【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0018】
図1は、本発明が適用された車両用ドア10を意匠面側(車室内側)から見た概略正面図で、
図2は
図1におけるII−II矢視部分の断面図である。この車両用ドア10は、車両の右側面に配設されるもので、車両前側の前端部に設けられる図示しないヒンジを介して略垂直な軸まわりに開閉されるものであり、ドアトリムとしてドアトリムアッパ12およびドアトリムロア14を備えているとともに、それ等のドアトリムアッパ12およびドアトリムロア14の境界部分にはアームレスト16が一体的に固設されている。ドアトリムアッパ12およびドアトリムロア14は、何れも硬質ポリ塩化ビニル等の比較的剛性が高い合成樹脂材料にて構成されている。
【0019】
アームレスト16は、車両前後方向に長い長手形状を成しており、略水平になる姿勢で配設されているとともに、後側部分には肘掛け部20が設けられ、前側部分にはパワーウィンドーのスイッチ等が配設されたスイッチ配設部22が設けられ、それ等の間の中間部分に車両用ドア10を開閉する際に把持されるプルハンドル部24が設けられている。プルハンドル部24は、
図2の断面図から明らかなように、上向きに開口する開口部30を有するポケット形状を成しており、
図3に示すように、その開口部30内に運転者等の手32の指34が差し入れられるとともに、ポケット形状の車室内側の側壁を構成している把持部36が手32の手のひら38と指34との間で把持されて、車両用ドア10の開閉に使用される部分である。
図3の手32は、右手の小指側から見た図である。
【0020】
把持部36は、ポケット形状の内側すなわちドアトリムアッパ12側に位置する内壁40と、ポケット形状の外側すなわち車室内側に位置する外壁42と、それ等の内壁40および外壁42の間に設けられた中空部44とを有する中空構造を成している。内壁40は、ドアトリムロア14に一体に設けられたもので、ドアトリムアッパ12の下端部に連結される連結部46から更に上方へ向かって突き出すように設けられた部分であり、そのドアトリムアッパ12の下端部とによって断面がU字形状のポケット形状を形成している。
【0021】
把持部36の外壁42は、板状の基材50とその基材50を覆う軟質材料の表皮材52とを有する重ね合わせ材料にてドアトリムロア14と別体に構成されており、外周縁部がドアトリムロア14に突き合わされて係止爪や溶着、接着剤等により一体的に固設されている。基材50は、硬質ポリ塩化ビニル等の比較的剛性が高い合成樹脂材料にて構成されており、表皮材52は、軟質ポリ塩化ビニルやスチレン系、オレフィン系、ポリエステル系等の弾性変形可能な熱可塑性樹脂にて構成されている。基材50には、把持部36の上端部分である開口部30から所定寸法だけ下方側へ下がった位置に内壁40側へ凹んだ凹部54が設けられており、その凹部54には、その凹部54を埋めるように表皮材52との間に軟質ポリウレタンフォーム等の弾性変形可能なクッション材56が設けられている。凹部54は、把持部36の上端部分すなわちポケット形状の開口部30に沿って略水平に設けられているとともに、把持部36の下端部まで達するように
図2に示す縦断面において逆L字形状を成すように設けられている一方、クッション材56は、自然状態において表皮材52が
図2に示すように滑らかに車室内側へ膨出する湾曲形状を成し、凹部54の外周縁部に滑らかに連続する外観形状となるように埋設されている。表皮材52の外周縁部は、基材50の外周縁に巻き付けられて固定されている。
【0022】
このように基材50に凹部54が設けられてクッション材56が埋設されることにより、開口部30内に指34が差し入れられて手のひら38との間で把持部36の上端部が把持される際には、
図3に示すようにクッション材56が手のひら38の手首側部分により押し潰されて凹むことにより、把持部36の上端部分を確実に掴んでグリップすることができ、車両用ドア10の開閉操作を容易に行うことができる。すなわち、凹部54およびクッション材56は、手のひら38の手首側部分が凹部54内に押し込まれることにより、把持部36の上端部分を確実に把持できるようにするためのもので、手32のグリップ形状に合わせて把持部36の上端から所定寸法だけ下がった位置に設けられている。
【0023】
上記凹部54よりも車両上側では、基材50に対して表皮材52が密着するように重ね合わされているとともに、手32のグリップ形状に合わせて上方へ向かうに従ってポケット形状の内側へ滑らかに湾曲させられて、内壁40の上端部に突き合わされており、その湾曲部分が把持されるようになっている。また、凹部54およびクッション材56は、車両前後方向において開口部30よりも車両前側まで突き出すように設けられており、把持部36を把持する際に手のひら38から車両前側へ突き出す親指についてもクッション材56を押し潰しながら凹部54内に押し込むことが可能で、把持部36の上端部分を手のひら38と指34との間で一層容易に且つ確実に掴むことができる。
【0024】
このように本実施例の車両用ドア10のプルハンドル部24は、把持部36の外壁42を構成している重ね合わせ材料の基材50に凹部54が設けられるとともに、その凹部54を埋めるように表皮材52との間にクッション材56が設けられているため、開口部30内に指34を差し入れて手のひら38との間で把持部36を把持する際には、
図3に示すようにクッション材56が押し潰されて凹むことにより把持部36の上端部分を確実に掴んでグリップすることができ、車両用ドア10の開閉操作が容易になる。また、非開閉操作時には、クッション材56の弾性で表皮材52が膨出させられ、凹部54以外の部分に滑らかに連続する外観形状とされるため、凹部54によるグリップ性能の向上に拘らず十分な意匠性を確保することができる。
【0025】
また、上記凹部54は、車両前後方向において開口部30よりも車両前側まで突き出すように設けられているため、把持部36を把持する際に手のひら38から車両前側へ突き出す親指についてもクッション材56を押し潰しながら凹部54内に押し込むことが可能で、把持部36の上端部分を手のひら38と指34とによって一層容易に且つ確実に掴むことができるようになる。
【0026】
また、把持部36の凹部54よりも車両上側では、基材50に対して表皮材52が密着するように重ね合わされているとともに、上方へ向かうに従ってポケット形状の内側へ滑らかに湾曲させられており、その湾曲部分が把持されるため、物を掴む際の手32のグリップ形状にフィットして一層掴み易くなるとともに、クッション材56が無いため開閉操作力が車両用ドア10に直接的に伝達されて適切に開閉操作することができる。
【0027】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。