特許第6179006号(P6179006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6179006タイミング弁を有する往復動圧縮機および関連する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179006
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】タイミング弁を有する往復動圧縮機および関連する方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20170807BHJP
   F04B 39/10 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   F04B49/06 331Z
   F04B39/10 Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-547865(P2014-547865)
(86)(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公表番号】特表2015-505001(P2015-505001A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2012075438
(87)【国際公開番号】WO2013092390
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年12月10日
(31)【優先権主張番号】CO2011A000071
(32)【優先日】2011年12月22日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】505347503
【氏名又は名称】ヌオーヴォ ピニォーネ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】バガーリ,リカルド
(72)【発明者】
【氏名】トグナレッリ,レオナルド
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−045915(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201953605(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
F04B 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入弁(130、230、330、430)を介してチャンバ(110)に流入する流体が内部で圧縮され、圧縮された前記流体が吐出弁(140、240、340、440)を介して前記チャンバ(110)から排出される、前記チャンバ(110)と、
前記チャンバ(110)と、タイミング弁(150、250、350、450)が開放されるときの前記チャンバ(110)内の圧力よりも低いリリーフ圧の流体量との間に位置する前記タイミング弁(150、250、350、450)と、
前記タイミング弁(150、250、350、450)を作動させるように構成されたアクチュエータ(160)と、
前記圧縮サイクルの膨張段階中に前記タイミング弁(150、250、350、450)を開放するため、また、前記吸入弁(130、230、330、430)が開放されたときに前記タイミング弁(150、250、350、450)を閉鎖するために、前記アクチュエータ(160)を制御するように構成された制御器(170)とを、
備える往復動圧縮機(100)。
【請求項2】
前記タイミング弁(150、250、350、450)の流れ面積が、前記吸入弁(130、230、330、430)の流れ面積よりも小さい、請求項1に記載の往復動圧縮機(100)。
【請求項3】
前記タイミング弁(150、250、350、450)が前記チャンバ(110)のヘッド端部(115、215、315)上に位置し、前記ヘッド端部(115、215、315)は前記ピストン(120)が沿って移動する方向に対して実質的に垂直である、請求項1または2に記載の往復動圧縮機(100)。
【請求項4】
前記圧縮サイクルの前記膨張段階中に前記流体が前記チャンバ(110)から流出することを可能にするように構成された別のタイミング弁(255、452)であって、前記タイミング弁(150、250、350、450)および前記他方のタイミング弁(255、452)の面積が前記吸入弁(130、230、330、430)の面積よりも著しく小さい、前記他方のタイミング弁(255、452)と、
前記他方のタイミング弁(255、452)を開放するように構成された別のアクチュエータ(160)であって、前記制御器(170)が更に、(1)前記他方のチャンバ(110)内における前記圧縮サイクルの膨張段階中に前記他方のタイミング弁(255、452)を開放し、それにより流体が前記他方のチャンバ(110)から流出することを可能にするため、また(2)前記他方の吸入弁(130、230、330、430)が開放されたときに前記他方のタイミング弁(255、452)を閉鎖するために、前記他方のアクチュエータ(160)を制御するように構成される、前記他方のアクチュエータ(160)と、
を更に含む、請求項1〜3のいずれかに記載の往復動圧縮機(100)。
【請求項5】
前記タイミング弁(150、250、350、450)および前記他方のタイミング弁(255、452)の面積が実質的に等しい、
前記制御器(170)が、前記タイミング弁(150、250、350、450)および前記他方のタイミング弁(255、452)を実質的に同時に開放するために、前記アクチュエータ(160)および前記他方のアクチュエータ(160)を制御するように構成される、ならびに、
前記吸入弁(130、230、330、430)、前記吐出弁(140、240、340、440)、前記タイミング弁(150、250、350、450)、および前記他方のタイミング弁(255、452)が、前記チャンバ(110)のヘッド端部(115、215、315)上に位置し、前記ヘッド端部(115、215、315)は、前記ピストン(120)が沿って移動する方向に対して実質的に垂直である、
のうちの少なくとも1つの条件が満たされる、請求項1〜4のいずれかに記載の往復動圧縮機(100)。
【請求項6】
前記タイミング弁(150、250、350、450)および前記吸入弁(130、230、330、430)が、前記チャンバ(110)と、圧縮される流体が前記チャンバ(110)に供給される吸入ダクト(135)との間に接続される、請求項1〜5のいずれかに記載の往復動圧縮機(100)。
【請求項7】
前記往復動圧縮機(100)が、前記ピストン(120)により2つのチャンバ(110)に分割されたシリンダを有するデュアル往復動圧縮機(100)であり、前記チャンバ(110)および別のチャンバ(110)が、別の吸入弁(332、432)を介して前記他方のチャンバ(110)に流入しかつ別の吐出弁(342、442)を介して前記他方のチャンバ(110)から排出される流体の圧力を増大させるように構成され、
前記吸入弁(130、230、330、430)、前記他方の吸入弁(332、432)、前記吐出弁(140、240、340、440)、前記他方の吐出弁(342、442)、および前記タイミング弁(150、250、350、450)が、前記シリンダのヘッド端部(115、215、315)上に位置し、前記ヘッド端部(115、215、315)は、前記ピストン(120)が沿って移動する方向に対して実質的に垂直である、
請求項1〜6のいずれかに記載の往復動圧縮機(100)。
【請求項8】
前記往復動圧縮機(100)が、前記ピストン(120)により2つのチャンバ(110)に分割されたシリンダを有するデュアル往復動圧縮機(100)であり、前記チャンバ(110)および別のチャンバ(110)が、別の吸入弁(332、432)を介して前記他方のチャンバ(110)に流入しかつ別の吐出弁(342、442)を介して前記他方のチャンバ(110)から排出される流体の圧力を増大させるように構成され、
前記往復動圧縮機(100)は、前記他方のチャンバ(110)内における圧縮サイクルの膨張段階中に前記流体が前記他方のチャンバ(110)から流出することを可能にするように構成された別のタイミング弁(255、452)を更に備え、
(A)前記吸入弁(130、230、330、430)、前記他方の吸入弁(332、432)、前記吐出弁(140、240、340、440)、前記他方の吐出弁(342、442)、前記タイミング弁(150、250、350、450)、および前記他方のタイミング弁(255、452)が、前記シリンダのヘッド端部(115、215、315)上またはクランク端部(416)上に位置する、または、
(B)前記吸入弁(130、230、330、430)、前記吐出弁(140、240、340、440)、および前記タイミング弁(150、250、350、450)が前記シリンダのヘッド端部(115、215、315)上に位置し、かつ前記他方の吸入弁(332、432)、前記他方の吐出弁(342、442)、および前記他方のタイミング弁(255、452)が前記シリンダのクランク端部(416)上に位置する、
請求項1〜7のいずれかに記載の往復動圧縮機(100)。
【請求項9】
往復動圧縮機(100)の容積効率を向上させる方法であって、
前記往復動圧縮機(100)のチャンバ(110)とリリーフ圧の所定量の流体との間に位置するタイミング弁(150、250、350、450)を設けるステップと、
吸入弁(130、230、330、430)が閉鎖され且つ前記チャンバ(110)内部で行われる圧縮サイクルの膨張段階中に開放されるように前記タイミング弁(150、250、350、450)を制御するステップであって、前記タイミング弁(150、250、350、450)の流れ面積が前記往復動圧縮機(100)の吸入弁(130、230、330、430)の流れ面積よりも小さい、前記制御するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
圧縮サイクルの膨張段階中にチャンバ(110)から流体を排出するように圧縮機(100)を改良する方法であって、
前記チャンバ(110)とリリーフ圧の所定量の流体との間に位置するタイミング弁(150、250、350、450)を設けるステップと、
前記タイミング弁(150、250、350、450)を作動させるように構成されたアクチュエータ(160)を取り付けるステップと、
制御器(170)を前記アクチュエータ(160)に接続するステップであって、前記制御器(170)は、吸入弁(130、230、330、430)が閉鎖され且つ前記圧縮サイクルの前記膨張段階中に前記タイミング弁(150、250、350、450)を開放するために前記アクチュエータ(160)を制御するように構成される、前記接続するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する主題の実施形態は、概して、石油およびガス産業で使用される往復動圧縮機に関し、より詳細には、圧縮サイクルの膨張段階中に開放するように作動させるタイミング弁を使用することにより、吸入容積を増大させ、隙間容積の影響を緩和することに関する。
【背景技術】
【0002】
石油およびガス産業で使用される圧縮機は、例えば、圧縮流体がしばしば腐食性でかつ可燃性であることを考慮した産業特有の要件を満たさなければならない。米国石油協会(API)(すなわち、石油およびガス産業で使用される設備に関する公認工業規格を設定する組織)は、往復動圧縮機に関する最低限の要件の一式をリスト化したAPI618文書を発行している。
【0003】
圧縮機は、容積式圧縮機(例えば、往復動圧縮機、スクリュー圧縮機、もしくはベーン型圧縮機)または動圧縮機(例えば、遠心圧縮機もしくは軸流圧縮機)に分類することができる。容積式圧縮機において、圧縮は、ガスを捕捉し、次いで捕捉したガスの体積を縮小することにより達成される。動圧縮機において、圧縮は、圧縮機内部の所定の位置で(回転要素などの)運動エネルギーを圧力エネルギーに変換することにより達成される。
【0004】
図1は、石油およびガス産業で使用される従来のデュアルチャンバ往復動圧縮機10を示したものである。単一チャンバの往復動圧縮機は、それほど頻繁に使用されないが、デュアルチャンバの往復動圧縮機と同様の圧縮サイクルに従って動作する。
【0005】
デュアルチャンバ往復動圧縮機10では、流体圧縮がシリンダ20内で生じる。圧縮される流体(例えば、天然ガス)は、入口30を介してかつ弁32および34を通して、シリンダ20内に投入され、圧縮後には、弁42および44、したがって出口40を介して送り出される。圧縮は、シリンダ20の長手方向軸線に沿ってヘッド端部26とクランク端部28との間をピストン50が移動することにより流体が圧縮される周期的なプロセスである。実際に、ピストン50は、シリンダ20を圧縮サイクルの異なる段階で動作する2つのチャンバ22および24に分割し、チャンバ22の容積は、チャンバ24の容積が最大値であるときに最小値となり、その逆も成立する。
【0006】
吸入弁32および34は、異なる時間に開放して、圧縮されることになる流体が入口30からそれぞれチャンバ22および24に流入することを可能にする。吐出弁42および44は、開放して、圧縮された流体が出口40を介してそれぞれチャンバ22および24から送り出されることを可能にする。ピストン50は、クロスヘッド70およびピストンロッド80を介してクランクシャフト60から伝達されるエネルギーにより移動する。従来、往復動圧縮機で使用される吸入弁および吐出弁(例えば、32、34、42、および44)は、弁の前後差圧により閉状態と開状態とに切り替わる自動弁であった。
【0007】
(圧力対容積の変化を追跡することにより、図2にグラフで示す)理想的な圧縮サイクルは、少なくとも4つの段階:膨張、吸入、圧縮、および吐出を含む。圧縮サイクルの終了時に圧縮された流体がチャンバから排出されるときに、送出圧力P1の少量の流体が隙間容積V1(すなわち、チャンバの最小容積)内に捕捉されたままとなる。圧縮サイクルの膨張段階1および吸入段階2中に、ピストンは、チャンバの容積を増大させるように移動する。膨張段階1の開始時には、送出弁が閉鎖し(吸入弁は閉鎖したままである)、次いで、流体にとって利用できるチャンバの容積が増大するので、捕捉した流体の圧力が低下する。圧縮サイクルの吸入段階は、圧縮チャンバ内部の圧力が、吸入弁を容積V2で開放するように動作させる吸入圧力P2と等しくなったときに開始する。吸入段階2中、チャンバの最大容積V3に達するまで、チャンバ容積および(吸入圧力P2で)圧縮される流体の量が増大する。
【0008】
圧縮サイクルの圧縮段階および吐出段階中に、ピストンは、膨張段階および吸入段階中の運動方向とは反対方向に移動し、チャンバの容積を減少させる。圧縮段階3中に、吸入弁と送出弁の両方が閉鎖され(つまり、流体がシリンダに流入またはシリンダから流出しない)、チャンバの容積がV4まで減少するため、チャンバ内の流体の圧力が(吸入圧力P2から送出圧力P1まで)増大する。圧縮サイクルの送出段階4は、チャンバ内部の圧力が、送出弁を開放するように動作させる送出圧力P1と等しくなったときに開始する。送出段階4中、チャンバの最小(隙間)容積V1に達するまで、送出圧力P1の流体がチャンバから排出される。
【0009】
圧縮機の効率の1つの尺度は容積効率であり、この容積効率は、吸入段階中に往復動圧縮機のピストンにより掃引されるチャンバの容積V3−V2と圧縮サイクル中にピストンにより掃引される全容積V3−V1との比率である。圧縮機の目的はできるだけ多くの圧縮された流体を送出することと考えることができる。容積効率が大きければ大きいほど、各圧縮サイクルでより多くの流体が圧縮される。往復動圧縮機における非効率性の1つの重要な原因は隙間容積によるものであり、この隙間容積は、送出段階中にチャンバから送出されない圧縮ガスの容積である。
【0010】
吸入弁が早期に開放する場合、ガスの膨張によりチャンバ内部の圧力が吸入圧力P2まで低下する前に、チャンバ内に残っている圧縮空気の一部がチャンバから流出する。しかしながら、吸入弁を開放するために必要な力は、弁の面積および吸入弁の前後の圧力差(すなわち、チャンバ内部の圧力と吸入圧力との圧力差)に比例して大きくなる。このような大きな力を得るには、おそらく作動時間も短い大型のアクチュエータが必要となるであろう。実用レベルでは、吸入弁を早期に開放することは、現在実行可能ではない。
【0011】
よって、吸入弁の早期の開放と同様の効果を有する、石油およびガス産業用の往復動圧縮機に使用可能な方法および装置を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】中国実用新案第201953605号明細書
【発明の概要】
【0013】
実施形態のいくつかは、石油およびガス産業で使用される往復動圧縮機におけるチャンバの膨張段階中に開放されるタイミング弁に関する。タイミング弁の存在および動作により、吸入容積(したがって容積効率)の増大がもたらされ、隙間容積の影響が緩和される。
【0014】
例示的な一実施形態によれば、往復動圧縮機は、チャンバと、タイミング弁と、アクチュエータと、制御器とを有する。吸入弁を介してチャンバに流入する流体はチャンバ内部で圧縮され、圧縮された流体は、吐出弁を介してチャンバから排出される。タイミング弁は、チャンバと、タイミング弁が開放されるときのチャンバ内の圧力よりも低いリリーフ圧の流体量との間に位置する。アクチュエータは、タイミング弁を作動させるように構成される。制御器は、圧縮サイクルの膨張段階中にタイミング弁を開放するため、また、リリーフ圧がチャンバ内の圧力と等しくなったときまたは吸入弁が開放されたときにタイミング弁を閉鎖するために、アクチュエータを制御するように構成される。
【0015】
別の例示的な実施形態によれば、往復動圧縮機の容積効率を向上させる方法が提供される。方法は、往復動圧縮機のチャンバとリリーフ圧の所定量の流体との間に位置するタイミング弁を設けるステップと、リリーフ圧がチャンバ内部の圧力よりも小さい間に、圧縮サイクルの膨張段階中に開放されるようにタイミング弁を制御するステップとを含む。タイミング弁の流れ面積は、往復動圧縮機の吸入弁の流れ面積よりも小さい。
【0016】
別の例示的な実施形態によれば、圧縮サイクルの膨張段階中にチャンバから流体を排出するように圧縮機を改良する方法が提供される。方法は、(1)チャンバとリリーフ圧の所定量の流体との間に位置するタイミング弁を設けるステップと、(2)タイミング弁を作動させるように構成されたアクチュエータを取り付けるステップと、(3)制御器をアクチュエータに接続するステップとを含む。制御器は、チャンバ内の圧力がリリーフ圧よりも大きい間に、圧縮サイクルの膨張段階中にタイミング弁を開放するためにアクチュエータを制御するように構成される。
【0017】
本明細書に組み込まれかつその一部を構成する添付図面は、1つまたは複数の実施形態を例示し、明細書の記述と共にこれらの実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来のデュアルチャンバ往復動圧縮機の概略図である。
図2】理想的な圧縮サイクルを示す圧力対容積のグラフである。
図3】例示的な実施形態による、往復動圧縮機の概略図である。
図4】例示的な実施形態による、タイミング弁の効果を示す圧力対容積のグラフである。
図5】例示的な実施形態による、往復動圧縮機のヘッド端部上の弁の配置を示す図である。
図6】例示的な実施形態による、デュアルチャンバ往復動圧縮機のヘッド端部上の弁の配置を示す図である。
図7】例示的な実施形態による、デュアルチャンバ往復動圧縮機のクランク端部上の弁の配置を示す図である。
図8】例示的な実施形態による、往復動圧縮機の容積効率を向上させる方法のフローチャートである。
図9】別の例示的な実施形態による、圧縮サイクルの膨張段階中にチャンバから流体を排出するように往復動圧縮機を改良する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
例示的な実施形態の以下の説明では、添付図面を参照する。異なる図面における同一の参照符号は、同一または類似の要素を示す。以下の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により定義される。以下の実施形態では、簡潔にするために、石油およびガス産業で使用される往復動圧縮機の用語および構造に関して考察する。しかしながら、次に考察する実施形態は、この設備に限定されるものではなく、他の設備に適用してもよい。
【0020】
本明細書全体を通して、「一実施形態」または「実施形態」という場合、実施形態に関連して記載する特定の特徴、構造、または特性が、開示された主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所で「一実施形態において」または「実施形態において」という表現が見られるが、必ずしも同一の実施形態について言及しているわけではない。更に、具体的な特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態においてあらゆる好適な態様で組み合わせてもよい。
【0021】
下記のいくつかの実施形態では、圧縮サイクルの膨張段階中に開放され、流体が往復動圧縮機のチャンバから流出することを可能にするタイミング弁を使用することにより、往復動圧縮機の容積効率を向上させる。タイミング弁は、チャンバ内の流体の圧力よりも低いリリーフ圧を有する流体量に接続される。
【0022】
図3は、例示的な実施形態による往復動圧縮機100を示している。往復動圧縮機100は、単一チャンバ110を有する。しかしながら、本発明の概念はまた、デュアルチャンバ往復動圧縮機にも適用可能である。
【0023】
ピストン120は、チャンバ110内部の流体を圧縮するために往復運動を行う。ピストン120は、クランクシャフト125から往復運動を受ける。ピストン120は、チャンバ110のヘッド端部115に対して接近離間するように移動する。換言すれば、ヘッド端部115は、ピストン120が沿って移動する方向に垂直である。
【0024】
圧縮される流体は、吸入ダクト135から、吸入弁130を介してチャンバ110に流入する。流体は、圧縮された後に、吐出弁140を介してチャンバ110から吐出ダクト145に向けて排出される。図示の実施形態において、吸入弁130および吐出弁140は、チャンバ110のヘッド端部115上に位置する。
【0025】
タイミング弁150は、チャンバ110内における圧縮サイクルの膨張段階中に流体がチャンバから流出することを可能にするように構成される。タイミング弁150は、アクチュエータ160により作動させる。タイミング弁150は、チャンバ110とチャンバ110内の圧力よりも小さいリリーフ圧を有する所定量の流体との間に位置する。図3では、タイミング弁150が吸入弁135に接続されるが、他の実施形態では、タイミング弁を、タイミング弁150が開放される間のチャンバ110内の圧力よりも低いリリーフ圧を有する別個の量の流体に異なるように接続してもよい。
【0026】
タイミング弁150は作動弁である。タイミング弁を開放するために必要な力は、タイミング弁150の両側の圧力差およびタイミング弁150の流れ面積に比例する。大きな力を発生させるために、大きな(容量の)アクチュエータが必要である。それゆえ、タイミング弁150の流れ面積は、小さな(容量の)アクチュエータ160を使用してタイミング弁150を開放することができるように、吸入弁130の流れ面積よりも小さい(著しく小さい)。
【0027】
制御器170は、圧縮サイクルの膨張段階中にタイミング弁150を開放するように、アクチュエータ160を制御する。アクチュエータがタイミング弁150を開放するのに与えなければならない力が小さければ小さいほど、タイミング弁150をより早期に開放することができる。制御器170は、チャンバ110内の圧力がリリーフ圧と等しくなった後、または吸入弁130が開放した後にタイミング弁150を閉鎖するように、アクチュエータ160を制御する。タイミング弁150は、圧縮サイクルの吸入段階の終了前に閉鎖しなければならない。図3に示す実施形態では、タイミング弁150が吸入ダクト135に接続されるので、リリーフ圧は吸入圧力P2である。
【0028】
吸入弁130は、チャンバ内の圧力が吸入ダクト内の流体の圧力と実質的に等しいときに開放する自動弁であってもよく、この吸入弁は、チャンバと吸入ダクトとの間に位置する。しかしながら、吸入弁は作動弁であってもよく、この吸入弁のアクチュエータ(図示せず)を制御器170により制御してもよい。
【0029】
図4の圧力対容積のグラフは、タイミング弁150を使用する効果を示している。タイミング弁を使用しない場合、図2に示すように、膨張段階1は、ポリトロープ過程pVn=一定(ここで、理想的には断熱過程ではn=γ)であり、チャンバ内の圧力が、吸入弁130を開放するように動作させる吸入圧力P2と等しくなったときに終了する。タイミング弁150は、アクチュエータ160が発生する力によりチャンバ内の圧力がPA(グラフ上のA点)であるときに開放される。タイミング弁150の流れ面積が大きいか、または、タイミング弁が開放された後にピストン120が移動し続けない(つまり、チャンバ110の容積が一定のままである)場合、チャンバ110内で等積過程A−A’が起こったであろう。(つまり、グラフ内の縦線として示す一定の容積VAに対して圧力が低下する)。
【0030】
しかしながら、実際には、タイミング弁150の流れ面積は小さく、タイミング弁が開放された後にも、ピストン120は移動し続ける。チャンバ110の容積を増大させるピストン120の運動により、また、流体がチャンバ110からタイミング弁150を通って流出する理由から、チャンバ110内部の圧力が低下する。グラフの線A−A”は、タイミング弁150の開放後の容積の圧力依存性を表している。線A−A”は、タイミング弁を開放しない膨張に対応する曲線A−(P2,V2)と等積過程に対応する縦線A−A’との間に位置する。タイミング弁150が開放されている間に起こる膨張は、吸入圧力P2と等しいチャンバ110内部の圧力を(タイミング弁が開放されていないときと比較して)より迅速にもたらす。加えて、タイミング弁を使用する際の膨張の終了時の容積V’Aは、タイミング弁を使用しない膨張段階の終了時の容積V2よりも小さくなる。V’A<V2であるので、(吸入段階中に往復動圧縮機のピストンにより掃引されるチャンバの容積と圧縮サイクル中にピストンにより掃引される全容積との比率である)容積効率が増大する。
【0031】
いくつかの実施形態においては、往復動圧縮機に複数のタイミング弁が使用される。例えば、図5は、単一またはデュアル往復動圧縮機のヘッド端部215上のタイミング弁の配置を示している。この配置において、2つのタイミング弁250および255は、ヘッド端部215の中央Oに対して実質的に対称に配設される。吸入弁230および吐出弁240は、ヘッド端部215の中央Oに対して実質的に対称に配設してもよい。
【0032】
図3に示す往復動圧縮機100は、単一チャンバを有する往復動圧縮機である。しかしながら、同じ本発明の概念を、ピストンにより2つのチャンバに分割されたシリンダを有するデュアルチャンバ往復動圧縮機に適用してもよい。タイミング弁をデュアルチャンバ往復動圧縮機の一方または両方のチャンバに設けてもよい。2つの吸入弁330および332、2つの吐出弁340および342、ならびにタイミング弁350をすべて、図6に示すように、デュアルチャンバ往復動圧縮機のヘッド端部315上に配設してもよい。
【0033】
弁はデュアルチャンバ往復動圧縮機のヘッド端部上および/またはクランク端部上に配設してもよい。2つの吸入弁430および432、2つの吐出弁440および442、2つのタイミング弁450および452を、図7に示すように、デュアルチャンバ往復動圧縮機のクランク端部416上に配設してもよい。デュアルチャンバ往復動圧縮機のヘッド端部およびクランク端部は、ピストンが沿って移動する方向に対して実質的に垂直である。クランク端部416は、追加の開口部418を有し、この開口部418を通して、ピストンが(例えば、ロッドおよびクロスヘッドを介してクランクシャフトから)往復運動を受ける。
【0034】
しかしながら、更に別の実施形態において、(1)一方のチャンバの吸入弁、吐出弁、およびタイミング弁は、デュアル往復動圧縮機のシリンダのヘッド端部上に位置してもよく、(2)他方のチャンバの吸入弁、吐出弁、およびタイミング弁は、シリンダのクランク端部上に位置してもよい。
【0035】
図8には、往復動圧縮機の容積効率を向上させる方法500のフロー図が示されている。方法500は、S510にて、往復動圧縮機のチャンバとリリーフ圧の所定量の流体との間に位置するタイミング弁を設けるステップを含む。更に、方法500は、S520にて、リリーフ圧がチャンバ内部の圧力よりも小さい間に、チャンバ内部で行われる圧縮サイクルの膨張段階中に開放されるようにタイミング弁を制御するステップを含む。タイミング弁の流れ面積は、往復動圧縮機の吸入弁の流れ面積よりも小さい。
【0036】
既存の往復動圧縮機を、それらの容積効率を向上させるために改良してもよい。図9には、圧縮サイクルの膨張段階中にチャンバから流体を排出するように往復動圧縮機を改良する方法600のフロー図が示されている。方法600は、S610にて、チャンバとリリーフ圧である所定量の流体との間に位置するタイミング弁をチャンバに設けるステップを含む。方法600は、S620にて、タイミング弁を作動させるように構成されたアクチュエータを取り付けるステップと、S630にて、制御器をアクチュエータに接続するステップとを更に含む。制御器は、チャンバ内の圧力がリリーフ圧よりも大きい間に、圧縮サイクルの膨張段階中にタイミング弁を開放するためにアクチュエータを制御するように構成される。タイミング弁は、往復動圧縮機の吸入弁も接続される吸入ダクトに接続されてもよい。タイミング弁の流れ面積は、チャンバの吸入弁の流れ面積よりも実質的に小さくてもよい。
【0037】
開示された例示的な実施形態は、圧縮サイクルの膨張段階中に開放するように作動させるタイミング弁を使用することにより、吸入容積(したがって容積効率)を増大させ、隙間容積の影響を緩和するために、往復動圧縮機で使用される方法および装置を提供する。この説明は本発明を限定することを意図するものではないことを理解するべきである。逆に、例示的な実施形態は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神および範囲に含まれる、代替物、修正および均等物を包含するように意図されている。更に、例示的な実施形態の詳細な説明では、請求項に記載した本発明が包括的に理解されるように、数多くの特定の詳細事項を記載している。しかしながら、当業者であれば、そのような特定の詳細事項なしに種々の実施形態を実施できることを理解するであろう。
【0038】
本発明の例示的な実施形態の特徴および要素を、特定の組み合わせで実施形態において説明したが、各特徴または要素は、実施形態の他の特徴および要素を伴わず単独で、あるいは本明細書に開示の他の特徴および要素の有無に関わりなく種々の組み合わせで用いることができる。
【0039】
本明細書は、開示された主題の例を用いて、任意の装置またはシステムの製造および使用、ならびに任意の包含される方法の実施を含めて、当業者が開示された主題を実施できるようにする。主題の特許可能な範囲は、特許請求の範囲により定義され、当業者が想到する他の実施例を含み得る。そのような他の例が、特許請求の範囲の範囲内にあるように意図されている。
【符号の説明】
【0040】
1 膨張段階
2 吸入段階
3 圧縮段階
4 送出段階
10 デュアルチャンバ往復動圧縮機
20 シリンダ
22 チャンバ
24 チャンバ
26 ヘッド端部
28 クランク端部
30 入口
32 吸入弁
40 出口
42 吐出弁
50 ピストン
60 クランクシャフト
70 クロスヘッド
80 ピストンロッド
100 往復動圧縮機
110 チャンバ
115 ヘッド端部
120 ピストン
125 クランクシャフト
130 吸入弁
135 吸入ダクト
140 吐出弁
145 吐出ダクト
150 タイミング弁
160 アクチュエータ
170 制御器
215 ヘッド端部
230 吸入弁
240 吐出弁
250 タイミング弁
315 ヘッド端部
330 吸入弁
340 吐出弁
350 タイミング弁
416 クランク端部
418 開口部
430 吸入弁
440 吐出弁
450 タイミング弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9