特許第6178782号(P6178782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178782
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】技術布の処理方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/04 20060101AFI20170731BHJP
   B29B 17/00 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   B29B17/04ZAB
   B29B17/00
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-501620(P2014-501620)
(86)(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公表番号】特表2014-512284(P2014-512284A)
(43)【公表日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】EP2012055652
(87)【国際公開番号】WO2012130949
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年2月25日
(31)【優先権主張番号】1152702
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】バシアー, シャルロット
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第00950684(EP,A1)
【文献】 特開平06−128856(JP,A)
【文献】 特表2003−507164(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/032052(WO,A1)
【文献】 特開平06−033378(JP,A)
【文献】 特表2009−537686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00−17/04
B60R 21/16−21/33
C08J 11/00−11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングを備える、熱可塑性繊維からなる技術布の処理方法であって、少なくとも以下の段階:
a)前記布を処理して、少なくとも
−繊維性熱可塑性粒子、及び
−15から750μmの平均直径を示す、コーティング材料の球形または擬球形粒子
を含む混合物を得る段階
b)前記段階a)で得た混合物を、前記コーティング材料と繊維性熱可塑性粒子との分離を可能にするアルカリ媒体によって懸濁させる段階であって、前記媒体の密度が、前記繊維性熱可塑性粒子の密度と前記コーティング材料の密度との間である、段階;
c)遠心力によって前記コーティング材料と前記繊維性熱可塑性粒子とを分離する段階;
e)前記繊維性熱可塑性粒子を乾燥させる段階
を含み、前記熱可塑性繊維と前記コーティング材料とが同一ではない、方法。
【請求項2】
d)前記段階c)において回収された繊維性熱可塑性粒子を処理して、pHを中和する段階、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱可塑性繊維が、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル及び/またはポリウレタンからなる繊維であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティングが、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、アクリル、エラストマー及び/またはシリコーンからなることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記技術布が、エアバッグ残留物であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記段階a)の粒子の混合物が、粉砕、次いで、微粉化によって得られることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記段階b)の媒体が、pH10以上を示すアルカリ媒体であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
段階c)の分離が、水平軸遠心デカンターで行われることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性繊維に基づき、かつコーティングを備える技術布、例えば、特にエアバッグの処理方法であって、遠心デカンティングの原理を用いて、繊維残留分とコーティング材料とを分離する方法に関する。本発明はまた、得られたとおりの繊維残留分、及び場合によって、補強充填剤を用いて得られる、特に成形のための、熱可塑性組成物の製造方法に関する。本発明の顕著な特徴は、コーティングを欠いている布地を調製し、その結果、向上した機械的性能を有する配合物をもたらすことにある。
【背景技術】
【0002】
技術布は、特定の用途、例えば、難燃性、機械的強度、電気及び/若しくは熱伝導性、または身体保護などのための熱可塑性繊維から構成される、一般に編まれた、織られたまたは不織の物品である。それらは、概してコーティングによって処理された、例えば、コーティングで塗布された面である。
【0003】
コーティングされた技術布の例としては、車両の乗員の保護のため使用される膨らませることができる保護バッグ(そのバッグの中に爆発性化学反応によりガスが極めて急速に注入されて、それらを膨らませ、衝撃を和らげる)であるエアバッグを挙げることができる。衝撃検出センサーに接続され、ボンネットの前及びフロントガラスの足下に位置する場合、それらは、膨らまされ、歩行者または車両との衝突の際に重大な損傷の危険性を抑える。これらの物品は、数層にわたって、一般に繊維の織られた布地の形態で、ポリアミドまたはポリエステルに基づくバッグ、及びその面の片側にシリコーンコーティングを備える。エアバッグの大多数は、架橋してシリコーンエラストマーの薄層を形成し得るシリコーン組成物の沈着によって製造されている。
【0004】
熱可塑性繊維と、シリコーンなどのコーティングに使用されるポリマーとの不適合性のために、これらの技術布、例えば、コーティングされたエアバッグの再生利用の問題が生じる。これは、これら2種類の材料を機械的に分離することが非常に困難なためである。前処理なしのそれらの直接の再利用は、コーティングの存在のために性能低下をもたらし、これはまた、成形部品の外観に悪影響を与え、しばしば、射出中に型の深刻な汚染をもたらす。
【0005】
そのようなものとして、ポリアミド系エアバッグを細断し、それらを押出して、成形物品の製造に直ぐに使用できるグラニュールを形成することは、特開2003−191239号公報から公知である。しかしながら、廃棄ポリアミド材料から得られたこれらの物品は、満足な機械的特性を示さない。この文献には、公報である特開2004−018614号公報などにおいて、未使用樹脂にポリアミド布廃棄物を取り込んで、「新たな」材料のものと同等の性能を有する再生ポリアミドを製造することを可能にする方法が記載されている。ポリアミド残留物は、エアバッグに由来し得る。シリコーンの存在、または残留物の大きさについて知らせることは述べられていない。出願である特開2003−119330号公報では、溶融ブレンドすることによって、マレイン酸でグラフトされたエチレン/オレフィンコポリマーとともにエアバッグを再生利用する方法の説明が示されている。シリコーンの存在、または残留物の大きさ、または分散規模について知らせることは述べられていない。
【0006】
さらに、ポリアミド材料をシリコーン材料から分離するように試みることは周知である。特許である欧州特許第0950684号明細書には、撹拌及び温度の存在下でアルカリ水酸化物の使用ならびに酸による中和によって、シリコーン樹脂を含むポリアミドを再生利用する方法が記載されている。特許である米国特許第6911546号明細書及び米国特許第6916936号明細書では、コーティングの解重合が、求核反応物質及びカルベンの存在下で行われる。この方法は、成分の一つを解重合する作用を有する。出願である国際公開第2007/009856号パンフレットには、四級アンモニウムの存在下でアルカリ水酸化物の溶液を組み合せて使用することによってエアバッグ布地からシリコーンを除去する方法が記載されている。出願である国際公開第2008/032052号パンフレットでは、高温で界面活性剤及びアルコールの存在下でアルカリ水酸化物の溶液を組み合せて使用することによって、エアバッグ廃棄物を処理するか、またはポリアミドを再生利用する提案がなされている。出願である国際公開第2007/135140号パンフレット及び国際公開第2008/043764号パンフレットは、塩基性媒体中での相間移動触媒またはカルベンの使用によるコーティングの解重合に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの化学的方法は、一方でポリアミド、他方でシリコーンコーティングの完全な分離をもたらさない。従って、特に熱可塑性マトリックスに悪影響を及ぼす或いはその品質を低下させることなく、特に収率の点で、技術布の最適な再生利用を可能にする、実施が簡単な方法を開発する必要性がある。
【0008】
従って、標準的な第一選択の熱可塑性配合物のものと同様の特性を示す再生熱可塑性配合物の製造において、産業後または耐用年数末期由来の、シリコーンでコーティングされたポリアミドからなるこれらの技術布、特にエアバッグを経済的に利用する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
エアバッグ残留物などの技術布の再生利用が、これらの残留物からマイクロメータ粒子を最初に製造し、それらを処理して、調節された密度を示す適当な特定媒体中でコーティングを除去し、その後、遠心力により有益な熱可塑性材料を分離することによって、最適であり得ることがまさに実証された。得られた熱可塑性材料はその後、熱可塑性グラニュール及び/または物品を製造するために使用され得る。
【0010】
従って、本発明の主題は、コーティングを備える、熱可塑性繊維に基づく技術布の処理方法であって、少なくとも以下の段階:
a)前記布を処理して、少なくとも
−繊維性熱可塑性粒子、及び
−15から750μmの平均直径を示すコーティング材料の球形または擬球形粒子
を含む混合物を得る段階;
b)段階a)で得られた混合物を、コーティング材料と繊維性熱可塑性粒子との分離を可能にする媒体によって懸濁させる段階であって;前記媒体は、繊維性熱可塑性粒子の密度とコーティング材料の密度との間の密度を示し、特に、前記媒体は、アルカリ性pHを示し、及び/または有機若しくは金属塩を含み;非常に特に、前記媒体は、アルカリ性pHを示す段階
c)遠心力によってコーティング材料と繊維性熱可塑性粒子とを分離する段階;
d)場合によって、段階c)で回収された繊維性熱可塑性粒子を処理して、pHを中和する段階;
e)繊維性熱可塑性粒子を乾燥させる段階
を含む方法である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の意味の範囲内で、技術布は、熱可塑性繊維に基づいて織られた、不織の、編み組みされた(braided)、または編まれた物品を意味すると理解される。
【0012】
熱可塑性繊維は一般に、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル及び/またはポリウレタンに基づく繊維である。コーティングは一般に、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、アクリル、エラストマー及び/またはシリコーンに基づく。
【0013】
技術布の熱可塑性繊維上のコーティングは、特に、コーティング、複合化、含浸またはホールディング強化(adherization)によって得ることができる。コーティングの場合、コーティングは一般に、液体状態で塗布され、その後に乾燥、及び場合によって、架橋が続く。複合化は、布支持体上に積層することによって行われる。含浸は、溶液、溶融、散布、混成または転写法によって行われ得る。ホールディング強化は、ゴムの補強を意図されたヤーンまたは布の特殊な処理である。加硫後に繊維とエラストマーとの間の接着を得るために、ゴム配合物と反応する成分を繊維に固定する処理によって、化学的架橋を生成させることが必要である。
【0014】
コーティングは、例えば、直接コーティング、ロール若しくはドクターブレードコーティング、トランスファーコーティングによって、積層若しくは集積(assembling)によって、発泡(foaming)によって、または接着性コーティングによって、布表面上に行われ得る。
【0015】
本発明の意味の範囲内で、技術布残留物は、生産廃棄物(例えば、特にコーティング若しくは切断の適用の段階で生じた切断部若しくは切れ端、または販売することができない仕様外の製品)、また或いは耐用年数末期における物品若しくは物品の断片を意味すると理解される。一例として、エアバッグ残留物は一般に、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラメチレンアジパミドまたはポリウレタンに基づく、バッグ、またはバッグの断片を含む。これらの物品は一般に、1層以上にわたって繊維の織られた布地の形態をとっており、一般にシリコーン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアクリレート、エラストマー性ポリマー(ゴム、ポリオレフィン、フルオロエラストマー、EPDMまたはポリクロロプレン系ゴムなど)に基づくコーティングを含む。
【0016】
特にポリアミド系エアバッグ残留分の使用が好ましい。特にシリコーン系コーティングを備えるポリアミド系残留分の使用が好ましい。
【0017】
ポリアミドの種類としては、例えば、半結晶質または非晶質ポリアミド、例えば、脂肪族または半芳香族ポリアミドを挙げることができる。特に、(コ)ポリアミド6、6.6、4.6、6.10、6.12、11、12、及び/またはブレンド、例えば、ポリアミド6/6.6を挙げることができる。
【0018】
技術布、技術布残留分、特にエアバッグ残留物、例えば、バッグ若しくはバッグ残余物、またはバッグの切断部若しくは切れ端は、一般に、細断または粉砕され、次いで、例えば、粉末などの粒子の形態にされる。
【0019】
上で明確にされた混合物は、特に、製紙業の分野で標準的かつ公知である方法、例えば、微粉化、機械的ラビング、またはデファイブレータ(defibrator)の使用などによって得ることができる。
【0020】
例えば、ブレードを用いる微粉化、圧縮ガスを用いる微粉化、ロータ/ステータ剪断作用を用いる微粉化、またはさらに固定微粉化ディスクと回転微粉化ディスクとの異形粉砕要素間で行われる微粉化を行うことが可能である。
【0021】
粉砕、次いで微粉化によって、段階a)の粒子の混合物を得ることが好ましい。
【0022】
例えば、特に篩を備えたナイフミルまたはディスクミル中の微粉化によって、一般に予備粉砕された残留物の微粉化を行うことが可能である。この篩は、50から800μmのメッシュを示し得る。このような方法によれば、微粉化後に2つのタイプの粒子、すなわち、球形または擬球形粒子及び繊維性粒子が一般的には認められる。
【0023】
本発明による微粉化後の粒子は、繊維性熱可塑性粒子、及び特に球形または実質的に球形である粒子を含む。コーティング材料の粒子は、有利には50から300μmの平均直径を有する。繊維性熱可塑性粒子は、有利には200から1100μmの長さを有する。
【0024】
方法のこの段階で、繊維性熱可塑性粒子は、依然としてコーティング材料で部分的にコーティングされている。
【0025】
これらの球形コーティング粒子の大きさは、光学顕微鏡または走査電子顕微鏡で測定され得る。
【0026】
さらに、粒子は、好ましくは50から500μm、より好ましくは100から350μmのメジアン直径D50を示す。対象の粒度分布は、例えば、湿式経路モジュールを用いることによって、特にMalvern製粒度分布測定装置(particle sizer)で、レーザ回折測定によって得ることができる。粒子のすべては、この計算においてそれらのアスペクト比を考慮に入れることなく、球形と比較される。D50メッシュは、粒子の50%が、この寸法より小さく、粒子の50%が、この寸法より大きいような寸法をとっている。レーザ回折粒度分布分析は、標準AFNOR ISO13320−1の説明書に従って行うことができる。一例として、粒度分布は、以下のプロトコル、すなわち、試料をエタノールに懸濁させた後、Hydro Sモジュールを備えたMalvern Masterサイザー2000光回折粒度分布測定装置に従うことによって測定され得る。測定条件は以下のとおりである:粒度分布測定装置のセル中の撹拌:1400回転/分;光学モデル:Fraunhofer;測定範囲:100nmから3000μm。
【0027】
次いで、段階a)で得られた粒子の混合物は、コーティング粒子と繊維性熱可塑性粒子の分離を可能にする媒体によって懸濁させられ;前記媒体は、繊維性熱可塑性粒子の密度とコーティング材料の密度との間の密度を示す。
【0028】
特に、前記媒体は、
0.95×((μfth+μmrev)/2)から1.05×((μfth+μmrev)/2)
(ここで、
μfthは、繊維性熱可塑性粒子の密度を表し、
μmrevは、コーティング材料の密度を表す)
に及ぶ範囲内の密度を示す。
【0029】
より特に、前記媒体は、0.98×((μfth+μmrev)/2)から1.02×((μfth+μmrev)/2)に及ぶ範囲内、実にさらに、0.99×((μfth+μmrev)/2)から1.01×((μfth+μmrev)/2)に及ぶ範囲内の密度を示す。
【0030】
媒体は、1から1.5、特に1.03から1.5、例えば、1から1.12、より特に1.05から1.12g/cmの密度を示し得る。
【0031】
取得された物体の密度は、単位体積当たりの均質な物質の重量を特徴付ける物理量である。
【0032】
コーティング粒子と繊維性熱可塑性粒子との分離を可能にする媒体は、技術布を構成する材料に本質的に依存する。
【0033】
特に、この媒体は、水溶液である。非常に特に、この溶液は、アルコール、特にC〜Cアルコールタイプ及び/またはエチレングリコールタイプを欠いており;さらに特に、水以外の溶媒を欠いている。
【0034】
一つの代替形態によれば、この媒体は、界面活性剤を欠いている。さらに特に、前記媒体は、水と、場合によって、塩基または酸、特に塩基から本質的に構成される。
【0035】
特に熱可塑性繊維上のシリコーンコーティングの分離を行うために、特にpH10以上、より好ましくはpH14を示すアルカリ媒体を用いることができる。様々なアルカリ化学プロセスは、コーティングを構成している材料からポリアミド材料を分離することが知られている。このために、特に特許出願である国際公開第2007/135140号パンフレットを挙げることができる。前記媒体は、特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を含む水溶液であり得る。アルカリ金属水酸化物として、特にLiOH、NaOH及びKOHを挙げることができる。
【0036】
他のコーティングについては、アルカリ若しくは酸性溶液または有機若しくは金属塩の溶液が選択され、それらの濃度は、溶液の密度が繊維性熱可塑性粒子の密度とコーティングの密度との間にあるように調整される。
【0037】
懸濁は、例えば、混合及び撹拌によって行われ得る。懸濁液は、10%から50%、特に15%から40%、例えば、20%から30%の範囲の固体/液体比率を示し得る。
【0038】
特に、懸濁段階b)は、10℃から80℃、より特に15℃から50℃の温度で、さらに周囲温度でも、すなわち、約18℃から約25℃でも行われる。ある代替形態によれば、この段階は加熱を欠いている。これは、特に、この方法の経済的及びエネルギーコストを抑制において有利であることを示す。
【0039】
従って、この方法は、段階b)の懸濁液中での粒子の短い滞留時間を可能にし得る。従って、懸濁液中でのこれらの粒子の滞留時間を、45分未満、特に30分未満、特に20分未満、より特には10分未満にすることができ、実に約5分にすることさえできる。
【0040】
方法のこの段階で、繊維性熱可塑性粒子は、コーティング材料(これは媒体中で球形または本質的に球形の形態で生じる)から実質的にすべて分離される。
【0041】
一方で、繊維性熱可塑性粒子の、及び他方で、コーティング材料の粒子の遠心力による分離が、遠心力によって様々な方法で行われ得る。
【0042】
特に、遠心分離機、ボウル遠心分離機、ボウルスクリュー遠心分離機またはプレート分離機などの回転機械において、特に高速で、懸濁液を回転させることによって生じた遠心力に基づく遠心デカンティングまたは遠心分離の技術を用いることが好ましい。
【0043】
特に、HACDと呼ばれる、水平軸遠心デカンターを用いることが好ましく、これは、特に遠心デカンティングによって担体液体から固体粒子を分離することを可能にする。懸濁液は、シリンドロコニカルボウルに入り、ここには、スクリューコンベアーが配置されている。液体は、ボウル中に液体輪を形成し、一方で固体は、遠心作用によってボウルの面に対して平たくされる。次いで、遠心分離液は、機械の円筒部分の高さであふれることによって排出され、一方でボウル上に沈積した固体は、機械の円筒部分の方向にスクリューによって搬送され、ここで、それらは排出される。
【0044】
このために、出願である国際公開第9740941号パンフレットに述べられたような遠心デカンターを用いることが特に可能である。Tricanter(登録商標)、Sedicanter(登録商標)及びSorticanter(登録商標)などのFlottweg製遠心分離機も挙げることができる。
【0045】
次いで、分離されるべき懸濁液は、軸方向供給パイプによってデカンターに導入される。生成物は、分配室において徐々に加速され、その後、適切なオリフィスによりボウル中に導入される。シリンドロコニカル形状のボウルは、最適速度で回転する。懸濁液はボウルとともに運転速度で回転し、ボウルの内壁上に同心円の層を形成する。懸濁液中に存在する固体粒子は、遠心力場の作用下でボウルの壁に対して平たくされる。円筒部分の直径、長さ、及び円錐の角度は、適用の具体的な要件に従って規定される。搬送スクリューは、ボウルの速度と異なる速度で回転し、これにより、ボウルの円錐端部の方向にデカンティングした固体粒子を搬送することができる。差分速度は、ボウル中の固体粒子の滞留時間、結果として、抽出された固体の乾き度を決定する。それは、分離を最適化するために、運転しながら調整され得る。スクリューピッチ及びねじ山の数は、主な設計可変要素の一部を形成する。分離された固体は、ボウルの円錐端部で沈殿物コレクター中に排出され、次いで、重量によって排出ホッパー中に落下する。
【0046】
次いで、段階c)の終末で回収された繊維性熱可塑性粒子は、特に段階b)でアルカリ媒体を用いた後で、場合によって処理されて、pHを中和し得る。中和は、例えば、水または酸で行われ得る。
【0047】
乾燥は、繊維性熱可塑性粒子の水または他の液体の含有量を除去しまたは低減させるために必要であり得る。乾燥技術は、機械的または熱的であり得る。特に熱風による蒸発が好ましい。熱は、対流、赤外放射、伝導、マイクロ波または高周波によって移動させられ得る。
【0048】
本発明はまた、上に記載されたとおりの本発明の方法によって得られることができる繊維性熱可塑性粒子に関する。
【0049】
本発明はまた、補強充填剤若しくは増量剤またはこの分野で慣用的に用いられる種々の他の添加剤を場合によって含む熱可塑性組成物の製造において得られた繊維性熱可塑性粒子の使用に関する。
【0050】
本発明はまた、本発明の方法によって得られた繊維性熱可塑性粒子を溶融することによって得られる熱可塑性組成物、及びその調製方法に関する。この組成物は、少なくとも1種の補強充填剤及び/または増量剤を含み得る。
【0051】
本発明による組成物の機械的特性を改善するために、好ましくは繊維充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、及びアラミド繊維など)及び非繊維無機充填剤(クレー、カオリン、マイカ、ウォラストナイト及びシリカなど)からなる群から選択される少なくとも1種の補強充填剤及び/または増量剤を、本発明による組成物に添加することが有利であり得る。補強充填剤及び/または増量剤の取り込みの程度は、複合材料の分野の標準に基づく。それは、例えば、組成物の全重量に対して1%から80%、好ましくは10%から70%、特に20%から50%の充填剤の含有量であり得る。
【0052】
本発明による組成物は、成形されることが意図されるポリアミド組成物の製造で通常用いられる添加剤をさらに含み得る。従って、潤滑剤、難燃剤、可塑剤、核形成剤、触媒、靭性を改善するための剤(例えば、場合によってグラフト化されたエラストマー)、光及び/若しくは熱安定剤、酸化防止剤、静電防止剤、染料、顔料、マット化剤、成形助剤または他の慣用添加剤について言及することができる。
【0053】
組成物の調製のために、これらの充填剤及び添加剤は、例えば、重合の間または溶融ブレンド中などで、それぞれの充填剤または添加剤に適した通常の手段で熱可塑性材料に添加され得る。充填剤は、好ましくは、特に熱可塑性材料の押出しの段階の際に溶融経路によって、または機械的混合機において固体経路によって熱可塑性材料に添加され、固体混合物は、その後に、例えば、押出し工程によって溶融されることができる。従って、例えば、成形などによって、その後に物品の製造が意図される、または物品の製造が直接意図される、成形されるべきグラニュール若しくは粉末を得ることができる。
【0054】
繊維性熱可塑性粒子は、同じかまたは異なる性質の他の熱可塑性材料とブレンドされ得る。
【0055】
組成物の全重量に対して、一般に0.5重量%から100重量%、好ましくは5重量%から90重量%、より好ましくは15重量%から80重量%の繊維性熱可塑性粒子が添加される。
【0056】
本発明による組成物は、特に、例えば、成形、射出成形、射出/ブロー成形、押出し若しくは押出し/ブロー成形によって、または紡糸によって得られる物品の調製において、あるいはフィルムを得るために、特に技術プラスチックの分野において、出発原料として、例えば、マトリックスとして使用され得る。組成物は、例えば、モノフィラメント、フィラメント、ヤーン及び繊維の押出しによる製造において使用され得る。物品は、機械加工され得る多くの種類の寸法で半完成製品であることもできる。組立ては、例えば、溶接または接着結合によって製造され得る。押出しで製造される物品は、特に管、棒、異形要素、プラック、シート及び/または中空体であり得る。
【0057】
成形部品は、上で製造されたグラニュールを溶融し、溶融組成物を射出成形装置に供給することによって製造される。射出成形によって製造される物品は、自動車、建築または電気分野の部品であり得る。
【0058】
固有の言葉(language)が、本発明の原理の理解を容易にするために説明で使用される。それにもかかわらず、この固有の言葉の使用によって、本発明の範囲への限定は想定されないことが理解されるべきである。変更または改良は、特に、当業者によって、その者自身の一般的知識に基づいて想定され得る。
【0059】
用語「及び/また」は、その意味「及び」、「また」、ならびにこの用語に繋がる要素のその他の可能な組合せすべてを含む。
【0060】
本発明のその他の詳細または利点は、単に指示の目的で以下に示される実施例により明らかになる。
【実施例】
【0061】
実験の部
本発明による粒子の製造
用いたエアバッグは、ポリアミド66に基づき、片面に架橋シリコーンでコーティングされた、断片に粉砕された産業廃棄物である。シリコーンポリマーの含有量は10重量%である。
【0062】
エアバッグを、細断し、次いで、固定ナイフの列を備えるHerbold粉砕機で粉砕する。このようにして、2cm×2cmの正方形残留物を得た。次いで、これらの残留物を、固定ナイフの列及び移動ナイフの列ならびに500μmの篩を備えたHerboldマイクロナイザで微粉化する。非微粉化残留物も、参照の目的で用いた。
【0063】
その結果、繊維性熱可塑性粒子は、0.8から1.5mmの長さの繊維の形態で存在し、そのときコーティング材料の粒子は、200μmの平均直径を示す擬球形粒子の形態で存在する。これらの粒子の大きさは、光学顕微鏡検査で測定する。
【0064】
粒子は、108μmのメジアン直径D50を示す。
【0065】
懸濁
参照の目的で、1.1g/cmの密度を有する液体であって、水酸化ナトリウムを含み、pH14を示す液体1、または硫酸マグネシウムを含み、pH7程度を示す液体2のいずれかに、粒子を懸濁させる。固体/液体比率を20%から30%に調整する。
【0066】
遠心力による分離
次いで、以下のパラメータ:
− スクリューの回転速度:3000回転/分
− ボウルの速度 1100回転/分
− 温度:25℃
を有する、ポリアミド粒子とコーティング粒子との分離に使用する、Flottweg製Sorticanter(登録商標)に、懸濁液を供給する。
【0067】
存在する2つの流れに存在する固体部分を測定し、その化合物を分析する。結果を表1に記載する。固形分は、存在する2つの流れから試料を採取し、周囲圧力においてオーブン中80℃で少なくとも一晩乾燥させることによって決定する。出口流のそれぞれの固形分を、差を量ることによって定める。
【0068】
【表1】
【0069】
収率は、粉砕残留物に対して処理前、及び重い固相を形成する繊維に対して処理後にシリコーンの元素分析を行うことによって計算する。
【0070】
従って、本発明による方法は、分離媒体を加熱することなく、かつ非常に高い収率で、布からのシリコーンコーティングの実質的に完全な除去を非常に短い滞留時間で可能にすることが明らかである。(分離媒体は、界面活性剤またはアルコールなどの添加剤を欠いている。)
【0071】
その後、繊維性粒子を、すすぎ洗いし、中性pHを回復し、遠心分離し、続いて、トンネル乾燥機中熱風で乾燥させる。
【0072】
新規な配合物の製造
その後、様々な先行する実施例で得た繊維性粒子を用いて、30重量%のEタイプの標準ガラス(供給業者Vetrotexからの)を含む、充填剤を含む配合物を製造する。熱安定剤及び酸化防止剤も配合物中に導入した。
【0073】
参照の目的で、試験C4において、3AN22022法で測定された138ml/gのVI、及び265℃の融点を有する、未使用66タイプのポリアミド(RhodiaからのStabami(商標)27AE1)を用いて、充填剤として30重量%の同じガラス繊維を含むポリアミド配合物を製造する。
【0074】
実験を、Leistritz実験室用二軸押出機(これの主な特性は、以下のとおりである:スクリュー直径D34mm、軸間隔30mm及び長さ35mm)で行った。バレルの温度は、スクリューの長さ全体にわたって285℃で一定に保った。スクリュープロファイルは、ベントが押出機後部で行われるように設計した。試験のそれぞれについて、スクリューの回転速度は、290rpmであり、押出機のスループットは、10kg/時間である。グラニュールを得て、射出成形により試験片を作製するために用いた。
【0075】
機械的性能を以下の表2に示す。洗浄または未洗浄の粉末の形態のもの及び同じ廃棄物について、機械的性能は、洗浄後に、及び第1選択化合物についてと同じレベルだけ増強されることが認められ、これは、分離の効率に基づく。
【0076】
【表2】
【0077】
衝撃強さは、標準ISO1791eUに従って測定する。引張り係数及び引張り強さは、標準ISO527/1に従って測定する。
【0078】
このようにして、本発明による処理方法は、非再生ポリアミドマトリックスを用いる従来の配合物の特性と完全に同等である機械的特性を示すポリアミド配合物を調製することを可能にし、これは、従来技術による他の処理についてはそうでないことが明らかである。