【実施例】
【0031】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0032】
本実施例は、立型ターニングセンターに本発明を適用したもので、ベースにターニングテーブル1を設けると共に、左右にコラム16を設け、このコラム16に上下方向にガイドレール17を設け、このガイドレール17に沿って上下動自在にしてコラム16間にクロスレール2を設けて、このクロスレール2をターニングテーブル1の上方に設け、このクロスレール2に沿って左右動自在に刃物台3を設け、この刃物台3に前記ターニングテーブル1に芯出して固定したワーク4を加工する工具5を着脱自在に設ける工具取付部6を設けた構成としている。
【0033】
本実施例は、このX軸方向に設けた前記クロスレール2とこのX軸方向と直交するY軸方向に前記工具取付部6を移動調整するY軸移動調整機構Aを前記刃物台3に設け、このY軸移動調整機構Aは、
固定部側スライドガイド部7Aと移動部側スライドガイド部7Bとの間にスライドブロック8を往復スライド自在に構成し、
固定部側スライドガイド部7Aと移動部側スライドガイド部7Bの少なくとも一
方を傾斜状態にして前記刃物台3の固定部側9と移動部側10とに介在状態に設けて、前記スライドブロック8を前記
固定部側スライドガイド部7Aと移動部側スライドガイド部7Bとの間でスライドさせることで、前記傾斜状態に設けた
固定部側スライドガイド部7
A又は移動部側スライドガイド部7BによってY軸方向への押圧力が生じて前記固定部側9に対して前記移動部側10がY軸方向に移動し、この移動部側10に設けた前記工具取付部6の位置がY軸方向に移動するように構成している。
【0034】
本実施例のこのY軸移動調整機構Aは、具体的には、コンパクトに設計でき、また更にスムーズに精度良くY軸方向に移動調整できるように、前記X軸方向及び前記Y軸方向と直交するZ軸方向に設ける前記
固定部側スライドガイド部7Aと移動部側スライドガイド部7Bとの間に前記スライドブロック8を前記Z軸方向に往復スライド自在に構成し、
固定部側スライドガイド部7Aと移動部側スライドガイド部7Bの少なくとも一
方をY軸方向に傾斜状態に設けて、前記刃物台3の前記クロスレール2の取付部側となる固定部側9と、この固定部側9に対して前記Y軸方向に移動自在に設けた前記移動部側10とに介在状態に設け、前記スライドブロック8を前記
固定部側スライドガイド部7Aと移動部側スライドガイド部7Bとの間でZ軸方向にスライドさせることで、前記Y軸方向に傾斜した前記
固定部側スライドガイド部7
A又は移動部側スライドガイド部7BによってY軸方向への押圧力が生じて前記固定部側9に対して前記移動部側10がY軸方向に移動し、この移動部側10に設けた前記工具取付部6の位置がY軸方向に移動するように構成している。
【0035】
更に説明すると、前記刃物台3は、前記クロスレール2に移動自在に設けた前記固定部側9となる刃物台取付部9と、Y軸方向に移動自在に設けた前記移動部側10となる刃物台本体部10とから構成し、この刃物台本体部10にZ軸方向に移動自在なラム12を設け、このラム12の下端部にこのラム12を設けた主軸11と連結可能に回転工具5Bを取り付ける工具取付部6を設けている。
【0036】
尚、この刃物台3の刃物台取付部9は、クロスレール2に沿って直接左右動(X軸方向に移動)自在に設けても良いが、このクロスレール2に左右動自在に設けた縦レール部を設け、この縦レール部に上下動自在に設け、この刃物台3自体もZ軸方向に移動調整できるように構成しても良い。
【0037】
本実施例では、この刃物台取付部9に、Z軸方向に沿って真直ぐ
な固定部側スライドガイド部
7Aを設け、刃物台本体部10には、Z軸方向に沿って
移動部側スライドガイド部
7Bを設けるが、これをY軸方向にやや傾斜状態に設け、
固定部側スライドガイド部7Aと移動部側スライドガイド部7Bとの間がZ軸方向に、具体的には下方向って幅狭となるように設けると共に、この
固定部側スライドガイド部7Aと移動部側スライドガイド部7Bとの間に両辺がスライド自在に係合するように、下方に行くほど幅狭い前記スライドブロック8を上下往復動自在に係合し、このスライドブロック8を下方へスライド駆動することで
固定部側スライドガイド部7Aと移動部側スライドガイド部7Bとの間が押し拡げられて、前記刃物台取付部9に対して刃物台本体部10がY軸方向、具体的には前方へ移動するように構成している。
【0038】
また、本実施例のこの刃物台取付部9と刃物台本体部10との間に介在するY軸移動調整機構Aは、刃物台3の左右に設けるが、市販のLMガイドを用いている。即ち、前記スライドブロック8は、スライド駆動装置13により直動スライド駆動する直動スライド体8とし、スライド駆動装置13によりボールネジ18を回転させ、これに螺合する螺合連結部19を介して前記直動スライド体8をボールネジ18に沿って直動スライド駆動するように構成している。
【0039】
前記
固定部側スライドガイド部7A及び移動部側スライドガイド部7Bは、ボールがボールリテーナにより保持されボール循環部内に移動自在に収納されたボールリテーナ循環装置を介して前記直動スライド体8の両辺が夫々スライド自在に係合する
固定部側スライドガイド体7
A及び移動部側スライドガイド体7Bとし、前述のように対向する一方の前記
固定部側スライドガイド体7
A又は移動部側スライドガイド体7Bを前記Y軸方向に傾斜状態に設けて、これに応じた形状とした直動スライド体8の直動スライドによってY軸方向へ前記刃物台3の移動部側10をY軸方向に微調整移動するように前記Y軸移動調整機構Aを構成している。
【0040】
従って、本実施例では、前記工具取付部6に前記工具5として旋削工具5Aを設けて、前記ワーク4を旋削加工した後、前記旋削工具5Aに替えて回転工具5Bを設けてミーリング加工する際に、旋削加工時は、ターニングテーブル1の回転によりその駆動系ギアやベアリングに生じる熱やワーク4と旋削工具5Aと接触摩擦による加工熱などによりターニングテーブル1の中心が熱変位していた状態で旋削加工し、この旋削加工後に冷えて再び変形し、このワーク4の旋削加工中心(例えばワーク4の旋削加工円形凹部のワーク旋削加工中心)に対して主軸位置が熱変位により芯ズレしている場合には、この芯ズレた分に対応する所定ストロークだけ、前記刃物台3を前記クロスレール2に沿ってX軸方向に移動調整すると共に、前記スライドブロック8を移動調整して、前記X軸方向及び前記Y軸方向に前記工具取付部6を移動調整するように前記Y軸移動調整機構Aを構成している。
【0041】
次に前記主軸11の位置ズレ(芯ズレ)を検知して主軸合せを行う主軸位置合せ方法について説明する。
【0042】
例えば、工具取付部6に主軸中心が一致するように所定径のテストバーを取り付け、ターニングテーブル1又はワーク4上に、中心方向に向けて水平突出した突没自在な検査部先端の検査子をテストバーの外周面に弾圧当接するケージを設け、ターニングテーブル1を回転させてケージの振れを見ることで主軸11の位置ズレ(芯ズレ)を検知することができる。
【0043】
芯ズレが生じていなければ、テストバーの外径は一定だからケージは振れないが、芯ズレしていればターニングテーブル1の回転と共にケージバーの回りを周回するケージの検査子はこの芯ズレのため出入りしケージが振れることになるため芯ズレを検知でき、この振れが最小となるようにX軸方向に主軸11を移動調整し、更に振れが最小あるいは理論的にはゼロとなるようにY軸方向にも主軸11を移動調整して主軸11の芯ズレを補正することができる。
【0044】
また、この芯ズレを更に容易にして確実に検知でき、またその芯ズレ補正の自動化も容易になる新たな芯ズレ検知及び芯ズレ補正方法について、以下説明する。
【0045】
即ち、本実施例では、工具取付部6に取り付けて主軸11と共に回転する回転工具5Bの位置を調整する工作機械における主軸位置合せ方法について説明すると、前記工具取付部6に前記主軸11中心とカメラ14中心とが一致するようにカメラ14を取り付けて、ターニングテーブル1に固定したワーク4又はターニングテーブル1自体又は前記ターニングテーブル1若しくは前記ワーク4に設けた撮影物を撮影対象として撮影する構成とし、このカメラ14を前記主軸11の回転により自転させながら撮影した前記カメラ14の撮影画像を取得し、この撮影画像の前記カメラ自転による前記撮影対象の揺れ動若しくは偏心動などの芯ズレにより生じる芯ズレ画像動作の有無を自動検知若しくは目視検知して前記主軸11の芯ズレを検知し、この芯ズレ検知に基づいて前記主軸11の位置を移動調整する主軸位置合せ方法を用いる。
【0046】
具体的には、本実施例のカメラ14は、回転工具5Bと同じアタッチメント部にCCDカメラ14を設けた構成(芯ズレ測定用カメラ)とし、このアタッチメント部を工具取付部6にチャックしカメラ14を下向きにして工具と変換自在に取り付ける構成としている。
【0047】
更に説明すると、前述のようにこのカメラ14は真下(主軸方向)を向いて撮影するようにカメラ14の上部に前記アタッチメント部を設けるが、カメラ軸芯微調整用のXY方向微調整ベース装置20を介してXY方向にカメラ14を微調整し主軸11中心とカメラ14の撮影中心とを合致させてカメラ14を下向きにして工具取付部6に取り付ける。
【0048】
また、このカメラ14は、ターニングテーブル1に固定したワーク4又はターニングテーブル1自体又は前記ターニングテーブル1若しくは前記ワーク4に設けた撮影物を撮影対象として撮影する構成としている。
【0049】
具体的には、前述のようにこのカメラ14の撮影対象はターニングテーブル1やワーク4に判別視認し易い撮影物を特別に設けても良いが、単にターニングテーブル1の円形エッジやワーク4の旋削加工円形凹部の円形エッジを撮影対象としている。
【0050】
そして、このカメラ14を前記主軸11の回転により自転させながら撮影した前記カメラ14の撮影画像を取得し、この撮影画像の前記カメラ自転による前記撮影対象の揺れ動若しくは偏心動などの芯ズレにより生じる芯ズレ画像動作の有無を自動検知若しくは目視検知して前記主軸11の芯ズレを検知する。
【0051】
具体的には、前記カメラ14を主軸11により自転させて前記撮影対象の撮影画像を動画として取得し、この撮影画像の前記撮影対象の芯ズレ画像動作の有無を自動検知して、前記ターニングテーブル1中心と前記主軸11中心との芯ズレを検知し、この芯ズレ検知に基づいて前記主軸11の位置を移動調整して芯合せを行うようにしている。
【0052】
具体的には、本実施例では、前記ターニングテーブル1を回転させて前記撮影対象を回転させながら、前記カメラ14を主軸11により自転させて撮影すると共に、このターニングテーブル1の回転と前記主軸11によるカメラ14による自転とを同期させながら撮影して、前記撮影対象の撮影画像の動画が回転せずに静止画となるようにし、更に前記芯ズレ画像動作なく完全な(この動作もない)静止画となったことを自動検知若しくは目視検知した際に、前記ターニングテーブル1中心と前記主軸11中心とが一致したと判断すると共に、前記芯ズレ画像動作もない静止画となるように前記主軸11の位置を移動調整して芯合せを行うようにしている。
【0053】
即ち、撮影対象を回転させるターニングテーブル1と、カメラ14の自転(主軸回転)とが同期していると、芯ズレが生じていなければ静止画となる。しかし、芯ズレが生じていると、例えば撮影対象のターニングテーブル1のエッジやワーク4のエッジ、あるいは旋削加工円形凹部の円形エッジ以外は、静止画となっていても、これらは芯ズレによる偏心動をしているために、この偏心動、即ち芯ズレ画像動作が瞬時に把握できる。
【0054】
即ち、画像処理判断によってこの芯ズレ画像動作の有無が容易に判断できる。従って、このように同期させてカメラ14を回転させて撮影すれば、一層容易に主軸11の芯ズレを自動判別あるいは目視判別できることとなる。
【0055】
また、このように本実施例では、カメラ14による撮影画像を取り込んで芯ズレを検知する芯ズレ自動判別装置によって自動判別するように構成しているが、前述のように本実施例では、この芯ズレ自動判別装置には芯ズレ画像動作があるか否かを自動判別する手段を組み込んだ判別装置としている。
【0056】
即ち、画像処理による芯ズレ画像動作の有無が容易にして的確に判断できるように、撮影対象(判別対象)として、ターニングテーブル1の回転中心を中心とした円形線、具体的には、本実施例ではターニングテーブル1の円形エッジあるいはワーク4に加工済の旋削加工円形凹部の旋削加工円形エッジとし、この円形エッジが偏心動しているか否かを自動検知する自動判別装置としている。
【0057】
このような撮影対象の偏心動を自動判別することで、たとえ前述のようにターニングテーブル1とカメラ14とが同期して回転していなくても(単にカメラ14だけ回転していても)、芯ズレが生じていれば偏心動し、芯ズレを生じていなければ円形エッジが偏心することなく回転している動画となり、判別が容易となる。
【0058】
また、この点本実施例では、更にこの偏心動の有無の判断が一層瞬時に容易に判別できるように、ターニングテーブル1とカメラ14とを同期させて回転させ、芯ズレが生じていなければ完全な静止画となるようにし、芯ズレが生じている場合は回転していない(静止している)円形エッジが偏心動し、この偏心動の有無を検知するようにしている。
【0059】
即ち、本実施例では静止画となっているか否かを自動判別する手段を組み込んだ判別装置とし、完全な静止画とならず、例えば旋削加工円形凹部の旋削加工円形エッジが静止しておらずカメラ撮影中心に対して偏心動(揺れ動)するなどの芯ズレ画像動作が生じていると検知すれば芯ズレありと検知し、X軸方向及びY軸方向に主軸11(カメラ14)を移動調整し、この芯ズレ動作が小さくなるように調整し、この芯ズレ画像動作もなく、完全に本実施例では、静止画となったと判別した際に、芯ズレなしと判断し、移動調整を終了し、補正を完了する構成としている。
【0060】
また、本実施例では、前述のようにターニングセンターにおいて、旋削加工を行った後に、ワーク4を割出ししてミーリング加工を行う場合、旋削加工時はターニングテーブル1の回転によりその駆動系のギアやベアリングに生じる熱やワーク4と旋削工具5Aとの接触摩擦による加工熱などにより、ワーク4と共にターニングテーブル1の回転中心が熱変形によって位置ズレた状態で加工されるが、その後、ミーリング加工を行う場合は、ターニングテーブル1やワーク4は冷えて再び変形するために、このミーリング加工時において、テーブル中心、即ち旋削加工時のワーク加工中心と主軸11はこの熱変位により位置ズレる場合がある。
【0061】
そのためターニングセンターに、前記カメラ14(芯ズレ測定用カメラ)を備えておき、回転工具5Bに替えてこのカメラ14を工具取付部6に取り付け、旋削加工後ミーリング加工を行う前に、逐次主軸11の芯ズレを前述のように検知して、この検知に基づいてX軸方向及びY軸方向に移動調整してこの芯ズレ分を補正する本実施例の主軸合せを行う。
【0062】
即ち、ターニングテーブル1を割出し主軸位置を移動制御して所定位置にミーリング加工を行う際、既に旋削加工されているワーク4の旋削加工中心と主軸位置とのズレを検知し、この芯ズレ分(補正分)を刃物台3の移動によってX軸方向及びY軸移動調整機構AによってY軸方向に、主軸11を移動調整して主軸11の位置合せを行ってから、工具取付部6に主軸11と共に回転自在に回転工具5Bをチャックし、この回転工具5Bを移動制御してミーリング加工を行うようにしている。
【0063】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。