【実施例】
【0147】
[A]機械工作システムの全体構成
実施例としての機械工作システム(以下、単に「システム」と言う場合がある)は、
図1〜
図3に示すように、ベース10と、ベース10上に載置されて配列された4つの作業機モジュール(以下、単に「モジュール」と言う場合がある)12とを含んで構成されている。
図1は、外装パネルが張られた状態を、
図2は、外装パネルの一部が解放された状態を示している。
図3は、外装パネルを外した状態を示している。ちなみに、当該システムの正面側、すなわち、操作パネル14が設けられている側が、
図1では左前を向くように、
図2では右前を向くように、
図3では左前を向くように、当該システムがそれぞれ表わされている。以下の説明では、当該システムに関する「前後」,「左右」,「上下」を、当該システムの正面側から見た場合における前後,左右,上下として扱うこととする。また、4つのモジュールは左右方向に配列されていることから、左右方向を「配列方向」と、前後方向を、配列方向と交差する方向(詳しくは直交する方向)という意味で、「交差方向」と呼ぶ場合があることとする。
【0148】
なお、
図1〜
図3を始め以下に説明する図のうちのいくつかのものは、模式的な図とされており、それらにおいては、構成要素の一部やワークが、省略されたり、また、模式的に表わされたりしている。ちなみに、
図2において、W1は、設定された作業位置(作業に供される際の位置)に位置するワークを、W2は、後に説明するワーク搬送装置によって搬送されるワークを、W3は、後に説明するワーク移送装置によって移送される際のワークの存在空間領域を、それぞれ模式的に示しており、
図3において、W4は、作業位置に位置するワークを模式的に示している。
【0149】
図1〜3から解るように、4つのモジュール12は、互いに、殆ど等しい形状,寸法,構造を有するものとされており、配列方向において、設定された配列ピッチで、互いに近接して配列されている。「配列ピッチ」の概念については後に説明するが、各モジュール12の間隔は、50mm以下とされており、実際には、殆ど隙間なく4つのモジュール12が配列されている。各モジュール12は、外装パネルが張られた状態では概して直方体形状とされており、左右方向の寸法(以下、「モジュール幅」と言う場合がある)が、前後方向の寸法(以下、「モジュール長」と言う場合がある)に対して相当に小さくされている。そして、ベース10は、4つのモジュール12が配列状態で載置された場合におけるそれら4つのモジュール12全体の左右方向の寸法と略等しい左右方向の寸法(以下、「ベース幅寸法」と言う場合がある)を有し、各モジュール12の前後方向の寸法よりも、ある程度短い前後方向の寸法(以下、「ベース奥行寸法」と言う場合がある)を有している。簡単に言えば、ベース10は、各モジュール12の前方側および後方側のはみ出しがあるものの、左右方向においては、4つのモジュール12が丁度載置される大きさのものとされているのである。以上のような構成から、本システムは、4つものモジュール12が配列されているにも拘わらず、モジュール12の配列方向における当該システム全体の長さ(以下、「システム長」と言う場合がある)が比較的短いものとされているのである。
【0150】
ベース10は、並べられて互いに固定された2つのベースユニット16を含んで構成されており、
図4に示すように、各ベースユニット16には、2つのモジュール12が載置されている。
図5,
図6は、1つのベースユニット16に1つのモジュール12が載置された状態を、
図1と略同じ視点において示している。ちなみに、
図6は、外装パネルの一部が解放された状態を示している。2つのベースユニット16は、各々が規格化されており、互いに同じ形状,寸法,構造のものとされている。
【0151】
図1〜
図6から解るように、本システムは、それぞれが、1つのベースユニット16と、そのベースユニット16に載置された2つのモジュール12とを含んで構成される2つのシステムモジュールが並べられることによって構成されたものと考えることができる。また、見方を変えれば、それら2つのシステムモジュールの各々を、単一物である1つのベースに複数のモジュールが載置された1つの機械工作システムと考えることもできるのである。なお、本システムは、2つのベースユニット16によって構成されているが、単一物としての1つのベースに4つのモジュールが載置されたシステムも、請求可能発明に係るシステムとなり得る。
【0152】
4つのモジュール12は、構造的にも、互いに略同じものとされており、各モジュール12は、後に詳しく説明するように、旋盤がモジュール化された旋盤モジュールであり、工作機械モジュールの一種である。
図4に示すように、4つのモジュール12が配列された状態では、ワークW4に対する作業、つまり、作業位置(作業が行われるワークが位置する位置)に位置するワークW4に対しての切削加工(ワークに対する作業の一種である)が行われる空間である作業空間が、当該システムの前方側において配列方向に並ぶようになっている。
【0153】
本システムは、各モジュール12が単独でベース10から引き出せることを1つの大きな特徴としている。言い換えれば、当該システムが稼働するにあたってモジュール12が位置すべき位置、つまり、
図1,
図3において各モジュール12が位置している位置を、通常時位置(標準位置)と呼べば、各モジュール12は、その通常時位置から交差方向に移動可能とされているのである。モジュール12を引き出し可能とする機構に関しては、後に詳しく説明するが、本システムでは、各モジュール12は、交差方向に延びる軌道に沿って、ベース10から引き出し可能とされている。詳しくは、交差方向における両側に、つまり、前方にも後方にも引き出し可能とされている。言い換えれば、前方,後方の両方が、モジュール12の引出方向とされているのである。さらに言えば、各モジュール12は、ベース10から離脱可能なまでに引き出し可能とされている。ちなみに、
図2は、いちばん右側の1つのモジュール12だけが前方に引き出された状態を示している。また、
図7は、外装パネルが外された状態を、
図1とは異なる視点において示す斜視図であり、この
図7では、右から2番目のモジュール12だけが前方に引き出された状態で示されている。さらに、
図8は、1つのモジュール12が、ベース10から、詳しくは、1つのベースユニット16から、後方に、そのベースユニット16から離脱するように引き出された状態を示している。なお、
図8では、外装パネルを外したモジュール12が示されているが、後に説明するように、モジュール12は外装パネルをも含んでモジュール化されているため、外装パネルが取り付いた状態のモジュール12をベース10から離脱するように引き出すことも可能である。また、外装パネルの前方側の部分は、ベース10に支持されており、その前方の部分の上部を手前に倒すことで、モジュール12の前方への引き出しが可能とされている。
【0154】
後に詳しく説明するが、前方へのモジュール12の引き出しは、主に、ツールの交換,ワーク変更に伴う段取り換え等の際に行われ、モジュール12の交換の際には、主に、モジュール12は、後方側へ引き出される。このように、各モジュール12が引き出し可能とされているために、当該システムでは、モジュール12が近接して配置されているにも拘わらず、各モジュール12のメンテナンス,段取り換え,交換等の作業を簡単に行うことができるのである。
【0155】
ここで、
図3,
図4に示すシステムと、
図7に示すシステムとでは、細部において差異が存在するが、その差異は小さく、また、ともに、同一の機能を有するものであることから、いずれのシステムも、実施例のシステムとして扱うことができる。そして、便宜上、以下の説明は、特に断りのない限り、
図7に示すシステムについて行うこととする。
【0156】
[B]作業機モジュールの構成
作業機モジュール12は、先に説明したように、旋盤モジュールであり、
図9に示すように、複数の車輪20を回転可能に保持する可動台としてのベッド22と、そのベッド22上に固定された作業機本体としての旋盤本体24と、旋盤本体24を制御する制御装置としての制御盤26とを備えている。旋盤本体24は、ベッド22に立設された躯体としての支柱30と、支柱30にそれの下部において支持されて自身の回転によってワークW4を回転させるためのスピンドル32(いわゆる主軸である)と、それぞれがツールである複数のバイト34を保持するツール保持ヘッド(以下、端に「ヘッド」と言う場合がある)36と、支柱30にそれの上部において支持されてヘッド36を上下および前後に移動させるヘッド移動装置38とを含んで構成されている。
【0157】
図10を参照しつつ旋盤本体24について詳しく説明すれば、ベッド22に立設されて固定された支柱30は、下部に、スピンドル保持部40を有し、スピンドル32は、後に詳しく説明するが、そのスピンドル保持部40によって、スピンドルケーシング42を介して保持されている。スピンドル32の前端には、3本の爪44を有するチャック46が取り付けられている。チャック46は、機械加工に際してワークを把持するためのものであり、ワーク保持具の一種と考えることができる。詳しい構造の説明は省略するが、爪44は、自動で開閉するようにされている。スピンドル32の後端部には、プーリ48が外嵌されている。一方、支柱30の後側には、スピンドル回転用モータ50が、ベース板52を介して支持されており、このモータ50の軸にもプーリ54が嵌められている。2つのプーリ48,54には、Vベルト56が巻き掛けられており、モータ50の回転によって、スピンドル32は回転駆動される。
【0158】
支柱30の上部には、スライダ60が、1対のガイド62に沿って上下に摺動可能に支持されている。スライダ60は、概して四角い筒状のものとされており、自身を挿通させるようにして、ビーム64を、それが前後に摺動可能な状態で保持している。スライダ60は、スライダ昇降用モータ66,ねじロッド68を主要構成要素とするボールねじ機構等によって構成されるスライダ昇降機構70によって昇降させられる。一方、支柱30の後側には、支持枠72が固定されており、その支持枠72に支持されたビーム前後移動用モータ74,ねじロッド76を主要構成要素とするボールねじ機構等によって構成されるビーム前後移動機構78によって、ビーム64は、前後に移動させられる。上述のヘッド36は、ビーム64の前端に固定されており、ヘッド36は、スライダ60の昇降によって上下に移動し、ビーム64の前後移動によって前後に移動する。つまり、先に説明したヘッド移動装置38は、それらスライダ60,ビーム64,スライダ昇降機構70,ビーム前後移動機構78等によって、構成されているのである。
【0159】
ヘッド36は、基体82と、基体82に保持されたタレット84と、基体82に保持されてタレット84を間欠的に回転させるためのタレット間欠回転機構86と、そのタレット間欠回転機構86によるタレット84の回転の駆動源となるタレット回転用モータ88とを含んで構成されている。タレット84は、比較的短い概して八角柱形状をなしており、
図10に示すように、外周面若しくは下面に、8つまでのバイト34を、バイト保持具90を介して取付可能とされている。例えば、間欠回転によって最も後方側に位置させられたバイト84によって、切削加工が行われる。ちなみに、詳しい説明は省略するが、タレット間欠回転機構86は、タレット84を下降させた状態で間欠回転させ、任意の間欠回転位置において上昇させることで、その位置でタレット84を固定するような構造のものとされている。なお、上記ヘッド36に代えて、櫛歯型のバイトホルダ、つまり、複数のバイトを保持するホルダであって、それら複数のバイトうちの任意の1つのものによる切削が可能なように移動するバイトホルダを有するヘッドを採用することも可能である。
【0160】
なお、上記ツール保持ヘッド36に代えて、例えば、
図11に示すようなツール保持ヘッド100を採用することも可能である。ヘッド100は、それぞれがツールとしてのドリル,ミル等の回転工具を保持し、それらを回転させることのできるヘッドである。
図11は、回転工具として、ストレート型のドリル102,アンギュラ型のドリル104,エンドミル106が取り付けられた状態を示している。ヘッド100は、ヘッド36と同様に、基体108と,基体108に保持されたタレット110と、基体108に保持されてタレットを間欠的に回転させるためのタレット間欠回転機構として機能する回転機構112と、その回転機構112によるタレット110の回転の駆動源となる回転用モータ114とを含んで構成されている。例えば、間欠回転によって最も後方側に位置させられた回転工具によって、穴あけ加工やフライス加工が行われる。
【0161】
詳しい構造についての説明は省略するが、回転用モータ114は、回転工具自体を回転させるためのモータとしても機能し、回転機構112は、そのモータ114の回転によって回転工具を回転させる回転伝達機構としても機能する。つまり、本ヘッド100は、1つのモータ114によって、タレット110の回転と回転工具の回転とが選択的に行われるような構造とされているのであり、回転機構112および回転用モータ114は、ツールをそれの軸線まわりに回転させるツール回転装置を構成しているのである。なお、ヘッド100を採用する場合、ワークに対して回転工具による加工がおこなわれている最中には、ヘリカル加工等の特殊な加工を除き、原則として、スピンドル32は回転することはない。その場合、スピンドル32は、いわゆるインデックステーブル(ワークの割り出しのための装置)を構成するものとなる。つまり、ヘッド100を採用するモジュール12は、スピンドル32の回転によってワークを任意の回転位置に位置させた状態でそのワークを固定し、それぞれがツールとしてのドリルとミルとの少なくとも一方によってそのワークに対して、穴あけ加工とフライス加工との少なくとも一方を行うボール盤/フライス盤モジュールとなる。
【0162】
上記のような構造から、モジュール12は、スピンドル32が上記交差方向である前後方向に延びる姿勢で配設されているため、いわゆるスピンドル水平配置型モジュールと呼ぶことのできるものであり、水平スピンドル型モジュールであることから、モジュール幅を小さくすることが可能である。また、ヘッド移動装置38が、スピンドル32の上方に、より詳しく言えば、スピンドル32の軸線であるスピンドル軸線の真上に、スピンドル軸線と平行にビーム64が延びる姿勢で配設されており、そのことも、モジュール幅を小さくすることに貢献している。また、ヘッド36,100は、複数のツールを、それらのうちの1つを選択的に利用可能に保持し、ワークに対して、複数のツールのうちの選択された1つのものによる加工を行うように構成されている。そのため、本システムは、比較的少ないモジュールによって、比較的複雑な機械加工を行うことが可能となる。
【0163】
旋盤本体24の制御装置である制御盤26は、図では省略しているが、後方側が扉となっており、モジュール12がベース10に配列して載置された状態においても、当該システムの後方側より、いずれのモジュール12の制御盤26も、それの内部の点検,調整,メンテナンス等を容易に行えるようになっている。なお、本システムでは、モジュール12は、その制御盤26をも含んでモジュール化されているため、そのモジュール12は、相当に高度にモジュール化されたものであると言える。ちなみに、本システムでは、モジュール12は、当該モジュール12の外装パネルをも含んでモジュール化されている。
【0164】
ここで、スピンドル32の支柱30への取付に関して詳しく説明すれば、
図12(a)に示すように、スピンドル32は、スピンドルケーシング42を介して、支柱30のスピンドル保持部40に設けられた保持穴120に挿入されるようにして取り付けられる。スピンドルケーシング42は、前端にフランジ122を有する概して円筒形状のものとされており、カラーと呼ぶこともできるものである。スピンドルケーシング42は、フランジ122に穿設された取付穴124を利用して、スピンドル保持部40にボルトにて締結されている。スピンドル32は、3つのベアリング126,128,130によって支持されることで、スピンドルケーシング42に対して、つまり、支柱30に対して回転可能とされている。
【0165】
ワークの大きさ,切削負荷の大きさ等により、直径dのスピンドル32ではなく、それとは径の異なるスピンドルを取り付けたい場合もある。例えば、直径D(>d)のスピンドル132を取り付ける場合には、
図12(b)に示すように、スピンドルケーシング42とは異なるスピンドルケーシング134、詳しく言えば、外形の寸法,形状が同じで内径の異なるスピンドルケーシング134を採用することにより、容易に、そのスピンドル132を取り付けることが可能である。なお、フランジ122に設けられている取付穴124の径,数,配設ピッチ等は、スピンドルケーシング42の径,数,配設ピッチ等と同じである。見方を代えれば、スピンドルケーシングの外形の寸法および形状の統一化、つまり、スピンドルケーシングの規格化を図ることにより、当該システムでは、スピンドルの変更や、互いに径において異なるスピンドルを有する2種の工作機械モジュールを混在させることが、容易に行えるのである。
【0166】
[C]作業機モジュールのベースからの引出
図13に示すように、各ベースユニット16には、それに載置されるモジュール12の数に応じた数のレール対150が、具体的には、2つのレール対150が、配列方向(左右方向)に並んで設けられている。1つのレール対150は、間隔をおいて交差方向(前後方向)に延びるようにして敷設された1対のレール152からなる。レール152は、モジュール12の引き出しの際のモジュール12が移動する軌道を画定するもの、つまり、軌道画定部材として機能する。一方、各モジュール12には、前後のそれぞれに1対の車輪20が、つまり、2対の車輪20が、回転可能にベッド22に保持されている。1対の車輪20の間隔は、レール対150を構成する1対のレール152の間隔と等しく、1対の車輪20の一方が1対のレール152を、他方が他方を転動する。ベース10全体では、4つのモジュール12に対応して4つのレール対150が、設けられている。そのような構造により、モジュール12は、ベース10から、詳しくは、自身が載置されているベースユニット16から、容易に、交差方向に引き出すことが可能とされているのである。なお、1対のレール152と1対の車輪20との係合を示す
図14(a)を参照して説明すれば、一対のレール対150を構成する2つのレール152の一方(右側のもの)は、山形の断面形状を有するのに対し、他方(左側のもの)は、互いに平行な両側面を有する形状とされている。1対の車輪20のうちの一方(左側のもの)が、上記両側面を殆ど隙間なく挟む形状とされているため、ベース10に載置された際のモジュール12の配列方向における位置が正確に規定される。
【0167】
本システムでは、モジュール12の前方への引出しは、人力に拠らずに、電動モータの力を利用して行うことが可能となっている。
図15に示すように、各モジュール12のベッド22には、それの前方右側に、それから前方に延び出すような状態で、ラックバー(単に、「ラック」と呼ぶこともできる)160が付設されている(
図8参照)。このラックバー160は、下面にラック歯が形成されている。一方、ベース10の上面の前端部には、駆動源としてのモジュール引出用モータ162が配設されており(
図8,
図13参照)、そのモータ162のモータ軸には、ピニオン164が固定されている。このピニオン164は、モジュール12が通常時位置に位置している状態では、ラックバー160の前端部と噛合している。モータ162を正転させることにより、モジュール12は前方に駆動され、逆転させることにより、モジュール12は後方に駆動される。つまり、それらラックバー160,モータ162,ピニオン164を含んで、モジュール12を交差方向に駆動するモジュール駆動機構166が構成されているのである。
【0168】
モジュール駆動機構166を利用したモジュール12の通常時位置からの引出しおよび通常時位置への引戻しは、そのモジュール12の操作盤14へのオペレータの操作入力によって行うことができる。ちなみに、その操作入力によるモジュール12の引出しでは、モジュール12が、通常時位置から設定距離前方に移動した位置、つまり、後述するところの設定された引出位置まで移動するようになっている。なお、本システムでは、モジュール駆動機構166を構成するラックバー160は、可動台としてのベッド22に配置されたモジュール側構成要素であり、モータ162およびピニオン164は、ベース12に配置されたベース側構成要素である。さらに言えば、可動台であるベッド22は、モジュール側構成要素としてのラックバー160をも含んでモジュール化されたのもであるといえる。なお、ラックバーをベース側構成要素としてベース10に配置し、モータおよびピニオンをモジュール側構成要素としてモジュール12に配置することによってモジュール駆動機構を構成することも可能である。また、本システムでは、4つのモジュール12に対応して4つのモジュール駆動機構が設けられているが、4つのモジュール12の一部である1以上のモジュール12だけに対応して、1以上のモジュール駆動機構を設けてもよい。
【0169】
モジュール12の後方への引出しは、
図8に示すように、移載台車170を利用して行われる。移載台車170は、
図16に示すように、ベース172と、ベース172に支持されるとともに1対のレール174が固定されたフレーム176と、当該移載台車170を移動させる際にオペレータが掴むグリップ178と、当該移載台車170の移動を可能にするための3つのキャスタ180とを含んで構成されている。移載台車170は、
図8に示すように、ベース10の後方の傍らに、ベース10に設けられた4つのレール対150の1つによって画定される上述の軌道を延長するようにして定置される。1対のレール174は、それぞれ、ベース10に設けられた1対のレール152と略同じ断面形状を有するとともに、左右方向の間隔が1対のレール152の間隔と等しくされており、具体的には、
図8に示すように、1対のレール174がそれぞれ1対のレール152を延長するように、移載台車170がベース10に対してセットされる。ちなみにフレーム176は、ベース172に対して左右に移動可能とされており、調整ハンドル182を回すことで、図示を省略するボールねじ機構によって、フレーム176が左右に移動する。つまり、それらハンドル182,ボールねじ機構,フレーム176をベース172に対して移動可能とする構造等によって、1対のレール174の左右方向の位置を調整するためのレール位置調整機構184が構成されているのであり、その調整機構184を利用して、移載台車170が定置させられた状態において、1対のレール152に対する1対のレール174の左右方向における位置合わせを行うことが可能とされている。
【0170】
移載台車170は、モジュール12の一部だけが移載台車170に載置される程度にモジュール12を引き出す際に利用されてもよく、また、モジュール12がベース10から離脱するように引き出してモジュール12の全体が移載台車170に載置される際に利用されてもよい。後者の際には、移載台車170を移動させることによって、載置されたモジュール12を容易に運ぶことができる。また、逆に、モジュール12が載置された移載台車170をベース10の傍らに定置させ、そのモジュール12をベース10上に引き入れることで、そのモジュール12をベース10に配置することも可能である。つまり、移載台車170は、モジュール12の交換等において、好適に利用できるのである。なお、本システムでは、移載台車170は、モジュール12の後方への引出しに利用されるものであるが、本システムは、前方への引出しにも適合した移載台車を採用することも可能である。
【0171】
移載台車170には、モジュール12の引出し,引入れを容易にするために、モジュール移動装置190が設けられている。
図16を参照しつつ説明すれば、フレーム176の左右方向における中央には、雄ねじが形成されたねじロッド192が、前後に延びるようにして回転可能に支持されており、そのねじロッド192と螺合するナットを保持するとともにねじロッド192の回転によって、前後に移動する可動部材194が設けられている。可動部材194は、モジュール12のベッド22の後端面に離脱可能に係合する可動係合体として機能するものであり、この可動部材194がベッド22と係合している状態において、ハンドル196によってねじロッド192を回転させることで、モジュール12は前後に移動する。つまり、ねじロッド192,可動部材194,ハンドル196等を含んでモジュール移動装置190が構成されているのであり、そのモジュール移動装置190を利用して、オペレータは、人力によって、容易に、モジュール12の引出し,引戻しを行うことができるのである。
【0172】
なお、移載台車170のフレーム176の上面には、1対のレール174の左右方向における中間に、前後方向に延びるようにして、掛止部材198が付設されている。この掛止部材198は、断面が概してT字形状をなしている。モジュール12のベッド22の下部には、
図14(a)に示すように、断面が概して逆三角形をなすスロット200(後に詳しく説明する)が、前後方向に貫通するようにして形成されており、モジュール12が後方に引き出された際には、掛止部材198がスロット200に挿入されることになる。この掛止部材198の挿入により、モジュール12が移載台車170に載置された状態におけるそのモジュール12の安定性が担保される。
【0173】
[D]作業機モジュールのベースへの固定
本システムでは、モジュール12をベースに固定するためのモジュール固定機構を備えている。モジュール固定機構は、各モジュール12に対して設けられている。また、モジュール固定機構は、モジュール12を、交差方向において設定された複数の位置(以下、「固定位置」と言う場合がある)において、モジュール12をベース10に固定する機能を有している。以下に、このモジュール固定機構の構造および機能について説明する。
【0174】
図13に示すように、ベース10には、載置されるモジュール12の数に応じた数の係止ロッド作動装置210が設けられている。詳しく言えば、2つのモジュール12が載置されるベースユニット16には、4つの係止ロッド作動装置210が設けられている。つまり、1つのモジュール12に対して、2つの係止ロッド作動装置210が、前後方向に並ぶようにして配設されている。
【0175】
係止ロッド作動装置210は、
図17に示すように、大まかには、アクチュエータ212と、上端部に円錐台を逆さまにした形状のロッド頭部214を有する係止ロッド216と、その係止ロッド216を昇降させるためのロッド昇降装置218とによって構成されている。アクチュエータ212は、シリンダハウジング220と、そのハウジング220の内部に前後に摺動可能なピストン(図示を省略)と、そのピストンに連結されてハウジング220から延び出すピストンロッド222とを含んで構成されており、圧搾エアの力でピストンロッド222を進退させる構造のものとされている。ロッド昇降装置218は、ハウジング224に前後に移動可能に保持されて中間部に楔面226を有する楔ロッド228と、係止ロッド216にそれの下端部においてカラー230およびボルト232によって締結されて自身が上下することで係止ロッド216を上下させる昇降片234と、昇降片234を下方から弾性的に支持するスプリング236とを含んで構成されている。楔ロッド228には、楔面226を上下に貫通するとともに前後に延びる長穴238が形成されており、係止ロッド216は、その長穴238を貫通する状態で、ロッド頭部214を含む上部がハウジング220から延び出している。アクチュエータ212のピストンロッド222の前端と楔ロッド228の後端とが連結されており、ピストンロッド212の進退に伴って、楔ロッド228は、前後に移動するようになっている。昇降片234は、楔ロッド228の楔面226に接する面を有する形状のものとされており、楔ロッド228の前後方向の移動に伴って昇降し、昇降片234に締結されている係止ロッド216も昇降する。つまり、アクチュエータ212の作動によって、係止ロッド216が昇降するのである。具体的に言えば、
図17に示す状態は、ピストンロッド222が前進した状態であり、スプリング236の力によって、係止ロッド216は上昇した状態にある。ピストンロッド222が後退することにより、図において二点鎖線で示すように、スプリング236の力に抗して係止ロッド216は下降する。なお、2つの係止ロッド作動装置210は同時に作動し、2つの係止ロッド216が同時に昇降するようになっている。
【0176】
図14(c)をも参照しつつ説明すれば、モジュール12のベッド22には、先に説明したように、前後方向に貫通するスロット200が形成されており、モジュール12がベース10に載置された状態において、係止ロッド216のロッド頭部214は、スロット200の内部に位置する。係止ロッド216が上昇している場合には、係止ロッド216はスロット200と係合せず、モジュール12は、ベース10上を、上述の軌道に沿って前後に移動可能な状態となる。スロット200には、所定の箇所に、ロッド頭部214のテーパ面240に合致した形状のテーパ面242を有する座ぐりが施された座ぐり部244を有しており、その箇所に、ロッド頭部214が位置するときには、係止ロッド216の下降によって、ロッド頭部214のテーパ面240が、座ぐり部244のテーパ面242にぴったりと接する状態となる。その状態においては、係止ロッド216は、座ぐり部244、すなわち、モジュール12を係止することになり、モジュール12は、ベース12上に固定される。つまり、モジュール12は、上記軌道に沿った移動が禁止されるのである。ちなみに、係止部作動装置である係止ロッド作動装置210は、アクチュエータ212の力によって、係止部である係止ロッド216を被係止部である座ぐり部244に向かって付勢するものとされており、モジュール固定機構は、モジュール12をベース10に押し付ける状態で固定する。
【0177】
先に説明したように、1つのモジュール12に対して、2つの係止ロッド作動装置210がベース10に設けられており、それら2つの係止ロッド作動装置210の各々の係止ロッド216に対応して、座ぐり部244は、
図15に示すように、スロット200の前後方向における中間部に、2つ設けられている。2つの座ぐり部244の前後方向における配設間隔Lは、2つの係止ロッド216の前後方向における配設間隔Lと等しくされている。また、模式図である
図18を参照しつつさらに説明すれば、その図では、モジュール12に設けられた2つの座ぐり部244の位置およびベース10に設けられた2つの係止ロッド216の位置が、それぞれ“☆”で示されており、モジュール12が通常時位置に位置するときには、2つの座ぐり部244が、2つの係止ロッド216によって、それぞれ、係止される。一方、二点鎖線で示すように、モジュール12が前方に所定距離Lだけ引き出された場合には、つまり、2つの座ぐり部244の上記配設間隔Lと等しい距離だけ前方に引き出された場合には、後方側の座ぐり部244が前方側の係止ロッド216によって係止可能となり、モジュール12が後方に上記所定距離Lだけ引き出された場合には、前方側の座ぐり部244が後方側の係止ロッド216によって係止可能となる。したがって、本システムでは、通常時位置のみならず、前方,後方それぞれの引出しについて設定された2つの引出位置において、モジュール12がベース10に対して固定可能とされている。つまり、3つの固定位置においてモジュール12が固定可能とされているのである。
【0178】
上記説明から解るように、上記座ぐり部244が、モジュール12に配設された被係止部として、上記係止ロッド216が、ベース10に配設された係止部として、それぞれ機能し、また、係止ロッド作動装置210が、ベース10に配設された係止部作動装置、つまり、座ぐり部244が係止ロッド216によって係止される状態と座ぐり部244が係止ロッド216によっては係止されない状態とを切り換えるべく係止ロッドを動作させる装置として機能する。本システムでは、それぞれが被係止部として機能する2つの座ぐり部244,それぞれが係止部として機能する2つの係止ロッド216,それぞれが係止部作動装置として機能する2つの係止ロッド作動装置210を含んで、上述のモジュール固定機構が構成されているのである。言い換えれば、本システムにおけるモジュール固定機構は、モジュール側構成要素としての2つの座ぐり部244と、ベース側構成要素としての2つの係止ロッド216および2つの係止ロッド作動装置210とを含んで構成されており、可動台としてのベッド22は、モジュール側構成要素である2つの座ぐり部244をも含んでモジュール化されたものとなっている。さらに言えば、モジュール固定機構は、上述したように、モジュール12をベース10に押し付ける状態で固定することから、押付型固定機構とされているのである。なお、本システムでは、被係止部がモジュール側構成要素としてモジュール12に、係止部および係止部作動装置がベース側構成要素としてベース10に、それぞれ配設されたモジュール固定機構が採用されているが、被係止部がベース側構成要素としてベース10に、係止部および係止部作動装置がモジュール側構成要素としてモジュール12に、それぞれ配設されたモジュール固定機構を採用することも可能である。また、本システムでは、4つのモジュール12に対応して4つのモジュール固定機構が設けられているが、4つのモジュール12の一部である1以上のモジュール12だけに対応して、1以上のモジュール固定機構を設けてもよい。
【0179】
[E]クーラント,切削屑への対処
モジュール12は、旋盤モジュールであるため、ワークに切削加工を施す際、ワークにクーラント(「切削液」と呼ぶこともできる)をかけつつ切削加工が行われる。また、切削加工において、切削屑(「切粉」と呼ぶこともできる)が発生する。したがって、それれらクーラント,切削屑への対処が必要となる。モジュール12が、上述のボール盤/フライス盤モジュール等の機械加工モジュールである場合も、クーラント,切削屑には、同様の対処が必要となる。以下に、それらクーラント,切削屑に配慮した特別な構成について説明する。
【0180】
ベース10の内部には、
図19に示すように、クーラントを収容するクーラントタンク250が内蔵されている。
図20は、クーラントタンク250が内蔵されたベース10およびそのベース10に載置された1つのモジュール12の断面図である。その断面図における切断面は、モジュール12が有するスピンドル32の前方に位置して、そのスピンドル32の軸線に直角な、つまり、前後方向に直角な平面であり、切削加工が行われる上述の作業空間(以下、「作業空間WS」と言う場合がある)を前後に分断する平面である。図には、1つのベースユニット16だけが記載されており、1つのベースユニットに1つのクーラントタンク250が内蔵され、ベース10全体では、2つのクーラントタンク250が内蔵される。
【0181】
一方、モジュール12には、外装パネルの前方側の部分と、ベッド22の前方に配設されたロアパネル252とによって、上述の作業空間WSを囲う作業空間ハウジング254が形成されており、モジュール12は、その作業空間ハウジング254をも含んでモジュール化されている。ちなみに、ロアパネル252は、ベッド22の前端に付設されたフレーム256によって支持されている(
図9参照)。ちなみに、
図20では、ロアパネル252の右側に、後述するワークローダ260のベース梁262およびガイド264が簡略的に示されている。スピンドル32によって回転させられるワークに対して、図示を省略するクーラントノズルからクーラントが放出され、クーラントが放出された状態において、ワークの切削加工が行われる。そして、切削加工によって、切削屑が発生する。作業空間ハウジング254は、放出されたクーラントおよび発生した切削屑の外部への飛び出し、特に、左右側への飛び出しを、効果的に防止するものとなっている。放出されたクーラントおよび切削屑は、作業空間WSにおいて下方に落下し、ロアパネル256に設けられた開口270を通って、ベース10の内部に配設されたクーラントタンク250に収容される。なお、クーラントタンク250へのクーラントおよび切削屑の導出を効率的に行わせるため、ロアパネル256は、下方に向かうにつれて狭くなるような形状とされている。つまり、ロアパネル256には、テーパ面272が設けられている。
【0182】
ベース10の上面には、クーラントおよび切削屑を、クーラントタンク250に受け入れるための受入口として機能する筒状の受入筒274が設けられており(
図13参照)。詳しく言えば、ベース10の上面には、開口276が設けられており、受入筒274は、下端がその開口276に挿入されるようにして配設されている。また、受入筒274は、モジュール12が通常時位置に位置しているときには、上端がロアパネル256の開口270より上方に位置する状態となっている。そのような受入筒274によって、クーラントおよび切削屑は、効率的に、つまり、ベース10の上面にこぼれることなく、ベース10の内部に導入される。さらに、ベース10の内部には、受入筒274を通過したクーラントおよび切削屑がクーラントタンク250の左右の外側にこぼれ落ちることを防止するために、1対のガイド板278が設けられている。
【0183】
クーラントタンク250には、落下したクーラントおよび切削屑を受け取る受け板280が設けられている。受け板280は、上面が左右の両側から中央に向かって下降する1対の傾斜面282を有し、かつ、中央部に窪み284を有する形状とされているため、落下したクーラントおよび切削屑は、それら傾斜面282に沿って中央の窪み284に集まる。図では省略しているが、受け板280には、窪み284が形成されている部分において、小さな孔が多数穿設されており、クーラントだけが受け板280を通過する。窪み284には、前後方向に延びる姿勢で配設されたスクリュー286が配設されており、このスクリュー286の回転により、受け板280に残る切削屑は、後方に移動する。
図19を参照しつつ説明すれば、クーラントタンク250は、ベース10から、後方にはみ出しており、そのはみ出した後端部に、排出ダクト290が配設されている。スクリュー286後方に移動した切削屑は、その排出ダクト290を通って、当該システムの後方に排出される。つまり、それらスクリュー286,排出ダクト290等によって、切削屑排出装置として機能するスクリューコンベア292(チップコンベアの一種である)が構成されており、そのスクリューコンベア292は、ベース10の一側面、詳しくは、後方側面から、切削屑を排出するものとされている。なお、例えば、排出ダクト290の後端の下方に車輪の付いた切削屑回収ボックス292を配置することで、排出された切削屑を容易に運搬することが可能である。クーラントタンク250に収容されたクーラントは、図示を省略するポンプによって汲み上げられ、再度、上述のクーラントノズルから放出される。つまり、当該システムにおいては、クーラントは、循環するようにされているのである。
【0184】
本システムでは、1つのベースユニット16に対して1つのクーラントタンク250が、つまり、2つのモジュール12に対して1つのクーラントタンク250が配設されているが、モジュール12ごとに1つのクーラントタンクを設けるように構成してもよく、また、ベース10全体で、1つのクーラントタンクを設けるように構成してもよい。同様に、切削屑排出装置も、1つのベースユニット16に対して1つ設けるのではなく、モジュール12ごとに設けてもよい。なお、切削屑排出装置として、上述のスクリューコンベア292に代えて、金属製のネットが周回するような構造のチップコンベア等、種々の形式の排出装置を採用することが可能である。なお、本システムでは、切削屑排出装置であるスクリューコンベア292は、切削屑を、交差方向において互いに反対となる両方向の一方、詳しく言えば、作業空間WSとは反対側の方向である後方に、排出するようにされている。したがって、例えば上記切削屑回収ボックスを、ベース10の配列方向の傍らに配置する必要がなく、そのボックスを含めた全システムのシステム長を短くすることが可能である。
【0185】
先に説明したように、モジュール12はベース10に対して引き出し可能とされている。そのため、
図20から解るように、モジュール12が引き出される際に、図の左側に示す受入筒274の状態では、モジュール12のロアパネル256がその受入筒274に干渉してしまう。そこで、本システムでは、その干渉を避けるため、モジュール12が引き出される際に、左側に示す受入筒274を、図の右側に示す受入筒274の状態とするための機構が設けられている。つまり、受入口として機能する受入筒274を退避させる受入口退避機構としての受入筒昇降機構が、モジュール12ごとに設けられている。この機構によって、受入筒274は、モジュール12の通常時位置からの引出しの際に、下方に退避させられる。
【0186】
図21を参照しつつ詳しく説明すれば、受入筒274は、それぞれが駆動アーム300と従動アーム302とそれらを連結するリンクバー304とによって構成された1対の平行リンク機構306によって、左右から挟まれるようにして、支持されている。駆動アーム300,従動アーム302のそれぞれの基端部は、ベース10の上面に付設されたブラケット308に回動可能に支持されており、それぞれの先端部は、ローラ310を介して、受入筒274の側面に付設されたレール部材312を支持している。駆動アーム300は、概してL字形状をしており、もう一方の先端部は、長穴314を有する連結ブロック316に、その長穴314に沿って移動可能に軸支されている。先に説明したように、ベース10の上面には、モジュール固定機構を構成する2つの係止ロッド作動装置210が設けられており(
図13参照)、連結ブロック316は、それら2つの係止ロッド作動装置210のうちの前方側に設けられたものが有する楔ロッド228の先端に固定されている。
【0187】
図21に示す状態は、モジュール12の固定が解除された状態であり、モジュール12を固定すべく係止ロッド作動装置210を動作させることで、図において二点鎖線で示すように、受入筒274は上昇する。
図20における左側の受入筒274は、そのようにしてその受入筒274が上昇した状態を示している。逆に、受入筒274が上昇している状態において、モジュール12の固定を解除すべく係止ロッド作動装置21を動作させることで、
図20における右側の受入筒274のように、受入筒274が、モジュール12の引出しに際してモジュール12のロアパネル256が干渉しない位置まで下降させられることになる。つまり、本システムでは、上記平行リンク機構306,ブロック316,係止ロッド作動装置210等を含んで、モジュール固定機構によるモジュール12の固定の解除に連動して受入口としての受入筒274を退避させる受入筒昇降機構318が構成されているのである。そのような機構により、本システムでは、モジュール12の固定を解除するための操作によって、自動的に、受入筒274が退避させられるのである。ちなみに、詳しい説明は省略するが、上述の前方側の引出位置おいてモジュール12が固定される場合においては、受入筒274が上昇したとしても、その受入筒274がモジュール12のベッド22には干渉しないようにされている。なお、受入口退避機構としての受入筒昇降機構320と、モジュール固定機構とにおいて、駆動源であるアクチュエータ212が共用されているため、それらの機構は、構造的にシンプルなものとなっている。
【0188】
さらに、本システムでは、モジュール12が前方へ引き出された際に、モジュール12の作業空間に残存するクーラントが、モジュール12の上記開口270から滴下することに配慮して、
図22に示すように、その滴下するクーラントを受けるための展開型クーラント受け320を備えている。このクーラント受け320は、シート322を主要構成要素とするものである。シート322は、図示を省略する軸に捲回されており、その軸は、、ベース10の前端に立設された支持部材324によって、回転可能に支持されている。シート322の捲き終わり端は、開口270が設けられたロアパネル252を支持するフレーム256の前端に掛止されている。ちなみに、
図13に、捲回されたシート322がベースユニット16の左前の部分に配設された様子が、示されている。シート322は、図示を省略するばねの力によって、捲かれる状態となるように付勢されている。つまり、軸が、図における反時計まわりに付勢されているのである。モジュール12を前方へ引き出した場合、フレーム256の前方への移動に伴って、シート322はばねの力に抗して延ばされ、フレーム12の下方に、開口270をカバーするようにして展開する。展開したシート322は、後方に向うにつれて低い状態となっており、開口270から滴下したクーラントは、シート322の上面に沿ってベース10の上面までつたい落ちる。ベース10上につたい落ちたクーラントは、ベース10の上面に穿設された穴326から、クーラントタンク250に導入される。ちなみに、
図13には、捲回されたシート322が省略されているベースユニット16の右前の部分に、穴326が示されている。
【0189】
モジュール12を通常時位置に戻す場合は、上述したばねの力によって、モジュール12の後方への移動に伴って、延ばされたシート322は捲回される。なお、本クーラント受け320では、モジュール12を通常時位置から後方に移動させる場合には、シート322の捲き終わり端のフレーム256への掛止が解除されるようになっている。ちなみに、本クーラント受け320は、シート322を主要構成要素とした上記構造のものとされているが、展開型クーラント受けとして、プレート,パン等がモジュール12の引出しに合わせて前方に迫り出すような構造のものを採用することも可能である。
【0190】
[F]ワークのモジュール間の搬送およびモジュール内での作業位置への移送
本システムでは、
図7に示すように、ベース10の一側面、詳しくは、上述の作業空間が存在する側である前方側の一側面に、ワークを搬送するワーク搬送装置350を備えている。このワーク搬送装置350は、ワークを各モジュール12を渡って搬送するものであり、最も左側(上流側)のモジュール12へのワークの搬入,各モジュール12の間におけるワークの搬送,最も右側(下流側)のモジュール12からのワークの搬出を担っている。図では、左側のベースユニット16の前方側の側面に配置された当該ワーク搬送装置350の部分のみが示されているが、右側のベースユニット16の前方側の側面にも同様の部分(後述する)が存在している。つまり、本システムでは、ワーク搬送装置350は、2つのベースユニット16に対応して、2つの搬送装置ユニット352によって構成され、2つのベースユニット16の各々は、ワーク搬送装置350の一部分である1つの搬送装置ユニット352を組み込んでモジュール化(ユニット)されているのである。なお、以下、左側のベースユニット16,左側のベースユニット16のそれぞれに配設されている搬送装置ユニット352を、それぞれ、左側搬送装置ユニット352L,右側搬送装置ユニット352Rと呼び分ける場合があることとする。そして、さらに、ワーク搬送装置350には、後に説明するワーク反転装置354が配設されている。
【0191】
左側搬送装置ユニット352Lは、
図23に示すように、可動ベース356と、それぞれにワークが載置される3つのワーク台358と、可動ベース356に支持されてそれぞれが3つのワーク台358のうちの対応するものを昇降させる3つのワーク台昇降装置360とを含んで構成されている。なお、
図23では、前述のワーク反転装置354は省略されている。可動ベース356は、ベース10の前方側の側面に固定された1対のガイドレール362に沿って、上記配列方向(左右方向)に移動可能とされており、可動ベース356の後方側に設けられたアクチュエータ(図では可動ベース356に隠れている)によって、配列方向に移動させられる。アクチュエータは、圧縮エアの力によって作動するシリンダ型のものであり、そのアクチュエータ,上記ガイドレール362等を含んで、ワーク台358を配列方向に移動させるワーク台移動装置364が構成されているのである。
【0192】
3つのワーク台358および3つのワーク台昇降装置360は、モジュール12の上記配列ピッチと同じピッチで、等間隔に配列方向に並べられている。3つのワーク台358のうちの中央のものおよび右側のものは、それぞれ、最も右側のモジュール12,右から2番目のモジュール12に対応する「対応ワーク台」とされており、左側のものは、ベース10から左側に張り出した位置に設けられた付加的なワーク台である「付加ワーク台」とされている。なお、図示を省略するが、右側搬送装置ユニット352Rは、その付加ワーク台を有しておらず、そのことに合わせて可動ベース356の左右方向の寸法が短くされている。したがって、当該システム全体では、5つのワーク台358が設けられており、ワーク搬送装置350は、それら5つのワーク台358が上記配列ピッチと同じピッチで等間隔に配列方向に並ぶように構成されている。
【0193】
ワーク台昇降装置360は、昇降台366と、可動ベース356に固定されて昇降台364を昇降させる昇降アクチュエータ368と、昇降台366に上下に移動可能に保持されるとともに上端においてワーク台358に固定された1対のガイドロッド370と、昇降台366に配設されて昇降台366に対してワーク台358を上下に移動させるワーク台上下移動機構372とを含んで構成されている。ワーク台上下移動機構372は、ねじロッド374と、そのねじロッド372と螺合するナット(図示を省略)と、そのナットを回転させるモータ376とを含んで構成されており、いわゆるボールねじ機構を利用した移動機構とされている。
【0194】
昇降アクチュエータ368は、圧縮エアの力によって、昇降台366を昇降させるものであり、昇降台366が可動ベース356に対して上端位置と下端位置との2つの位置を選択的にとるように作動する。それに対して、ワーク台上下移動機構372は、モータを制御することによって、ワーク台358を、昇降台366に対しての上端位置と下端位置との間の任意の位置に位置させることが可能とされている。ちなみに、
図23では、左側のワーク台昇降装置360については、昇降台366が上記下端位置に位置するとともにワーク台358も上記下端位置に位置する状態が、中央のワーク台昇降装置360については、昇降台366が上記下端位置に位置するとともにワーク台358が上記上端位置に位置する状態が、右側のワーク台昇降装置360については、昇降台366が上記上端位置に位置するとともにワーク台358が上記下端位置に位置する状態が、それぞれ示されている。
【0195】
上述のような構成により、ワーク台昇降装置360は、昇降アクチュエータ368が第1昇降装置として、ワーク台上下移動機構372が第2昇降装置として、それぞれ機能し、
図24に示すように、ワーク台358を2段階で昇降させる2段式昇降装置、つまり、いわゆるテレスコピック型の昇降装置とされているのである。
図24におけるSt1が、昇降アクチュエータ368による昇降台264の昇降ストロークであり、St2が、ワーク台上下移動機構372によるワーク台358の昇降ストロークである。昇降台366とワーク台358とがともに上記下端位置に位置している場合のワーク台358の高さレベル(以下、「最下端位置」と言う場合がある)と、それらがともに上記上端位置に位置している状態のワーク台358の高さレベル(以下、「最上端位置」と言う場合がある)との差が、当該ワーク台昇降装置360によるワーク台358の総ストローク(St1+St2)であり、その総ストロークは、比較的大きなものとなる。先に説明したように、モジュール12は、ベース10から前方に引き出し可能とされているため、最下端位置において、ワーク台358の上面は、ベース10の上面よりも下方に位置しているが、総ストロークが大きくされていることで、最上端位置において、ワーク台358は、後に説明するワークローダ260とのワークW5の受け渡しに充分な高さまで、そのワークW5を上昇させることができるのである。
【0196】
左側搬送装置ユニット352Lでは、
図7に示すように、中央のワーク台昇降装置360に、ワーク反転装置354が付設されている。
図25に拡大して示すように、ワーク反転装置354は、1対の把持爪380とそれら1対の把持爪380を互いに接近離間させる爪動作アクチュエータ382とを含んで構成されるクランプ384を主要構成要素とするものであり、さらに、圧縮エアの力によってクランプ384を180°回転させるクランプ回転アクチュエータ386と、圧縮エアの力によってクランプ384を所定距離だけ昇降させるクランプ昇降アクチュエータ388とを備えている。クランプ昇降アクチュエータ388が、取付具390を介して、ワーク台昇降装置360の昇降台366に固定されており、ワーク反転装置354は、上記昇降アクチュエータ360によって、昇降台366とともに昇降する。なお、クランプ384が開いた状態においては、1対の把持爪380の間を、ワーク台358が通過可能とされている。また、1対の把持爪380は、反転させるワークの形状や寸法に応じて、適切なものに交換可能とされている。
【0197】
図26を参照しつつ、ワークの反転について詳しく説明すれば、ワークW6を反転させる場合、まず、ワークW6が載置されたワーク台358が昇降台366に対する上記下端位置にある状態(
図26(a))から、クランプ昇降アクチュエータ388によって、開いた状態のクランプ384を上記所定距離だけ上昇させる(
図26(b))。次いで、ワーク台上下移動機構372によって、ワーク台358を、適切な位置、例えば、ワークW6の高さ方向の中央部をクランプ384が把持可能な位置にまで、上昇させる(
図26(c))。次に、クランプ384にてワークW6を把持した後、ワーク台上下移動機構372によって、ワーク台358を、上記下端位置まで下降させ、クランプ回転アクチュエータ386によって、ワークW6を180°回転させる(
図26(d))。その後、ワーク台上下移動機構372によって、ワーク台358を、適切な位置、つまり、ワークW6の下端面にワーク台358の上面が接する位置まで上昇させて、クランプ384による把持を解除する(
図26(e))。そして、クランプ昇降アクチュエータ388によって、開いた状態のクランプ384を上記所定距離だけ下降させて、ワークW6の反転を完了させる(
図26(f))。なお、
図26(f)では、ワーク台358も下降させているが、ワークW6の反転の後にそのワークW6をモジュール12による切削加工に供する等の場合には、ワーク台358を上昇させてもよい。以上が、ワークの反転に関するワーク反転装置354およびワーク台昇降装置364の連携動作である。
【0198】
以上が、左側搬送装置ユニット352Lについての説明であり、その説明および
図27を参酌しつつ、図示を省略する右側搬送装置ユニット352Rについて説明すれば、右側搬送装置ユニット352Rは、大まかには、左側搬送装置ユニット352Lにおいて設けられていた上記付加ワーク台である左側のワーク台358と、そのワーク台358を昇降させるワーク台昇降装置364とが、除かれたものと考えることができる。つまり、対応ワーク台である2つのワーク台358と、それら2つのワーク台358をそれぞれ昇降させる2つのワーク台昇降装置364とを含んで構成されており、可動ベース356の左右方向の寸法が、1つのワーク台358および1つのワーク台昇降装置364が存在しない分、短くされている。したがって、当該システム全体では、5つのワーク台358が設けられており、5つのワーク台358が上記配列ピッチと同じピッチで等間隔に配列方向に並ぶように構成されている。なお、上述のワーク反転装置354は、右側搬送装置ユニット352Rにおいては、右側のワーク台昇降装置360にだけ付設されている。
【0199】
ワーク搬送装置350は、左側搬送装置ユニット352Lの可動ベース356と右側搬送装置ユニット352Rの可動ベース356とが、互いに同期して同じ距離だけ左右に移動するように構成されている。つまり、上述のワーク台移動装置360によって、5つのワーク台358が、一斉に、上記配列ピッチに相当する距離だけ移動させられる。詳しく言えば、それら2つの可動ベース356およびそれらに配設されている5つのワーク台358が、
図27(a)に示す位置と、
図27(b)に示す位置との間で往復移動するように、ワーク搬送装置350は構成されているのである。ちなみに、
図27(a)に示す状態では、4つの対応ワーク台358の各々が、対応するモジュール(以下、「対応モジュール」と言う場合がある)12に対するワークW7の受け渡しのために設定された位置(受渡位置)に位置している。言い換えれば、各ワーク台358が、ホームポジションに位置している。それに対し、
図27(b)に示す状態では、上流側(左側)の3つの対応ワーク台358の各々が、1つのワークW7に対して対応モジュール12の後に切削加工を行うモジュール(以下、「下流側モジュール」と言う場合がある)12に対する受渡位置に位置するとともに、最も上流側に存在する付加ワーク台358が、最も上流側のモジュール12に対する受渡位置に位置している。したがって、5つのワーク台358は、一斉に、上記配列ピッチに等しい距離だけ、左右方向に移動させられるのである。なお、以下の説明において、1つのワークW7に対して対応モジュール12の前に切削加工を行うモジュール12を、「上流側モジュール」と言う場合があることとする。
【0200】
ワーク搬送装置350によるワークの搬送は、
図27(a)に示す状態と、
図27(b)に示す状態とが繰り返し実現されることによって行われる。詳しく説明すれば、
図27(a)に示す状態では、最も上流側に存在する付加ワーク台358に、外部に設置された搬入機からワークW7が載置されるとともに、4つの対応ワーク台358の各々に、対応モジュール12から、それによって切削加工が行われたワークW7が載置される。次いで、
図27(b)の状態となるように、5つのワーク台358が移動させられ、その状態において、付加ワーク台358に載置されたワークW7が、最も上流側に位置するモジュール12に、上流側の3つの対応ワーク台358の各々に載置されているワークW7が、下流側モジュール12に、それぞれ渡されるとともに、最も下流側(右側)に位置する対応ワーク台358に載置されているワークW7が、外部に設置された搬出機に渡される。そして、その後に、いずれのワーク台358にもワークW7が載置されていない状態において、それら5つのワーク台358は、
図27(a)に示す位置に位置させられる。つまり、ホームポジションに戻るのある。このような動作を繰り返すことで、複数のワークが、当該システム内において、順次、複数のモジュール12を経由して、搬送されることになる。
【0201】
本システムでは、ワーク搬送装置350は、対応ワーク台358およびそれらを昇降させるワーク台昇降装置360以外に、付加ワーク台358およびそれを昇降させるワーク台昇降装置360が、上流側に設けられているが、付加ワーク台358およびそれを昇降させるワーク台昇降装置360は、下流側に設けられてもよい。その場合にも、同様の動作によってワークを搬送することが可能である。また、付加ワーク台358およびそれを昇降させるワーク台昇降装置360を設けなくてもよい。その場合には、ワーク搬送装置350を、ホームポジションに対して、上流側にもまた下流側にも、5つのワーク台が上記配列ピッチに相当する距離だけ移動するように構成することで、そのワーク搬送装置350によって、当該システムへのワークの搬入、当該システムからのワーク搬出、および、モジュール12間のワークの搬送を行なわせることが可能である。
【0202】
また、本システムでは、左側搬送装置ユニット352Lの中央のワーク台358、および、右側搬送ユニット352Rの左側のワーク台358のそれぞれに対して、ワーク反転装置354が設けられている(
図27の★印の箇所)。そのように設けられたワーク反転装置354は、それぞれ、最も左側のモジュール12による切削加工と、左から2番目のモジュール12による切削加工との間で、および、右から2番目のモジュール12による切削加工と、最も右側のモジュール12による切削加工との間で、ワークの反転を行うことが可能となっている。つまり、ワーク反転装置354は、ワークを反転させたい箇所に応じたワーク台358に対して設ければよいのである。なお、すべての対応ワーク台358の各々に対してワーク反転装置354を設けることで、ワークを反転させるべき個所をワークの種類の変更によって変更すべき場合においても、ワーク反転装置354を付け替えることなく、その変更に迅速に対応することが可能である。
【0203】
ワーク搬送装置350によって搬送されたワークは、
図9に示す上述のワークローダ260によって、ワーク台358から運ばれてモジュール12のスピンドル32に取り付けられたチャック46に装着される。また、モジュール12において加工が完了したワークは、そのワークローダ260によって、チャック46から運ばれてワーク台358に載置される。ワークローダ260は、
図28に示すように、ベット22から前方に延び出すようにしてそのベッド22に支持された上述のベース梁262と、そのベース梁262に支持された上述のガイド264と、そのガイド264に沿って前後方向に移動可能に設けられたスライド400と、そのスライド400を前後に移動させるスライド移動機構402と、スライド400に支持されてワークを保持するワーク保持装置404とを含んで構成されている。ガイド264には、レール406が敷設されており、スライド400は、そのレール406を摺動する。スライド移動機構402は、ベース梁262に支持されたモータ408と、ベース梁262に前後に延びる姿勢で回転可能に配設されたねじロッド410と、スライド400に保持されてねじロッド410と螺合するナット(図示を省略)とを含んで構成されている。そのナットおよびねじロッド410は、ボールねじ機構を構成するものとされている。モータ408の回転がプーリ412,414およびベルト416によって伝達されることで、ねじロッド410が回転し、その回転に伴って、スライド400が前後方向に移動する。ワーク保持装置404は、左右方向に延びる軸線回りに回転可能にスライド400に設けられたチャックテーブル418と、チャックテーブル418の互いに背向する2つの面にそれぞれ設けられてそれぞれがワークを保持する2つのチャック420とを有している。チャックテーブル418は、モータ422を有してスライド400に設けられたテーブル回転機構424によって、回転させられるともに、360°の範囲における任意の回転姿勢をとることが可能とされている。
【0204】
なお、
図29から解るように、ワーク保持装置404は、2つのチャック420の一方がチャック46と正対する状態において、それらの軸線が一致するように、かつ、上記受渡位置に位置するワーク台358の上方において2つのチャック420の一方がそのワーク台358と正対する状態において、それらの軸線が一致するように、配置されている。以下に、
図29を参酌しつつ、ワークのチャック46に対する着脱、および、ワークのモジュール12とワーク搬送装置350と間でのワークの受け渡しについて、一例を掲げて説明する。なお、後者の状態におけるワーク保持装置404の位置も、その装置404についての受渡位置と呼ぶ場合があることとする。
【0205】
加工が終了したワーク(以下、「加工完了ワーク」と言う場合がある)W8を、チャック46から離脱させる場合には、
図29(a)に示すように、ワーク保持装置404は、チャック46の近傍である着脱位置に移動させられ、自身が有する2つのチャック420の一方においてチャック46からワークW8を受け取る。その際、2つのチャック420の他方は、既に、これから加工が行なわれるワーク(以下、「加工未了ワーク」と言う場合がある)W8を保持しており、ワーク保持装置404は、加工完了ワークW8を受け取った後、チャック46から少し離れた位置に移動して、その位置において、チャックテーブル418を180°回転させる。そして、再び着脱位置に戻って、チャック46に、加工未了ワークW8を渡す。このようにして、加工完了ワークW8の離脱と加工未了ワークW8の装着とが、短い時間で連続して行われるため、モジュール12がワークを加工していない時間が可及的に短くされるのである。
【0206】
加工完了ワークW8を、受渡位置に位置するワーク台(対応ワーク台)358に載置する場合は、
図29(b)に示すように、ワーク保持装置404が当該ワーク保持装置404についての受渡位置に移動させられ、かつ、加工完了ワークW8が当該ワーク保持装置404の真下に位置するようにワークテーブル418が回転させられた状態とされる。その状態において、ワーク台358をワーク台昇降装置360によって設定位置まで上昇させて、加工完了ワークW8のワーク台358への載置が行われる。ワーク台358を下端位置まで下降させた後、当該システムが有する5つのワーク台358が、ワーク台移動装置364により、一斉に、上記配列ピッチに相当する距離だけ下流側に移動させられる。その結果、加工未了ワークW8が載置されたワーク台(付加ワーク台若しくは上流側モジュールの対応ワーク台)358が、受渡位置に位置する状態となる。その状態において、ワーク台358を設定位置まで上昇させることで、ワーク台358に載置されていた加工未了ワークW8が、ワーク保持装置404によって保持される。このようにして、モジュール12とワーク搬送装置350との間での加工完了ワークW8および加工未了ワークW8の受け渡しが連続して行われる。なお、この受け渡しの間、モジュール12は、チャック46に装着されているワークW8の加工を行っている。
【0207】
なお、上述のワークローダ260の動作に鑑みれば、ワークローダ260は、ワーク台358に載置されているワークを、切削加工が行われる位置、つまり、作業位置に移送するともに、ワークをその作業位置からワーク台358に移送するワーク移送装置として機能するものとなっている。
【0208】
[G]モジュールの配置とモジュールのバリエーション
請求可能発明に係るシステムでは、モジュールのベース上の配置に関して、「配置領域」という概念を採用している。配置領域Rとは、
図30に示すように、ベースB上に区画設定された仮想空間であり、モジュールMが配置される空間を規定するための単位空間と考えることができる。
図30から解るように、配置領域Rは、間隔を置かずに、互いが接するようにして配列方向に並んでいる。それぞれの配置領域Rの幅を、領域幅WRと呼べば、各配置領域Rの領域幅WRは、互いに等しくされている。
【0209】
図30は、4つのモジュール12がベース10上に配列された上記システムについて表現したものであり、ベース10上に4つの配置領域Rが設定され、それら配置領域Rの各々に、1つのモジュール12が配置されている。
図1,
図3,
図7等をも参酌すれば、モジュールの幅をモジュール幅WMとした場合において、上記システムでは、各モジュール12のモジュール幅WMも、配置領域Rの領域幅WRと略等しくされており(厳密には、モジュール幅WMは、領域幅WRよりも若干小さくされている)、先に説明したように、4つのモジュール12は、互いに近接して配置されている。各モジュール12は、隣接する配置領域Rにはみだしておらず、1つの配置領域Rのみを占有している。したがって、各モジュール12は、「単一領域占有モジュール」と考えることができる。なお、4つのモジュール12の「配列ピッチ」は、モジュール12の幅方向の中心の配列方向の間隔と考えることができ、上記システムのモジュール12の配列ピッチPは、配置領域Rの幅方向の中心の配列方向の間隔、つまり、領域幅WRと等しいものとなっている。
【0210】
図7,
図8,
図13等をも参酌しつつ上述のシステムについて説明すれば、ベース10には、4つのモジュール12に対応して、各モジュール12が有する1対の車輪20が転動する1対のレール152からなるレール対150が4つ設けられており、4つのレール対150は、4つの配置領域Rに、それぞれ配置されている。つまり、配置領域Rごとに、モジュール12の引出しの軌道を形成する軌道形成部材が配設されているのである。また、前述のモジュール駆動機構166を構成するベース側構成要素であるモジュール駆動用モータ162,ピニオン164等も、4つの配置領域Rに対応して、それら4つの配置領域Rの各々においてベース10に配置されている。同様に、前述のモジュール固定機構を構成するベース側構成要素である係止ロッド216,係止ロッド作動装置210等も、4つの配置領域Rに対応して、それら4つの配置領域Rの各々においてベース10に配置されている。なお、上記システムでは、ベース10は、複数の、詳しくは、2つのベースユニット16によって構成されており、いずれかの配置領域Rが分割されることなく、それぞれのベースユニット16に、複数の、詳しくは、2つの配置領域Rが設定されている。さらに、上記ワーク搬送装置350が有するワーク台358も、各配置領域Rに対応して設けられている。つまり、上述の対応ワーク台358は、配置領域Rごとに設けられているのである。
【0211】
配置領域Rごとにレール対150,モジュール駆動機構166のベース側構成要素,モジュール固定機構のベース側構成要素がベース10に配設されているのに対し、モジュール12には、先に説明したように、可動台としてのベッド22において、2対の車輪20,モジュール駆動機構166のモジュール側構成要素,モジュール固定機構のモジュール側構成要素が、配設されている(
図15参照)。レール対150,モジュール駆動機構166のベース側構成要素,モジュール固定機構のベース側構成要素は、どの配置領域Rのものも、同じ構成とされており、そのこと対応して、4つのモジュール12のベッド22は、寸法,形状,構造において、互いに同じものとされている。つまり、2対の車輪20,モジュール駆動機構166のモジュール側構成要素,モジュール固定機構が配設されたベッド22は、仕様,構成において共通化されているのであり、言い換えれば、ベッド22は、共通の構成となるようにしてモジュール化されているのである。この共通化のおかげで、本システムにおいては、例えば、旋盤本体24に代えて他の種類の作業機本体をそのベッド22に固定することによって、ベッド10に配列することのできる種々のモジュールを、容易に、製作することが可能となっている。
【0212】
先に説明したシステムは、ベース10上に4つの配置領域Rが設定されていたが、2以上の配置領域Rが設定されていれば、好適なシステムとなり得る。また、先に説明したシステムでは、複数、具体的には、2つのベースユニット16によってベース10が構成されているが、3以上のベースユニットBUによって1つのベースが構成されてもよい。なお、複数のベースユニットを採用する場合、先に説明したシステムのように、それら複数ベースユニットの各々に、複数の配置領域Rが設定されることが望ましい。
【0213】
配置領域Rは、原則として、2以上のモジュールM若しくはそれらの一部が当該領域R内に存在しないように設定されている。その原則に従って、先に説明したシステムでは、上述のように、各配置領域Rには、1つのモジュール12しか存在しないようにされており、かつ、システムが有する4つのモジュール12は、いずれも、1つの配置領域R内に収まる単一領域占有モジュールとされている。そのようなシステムとは異なる変形例のシステムとして、単一領域占有モジュールMに代え、
図31(a)に示すように、複数の配置領域Rを占有するモジュールM’、つまり、複数領域占有モジュールM’が配置されたシステムを構築することもできる。
図31(a)に示すシステムでは、具体的には、ベースBを構成する右側のベースユニットBUに載置されるモジュールMが’、2つの配置領域Rを占有するモジュールとされている。このシステムでも、3つのモジュールM,M’は、互いに近接して配置されており、モジュールM’のモジュール幅WM’は、モジュールMのモジュール幅WMの概ね整数倍、具体的には、2倍とされている。
【0214】
上記複数領域占有モジュールを配置する場合、例えば、そのモジュールが有する1対の車輪20のうちの一方が、そのモジュールが占有する複数の配置領域Rのうちの1つに対応して配設されたレール対150を構成する1対のレール152の一方を転動し、他方が、複数の配置領域Rのうちの別の1つに対応して配設されたレール対150を構成する1対のレール152の一方を転動するようにすればよい。具体的に言えば、
図31(a)に示すシステムでは、2つの配置領域を占有するモジュールM’の有する1対の車輪20の左側ものが、そのモジュールM’が占有する2つの配置領域Rの左側のものに対応して配設されたレール対150を構成する1対のレール152のうちの左側のものを転動し、1対の車輪20の右側のものが、2つの配置領域Rの右側のものに対応して配設されたレール対150を構成する1対のレール152のうちの右側のものを転動するようにされている。簡単に言えば、1対の車輪20が、2つの配置領域Rに配設されている4つのレール152のうちの配列方向における外側の2つのものを、それぞれ転動するようにされているのである。
【0215】
なお、複数領域占有モジュールM’を配置する場合、そのモジュールM’に対して、モジュール駆動用モータ162,ピニオン164等の上記モジュール駆動機構166のベース側構成要素、および、である係止ロッド216,係止ロッド作動装置210等のモジュール固定機構のベース側構成要素は、それぞれ、複数の配置領域Rに対応した複数のものが対応することになる。その場合、複数領域占有モジュールM’に対して、それらベース側構成要素は、それぞれ、複数のもののうちのいずれか1つが使用されるようにしてもよい。また、複数領域占有モジュールM’に対して、上記ワーク搬送装置350が有するワーク台358も、複数の配置領域Rに対応した複数のものが対応ワーク台となる。その場合、ワーク搬送装置350の動作に鑑みれば、その複数領域占有モジュールM’には、複数の対応ワーク台358のうちの最上流側のものに載置された加工未了ワークを作業位置に移送し、加工完了ワークを作業位置から2つの対応ワーク台358のうちの最下流側のものに移送して載置するように構成されたワークローダを採用することが望ましい。
【0216】
また、先に説明したシステムでは、4つのモジュール12のいずれもが、配置領域Rをはみ出さないようなモジュール幅WMを有するものとされていたが、例えば、配列方向における両端に配置された2つのモジュールの少なくとも一方が、配列方向における外側ににはみ出だすようしてもよい。
図31(b)は、そのようにされたに示すシステムの一例を示しており、
図31(b)に示されているシステムでは、最も右側のモジュールM”が、配置領域Rからはみ出している。詳しく言えば、配列方向において、オーバーハングする状態でベースBからはみ出すようにされているのである。このシステムでは、モジュール幅WMが領域幅WRよりも大きいモジュールM”であっても、ベース幅の比較的小さいベースB上に、配置することが可能とされているのである。
【0217】
先に説明したシステムでは、モジュール12は、いずれも旋盤モジュール若しくはボール盤/フライス盤モジュールとされていたが、請求可能発明に係るシステムでは、ベース上に配列されるモジュールは、それら旋盤モジュール若しくはボール盤/フライス盤モジュールに限られず、マシニングセンタ,研削盤,研磨盤等の他の種類の工作機械がモジュール化された種々の工作機械モジュールを、ベース上に配置することも可能である。さらに、請求可能発明に係るシステムでは、工作機械モジュールの他に、機械加工に先立ってワークに前処理を行う前処理機がモジュール化された前処理機モジュールや、機械加工の作業結果を検査する検査機等の後処理機がモジュール化された後処理機モジュールをもベース上に配列させることが可能である。さらに、ワークを作業機モジュールに供給する供給作業を行う供給作業機がモジュール化された供給作業モジュールや、工作機械モジュールによる加工が完了したワークをそのモジュールから受け取って当該システムからの搬出のためにストックさせる完了ワーク貯蔵機がモジュール化された貯蔵機モジュール等、工作機械モジュール以外のものがモジュール化された種々の作業機モジュールをもベースに配列させることが可能である。