特許第6178781号(P6178781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6178781かご型誘導電動機およびかご型誘導電動機用回転子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178781
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】かご型誘導電動機およびかご型誘導電動機用回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 17/16 20060101AFI20170731BHJP
【FI】
   H02K17/16 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-263526(P2014-263526)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-123252(P2016-123252A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2016年1月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩平
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−048573(JP,U)
【文献】 特開2000−152575(JP,A)
【文献】 特開2007−014178(JP,A)
【文献】 特開2014−023289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸周りに回転可能な回転子と、前記回転子の半径方向外側を囲むように配置された固定子と、を備えたかご型誘導電動機であって、
前記回転子は、
前記回転軸を軸としてほぼ円柱状に形成された磁性材料を主材料とする回転子鉄心部と、
前記回転子鉄心部の軸方向の両側に前記回転子鉄心部の軸と同軸に配置されて、前記回転子鉄心部よりも細径であって、前記回転子鉄心部と一体構造の回転子シャフト部と、
前記回転子鉄心部を軸方向に貫通して周方向に互いに間隔をあけて配置された複数の導体バーと、
前記導体バーの軸方向端部同士を周方向に連結して前記導体バーの軸方向端部同士を電気的に短絡する短絡環と、
を有し、
前記回転子鉄心部の軸方向端部の外周に沿って軸方向に張り出した環状の張り出し部が形成され、
前記短絡環の外側面は前記張り出し部の内側面で支持されていて、
前記回転子鉄心部の軸方向端部に前記回転軸を中心として環状に延びて径方向幅が前記短絡環の径方向幅よりも大きい端部溝が形成されてこの端部溝の前記回転軸から遠い側が前記張り出し部を構成し、
前記短絡環が前記端部溝の外周に沿って該端部溝に埋め込まれて固定されていて、
前記端部溝の半径方向内側の縁が前記短絡環よりも内側にあり、前記端部溝の半径方向内側の縁と前記短絡環の内側の面との間に環状のくぼみ空間が形成されていること、
を特徴とするかご型誘導電動機。
【請求項2】
前記導体バーおよび前記短絡環は、銅、アルミニウムまたはそれらを主成分とする合金からなること、
を特徴とする請求項1に記載のかご型誘導電動機。
【請求項3】
固定子内で回転可能に支持されるかご型誘導電動機用回転子であって、
回転軸を軸としてほぼ円柱状に形成された磁性材料を主材料とする回転子鉄心部と、
前記回転子鉄心部の軸方向の両側に前記回転子鉄心部の軸と同軸に配置されて、前記回転子鉄心部よりも細径であって、前記回転子鉄心部と一体構造の回転子シャフト部と、
前記回転子鉄心部を軸方向に貫通して周方向に互いに間隔をあけて配置された複数の導体バーと、
前記導体バーの軸方向端部同士を周方向に連結して前記導体バーの軸方向端部同士を電気的に短絡する短絡環と、
を有し、
前記回転子鉄心部の軸方向端部の外周に沿って軸方向に張り出した環状の張り出し部が形成され、
前記短絡環の外側面は前記張り出し部の内側面で支持されていて、
前記回転子鉄心部の軸方向端部に前記回転軸を中心として環状に延びて径方向幅が前記短絡環の径方向幅よりも大きい端部溝が形成されてこの端部溝の前記回転軸から遠い側が前記張り出し部を構成し、
前記短絡環が前記端部溝の外周に沿って該端部溝に埋め込まれて固定されていて、
前記端部溝の半径方向内側の縁が前記短絡環よりも内側にあり、前記端部溝の半径方向内側の縁と前記短絡環の内側の面との間に環状のくぼみ空間が形成されていること、
を特徴とするかご型誘導電動機用回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かご型誘導電動機およびその回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の典型的なかご型誘導電動機は、回転軸周りに回転可能な回転子と、その回転子の半径方向外側を囲むように配置された固定子と、を備えている。
【0003】
回転子は、ほぼ円柱状に形成された回転子鉄心部と、回転子シャフト部と、回転子鉄心部の外周近くを軸方向に貫通して周方向に互いに間隔をあけて配置された複数の導体バーと、導体バーの軸方向端部同士を周方向に連結して電気的に短絡する短絡環と、を有する。短絡環は、導電率の高い材料で構成する必要があり、通常は、銅やアルミニウムなどからなる。
【0004】
導電率の高い材料は通常、強度が高くないので、鋼鉄などの高強度材料を用いた保持環を短絡環の外側に配置して、短絡環にかかる遠心力を保持環で受ける技術が知られている(特許文献1)。保持環は、特に、高速回転によって大きな遠心力がかかる電動機で重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−197504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の短絡環および保持環は、鉄心の軸方向端部から離れた位置に配置されていて、導電バーが鉄心の軸方向端部から軸方向に突出して短絡環に接続されている。
【0007】
上記従来の構成では、導電バーの端部の構造が複雑であり、製造コストもかさむ。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、簡素な構造で、高速回転にも耐えるかご型誘導電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るかご型誘導電動機は、回転軸周りに回転可能な回転子と、前記回転子の半径方向外側を囲むように配置された固定子と、を備えたかご型誘導電動機であって、前記回転子は、前記回転軸を軸としてほぼ円柱状に形成された磁性材料を主材料とする回転子鉄心部と、前記回転子鉄心部の軸方向の両側に前記回転子鉄心部の軸と同軸に配置されて、前記回転子鉄心部よりも細径であって、前記回転子鉄心部と一体構造の回転子シャフト部と、前記回転子鉄心部を軸方向に貫通して周方向に互いに間隔をあけて配置された複数の導体バーと、前記導体バーの軸方向端部同士を周方向に連結して前記導体バーの軸方向端部同士を電気的に短絡する短絡環と、を有し、前記回転子鉄心部の軸方向端部の外周に沿って軸方向に張り出した環状の張り出し部が形成され、前記短絡環の外側面は前記張り出し部の内側面で支持されていて、前記回転子鉄心部の軸方向端部に前記回転軸を中心として環状に延びて径方向幅が前記短絡環の径方向幅よりも大きい端部溝が形成されてこの端部溝の前記回転軸から遠い側が前記張り出し部を構成し、前記短絡環が前記端部溝の外周に沿って該端部溝に埋め込まれて固定されていて、前記端部溝の半径方向内側の縁が前記短絡環よりも内側にあり、前記端部溝の半径方向内側の縁と前記短絡環の内側の面との間に環状のくぼみ空間が形成されていること、を特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るかご型誘導電動機用回転子は、固定子内で回転可能に支持されるかご型誘導電動機用回転子であって、回転軸を軸としてほぼ円柱状に形成された磁性材料を主材料とする回転子鉄心部と、前記回転子鉄心部の軸方向の両側に前記回転子鉄心部の軸と同軸に配置されて、前記回転子鉄心部よりも細径であって、前記回転子鉄心部と一体構造の回転子シャフト部と、前記回転子鉄心部を軸方向に貫通して周方向に互いに間隔をあけて配置された複数の導体バーと、前記導体バーの軸方向端部同士を周方向に連結して前記導体バーの軸方向端部同士を電気的に短絡する短絡環と、を有し、前記回転子鉄心部の軸方向端部の外周に沿って軸方向に張り出した環状の張り出し部が形成され、前記短絡環の外側面は前記張り出し部の内側面で支持されていて、前記回転子鉄心部の軸方向端部に前記回転軸を中心として環状に延びて径方向幅が前記短絡環の径方向幅よりも大きい端部溝が形成されてこの端部溝の前記回転軸から遠い側が前記張り出し部を構成し、前記短絡環が前記端部溝の外周に沿って該端部溝に埋め込まれて固定されていて、前記端部溝の半径方向内側の縁が前記短絡環よりも内側にあり、前記端部溝の半径方向内側の縁と前記短絡環の内側の面との間に環状のくぼみ空間が形成されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡素な構造で、高速回転にも耐えるかご型誘導電動機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るかご型誘導電動機の第1の実施形態の模式的縦断面図である。
図2】本発明に係るかご型誘導電動機の第2の実施形態の模式的縦断面図である。
図3】本発明に係るかご型誘導電動機の第3の実施形態の模式的縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係るかご型誘導電動機の実施形態について説明する。ここで、互いに共通または類似する部分については共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係るかご型誘導電動機の第1の実施形態の模式的縦断面図である。第1の実施形態に係るかご型誘導電動機100は、回転軸周りに回転可能な回転子11と、回転子11の半径方向外側を囲むように配置されたほぼ円筒状の固定子12と、固定子12の外側に配置されて固定子12を支持するハウジング13とを備えている。
【0015】
固定子12は、円筒状の固定子鉄心14と固定子コイル15とを備えている。固定子鉄心14は、軸に垂直な平面内に広がるほぼ円環状の多数枚の鋼板を軸方向に積層したものであって、その内周に沿って、周方向に互いに間隔をあけて配置された複数の固定子溝(図示せず)が形成されている。固定子コイル15は固定子鉄心14の固定子溝内に配置されて軸方向に延びている。
【0016】
回転子11は、回転軸に沿って延びるほぼ円柱状の回転子鉄心部21と、回転子鉄心部21の軸方向両側に回転子鉄心部21に同軸に配置されて回転子鉄心部21と一体として形成されて回転子鉄心部21よりも細径の円柱状の回転子シャフト部20とを有する。複数の導体バー22が回転子鉄心部21の外周近くを軸方向に貫通して周方向に互いに間隔をあけて配置されている。また、短絡環(エンドリング)23が、導体バー22の軸方向端部同士を周方向に連結して電気的に短絡している。
【0017】
回転子シャフト部20は、ハウジング13の両端部を貫通して延びていて、ハウジング13に支持された軸受24によって回転支持されている。
【0018】
回転子シャフト部20および回転子鉄心部21は、磁性材料からなり、たとえば鋼鉄製である。導体バー22および短絡環23は、導電率の高い材料で構成する必要があり、たとえば、銅やアルミニウム、またはそれらを主成分とする合金からなる。
【0019】
回転子鉄心部21の軸方向両端部には、回転軸を中心とする円環状の端部溝30が形成されていて、端部溝30の半径方向外側には、回転子鉄心部21の軸方向端部の外周に沿って軸方向に張り出した環状の張り出し部31が形成されている。短絡環23は、端部溝30内に埋め込まれていて、短絡環23の外側面が張り出し部31の内側面に接している。
【0020】
導体バー22と短絡環23とは、溶接などにより接合されている。
【0021】
この実施形態で、短絡環23は、回転子鉄心部21に形成された端部溝30内に埋め込まれているため、短絡環23にかかる遠心力は、張り出し部31の内側面で支持される。これにより、従来技術で必要とされた保持環を省略することができ、簡素な構成とすることができる。
【0022】
[第2の実施形態]
図2は、本発明に係るかご型誘導電動機の第2の実施形態の模式的縦断面図である。第2の実施形態に係るかご型誘導電動機200では、回転子鉄心部21の軸方向端部に、第1の実施形態の端部溝30よりも半径方向の幅が大きな幅広端部溝42が形成されている。幅広端部溝42の半径方向外側に、回転子鉄心部21の軸方向端部の外周に沿って軸方向に張り出した環状の張り出し部31が形成されている。短絡環23は、幅広端部溝42の内周に沿って埋め込まれていて、短絡環23の外側面が幅広端部溝42の内側面に接している。幅広端部溝42の半径方向内側の縁と短絡環23の内側の面との間に環状のくぼみ空間43が形成されている。
【0023】
その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0024】
この実施形態では、第1の実施形態と同様に、短絡環23にかかる遠心力は、張り出し部31の内側面で支持される。これにより、従来技術で必要とされた保持環を省略することができ、簡素な構成とすることができる。
【0025】
さらにこの実施形態では、短絡環23の半径方向内側にくぼみ空間43が形成され、その部分の回転子鉄心部21がないことから、第1の実施形態に比べて軽量化を図ることができる。
【0026】
[第3の実施形態]
図3は、本発明に係るかご型誘導電動機の第3の実施形態の模式的縦断面図である。第3の実施形態に係るかご型誘導電動機300は第1の実施形態の変形であって、回転子シャフト部20と回転子鉄心部52が別々に形成されている。回転子シャフト部20は1本の連続した円柱形であり、回転子鉄心部52の中央には軸方向に貫通して延びる中心孔が形成され、回転子鉄心部52の中心孔に回転子シャフト部20が挿入されて、焼嵌めなどにより互いに固定されている。
【0027】
この実施形態では、回転子鉄心部52は、軸に垂直な平面内に広がるほぼ円環状の多数枚の鋼板を軸方向に積層したものである。各鋼板は絶縁被膜により電気的に絶縁されている。
【0028】
この実施形態では、張り出し部31を構成する鋼板の部分は、半径方向内側の鋼板の部分と切り離された状態になるので、回転子シャフト部20に直接固定することができない。そのため、張り出し部31を構成する鋼板の部分は、たとえば、軸方向に延びるボルト(図示せず)によって軸方向に締め付けることにより、回転子鉄心部52の他の部分と一体化させればよい。
【0029】
その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0030】
この実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、短絡環23が、回転子鉄心部52に形成された端部溝30内に埋め込まれているため、短絡環23にかかる遠心力は、張り出し部31の内側面で支持される。これにより、従来技術で必要とされた保持環を省略することができ、簡素な構成とすることができる。
【0031】
さらに、この実施形態によれば、鋼板を軸方向に積層した回転子鉄心部52を用いることから、鉄心内の渦電流が抑制され、かご型誘導電動機としての効率向上を図ることができる。
【0032】
[他の実施形態]
上記第3の実施形態は第1の実施形態の変形として説明したが、第3の実施形態の積層構造の回転子鉄心部52に、第2の実施形態と同様の幅広端部溝42を設けることも可能である。
【0033】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0034】
11 回転子
12 固定子
13 ハウジング
14 固定子鉄心
15 固定子コイル
20 回転子シャフト部
21 回転子鉄心部
22 導体バー
23 短絡環
24 軸受
30 端部溝
31 張り出し部
42 幅広端部溝
43 くぼみ空間
52 回転子鉄心部
100,200,300 かご型誘導電動機
図1
図2
図3