(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ガラス基板は、磁気記録物品及び光起電力セル用の基板等、多くの用途において使用される。ガラス基板を含む磁気記録物品の例としては、コンピュータ関連用途において使用されるハードディスクドライブがある。ハードディスクドライブのガラス基板には、1層以上の磁性材料が、この基板に及び/又は基板を覆って塗布される。磁性材料は通常、ガラス基板に高温で塗布される。あるハードディスクドライブ技術では、磁性材料は、垂直記録媒体を形成するように塗布され、この媒体中、磁性材料はガラス基板上で直立する。垂直記録媒体の形成には通常、長手記録媒体の形成で典型的に必要とされる温度に比べて、より高い塗布温度が必要とされる。垂直記録媒体の形成には高温が伴うため、通常、少なくとも590℃の歪点を有するガラス基板が必要となる。
【0003】
光起電力セル及びモジュールでは、1層以上の半導体材料が、ガラス基板等の基板上に及び/又は基板を覆って、塗布される。各半導体層の塗布は通常、高温で行われる。薄膜光起電力セル及びモジュールの場合、カドミウム(Cd)及び/又はテルル化物(Te)半導体材料並びにその合金を含み得る各半導体層を形成する際、更に高い温度が通常必要とされる。例えば、少なくとも1層のCdTe層を含む、薄膜光起電力セル又はモジュールの形成に伴う、より高い温度には通常、少なくとも590℃の歪点を有するガラス基板が必要となる。
【0004】
幾つかの用途では、高歪点を有するガラス基板は、例えば、アセンブリの搭載面を提供する、より低い歪点を有する1つ以上の他のガラス成分を含むアセンブリの一部分をなす。光起電力モジュールには、例えばガラス裏打ち板が含まれ得る。コスト低減等の経済的な理由から、ガラス裏打ち板は、より低い歪点を有する、ソーダ石灰ガラス等のより低コストの材料で形成される。このようなアセンブリでは、前記低歪点ガラス成分及び高歪点ガラス成分の熱膨張係数値が、両者間で最小の違い(又は差)を有することが望まれ得る。熱膨張係数値の違い(又は差)が最小であることにより、温度揺らぎに繰返し曝された後の、両者間での層間剥離及び/又はアセンブリの構造的完全性の低減を減少させるか又は最小にすることができる。
【0005】
ランタノイド酸化物及び/又は酸化イットリウム等の希土類酸化物を含むガラス組成物は、高い歪点を有するガラス生成物を提供し得る。三酸化ホウ素等のホウ素を含有するガラス組成物も、高い歪点を有するガラス生成物を提供し得る。しかし、このようなガラス組成物から提供されるガラス生成物は、高いコストを有する。加えて、このようなガラス組成物は、低コスト且つ低歪点のガラス成分の熱膨張係数値に充分には近く(又は適合し)ない熱膨張係数値を有するガラス生成物を提供するので、結果的に、このような低コスト且つ低歪点のガラス成分を具えたアセンブリを排除することになり、望ましくない。
【0006】
高い歪点を有するガラス生成物を提供する代替的なガラス組成物を開発することが望まれる。加えて、このような新たに開発される代替的ガラス組成物は更に、少なくとも幾つかの用途においては、ソーダ石灰ガラス等の低歪点ガラス生成物の熱膨張係数値に充分に近い(又は適合する)熱膨張係数値を有するガラス生成物を提供することが望まれる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において使用されるように、「左」、「右」、「内」、「外」、「上」、「下」等の空間的又は方向的用語は、図面において示されるような発明に関連する。しかしながら、本発明は、種々の代替的な方向をとることが可能であるため、このような用語は制限的なものとみなされるべきではないと理解されなければならない。
【0016】
実施例又は別に示された場合の他、明細書及びクレームにおいて使用される、成分、反応条件、処理パラメータ、物理的特性、寸法等の量を表す全ての数は、全ての場合において、「約」の用語によって変更されるように理解されなければならない。従って、その逆のことが示されない限り、以下の明細書及びクレームにおいて示された数値は、本発明によって達成されることを求める目的の特性に応じて変更できる。
【0017】
追加的に、少なくとも、及びクレームの範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値は、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮すると共に、通常の端数処理法を用いることによって解釈されるべきである。更に、本明細書に開示された全ての範囲は、範囲の始めと終わりの値を含み、その範囲に含まれるいかなる部分範囲も含み、そして全ての部分範囲を含むと理解されなければならない。例えば、「1〜10」の範囲であると記載された場合、これは最小値が1であり、最大値が10の間(両端を含む)のいかなる部分範囲も含み、そして全ての部分範囲(即ち、最小値が1以上で始まり且つ最大値が10以下で終わる全ての部分範囲、例えば、1〜3.3、4.7〜7.5、5.5〜10等である。)を含むと解釈されなければならない。
【0018】
本明細書において使用されるように、「覆って形成される」、「覆って堆積される」、「覆って存在する」又は「覆って設けられる」の用語は、表面上に形成され、堆積され、又は設けられるが、必ずしも表面に直接(又は隣接して)接触する必要はない。例えば、基板を「覆って」被覆層を「形成する」又は「存在させる」場合、形成される(又は特定される)前記被覆層と前記基板との間に、同じ組成又は異なる組成の1層以上の他の被覆層又は薄膜が存在してもよい。
【0019】
本明細書中で使用される「可視領域」の用語及び「可視光」等の関連用語は、380nmから780nmの範囲の波長を有する電磁放射を意味する。
【0020】
本明細書中で使用される「赤外領域」の用語及び「赤外線」等の関連用語は、780nm超過から100,000nmの範囲の波長を有する電磁放射を意味する。
【0021】
本明細書中で使用される「紫外領域」の用語及び「紫外線」等の関連用語は、100nmから380nm未満の範囲の波長を有する電磁エネルギーを意味する。
【0022】
問題の特許及び特許出願(これらに限定されない)等の本明細書中で参照される全ての文献は、全体として「参照により取り込まれる」とみなされなければならない。
【0023】
本明細書において使用されるように、「ア(a)」「アン(an)」及び「ザ(the)」の冠詞は、1つの指示物に別に明確に且つ明解に限定されない限り、複数の指示物を含む。
【0024】
本明細書において使用されるように、「透明な」の用語は、可視光等の目的とする波長範囲において、0%より高く100%までの透過率を有することを意味する。本明細書において使用されるように、「半透明な」という用語は、可視光等の電磁放射を透過させるが、この電磁放射を拡散又は飛散させることを意味する。本明細書において使用されるように、「不透明な」という用語は、可視光等の目的とする波長範囲において、0%等のほぼ0%の透過率を有することを意味する。
【0025】
本明細書において使用されるように、「バルクガラス組成物」の用語は、ガラス生成物の表面内(又は表面間)に存在する、当該ガラス生成物の部分を意味し、前記ガラス生成物の1面以上の表面上に存在し得る1つ以上の処理物及び/又は層の組成物を含まない。
【0026】
ガラス生成物の「バルクガラス組成物」は、幾つかの実施態様では、ガラス生成物が調製されるガラス組成物の成分に基づいて測定され得る。
【0027】
ガラス生成物の「バルクガラス組成物」は、幾つかの更なる実施態様では、当該技術分野において承認されている蛍光X線法等の分析法によって測定され得る。
【0028】
本明細書において使用されるように、「歪点」の温度値は、ガラス生成物がポアズ単位でLOG14.5の粘度を有する温度を意味し、米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials)(ASTM) C336−71に基づく繊維延伸法にしたがって測定される。
【0029】
本明細書において使用されるように、「熱膨張係数」値(又はCTE値)は、オルトン膨張計(Orton dilatometer)を使用して、ASTM E228−06にしたがって、25℃から300℃の温度範囲に亘って測定される。
【0030】
別に指示がない場合、本発明に係るガラス組成物の種々の成分の重量%値は、各場合とも、ガラス組成物の全重量に基づく。
【0031】
別に指示がない場合、本発明に係るガラス物品及び生成物のバルクガラス組成物における種々の成分の重量%値は、各場合とも、バルクガラス組成物の全重量に基づく。
【0032】
幾つかの実施態様にしたがって、Al
2O
3は、本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物において、4〜10重量%の量(記載の両端値を含む)で存在する。酸化アルミニウム(Al
2O
3)の量は、幾つかの実施態様では、少なくとも590℃の歪点等の目的とする歪点を有するガラス生成物(又はガラス物品)が得られるように選択される。
【0033】
幾つかの実施態様では、Al
2O
3は、本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物において、組成物の全重量に対して、4.5〜9.5重量%の量(記載の両端値を含む)で存在する。
【0034】
幾つかの実施態様では、Na
2Oは、本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物において、組成物の全重量に対して、7〜10重量%の量(記載の両端値を含む)で存在する。酸化ナトリウム(Na
2O)の量は、幾つかの実施態様では、少なくとも7.4ppm/℃等の所望する熱膨張係数を有するガラス生成物(又はガラス物品)が得られるように選択される。
【0035】
幾つかの更なる実施態様にしたがって、Na
2Oは、本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物に、7.5〜9.5重量%の量(記載の両端値を含む)で存在する。
【0036】
幾つかの追加的な実施態様では、CaOは、本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物において、組成物の全重量に対して、17〜20重量%の量(記載の両端値を含む)で存在する。酸化カルシウム(CaO)の量は、幾つかの実施態様では、シリカ(SiO
2)の溶解を促進するように選択され、酸化カルシウムは、幾つかの実施態様では、フラックス又フラックス剤として記載され得る。幾つかの追加的な実施態様では、CaOの量は、低融点のガラス組成物、及び、その結果として生じる高歪点のガラス生成物及び物品が得られるように選択される。
【0037】
酸化カルシウム(CaO)は、本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物において、幾つかの実施態様では、組成物の全重量に対して、17〜19重量%の量(記載の両端値を含む)で存在する。
【0038】
本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物は、幾つかの実施態様では、組成物の全重量に対して、4〜10重量%のAl
2O
3;7〜10重量%のNa
2O;17〜20重量%のCaO(各場合とも記載された両端値を含む)を含む。
【0039】
幾つかの追加的な実施態様にしたがって、本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物は、当該組成物の全重量に対して、4.5〜9.5重量%のAl
2O
3;7.5〜9.5重量%のNa
2O;17〜19重量%のCaO(各場合とも両端値を含む)を含む。
【0040】
本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物のAl
2O
3対Na
2Oの重量比は、幾つかの実施態様では、0.5〜1、又は0.5〜1.0、又は0.57〜1.0、又は0.6〜1、又は0.6〜1.0(各場合とも記載された両端値を含む)の範囲であり得る。
【0041】
本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物のAl
2O
3対CaOの重量比は、幾つかの実施態様では、0.2〜0.5、又は0.23〜0.5、又は0.25〜0.5、又は0.26〜0.5(各場合とも記載された両端値を含む)の範囲であり得る。
【0042】
本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物のNa
2O対CaOの重量比は、幾つかの実施態様では、0.4〜0.6、又は0.4〜0.5、又は0.41〜0.5、又は0.44〜0.5、又は0.45〜0.5(各場合とも記載された両端値を含む)の範囲であり得る。
【0043】
幾つかの実施態様にしたがって、本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物は、種々の成分について次のような重量比の組合せを包含する:即ち、Al
2O
3対Na
2Oの重量比は0.5〜1.0;Al
2O
3対CaOの重量比は0.2〜0.5;そして、Na
2O対CaOの重量比は0.4〜0.5(各場合とも記載された両端値を含む)である。
【0044】
幾つかの更なる実施態様にしたがって、本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物は、種々の成分について次のような重量比の組合せを包含する:即ち、Al
2O
3対Na
2Oの重量比は0.6〜1.0;Al
2O
3対CaOの重量比は0.26〜0.5;そして、Na
2O対CaOの重量比は0.44〜0.5(各場合とも記載された両端値を含む)である。
【0045】
既に先に説明したように、本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物は、組成物の全重量に対して、Li
2Oを0.01〜0.1重量%(記載された両端値を含む)の量で含む。幾つかの実施態様では、Li
2Oは、本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物に、組成物の全重量に対して、0.02〜0.08重量%(記載された両端値を含む)の量で存在する。幾つかの実施態様では、Li
2Oは、フラックス又はフラックス剤として、ガラス組成物の融点を下げる目的で添加される。
【0046】
本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物は、既に先に説明したように、0.05重量%未満のK
2Oを含む。K
2Oの量は、幾つかの実施態様では、0重量%であり得るが、K
2O(含まれる場合)は典型的に、少なくとも0.0005重量%、又は少なくとも0.001重量%等で存在する。K
2Oの量は、幾つかの実施態様では、0.0005重量%から0.05重量%未満までの範囲、又は0.001重量%から0.05重量%未満までの範囲(例えば、0.0005〜0.04重量%、又は0.001〜0.04重量%の範囲)にある。幾つかの実施態様では、K
2Oは、本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物のSiO
2成分中に存在する。幾つかの更なる実施態様にしたがって、K
2Oは、存在する場合には、ガラス組成物のSiO
2成分中に存在し、K
2Oは、本発明のガラス組成物に別個には添加されない。
【0047】
幾つかの実施態様では、本発明のガラス組成物は、アルカリ金属硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム)等の清澄剤を含む。清澄剤は、ガラス組成物中に存在したとしても、幾つかの実施態様では、SO
3等の気体となって、ガラス溶融物から出ていくことが多いので、得られたガラス生成物又は物品中には存在しない。幾つかの実施態様では、本発明のガラス組成物は、硫酸ナトリウムを、ガラス組成物の全重量に対して、0.2〜0.4重量%(記載された両端値を含む)の量で含む。本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物は、幾つかの実施態様では、残留清澄剤を、ガラス組成物、並びにガラス生成物又は物品のバルクガラス組成物の物理的特性に対して、影響しないか、変更しないか、別に寄与しない量、例えば、組成物の全重量に対して、0.02重量%以下、又は0.01重量%以下、又は0.005重量%以下の量で含む。
【0048】
幾つかの実施態様にしたがって、本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物は、不純物(混入物ということもある)を、組成物の全重量に対して、0.02重量%以下、又は0.01重量%以下、又は0.005重量%以下の量で含む。存在したとしても、不純物は、本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物又は物品のバルクガラス組成物の物理的特性に対して、影響しないか、変更しないか、又は別に寄与しない。本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成に存在し得る不純物の例としては、MgO及び酸化鉄(FeO等)が挙げられるが、これに限定されず、その不純物の量は、組成物の全重量に対して、0.02重量%以下、又は0.01重量%以下、又は0.005重量%以下である。
【0049】
本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物は、幾つかの実施態様では、ある一定の材料を含まない。幾つかの実施態様では、「含まない」の用語は、0.02重量%未満、又は0.01重量%未満、又は0.005重量%未満を意味する。幾つかの追加的な実施態様では、「含まない」の用語は、0重量%、即ち、測定可能量では存在しないことを意味する。本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物は、幾つかの実施態様では、非限定的に、酸化スズ、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、及び希土類酸化物(希土類金属酸化物ともいう)等の材料を含まない。本発明の、ガラス組成物、並びにガラス生成物及び物品のバルクガラス組成物には含まれない希土類酸化物は、式RE
2O
3によって表すことでき、式中、REは、希土類(又は希土類金属)、例えばSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Ln及びこれらの組合せ等を意味する。
【0050】
非限定的に、板ガラス生成物及びガラス基板等のガラス生成物及び物品は、本発明の幾つかの実施態様にしたがって、少なくとも590℃、又は少なくとも600℃、又は少なくとも625℃、又は少なくとも650℃の歪点を有する。幾つかの実施態様では、非限定的に、板ガラス生成物及びガラス基板等の本発明のガラス生成物及び物品は、800℃以下、又は750℃以下、又は725℃以下、又は700℃以下の歪点を有する。本発明のガラス生成物及び物品の歪点は、幾つかの実施態様では、590℃〜800℃、又は590℃〜750℃、又は600℃〜725℃、又は625℃〜700℃、又は650℃〜680℃(各場合とも記載された両端値を含む)等の、より下の値とより上の値との任意の組み合わせの間の範囲にある。
【0051】
非限定的に、板ガラス生成物及びガラス基板等のガラス生成物及び物品は、本発明の幾つかの実施態様にしたがって、少なくとも7.4ppm/℃、又は少なくとも7.5ppm/℃、又は少なくとも7.8ppm/℃、又は少なくとも8.0ppm/℃、又は少なくとも8.25ppm/℃の熱膨張係数を有する。幾つかの実施態様では、非限定的に、板ガラス生成物及びガラス基板等の本発明のガラス生成物及び物品は、9.0ppm/℃以下、又は8.8ppm/℃以下、又は8.6ppm/℃以下、又は8.5ppm/℃以下の熱膨張係数を有する。本発明のガラス生成物及び物品の熱膨張係数は、幾つかの実施態様では、7.4〜9.0ppm/℃、又は7.5〜8.8ppm/℃、又は7.8〜8.6ppm/℃、又は8.25〜8.5ppm/℃(各場合とも記載された両端値を含む)等の、より下の値とより上の値との任意の組み合わせの間の範囲にある。
【0052】
本発明のガラス組成物から形成されるガラス生成物は、幾つかの実施態様では、板ガラス生成物の形態である。
【0053】
幾つかの実施態様にしたがって、本発明のガラス組成物から形成されるガラス生成物は、基板(即ち、ガラス基板)の形態である。ガラス基板は、本発明の幾つかの実施態様では、24mmまで、又は2mm〜24mm、又は4mm〜24mm、又は5mm〜24mm等の任意の適切な厚さを有し得る。
【0054】
本発明の、ガラス基板及び板ガラス生成物等のガラス生成物又は物品は、幾つかの実施態様では、透明、半透明、又は不透明である。幾つかの実施態様では、本発明の、ガラス基板及び板ガラス生成物等のガラス生成物又は物品は、透明であり、且つ可視光透過率(Lta)は70%以上(例えば、75%以上、又は80%以上)であり、各場合とも、Lta値を、厚さ5.664mm(0.223インチ)を有するガラスサンプルを使用して測定した。
【0055】
本発明のガラス組成物は、当該技術分野において承認されている方法にしたがって、本発明のガラス生成物及び物品を形成するように処理することができる。非限定的に説明すると、本発明のガラス組成物は、るつぼ溶融プロセス、シート延伸プロセス、及びフロートガラスプロセス等の当該技術分野において承認されているプロセスで処理することができるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書において既に説明したように、本発明は、ガラス基板と、前記ガラス基板を覆う少なくとも1層の半導体層とを含む光起電力セルを提供する。本発明の幾つかの実施態様では、光起電力セルの少なくとも1層の半導体層は、テルル化カドミウム(CdTe)等の、カドミウム及びテルル化物のうち少なくとも1種を含む。
【0057】
光起電力セルは典型的には、ガラス基板と、前記ガラス基板の少なくとも片面を覆って形成される複数の層とを含む。層は通常、1層以上の透明な導電性酸化物層と、1層以上の半導体層(例えば、その各層が太陽光等の化学線を吸収し、電気に変換するp型層)と、窓層(例えば、n型層)と、金属電気接触層とを含む。幾つかの実施態様では、光起電力セルは更に、ガラス裏打ち板等の裏打ち層又は板を含む。
【0058】
図1を参照しつつ、非制限的に説明すると、光起電力セル1は、第1表面14(これは、光源20の方に対面している)と、第2表面17とを有する、本発明に係るガラス基板11を含む。ガラス基板11は、透明であり、幾つかの実施態様では、少なくとも70%(例えば、少なくとも80%)のLtaを有する。コーティング又は層スタック23は、ガラス基板11の第2表面17を覆って設けられる。コーティング/層スタック23は、幾つかの実施態様では、第2表面17を覆う低抵抗率透明導電性酸化物(TCO)層26を含み、このTCO層26は、幾つかの実施態様では、酸化インジウム・スズ(ITO)を含む。コーティングスタック23は更に、幾つかの実施態様では、低抵抗率ITO層26を覆って高抵抗率TCO層29を含み、このTCO層29は、酸化スズ(SnO
2)を含み得る。幾つかの更なる実施態様では、コーティングスタック23は更に、当技術においては窓層32と称されるものを含み、窓層32は、幾つかの実施態様では、n型ドープ硫化カドミウム(n−doped CdS)を含む。窓層32は、高抵抗率TCO層29を覆って存する。コーティングスタック23は追加的に、半導体層35を含み、これは、p型ドープ半導体層であり得る。半導体層35は、窓層32を覆って存する。半導体層35は、幾つかの実施態様では、CdTeを含む。幾つかの更なる実施態様にしたがって、コーティングスタック23は更に、金属接触層38を含み、これは、Au又はNi−Alを含み得る。コーティングスタック23は、1層以上の追加的な層を含み得る(図示せず)。
【0059】
光起電力セル1は更に、幾つかの実施態様では、裏打ち層又は板41を含む。裏打ち板41は、幾つかの実施態様では、金属接触層38を覆って形成される。幾つかの更なる実施態様では、裏打ち板41は、ガラス裏打ち板41であり、これは、ソーダ石灰ガラス裏打ち板41であり得る。
【0060】
本明細書において既に説明したように、
図1の光起電力セル1を更に参照しつつ、更に非限定的に説明すると、幾つかの実施態様では、ガラス基板11とガラス裏打ち板41とは、それぞれ、熱膨張係数値を有し、その熱膨張係数値間の差の絶対値が最小であり、これは、温度揺らぎに繰返し曝された後、ガラス基板11及び/又はガラス裏打ち板41が、光起電力セル1から層剥離する可能性が減少するか又は最小になる。代替的に、又は追加的に、熱膨張係数値間の差の絶対値が最小であることにより、温度揺らぎに繰返し曝された後、コーティングスタック23の1層以上を通じて1本以上の亀裂が伝播する可能性を減少させる等、光起電力セル1の構造的完全性も改良される。
【0061】
幾つかの実施態様では、本発明に係る光起電力セルのガラス基板とガラス裏打ち板の熱膨張係数値の間の差の絶対値は、10ppm/℃以下、又は5ppm/℃以下、又は1ppm/℃以下、又は0.5ppm/℃以下である。
【0062】
本発明は更に、本発明に係るガラス基板を含む磁気記録物品を提供する。この磁気記録物品は更に、前記ガラス基板の少なくとも片面を覆って形成される1層以上の磁性材料層を含む。幾つかの実施態様では、磁気記録物品は、例えば、コンピュータと組合せて使用される、ハードディスクドライブである。
図2を参照しつつ、非限定的に説明すると、ハードディスクドライブ3は、ガラス基板50を含み、このガラス基板50は、第1表面53と第2表面56とを有する。コーティング又は層スタック59は、ガラス基板50の第1表面53を覆って形成される。コーティングスタック59は、幾つかの実施態様では、ガラス基板50の第1表面53を覆って存する磁性材料層62を含む。磁性材料層62は、幾つかの実施態様では、複数の磁性材料層を含む(図示せず)。磁性材料層62は、幾つかの更なる実施態様では、垂直記録層又は媒体であるか又はこれを規定する。
【0063】
磁気記録媒体3のコーティングスタック59は、幾つかの更なる実施態様では、磁性材料層62を覆って形成される少なくとも1層の更なる層65を含む。更なる層65は、1層以上の無機層及び/又は1層以上の有機ポリマー層から構成される単層又は多層構造を有し得る。幾つかの実施態様では、更なる層65は、保護層である。
【0064】
本発明は、以下の実施例において、より具体的に説明されるが、その実施例において多数の変更及び変化が可能であることは当業者にとって明らかであるので、実施例は単に説明することのみを意図するものであり、本発明が以下の実施例に限定されないことは理解されるべきである。別に明記しない限り、全ての部及び全てのパーセントは重量部及び重量%である。
【実施例】
【0065】
実施例A及びB
以下の表1に示された実施例A及びBは、コンピュータモデルから得られた、本発明によるバルクガラス組成物である。表1に記載された歪点及び熱膨張係数(CTE)値も、コンピュータモデルから得られた。従って、実施例A及びBはガラス溶融物からは調製されたものではない。
【表1】
実施例1
【0066】
以下の表2に示された実施例1は、表3のガラス組成物から調製されたガラス溶融物から調製された、本発明に係るバルクガラス組成物である。表2に記載された歪点及びCTE値は、表3のガラス組成物のガラス溶融物から得られるガラス試験サンプルについて実施された測定によって得られたもので、それも表2に記載する。
【表2】
【表3】
1 砂は、米国のシリカ社(Silica Co.)からの市販品であり、それには、主成分はSiO
2であり、砂鉄は少ないと記載されていた。
2 ソーダ灰は、FMC社(FMC Corp.)からの市販品であり、表示によると、密度等級260、主成分はNa
2CO
3であった。
3 石灰石は、Carmeuse Groupからの市販品であり、表示によると、MS0−2、主成分はCaCO
3であった。
4 ソルトケーキは、Saltex LLCからの市販品であり、それには、無水ガラス等級であり、主成分はNa
2SO
4であると記載されていた。
5 アルミナ水和物は、Alcoaからの市販品であり、表示によると、C−30、主成分はAl(OH)
3であった。
6 Li
2CO
3は、Chemetall Foote Corp.からの市販品であり、それには、技術的な等級(technical grade)と記載されていた。
【0067】
表3のガラス組成物は、以下の記載にしたがって処理された。
【0068】
表3の材料の約50重量%を4インチのプラチナ製るつぼに入れ、2500°F(1371℃)まで加熱した。その後、るつぼの温度を2500°F(1371℃)で30分間保持した。その後、最初の溶融材料を2550°F(1399℃)に加熱し、その温度で30分間保持した。その後、最初の溶融材料を2650°F(1454℃)に加熱し、その後、表3の材料の残りの50重量%をるつぼに加えた。るつぼ中の一緒にされた内容物を2650°F(1454℃)で30分間保持した。その後、この一緒にされた溶融材料を2700°F(1482℃)に加熱し、その温度で1時間保持した。次に、その一緒にされた溶融材料を水中で急令してフリット化した。そのフリットガラスを水と分離し、乾燥して、プラチナ製るつぼ中で2時間、2750°F(1510℃)に再加熱し、その結果、第2溶融材料を得た。その後、第2溶融材料をるつぼから注ぎ出して、厚板(スラブ)を形成し、アニール化した。ガラス試験サンプルをアニール化スラブから切り出した。ガラス試験サンプルを化学分析用に研磨し、磨いた。上記表2に記載された実施例3のバルクガラス組成物を、研磨し及び磨いたガラス試験サンプルについて蛍光X線分光光度分析することにより測定した。他のガラス試験サンプルをアニール化したスラブから切り出し、歪点及び熱膨張係数値を測定するために使用し、その結果を表2に記載する。
【0069】
前記説明において開示した概念から乖離することなく、本発明に変更を加え得ることは、当業者には容易にわかるであろう。従って、本明細書に詳述した具体的な実施態様は、単に説明的なものであり、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、添付したクレームの全幅に、並びにクレームのいかなる等価物にも、及び全等価物に及ぶものである。