ElectropHoresis, Vol. 22(17): 37597
【非特許文献5】Goss et al., 1990, J Chromatogr, Vol. 508: 279-287;
【非特許文献6】Larson et al., 1992, Nucleic Acids research, Vol. 20(13): 3525,
【非特許文献7】Allerson et al., 2003, RNA, Vol. 9: 364-374
【非特許文献8】Anal. Bioanal.Chem., Vol. 390:1051-1057,2008,
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、親和性担体、特に医学的に重要な物質の工業的スケールでの精製に適した特定の親和性担体を製造する新しい方法に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、表面上に活性化したカルボン酸基を有する固体担体上にグラフトすることによって少なくとも一つの反応性アミン基を有する核酸を固定する方法に関するもので、本発明方法ではpH6以下で上記の活性化された固体担体に上記核酸をカップリングする段階を有する。
【0014】
本発明の別の定義では、本発明は下記の(a)〜(c)の段階から成る、少なくとも一種の第一アミン基を有する核酸リガンドを固体担体上に固定する方法に関するものである:
(a) 表面に活性化されたカルボン酸基を有する固体担体を用意し、
(b) 少なくとも一種の第一アミン基を有する核酸リガンドを用意し、
(c) 上記記載核酸を上記固体担体の表面上に存在する活性化されたカルボン酸基とpH6以下の条件下にカップリングする、
ただし、段階(a)と(b)の順番はどちらでもよい。
【0015】
本発明の一つの好ましい実施例では、活性化されたカルボン酸基はN-ヒドロキシスシニイミドまたはその誘導体との反応で得られる。
【0016】
本発明をさらに上記固定化方法を実行することから成る親和性担体の製造方法にも関するものである。
本発明の他の対象は、上記定義の製造方法によって得られる固体の親和性担体と、標的タンパクを精製または検出する方法でのその使用にある。
本発明のさらに他の対象は、核酸リガンドと標的分子との相互作用で得られる複合体にある。この複合体は上記定義のように上記固体担体の表面上で形成される。
【0017】
本発明はさらに、下記(a)と(b) の段階から成る上記親和性担体を用いた標的分子の精製方法にも関するものである:
(a) 重要な標的分子を含む精製すべき組成物を上記親和性担体と接触させて、(i)親和性担体にグラフトした核酸リガンドと(ii)上記標的分子との間に複合体を形成し、
(b) 段階(a)で作った複合体から標的分子を開放して、精製された複合体分子を回収する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】は抗FVIIDNAアプタマーが予めグラフトされた本発明の固体担体上に100μgの遺伝子導入ヒト因子 VIIを含む組成物を通して得られるクロマトグラフ・プロフィルで、ピークNo.1は親和性担体に保持されないヒトFVIIの画分に対応し、ピークNo.2は溶出画分に含まれるヒトFVIIに対応し、ピークNo.3は再生溶出剤に含まれるヒトFVIIに対応する。x軸は分で表した時間を表し、y軸は280ナノメータの波長での光学濃度単位で表した吸光度である。
図2】は抗FVIIDNAアプタマーが予めグラフトされた本発明の固体担体上に200μgの遺伝子導入ヒト因子 VIIを含む組成物を通して得られるクロマトグラフ・プロフィルで、ピークNo.2は溶出画分に含まれるヒトFVIIに対応し、ピークNo.3は再生液中に含まれるヒトFVIIに対応する。x軸は分で表した時間であり、y軸は280ナノメートルの波長での光学濃度単位で表した吸光度である。
【0019】
図3】は抗FVIIDNAアプタマーが予めグラフトされた本発明の固体担体上に1000μgの遺伝子導入ヒト因子 VIIを含む組成物を通して得られるクロマトグラフ・プロフィルで、ピークNo.2は溶出画分に含まれるヒトFVIIに対応し、ピークNo.3は再生液中に含まれるヒトFVIIに対応する。x軸は分で表した時間であり、y軸は280ナノメートルの波長での光学濃度単位で表した吸光度である。
図4】は抗FVIIDNAアプタマーが予めグラフトされた本発明の固体担体上に200μgの遺伝子導入ヒト因子 VIIを含む組成物を通して得られるクロマトグラフ・プロフィルで、固体担体は予め0.5MのNaOHを含む溶液で殺菌処理した。ピークNo.2は溶出画分に含まれるヒトFVIIに対応し、ピークNo.3は再生液中に含まれるヒトFVIIに対応する。x軸は分で表した時間であり、y軸は280ナノメートルの波長での光学濃度単位で表した吸光度である。
図5】は抗FVIIDNAアプタマーが予めグラフトされた本発明の固体担体上に1000μgの遺伝子導入ヒト因子 VIIを含む組成物を通して得られるクロマトグラフ・プロフィルで、固体担体は予め0.5MのNaOHを含む溶液で殺菌処理した。ピークNo.2は溶出画分に含まれるヒトFVIIに対応し、ピークNo.3は再生液中に含まれるヒトFVIIに対応する。x軸は分で表した時間であり、y軸は280ナノメートルの波長での光学濃度単位で表した吸光度である。
【0020】
図6】は抗FVIIDNAアプタマーを48h、5℃、pH 4.2のカップリング条件下に予めグラフトした本発明の固体担体上に2.7mgの遺伝子導入ヒト因子 VIIを含む組成物を通して得られるクロマトグラフ・プロフィルで、ピークNo.1(約45分)はヒト第VII因子の注入時を示し、ピークNo.2(約70分)は溶出画分に含まれるヒトFVIIに対応する。x軸は分で表した時間であり、y軸は280ナノメートルの波長での光学濃度単位で表した吸光度である。
図7】は抗FVIIDNAアプタマーを48h、5℃、pH 3.8のカップリング条件下に予めグラフトした本発明の固体担体上に2.7mgの遺伝子導入ヒト因子 VIIを含む組成物を通して得られるクロマトグラフ・プロフィルで、ピークNo.1(約35分)はヒト第VII因子の注入時を示し、ピークNo.2(約70分)は溶出画分に含まれるヒトFVIIに対応する。x軸は分で表した時間であり、y軸は280ナノメートルの波長での光学濃度単位で表した吸光度である。
【0021】
図8】は抗FVIIDNAアプタマーを2h、5℃、pH 4.2のカップリング条件下に予めグラフトした本発明の固体担体上に2.7mgの遺伝子導入ヒト因子 VIIを含む組成物を通して得られるクロマトグラフ・プロフィルで、ピークNo.1(約35分)はヒト第VII因子の注入時を示し、ピークNo.2(約70分)は溶出画分に含まれるヒトFVIIに対応する。x軸は分で表した時間であり、y軸は280ナノメートルの波長での光学濃度単位で表した吸光度である。
図9】は抗FVIIDNAアプタマーを1h、RT(室温)、pH 4.2のカップリング条件下に予めグラフトした本発明の固体担体上に2.7mgの遺伝子導入ヒト因子 VIIを含む組成物を通して得られるクロマトグラフ・プロフィルで、ピークNo.1(約40分)はヒト第VII因子の注入時を示し、ピークNo.2(約70分)は溶出画分に含まれるヒトFVIIに対応する。x軸は分で表した時間であり、y軸は280ナノメートルの波長での光学濃度単位で表した吸光度である。
【0022】
本発明は、固定された核酸を有する新規な親和性担体と、の製造方法とを提供する。
本発明の第1の対象は、活性化したカルボン酸基を有する固体担体上に少なくとも一つの反応性アミン基を有する核酸を固定する方法にある。
【0023】
本発明で「核酸」または「核酸リガンド」という用語は5〜10000ヌクレオチド長を有し、好ましくは5〜1000ヌクレオチド長、より好ましくは5〜120ヌクレオチド長のヌクレオチドまたはポリヌクレオチドすなわちリボヌクレオチドおよび/またはデオキシリボヌクレオチドのポリマーから成る化合物を意味し、必要に応じて化学的に変成されていてもよい。核酸は一般に必要に応じて化学的に変成されていてもよいポリリボヌクレオチド(RNA)およびポリデオキシリボヌクレオチド(DNA)を含む。
【0024】
ヌクレオチドは(i)(モノ-、ジ-またはトリ-)リン酸基またはその類似体と、(ii) リボースおよびデオキシリボースから選択される糖およびその化学的類似体と、(iii) アデニン、グアニン、チミン、シトシンおよびウラシルから選択される窒素塩基およびその化学的類似体とから成る。本発明のヌクレオチドはそのモノサッカライド部分および窒素塩基を当業者に周知の方法で修飾できる。例としては特許文献1に記載の一つ以上のヌクレオチドを化学的に修飾したアプタマーを挙げることができる。
【特許文献1】米国特許第5 958 691号明細書
【0025】
他の実施例では、核酸はヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのポリマーから成る。
【0026】
本発明の他の実施例では、核酸は基本的にヌクレオチドのポリマーから成り、非ヌクレオチド部分を含み、この非ヌクレオチド部分はヌクレオチド部分の長さと比較してそれより短い長さを有し、例えばその直鎖の長さは5つのヌクレオチドのチェーン、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドが占める長さ以下であるのが好ましい。
【0027】
本発明では、核酸が溶剤に接近でき、他の分子によって適当な反応基と結合反応できるアミン基を有する時に核酸は反応性アミン基を有する。この反応性アミン基は特に第一アミンを含む。この第一アミンはヌクレオチドのプリンまたはピリミジン環の芳香族アミンとは別である。
【0028】
この核酸は周知で、担体またはラベル物質への化学的カップリングのために使用されており、従来は、核酸は3'末端または5'末端にアミンを加えて機能を変えた核酸である。最も一般的には核酸の5'末端にアミン基を加える。この移入はポリヌクレオチド合成方法の最終段階として容易に実施できる。所定実施例では、反応性アミンと核酸の3'末端または5'末端とはスペーサ鎖によって分離されている。
【0029】
本発明では、核酸が3'末端または5'末端に反応性アミン基を有している。これは反応性アミン基が核酸のヌクレオチド部分に連結されていることを意味する。
【0030】
本発明の他の実施例では、核酸が3'末端または5'末端の「側部に」反応性アミン基を有することができる。これはそのアミン基が核酸のヌクレオチド部に直接に結合しておらず、核酸の非ヌクレオチド部分、例えば核酸のヌクレオチド部分の上記端部と反応性アミン基との間に挿入された非ヌクレオチドスペーサ鎖に共有結合で結合されていることを意味する。
【0031】
要約すると、本発明で「核酸」または「核酸リガンド」とは下記を意味する:
(1)必要に応じて化学的に変成されていてもよい一連のリボヌクレオチドおよび/またはデオキシリボヌクレオチドから成るポリヌクレオチド、
(2)任意成分の非ヌクレオチド部分、好ましくはスペーサ鎖。
【0032】
核酸リガンドまたは核酸は反応性アミン基を有し、それはポリヌクレオチドの3'末端または5'末端のまたは必要に応じてスペーサ鎖に取り付けられる反応性アミン基にすることができる。
一般に、ポリヌクレオチドは少なくとも3'末端または5'末端が変成されたヌクレオチドで、反応性アミン基を直接導入するか、非ヌクレオチド部、特にスペーサ鎖を介して導入する。
【0033】
核酸は上記の化学種の他に例えば蛍光団または発色団をさらに含むことができる。
【0034】
一般に、本発明の核酸はリガンド、すなわち一つ以上の標的分子に結合できるものである。本明細書で「核酸リガンド」および「核酸」という用語は区別なしに使用される。標的分子にはRNA分子、DNA分子、有機または無機の分子、ペプチドおよび蛋白質類が含まれる、ヒト、動物、植物、ウイルス、細菌性のいずれかである。
【0035】
本発明者は、核酸(または核酸リガンド)を固定できる親和性担体を製造することができ、その親和性担体は標的物質を選択的に保持でき、優れたキャパシティを有し、再生処理に対して優れた抵抗性を有するので、治療上重要な物質の精製に使用でき、精製された調整物には潜在的に有毒な物や免疫原物質を含まないので、その使用にはリスクがない。
【0036】
より詳しくは、本発明の核酸をベースにした親和性担体は、高いグラフト収率が得られ且つグラフトされた核酸の構造は機能の一体性を維持することができるグラフト条件下に、活性化されたカルボン酸基を有する固体担体上に核酸を化学的にグラフトして調製できる。
【0037】
上記Goss et al.達(1990)の記載とは逆に、担体上に蛋白を移すために一般的に使用されているNHS-予備活性化した担体上に反応性アミン基を有するリガンドを連結する方法では、核酸のグラフト基を担体上へ直接移すことができない、ということを本発明者は見出した。
【0038】
本発明の実施例の結果は、特に核酸をpH6〜9でカップリングを実行する従来の方法では、グラフト収率は0%から最大で10%しか得られないということを示している。このことは、最終的には別のカップリング方法を選択した上記Allerson et al (2003)で得られた結果でも確認した。
【0039】
公知方法に代わる方法を見つけることを目的にして、本発明者は一価または二価イオンの供与源、例えば、Mg2+、Ca2+および/またはNa+イオンを加えることによって、核酸によって生じるアニオン性の電荷をマスクして、NHS-活性化された担体上にカップリングするため条件をテストした。実施例の結果から、一価または二価のカチオンを加えることで核酸によって生じるアニオン性電荷を中和し、および/または、イオン強度を増加させることで0%〜10%の範囲内に止まっていたグラフト収率を上げることが可能になった。また、イオン化した高分子、例えばPolybrene(登録商標)の添加で核酸によって生じたアニオン性電荷が中和して、核酸をグラフトできるということも見出した。
【0040】
同様に、本発明は反応性アミンとポリヌクレオチドの5'端がスペーサ鎖によって互いに分離された場合の核酸を使用したカップリング効率をテストした。スペーサ鎖は少なくとも一つの第三アミン基を有するポリアミドから成る。実施例に示していない結果は、NHS-予備活性化した担体で100%に近い優れたグラフト収率が得られることを示した。また、約9-10のアルカリ性pHでグラフト担体を溶液と接触させると、スペーサ鎖の構造が変化し、担体から核酸が離れてしまうということも本発明者は確認した。従って、このカップリング技術はカップリング収率には優れているが、一般に強い洗浄および/または微生物不活化段階を親和性担体に行う必要のある工業的精製方法には不適当であることかわかる。
【0041】
本発明が最後的に開発した技術的解決策は、pH6以下の条件下でN-ヒドロキシスシニイミド-予備活性化した担体上で核酸のカップリング反応を実行することに本質がある。
【0042】
一般に、当業者は、酸性pHではカップリング反応は全く起こらないか、起こったとしても、第一アミンの反応性は弱く、また、一般に酸性pHで観測されるように核酸の加水分解による劣化があるので、グラフト収率は極めて低くなると考えるので、本発明の技術的解決策は全く驚くべきものである。
【0043】
しかし、本発明実施例では、pHが5以下という条件下に、NHS-予備活性化した担体に核酸をカップリングする段階を実行することで少なくとも70%のグラフト収率を有するグラフト担体を得ることができる。カップリング反応をpH4.5以下で実行したときにはグラフト収率はほぼ100%になる。
【0044】
さらに驚くことに、核酸は高い酸性pH条件に対してセンシティビティで知るということは当業者に周知であるが、酸性pHでカップリング段階を実行しても核酸の機能の一体性に影響はないということも分かった。
【0045】
さらに驚くことは、固体担体と核酸との間にアミド結合を作るカップリング反応は極めて迅速に進行し、反応は反応温度とは無関係に一般に1時間以内に終わるということも見出した。また、低温で反応を実行することもグラフトされたリガンドの機能の一体性を維持するための前提条件ではないということも本発明者は見出した。換言すれば、本発明の核酸リガンドの固定方法は低温または室温で実行できるということも本発明者は見出した。
【0046】
担体にグラフトした核酸はその官能性に変化はなく、その化学的および物理的一体性を維持できるということも分かった。このことは実施例でヒト因子 VII(hFVII)に結合可能な核酸アプタマーをグラフトした担体で証明された。すなわち、NHS-予備活性化した担体上に低温または室温で酸性pH条件下にグラフトした抗-hFVII核酸アプタマーの能力は変化しないということが示された。本発明者はさらに、ガンマ カルボキシレート化 Glaドメインを有する活性ヒト因子 VII型に選択的に結合できる核酸アプタマーをグラフトに使用した場合、グラフトされたアプタマーは(i) 正しくガンマ カルボキシレート化したGlaドメインを有するヒト因子 VIIの活性型と(ii) ヒト因子 VIIの非活性型との間を区別する非グラフト化アプタマーの能力を保持するということを本発明者は見出した。
【0047】
本明細書に記載の特定カップリング条件は任意タイプの核酸すなわちDNA核酸およびRNA核酸に適していることもわかっている。
【0048】
さらに、本発明実施例から本発明方法はグラフトされた核酸を高密度に有する親和性担体を製造でき、従って、工業的スケールで使える標的リガンドの捕捉能力が高い親和性担体を製造することができる。出願人が知る限り、このような担体は従来技術には記載がない。
【0049】
本発明方法で得られる親和性担体は標的リガンドに関する高い選択性と標的リガンドを捕らえる能力が高いという特性を合わせ持つので工業的スケールで標的リガンドを精製する段階で使用するのに適している。また、本発明方法は標的分子を検出するための親和性担体を製造することができるということは言うまでもない。
【0050】
より詳しくは、本発明の対象は、表面上に活性化したカルボン酸基を有する固体担体上にグラフトすることによって、少なくとも一つの反応性アミン基を有する核酸を固定する方法であって、上記の活性化された固体担体に上記核酸をpH6以下で共有結合性のカップリング(covalent coupling)をする段階を有する方法である。
【0051】
他の定義では、固体担体上に少なくとも一つの反応性アミン基を有する核酸リガンドを固定するための本発明方法は下記工程から成る:
(a) 表面に活性化されたカルボン酸基を有する固体担体を用意し、
(b) 少なくとも一種の第一アミン基を有する核酸リガンドを用意し、
(c) 上記記載核酸を上記固体担体の表面上に存在する活性化されたカルボン酸基とpH6以下の条件下にカップリングする、
ただし、段階(a)と(b)の順番はどちらでもよい。
【0052】
カップリング段階(c)では固体担体と核酸リガンドとの間にアミド結合が生成でき、担体の活性化されたカルボン酸基と核酸リガンド中に存在する第一アミン基との間の反応で各アミド結合が生じるということは言うまでもない。
【0053】
本発明のpH6以下でのカップリング条件とはpH5.5以下、pH5以下、pH4.9以下、pH4.8以下、pH4.7以下、pH4.6以下、pH4.5以下、pH4.3以下でのカップリング条件を含む。
【0054】
本発明実施例では、カップリング段階のpHは3〜6の範囲を含み、従ってpH3.0、pH3.1、pH3.2、pH3.3、pH3.4、pH3.5、pH3.6、pH3.7、pH3.8、pH3.9、pH4.0、pH4.1、pH4.2、pH4.3、pH4.4、pH4.5、pH4.6、pH4.7、pH4.8、pH4.9、pH5.0、pH5.1、pH5.2、pH5.3、pH5.4、pH5.5、pH5.6、pH5.7、pH5.8およびpH5を含む。
【0055】
カップリング段階のpHは4.5以下であるのが好ましい。本発明の実施例では、カップリング反応のpHは3.5〜4.5の範囲に含まれる。
実施例が示すように、カップリング段階は約4.2のpHで実施できる。
【0056】
カップリングはpH6以下の水溶性緩衝媒体の存在下で実行するのが好ましい。緩衝媒体は、カップリング反応時に使用する弱酸および弱塩基が反応しない限り、任意タイプの弱酸および/または塩基から調製できる。例としては酢酸ナトリウムの水溶液を挙げることができる。
【0057】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、本発明者はカップリング反応で使う酸性pH条件下ではグラフトされる核酸は直鎖の形をし、従って、反応性アミン基の溶剤への接触が促進され、反応性アミンと固体担体表面でアクセス可能な活性化されたカルボン酸基との反応が促進されると考える。
【0058】
「活性化されたカルボン酸基」または「活性化しカルボン酸官能基」という用語は求核基と化学反応可能な「カルボン酸」官能基から誘導される化学的官能基を意味する。より詳しくは、「活性化したカルボン酸基」という用語は第一アミンと化学反応してアミド結合を形成できる「カルボン酸」から誘導される化学基を意味する。「活性化したカルボン酸」官能基は当業者に周知のもので、酸クロリド、混合無水物およびエステル基を含む。
【0059】
本発明実施例では、活性化されたカルボン酸基はカルボン酸基と1- ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、HOAtおよびN−ヒドロキシスクシンイミドまたはその誘導体から成る群の中から選択される化合物との反応で得られるエステルの形である。
【0060】
本発明の一つの好ましい実施例では、担体のカルボン酸基はN-ヒドロキシスクシンイミドまたはその誘導体、例えばN-ヒドロキシスルホスクシンイミドとの反応によって活性化できる。
【0061】
これは固体担体の「活性化したカルボン酸」基は「N-スクシンイミジル・エステル」基または下記の式(I)の「スクシンイミジル・エステル」基または「N- ヒドロキシスクシンイミド・エステル」基とよばれる基に対応することを意味する。ここで、Rはエステル基が付いた固体担体の分枝を表す:
【0062】
【0063】
NHSまたはスルホ−NHSでの賦活は第一アミンと反応する活性化されたエステルを作るという利点を有し、さらに得られた予備活性化された担体が包装および貯蔵時に十分に安定であるという利点もある。
【0064】
「活性化したカルボン酸」基を含む固体担体は従来技術で周知のもので、その多くは市販されている。また、この固体担体は当業者に周知の方法で調製できる。例えば、最初に表面にカルボン酸基を有する担体にカルボン酸基を賦活させる適切な試薬を反応させてアミド結合を作る。ペプチド合成で使われるカルボン酸基を活性化させる従来方法、特に固体プロセスが参照できる。あるいは、例えば本発明が推薦するカップリング条件下で当業者に周知のEDC(1- エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩とNHSとを組み合わせた賦活方法を用いることができる。
【0065】
「活性化したカルボン酸」官能基を有する固体担体は任意タイプのものにすることができる。この担体には表面のカルボン酸基を活性化する処理がされたシリカ、アガロース担体を含むクロマトグラフィで従来から使用されている担体が含まれる。予備活性化された固体担体はデキストラン、アガロース、澱粉ゲル、繊維素誘導体、合成ポリマー、例えばポリアミド、トリサクリル(trisacryl)、セファクリル(sephacryl)、メタクリレート誘導体、ポリスチレン誘導体、ポリアクリルアミド、さらには活性化されたカルボン酸基を表面上に有する無機担体、例えばシリカ担体(特に多孔質ガラス担体)またはアルミナ担体を含む。一般に、本発明の核酸リガンドが固定される固体担体はフィルター担体、メンブレン等で一般に見られる構造および組成物を有する任意タイプの担体を含む。担体は特に樹脂、アフィニティークロマトグラフィカラム樹脂またはゲル、ポリマービーズ、磁気ビーズ、正磁性ビーズ、フィルターメンブレン担体等を含む。固体担体はさらに、ガラスまたは金属をベースにした材料、例えば鋼、金、銀、アルミニウム、銅、珪素、ガラスまたはセラミック材料を含む。固体担体はさらに、ポリマー材料、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ弗化ビニリデン、ポリアクリルアミド誘導体およびこれらの組合せを含む。
【0066】
固体担体のNHSで活性化されたカルボン酸基の特定実施例では、商用の遊離カルボン酸基を有するゲルを、必要に応じてカルボジイミド、例えば1- エチル-3-(3- ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下で、N-ヒドロキシスシニイミド(NHS)と反応させて固体担体を得ることができる。
【0067】
また、NHS-予備活性化された商用の固体担体、例えばGeneral Electric Healthcare社(米国)から市販の「NHS 活性化セファロース4フアストフロー(NHS Activated SepHarose 4 fast flow (GE)」ゲル、General Electric Healthcare社(米国)から市販の「NHS-活性化HiTrap(登録商標)」ゲルまたはThermo Scientific Pierce社から市販の「NHS-活性化アガロース」ゲルを使用することもできる。
【0068】
上記で説明したように、本発明の核酸リガンドはポリヌクレオチド(すなわちヌクレオチドのポリマー)から成る。核酸リガンドのポリヌクレオチドは標的分子に対してリガンドの特異的結合特性に必要な程度のであり、その長さは一般に5〜120ヌクレオチドである。
【0069】
核酸リガンドはさらに、非ヌクレオチド部分を含むことができる。この非ヌクレオチド部分はポリヌクレオチドに結合されるのが好ましい。「非ヌクレオチド部分」という用語は基本的にポリヌクレオチドから成らない化学単位を意味する。
【0070】
この非ヌクレオチド部分はスペーサ鎖であるのが好ましい。核酸リガンドの反応性アミンはポリヌクレオチドの3'端または5'端に存在する第一アミンであるのが好ましく、場合によっては非ヌクレオチド部分のところに存在する。
【0071】
反応性アミンは脂肪族の第一アミンであるのが好ましく、これはアミン基が芳香族基に直接に結合していないことを意味する。
【0072】
すなわち、本発明の実施例では核酸リガンドは3'端または5'端に少なくとも一つの反応性アミンを有する5〜120ヌクレオチド長からなるポリヌクレオチドである。
【0073】
他の実施例では、核酸リガンドが(i) 5〜120のヌクレオチド長のポリヌクレオチドと(ii) このポリヌクレオチドに結合したスペーサ鎖から成り、反応性アミン基は上記ポリヌクレオチドの3'端または5'端またはスペーサ鎖に結合している。
【0074】
スペーサ鎖は核酸の3'端または5'端に結合しているのが好ましい。
【0075】
本発明の実施例では核酸リガンドがポリヌクレオチドとスペーサ鎖とを有し、スペーサ鎖はその一つの端部にアミン基を有し、その第2端を介してポリヌクレオチドの5'端に結合している。
【0076】
スペーサ鎖の上記の基はポリヌクレオチドを固体担体の表面から物理的に離して、核酸リガンドのヌクレオチド部分の相対移動度を増加させ、立体障害を減らす役目をする。
【0077】
スペーサ鎖は任意タイプにすることができる。本発明方法を実行するためのその例としては、特に、少なくとも3、6、12またはそれ以上(例えば18)メチレン(CH2)(以下C3、C6またはC12という)を有する疎水性鎖、または、ポリエチレングリコール・タイプの親水性鎖、例えばヘキサエチレングリコール(HEG)または11-アミノ-3,6,9-トリオキサウンデカン-1-イル(以下、親水性C11という)または第一アミン基で置換した非特異的オリゴヌクレオチドを挙げることができる。スペーサ鎖は第1アミン基または第2アミン基以外のイオン化可能な基を有しないのが好ましい。一般に、スペーサ鎖はアルカリ性pHまたは酸化または還元反応に敏感な基や結合を含まない。特に、スペーサ鎖はS‐S結合もチオール基も含まない。スペーサ鎖は基本的に炭素-炭素、炭素-酸素および炭素-窒素タイプの結合を含み、スペーサ鎖は少なくとも3、6、12またはそれ以上(例えば18)のメチレン(CH2)(以下、C3、C6、C12という)を有する疎水性鎖またはポリエチレングリコール・タイプの親水性鎖、例えばヘキサエチレングリコール(HEG)またはI1-アミノ-3,6,9-トリオキサウンデカン-1-イル(以下、C11という)または第1アミン基で置換された非特異的オリゴヌクレオチドからなる群の中から選択するのが好ましい。
【0078】
スペーサ鎖は当業者に周知の方法でポリヌクレオチドの化学合成の最終の段階でできる。特定ケースでは、スペーサ鎖は実施例に記載のように、ホスホラミダイト基を有する誘導体を介してポリヌクレオチドの5'端に導入できる。この反応の一般原則は下記文献の図2に記載されている。
【非特許文献9】Greco and Tor, Nature Protocols, 2007, 2, 305-316 entitled "Key steps in solid DNA phospharimidite synthesis cycle"
【0079】
さらに、EDCおよびイミダゾールの存在下にエチレンジアミンのようなジアミンのカップリングでポリヌクレオチドの5'端に第一アミンを導入することもできる(Thermo scientific社出版の技術書番号TR0030.5参照)。下記文献のHermansonの参照マニュアル、特にチャプター27、第970頁を参照できる。
【非特許文献10】Bioconjugate Techniques, 2008, 2nd Edition, Academic Press, San Diego
【0080】
本発明の実施例が示すように、カップリング段階は低温および室温で実行できる。特に、室温で反応を実行しても反応収率は低下しない。同様に、低温、特に5℃の温度で反応を実行しても反応速度は実質的に低下しない。
【0081】
従って、本発明実施例ではカップリング段階は0℃〜50℃の温度で実行される。カップリング段階は0℃〜35℃の温度で実行するのが好ましい。
【0082】
実際には、カップリング反応は室温すなわち15℃〜35℃の温度、好ましくは15℃〜25℃の温度で実行できるが、使用する試薬、特に核酸リガンドが加水分解等に敏感な基を含む場合には、カップリング段階を低温、代表的には0℃〜8℃の温度で実行することもできる。
【0083】
カップリング反応は迅速に進み、一般には、1時間後、さらには2、3分後でも、反応は十分進行している。適切な反応速度モニタリング技術を使用することで当業者は最適反応時間を決定することができる。同じことは反応温度についても言える。
【0084】
一般に、実施例に示すように、カップリング段階はpH3.5〜4.5で、室温で、約1時間で実行できる。
【0085】
もちろん、当業者はカップリング反応条件を、上記条件を基礎として、化学分野の一般的知識を使用して各ケースに適した正確な最適条件を決定することができる。例えば、所定カップリング収率を得るために、反応温度を下げた時にはカップリング段階の継続時間を増加させる必要があるということは当業者が容易に予測できることである。
【0086】
本発明の固定化方法の実施例では、予備活性化した担体/核酸組み立て体をアルカリ性pH条件下に所定時間置くことによってカップリング反応を完了させることができる。
【0087】
この実施例では、本発明方法のカップリング段階は下記の2つの段階から成る:
(cl)上記核酸リガンドを上記固体担体の表面上の活性化されたカルボン酸基とpH6以下の条件下で反応させ、
(c2)上記核酸リガンドを上記固体担体の表面上に存在する活性化されたカルボン酸基にカップリングする反応をpH7.5以上の条件下で続ける。
【0088】
特定の理論に拘束されるものではないが、上記のサブステップ(c2)を実行することで、場合によっては、核酸が担上に固定され、適切なコンフォメーションになると本発明者は考える。しかし、この段階はオプションである。
【0089】
カップリングの最終段階を少なくともpH7.5のアルカリ性pHで実行する。これは少なくともpH8および少なくともpH8.5を含み、実施例では段階(c2)を約pH9で実行する。
【0090】
段階(c2)は室温または低温で実行される。カップリング反応の最終段階での「低温」という用語は15℃以下の温度を意味し、これには14℃、13℃、12℃、11℃、10℃、9℃、8℃、7℃、6℃または5℃以下温度を含む。カップリング段階の最終段階の継続時間は変えることができ、数分から数時間の間にある。一般に段階(c2)の継続時間は9時間以下で、8、7、6、5、4、3、2および1時間以下の継続時間を含む。段階(c2)の継続時間は実施例に示すように約3時間から約8時間である。
【0091】
カップリング段階の最終段階では、上記の条件を基準にして当業者がケースバイケースに応じてpH、温度および継続時間の最適条件を決定することができる。
【0092】
有利な実施例では、カップリング反応後に中和段階(d)またはカップリング段階で反応しなかった活性化されたカルボン酸基をブロックする段階を続けることができる。例えば、未反応の活性化カルボン酸基のブロッキングは実施例に記載のようにメーカが推薦する0.5Mのエタノールアミンと0.5MのNaC1から成るpH 8.3のブロッキング溶液またはpH 8.5のO.1Mトリス-HC1を含むブロッキング溶液と一緒にグラフトされた担体を培養することで実行できる。中和段階またはブロッキング段階の継続時間は低温での少なくとも1時間であるのが有利である。例えば、実施例に記載のように4℃の温度で2時間30分間、実行することができる。
【0093】
本発明方法は、カップリング段階(c) の終わり、および/または、ブロック段階または中和段階(d)のと終わりに、直ちに使用可能な親和性担体を得るための担体を通常の条件下で洗浄する一回以上の洗浄段階(e)を有することができる。一般に、洗浄段階は0.1Mトリス-HC1の緩衝液を用いてpH8〜9で実行するか、または、実施例に示すように、pH4〜5の0.1M酢酸塩、0.5M NaC1緩衝液で実行する。本発明実施例では、洗浄段階は(i) pH8〜9の0.1Mトリス-HC1緩衝液での洗浄と、それに続く(ii) pH4〜5のO.1M酢酸塩、0.5M NaC1緩衝液での洗浄とを順次行う。一般に、実施例3に示すように、洗浄段階は複数回実行する。
【0094】
上記で説明したように、本発明の核酸固定方法は下記工程から成る方法として定義することもできる:
(a) 活性化されたカルボン酸基、好ましくは活性化されたN-ヒドロキシスシニイミドを表面上に有する固体担体を用意し、
(b) 少なくとも一つの第一アミン基を有する核酸を用意し、
(c) 活性化されたカルボン酸基を有する固体担体の表面上でpH6以下の条件下で上記核酸のカップリングを実行し、
(d) カップリング反応をブロックする。
【0095】
本発明の核酸を固定する方法はさらに、下記工程から成る方法として定義することもできる:
(a) 活性化されたカルボン酸基、好ましくは活性化されたN-ヒドロキシスシニイミドを表面上にある固体担体を用意し、
(b) 少なくとも一つの第一アミン基を有する核酸を用意し、
(c)pH6以下の条件下で表面上に活性化されたカルボン酸基を有する上記固体担体と上記核酸とのカップリングを実行し、
(d) カップリング反応をブロックし、
(e) 一回以上の担体の洗浄段階を実行する。
【0096】
既に述べたように、本発明実施例では、段階(c)自体は次の2つの段階から成る:
(c1) pH6以下の条件下で固体担体の表面上に存在する活性化されたカルボン酸基、好ましくは活性化されたN-ヒドロキシスシニイミドと核酸とを反応させ、
(c2) pH7.5以上の条件下で、上記固体担体の表面上に存在する活性化されたカルボン酸基を核酸とカップリングする反応を続ける。
【0097】
本発明の核酸リガンドを固定するための方法は、標的タンパクを含む標的分子の精製または検出を目的とする、親和性担体の生産に直接適用できる。従って、より一般的には、本発明は、上記定義の核酸リガンドを固定するための方法を実行することを含む親和性担体の調製方法に関するものである。すなわち、この本発明の親和性担体の調製方法は下記の工程から成る:
(a) 表面上に活性化されたカルボン酸基を有する固体担体を用意し、
(b) 少なくとも一つの第一アミン基を有する核酸リガンドを用意し、
(c)pH6以下の条件下に上記固体担体の表面上に存在する活性化されたカルボン酸基と上記核酸リガンドとのカップリングを実行する。
段階(a)と(b)の順番はどちらでもよい。
【0098】
上記方法の段階(c)は上記定義の段階(c1)と(c2)とから成ることができる。同様に、上記方法は上記の段階(d)および(e)を含むことができる。
【0099】
実施例に示すように、本発明方法は、特に一種以上の標的分子、特にクロマトグラフィによる精製を目的とする親和性担体の調製に適している。従って、本発明方法の実施例では、固体担体はクロマトグラフィ、濾過または固相抽出方法を実行するのに適した担体である。換言すれば、本発明の固体担体はクロマトグラフィまたは濾過または固相抽出方法の静止相として使用するのに適している。固相抽出での固体親和性担体としての使用では下記文献が参照できる。
【非特許文献11】Madru et al. Analytical Chemistry, 2009, 81, 7081-7086
【0100】
この種の固体担体はシリカゲルおよび多糖ゲル、(例えばアガロースゲル、デキストランゲルおよびその誘導体、アクリルアミドゲルおよびその誘導体、メタクリレート・ゲルおよびその誘導体およびポリスチレン表面およびその誘導体から成る群の中から選択できる。
本発明の固定化方法の一つの特定実施例は、
(i) 表面上に活性化されたカルボン酸基を有する固体担体が、シリカゲル、アガロースゲル、デキストランゲルおよびこれらの誘導体から成る群の中から選択される担体であり、
(ii) 少なくとも一つの反応性アミンを有する核酸リガンドが、5〜120のアミノ酸、オプションとして3'端または5'端にスペーサ鎖を有する、ポリヌクレオチド群の中から選択され、スペーサ鎖は少なくとも3、6、12またはそれ以上(例えば18)のメチレン(CH2)(以下、C3、C6またはC12という)鎖から成る疎水性鎖またはポリエチレングリコールタイプにすることができる親水性鎖、例えばヘキサエチレングリコール(HEG)または11-アミノ-3,6,9-トリオキサウンデカン-1-イル(以下、親水性C11という)または非特異性オリゴヌクレオチドからなる群の中から選択できる。
【0101】
本発明の方法の他の特定実施例では、
(i) 固体担体はアガロースゲルおよびその誘導体から選択され、
(ii) 核酸リガンドは5'端を介してC4−C20ポリエチレングリコールから選択されるスペーサ鎖へ結合された5〜120ヌクレオチドのポリヌクレオチドであり、スペーサ鎖は反応性アミン基を有するのが好ましい。
【0102】
本発明の方法の一つの追加の実施例では、
(i) 固体担体がアガロースゲルおよびその誘導体から選択され、
(ii) 核酸リガンドは5'端を介してC4−C20直鎖アルキルから選択されるスペーサ鎖に結合された5〜120ヌクレオチドのポリヌクレオチドであり、スペーサ鎖は反応性アミン基を有するのが好ましい。
【0103】
実施例が示すように、本発明方法で得られる親和性担体は極めて選択的に標的リガンドを定量的に精製することができる。
【0104】
同様に、本発明方法で得た親和性担体は非常に長期間使用でき、特に、標的リガンドの選択性および定量的保持能を失わずに、多数回の捕捉/洗浄/溶出/洗浄サイクルを繰り返すことができる。さらに、本発明の親和性担体は、厳しい抗細菌、抗菌または抗ウイルス再段階をまたは消毒段階を経た後でも、標的リガンドの選択性および定量的保持能を維持することができということが確認されている。実施例は、本発明の親和性担体の標的タンパクの保持能は最終濃度が0.5MのNaOH溶液での処理、さらには最終濃度1MのNaOH溶液での処理でも失われないことを示している。すなわち、一般に使われている最終濃度より高いNaOH濃度で、しかも、一般に使用されている数分の持続期間よりはるかに長い時間(100時間)の消毒段階の後でも標的タンパクの保持能は失われない。本発明の親和性担体のクロマトグラフ特性は最終濃度が50%(vol/vol)のプロピレングリコール溶液の処理でも損なわれないことも確認されている。
【0105】
本発明実施例の結果は、被精製分子を含む出発材料の生物媒質と一緒に担体を長時間培養した後でも、本発明の親和性担体のクロマトグラフ特性は損なわれないことを示している。
【0106】
本発明の実施例はさらに、本発明の親和性担体のクロマトグラフ特性は多数回のサイクル後でもらないことを示している。
換言すれば、本発明の実施例の結果は、免疫親和性担体を含む公知の親和性担体では一般に有害である条件下で使用しても、本発明の親和性担体は工業的に完全に反復可能な状態で定量的に標的-リガンドの精製段階を実行する能力があることを示している。本発明方法の各段階の技術的特徴は上記で定義し、説明したものである。
【0107】
従って、本発明の親和性担体は、長時間安定な高い信頼性を有する反復可能な精製ツールを構成し、頻繁なメンテナンスを必要としない。こうした多くの技術的利点から、本発明の親和性担体は適当なコストで標的分子の精製方法を実行することができる。
【0108】
本発明実施例には核酸アプタマーのグラフトによる本発明親和性担体の製造方法と、DNAアプタマーのグラフ方法が記載されている。本発明の一つの好ましい実施例では本発明方法の核酸リガンドは核酸アプタマーである。
【0109】
本発明で「核酸アプタマー」または「アプタマー」という用語は一つまたは複数の標的リガンドに特異的に結合したる一重鎖の核酸を意味する。このアプタマーには、接触に核酸および標的リガンドパートナーにそれぞれ接触させる前段階後に、単一の所定標的リガンドまたは種々の所定標的リガンドを有する複合体を検出することができるものが含まれる。アプタマーはRNAアプタマーおよびDNAアプタマーを含む。
【0110】
ここで使用する「アプタマー」という用語は一つまたは複数の標的リガンドに特異的に結合可能な一重鎖DNAまたはRNA核酸分子、例えばタンパクを示す。アプタマーは基本的にハイブリダイゼーションとは異なる機構で標的分子に結合される。アプタマーは一般にループおよびステム構造を有する二次構造で特徴づけられる。換言すれば、アプタマーの活性コンフォメーション(すなわちアプタマーが標的タンパクに結合できるコンフォメーション)は非線形である。
【0111】
アプタマーは一般に5〜120のヌクレオチドから成り、下記文献に記載のような公知方法に従ってインビトロで選択できる:
【非特許文献12】SELEX (Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment
【0112】
アプタマーは多くの利点を有する。アプタマーがそのオリゴヌクレオチド特性のために免疫原性が低く、ストリンジェントな物理化学的条件(尿素、DMSOの存在、極めて強い酸性または極めて強い塩基性pH、有機溶媒の使用または高温)に対する耐久性が高く、アフィニティーリガンドとして使用した時の各種消毒戦略を可能にする。さらに、高い選択性も有する。最後に、アプタマーの生産コストは相対的に低い。
【0113】
本発明実施例では、上記定義の予備活性化した固体担体にグラフトするのに使用する「核酸アプタマー」はその定義から非ヌクレオチド部分またはヌクレオチド分、例えばアプタマーの核酸部分の5'端または3'端の一つに結合した非ヌクレオチドスペーサ鎖および予備活性化した担体のグラフトで使用した反応性アミン基を含むことができる。これらの実施例では、核酸アプタマーは下記式(I)にすることができる
NH2−[SPAC]n−[NUCL] (I)
(ここで、
nは1または0の指数であり、指数0はアプタマーが遊離スペーサ鎖を含まず、指数1はアプタマーがスペーサ鎖を有することを意味する、
NH2はNHS基で予備活性化された固体担体上へグラフするのに使用する反応性アミン基を表し、
[SPAC]はスペーサ鎖を意味し、
[NUCL]は標的分子に特異的に結合する核酸を意味する。この核酸は5〜120のヌクレオチドから成る。
【0114】
核酸[NUCL]は10〜80のヌクレオチド、好ましくは20〜60のヌクレオチドから成るのが好ましい。
【0115】
式(I)の化合物で[SPAC]で表される「スペーサ鎖」は公知の任意タイプのものにすることができ、非ヌクレオチド化合物、オリゴヌクレオチドまたは一つ以上の非クレオチド部分と一つ以上のヌクレオチド部分とを有する化合物にすることができる。一般に、スペーサ鎖は担体への標的リガンドの結合には慣用しない。
【0116】
スペーサ鎖の機能は式(I)の化合物がグラフトされる固体担体の表面から核酸[NUCL]を物理的に隔てて、固体担体表面に対する核酸[NUCL]の相対移動度を可能にすることにある。固体担体とアプタマーの核酸部分との間の近接度が大きいため、スペーサ鎖は核酸とこの核酸と接触する標的リガンド分子との間の結合が阻害する立体障害を制限または防ぐ。
【0117】
式(II)の化合物では、スペーサ鎖が核酸[NUCL]のの5'端または3'端に結合するのが好ましい。
【0118】
スペーサのこの構成は固体担体上にアプタマーを直接固定しないという利点がある。既に述べたように、スペーサ鎖は3、6、12またはそれより長い(例えば18)メチレン(CH2)から成る鎖から成る疎水性鎖(C3、C6、C12)または例えばヘキサエチレングリコールHEGのようなポリエチレングリコールタイプでよい親水性鎖または11- アミノ-3,6,9-トリオキサウンデカン-1-イル(親水性C11)または非特異のオリゴヌクレオチドにするのが好ましい。スペーサ鎖が非特異性オリゴヌクレオチドから成る場合、そのオリゴヌクレオチドは長さが少なくとも5ヌクレオチド、好ましく5〜15ヌクレオチドであるのが有利である。
【0119】
本発明実施例では、スペーサ鎖は複合体でもよくHEGとオリゴヌクレオチド、例えばoligo(dT)とのを有するものにすることができる。
【0120】
NHS-予備活性化担体に3つの別々の抗-FVII核酸アプタマーをグラフトして親和性担体を得る実施例では同様に種類の異なるスペーサ鎖すなわちC6アルキル鎖から成る親水性鎖、C12アルキル鎖から成る疎水性鎖、Cl 1-TFA鎖から成る疎水性鎖を有する。この実施例の結果は、本発明の親和性担体を得る方法は、グラフトすべき重要な核酸の同一性やタイプとは無関係に使用できるということを示している。
【0121】
既に述べたように、本発明方法は、表面に固定される核酸リガンドの密度が高いので、公知の親和性担体と異なる親和性担体を製造することができる。核酸リガンドのこの高密度は親和性担体を得る本発明の特定方法で直接得られる。
【0122】
本発明親和性担体の他の特徴は、グラフトされた核酸が向かう標的分子の保持能が高い点にある。本発明方法では核酸リガンドを高密度に有するアフィニティークロマトグラフィ・ゲルを製造できる。本発明方法で得られるクロマトグラフィ・ゲルの核酸リガンド濃度は0.2μmol/ml〜0.5μmol/mlが観測される。これに対して市販のクロマトグラフィ・ゲルの活性化されたカルボン酸基の初期濃度は一般に5μmol/m1〜25μmol/m1である。従って、本発明のカップリング方法では、固体担体の表面に最初に存在していた活性化されたカルボン酸基の少なくとも0.01%、有利には少なくとも0.1%、より有利には少なくとも1%、さらに有利には活性化されたカルボン酸基の少なくとも2%を本発明の方法で誘導体化することができる。ことと比較して、リガンドとしての抗体を有するアフィニティークロマトグラフィのグラフト度は多くの場合1mg/ml以下すなわち0.06μmol/ml以下で、カルボン酸基の0.2%以下しか官能化されない。
【0123】
活性化されたカルボキシル基の少なくとも0.01%の誘導体化には活性化されたカルボキシル基の少なくとも0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、さらには2%の誘導体化が含まれる。
【0124】
本発明実施例では誘導体化されたカルボキシル基の百分比は最大で100%であり、これには活性化されたカルボキシル基の最大で50%、40%、30%および25%が含まれる。
【0125】
従って、本発明の他の対象は本発明方法によって得られる親和性担体にある。より一般的には、本発明は少なくとも最初にその表面に存在していたカルボン酸基が核酸リガンドで誘導体化され、核酸リガンドがアミド結合を固定された固体の親和性担体に関するものである。
【0126】
担体に核酸リガンドを結合しているアミド結合は担体の表面に最初に存在していたカルボン酸基と、核酸リガンド中に存在する第一アミン基との反応の結果であることは言うまでもない。
【0127】
本発明の一つの好ましい実施例では、固体の親和性担体はクロマトグラフィ・ゲルである。
【0128】
本発明の他の対象は、核酸リガンドがアミド結合を介して固定された固体の親和性担体にあり、この親和性担体は核酸リガンド濃度が少なくとも0.005μmol/ゲル1mlのクロマトグラフィ・ゲルである。これには1m1当たりのゲルに対して少なくとも0.38μmol、少なくとも0.01μmol、少なくとも0.05μmol、少なくとも0.1μmol、少なくとも0.15μmol、少なくとも0.2μmol、少なくとも0.25μmol、少なくとも0.3μmol、少なくとも0.35μmolの場合を含む。
【0129】
本発明の実施例では、核酸リガンド濃度は最大で10μmolである。これには最大で5μmol/ml、最大で1μmol/m1および最大で0.5μmol/m1の場合が含まれる。
【0130】
本発明の親和性担体は固体担体または親和性担体のための上記特性の任意の一つを有することができる。従って、本発明の実施例では、親和性担体はクロマトグラフィ、濾過または固相抽出で使用されるゲルにすることができ、アガロースゲル、デキストランゲル、シリカゲル化およびこれらの誘導体から成る群の中から選択される。
【0131】
実施例に示すように、親和性担体は核酸リガンドを固定可能な高度に架橋したアガロースゲルにすることができる。好ましくは、親和性担体はアフィニティークロマトグラフィ法で使用可能なゲル(換言すれば静止相)である。
本発明の親和性担体はその表面に上記のような任意タイプの核酸リガンドを有することができる。本発明の実施例では、本発明の親和性担体は核酸リガンドが上記式(II)のアプタマーである点に特徴がある。
【0132】
本発明の特定実施例では、本発明の固体親和性担体は下記の式(III)で表すことができる:
【0133】
(ここで、
[SUP]は親和性担体の固体担体を表し、
[SPAC]nおよび[NUCL]は上記定義に対応する。換言すれば、-NH-(SPAC)n-NUCLは核酸アプタマーを表し、
nは0または1に等しい指数であり、
SPACはスペーサ鎖を表し、
NUCLは標的分子に特異的に結合する核酸を表し、核酸は5〜120ヌクレオチドを有する。
【0134】
本発明の他の対象は核酸リガンドと標的分子との間に形成された複合体にある。この複合体は上記定義の固体担体の表面に形成される。この複合体は基本的に標的分子と核酸リガンドとの間の非共役相互作用で得られる。
【0135】
本発明の追加の対象は、上記親和性担体の標的分子の精製または検出での使用にある。標的分子の精製では本発明の担体を濾過、クロマトグラフィまたは固相抽出段階の静止相として使うことができる。
【0136】
本発明はさらに、下記工程から成る上記定義の親和性担体を用いた標的分子の精製方法にある:
(a) 重要な標的分子を含む精製すべき組成物を上記親和性担体と接触させて、(i)親和性担体にグラフトした核酸リガンドと(ii)上記標的分子との間に複合体を形成し、
(b) 段階(a)で作った複合体から標的分子を開放して、精製された標的分子を回収する。
【0137】
本発明の一つの特定実施例では段階(a)の後で、段階(b)の前に行う段階(a')を有する。この段階(a')は洗浄緩衝液で親和性担体を洗浄する段階から成る。
【0138】
また、実施例では段階(a')は疎水性の高い、特にプロピレングリコール濃度の高い洗浄緩衝液を使用することで、親和性担体に対する目標ガンドの結合に検出可能な影響を与えずに、親和性担体に非特異的に結合した物質を除去することができる。
【0139】
段階(a')では、洗浄緩衝液の緩衝液の全体積に対してプロピレングリコールの最終含有量を少なくとも20容積%使用するのが好ましい。
【0140】
本発明で、プロピレングリコールの最終含有量を少なくとも20容積%するとは、洗浄緩衝液のプロピレングリコールの最終含有量が緩衝液の全体積に対し少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%または60容積%の場合を含む。
【0141】
本発明方法の段階(a')で使う洗浄緩衝液のプロピレングリコールの最終含有量は最大で50%であるのが好ましい。本発明方法の段階(a')で使う洗浄緩衝液のプロピレングリコールの最終含有量は20%〜50%、好ましくは30%〜50%であるのが有利である。
【0142】
本発明の一つの特定実施例では段階(a')で使う洗浄緩衝液がNaClとプロピレングリコールの両方を含む。
上記精製方法の実施例ではさらに、ステップ(b)を、親和性担体を二価イオンのキレート剤、好ましくはEDTAを含む溶出緩衝液と接触させて実行する。この溶出緩衝液は例えば最終濃度が少なくとも1mMで最大で30mMのEDTAを含むことができる。「少なくとも1mM」には少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9を10mMが含まれ、「最大で30mM」には最大で29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12または11mMが少なくとも組まれる。
【0143】
緩衝液はNaC1とプロピレングリコールとの混合液から成るのが有利であり、これは洗浄段階で記載したものと同じタイプにすることができ、親和性担体の再生に使用できる。
【0144】
本発明の目的および上記の各種対象で「標的分子」または「標的物質」または「標的リガンド」という用語はアプタマーに特異的に結合できる分子を表し、核酸、タンパク、有機または無機の物質にすることができる。タンパクは任意タイプにでき、特に血漿タンパクにすることができる。
【0145】
本発明で「血漿タンパク」という用語は血漿に含まれる任意のタンパク、特に工業的または治療上重要な任意のタンパクを意味する。血液血漿タンパクは抗体、アルブミン、α-マクログロブリン、アンチキモトリプシン(antichymotrypsin)、アンチトロンビン、抗トリプシン、Apo A、Apo B、Apo℃、Apo D、Apo E、Apo F、Apo G、β-XIIa、Cl-インヒビター、C−反応性タンパク、C7、Clr、C1s、C2、C3、C4、C4bP、C5、C6、Clq、C8、C9、カルボキシペプチダーゼN、セルロプラスミン、ファクターB、ファクターD、因子H、因子I、因子IX、因子V、因子VII、因子VIIa、因子VIII、因子X、因子XI、因子XII、因子XIII、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、ヘパリン補因子II、ヒスチンリッチGP、免疫グロブリンA、免疫グロブリンD、免疫グロブリンE、免疫グロブリンG、ITI、免疫グロブリンM、キニナーゼII、HMWキニノーゲン、リソチーム、PAI 2、PAI1、PCI、プラスミン、プラスミンインヒビター、プラスミノーゲン、プレアルブミン、プロカリクレイン、プロパージン、プロテアーゼネキシンNH、プロテインC、蛋白S、蛋白Z、プロトロンビン、TFPI、チオールプロテイナーゼ、トロンボモジュリン、組織因子(TF)、TPA、トランスコバラミンII、トランスコルチン、トランスフェリン、ビトロネクチンおよびフォンビルブラント因子を含む。
【0146】
特に、血漿タンパクには凝結タンパクすなわちカスケード反応の連鎖を含む血餅発生の原因とする血漿タンパクを含む。凝結蛋白は因子I(フィブリノーゲン)、因子 II(プロトロンビン)、因子V(プロアクセレリン)、因子VII(プロコンバーチン)、因子 VIII(抗血友病性因子 A)、因子 IX(抗血友病ファクターB)、因子 X(スチュアート因子)、第XI因子(ローゼンソール因子またはPTA)、因子 XII(Hageman 因子)、因子 XIII(フィブリナーゼまたはFSF)、PK(カリクレイン前駆体)、HMWK(高分子キニノーゲン)、組織トロンボプラスチン、ヘパリン補因子II(HCII)、プロテインC(PC)、トロンボモジュリン(TM)、蛋白S(PS)、フォンビルブラント因子(vWF)および組織因子経路インヒビター(TFPI)、その他の組織因子が含まれる。
【0147】
本発明実施例では、血漿タンパクは酵素活性を有する凝結蛋白を含む。この酵素活性を有する凝結タンパクは因子II(プロトロンビン)、因子VII(プロコンバーチン)、因子IX(抗血友病ファクターB)、因子 X(スチュアート因子)、因子XI(ローゼンソール因子またはPTA)、因子 XII(Hageman 因子)、因子 XIII(フィブリナーゼまたはFSF)およびPK(カリクレイン前駆体)を含む。
【0148】
本発明の好ましい実施例では、血漿タンパクは天然型または組換え型ヒト血漿タンパクを含む。本発明の好ましい実施例では血漿タンパクは天然型または組換え型ヒト因子 VIIである。
【0149】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0150】
実施例1
親和性担体の入手
(1)グラフト用緩衝液:100mM酢酸ナトリウム、pH=4.2
(2)1595μlのアプタマーをグラフト緩衝液中に2.5グラム/リットルで調整する(すなわち4mgのアプタマー)。
(3)グラフト化には下記を使用した:
(a) 第1の親和性担体を調製するためのアプタマーは5'端に親水性C11(11-アミノ-369-トリオキサウンデカン-l-イル)鎖を有する配列SEQ No.1のMapt 2CSポリヌクレオチドから成る、
(b) 第2の親和性担体を調製するためアプタマーは配列SEQ ID No.2の「Mapt 1.2」ポリヌクレオチドから成り、その5'端は12メチレン(CH2)から成るスペーサ鎖(C12スペーサ)に結合し、その3'端はoligo-dTに結合。
(c) 第3の親和性担体を調製するためアプタマーは配列SEQ ID No.1の「Mapt 2CS」ポリヌクレオチドから成り、その5'端は6メチレン(CH2)から成るスペーサ鎖(C6スペーサ)に結合。
(4)1mMのHC1で洗浄し、次いでグラフト緩衝液で洗浄して、NHS-活性化されたカルボン酸基を有する1mlのゲル、すなわち「NHS 活性化セファロース4ファストフロー(NHS Activated SepHarose 4 fast flow (GE)」予備活性化ゲルを調整。
(5)緩衝溶液中のアプタマーのpHが4.2であることを確認した。
(6)得られたアプタマー調整品を1mlの上記予備活性化ゲルと混合した。アプタマーの存在下で予備活性化ゲルを4℃で48時間(+/-2H)、攪拌しながら培養した。
(7)200mMのボレート緩衝液(pH=9)の反応容積(797μ1)の半分を加え、攪拌下に混合溶液を4℃で8時間攪拌培養した。
(8)上澄みを回収し、未グラフトアプタマーの量を分析した。
(9)カップリング反応をブロックするために2mlの0.1Mトリス-HC1(pH=8.5)を加え、4℃で2時間30分、攪拌する。
(10)1)1mlの0.1M トリス-HC1、pH = 8.5、2)1ml の0.1M酢酸ナトリウム、0.5M NaCl、pH = 4.0から成る3サイクルの添加/攪拌/上澄み除去を行って、直ちに使用可能な親和性担体を得る。
【0151】
上記の「NHS 活性化セファロース4ファストフロー(NHS Activated SepHarose 4 fast flow (GE)」ゲルは表面にNHS-活性化されたカルボン酸基を有する架橋したアガロースゲルでしる。カルボン酸基は6-アミノヘキサン酸をゲル表面にグラフトして導入される。この予備活性化アガロースゲルは下記文献に記載されている。
【非特許文献10】technical instruction manual No. 71-5000-14 AD dated March 2011 and published by GE Healthcare
【0152】
「NHS 活性化セファロース4ファストフロー(NHS Activated SepHarose 4 fast flow (GE)」ゲルの活性化されたカルボン酸基濃度は16〜23μmol/ゲル1m1である。
【0153】
カップリング反応の終わりに得られた結果は、反応媒体の上澄みは検出可能な量の核酸アプタマーを含まないこと、すなわち、使用条件下でアプタマーの量は0.08mg/ml以下であることを明らかに示している。この結果からグラフト収率は100%であるか、ほぼ100%であると言える。
【0154】
実施例2
遺伝子導入ウサギのミルクで生産した組換え型ヒト因子 VIIを精製するための親和性担体の使用
(1)ゲル:1ml、実施例1で説明したように、XK-l6カラム(GE)に4mg/mlで充填して調整したMapt 2CS-PEG(C11)をグラフト。
(2)遺伝子導入ウサギのミルク(FVII-TG):100または200または1000μgのFVII-TGで製造した精製した組換え型ヒト因子 FVIIの組成物の注入、
注入に使用するFVII-TG組成物は35〜40mMのNaC1と、3.2〜4mMのMgCl2となるように、調整物中に最初に含まれるシトラートをCaC12で中和し、調整物緩衝液で変成した。
(3)クロマトグラフィで使用する緩衝液:50mMトリス/50mM NaC1/10mMCaC12/4mM MgC12
(4)流速:0.5ml/分
(5)溶出緩衝液:50mMトリス、10mM EDTA、pH = 7.4
(6)洗浄または再生用緩衝液:1M NaC1/50%プロピレングリコール
(7)各テストで使用した殺菌溶液:0.1または0.5M NaOH(1m1)+1M NaCl/50%プロピレングリコール(2×1ml)。
結果は[図1]〜[図5]に示す。
【0155】
図1]および[図2]は、出発組成物に含まれるVII因子の量とは無関係に、被精製組成物が親和性担体を通った瞬間にほとんど全てのヒト第VII因子が親和性担体に保持されることを示している。被精製因子VIIの2つの量(100μgおよび200μg)で、出発組成物中に含まれるVII因子の10%以下が親和性担体に保持されないと見積られる。[図1]および[図2]はさらに、狭い溶出ピークを示し、それは本発明の親和性担体が優れたクロマトグラフ性状を示している。
【0156】
図3]は1mgのヒト因子 VIIを含む出発組成物で得られたクロマトグラフプロフィルを示す。[図3]のクロマトグラフ・プロフィルは[図1][図2]に示すものと非常に似ている。このことは本発明の親和性担体の標的リガンドの保持に対する非常に高いキャパシティを示している。
【0157】
図4]および[図5]は、0.5M NaOHと50%のプロピレングリコールの混合液から成る消毒溶液でドラスチックな消毒処理する段階を含む、実施例1に記載の方法で調整した親和性担体上で200μg(図4)および1000μg(図5)の量のヒト因子 VIIを精製して得られるクロマトグラフ・プロフィルを示す。得られたクロマトグラフ・プロフィルは本発明の親和性担体のキャパシティが有害な消毒処理に耐えることを示している。
【0158】
遺伝子導入ヒト因子 VIIに一連の精製、洗浄および消毒段階を実行しても同じクロマトグラフ・プロフィルが得られることが確認されている。これは本発明の親和性担体の安定度が優れていることを示し、それは重要な標的リガンドを多数反復して精製できることを意味する。
【0159】
実施例3
使用したアプタマーの量を関数とする親和性担体のグラフト収率と、得られた親和性担体の積載能(積載能)
グラフト収率に対するアプタマーの量の影響と親和性担体の積載能(積載能、loading capacity)をMapt 2CS-(親水性C11)およびMapt 2.2CS-(親水性C11)アプタマーで調べた。使用したグラフト・プロトコルは実施例1に記載のものと同じである。Mapt 2.2CS-(親水性C11)アプタマーは配列SEQ ID No.3のMapt 2.2CSと11-(トリフルオロアセタミド)-3,6,9-トリオキサウンデカン-l-イル[(2-シアノエチル)(N,N-ジイソプロピル)] ホスホラミダイト(phosphoramidite)(Link Technologies)とをカップリングし、酸化してホスフォジエステル基を作り、シアノエチル基を除去し、スペーサ鎖末端にある第一アミン基を脱保護して得られる。第VII因子に向かうのはMapt 2.2CSである。
【0160】
親和性担体の積載能(換言すれば保持能)はゲル1ml当たりのFVIIのmgで表され、「Tp5」緩衝液(50mMトリス、10mM℃aC12、pH 7.5)中の組換え型ヒトFVIIの組成物を注入して評価する。
【0161】
[表1]および[表2]は予備活性化されたゲルの「NHS 活性化セファロース4フアストフロー(NHS Activated SepHarose 4 fast flow (GE)」上にMapt 2CS-PEG(C11)およびMapt 2.2CS-PEG(Cl1)アプタマーをグラフトするための反応収率を、1ml当たりのゲルに対して反応で使用したアプタマーの量の関数で表したものである。収率はカップリング反応の終わりに上澄み中に存在するアプタマーの量を定量的PCRで数量化して求めた。
[表1]および[表2]にはmlのゲル当たりのグラフトしたアプタマーの最終量も記載してある。
【0162】
【表1】
【表2】
【0163】
Mapt 2.2CS-PEG(C11)およびMapt 2CS-PEG(C11)アプタマーで得られたカップリング収率はテストしたアプタマーの全ての量で90%〜100%の間にある。特に、1mlのゲルに対して0.4μmolまでグラフトでき、これはゲルの表面に存在する活性化されたカルボン酸基の官能基化百分比の2%に対応する。
【0164】
組換え型ヒトFVIIの場合の親和性担体の積載能は1mlのゲル当たりにグラフトしたアプタマーの量に対して直線的に変化する。グラフトしたアプタマーの量が多くなっても担体の積載能の飽和作用は見られず、従って、アプタマーの官能性の減失は観測されない。
これらの結果から、6mg/ml以上のグラフトアプタマー濃度を有する親和性担体を得ることができ、1mlのゲル当たり8mgの組換え型ヒトFVIIより多いFVIIに対する積載能を有する。
[表3]は表面でグラフトしたアプタマー数を関数とした親和性担体の積載能を示す。
【0165】
【表3】
【0166】
実施例4
NHSで予め活性化した固体担体への核酸の化学的グラフトの比較テスト
4.1.各種pHを用いた比較テスト
実施例1で使用した予備活性化した出発担体のグラフトの中性またはわずかにアルカリ性pH条件下での比較テストを行い、その結果を[表4]に示す。
【0167】
【表4】
【0168】
次のプロトコルを使用した:
(1)15ml の1mM HC1、次いで、7mlのグラフト緩衝液で洗浄した1mlのゲル。6.5ml(または3.5ml)のMapt 2CSを1g/1濃度で加え、そのゲルをMapt 2CSを用いて室温で4時間培養した。
(2)活性化されたサイトを50mMトリス緩衝液(pH=7.4)で中和。
【0169】
グラフト段階後、グラフトされないアプタマーの量をカラム出口で測定した。結果は、[表1]に記載のグラフト条件とは無関係にグラフト収率は0%〜最大10%の範囲にあることを示している。上記のGoss et al.の観察結果とは逆に、塩度(salinity)を高くしてもカップリング収率を上げるには十分でない。
【0170】
4.2.二価カチオンの添加またはNaC1の添加で被グラフト核酸の負電荷を中和した比較テスト
下記のプロトコルを使用した:
(1)15mlの1mM HC1、次いで、700μlのグラフト緩衝液で洗浄した100μlのゲル/650μlのMa 2CS(oligo 5)、130mg/1の添加、そのゲルのMapt 2CSを用いた室温での4時間の培養。
(2)使用条件:
条件1:92mM MOPS緩衝液、pH=7.0、200mM CaCl2、200m1 MgCl2
条件2:92mM MOPS緩衝液、pH=7.0、200mM CaCl2、200m1 MgC12
条件3:0.2M NaHCO3、0.5M NaC1、pH8.3
条件3:0.2M NaHCO3、2M NaCl、pH8.3。
【0171】
グラフト段階後に未グラフトアプタマーの量をカラム出口で測定した。その結果は、上記のグラフト条件の全てで、グラフト収率が0%から最大10%に変動することを示した。
上記の全ての実験結果は、従来技術で推薦されるような塩基の存在下または中性pHや予備活性化ゲルの指示パンフレットに記載の方法で実施する方法では予備活性化ゲルへのアプタマーのカップリング収率は非常に低い(10%以下)ことを示している。
NaC1溶液を使用してイオン強度を2Mまで増加させるか、アプタマーの負電荷をマスクする二価カチオン塩を使用しても、カップリング収率を上げることはできない。
【0172】
当業者の予想とは逆に、カップリング段階を酸性pHの存在下で実行することで、アプタマーの標的タンパクへの結合能を害すること無しに、予備活性化端階へのアプタマーのカップリングを大幅に増加させることができる。
【0173】
実施例5
本発明カップリング反応を実行するためのパラメータの変更
Mapt 2CS-PEG(C11)アプタマーのスペーサ鎖中に存在する脂肪族第一アミン基を用いたゲル「NHS 活性化セファロース4フアストフロー(NHS Activated SepHarose 4 fast flow (GE)」の活性化されたカルボン酸基のカップリング反応を制御するパラメータを求めるために、pH、温度および反応時間の影響を評価した。
【0174】
下記のプロトコルを用いた:
(1)使用したグラフト緩衝液は100mM酢酸ナトリウムを使用して所望pHに合わせて調製した。ただし、pH=8.3で反応を実行する場合には、NaHCO3緩衝液を用いて調製した。
(2)グラフト緩衝液中に2g/1濃度のMapt 2CS-PEG(C11)アプタマー溶液を調製した。
(3)1mlのアプタマー溶液を1mlのゲルと混合し、攪拌し、所望温度で培養した。上澄み中に存在するアプタマーを定量化してカップリング反応の進行をモニターした。
(4)反応速度のモニタリングの終わりに、1mlの200mMボレート緩衝液をpH 9で反応媒体に加え、攪拌し、得られた混合物を4℃で3時間培養した。上澄みを採って最終アッセーした。ゲルの残留カルボン酸基の中和は2mlの0.1Mトリス-HC1緩衝液pH=8.5を加え、4℃で2時間30分攪拌して実行した。
(5)1)1mlの0.1Mトリス-HC1、pH=8.5、次いで、2)1mlの0.1M酢酸ナトリウム、0.5M NaCl、pH=4.0から成る添加/攪拌/上澄み除去の3サイクルを実行した。
(6)上澄みは除去した。得られたゲルをTpl緩衝液中に保存し、0.2%のアジドを補い、4℃で貯蔵した。
温度、反応時間およびpHを関数とするカップリング反応速度のモニタリカング結果を[表5]に示す。
【0175】
【表5】
【0176】
[表5]に示すように、本発明のカップリング反応を実行する上でpHは重大なパラメータである。
従来技術に記載されている条件、すなわちpH8.3の塩基条件で反応を実行すると、最大で10%という極めて低いカップリング収率しか得られない。pHを下げると反応収率を大幅に改良できる。特に、pHを約3.8〜4.3にした場合、少なくとも98%の収率が観測される。このpHでは酸加水分解により核酸が劣化し、第一アミンの反応性が低下してカップリング収率が低下することが当業者には予想されるので、この結果は全く驚くべきものである。この実験結果から、カップリング反応は低温または室温でも実行できることは明らかである。
【0177】
特に、pH=3.8または室温でpH= 4.3で得られた親和性担体は組換え型ヒトの因子 VIIの積載能(すなわち保持能)はpH=4.2、5℃で得られる担体に相当する。一般に、得られる積載能は高く、それはアプタマーのグラフト率が高いだけでなく、標的タンパクに特異的に結合するアプタマーの能力が維持されることを反映している。換言すると、担体の活性化されたカルボン酸基とアプタマーのスペーサ中に存在する第一アミン基との間のカップリング反応を室温かつ4.5以下のpHで実行することで、100%近くのグラフト収率を得ることができるだけでなく、アプタマー機能の一体性(インテグリティー)を維持することができる。
【0178】
実施例6
親和性担体の他の実施例
親和性担体の追加の実施例を(i)グラフト条件および(ii)使用するアプタマーのタイプを変えて行った。
【0179】
6.1.グラフトするアプタマーのタイプ
アプタマーのタイプに関しては、DNAポリヌクレオチドから成るアプタマーとRNAポリヌクレオチドから成るアプタマーをそれぞれ使用した。また、ある種のアプタマーでポリヌクレオチドが5'端を介してスペーサ鎖に結合しており、他のアプタマーではポリヌクレオチドが3'端を介してスペーサ鎖に結合している。同様に、親水性スペーサ鎖または疎水性スペーサから成るアプタマーも使用した。
【0180】
実施例6で使用したアプタマーは以下のとおり:
(1)5'端に親水性C11スペーサ鎖を有する配列SEQ ID No.1の「Mapt 2CS」DNAポリヌクレオチドから成るアプタマー。これは実施例1の(a)に記載の第1の親和性担体の製造方法で作られ、このアプタマーは[表6]では「Mapt 2CS oligo 5(5'アミン親水性C11)」とよばれる。
(2)5'端に疎水性C6スペーサ鎖を有し、3'端に逆デオキシリボチミジン残基(3'-dT-5')を有する配列SEQ ID No.1の「Mapt 2CS」DNAポリヌクレオチドから成っているアプタマー。これは実施例1の(c)に記載の第3の親和性担体の製造方法で作られ、このアプタマーは[表6]では「Mapt 2CS oligo 2(5'アミンC6および3'dT)とよばれる。
【0181】
(3)5'端に疎水性C12スペーサ鎖を有する配列SEQ ID No.1の「Mapt 2CS」DNAポリヌクレオチドから成っているアプタマー。これは実施例1の(b)に記載の第2の親和性担体の製造方法で作られ、このアプタマーは[表6]では「Mapt 2CS oligo 3(5'アミンC12)とよばれる。
(4)3'端に疎水性のC6スペーサ鎖を有する配列SEQ ID No.1の「Mapt 2CS」DNAポリヌクレオチドから成っているアプタマー。これは実施例1の(c)に記載の第3の親和性担体の製造方法で作られ、このアプタマーは[表6]では「Mapt 2CS oligo 7(3'アミンC6)とよばれる。
(5)5'端に親水性C11スペーサ鎖を有し、3'端に逆デオキシリボチミジン残基(3'-dT-5')を有する配列SEQ ID No. 4の「Mapt抗-FIXaRNA」RNAポリヌクレオチドから成るアプタマー。これは実施例1の(a)に記載の第1の親和性担体の製造方法で作られ、このアプタマーは[表6]では「Mapt抗-FIXaRNA 5'アミン親水性C11」とよばれる。
【0182】
さらに、5'端に親和性C11スペーサ鎖を有する配列SEQ ID No.5の「Mapt 1.2CSO」DNAポリヌクレオチドから成るアプタマーも作った。これは実施例1の(a)に記載の第1の親和性担体の製造方法で作られ、このアプタマーは「Mapt I.2CSO oligo 5」(5'アミン親水性C11)とよばれる。このアプタマーに関する結果は[表6]には示していない。
【0183】
6.2.RNAアプタマーのグラフト条件
配列SEQ ID No.5のRNAアプタマーは下記グラフト条件下でグラフトした:
(1)300μgのRNAアプタマーを500μlのゲルと一緒に培養した。最終ゲル濃度は0.6g/1。
(2)グラフト反応は17℃(RT)、pH4.2で2.5時間実行した。
(3)次いで、200mMボレート緩衝液で17℃、pH 9で2.5時間中和して反応を停止させた。
(4)上澄み中の未グラフトアプタマーの残存量を測定し、アガロースゲル電気泳動法と、GelRed(登録商標)(3.5%)を用いた染色と、同じ電気泳動ゲルの他のレーンに付けたRNAアプタマーの既知量の較正範囲との比較でグラフト収率を求めた。
【0184】
結果は、グラフト収率が99%以上であることを示した。この結果はグラフト方法をpHが5以下で行うことが、核酸リガンドがDNAポリヌクレオチドから成るかRNAポリヌクレオチドから成るかにかかわらず(従って、DNA/RNAハイブリッド・ポリヌクレオチドから成る核酸リガンドでも)、全てのタイプの核酸リガンドのグラフトで有効であることを示している。このリガンドには修飾塩基を有するRNAポリヌクレオチドから成るリガンドを含み、修飾塩基を有するポリヌクレオチドから成るリガンドも含む。
【0185】
6.3.グラフト反応の効率
実施例5に記載のカップリング反応を実行したが、時間、温度およびpHを変えた。結果は[表6]に示した。
【0186】
【表6】
【0187】
[表6]の結果は、同じアプタマーの場合、例えテスト条件が変わっても100%のグラフト収率が得られることを示している。
特に、これらの結果は実施例4の結果、特にpH3.8の非常に酸性状態でも最大のグラフト収率が得られる[表5]の結果を確認している。これらの結果はさらに、室温で実行したカップリング反応の速度が迅速であることを確認している。
また、これらの条件下でのグラフト度およびグラフト収率は中和段階を実行した時に観測されるものと同じであるので、最大グラフト収率を得るためにはpH9で中和段階を行い、カップリング反応を続けることが必要でないことを示している([表6]参照)。
【0188】
さらに、[表6]の結果は、アプタマーのスペーサ鎖が親水性であるか疎水性であるかはグラフト効率に影響しないことも示している。また、親水性または疎水性のスペーサ鎖をDNAまたはRNAポリヌクレオチドの5'端に結合させても3'端に結合させてもグラフトは有効であることを示している。
なお、従来のPolybrene(登録商標)(ヘキサメチレンブロマイド、1,5-ジメチル-1,5- ジアザウンデカメチレンポリメソブロマイド)を用いた培養によるDNAポリヌクレオチド電荷の中和ではカップリング反応を実行できないことを付け加えておく。
【0189】
6.4.親和性担体の官能
6.1に記載の「Mapt 2CS oligo 5」アプタマーを固定した親和性担体の官能性を下記のカップリング反応温度、時間およびpH条件下でテストした:
(1)条件No.1:48h、5℃、pH4.2、
(2)条件No.2:48h、5℃、pH3.8、
(3)条件No.3:2h、5℃、pH4.2、
(4)条件No.4:lh、室温(RT)、pH4.2
【0190】
テストでは上記条件No.1〜4で500μ1のアプタマーを各々グラフトしたゲル(最終濃度4.4mg/ml)を使用した。各クロマトグラフィ担体に対して遺伝子導入ウサギミルク(FVII-TG)で製造した2.7mgの精製した組換え型ヒトFVIIの組成物を注入した。この注入に使用したFVII-TG組成物は最初に含まれるシトラートをCaC12で中和し、35〜40mMの間のNaC1、3.2〜4mMの間のMgC12が得られるように緩衝液を変えて調製した。
(5)クロマトグラフィで使用した緩衝液:50mMトリス/10mM℃aC12(pH7.5)
(6)流速:0.5ml/分
(7)溶出緩衝液:50mMトリス、10mM EDTA、pH=7.5。
結果は上記条件No.1〜4に対して[図6]〜[図9]に示した。結果は下記[表7]にも示した。
【0191】
【表7】
【0192】
図6]〜[図9]および[表7]の結果は、ほとんど全てのヒト第VII因子は被精製組成物を担体上に通した時点で親和性担体に保持されることを示しているが、条件No.2(48h、5℃、pH3.8)でグラフトして調製した親和性担体の場合には第VII因子の保持度は実質的なものであるが、最高ではないことが観測される。
上記の結果はさらに、親和性担体に保持されたヒト第VII因子の全てが溶出段階で放出されることを示している。
【0193】
上記結果は、完全な機能を有する親和性担体がグラフト条件No.1およびグラフト条件No.3-4を使用して調製できることを意味し、標的分子を保持し、それから開放するという親和性担体の能力の観点からはグラフト温度および時間の条件は全く設定的なものではないということを示している。
特に、短時間(1時間)および高温(室温)でアプタマーを結合するための条件によって、(i)アプタマーのグラフト度を100%にすることができ、(ii) 標的のヒト第VII因子に結合するためのグラフトされたアプタマーの能力を全く失わないということが観測される。
【0194】
それに対して、アプタマーをpH3.8でカップリングした親和性担体で悪い結果が得られたことから、グラフトされたアプタマーの一体性を維持する、特に、標的ヒト第VII因子に結合するグラフトされたアプタマーの能力を維持するためには、pH条件が重要であることを示している。カップリング反応をpH 3.8で実行した場合、出発サンプルを選択的に濃縮してヒト第VII因子をリッチにする能力を維持した親和性担体が得られるが、この親和性担体は第VII因子をかなりロスし(20%以上)、従って、経済的にプロセスを実施できないので、ヒト第VII因子の工業的精製方法としては使えない。
【0195】
実施例7
生物媒体との接触段階と強力消毒段階(1Mの水酸化ナトリウム)とを含む工業的条件下での親和性担体の一体性の維持
この実施例7では、工業的プロセス条件下で使用した場合、複数回のサイクル後でも、本発明で定義の親和性担体は標的タンパクを保持、溶出する能力を維持することを示す。
【0196】
7.1.グラフト担体の調製
下記3つのアプタマーを使用して実施例1に記載のグラフト方法でグラフト担体を調製した:
(1)グラフト担体No.1:5'端に親水性C11(11-アミノ-3,6,9-トリオキサウンデカン -1-イル)鎖を有する配列SEQ ID No.1のMapt 2CSポリヌクレオチドから成るアプタマー。
(2)グラフト担体No.2:5'端に親水性C11(11-アミノ-3,6,9-トリオキサウンデカン -1-イル)鎖を有する配列SEQ ID No.3のMapt 2.2CSポリヌクレオチドから成るアプタマー。
(3)グラフト担体No.3:5'端で6メチレン(CH2)(C6スペーサ)スペーサ鎖と結合した配列SEQ ID No.3のポリヌクレオチドが接着した「Mapt 2.2C5」から成るアプタマー。
【0197】
グラフト収率はそれぞれ100%(グラフト担体No.1)、93%(グラフト担体No.2)および87%(グラフト担体No.3)であった。
得られた親和性担体の理論上の静的容量すなわち各グラフトアプタマーがヒトFVII分子に結合した場合の親和性担体に保持されるヒトFVIIの量は担体1ミリリットル当たりそれぞれ18.7mg(担体No.1)、17.3mg/ml(担体No.2)および16.3mg/ml(担体No.3)であった。
【0198】
7.2.ヒトFVIIの精製方法の操作条件
ヒトFVIIがリッチな FVII-TG組成物を使用し、最終FVII-TG濃度を約50000 ppmにした。この組成物はデス-gla形のFVII(FVIIの非活性形)の比率が高く、この組成物のFVII比活性(アミノリシス活性/抗原で表される活性)は約0.4である。
【0199】
一般的プロトコルは下記である:
(1)グラフト担体の容積の5倍の緩衝液容積を使用してTP4緩衝液(50mMトリス、10mM CaC12、4mM MgCl2、pH7.5)中で担体を平衡化。
(2)予め10mM CaC12と4mM MgC12とを含む50mMトリス緩衝液に対して透析した原材料(FVII-TG組成物)の注入
(3)洗浄緩衝液(グラフト担体の容積の8倍)で洗浄、
(4)pH 7.5の50mMトリス、10mM EDTA平衡化緩衝液で平衡化(グラフト担体の容積の3倍)
【0200】
7.3.ヒトFVII精製用担体の特性
7.1に記載の方法で作った3つの担体の活性ヒトFVIIaの選択的保持能をテストした。
3つの担体は1ミリリットルのグラフト担体当たり約10mgのヒトFVIIa保持能を有することが分かった。これは7.1で計算した理論上の最大静的容量の53%〜58%を表す。この結果は3つの担体にグラフトしたアプタマーへの接近がよくでき、機能することを示している。
7.1に記載の方法で作った3つの親和性担体は[表8]に示すように活性GLAドメインを有するヒトFVII分子を選択的に保持できる。
【0201】
【表8】
【0202】
[表8]の結果は、組成物中に存在するヒトFVIIの総量に対してヒトFVIIを41%のみを含む活性GLAドメインを有する組成物から、組成物中に存在するヒトFVIIの総量に対して活性GLAドメイン含むヒトFVIIの70%〜80%から成るヒトFVIIがリッチな最終組成物が得られることを示している。この結果は上記3つの親和性担体は(i)ヒトFVIIを精製でき、(ii) ヒトFVIIの非活性形を除去して、ヒトFVIIの活性形がリッチな精製されたFVIIの組成物を得ることができるということを示している。
【0203】
7.4.水酸化ナトリウム処理に対する親和性担体の耐性
上記3つの親和性担体の1N水酸化ナトリウム溶液を用いた長時間処理に対する耐久性をテストした。
7.1に記載の方法で作った担体を1M水酸化ナトリウム溶液と100時間接触させた。洗浄して水酸化ナトリウムを除去した後に、ヒトFVIIに対する精製した3つの親和性担体の能力を測定した。結果は[表9]に示す。
【0204】
【表9】
【0205】
[表9]の結果は、1M水酸化ナトリウムで長時間(100時間)処理しても担体No.1、No.2およびNo.3のヒトFVIIを精製する能力は有意に変化しないことを示している。
【0206】
7.5.各種生物培地と長時間接触させたときの親和性担体の耐性
ヒトFVIIの精製方法の出発材料とし使用可能な各種の生物培地で長期間処理した時の3つの親和性担体の耐久性をテストした。
次の2つの生物学的培地をテストした:
(i)ヒト血漿の凍結上澄み(cryosupematant)、
(ii)清澄ミルク溶液
ヒトFVIIの供与源を構成する乳汁は例えばヒトFVIIをコードする遺伝子に遺伝子導入した動物の乳汁中で生産される場合のヒトFVIIにすることができる。
【0207】
7.1に記載の方法で製造した親和性担体No.1を(i)ヒト血漿の凍結上澄み(cryosupematant)および(ii)清澄ミルク溶液に100時間接触させた。テストした生物媒質を除去するために洗浄した後、ヒトFVIIを精製するための3つの親和性担体の各キャパシティを測定した。結果は[表10]
に示した。
【0208】
【表10】
【0209】
生物学的製剤培地を有する現在の説明書を定義するように、テーブル10の結果はそれに親和性担体のインキュベーションを示すそれは、ヒトFVIIを精製している出発材料を表す、非常に長い期間(100時間)のための、前記担体のキャパシティの有意変更がヒトFVIIを精製するようにならない。
【0210】
7.6.一連の精製サイクルに対する親和性担体の耐性
7.1に記載の方法で製造した親和性担体No.3に一連のヒトFVII精製サイクルを行った時の耐久性のテストを実施した。
各精製サイクルは下記工程から成る:
(1)TP4緩衝液(親和性担体の容積の5倍)で親和性担体を平衡化。
(2)被精製組成物との接触のシミュレーション: TP4緩衝液(親和性担体の容積の5倍)の注入
(3)溶出緩衝液(親和性担体の容積の5倍)で溶出。
(4)1Mソーダ溶液(親和性担体の容積の5倍)での消毒を10分間行う。
(5)TP4緩衝液(親和性担体の容積の10倍)で親和性担体を再平衡化。
親和性担体No.3に対して上記の精製サイクルを15回または30回実行し、15回目または30回目のサイクル後にヒトFVIIに対する親和性担体の能力を求めた。結果は[表11]に示した。
【0211】
【表11】
【0212】
[表11]の結果は、標的タンパクの精製をシュミレーションした方法を少なくとも30回実行した後でも、ヒトFVIIを精製する親和性担体の能力は不変であることを示している。
【0213】
【表12】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]