【課題を解決するための手段】
【0014】
上記第一の課題を解決するためになされた本発明に係る手袋製造方法は、
手指を覆う複数の袋状部を構成する前布及び後布を備え、第一袋状部に隣接する第二袋状部が第一袋状部に連結する環状の袋基底部とその先端側に連結する筒状の本体部とを有する手袋を、フックを有する多数の編針がフック側の対向状態で二列に配設された横編機を用いて編成する手袋製造方法であって、
上記多数の編針が、第一袋状部を編成する第一編針群と、第二袋状部を編成する第二編針群とに区分けされ、
第一袋状部を編成する第一袋状部形成工程と、第一袋状部形成工程後に第二袋状部を編成する第二袋状部形成工程とを有し、
上記第二袋状部形成工程が、上記本体部を編成する本体部編成工程と、上記袋基底部を編成する袋基底部編成工程とを有し、
上記袋基底部編成工程において、
第二編針群のうち前布及び後布の一方を編成する一方の列の編針及びこの一方の列の第一編針群のうち第二編針群に隣接する少なくとも二つのフックに対応する編針により上記環状の袋基底部の一方の面を編成し、
次いで第一編針群のうち上記袋基底部の一方の面を編成した第一編針群の編針に対向する他方の列の編針及び第二編針群の他方の列の編針により上記環状の袋基底部の他方の面を編成する
ことを特徴とする。
【0015】
当該手袋製造方法によって製造された手袋は、第二袋状部の本体部から環状の袋基底部が手首方向に連設され、この環状の袋基底部によって第一袋状部と第二袋状部とが連結されている。そして、この袋基底部は、第一袋状部の編み目のうち第二袋状部側に隣接する前後二目の編み目(前後合計四目の編み目)に編み込まれている。具体的には、この袋基底部は、第二袋状部の本体部の前布から手首方向に連設される前面部位と、この前面部位と同一コースで連続し、第一袋状部の編み目のうち第二袋状部側の少なくとも二目の前布から手首方向に連設される袋状部連結前側部位と、この袋状部連結前側部位と同一コースで連続し、第一袋状部の編み目のうち第二袋状部側の少なくとも二目の後布から手首方向に連設される袋状部連結後側部位と、この袋状部連結後側部位と同一コースで連続し、第二袋状部の本体部の後布から手首方向に連設される後面部位とを有することになる。
【0016】
当該手袋は、第二袋状部の袋基底部が、上述のように前布(前面部位及び袋状部連結前側部位)と後布(後面部位及び袋状部連結後側部位)との双方を有するので、前後双方で第一袋状部と第二袋状部とを確実に連結することができ、指股部の孔の発生を的確に防止することができる。さらに、袋状部連結前側部位及び袋状部連結後側部位は、それぞれ第一袋状部の少なくとも二目の編み目に編み込まれるので、第一袋状部と第二袋状部とをより確実に連結することができ、指股部の孔の発生をより的確に防止することができる。
【0017】
さらに、当該手袋製造方法は、従来の抑止杆を用いた製造方法に比べて容易、かつ確実に手袋を製造することができる。しかも、当該手袋製造方法は、従来の最後三回の周回コースを異なるパターンで編成する方法に比べて、編針の制御を容易に行うことができ、一般的に用いられる横編み機を用いて容易、かつ確実に製造することができる。特に、当該製造方法によって製造された手袋は、従来の最後三回の周回コースを異なるパターンで製造された手袋に比べて、指股部の構造が単純であるため着用者に違和感を与えにくく、また指股部に作用する力が均一に分散しやすく孔が生じ難い。
【0018】
また、当該手袋製造方法にあっては、少なくとも上記第二袋状部形成工程の本体部編成工程の後に、第一編針群のうち第二編針群に隣接する少なくとも前後一対の編針、及び/又は第二編針群のうち第一編針群に隣接する少なくとも前後一対の編針により第一袋状部及び/又は第二袋状部の前布と後布とを連結する第一前後布連結部を編成する前後布連結工程をさらに有することが好ましい。かかる構成からなる製造方法によれば、上記袋基底部が、前布と後布とを連結する第一前後布連結部を有する手袋を製造することができる。このように製造された手袋は、前布及び後布が前後布連結部によって連結されるため、袋基底部に孔がより発生し難くなる。
【0019】
この前後布連結工程で前後布連結部の編成を行う編針としては、上記第二袋状部形成工程の袋基底部編成工程で袋基底部の編成を行う第一編針群の編針と、この編針に隣接する編針とを用いることが好ましい。これにより、前後布連結部が袋状部連結前側部位及び袋状部連結後側部位のウェール方向に位置することになり、この前後布連結部によって袋状部連結前側部位及び袋状部連結後側部位に前後方向に開く力が作用し難くなり、前後布連結部によって効果的に袋基底部の孔の発生を防止することができる。
【0020】
さらに、上記前後布連結工程を、第二袋状部形成工程の袋基底部編成工程の前に行うことも可能であるが、上記袋基底部編成工程の後に行うことが好ましい。このように前後布連結工程を袋基底部編成工程の前に行った場合には、指股部において前後布連結部が外面側に表出することになる。一方、上述のように前後布連結工程を袋基底部編成工程の後に行った場合には、袋状部同士を連結する部位よりも前後布連結部が内面側に位置することになる。このため、指股部の手首側で前布と後布とを開く方向に力が作用した際(例えば着用者が手袋を着用した際)に、この前布と後布とを開く方向に作用する力は、袋基底部よりも内面側に位置する前後布連結部に作用し易くなり、袋状部連結前側部位及び袋状部連結後側部位を前後方向に開く力が作用し難いので、指股部の孔の発生をより的確に防止することができる。
【0021】
また、上記のように前後布連結工程を袋基底部編成工程の後に行う場合には、この前後布連結工程によって他の袋状部同士の間の指股部の第二前後布連結部を同一コースで編成することが好ましい。つまり、上記第一編針群の反対側で第二編針群に隣接するとともに第三袋状部を編成する複数の編針である第三編針群が区分されており、第三編針群により第三袋状部を編成する第三袋状部形成工程を有し、上記第三袋状部形成工程が、第三編針群により第三袋状部の本体部を編成する本体部編成工程と、上記第三袋状部の本体部から手首方向に連設されるとともに第二袋状部及び第三袋状部を連結する環状の袋基底部を編成する袋基底部編成工程とを有し、上記前後布連結工程が、上記第一前後布連結部と第二前後布連結部を同一コースで編成することが好ましい。なお、ここで第二前後布連結部とは、第二袋状部と第三袋状部との指股部において第二袋状部及び/又は第三袋状部の前布と後布とを連結する部分を意味する。上記構成を採用することにより、同一コースで複数の前後布連結部を形成することができ、編針の制御を容易に行うことができ、一般的に用いられる横編み機を用いて容易、かつ確実に製造することができる。また、同一コースで複数の前後布連結部を形成することができるので、製造時間の短縮化が図られる。
【0022】
また、上記第一の課題を解決するためになされた本発明に係る手袋製造方法は、
手指を覆う複数の袋状部を構成する前布及び後布を備え、薬指用袋状部に隣接する中指用袋状部が薬指用袋状部に連結する環状の袋基底部とその先端側に連結する筒状の本体部とを有し、中指用袋状部に隣接する人差し指用袋状部が中指用袋状部に連結する環状の袋基底部とその先端側に連結する筒状の本体部とを有し、小指用袋状部に隣接する三本胴用袋状部が小指用袋状部に連結する環状の袋基底部とその先端側に連結する筒状の本体部とを有し、四本胴用袋状部に隣接する親指用袋状部が四本胴用袋状部に連結する環状の袋基底部とその先端側に連結する筒状の本体部とを有する手袋を、フックを有する多数の編針がフック側の対向状態で二列に配設された横編機を用いて編成する手袋製造方法であって、
上記多数の編針が、親指用袋状部を編成する親指用編針群と、人差し指用袋状部を編成する人差し指用編針群と、中指用袋状部を編成する中指用編針群と、薬指用袋状部を編成する薬指用編針群と、小指用袋状部を編成する小指用編針群とに区分され、
小指用袋状部を編成する小指用袋状部形成工程と、
薬指用袋状部を編成する薬指用袋状部形成工程と、
薬指用袋状部形成工程の後に、中指用袋状部を編成する中指用袋状部形成工程と、
中指用袋状部形成工程の後に、人差し指用袋状部を編成する人差し指用袋状部形成工程と、
上記人差し指用袋状部形成工程後に、上記人差し指用袋状部、中指用袋状部及び薬指用袋状部から手首方向に連設される三本胴用袋状部を、上記人差し指用編針群と上記中指用編針群と上記薬指用編針群とを有する三本胴用編針群により編成する三本胴用袋状部形成工程と、
上記小指用袋状部形成工程及び三本胴用袋状部形成工程の後に、上記三本胴用袋状部及び小指用袋状部から手首方向に連設される四本胴用袋状部を、上記人差し指用編針群と上記中指用編針群と上記薬指用編針群と上記小指用編針群とを有する四本胴用編針群により編成する四本胴用袋状部形成工程と、
上記四本胴用袋状部形成工程後に、親指用袋状部を編成する親指用袋状部形成工程と、
上記親指用袋状部形成工程の後に、上記四本胴用袋状部及び親指用袋状部から手首方向に連設される袋状の五本胴用袋状部を、上記親指用編針群と上記四本胴用編針群とにより編成する五本胴用袋状部形成工程と
を有し、
上記中指用袋状部形成工程が、
上記中指用袋状部の本体部を編成する本体部編成工程と、
上記中指用袋状部の袋基底部を編成する袋基底部編成工程と
を有し、
この中指用袋状部形成工程の袋基底部編成工程において、
中指用編針群のうち前布及び後布の一方を編成する一方の列の編針及びこの一方の列の薬指用編針群のうち中指用編針群に隣接する少なくとも二つのフックに対応する編針により上記環状の袋基底部の一方の面を編成し、
次いで薬指用編針群のうち上記袋基底部の一方の面を編成した薬指用編針群の編針に対向する他方の列の編針及び中指用編針群の他方の列の編針により上記環状の袋基底部の他方の面を編成し、
上記人差し指用袋状部形成工程が、
上記人差し指用袋状部の本体部を編成する本体部編成工程と、
上記人差し指用袋状部の袋基底部を編成する袋基底部編成工程と
を有し、
この人差し指用袋状部形成工程の袋基底部編成工程において、
人差し指用編針群のうち前布及び後布の一方を編成する一方の列の編針及びこの一方の列の中指用編針群のうち人差し指用編針群に隣接する少なくとも二つのフックに対応する編針により上記環状の袋基底部の一方の面を編成し、
次いで中指用編針群のうち上記袋基底部の一方の面を編成した中指用編針群の編針に対向する他方の列の編針及び人差し指用編針群の他方の列の編針により袋基底部の他方の面を編成し、
上記三本胴用袋状部形成工程が、
上記三本胴用袋状部の本体部を編成する本体部編成工程と、
上記三本胴用袋状部の袋基底部を編成する袋基底部編成工程と
を有し、
この三本胴用袋状部形成工程の袋基底部編成工程において、
三本胴用編針群のうち前布及び後布の一方を編成する一方の列の編針、並びにこの一方の列の小指用編針群のうち薬指用編針群に隣接する少なくとも二つのフックに対応する編針により上記環状の袋基底部の一方の面を編成し、
次いで小指用編針群のうち上記袋基底部の一方の面を編成した小指用編針群の編針に対向する他方の列の編針及び三本胴用編針群の他方の列の編針により上記環状の袋基底部の他方の面を編成し、
上記親指用袋状部形成工程が、
上記親指用袋状部の本体部を編成する本体部編成工程と、
上記親指用袋状部の袋基底部を編成する袋基底部編成工程と
を有し、
この親指用袋状部形成工程の袋基底部編成工程において、
親指用編針群のうち前布及び後布の一方を編成する一方の列の編針、及びこの編針に隣接する一方の列の人差し指用編針群のうち親指用編針群に隣接する少なくとも二つのフックに対応する編針により上記環状の袋基底部の一方の面を編成し、
次いで人差し指用編針群のうち上記袋基底部の一方の面を編成した人差し指用編針群の編針に対向する他方の列の編針、及び親指用編針群の他方の列の編針により上記環状の袋基底部の他方の面を編成する
ことを特徴とする。
【0023】
当該手袋製造方法によって製造された手袋は、中指用袋状部、人差し指用袋状部、三本胴用袋状部及び親指用袋状部の各本体部からそれぞれ環状の袋基底部が手首方向に連設され、この環状の袋基底部によって隣接する袋状部と連結された手袋を製造することができる。そして、この手袋の上記袋基底部は、隣接する袋状部の編み目のうち前後二目の編み目(合計四目の編み目)に編み込まれることになる。このように袋基底部の前布と後布との双方で袋状部同士を確実に連結することができ、指股部の孔の発生を的確に防止することができる。さらに、この袋基底部の前布及び後布はそれぞれ隣接する袋状部の少なくとも二目の編み目に編み込まれるので、袋状部同士をより確実に連結することができ、指股部の孔の発生をより的確に防止することができる。しかも、当該手袋製造方法は、従来の抑止杆を用いた製造方法に比べて容易、かつ確実に手袋を製造することができる。また、当該手袋製造方法は、従来の最後三回の周回コースを異なるパターンで編成する方法に比べて、編針の制御を容易に行うことができ、一般的に用いられる横編み機を用いて容易、かつ確実に製造することができる。特に、当該製造方法によって製造された手袋は、従来の最後三回の周回コースを異なるパターンで製造された手袋に比べて、指股部の構造が単純であるため着用者に違和感を与えにくく、また指股部に作用する力が均一に分散しやすく孔が生じ難い。
【0024】
手指を覆う複数の袋状部を構成する前布及び後布を備え、小指用袋状部に隣接する薬指用袋状部が小指用袋状部に連結する環状の袋基底部とその先端側に連結する筒状の本体部とを有し、薬指用袋状部に隣接する中指用袋状部が薬指用袋状部に連結する環状の袋基底部とその先端側に連結する筒状の本体部とを有し、中指用袋状部に隣接する人差し指用袋状部が中指用袋状部に連結する環状の袋基底部とその先端側に連結する筒状の本体部とを有し、四本胴用袋状部に隣接する親指用袋状部が四本胴用袋状部に連結する環状の袋基底部とその先端側に連結する筒状の本体部とを有する手袋を、フックを有する多数の編針がフック側の対向状態で二列に配設された横編機を用いて編成する手袋製造方法であって、
上記多数の編針が、親指用袋状部を編成する親指用編針群と、人差し指用袋状部を編成する人差し指用編針群と、中指用袋状部を編成する中指用編針群と、薬指用袋状部を編成する薬指用編針群と、小指用袋状部を編成する小指用編針群とに区分され、
小指用袋状部を編成する小指用袋状部形成工程と、
小指用袋状部形成工程の後に、薬指用袋状部を編成する薬指用袋状部形成工程と、
薬指用袋状部形成工程の後に、中指用袋状部を編成する中指用袋状部形成工程と、
中指用袋状部形成工程の後に、人差し指用袋状部を編成する人差し指用袋状部形成工程と、
上記人差し指用袋状部形成工程後に、上記人差し指用袋状部、中指用袋状部、薬指用袋状部及び小指用袋状部から手首方向に連設される四本胴用袋状部を、上記人差し指用編針群と上記中指用編針群と上記薬指用編針群と上記小指用編針群とを有する四本胴用編針群により編成する四本胴用袋状部形成工程と、
上記四本胴用袋状部形成工程後に、親指用袋状部を編成する親指用袋状部形成工程と、
上記親指用袋状部形成工程の後に、上記四本胴用袋状部及び親指用袋状部から手首方向に連設される袋状の五本胴用袋状部を、上記親指用編針群と上記四本胴用編針群とにより編成する五本胴用袋状部形成工程と
を有し、
上記薬指用袋状部形成工程が、
上記薬指用袋状部の本体部を編成する本体部編成工程と、
上記薬指用袋状部の袋基底部を編成する袋基底部編成工程と
を有し、
この薬指用袋状部形成工程の袋基底部編成工程において、
薬指用編針群のうち前布及び後布の一方を編成する一方の列の編針、及びこの一方の列の小指用編針群のうち薬指用編針群に隣接する少なくとも二つのフックに対応する編針により上記環状の袋基底部の一方の面を編成し、
次いで小指用編針群のうち上記袋基底部の一方の面を編成した小指用編針群の編針に対向する他方の列の編針、及び薬指用編針群の他方の列の編針により上記環状の袋基底部の他方の面を編成し、
上記中指用袋状部形成工程が、
上記中指用袋状部の本体部を編成する本体部編成工程と、
上記中指用袋状の袋基底部を編成する袋基底部編成工程と
を有し、
この中指用袋状部形成工程の袋基底部編成工程において、
中指用編針群のうち前布及び後布の一方を編成する一方の列の編針、及びこの一方の列の薬指用編針群のうち中指用編針群に隣接する少なくとも二つのフックに対応する編針により上記環状の袋基底部の一方の面を編成し、
次いで薬指用編針群のうち上記袋基底部の一方の面を編成した薬指用編針群の編針に対向する他方の列の編針、及び中指用編針群の他方の列の編針により上記環状の袋基底部の他方の面を編成し、
上記人差し指用袋状部形成工程が、
上記人差し指用袋状部の本体部を編成する本体部編成工程と、
上記人差し指用袋状部の袋基底部を編成する袋基底部編成工程と
を有し、
この人差し指用袋状部形成工程の袋基底部編成工程において、
人差し指用編針群のうち前布及び後布の一方を編成する一方の列の編針及びこの一方の列の中指用編針群のうち人差し指用編針群に隣接する少なくとも二つのフックに対応する編針により上記環状の袋基底部の一方の面を編成し、
次いで中指用編針群のうち上記袋基底部の一方の面を編成した中指用編針群の編針に対向する他方の列の編針及び人差し指用編針群の他方の列の編針により袋基底部の他方の面を編成し、
上記親指用袋状部形成工程が、
上記親指用袋状部の本体部を編成する本体部編成工程と、
上記親指用袋状部の袋基底部を編成する袋基底部編成工程と
を有し、
この親指用袋状部形成工程の袋基底部編成工程において、
親指用編針群のうち前布及び後布の一方を編成する一方の列の編針及びこの編針に隣接する一方の列の人差し指用編針群のうち親指用編針群に隣接する少なくとも二つのフックに対応する編針により上記環状の袋基底部の一方の面を編成し、
次いで人差し指用編針群のうち上記袋基底部の一方の面を編成した人差し指用編針群の編針に対向する他方の列の編針及び親指用編針群の他方の列の編針により袋基底部の他方の面を編成する
ことを特徴とする。
【0025】
当該手袋製造方法によって製造された手袋は、薬指用袋状部、中指用袋状部、人差し指用袋状部及び親指用袋状部の各本体部からそれぞれ環状の袋基底部が手首方向に連設され、この環状の袋基底部によって隣接する袋状部と連結された手袋を製造することができる。そして、この手袋の上記袋基底部は、隣接する袋状部の編み目のうち前後二目の編み目(合計四目の編み目)に編み込まれることになる。このように袋基底部の前布と後布との双方で袋状部同士を確実に連結することができ、指股部の孔の発生を的確に防止することができる。さらに、この袋基底部の前布及び後布はそれぞれ隣接する袋状部の少なくとも二目の編み目に編み込まれるので、袋状部同士をより確実に連結することができ、指股部の孔の発生をより的確に防止することができる。しかも、当該手袋製造方法は、従来の抑止杆を用いた製造方法に比べて容易、かつ確実に手袋を製造することができる。また、当該手袋製造方法は、従来の最後三回の周回コースを異なるパターンで編成する方法に比べて、編針の制御を容易に行うことができ、一般的に用いられる横編み機を用いて容易、かつ確実に製造することができる。特に、当該製造方法によって製造された手袋は、従来の最後三回の周回コースを異なるパターンで製造された手袋に比べて、指股部の構造が単純であるため着用者に違和感を与えにくく、また指股部に作用する力が均一に分散しやすく孔が生じ難い。
【0026】
当該手袋製造方法は、13ゲージ以上で編成されていることが好ましい。これにより、薄手でフィット感に優れた手袋を製造することができる。しかも、当該手袋製造方法であれば、指股部の構造が上記構造となるため、13ゲージ以上であっても指股部には孔が生じ難い。
【0027】
さらに、上記第二の課題を解決するためになされた本発明に係るコーティング手袋製造方法は、
上記構成からなる当該手袋製造方法と、
上記手袋製造方法により製造された手袋の少なくとも掌領域にコーティング層を形成するコーティング層形成工程と
を有する。
【0028】
上記構成からなるコーティング手袋製造方法は、指股部に孔が生じ難い手袋を用いてコーティング手袋が製造されるので、指股部におけるコーティング不良が生じ難い。
【0029】
また、上記第三の課題を解決するためになされた本発明に係る手袋は、
横編み機を用いて編成された前布及び後布により胴用の袋状部と、胴用の袋状部から突設される各指に対応する複数の指用の袋状部とが構成される手袋であって、
上記袋状部が、本体部と、本体部から手首方向に連設される環状の袋基底部とを有し、
少なくとも何れかの一つの袋状部の袋基底部が、
上記本体部の前布から手首方向に連設される前面部位、
この前面部位と同一コースで連続し、上記袋状部の一方側に隣接する他の袋状部の袋基底部の他方側の少なくとも二目の前布から手首方向に連設される袋状部連結前側部位、
この袋状部連結前側部位と同一コースで連続し、上記袋状部の一方側に隣接する他の袋状部の袋基底部の他方側の少なくとも二目の後布から手首方向に連設される袋状部連結後側部位、及び
この袋状部連結後側部位と同一コースで連続し、上記本体部の後布から手首方向に連設される後面部位
を有することを特徴とする。
【0030】
当該手袋は少なくとも何れか一つの袋状部の袋基底部は、前面部位及び袋状部連結前側部位(前布)と、後面部位及び袋状部連結後側部位(後布)とを有し、前後双方で袋状部同士を確実に連結することができ、指股部の孔の発生を的確に防止することができる。さらに、袋状部連結前側部位及び袋状部連結後側部位は、それぞれ隣接する袋状部の少なくとも二目の編み目に編み込まれるので、袋状部同士をより確実に連結することができ、指股部の孔の発生をより的確に防止することができる。さらに、当該手袋は、従来の抑止杆を用いた製造方法に比べて容易、かつ確実に製造することができる。しかも、当該手袋は、従来の最後三回の周回コースを異なるパターンで編成する方法に比べて、製造時の編針の制御を容易に行え、一般的に用いられる横編み機を用いて容易、かつ確実に製造することができる。特に、当該手袋は、従来の最後三回の周回コースを異なるパターンで製造された手袋に比べて、指股部の構造が単純であるため着用者に違和感を与えにくく、また指股部に作用する力が均一に分散しやすく孔が生じ難い。
【0031】
また、当該手袋にあっては、上記袋基底部が、前布と後布とを連結する前後布連結部を有することが好ましい。これにより、前布及び後布が前後布連結部によって連結されるため、袋基底部に孔がより発生し難くなる。
【0032】
上記前後布連結部は、上記袋状部連結前側部位及び上記袋状部連結後側部位のウェール方向に設けられていることが好ましい。これにより、この前後布連結部によって袋状部連結前側部位及び袋状部連結後側部位に前後方向に開く力が作用し難くなり、前後布連結部によって効果的に袋基底部の孔の発生を防止することができる。
【0033】
さらに、上記前後布連結部が、上記袋状部連結前側部位等よりも指先方向に設けられた構成を採用することも可能であるが、前後布連結部は、上記前面部位、袋状部連結前側部位、袋状部連結後側部位及び後面部位よりも手首方向に設けられていることが好ましい。つまり、前後布連結部を袋状部連結前側部位等よりも指先方向に設けた場合には、指股部において前後布連結部が外面側に表出することになる。一方、上述のように前後布連結部を袋状部連結前側部位等よりも手首方向に設けた構成の場合には、前後布連結部が袋状部連結前側部位等よりも内面側に位置する。このため、指股部の手首側で前布と後布とを開く方向に力が作用した際(例えば着用者が手袋を着用した際)に、この前布と後布とを開く方向に作用する力は、袋基底部よりも内面側に位置する前後布連結部に作用し易くなり、袋状部連結前側部位及び袋状部連結後側部位を前後方向に開く力が作用し難いので、指股部の孔の発生をより的確に防止することができる。
【0034】
また、上記のように前後布連結部を手首方向に設ける場合には、この前後布連結部と同一コースで他の袋状部間の指股部において前布及び後布を連結する他の前後布連結部が設けられていることが好ましい。つまり、当該手袋は、少なくとも二つの袋状部の袋基底部が、それぞれ上記前面部位、袋状部連結前側部位、袋状部連結後側部位、後面部位及び前後布連結部を有し、この少なくとも二つの袋状部の袋基底部の前後布連結部が、同一コースで設けられている構成を採用することが好ましい。これにより、同一コースで複数の前後布連結部を形成することができ、製造時の編針の制御を容易に行うことができ、一般的に用いられる横編み機を用いて容易、かつ確実に製造することができる。また、同一コースで複数の前後布連結部を形成することができるので、当該手袋の製造時間の短縮化が図られる。
【0035】
さらに、当該手袋は、13ゲージ以上で編成されていることが好ましい。これにより、当該手袋を薄手でフィット感に優れたものとすることができる。しかも、当該手袋は、指股部が上記構造からなるので、13ゲージ以上であっても指股部には孔が生じ難い。
【0036】
また、上記第四の課題を解決するためになされた本発明に係るコーティング手袋は、
上記構成からなる当該手袋と、
上記手袋の少なくとも掌領域に形成されたコーティング層と
を有する。
【0037】
上記構成からなるコーティング手袋は、指股部に孔が生じ難い手袋を用いて製造されるので、指股部におけるコーティング不良が生じ難い。
【0038】
なお、「多数の編針がフック側の対向状態で二列に配設」とは「編針がフック側を対向させた状態で前後二列に配列されている」ことで、前側の編針と後側の編針とが対をなしていることを意味し、対となる編針同士の位置が左右方向(前側の多数の編針の配列方向及び後側の多数の編針の配列方向)においてズレ(例えば配列方向に隣接する編針同士の間隔の半分程度のズレ)を生じている場合も含む。また、親指、人差し指、中指、薬指及び小指とは、解剖学上での第一指(first finger)、第二指(second
finger)、第三指(third finger)、第四指(fourth finger)及び第五指(fifth finger)をそれぞれ意味する。