(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゲイン補正部が、所定の判定基準に基づいて判定された、前記GPS速度に基づく補正がなされた前記1次IMU速度が入力されているタイミングであること、および、定速走行中であることを条件として、前記CAN速度のゲインを補正することを特徴とする請求項1記載の速度計測装置。
前記遅れ推定部が、所定の判定基準に基づいて判定された、前記GPS速度に基づく補正がなされた前記1次IMU速度が入力されているタイミングであること、および、車速が変化しているタイミングであることを条件として、前記CAN速度の遅れ時間を推定するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の速度計測装置。
IMU由来の速度を前記GPS速度に基づいて補正することにより前記1次IMU速度を生成する1次IMU速度生成部をさらに備えたことを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項記載の速度計測装置。
前記速度補正部が、前記1次IMU速度とは独立に生成したIMU由来の速度を補正することにより前記2次IMU速度を生成するものであることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項記載の速度計測装置。
前記速度補正部が、前記1次IMU速度を補正することにより前記2次IMU速度を生成するものであることを特徴とする請求項1から6のうちいずれか1項記載の速度計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、上掲の特許文献1,2に開示されている速度計測装置の場合、GPS受信機由来の速度データの信頼性が高い場合には高精度な出力速度データが生成される。しかしながら、上記のような、規定数未満のGPS衛星からの電波しか受信できない場合などのように、GPS受信機由来の速度データの信頼性が低い場合には、オフセット誤差が順次累積されるという、IMU由来の速度データの短所がそのままあらわれた出力速度データが得られることになる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、GPS受信機から信頼度の低い速度データしか得られないタイミングにおいても、高精度に補正された速度データを生成することのできる速度計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明の速度計測装置は、
GPS受信機由来のGPS速度に基づいて補正されたIMU由来の車速を表わす1次IMU速度に基づいて、車速を表わすCAN速度のゲインを補正するゲイン補正部と、
1次IMU速度とCAN速度との間の相関演算により、1次IMU速度に対するCAN速度の、1次IMU速度とCAN速度との間の誤差が最小となる遅れ時間を推定する遅れ推定部と、
IMU由来の速度を補正することにより2次IMU速度を生成する速度補正部
であって、
2次IMU速度を、上記遅れ推定部で推定されたCAN速度の遅れ時間だけ遅延させることでCAN速度と時間的に同期した遅延2次IMU速度を生成する同期化処理部、
上記ゲイン補正部で補正されたCAN速度と同期化処理部で生成された遅延2次IMU速度との間の差分を生成する差分器、
前記差分器で生成された差分を入力し、運動方程式に基づいて、IMU由来の現時点の速度を補正するカルマンゲインを生成するカルマンゲイン算出部、および
カルマンゲイン算出部で算出されたカルマンゲインを使って、IMU由来の現時点の速度を補正することで上記2次IMU速度を生成する補正速度生成部を有する速度補正部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の速度計測装置は、車両内に構築されたネットワークであるCAN(Control Area Network)に流れる、車輪の回転等に基づいて計測されるCAN速度のゲインを補正するとともに、そのCAN速度の遅れ時間を推定し、ゲインが補正されたCAN速度に基づき、かつそのCAN速度が推定された遅れ時間だけ遅れていることを考慮してIMU由来の速度を補正することにより2次IMU速度を生成するものである。
【0013】
このため、GPS由来の速度データで補正された1次IMU速度の信頼度が低いタイミングであっても、高精度の2次IMU速度が得られる。したがって、常に高精度の速度データが生成されることになる。
【0014】
ここで、本発明の速度計測装置において、上記ゲイン補正部が、所定の判定基準に基づいて判定された、GPS速度に基づく補正がなされた1次IMU速度が入力されているタイミングであること、および、定速走行中であることを条件として、CAN速度のゲインを補正することを特徴とする。
【0015】
GPS速度に基づいて補正がなされていて、かつ定速走行中であれば、1次IMU速度に基づいてCAN速度のゲインを高精度に補正することができる。このようにして、GPS速度に基づいて補正がなされている1次IMU速度を使ってCAN速度のゲインを補正しておき、ゲインが補正されたCAN速度を使ってIMU由来の速度を補正することにより、GPS速度の信頼度が低いタイミングにおいても高精度の2次IMU速度が生成される。
【0016】
また、本発明の速度計測装置において、上記遅れ推定部が、所定の判定基準に基づいて判定された、GPS速度に基づく正確な補正がなされた1次IMU速度が入力されているタイミングであること、および、車速が変化しているタイミングであることを条件として、CAN速度の遅れ時間を推定するものであることが好ましい。
【0017】
1次IMU速度がGPS速度に基づいて補正がなされていて、かつ、車速が変化しているタイミングであれば、1次IMU速度に基づいてCAN速度の遅れ時間を高精度に推定することができる。このようにして推定された遅れ時間を使って2次IMU速度をCAN速度に同期させることにより、GPS速度の信頼度が低いタイミングにおいても高精度の2次IMU速度が生成される。
【0018】
さらに、本発明の速度計測装置において、上記速度補正部が、
上記2次IMU速度を、遅れ推定部より推定されたCAN速度の遅れ時間に応じた遅延量だけ遅延させることにより、CAN速度と同期させる同期化処理部と、
ゲイン補正部でゲイン補正されたCAN速度と、同期化処理部で遅延された2次IMU速度との差分値を算出する差分値算出部と、
差分値算出部で算出された差分値を入力してカルマンゲインを算出することにより、2次IMU速度算出のための補正値を生成するカルマンゲイン算出部と、
IMU由来の速度をカルマンゲイン算出部で生成された補正値に基づいて補正することにより、2次IMU速度を生成する補正速度生成部とを備えたものであることが好ましい。
【0019】
この構成を備えることにより、IMU由来の速度から高精度に補正された2次IMU速度が生成される。
【0020】
さらに、本発明の速度計測装置は、IMU由来の速度をGPS速度に基づいて補正することにより1次IMU速度を生成する1次IMU速度生成部をさらに備えたものであってもよい。
【0021】
本発明の速度計測装置は、1次IMU速度を別装置から受け取るものであってもよいが、上記のように、1次IMU速度を生成する1次IMU速度生成部が組み込まれたものであってもよい。
【0022】
また、本発明の速度計測装置において、上記速度補正部は、1次IMU速度とは独立に生成したIMU由来の速度を補正することにより2次IMU速度を生成するものであってもよく、あるいは、上記速度補正部は、1次IMU速度を補正することにより2次IMU速度を生成するものであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
以上の本発明によれば、GPS受信機から信頼度の低い速度データしか得られないタイミングにおいても、高精度に補正された速度データを生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態としての速度計測装置を表わしたブロック図である。
【0027】
この速度計測装置100Aは、ゲイン補正部10と、遅れ推定部20と、速度補正部30と、切替スイッチ40とを備えている。
【0028】
ゲイン補正部10には、CAN速度と1次IMU速度とが入力され、CAN速度が1次IMU速度と同じ速度となるようにCAN速度のゲイン補正が行なわれる。
【0029】
ここで、CAN速度は、車両の車輪の回転等に基づいて計測され、車両内に構築されたCAN(Control Area Network)に流れる速度信号により得られる速度である。このCAN速度は、車両の正確な速度にほぼ比例しているが、不正確な速度であり、かつ、応答遅れがある。
【0030】
一方、1次IMU速度は、車両に搭載されたIMU(Inertial Measurement Unit)由来の速度であって、同じ車両に搭載されたGPS(Global Positioning System)受信機由来の速度によって補正された速度である。IMUは、慣性計測装置と呼ばれ、3軸のジャイロセンサと3軸の加速度センサが組み込まれていて、3次元の角速度と3方向の加速度が求められる。IMUからは、それらの角速度と加速度がリアルタイムで、かつ例えば10ms等の周期で計測されて出力される。このIMUから出力される角速度および加速度は、そのIMUが搭載されている車両の進行方向を基準としたときの角速度および加速度である。
【0031】
また、GPS受信機での速度計測法の1つとして、GPS衛星から送られてくる電波の搬送波のドプラシフト量に基づいて速度(以下、「ドプラ速度」と称することがある)を計測する計測法が知られている。この計測法を採用すると、高精度な速度計測を行なうことができる。しかしながら、前述の通り、例えば、木々やビル等によって規定数(4個)未満の数のGPS衛星からしか電波を受信することができない状態にあると正確な速度計測が不能となるなど、高精度な速度計測を行なうことのできる条件には制約がある。このGPS受信機からは、車両の進行方向基準ではなく、地軸基準(北方向、東方向、下方向)の各速度が算出される。また、このGPS受信機で得られる速度は、一例として、100ms等、IMUよりも更新速度が遅く、かつ一例として、140〜150ms程度の時間遅れとジッタ(時間遅れの変動)を伴っている。
【0032】
ここで説明している1次IMU速度は、IMU由来の加速度等に基づいて算出された、リアルタイム性が確保され、かつGPS受信機由来の速度に基づいて補正された車両の進行方向の速度をいう。IMU由来の加速度等に基づいて算出される速度をGPS受信機由来の速度に基づいて如何にして補正するかという点については、特定の補正演算に限るものではないが、ここでは後で、その一例について説明する。また、IMU加速度も、上述のIMUから出力された車両の進行方向の加速度である。
【0033】
図1に示す速度計測装置には、さらに、「勾配」、「衛星捕捉オン/オフ」、および「リバース」の各情報が入力される。
【0034】
「勾配」は、現在走行中の道路の勾配を表わす情報である。
【0035】
この「勾配」の情報は、IMU由来の情報であってもよく、GPS受信機由来の情報であってもよく、あるいはそれら双方の情報を統合させた情報であってもよい。ただし、通常、CANからは「勾配」の情報を得ることはできない。
【0036】
「衛星捕捉オン/オフ」は、GPS受信機において正確な速度計測に必要な数以上の数のGPS衛星からの電波を受信できる状況にある(オン)か否か(オフ)かをあらわす情報である。本実施形態では、この「衛星捕捉オン/オフ」の情報を、IMU由来の速度がGPS受信機由来の速度に基づいて正しく補正されているか否かの情報として採用している。ただし、GPS受信機由来の速度の信頼性を評価する指標は、「衛星捕捉オン/オフ」の情報のみではない。例えばGPS受信機において速度分散に基づいて算出される、ドプラ速度の精度の指標を表わすドプラ精度指標値を採用し、IMU由来の速度がGPS由来の速度に基づいて正しく補正されているか否かを、そのドプラ精度指標値に基づいて判定してもよい。あるいは、正しく補正されているか否かを、前掲の特許文献1において提案されている良否係数に基づいて判定してもよい。
【0037】
図2は、
図1に1つのブロックで示すゲイン補正部の内部構成を表わしたブロック図である。
【0038】
このゲイン補正部10では、CAN速度を1次IMU速度に一致させるべく、CAN速度のゲインが補正される。
【0039】
このゲイン補正部10は、判定部11を備えている。この判定部11では、後述する補正係数算出部13においてCAN速度のゲイン補正するための正確な補正係数αを算出することが可能なタイミングであるか否かが判定される。
【0040】
この判定部11では、以下の判定条件に基づく判定が行なわれ、正確な補正係数αの算出が可能なタイミングのときにイネーブル信号ENが出力される。
【0041】
・車両が前進していること
車両がバックしているタイミングを除外するための判定基準である。前進しているか否かは、CANに流れる「リバース」の情報から知ることができる。
【0042】
・CAN速度および1次IMU速度の双方が10km/h以上の速度を示していること
車両がCAN速度を補正することができる速度で走行しているタイミングを狙うための判定基準である。判定部11には、CAN速度および1次IMU速度が入力され、この判定基準はそれらに基づいて行なわれる。
【0043】
・路面の勾配が±5%以内であること
水平な道路を走行しているタイミングを狙うための判定基準である。これは、IMUあるいはGPS受信機から得られる「勾配=ten(上下方向の速度/水平方向の速度)」の情報に基づいて判定される。
【0044】
・GPS受信機で計測される速度の信頼性が高いこと
GPS受信機由来の速度によって正確に補正された1次IMU速度が得られているタイミングを狙うための判定基準である。本実施形態では、「衛星捕捉オン/オフ」の情報に基づいて判定される。
【0045】
・速度変動が±5%以内であること
CAN速度は応答遅れが大きいため、応答遅れが問題とならない定速走行時を狙うための判定基準である。判定部11には、1次IMU速度が微分器12を経由することで算出される加速度が入力され、その加速度に基づいて判定される。
【0046】
この
図2に示すゲイン補正部10には、補正係数算出部13が備えられており、判定部11において上記の判定基準の全てを満たしたタイミングで補正係数算出部13に向けてイネーブル信号ENが出力される。この補正係数算出部13では、イネーブル信号ENが入力されている間、補正係数αが繰り返し算出される。一方、この補正係数算出部13では、判定部11からのイネーブル信号ENが途切れたときは、その直前に算出した補正係数αがそのまま維持される。
【0047】
この補正係数算出部13には、差分器131が備えられており、この差分器131では、入力されてきた1次IMU速度と、後述する補正部14においてゲイン補正された後のCAN速度との差分値V
eが算出される。
【0048】
この差分値V
eは、累積値算出器132に入力され、差分値V
eの累積値
【0051】
ここでdtは、演算の繰り返し周期(本実施形態では10ms)である。
【0052】
本実施形態では、CAN速度および1次IMU速度は100Hzのクロックに同期して10ms間隔で入力され、1回ごとの演算が10ms間隔で算出される。
【0053】
累積値算出部132で算出された累積値は増幅器(減衰器)133においてあらかじめ定められた倍率(減衰率)だけ増幅(減衰)されることで、補正係数αが算出される。この算出された補正係数αは補正部14の乗算器141に入力される。
【0054】
乗算器141では、入力されてきたCAN速度に補正係数αが乗算されて加算部142に入力される。加算器142では、入力されてきたCAN速度と、補正係数αが乗算されたCAN速度とが加算されて、ゲイン補正後のCAN速度が生成される。
【0055】
すなわち、この補正部14では
CAN速度(ゲイン補正)=(1+α)・CAN速度
の演算が行なわれる。
【0056】
この
図2に示すゲイン補正部10では、このようにしてゲイン補正後のCAN速度が算出される。
【0057】
図3は、
図1に1つのブロックで示す遅れ推定部の内部構成を表わしたブロック図である。
【0058】
この遅れ推定部20では、リアルタイム性が確保されている1次IMU速度を基準としたときのCAN速度の遅れ時間の推定が行なわれる。
【0059】
この遅れ推定部20にも、判定部21および1次IMU速度を微分する微分器22が備えられている。
【0060】
ゲイン補正部10の判定部11は、定速走行していることが、イネーブル信号ENを出力する1つの条件であったが、この遅れ推定部20の判定部21では、それに代わり、加速あるいは減速を行なっている(1例として加速度±3m/s
2を越えている)タイミングであることが、1つの条件となる。定速走行時には遅れ時間を推定することができないからである。その他の判定条件は、ゲイン補正部10における判定条件と同一であり、ここでの重複説明は省略する。
【0061】
この判定部21から出力されたイネーブル信号ENは誤差演算部24に入力される。この誤差演算部24では、ゲイン補正後のCAN速度と、遅延部23で遅延を受けた1次IMU速度とが入力され、イネーブル信号ENの入力を受けて、以下に説明する誤差演算が行なわれる。また、この誤差演算部24では、イネーブル信号ENが中断されたときは、その直前の演算結果が保持され、イネーブル信号ENが再入力されると演算が再開される。
【0062】
図4は、遅延部23および誤差演算部24における処理内容を示した模式図である。
【0063】
図4(A)には、ある時点で遅延部23等に格納されているデータを示している。ここでa
i(i=0,1,2,・・・)は10msごとに入力されてくる1次IMU速度を表わしている。a
0の次(10ms後)にa
1が入力され、その後(さらに10ms後)にa
2が入力され、・・・のようにa
iのiの数値が大きいデータほど後に入力されたデータである。
【0064】
遅延部23には、入力されてきたデータの格納領域が30用意されていて、図の左側から入力されたデータa
0は、10msごとに右に1つずつシフトし、
図4(A)に示す時点では遅延部23の一番右側の格納領域に移動している。
【0065】
図4(A)に示す時点では、一番左側の格納領域にはデータa
30が格納され、その右隣りの格納領域にはデータa
29が格納されている。そして今まさに、データa
30が入力されている。また、b
i(i=30,31,・・・)はゲイン補正後のCAN速度を表わしており、1次IMU速度と同期して、今まさにデータb
30が入力されてきている。
【0066】
図3に示すように、誤差演算部24は、差分器241と、2乗演算器242と、積算器243とから構成されている。
【0067】
図4に戻って誤差演算部24における演算処理について説明する。
【0068】
図3に示す差分器241は、
図4に示す30個の差分器241_1,241_2,241_3,・・・,241_30からなる。これら30個の差分器241_1,241_2,241_3,・・・,241_30では、それぞれ、a
30−b
30,a
29−b
30,a
28−b
30,・・・a
0−b
30が算出される。すなわち、差分器241_1では、今回入力された同時刻の2つのデータa
30,b
30どうしの差分が算出され、差分器241_2では1周期前(10ms前)に入力された1次IMU速度a
29と今回入力されたCAN速度(ゲイン補正)b
30との差分が算出され、差分器241_3では、2周期前(20ms前)に入力された1次IMU速度a
28と今回入力されたCAN速度(ゲイン補正)b
30との差分が算出され、以下同様にして、差分器241_30では30周期前(300ms前)に入力された1次IMU速度a
0と今回入力されたCAN速度(ゲイン補正)b
30との差分が算出される。
【0069】
図3に示す2乗演算器242は、
図4に示す30個の2乗演算器242_1,242_2,242_3,・・・,242_30の集合体である。
図4(A)に示す時点において、これら30個の2乗演算器242_1,242_2,242_3,・・・,242_30では、それぞれ
(a
30−b
30)
2,(a
29−b
30)
2,(a
28−b
30)
2,・・・(a
0−b
30)
2
が算出される。
【0070】
さらに、
図3に示す積算器243は、
図4に示す30個の積算器243_1,243_2,243_3,・・・,243_30の集合体である。30個の積算器243_1,243_2,243_3,・・・,243_30では、それぞれ、各2乗演算器242_1,242_2,242_3,・・・,242_30から1周期ごとに出力される誤差の各2乗値が積算される。
【0071】
図4(B),(C)には、
図4(A)に示した時点よりも、それぞれ1周期(10ms)後、2周期(20ms)後の演算結果が示されている。このように、各周期ごと(10msごと)に演算が行なわれ、30個の積算器243_1,243_2,243_3,・・・,243_30では、それぞれ、
・・・+(a
30−b
30)
2+(a
31-b
31)
2+(a
32-b
32)
2+・・・
・・・+(a
29−b
30)
2+(a
30-b
31)
2+(a
31-b
32)
2+・・・
・・・+(a
28−b
30)
2+(a
29-b
31)
2+(a
30-b
32)
2+・・・
・・・・・・
・・・+(a
0−b
30)
2+(a
1-b
31)
2+(a
2-b
32)
2+・・・
が算出される。
【0072】
すなわち、各積算器243_1,243_2,243_3,・・・,243_30では、1次IMU速度a
iとCAN速度(ゲイン補正)b
iに関し、それぞれ、同一時点どうしの2乗誤差の積算値、1周期ずれた時点どうしの2乗誤差の積算値、2周期ずれた時点どうしの2乗誤差の積算値、・・・、30周期ずれた時点どうしの2乗誤差の積算値が算出される。
【0073】
図3に示す誤差演算部24では、上記の通りの演算が行なわれ、その演算結果は、遅れ時間算出部25に入力される。遅れ時間算出部25では、
図4に示す30個の積算器243_1,243_2,243_3,・・・,243_30の出力どうしを比較し、最小値の出力の積算器を選定することで、遅れ時間Iが推定される。具体的には、同一時刻どうしの2乗誤差の積算値を算出している積算器243_1の出力値が最小値のときは、遅れ時間I=0ms、1周期(10ms)ずれた時点どうしの2乗誤差の積算値を算出している積算器243_2の出力値が最小値のときは、遅れ時間I=10ms、2周期(20ms)ずれた時点どうしの2乗誤差の積算値を算出している積算器243_2の出力値が最小値のときは、遅れ時間I=20ms、・・・、30周期(300ms)ずれた時点どうしの2乗誤差の積算値を算出している積算器243_30の出力値が最小値のときは遅れ時間I=300msと推定される。
【0074】
図1,
図3に示す遅れ推定部20では、以上の演算により、1次IMU速度に対するCAN速度の遅れ時間Iが推定される。
【0075】
図5は、
図1に1つのブロックで示す速度補正部の内部構成を表わしたブロック図である。
【0076】
この速度補正部30には、補正速度生成部31、カルマンゲイン算出部32、差分器33、および同期化処理部34が備えられている。
【0077】
補正速度生成部31は、IMU加速度を入力し、運動方程式に従って、IMU加速度からIMU速度を算出する。ここでは、
図1に示す入力側の1次IMU速度と区別するために、補正速度生成部31から出力されるIMU速度を2次IMU速度と称する。
【0078】
IMU由来の3軸の角速度および方向の加速度のデータを入力し、3次元の運動方程式に基づいて3次元のIMU速度を算出するストラップダウンナビゲータが広く知られている。この
図5に示す補正速度生成部31は、そのストラップダウンナビゲータにおける処理を車両の進行方向のみの1次元の処理に簡略化した構成であり、したがって、良く知られた構成のストラップダウンナビゲータから自明であるため、補正速度生成部31における処理の詳細説明は割愛する。
【0079】
補正速度生成部31で算出された2次IMU速度は、同期化処理部34に入力される。この同期化処理部34では、その入力された2次IMU速度が遅れ推定部20で求められたCAN速度の遅れ時間に応じた遅延量だけ遅延され、CAN速度との同期がとられる。
【0080】
同期化処理部34で遅延された2次IMU速度は、差分器33に入力され、その差分器33に入力されてきたCAN速度(ゲイン補正)との差分値δxが算出される。
【0081】
この算出された差分値δxは、カルマンゲイン算出部32に入力され、このカルマンゲイン算出部32では、運動方程式に基づくカルマンフィルタよりカルマンゲインKが算出される。カルマンフィルタおよびカルマンゲインについては広く知られたアルゴリズムであり、ここでの詳細説明は割愛する。
【0082】
カルマンゲイン算出部32ではカルマンゲインKが算出されて、補正値Kδxが出力される。この補正値Kδxは、補正速度生成部31に入力されて、2次IMU速度を算出する際の補正値として使用される。
【0083】
図1に戻って、本実施形態の速度計測装置100Aについての説明を続ける。
この速度計測装置100Aには、切替スイッチ40が備えられている。この切替スイッチ40は、衛星捕捉のオン、オフに応じて、衛星捕捉オンのときはこの速度計測装置100Aに入力されてきた1次IMU速度をそのまま最終IMU速度として出力し、衛星捕捉オフのときは、この速度計測装置100Aで生成された2次IMU速度を最終IMU速度として出力するように切り替えられる。
【0084】
図6は、
図1に示す速度計測装置100Aから出力された最終IMU速度を、衛星捕捉オン、オフと対応づけて示した図である。
【0085】
衛星捕捉オンのときは、切替スイッチ40は1次IMU速度を出力する側に切り替えられていて、その1次IMU速度が最終IMU速度として出力される。すなわち、
図6における衛生捕捉オンの区間における最終IMU速度は1次IMU速度である。この1次IMU速度は、IMU由来であってリアルタイム性が確保され、かつ衛星捕捉オンのときにはGPS受信機由来のドプラ速度によって高精度に補正された速度である。
【0086】
一方、衛星捕捉オフのときは、切替スイッチ40は、2次IMU速度を出力する側に切り替えられていて、その2次IMU速度が最終IMU速度として出力される。衛星捕捉オフのとき、GPS受信機では正確な速度計測が行なわれないため、1次IMU速度はGPS受信機由来の速度によっては補正されないか、あるいは不正確な補正しかなされていない。
図1に示す速度計測装置100Aは、1次IMU速度に基づいてCAN速度のゲインおよび遅れ時間を求めておき、1次IMU速度の精度が低下したタイミングでは、その求めておいたゲインで補正されたCAN速度および遅れ時間を使って正確な2次IMU速度を算出している。
【0087】
したがって、
図6から分かるように、衛星捕捉オン区間における1次IMU速度と衛星捕捉オフ区間における2次IMU速度との間の切り替わりのタイミングにおいても、滑らかに連続した高精度の最終IMU速度が得られる。
【0088】
図7は、本発明の第2実施形態としての速度計測装置を表わしたブロック図である。ここでは、前述の第1実施形態(主に
図1参照)との相違点について説明する。
【0089】
この
図7に示す第2実施形態の速度計測装置100Bも、第1実施形態の速度計測装置100Aと同様、ゲイン補正部10、遅れ推定部20、および速度補正部30’を備えている。ただし、この第2実施形態の速度計測装置100Bでは、第1実施形態の速度計測装置100Aに備えられていた切替スイッチ40(
図1参照)は不要である。この第2実施形態の速度計測装置100Bにおけるゲイン補正部10および遅れ推定部20は、第1実施形態の速度計測装置100におけるゲイン補正部10および遅れ推定部20とそれぞれ同一であり、ここでの説明は省略する。ただし、速度補正部30’については、第1実施形態における速度補正部30(
図1参照)と比べ、以下の通りの変更点が存在する。すなわち、第1実施形態における速度補正部30(
図1参照)には、IMU由来の車両の進行方向の加速度が入力され、その速度補正部30では、その入力された加速度から2次IMU速度が算出される。これに対し、この第2実施形態の速度補正部30’には、加速度に代わり、1次IMU速度が入力される。したがって、この速度補正部30’では、1次IMU速度から2次IMU速度が算出される。このため、この速度算出部30’では速度(1次IMU速度)から速度(2次IMU速度)を算出するための運動方程式が採用されている。この点の変更についても、従来広く知られている技術からして自明であるため、詳細説明は省略する。
【0090】
速度補正部30’からは2次IMU速度が出力される。この2次IMU速度は、衛星捕捉オンのときは高精度の1次IMU速度に更に補正処理がなされた速度である。これは無用の処理ではあるが、この補正処理が行なわれたことによる問題が生じることはなく、高精度の速度が出力される。また、衛星捕捉オフのときは、1次IMU速度の精度は低下するものの、前述の第1実施形態における速度補正部30と同様、速度補正部30’により正確に補正された2次IMU速度が生成される。
【0091】
次に、1次IMU速度生成のアルゴリズムについて簡単に説明する。
【0092】
図8は、1次IMU速度生成装置の構成を示すブロック図である。
【0093】
この1次IMU速度生成装置50は、本発明にいう1次IMU速度生成部の一例に相当する。
【0094】
この
図8に示す1次IMU速度生成装置50は、IMU1からのデータをGPS受信機2からのデータで補正することにより、上述の1次IMU速度を生成する装置である。
【0095】
IMU1からは、100Hzのクロックに同期して、3次元の角速度と3方向の加速度のデータが出力され、ストラップダウンナビゲータ部51に入力される。このストラップダウンナビゲータ部51では、IMU1から出力された車両の進行方向基準の角速度と加速度に基づいて、地軸基準の速度データが算出される。また、このストラップダウンナビゲータ部51では、その速度データがさらに積算処理されて地軸基準の位置データも生成される。このストラップダウンナビゲータ部51ではさらに、その生成された速度データと位置データが補正データに基づいて補正されて、補正後の速度データと補正後の位置データが出力される。このストラップダウンナビゲータ部51で算出される速度データおよび位置データは、いずれも地軸基準の3次元データである。ストラップダウンナビゲータ部51自体は良く知られた構成であり、ここでのこれ以上の説明は省略する。
【0096】
この
図8において、補正データは、Kδx又は0と表記されている。ストラップダウンナビゲータ部51では、補正データ=Kδxのときは、その補正データに基づいた補正が行なわれ、補正データ=0のときは、補正は行なわれず、IMU由来のデータのみに基づいて算出された速度データおよび位置データが出力される。
【0097】
ここで、補正データ=KδxのときのKはカルマン係数、δxは差分値である。この差分値δxには速度の差分と位置の差分との双方が含まれている。この差分値δxの内容については後述する。
【0098】
GPS受信機2からはドプラ速度を表わす速度データと、位置データとが出力される。これらの速度データおよび位置データは、いずれも地軸基準の3次元データである。GPS受信機2から出力される速度データおよび位置データは、通常、IMU1から出力されるデータと比べ、例えば10Hzあるいは20Hzといった遅いクロックに同期して更新されるデータである。しかも更新されるデータは実時間からすると既に例えば100ms〜150ms程度遅延し、しかも数ms程度のジッタ(遅延のゆれ)を伴ったデータである。すなわちGPS受信機2から出力されるデータは、規定数以上のGPS衛星からの電波が正しく受信されるなどの速度計測の条件が整っているタイミングにおいて、高精度な速度計測が行なわれるものの、上記の通りの遅れを伴い、かつ更新速度の遅いデータとなっている。また、速度計測の条件が整わないときは、正確な速度計測は不能となる。
【0099】
ここでは、速度計測の条件が整っているか否かを、規定数以上のGPS衛星からの電波が正しく受信されているか否かを表わす衛星捕捉オン/オフで代表させている。
【0100】
GPS受信機2から出力される速度データおよび位置データは差分器52に入力される。
【0101】
一方、ストラップダウンナビゲータ部51から出力された速度データおよび位置データは同期化処理部53に入力される。この同期化処理部53は、入力された速度データおよび位置データを遅延させるものである。上述の通り、GPS受信機2から出力される速度データおよび位置データは時間遅れを伴うデータである。そこで、この同期化処理部53では、GPS受信機2から出力されるデータと同期させるべく、ストラップダウンナビゲータ部51から出力されたデータが遅延処理される。
【0102】
同期化処理部53で遅延処理を受けたストラップダウンナビゲータ部51の出力データは、GPS受信機2から出力されたデータとともに差分器52に入力される。
【0103】
差分器52では、それら双方のデータの差分値δxが算出される。
【0104】
具体的には、GPS受信機2から出力された速度データV
1および位置データP
1を、それぞれ、
V
1=(V
1n,V
1e,V
1d)
P
1=(P
1n,P
1e,P
1d)
但し、
V
1nは、速度の北向きの成分
V
1eは、速度の東向きの成分
V
1dは、速度の下向きの成分
P
1nは、位置の北向きの成分
P
1eは、位置の東向きの成分
P
1dは、位置の下向きの成分
を表わす。
とし、同期化処理部53で遅延処理を受けた速度データV
2および位置データP
2を、それぞれ、
V
2=(V
2n,V
2e,V
2d)
P
2=(P
2n,P
2e,P
2d)
但し、
V
2nは、速度の北向きの成分
V
2eは、速度の東向きの成分
V
2dは、速度の下向きの成分
P
2nは、位置の北向きの成分
P
2eは、位置の東向きの成分
P
2dは、位置の下向きの成分
を表わす。
としたとき、差分器52では、差分値δx、すなわち
【0107】
ここで、
δPは位置誤差
δVは速度誤差
であって、
δP=(δP
n,δP
e,δP
d)
=(P
1n−P
2n,P
1e−P
2e,P
1d−P
2d)
δV=(δV
n,δV
e,δV
d)
=(V
1n−V
2n,V
1e−V
2e,V
1d−V
2d)
である。
【0108】
差分器52で算出された差分値δxを表わす差分データは、切替スイッチ54に入力される。
【0109】
この切替スイッチ54は、GPS受信機2から出力される衛星捕捉情報が規定数以上の衛星を正しく捉えていることを表わす「衛星捕捉オン」のときは、差分器52で算出された差分値δxを拡張カルマンフィルタ部55に伝え、衛星捕捉情報が規定数未満の衛星しか正しく捉えられていないことを表わす「衛星捕捉オフ」のときは、値‘0’を拡張カルマンフィルタ部55に伝える。すなわち、GPS受信機2で速度が高精度に計測されているときは差分値δxの信頼性が高く、その差分値δxがそのまま拡張カルマンフィルタ部55の入力として反映され、GPS受信機2で計測される速度の信頼性が低いときは差分値δxの信頼性が低いため、値‘0’が拡張カルマンフィルタ部55の入力となることを意味している。
【0110】
拡張カルマンフィルタ部30では運動方程式に基づいてカルマン係数Kを算出しIMU1由来のデータを補正するため補正データを生成してストラップダウンナビゲータ部51に向けて出力する。この補正データは、衛星捕捉オンのときは、補正データ=K・δxとなり、衛星捕捉オフのときは、補正データ=0となる。
【0111】
なお、この拡張カルマンフィルタ部30自体は広く知られているため、ここでのこれ以上の詳細な説明は省略する。
【0112】
ストラップダウンナビゲータ部51では、衛星捕捉オンの期間では、IMU1由来の速度データおよび位置データが拡張カルマンフィルタ部55から受け取った補正データ=K・δxに基づいて補正される。
【0113】
ストラップダウンナビゲータ部51から出力される速度データおよび位置データは、IMU由来の100Hzのクロックに同期したリアルタイム性が確保されたデータである。さらに、このストラップダウンナビゲータ部51から出力される速度データおよび位置データは、衛星捕捉オンの期間においては、GPS受信機2由来のデータによってオフセット誤差等がキャンセルされた高精度なデータである。ただし、このストラップダウンナビゲータ部51から出力される速度データおよび位置データは、衛星捕捉オフの期間中は補正が行なわれないため、この衛星捕捉オフの期間中は、オフセット誤差等が順次累積され、時間経過とともに正確な速度や位置から外れたデータとなる。
【0114】
1次IMU速度生成部56は、ストラップダウンナビゲータ部51から出力された速度データから車両の進行方向の1次元の速度を算出し、1次IMU速度として出力する。この1次IMU速度はストラップダウンナビゲータ部51の出力データに基づいており、したがって衛星捕捉オンのときは高精度な速度を表わしており、衛星捕捉オフのときは次第にずれた速度を表わしている。
【0115】
この
図8に示す1次IMU速度生成装置50から出力された1次IMU速度は、
図1に示す速度計測装置100Aあるいは
図7に示す速度計測装置100Bに入力される。
【0116】
なお、この
図8は、IMU1由来のデータとGPS受信機2由来のデータとに基づいて1次IMU速度を生成する構成の一例であり、本発明にいう1次IMU速度生成部は、この
図8に示す構成に限られるものではない。