特許第6178787号(P6178787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6178787-土木工学型重車両用タイヤのビード 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178787
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】土木工学型重車両用タイヤのビード
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/00 20060101AFI20170731BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20170731BHJP
   B60C 15/04 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   B60C15/00 B
   B60C9/08 E
   B60C15/00 K
   B60C15/04 G
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-514050(P2014-514050)
(86)(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公表番号】特表2014-516011(P2014-516011A)
(43)【公表日】2014年7月7日
(86)【国際出願番号】EP2012060652
(87)【国際公開番号】WO2012168274
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2015年4月10日
(31)【優先権主張番号】1154933
(32)【優先日】2011年6月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】フェリン オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】アルル フランソワ
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−198326(JP,A)
【文献】 特開2001−071716(JP,A)
【文献】 特開2009−113715(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/085647(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設プラント型重車両用のタイヤであって、2つのリムフランジ(2)を有するリムに接触するようになった2つのビード(1)と、前記タイヤの内側から外側に向かって実質的に円形の子午線断面のビードワイヤ(4)回りに巻かれ、前記タイヤの内壁に沿って延びる主要部分(31)及び前記主要部分(31)の前記タイヤの軸方向外側に位置する巻き上げ部(32)を含むカーカス補強材と、前記ビードワイヤ(4)の外側に向かう半径方向延長部として設けられていて、前記主要部分(31)と前記巻き上げ部(32)を軸方向に隔てる充填要素(5)とを有し、前記ビードワイヤ(4)は、ポリマー被覆要素(42)により囲まれた周方向補強要素(41)から形成され、前記巻き上げ部の第1のセグメント(321)と前記主要部分(31)との間の距離(d)は、前記ビードワイヤ(4)から最小距離(d1)まで外側に向かって半径方向に連続的に減少している、タイヤにおいて、前記巻き上げ部の前記第1のセグメント(321)の外側に向かう半径方向延長部としての巻き上げ部の第2のセグメント(322)と前記主要部分(31)との間の距離(d2)は、実質的に一定であり且つ前記巻き上げ部の前記第1のセグメント(321)と前記主要部分(31)との間の最小距離(d1)に等しく、前記巻き上げ部の前記第2のセグメント(322)と前記主要部分(31)との間の前記実質的に一定の距離(d2)は、前記ビードワイヤ(4)の前記実質的に円形の子午線断面の直径(L1)を4で除算した値以下であり、前記ビードワイヤ(4)の前記ポリマー被覆要素(42)の最小厚さ(e)は、前記ビードワイヤ(4)の周方向補強要素(41)の子午線断面の直径(L2)の0.04倍以上である、
建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項2】
前記巻き上げ部の前記第2のセグメント(322)の半径方向外方の延長部として設けられた前記巻き上げ部の第3のセグメント(323)と前記主要部分(31)との間の距離(d)は、前記巻き上げ部の前記第3のセグメント(323)上の箇所Cのところで最大距離(d3)に達する、請求項に記載の建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項3】
前記巻き上げ部の第3のセグメント(323)と前記主要部分(31)との間の最大距離(d3)は、前記巻き上げ部の前記第2のセグメント(322)と前記主要部分(31)との間の距離(d2)の1.2倍以上である、請求項1又は2に記載の建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項4】
前記巻き上げ部の前記第3のセグメント(323)と前記主要部分(31)との間の前記最大距離(d3)に達する前記巻き上げ部の前記第3のセグメント(323)の前記箇所Cは、前記巻き上げ部(32)の半径方向最も外側の箇所Eである、請求項1〜の何れか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項5】
前記カーカス補強材層(3)は、ポリマー被覆材料で被覆された補強要素で構成され、前記充填要素(5)は、前記巻き上げ部の前記第2のセグメント(322)と前記主要部分(31)との間に軸方向に納められていて、ポリマー充填材料で構成された充填要素セグメント(51)を有し、同一のポリマー材料が前記ポリマー充填材料及び前記ポリマー被覆材料に用いられている、請求項1〜のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項6】
請求項1〜のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤと、リムとを備えた設置組立体であって、前記巻き上げ部の前記第2のセグメント(322)の半径方向最も内側の箇所Aと前記リム(4)の公称直径(D)のところに半径方向に位置した軸方向直線(S)との間の半径方向距離(HA)は、前記リムフランジ(20)の半径方向高さ(H)以上である、設置組立体。
【請求項7】
請求項1〜のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤと、リムとを備えた設置組立体であって、前記巻き上げ部の前記第2のセグメント(322)の半径方向最も内側の箇所Aと前記リム(4)の公称直径(D)のところに半径方向に位置した軸方向直線(S)との間の半径方向距離(HA)は、前記リムフランジ(2)の前記半径方向高さ(H)の2倍以下である、設置組立体。
【請求項8】
請求項1〜のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤと、リムとを備えた設置組立体であって、前記巻き上げ部の前記第2のセグメント(322)の半径方向最も外側の箇所Bと前記リム(4)の前記公称直径(D)のところに半径方向に位置した前記軸方向直線(S)との間の半径方向距離(HB)と、前記巻き上げ部の前記第2のセグメント(322)の半径方向最も内側の箇所Aと前記リム(4)の前記公称直径(D)のところに半径方向に位置した前記軸方向直線(S)との間の半径方向距離(HA)との差は、前記リムフランジ(2)の前記半径方向高さ(H)以下である、設置組立体。
【請求項9】
請求項1〜のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤと、リムとを備えた設置組立体であって、前記巻き上げ部(32)の前記半径方向最も外側の箇所Eと前記リム(4)の前記公称直径(D)のところに半径方向に位置した前記軸方向直線(S)との間の半径方向距離(HE)は、前記主要部分(321)の軸方向最も外側の箇所Fと前記リム(4)の前記公称直径(D)のところに半径方向に位置した前記軸方向直線(S)との間の半径方向距離(HF)の0.8倍以上である、設置組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設プラント型の重車両に取り付けられるようになったラジアルタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、この種の用途には限定されないが、特に採石場又は露天掘り鉱山から掘り出される物体を運搬する車両であるダンプ車(ダンパとも呼ばれる)に取り付けられるようになった大型サイズのラジアルタイヤに関して本発明を説明する。かかるタイヤのリムの公称直径は、欧州タイヤ及びリム技術協会、即ちETRTOの意味の範囲内において、最小25インチ(63.5cm)である。
【0003】
タイヤは、タイヤとタイヤが取り付けられるリムとの間の機械的連結部を提供する2つのビードを有し、これら2つのビードは、それぞれ、2つのサイドウォールによって、トレッド表面を介して路面に接触するようになったトレッドに接合されている。
【0004】
以下の説明において、「円周方向」、「軸方向」、「半径方向」は、それぞれ、タイヤの回転方向においてトレッド表面に接する方向、タイヤの回転軸線に平行な方向、タイヤの回転軸線に垂直な方向である。「〜の半径方向内側」、「〜の半径方向外側」は、それぞれ、「タイヤの回転軸線の近くに位置すること」、「タイヤの回転軸線から一段と遠くに位置すること」を意味する。「〜の軸方向内側」、「〜の軸方向外側」は、それぞれ、「タイヤの赤道面の近くに位置すること」、「タイヤの赤道面から一段と遠くに位置すること」を意味し、赤道面は、タイヤのトレッド表面(踏み面)の中央を通ると共にタイヤの回転軸線に垂直な平面である。
【0005】
ラジアルタイヤは、具体的に説明すると、トレッドの半径方向内側に位置したクラウン補強材及びクラウン補強材の半径方向内側に位置したカーカス補強材を含む補強材を有している。
【0006】
建設プラント型重車両用ラジアルタイヤのカーカス補強材は、通常、ポリマー被覆材料で被覆されている一般に金属製の補強要素で構成された少なくとも1つのカーカス補強材層を有する。カーカス補強材層は、2つのビードを互いに接合し、各ビード内においてタイヤの内側から外側に向かってビードワイヤ回りに巻かれた主要部分を有する。金属補強要素は、互いに実質的に平行であり、円周方向と、主要部分の場合、85°〜95°の角度をなし、巻き上げ部の場合、75°〜105°の角度をなしている。
【0007】
ビードワイヤは、ポリマー又はテキスタイルで構成される場合のある(これが全てではない)少なくとも1つの材料によって包囲された通常金属製の円周方向補強要素を有する。カーカス補強材と接触状態にあるビードワイヤのセグメントは、特に、カーカス補強材との結合によってインフレーション時にカーカス補強材中の引っ張り力に対する反作用に寄与する。引っ張り力に対する反作用へのこの寄与の程度は、ビードワイヤの捩り剛性及び巻き上げ部の幾何学的形状で決まる。ビードワイヤが高い捩り剛性を有する通常の場合、インフレーション時の引っ張り力は、本質的に、ビードワイヤの反作用を受け、巻き曲げ部は、副次的な寄与を行う。
【0008】
各ビード内の巻き上げ部により、カーカス補強材層は、ビードワイヤに繋留することができる。建設プラント型重車両用タイヤの場合、巻き上げ部は、一般に長く、このことは、その自由端部がビードワイヤの半径方向最も外側の箇所の近くに位置するよりもタイヤのサイドウォール中のカーカス補強材の軸方向最も外側の箇所の半径方向近くに位置することを意味している。
【0009】
各ビードは、また、ビードワイヤの半径方向外方の延長部としてのフィラー又は充填要素を更に有する。充填要素は、少なくとも1種類のポリマー充填材料で作られている。充填要素は、少なくとも2つのポリマー充填材料の半径方向スタックで作られる場合がある。充填要素は、主要部分と巻き上げ部を軸方向に隔てている。
【0010】
車両を走行させているとき、リムに取り付けられていて、インフレートされて車両の荷重を受けて圧縮された状態のタイヤは、特にそのビード及びそのサイドウォールのところで曲げサイクルを受ける。
【0011】
曲げサイクルにより、曲率の変化が生じ、かかる曲率変化は、主要部分及び巻き上げ部の金属製補強要素の張力の変化と組み合わさる。
【0012】
ビードは、撓んでいるときにこれが接触関係をなすリムフランジ周りに巻き付き、ビードは、曲がる際に、外側軸線及び内側軸線がそれぞれ主要部分及び巻き上げ部であるビームのように機械的に挙動し、このビームの長さは、巻き上げ部の長さによって決まる。ビードの撓みは、リムフランジの幾何学的形状、特にタイヤに関する通常の規格、例えばETRTO規格によって定められたリムフランジの高さによって決まる。曲げサイクルを受ける巻き上げ部は、ビードの疲労破壊を招き、したがってビードの耐久性の減少及びタイヤの寿命の短縮を招く恐れのある圧縮変形を受ける。巻き上げ部が長ければ長いほど、巻き上げ部の圧縮に対する感度がそれだけ一層高くなる。というのは、この場合、巻き上げ部の端部は、相当大きな曲げを受けるタイヤの領域中に半径方向に位置決めされているからである。
【0013】
欧州特許第2216189号明細書は、使用中、ビードがリム上で撓むときに巻き上げ部の圧縮変形を減少させることによって耐久性を向上させたタイヤビードを記載している。この目的は、巻き上げ部と主要部分との間の距離がビードワイヤから最小距離まで外側に向かって半径方向に連続的に減少し、次に、最大距離まで連続的に増加するような巻き上げ部によって達成される。巻き上げ部は、巻き上げ部と主要部分との間の最大距離に対応した巻き上げ部の箇所の半径方向外側で延びる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第2216189号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者は、タイヤが駆動されているときに巻き上げ部が圧縮下に置かれる程度を減少させることによって建設プラント型重車両用のラジアルタイヤのビードの耐久性を一段と向上させるという目的の達成に取り組んだ。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、この目的は、建設プラント型重車両用のタイヤであって、
‐2つのリムフランジを有するリムに接触するようになった2つのビードと、
‐巻き上げ部を形成するよう各ビード内においてタイヤの内側から外側に向かって実質的に円形の子午線断面のビードワイヤ回りに巻かれている主要部分を備えた少なくとも1つのカーカス補強材層を含むカーカス補強材と、
‐ビードワイヤの外側に向かう半径方向延長部として設けられていて、主要部分と巻き上げ部を軸方向に隔てる充填要素とを有し、
‐巻き上げ部の第1のセグメントと主要部分との間の距離は、ビードワイヤから最小距離まで外側に向かって半径方向に連続的に減少し、
‐巻き上げ部の第1のセグメントの外側に向かう半径方向延長部としての巻き上げ部の第2のセグメントと主要部分との間の距離は、実質的に一定であり且つ巻き上げ部の第1のセグメントと主要部分との間の最小距離に等しいことを特徴とする建設プラント型重車両用タイヤによって達成される。
【0017】
本発明によれば、巻き上げ部の第1のセグメントの外側に向かう半径方向延長部としての巻き上げ部の第2のセグメントと主要部分との間の距離は、実質的に一定であり且つ巻き上げ部の第1のセグメントと主要部分との間の最小距離に等しいことが有利である。
【0018】
巻き上げ部の第1のセグメントは、ビードワイヤから半径方向外方に延びている。巻き上げ部の第1のセグメントと主要部分との間の距離は、ビードワイヤの直径から最小値まで連続的に減少している。
【0019】
巻き上げ部の第2のセグメントは、巻き上げ部の第1のセグメントの連続部として半径方向外方に延びている。巻き上げ部の第2のセグメント上の任意の箇所と主要部分との間の主要部分に垂直に測定した距離は、実質的に一定であり且つ巻き上げ部の第1のセグメントの半径方向最も外側の箇所のところで達する最小距離に等しく、即ち、この距離は、実質的に、最小距離の0.9倍〜1.1倍であるのが良い。
【0020】
巻き上げ部の第2のセグメントは、実質的に、タイヤを駆動したときにリムフランジに巻き付き、より具体的に言えば、リムフランジの実質的に円形の且つ半径方向外側のセグメントに巻き付くビードのセグメントに相当する。曲げの際にビームのように挙動するビードのこのセグメントでは、ビームの外側の軸線になぞらえることができる。主要部分は、伸長状態にあり、これに対し、ビームの内側の軸線になぞらえることができる巻き上げ部は、圧縮状態にある。巻き上げ部と主要部分との間の距離を減少させることは、ビームの外側の軸線と内側の軸線との間の距離を減少させることに等しく、これにより、内側の軸線、即ち巻き上げ部が圧縮下に置かれる程度を減少させることができる。
【0021】
また、巻き上げ部の第2のセグメントと主要部分との間の実質的に一定の距離は、ビードワイヤの実質的に円形の子午線断面の直径を4で除算した値以下であり、好ましくは、ビードワイヤの実質的に円形の子午線断面の直径を6で除算した値以下であることが有利である。
【0022】
ビードワイヤの実質的に円形の子午線断面の直径は、ビードワイヤの子午線断面に外接する円の直径であり、このビードワイヤは、通常、ポリマー材料で作られる場合が多い被覆要素によって包囲された円周方向金属製補強要素から成る。
【0023】
巻き上げ部の第2のセグメントと主要部分との間の距離は、巻き上げ部が圧縮を受ける程度を相当減少させるため、即ち、ほぼゼロの圧縮度又はそれどころか伸長を達成するために十分に短いことが必要であり、即ち、巻き上げ部の第2のセグメントと主要部分の結合度は、十分に高いことが必要である。
【0024】
さらに、巻き上げ部の第2のセグメントの半径方向最も内側の箇所とリムの公称直径のところに半径方向に位置した軸方向直線との間の半径方向距離は、リムフランジの半径方向高さ以上であることが有利である。
【0025】
また、巻き上げ部の第2のセグメントの半径方向最も内側の箇所とリムの公称直径のところに半径方向に位置した軸方向直線との間の半径方向距離は、リムフランジの半径方向高さの2倍以下であり、好ましくは1.2倍以下であることが有利である。
【0026】
具体的に言えば、重要な一特徴は、リムフランジに対する巻き上げ部の第2のセグメントの半径方向位置である。タイヤに関する通常の規格、例えばETRTO規格によれば、リムは、特に、その公称直径によって特徴付けられ、リムフランジは、その半径方向高さによって特徴付けられる。リムフランジの半径方向高さは、タイヤの回転軸線に平行であり且つリムの公称直径又はリム受座直径を通る軸方向直線とリムフランジの半径方向最も外側の箇所との間で測定される。
【0027】
リムフランジに対する巻き上げ部の第2のセグメントの半径方向位置は、巻き上げ部の第2のセグメントの半径方向最も外側の箇所とリムの公称直径のところに半径方向に位置した軸方向直線との間の半径方向距離によって決まる。リムフランジの半径方向高さに等しい最小値とリムフランジの半径方向高さの2倍、好ましくは1.2倍に等しい最大値との間の半径方向距離範囲は、巻き上げ部の第2のセグメントが、巻き上げ部が圧縮を受ける程度の減少が意図されている曲げ領域に位置決めされるのを保証する。
【0028】
巻き上げ部の第2のセグメントの半径方向最も外側の箇所とリムの公称直径のところに半径方向に位置した軸方向直線との間の半径方向距離と、巻き上げ部の第2のセグメントの半径方向最も内側の箇所とリムの公称直径のところに半径方向に位置した軸方向直線との間の半径方向距離との差は、有利には、リムフランジの半径方向高さ以下である。
【0029】
この特徴は、巻き上げ部の第2のセグメントの半径方向高さの最大値を定め、それにより、巻き上げ部の第2のセグメントを最も高い圧縮応力を受ける巻き上げ部のセグメントに限定することができる。
【0030】
さらに、巻き上げ部の第2のセグメントの半径方向最も外側の箇所は、実質的に、巻き上げ部の変曲点、即ち、巻き上げ部が伸長状態にある外側上の半径方向における巻き上げ部の曲率の方向の反転部に一致している。
【0031】
巻き上げ部の第2のセグメントの半径方向外方の延長部として設けられた巻き上げ部の第3のセグメントと主要部分との間の距離は、有利には、巻き上げ部の第3のセグメント上の箇所のところで最大距離に達する。
【0032】
巻き上げ部の第3のセグメントは、巻き上げ部の第2のセグメントから巻き上げ部の端、即ち巻き上げ部の半径方向最も外側の箇所まで半径方向外方に延びている。したがって、巻き上げ部の第3のセグメントは、リムフランジ上における撓み領域の半径方向外側に位置している。
【0033】
巻き上げ部のこの第3のセグメントでは、巻き上げ部と主要部分との間の距離が巻き上げ部の第2のセグメントと主要部分との間の最小距離に対して増大することが有利である。これは、これにより巻き上げ部の第1のセグメントから第2のセグメントに、次に第3のセグメントに移行する際に曲り部に曲がりくねった初期幾何学的形状が与えられるからである。インフレーション時、この曲がりくねった初期幾何学的形状は、巻き上げ部のより真っ直ぐに変形した幾何学的形状に向かって漸変し、これは、巻き上げ部中への張力の導入に寄与する。かくして、インフレーション時に巻き上げ部に張力がこのようにあらかじめ加えられることにより、ビードが運転条件下においてリムフランジ上で撓むときに巻き上げ部が圧縮を受けるようになるのを回避することができる。
【0034】
また、巻き上げ部の第3のセグメントの距離のこの増大により、巻き上げ部のこのセグメント中における巻き上げ部と主要部分との結合度を減少させることができる。これは、亀裂に特に敏感な領域である巻き上げ部の端の近くのこの領域における充填要素内の剪断力の減少に寄与する。
【0035】
好ましい一実施形態によれば、巻き上げ部の第3のセグメントと主要部分との間の最大距離は、巻き上げ部の第2のセグメントと主要部分との間の距離の1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である。
【0036】
巻き上げ部の第2のセグメントから第3のセグメントに進むときの巻き上げ部から主要部分への距離の著しい増大は、巻き上げ部に関する曲がりくねった初期幾何学的形状が、巻き上げ部が交通状況下において巻き上げ部が圧縮状態になるのを回避するのに十分な予荷重としての張力下に巻き上げ部を置くことができるほど十分明確であるようにするために、事実上必要である。
【0037】
特定の一実施形態によれば、巻き上げ部の第3のセグメントと主要部分との間の最大距離に達する巻き上げ部の第3のセグメントの箇所は、巻き上げ部の半径方向最も外側の箇所Eである。
【0038】
この特定の場合、最大結合解除は、巻き上げ部の端のところで達成される。具体的に言えば、この形態により、巻き上げ部の端から充填要素を通って広がる亀裂の恐れを減少させることができる。
【0039】
別の実施形態によれば、カーカス補強材層は、ポリマー被覆材料で被覆された補強要素で構成され、充填要素は、巻き上げ部の第2のセグメントと主要部分との間に軸方向に納められていて、ポリマー充填材料で構成された充填要素セグメントを有する場合、巻き上げ部の第2のセグメントと主要部分との間に軸方向に納められた充填要素セグメントのポリマー充填材料は、カーカス補強材層のポリマー被覆材料と同種であることが有利である。
【0040】
巻き上げ部の第2のセグメントでは、充填要素の厚さが減少し、このことは、一方において、充填要素中の剪断力の増大を意味し、他方において、充填要素を構成するポリマー充填材料の熱の放散量の減少を意味している。本発明者は、巻き上げ部と主要部分との間の強力な結合度のこの領域中に、剛性であり且つ良好な熱の放散体であるポリマー充填材料を用いることが有利であると考えた。カーカス補強材層の補強要素を被覆するポリマー被覆材料は、通常、剛性であり且つ熱の良好な放散体なので、ポリマー被覆材料を巻き上げ部の第2のセグメントにおいて充填要素のために用いることができる。さらに、カーカス補強材層及び充填要素を同種のポリマー材料で構成することにより、巻き上げ部と充填要素との間及び充填要素と主要部分との間のそれぞれのインターフェースのところでの不連続性という特異点の発生が回避され、かくして、この領域における亀裂発生の恐れが減少する。
【0041】
巻き上げ部の半径方向最も外側の箇所とリムの公称直径のところに半径方向に位置した軸方向直線との間の半径方向距離は、主要部分の軸方向最も外側の箇所とリムの公称直径のところに半径方向に位置した軸方向直線との間の半径方向距離の0.8倍以上であることが有利である。
【0042】
換言すると、巻き上げ部の端の半径方向位置は、主要部分の軸方向最も外側の箇所の半径方向位置の近くにあり、主要部分の接線が半径方向であるこの箇所は、サイドウォールのところのタイヤの幅を定める。この半径方向位置は、長い巻き上げ部の特徴である。
【0043】
長い巻き上げ部は、インフレーション時のカーカス補強材層中の引っ張り力に対する反作用に寄与する。ただし、ビードワイヤの捩り剛性が十分に低いことを条件とする。
【0044】
巻き上げ部の端がカーカス補強材の軸方向最も外側の箇所の半径方向内側に位置しているか半径方向外側に位置しているかどうかに応じて、サイドウォールが駆動条件下において撓むときに、巻き上げ部の端は、外側に向かって半径方向に引っ張られて張力下に置かれるか、或いは、半径方向内方に押されて圧縮下に置かれるかのいずれかであると言える。したがって、巻き上げ部の端の半径方向位置は、巻き上げ部が圧縮下に配置されるかどうかを定める。
【0045】
最後に、有利な一実施形態によれば、ビードワイヤのポリマー被覆要素の最小厚さは、ビードワイヤの円周方向補強要素の子午線断面の直径の0.04倍以上である。
【0046】
ビードワイヤの円周方向補強要素の子午線断面の直径は、ビードワイヤの円周方向補強要素の子午線断面に外接する円の直径である。ビードワイヤのポリマー被覆要素の最小厚さは、ビードワイヤの実質的に円形の子午線断面の直径とビードワイヤの円周方向補強要素の子午線断面の直径との間の距離の半分に等しい。
【0047】
ビードワイヤのポリマー被覆要素の厚さが最小限に抑えられているというこの特性は、捩り剛性が極めて高い先行技術のビードワイヤと比較して、ビードワイヤの捩りにより軟化又は捩り剛性の減少を強化する。先行技術のビードワイヤの円周方向補強要素は、例えば、ポリマー材料で被覆された個々の金属製ワイヤーの層を円周方向に巻いたもので構成されている。円周方向補強要素周りへのポリマー被覆要素の導入により、円周方向補強要素の半径方向内側部分とカーカス補強材層との間のインターフェース領域中におけるビードワイヤの円周方向補強要素とカーカス補強材層との結合解除が可能である。
【0048】
インフレーション時、カーカス補強材に及ぼされる張力の影響を受けて、巻き上げ部を形成するようカーカス補強材層を巻き付けたビードワイヤは、主要部分及びプーリに掛かる細線のストランドになぞらえることができる巻き上げ部の作用下で捩りモーメントを受けるプーリのように挙動する。プーリが十分に軟らかい場合、即ち、その捩り剛性が十分に低い場合、インフレーション時におけるビードワイヤの回転は、巻き上げ部への張力の印加に寄与するであろう。
【0049】
この特定の場合、ビードワイヤの軟化は、先行技術のビードワイヤと比較して、ビードワイヤのポリマー被覆要素の厚さを増大させることによって達成される。
【0050】
また、ポリマー被覆要素の厚さが所与の場合、10%の伸び率における弾性率がそれほど高くないことを特徴とする剛性の低いポリマー被覆材料を選択することが計画できる。
【0051】
最後に、円周方向補強要素が設計によって軟らかいビードワイヤ、例えば金属コードの一まとまりから成る編組型と呼ばれているビードワイヤを選択することが計画できる。
【0052】
本発明の特徴は、添付の図1の説明の助けにより良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の建設プラント型重車両用タイヤのビードの子午線平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1の理解を容易にするために、図1は、縮尺通りには描かれていない。
【0055】
図1は、リムフランジ2と接触状態にある本発明の建設プラント型重車両用タイヤのビード1を示しており、リムフランジは、ビードが運転条件下において撓む際にビードが巻き付く円形部分を有している。
【0056】
リムフランジは、リムフランジの円形部分の半径方向最も外側の箇所と例えばETRTO規格により定められたリムの公称直径D又は受座直径を通る直線Sとの間で測定された半径方向高さHを有する。
【0057】
ビード1は、金属補強要素で作られた単一のカーカス補強材層3を含むカーカス補強材を有する。カーカス補強材層は、巻き上げ部32を形成するようタイヤの内側から外側に向かってビードワイヤ4に巻き付けられた主要部分31を有している。巻き上げ部32と主要部分31は、ビードワイヤ4の半径方向外側に延びる充填要素5によって軸方向に隔てられている。図1に示された形態では、充填要素5は、2種類のポリマー充填材料の半径方向スタックで構成されている。
【0058】
巻き上げ部32は、ビードワイヤ4との最後の接触箇所(図示せず)から巻き上げ部32の端点又は端箇所Eまで半径方向に延びる巻き上げ部の3つのセグメント321,322,323で構成されている。巻き上げ部32の端箇所Eは、リムの公称直径Dを通る直線Sに対して半径方向距離HEのところに半径方向に位置している。半径方向距離HEは、好ましくは、リムの公称直径Dを通る直線Sに対するカーカス補強材層3の軸方向最も外側の箇所Fの半径方向距離HFの0.80倍以上であり、これは、長い巻き上げ部32を特徴付ける構成である。
【0059】
巻き上げ部の第1のセグメント321は、ビードワイヤとの最後の接触箇所(この箇所は、図示されていない)から箇所Aまで延びている。巻き上げ部の第1のセグメント321と主要部分31との間の距離は、ビードワイヤの幅L1から距離d1まで連続的に減少しており、距離d1は、巻き上げ部32と主要部分31との間の最小距離である。
【0060】
巻き上げ部の第2のセグメント322は、巻き上げ部の第1のセグメント321から半径方向外方に延びており、この第2のセグメントは、箇所Aによって半径方向内側が境界付けられ、箇所Bによって半径方向外側が境界付けられており、これらの箇所は、それぞれ、リムの公称直径Dを通る直線Sに対して半径方向距離HA,HBのところに半径方向に位置している。巻き上げ部の第2のセグメント322と主要部分31との間の距離d2は、実質的に一定であり、巻き上げ部の第1のセグメントの最小距離d1に±10%の範囲で等しい。充填要素5は、好ましくは、カーカス補強材層3の金属補強要素上に用いられたポリマー被覆材料と同種であるポリマー充填材料で作られた充填要素セグメント51を有している。
【0061】
最後に、巻き上げ部の第3のセグメント323は、巻き上げ部の第2のセグメント322から半径方向外方に延びており、この第3のセグメントは、箇所Bによって半径方向外側が境界付けられると共に箇所Eによって半径方向外側が境界付けられている。巻き上げ部の第3のセグメント323と主要部分31との間の距離dは、箇所Cのところで最大値d3を有している。
【0062】
ビードワイヤ4は、円周方向補強要素41及び被覆要素42で構成され、円周方向補強要素41の子午線断面は、図示の場合、六角形であり、直径L2の円に内接し、この円は、円周方向補強要素41の軸方向幅を定めており、被覆要素42は、通常、ポリマー材料で作られ、この被覆要素の実質的に円形の子午線断面は、直径L1を有し、この直径は、被覆要素42を含めビードワイヤ4の軸方向幅を定めている。ビードワイヤ4のポリマー被覆要素42の最小厚さEは、ビードワイヤ4の軸方向幅L1とその円周方向補強要素41の軸方向幅L2の差の半分として定められている。ビードワイヤ4の被覆要素42の厚さは、図1に示されているように変化しているのが良く、ビードワイヤの捩り剛性を定めるのは、最小厚さeである。ポリマー被覆材料が所与の場合、最小厚さeが大きければ大きいほど、捩り剛性の減少度がそれだけ一層大きくなり、ビードワイヤ4は、一層回転することができ、従って、張力をタイヤがインフレートされているときに巻き上げ部32に導入することができる。
【0063】
本発明を特にリムに取り付けられたサイズ40.00R57の重車両用タイヤの場合に研究したが、リムの公称直径Dを通る直線Sに対して測定してリムフランジ2の半径方向高さHは、152mmに等しかった。
【0064】
巻き上げ部の第1のセグメント321は、ビードワイヤとの最後の接触箇所から箇所Aまで延びている。巻き上げ部の第1のセグメント321と主要部分31との間の距離は、ビードワイヤの幅L1から10mmに等しい距離d1まで連続的に減少しており、距離d1は、巻き上げ部32と主要部分31との間の最小距離である。
【0065】
巻き上げ部の第2のセグメント322は、巻き上げ部の第1のセグメント321から半径方向外方に延び、この第2のセグメントは、箇所Aによって半径方向内側が境界付けられると共に箇所Bによって半径方向外側が境界付けられ、これらの箇所は、それぞれ、リムの公称直径Dを通る直線Sに対して211mmに等しい半径方向距離HA及び311mmに等しい半径方向距離HBのところに半径方向に位置している。半径方向距離HAは、リムフランジ2の半径方向高さHの1.4倍に等しく、従って、半径方向距離Hの1倍〜2倍に収まっている。半径方向距離HBと半径方向距離HAの差は、100mmに等しく、従って、リムフランジ2の半径方向高さHよりも小さい。巻き上げ部の第2のセグメント322と主要部分31との間の距離d2は、実質的に一定であり、巻き上げ部の第1のセグメント321の10mmに等しい最小距離d1に等しい。
【0066】
巻き上げ部の第3のセグメント321は、巻き上げ部の第2のセグメント322から半径方向外方に延び、この第3のセグメントは、箇所Bによって半径方向内側が境界付けられると共に箇所Eによって半径方向内側が境界付けられている。巻き上げ部の第3のセグメント323と主要部分31との間の距離dは、16mmに等しい箇所Cのところの最大値d3を有している。巻き上げ部32の端箇所Eの半径方向距離HEは、465mmに等しい。巻き上げ部32の端箇所Eのところの巻き上げ部の第3のセグメント323と主要部分31との間の距離は、14mmに等しい。
【0067】
図1に示されているように本発明のタイヤに対して実施された有限要素解析計算シミュレーションの示すところによれば、巻き上げ部が圧縮下に置かれる程度は、タイヤを駆動しているときにかなり減少した。
図1