(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1及び第2中間膜は、前記コア層と接触し、周波数100Hz,温度20℃において、560MPa以上の少なくとも1つのアウター層を有する請求項1に記載の合わせガラス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような合わせガラスでは、厚みを薄くすることにより遮音性能の低下をある程度防止することはできるが、車外側のガラスの厚みも小さくなることから、車外側の外力によるガラス割れが発生しやすくなるという問題がある。これを解決すべく、車外側のガラスの厚みは従来と同等にしつつ車内側のガラス板のみを薄くして、全体として面密度を低下させる方法が考えられる。この点について、本発明者は、以下のように検討した。
【0005】
まず、本発明者らは、車内側と車外側のガラスの厚みを異なる構成とすると、
図17に示すように、同厚の場合に比して、人間が聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数領域の遮音性能が低下することを見出した。同図は、周波数と音響透過損失(Sound Transmission Loss:STL)との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。このグラフには、厚みが1.5mmのガラス板で構成された合わせガラス(以下、第1合わせガラスという)と、厚みが2.0mmと1.0mmの異なるガラス板で構成された合わせガラス(以下、第2合わせガラスという)が表示されている。いずれの合わせガラスも、ガラス板の間に樹脂製の中間膜が配置されている。このグラフによれば、3000〜5000Hzの周波数領域において、第2合わせガラスの音響透過損失が、第1合わせガラスに比べて低下していることが分かる。すなわち、厚みの異なるガラス板を用いることで、人間が聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数領域の遮音性能が低下することが分かった。
【0006】
このように、厚みの異なるガラスを組み合わせると、軽量化は図れるものの、音響透過損失が低下するという問題が発生する。特に、人間が聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数領域における遮音性能が低下し、車内環境が悪化するという問題が発生する。
【0007】
ところで、車両用合わせガラス、特にウインドシールドには、防眩性、遮熱性などの向上のために、グリーン、ブルーなどに着色した帯状のシェード領域(シェードバンド)が形成されることがある。シェード領域は、ガラス板の表面に設けられることもあるが、中間膜を帯状に着色することにより形成されることが多い。その一方で、ウインドシールドには、可視光線透過率を所定値以上(例えば70%以上)とするべき法定の視野領域があるため、ウインドシールドのシェード領域は、視野領域の外、つまり、通常はウインドシールドの上部、に配置される。
【0008】
また、近年、自動車の安全性能は飛躍的に向上しつつあり、その1つとして前方車両との衝突を回避するため、前方車両との距離及び前方車両の速度を感知し、異常接近時には、自動的にブレーキが作動する安全システムが提案されている。このようなシステムには、前方車両との距離などをレーザーレーダーやカメラなどの機器を用い、レーザーや赤外線によって計測している。そして、これらの機器は、一般的に、安全性の確保および機器の十分な機能発揮のために、ウインドシールドの上部領域に取り付けることが望まれる。
【0009】
しかしながら、上述したように、この領域には、シェード領域が形成されることがあるため、シェード領域を通して受光すると、レーザーや赤外線の透過率を大幅に低下させるおそれがあり、機器の感度が低下する。このため、従来は、機器の取り付け位置を変更するか、機器とシェード領域との両立を断念するしかなかった。
【0010】
以上のように、ウインドシールド用の合わせガラスには種々の課題があり、軽量化と遮音性能の達成のみならず、防眩性能、遮熱性能のほか、近年の安全技術に適応した合わせガラスが要望されている。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、軽量化と遮音性を両立しつつ、シェード領域を有していても、安全システム用の機器を取り付け可能な、異なる厚みのガラスで構成された合せガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る合わせガラスは、外側ガラス板と、前記外側ガラス板と対向配置され、前記外側ガラス板よりも厚みが小さい内側ガラス板と、前記外側ガラス板及び内側ガラス板の間に挟持され、着色されたシェード領域が一部に形成されるとともに、当該シェード領域に貫通孔が形成された第1中間膜と、前記第1中間膜の貫通孔に配置される透明の第2中間膜と、を備え、前記内側ガラス板の厚みが0.4〜2.0mmであり、前記外側ガラス板の厚みが1.8〜2.3mmであり、前記第1及び第2中間膜は、少なくともコア層を含む複数の層で構成されており、前記第1中間膜を構成する層の少なくとも1つが着色されて、前記シェード領域を形成しており、前記第1及び第2中間膜の前記コア層のヤング率は、周波数100Hz,温度20℃において、1〜20MPaであり、他の前記層のヤング率よりも低い。
【0012】
上記合わせガラスにおいては、前記中間膜は、前記コア層と接触し、周波数100Hz,温度20℃において、560MPa以上の少なくとも1つのアウター層を有するように構成することができる。
【0013】
上記合わせガラスにおいては、前記内側ガラス板の厚みを、0.6〜1.6mmとすることができる。
【0014】
上記合わせガラスにおいては、前記内側ガラス板の厚みを、0.8〜1.4mmとすることができる。
【0015】
上記合わせガラスにおいては、前記内側ガラス板の厚みを、0.8〜1.3mmとすることができる。
【0016】
上記合わせガラスにおいては、前記コア層の厚みを、0.1〜2.0mmとすることができる。
【0017】
上記合わせガラスにおいては、前記コア層のヤング率を、周波数100Hz,温度20℃において、1〜16MPaとすることができる。
【0018】
本発明に係る合わせガラスの取付構造は、上述したいずれかの合わせガラスと、前記合わせガラスを、垂直からの取付け角度が45度以下に取り付ける取付部と、を備えている。このような取付構造体は、例えば、自動車などであり、取付部とは合わせガラスを取り付けるフレームなどである。また、取付部に対し、合わせガラスは公知の方法で取り付けることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、軽量化と遮音性を両立しつつ、シェード領域を有していても、安全システム用の機器を取り付け可能な、異なる厚みのガラスで構成された合せガラスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る合わせガラスを自動車用のウインドシールドに適用した場合の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。特に、本実施形態に係る合わせガラスは、レーザーレーダーなどを用いた前方安全システムが採用されるウインドシールドに適用される。
【0022】
図1は、本実施形態に係る合わせガラスの正面図、
図2は
図1のA−A線断面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る合わせガラスは、外側ガラス板1、内側ガラス板2、及びこれらのガラスの間に挟持される第1中間膜3及び第2中間膜4で構成されている。外側ガラス板1とは、外乱を受けやすい側に配置されるガラス板であり、内側ガラス板2は、その反対側に配置されるガラス板である。したがって、車外側のガラス板が外側ガラス板になる。但し、受け得る外乱によっては、これとは反対の配置になることもある。
【0023】
また、この合わせガラスには、可視光線について透過率損失が高いシェード領域10と、透過率損失が低い視野領域20と、が形成されており、シェード領域10は、合わせガラスの上縁全体に沿って着色された領域であり、減光を伴う諸機能(防眩、遮熱など)が発揮される。一方、視野領域20は光学的窓として利用される。これら2つの領域10,20は、上記第1中間膜3により形成されている。
【0024】
また、シェード領域10の左右方向の中央には、矩形状の透過領域30が形成されている。この透過領域30は、着色されていない透明の領域であり、レーザーレーダーやカメラなどの安全システム用の機器からのレーザーや赤外線が透過される。そして、この領域は、上述した第2中間膜4により形成されている。以下、各部材について説明する。
【0025】
<1.外側ガラス板及び内側ガラス板>
外側ガラス板1及び内側ガラス板2は、公知のガラス板を用いることができ、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラスやグリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することもできる。但し、この合わせガラスを自動車の窓に用いる場合には、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。例えば、外側ガラス板1により必要な日射吸収率を確保し、内側ガラス板2により可視光線透過率が安全規格を満たすように調整することができる。以下に、クリアガラスの組成の一例と、熱線吸収ガラス組成の一例を示す。
【0026】
(クリアガラス)
SiO
2:70〜73質量%
Al
2O
3:0.6〜2.4質量%
CaO:7〜12質量%
MgO:1.0〜4.5質量%
R
2O:13〜15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe
2O
3に換算した全酸化鉄(T−Fe
2O
3):0.08〜0.14質量%
【0027】
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe
2O
3に換算した全酸化鉄(T−Fe
2O
3)の比率を0.4〜1.3質量%とし、CeO
2の比率を0〜2質量%とし、TiO
2の比率を0〜0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO
2やAl
2O
3)をT−Fe
2O
3、CeO
2およびTiO
2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
【0028】
外側ガラス板1は、主として、外部からの障害に対する耐久性、耐衝撃性が必要であり、例えば、この合わせガラスを自動車のウインドシールドとして用いる場合には、小石などの飛来物に対する耐衝撃性能が必要である。この観点から、外側ガラス板1の厚みは1.8〜2.3mmとすることが好ましく、1.9〜2.1mmとすることがさらに好ましい。
【0029】
一方、内側ガラス板2は、合わせガラスの軽量化のため、外側ガラス板1よりも厚みを小さくする必要がある。具体的には、後述するように、人間が聞き取りやすい音の周波数領域である2000〜5000Hzで影響を受けやすい、1.2mm±0.8mm、つまり、0.4〜2.0mmであることが好ましく、0.6〜1.6mmであることが好ましく、0.8〜1.4mmであることが特に好ましい。更には、0.9〜1.3mmであることが好ましい。
【0030】
また、本実施形態に係る外側ガラス板1及び内側ガラス板2の形状は、平面形状及び湾曲形状のいずれであってもよい。しかしながら、STLは湾曲形状の方が低下するため、湾曲形状ガラスは特に音響対策が必要である。湾曲形状の方が平面形状よりSTL値が低下するのは湾曲形状の方が共振モードによる影響が大きいためと考えられる。
【0031】
さらに、ガラスが湾曲形状である場合には、ダブリ量が大きくなると遮音性能が低下するとされている。ダブリ量とは、ガラス板の曲げを示す量であり、例えば、
図3に示すように、ガラス板の上辺の中央と下辺の中央とを結ぶ直線Lを設定したとき、この直線Lとガラス板との距離のうち最も大きいものをダブリ量と定義する。
【0032】
図4は、湾曲形状のガラス板と、平面形状のガラス板の、一般的な周波数と音響透過損失の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図4によれば、湾曲形状のガラス板は、ダブリ量が30〜38mmの範囲では、音響透過損失に大きな差はないが、平面形状のガラス板と比べると、4000Hz以下の周波数域でSTLが低下していることが分かる。したがって、湾曲形状のガラス板を作製する場合、ダブリ量は小さい方がよいが、例えば、ダブリ量が30mmを超える場合には、後述するように、中間膜のコア層のヤング率を18MPa(周波数100Hz,温度20℃)以下とすることが好ましい。
【0033】
ここで、ガラス板が湾曲している場合の厚みの測定方法の一例について説明する。まず、測定位置については、
図5に示すように、ガラス板の左右方向の中央を上下方向に延びる中央線S上の上下2箇所である。測定機器は、特には限定されないが、例えば、株式会社テクロック製のSM−112のようなシックネスゲージを用いることができる。測定時には、平らな面にガラス板の湾曲面が載るように配置し、上記シックネスゲージでガラス板の端部を挟持して測定する。なお、ガラス板が平坦な場合でも、湾曲している場合と同様に測定することができる。
【0034】
<2.中間膜>
<2−1.第1中間膜>
第1中間膜3は、複数の層で形成されており、一例として、
図2に示すように、軟質のコア層31を、これよりも硬質のアウター層32で挟持した3層で構成することができる。但し、この構成に限定されるものではなく、軟質のコア層31を有する複数層で形成されていればよい。例えば、コア層31を含む2層(コア層が1層と、アウター層が1層)、またはコア層31を中心に配置した5層以上の奇数の層(コア層が1層と、アウター層が4層)、あるいはコア層31を内側に含む偶数の層(コア層が1層と、他の層がアウター層)で形成することもできる。
【0035】
また、第1中間膜3の一部には、上述したシェード領域20を形成するための着色された領域が形成されている。この領域は、第1中間膜3の上端縁に沿って形成され、コア層31及びアウター層32のいずれか1つ以上を、顔料または染料など着色剤によりグリーン、ブルーなどに着色したものである。顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクドリン系などの有機顔料、金属酸化物、金属粉などの無機顔料を用いることができる。
【0036】
顔料を用いる場合は、顔料を樹脂および可塑剤とともに混練した樹脂組成物と、顔料を含まない樹脂組成物(樹脂および可塑剤)とから、それぞれ押出成形法により、着色層とクリアー層とを作製し、クリアー層で着色層を挟持して成形することにより、着色した第1中間膜3を得ることができる。一方、染料を用いる場合には、マスクを用いて、シェード領域10を形成したい領域を露出させ、この領域に染料を塗布する。染料は、例えば、吹き付けまたはプリント印刷により塗布することができる。また、マスクは、上述した透過領域30にも配置しておくこともできる。
【0037】
次に、第1中間膜3のコア層31について説明する。コア層31はアウター層32よりも軟質であるが、この点については、ヤング率を基準として材料を選択することができる。具体的には、周波数100Hz,温度20℃において、1〜20MPaであることが好ましく、1〜16MPaであることがさらに好ましい。更には、1〜10MPaであることが好ましい。測定方法としては、例えば、Metravib社製固体粘弾性測定装置DMA 50を用い、ひずみ量0.05%にて周波数分散測定を行うことができる。以下、本明細書においては、特に断りのない限り、ヤング率は上記方法での測定値とする。但し、周波数が200Hz以下の場合の測定は実測値を用いるが、200Hzより大きい場合には実測値に基づく算出値を用いる。この算出値とは、実測値からWLF法を用いることで算出されるマスターカーブに基づくものである。
【0038】
一方、アウター層32のヤング率は、後述するように、高周波域における遮音性能の向上のために、周波数100Hz,温度20℃において560MPa以上であることが好ましく、650MPaであることがさらに好ましく、1300MPa以上であることが特に好ましい。一方、アウター層32のヤング率の上限は特には限定されないが、例えば、加工性の観点から設定することができる。例えば、1750MPa以上となると、加工性、特に切断が困難になることが経験的に知られている。また、コア層31を挟む一対のアウター層32を設ける場合、外側ガラス板1側のアウター層32のヤング率を、内側ガラス板2側のアウター層32のヤング率よりも大きくすることが好ましい。これにより、車外や屋外からの外力に対する耐破損性能が向上する。
【0039】
また、第1中間膜3のコア層31のtanδは、周波数100Hz,温度20度において、0.5〜3.0であることが好ましく、0.7〜2.0であることがさらに好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。tanδが上記範囲にあると、音を吸収しやすくなり、遮音性能が向上する。しかし、3.0よりも大きくなると、中間膜3が柔らかくなりすぎ、取り扱いが困難になるため、好ましくない。また、0.5より小さくなると耐衝撃性能が低下して好ましくない。
【0040】
また、各層31,32を構成する材料は、特には限定されないが、少なくともヤング率が上記のような範囲とすることができる材料であることが必要である。例えば、アウター層32は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)によって構成することができる。ポリビニルブチラール樹脂は、各ガラス板との接着性や耐貫通性に優れるので好ましい。一方、コア層31は、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA)、またはアウター層を構成するポリビニルブチラール樹脂よりも軟質なポリビニルアセタール樹脂によって構成することができる。軟質なコア層を間に挟むことにより、単層の樹脂中間膜と同等の接着性や耐貫通性を保持しながら、遮音性能を大きく向上させることができる。
【0041】
一般に、ポリビニルアセタール樹脂の硬度は、(a)出発物質であるポリビニルアルコールの重合度、(b)アセタール化度、(c)可塑剤の種類、(d)可塑剤の添加割合などにより制御することができる。したがって、それらの条件から選ばれる少なくとも1つを適切に調整することにより、同じポリビニルブチラール樹脂であっても、アウター層に用いる硬質なポリビニルブチラール樹脂と、コア層に用いる軟質なポリビニルブチラール樹脂との作り分けが可能である。さらに、アセタール化に用いるアルデヒドの種類、複数種類のアルデヒドによる共アセタール化か単種のアルデヒドによる純アセタール化かによっても、ポリビニルアセタール樹脂の硬度を制御することができる。一概には言えないが、炭素数の多いアルデヒドを用いて得られるポリビニルアセタール樹脂ほど、軟質となる傾向がある。したがって、例えば、アウター層がポリビニルブチラール樹脂で構成されている場合、コア層には、炭素数が5以上のアルデヒド(例えばn−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−へプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド)、をポリビニルアルコールでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。なお、所定のヤング率が得られる場合は、上記樹脂等に限定されることはい。
【0042】
また、第1中間膜3の総厚は、特に規定されないが、0.3〜6.0mmであることが好ましく、0.5〜4.0mmであることがさらに好ましく、0.6〜0.2mmであることが特に好ましい。一方、コア層31の厚みは、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜0.6mmであることがさらに好ましい。0.1mmよりも小さくなると、軟質なコア層31の影響が及びにくくなり、また、2.0mmや0.6mmより大きくなると総厚が増大しコストアップとなるからである。一方、アウター層32の厚みは特に限定されないが、例えば0.1〜2.0mmとすることができ、0.1〜1.0mmであることが好ましい。その他、第1中間膜3の総厚を一定とし、この中でコア層31の厚みを調整することもできる。
【0043】
コア層31の厚みは、例えば、以下のように測定することができる。まず、マイクロスコープ(例えば、キーエンス社製VH−5500)によって合わせガラスの断面を175倍に拡大して表示する。そして、コア層31の厚みを目視により特定し、これを測定する。このとき、目視によるばらつきを排除するため、測定回数を5回とし、その平均値をコア層31の厚みとする。例えば、
図6に示すような合わせガラスの拡大写真を撮影し、このなかでコア層を特定して厚みを測定する。なお、アウター層の厚みについても同様である。
【0044】
なお、第1中間膜3の厚みは全面に亘って一定である必要はなく、例えば、ヘッドアップディスプレイに用いられる合わせガラス用に楔形にすることもできる。この場合、第1中間膜3の厚みは、最も厚みの小さい箇所、つまり合わせガラスの最下辺部を測定する。中間膜3が楔形の場合、外側ガラス板及び内側ガラス板は、平行に配置されないが、このような配置も本発明における外側ガラス板と内側ガラス板との「対向配置」に含まれるものとする。すなわち、本発明の「対向配置」は、例えば、1m当たり3mm以下の変化率で厚みが大きくなる中間膜3を使用した時の外側ガラス板と内側ガラス板の配置を含む。
【0045】
第1中間膜3の製造方法は特には限定されないが、例えば、上述したポリビニルアセタール樹脂等の樹脂成分、可塑剤及び必要に応じて他の添加剤を配合し、均一に混練りした後、各層を一括で押出し成型する方法、この方法により作成した2つ以上の樹脂膜をプレス法、ラミネート法等により積層する方法が挙げられる。プレス法、ラミネート法等により積層する方法に用いる積層前の樹脂膜は単層構造でも多層構造でもよい。また、いずれかの層に着色してシェード領域を形成してから積層してもよいし、積層後にいずれかのアウター層に着色してシェード領域を形成してもよい。
【0046】
<2−2.第2中間膜とその取付>
第2中間膜4は第1中間膜3と同様に、コア層41及びアウター層42で形成されている。第1中間膜3との相違点は、着色がなさず透明であることと、形状である。第2中間膜4の大きさ、形状は、特には限定されないが、上述したレーザーレーダーやカメラの光が通過可能な大きさであればよい。第2中間膜4は、種々の方法で第1中間膜3に取り付けることができるが、例えば、
図7示すように、第1中間膜3に取り付けられる。
【0047】
まず、
図7(a)に示すように、予め一端部にシェード領域10を形成した第1中間膜3の上に、着色剤などを含まない通常の第2中間膜4用の膜材40を重ねる。このとき、膜材は、シェード領域10の中の透過領域30を形成すべき位置に配置する。次に、
図7(b)に示すように、透過領域30の形状を有する型を用いて第1中間膜3及び膜材40を2枚ともに打ち抜く。これに続いて、
図7(c)に示すように、第1中間膜3において打ち抜かれた領域を取り外して貫通孔39を形成するとともに、膜材40から打ち抜かれた第2中間膜4を、この貫通孔39に嵌め込む。最後に、貫通孔39の周囲の境界部分を、はんだごてなどを用いて、例えば100〜200℃程度の熱をかけて仮接着しておくと、第1中間膜3と第2中間膜4との隙間や段差を確実に解消できる。但し、この方法は一例であり、第1中間膜3の貫通孔39に第2中間膜4を配置できれば他の方法でもよい。なお、透過領域30は、シェード領域10の内部あるいは、シェード領域10と視野領域20との境界付近に視野領域に開放するように形成されていてもよい。
【0048】
<3.合わせガラスの赤外線透過率>
上記のように、本実施形態に係る合わせガラスは、レーザーレーダー、カメラなどを用いた自動車の前方安全システム用のウインドシールドに用いられる。このような安全システムでは、前方の車両に対して赤外線を照射して、前方の自動車の速度や車間距離を計測する。そのため、合わせガラスには、所定範囲の赤外線の透過率を達成することが要求される。
【0049】
このような透過率としては、例えば、レーザーレーダーに一般的なセンサーを使用する場合、波長が850〜950nmの光(赤外線)に対して20%以上80%以下、好ましくは、20%以上60%以下であることが有用であるとされている。透過率の測定方法は、JIS R3106にしたがい、測定装置として、UV3100(島津製作所製)を用いることができる。具体的には、合わせガラスの表面に対して90度の角度で照射した、一方向の光の透過を測定する。
【0050】
また、上記のような安全システムでは、レーザーレーダーを用いず、赤外線カメラを用いて前方車両の速度や車間距離を測定するものもあるが、その場合には、例えば、レーザーレーダーに一般的なカメラを使用する場合、波長が700〜800nmの光(赤外線)に対して30%以上80%以下、好ましくは、40%以上60%以下であることが有用とされている。透過率の測定方法は、ISO9050に従う。
【0051】
上記のような透過率は、合わせガラスの厚みに依存ところがあり、内側ガラス板2の厚みを0.6〜2.0mm、外側ガラス板1の厚みを1.8〜2.3mmにしており、合わせガラス10全体としても厚みを小さくすることのより、達成することができる。
【0052】
<4.合わせガラスの製造方法>
本実施形態に係る合わせガラスの製造方法は、特に限定されず、従来公知の合わせガラスの製造方法を採用することができる。例えば、まず、中間膜3、4を外側ガラス板1及び内側ガラス板2の間に挟み、これをゴムバッグに入れ、減圧吸引しながら約70〜110℃で予備接着する。予備接着の方法は、これ以外でも可能である。例えば、中間膜3、4を外側ガラス板1及び内側ガラス板2の間に挟み、オーブンにより45〜65℃で加熱する。続いて、この合わせガラスを0.45〜0.55MPaでロールにより押圧する。次に、この合わせガラスを、再度オーブンにより80〜105℃で加熱した後、0.45〜0.55MPaでロールにより再度押圧する。こうして、予備接着が完了する。
【0053】
次に、本接着を行う。予備接着がなされた合わせガラスを、オートクレーブにより、8〜15気圧で、100〜150℃によって、本接着を行う。具体的には、14気圧で145℃の条件で本接着を行うことができる。こうして、本実施形態に係る合わせガラスが製造される。
【0054】
<5.合わせガラスの取付構造>
上述した合わせガラスは、例えば、自動車、建築物などの取付構造体に取付けることができる。このとき、合わせガラスは、取付部を介して取付構造物に取付けられる。取付部とは、例えば、自動車に取付けるためのウレタン枠などのフレーム、接着材、クランプなどが該当する。自動車への取付の一例を挙げると、
図8(a)に示すように、まず、合わせガラス10の両端にピン50を取付けておき、取付対象となる自動車のフレーム70に接着材60を塗布する。フレームには、ピンが挿入される貫通孔80が形成されている。そして、
図8(b)に示すように、合わせガラス10をフレーム70に取付ける。まず、ピン50を貫通孔80に挿入し、合わせガラス10をフレーム70に対して仮止めする。このとき、ピン50には段差が形成されているため、ピン50は貫通孔80の途中までしか挿入されず、これにより、フレーム70と合わせガラス10との間に隙間が生じる。そして、この隙間には上述した接着材60が塗布されているため、時間の経過とともに接着材60を介して合わせガラス10とフレーム70が固定される。
【0055】
このような合わせガラスの取付構造体への取付において、合わせガラス10の取付角度はθは、
図8(c)に示すように、垂直Nから45度以下にすることが好ましい。
【0056】
<6.特徴>
本実施形態によれば、第1中間膜3の一部を構成するコア層31のヤング率を周波数100Hz,温度20℃において、1〜20MPaという小さい値にすることで、次の効果を得ることができる。まず、第1中間膜3のヤング率が大きいと、合わせガラスであっても、中間膜が両ガラス板と一体化されたものと近似され、単板として性質が強くなる。また、以下の数式に示すように、ガラスは一般的に厚みやヤング率が小さくなるほどコインシデンス周波数は高周波側にシフトする。
【数1】
【0057】
これらを考慮すると、例えば、第1中間膜3のヤング率が大きいと、合計の厚みが4mmの合わせガラスであっても、4mmの厚みを有する単板と同様に、コインシデンス周波数が3〜4kHzとなり、人が聞きやすい周波数帯で性能が低下する。一方、ヤング率が小さくなれば、合わせガラスの性能は2枚のガラス板の合算になる。例えば、2mmのガラス板と1mmのガラス板からなる合わせガラスであれば、その性能は、2枚のガラス板の性能の合算となる傾向がある。すなわち、例えば、
図9に示す各ガラス板の厚みは4mmよりも小さいため、コインシデンス周波数は高周波側にシフトし、2mmのガラス板は5000Hzあたりにコインシデンス周波数が存在し、1mmのガラス板は8000Hzにコインシデンス周波数が存在する。そして、これら1mmと2mmの厚さのガラス板の合わせガラスの性能はその合算であるため、コインシデンス周波数は、5000〜8000Hzの間に存在することになる。なお、
図9は、合わせガラスではない単板の周波数と音響透過損失との関係を示すグラフである。
【0058】
そこで、本実施形態においては、第1中間膜3の一部を構成するコア層31のヤング率を周波数100Hz,温度20℃において、1〜20MPaとしているため、合わせガラスの性能を外側ガラス板1と内側ガラス板2との合算となるようにしている。これにより、内側ガラス板2の厚みを0.4〜2.0mmのように小さくしても、人間が聞き取りやすい周波数においては遮音性能は低下しない。すなわち、内側ガラス板2の厚みを小さくすることでコインシデンス周波数が高周波数側にシフトするため、上述したように、内側ガラス板2の薄厚化に起因して2000〜5000Hzの周波数領域において低下した音響透過損失を上昇させることが可能となる。その結果、合わせガラスの軽量化とともに、人間が聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数領域での遮音性能を向上することができる。
【0059】
さらに、本実施形態においては、第1中間膜3の一部を構成するアウター層32のヤング率を周波数100Hz,温度20℃において、560MPa以上としている。本発明者は、中間膜3のアウター層32のヤング率を向上すると、約4000Hz以上の周波数域での遮音性能が向上することを見出した。例えば、一般的に用いられるヤング率が441Hz(20℃、100Hz)のアウター層に対し、ヤング率が560MPa(20℃、100Hz)のアウター層32を用いると、周波数6300Hzにおいて、STLが0.3dB向上することを見出した。一般的に、人間は0.3dB以上の音の変化を認識できるとされているため、ヤング率を高めることで、高周波数域において、人間が認識できるほどの遮音効果を得ることができる。また、アウター層32のヤング率は高くなるほど、遮音性能が高くなることが見出されており、例えば、ヤング率を880MPa(20℃、100Hz)以上とすると、周波数6300Hzにおいて、1.0dB以上STLが向上し、1300MPa(20℃、100Hz)以上とすると、さらにSTLが向上することが見出されている。
【0060】
一方、1000〜3500Hzの低周波数域では、アウター層のヤング率を向上すると、STLが低下することが分かっている。しかしながら、その低下は小さいことも見出されている。
【0061】
また、第1中間膜3のシェード領域10には、第2中間膜4によって形成された透明の透過領域30が形成されている。したがって、安全システムのレーザレーダーやカメラからのレーザーや赤外線は、この透過領域30を通過させることができる。したがって、シェード領域10を有しながらも、透過領域30によって安全システムを稼働させることができる。また、この透過領域30は、第1中間膜3と同一の材料で形成された第2中間膜4によって形成されているため、上述したのと同様の遮音効果を得ることができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0063】
<1.外側ガラス板の厚みの評価>
まず、外側ガラス板の厚みの評価を行った。ここでは、以下に示す7つの合わせガラスを準備した。各合わせガラスは、外側ガラス板、内側ガラス板、及びこれらに挟持される中間膜で構成されている。中間膜は、コア層、アウター層の厚みがそれぞれ0.1mm、0.33mm、ヤング率がそれぞれ10MPa、441MPa(20℃、100Hz)とした。なお、この中間膜は、上記実施形態で示したとおり、第1中間膜と第2中間膜とを組み合わせたものであり、以下の説明では、中間膜とはこの形態を示すものとする。
【表1】
【0064】
上記各合わせガラスを垂直から60度の角度をなすように配置し、平均粒径が約5〜20mmの花崗岩を時速64kmで各合わせガラスに衝突させた。各合わせガラスには、それぞれ30個の花崗岩を衝突させ、亀裂の発生率を算出した。結果は、
図10の通りである。同図に示すように、外側ガラス板の厚さが2.0mmである合わせガラス1〜5は、内側ガラス板の厚さに関わらず、亀裂の発生率が5%以下であった。一方、外側ガラス板の厚みが1.8mm以下である合わせガラス6,7は、内側ガラスの厚さにかかわらず、亀裂の発生率が8%となった。したがって、飛来物に対する耐衝撃性の観点から、外側ガラス板の厚さは、上記のように、1.8mm以上であることが好ましい。更に好ましくは2.0mm以上である。
【0065】
<2.コア層のヤング率に関する評価>
以下の通り、実施例及び比較例に係る合わせガラスを準備した。
【表2】
【0066】
各ガラス板は、上述したクリアガラスで形成した。また、中間膜はコア層とこれを挟持する一対のアウター層で構成した。中間膜の厚みは0.76mm、コア層の厚みは0.1mm、両アウター層の厚みは0.33mmとした。両アウター層のヤング率は441MPa(20℃、100Hz)に調整した。
【0067】
上記実施例及び比較例について、音響透過損失をシミュレーションにより、評価した。シミュレーション条件は、以下の通りである。
【0068】
まず、シミュレーションは、音響解析ソフト(ACTRAN、Free Field technology社製)を用いて行った。このソフトでは、有限要素法を用いて次の波動方程式を解くことにより、合わせガラスの音響透過損失(透過音圧レベル/入射音圧レベル)を算出することができる。
【数2】
【0069】
次に、算出条件について説明する。
(1) モデルの設定
本シミュレーションで用いた合わせガラスのモデルを
図11に示す。このモデルでは、音の発生源側から外側ガラス板、中間膜、内側ガラス板、ウレタン枠の順で積層した合わせガラスを規定している。ここで、ウレタン枠をモデルに追加しているのは、ウレタン枠の有無により音響透過損失の算出結果に少なからず影響があると考えられる点、及び、合わせガラスと車両のウインドシールドの間にはウレタン枠が用いられて接着していることが一般的である点を考慮したためである。
(2) 入力条件1(寸法等)
【表3】
【0070】
なお、ガラス板の寸法である800×500mmは、実際の車両で用いられるサイズよりも小さい。ガラスサイズが大きくなるとSTL値は悪くなる傾向にあるが、これは、サイズが大きいほど拘束箇所が大きくなり、それにともない共振モードが大きくなるからである。但し、ガラスサイズが異なっても、周波数毎の相対的値の傾向、つまり、異なる厚みのガラス板からなる合わせガラスが同厚のガラス板からなる合わせガラスに比して所定の周波数帯で悪くなる傾向は同じである。
【0071】
また、上記表3のランダム拡散音波とは、所定の周波数の音波が外側ガラス板に対してあらゆる方向の入射角をもって伝番していく音波であり、音響透過損失を測定する残響室での音源を想定したものとなっている。
(3) 入力条件2(物性値)
【表4】
[コア層及び両アウター層のヤング率及び損失係数について]
主な周波数毎に異なった値を用いた。これは、コア層及び両アウター層は粘弾性体のため、粘性効果によりヤング率は周波数依存性が強いためである。なお、温度依存性も大きいが、今回は温度一定(20℃)を想定した物性値を用いた。
【表5】
なお、以上のシミュレーション方法は、以下の3,4項においても同じである。
【0072】
結果は、
図12のグラフに示すとおりである。この結果によれば、実施例1〜4のように、コア層のヤング率を20MPa(20℃、100Hz)以下とすることで、異厚によるSTL値を抑えることができる。また、実施例2〜4のように、コア層のヤング率を16MPa(20℃、100Hz)以下とすることで、両ガラスが同厚である比較例1と比べ、2000〜5000Hzの周波数領域でSTLが高くなっている。さらに、実施例3,4のように、コア層のヤング率を10MPa(20℃、100Hz)以下とすることで、両ガラスが同厚である比較例1と比べ、2000〜5000Hzの周波数領域でSTLが明らかに高くなっている。したがって、内側ガラス板を外側ガラス板よりも薄くし、且つコア層のヤング率を20MPa以下とすることで、人間に聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数領域での遮音性能が高くなることが分かった。
【0073】
<3.コア層の厚みに関する評価>
以下の通り、実施例及び比較例に係る合わせガラスを準備した。ここでは、コア層の厚みを変化させ、音響透過損失を上記シミュレーション方法により算出した。中間膜は3層で構成し、総厚を変化させず、コア層とアウター層の厚みを変化させた。コア層のヤング率は10MPa(20℃、100Hz),アウター層のヤング率は441Mpa(20℃、100Hz)とした。また、外側ガラス板及び内側ガラス板の厚みはそれぞれ2.0mm、1.0mmとした。
【表6】
【0074】
上記実施例及び比較例について、音響透過損失をシミュレーションにより評価した。結果は、
図13に示すとおりである。同図によれば、コア層の厚みが0.1mmより小さくなると、2000〜5000Hzの周波数領域で、音響透過損失が低下していることが分かる。したがって、人間に聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数領域での遮音性能を高くするためには、コア層の厚みを0.1mm以上とすることが好ましい。
【0075】
<4.合わせガラスの取付角度に関する評価>
続いて、音の入射角を変化させたシミュレーションにより、合わせガラスの取付角度について評価を行った。ここでは、垂直からの角度を0〜75度に変化させて音響透過損失を算出した。各ガラス板は、上述したクリアガラスで形成した。また、中間膜はコア層とこれを挟持する一対のアウター層で構成した。中間膜の厚みは0.76mm、コア層の厚みは0.1mm、両アウター層の厚みは0.33mmとした。コア層のヤング率は10MPa(20℃、100Hz),両アウター層のヤング率は441MPa(20℃、100Hz)とした。また、ガラス板の厚みは、2.0mm、1.0mmとした。
【表7】
【0076】
上記実施例及び比較例について、音響透過損失を上記シミュレーション方法により、評価した。但し、入力条件として合わせガラスの取付角度を追加してシミュレーションを行った。結果は、
図14に示すとおりである。同図によれば、取付角度が60度を超えると、3000Hz付近の周波数で、STLが急激に低下していることが分かる。したがって、人間に聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数領域での遮音性能を高くするためには、合わせガラスの垂直からの取付角度を45度以下とすることが好ましいことが分かった。また、60度以下であれば、遮音性能を高めることができ、場合によっては、75度以下とすることで、遮音性能を高めることができる。
【0077】
<5.アウター層のヤング率に関する評価>
アウター層のヤング率に関する評価を行うため、以下の通り、実施例及び比較例に係る合わせガラスを準備した。ここでは、外側ガラス及び内側ガラスの厚みを一定にした上で、中間膜のアウター層及びコア層のヤング率を変化させ、音響透過損失を上記シミュレーション方法により算出した。各ガラス板は、上述したクリアガラスで形成し、中間膜はコア層とこれを挟持する一対のアウター層で構成した。中間膜の厚みは0.76mm、コア層の厚みは0.1mm、両アウター層の厚みは0.33mmとした。
【表8】
【0078】
結果は、以下の通りである。まず、
図15に実施例13及び14の結果を示した。上述したコア層のヤング率の評価では、ヤング率を20MPa以下にすると、人間が聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数領域で音響透過損失が高くなっていることが分かった。これに対して、実施例13及び14では、コア層のヤング率を一定にした上で、アウター層のヤング率を変化させた。その結果、
図15に示すように、アウター層のヤング率が高い実施例14では、5000Hz以上の高い周波数領域で、音響透過損失が高くなることが分かった。
【0079】
また、実施例15〜18では、コア層のヤング率をさらに下げるとともに、アウター層のヤング率を大きくしている。
図16に示すように、これらの例では、実施例13及び14に比べ、2000〜5000Hzの周波数領域での音響透過損失が高くなっているものの、実施例13及び実施例14ほど5000Hz以上の高い周波数領域での音響透過損失は高くなっていない。特に、アウター層のヤング率が1764MPaを超えると、5000Hz以上の高い周波数領域での音響透過損失はほとんど高くならない。