特許第6179018号(P6179018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179018
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】耐震架構構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20170807BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20170807BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   E04H9/02 311
   E04B1/58 F
   E04G23/02 D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-16501(P2013-16501)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-148783(P2014-148783A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】片山 丈士
(72)【発明者】
【氏名】山下 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 光博
(72)【発明者】
【氏名】大野 正人
(72)【発明者】
【氏名】爰野 将児
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 考文
(72)【発明者】
【氏名】井畔 文彦
(72)【発明者】
【氏名】楠 寿博
(72)【発明者】
【氏名】畔柳 歩
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−040765(JP,A)
【文献】 特開2000−273953(JP,A)
【文献】 特開平11−081469(JP,A)
【文献】 特開平10−280538(JP,A)
【文献】 奥野雄一郎 ほか,木圧着ブレースを用いた耐震補強工法の研究 その1 工法概要および架構実験概要,日本建築学会大会学術講演梗概集,日本,一般社団法人日本建築学会,2015年 9月,構造4,p.699-p.700
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04H 9/02
E04B 1/26
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の架構の構面内に木質系素材からなるブレースを設けてある耐震架構構造であって、
前記ブレースの軸方向においてブレースの端部の近接移動を規制し且つブレースの端部の離間移動を許容する状態でブレースの端部を保持する保持具を、前記架構に取付けるとともに、
少なくとも一端部を前記保持具に保持させる状態で前記ブレースを前記架構の構面内に取付けてあり、
前記ブレースは、前記架構の変形時に、前記ブレースの軸方向において前記保持具を介して前記架構からの圧縮力を受けることが可能であり且つ前記架構からの引張力は受けないように構成されている耐震架構構造。
【請求項2】
前記保持具は、前記ブレースの端部を内装状態で保持する保持筒部を備えるとともに、
前記保持筒部の外周側には、前記ブレースの端部を内部に挿入可能な開閉操作自在な挿入口を設けてある請求項1記載の耐震架構構造。
【請求項3】
前記ブレースの軸方向における前記保持具と前記ブレースの端部との対向面間に緩衝材を介在させてある請求項1又は2記載の耐震架構構造。
【請求項4】
前記ブレースを、所定の重量毎で組付け可能に分割した分割ブレース部材から構成してある請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐震架構構造。
【請求項5】
前記ブレースは、その木質繊維が前記ブレースの軸方向に沿う状態に形成してあると共に、ブレース端面が前記ブレースの軸方向に対して垂直又は略垂直となるように形成してあり、
前記保持具は、前記ブレース端面に対する対向面が、前記ブレース端面と平行又は略平行となるように形成してある請求項1〜4の何れか1項に記載の耐震架構構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震架構構造に関し、詳しくは、架構の構面内に木質系素材からなるブレースを設けてある耐震架構構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の耐震架構構造は、軽量且つ加工の容易な木質系素材を用いて新設又は既設の架構の耐震化(耐震補強)を美麗且つ簡便に行うものである。
【0003】
そして、従来、特許文献1に示すように、鉄筋コンクリート造の柱と梁とで囲まれた矩形空間(架構の構面内の空間)に対して木製(木質系素材製の一例)のブレースを備えた木製の壁体を嵌め込み固定することで、この木製壁体による剛性付与により、地震時の架構の変形を抑止するようにしたものがある。
【0004】
この木製壁体は、矩形空間の内面に沿って木製の角材からなる木製枠部材を鋼材で剛接合するとともに、該木製枠部材の二箇所に対して木製ブレースの端部の各々を鋼材と接着剤とで剛接合して構成されている。
【0005】
つまり、この木製壁体中の木製ブレースは、架構に剛接合された木製の枠部材との剛接合により、地震時等の架構の変形に対して引張応力と圧縮応力の両方を負担して架構の変形を抑止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−220303号公報(図3図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の耐震架構構造では、木製のブレースが引張力を負担するとき、架構とブレースの端部との接合部(剛接合部)そのものにも大きな引張力が作用するため、その大きな引張力で接合部が破損し、ブレースによる補強機能が喪失する問題が生じ得る。
【0008】
また、上述の架構とブレースの端部との接合部の破損を防止するのに、該接合部を大きな引張応力に十分に耐え得る頑強な構造にすることが考えられるが、この場合には、コストの増大や施工性の低下等の別の問題が生じる。
【0009】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、軽量且つ加工が容易な木質系素材からなるブレースを用いて架構の耐震化を美麗且つ簡便に行うことができながらも施工後の損傷も生じ難い耐震架構構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1特徴構成は、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の架構の構面内に木質系素材からなるブレースを設けてある耐震架構構造であって、
前記ブレースの軸方向においてブレースの端部の近接移動を規制し且つブレースの端部の離間移動を許容する状態でブレースの端部を保持する保持具を、前記架構に取付けるとともに、
少なくとも一端部を前記保持具に保持させる状態で前記ブレースを前記架構の構面内に取付けてあり、
前記ブレースは、前記架構の変形時に、前記ブレースの軸方向において前記保持具を介して前記架構からの圧縮力を受けることが可能であり且つ前記架構からの引張力は受けないように構成されている点にある。
【0011】
上記構成によれば、木質系素材からなるブレース(以下、木質系ブレースと略称する場合がある。)に対して圧縮側となる架構の変形(揺れ動き)については、前記保持具によりブレース端部の近接移動を規制する状態で木質系ブレースに圧縮力を伝達するから、地震が発生したとき、木質系ブレースに圧縮力を負担させる状態で架構の変形に抵抗力を発揮させることができる。
【0012】
それでいて、木質系ブレースに対して引張側となる架構の変形については、保持具によるブレースの端部の離間移動の許容により、架構の変形に追従する保持具と、架構の変形に追従しない木質系ブレースの端部とが相対的に離間移動することで、架構とブレースの端部との接合部に引張力が作用するのを抑止することができる。
【0013】
従って、軽量且つ加工が容易な木質系ブレースに圧縮力を負担させる状態で架構の耐震化を美麗且つ簡便に行うことができるとともに、地震時において架構とブレースの端部との接合部に引張力が作用して該接合部が破損する不都合が生じるのを抑止することができる。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、前記保持具は、前記ブレースの端部を内装状態で保持する保持筒部を備えるとともに、
前記保持筒部の外周側には、前記ブレースの端部を内部に挿入するための開閉操作自在な挿入口を設けてある点にある。
【0015】
つまり、この構成によれば、前記保持具の保持筒部の外周側の挿入口を開いた状態で保持筒部の内部に木質系ブレースの端部を挿入し、その後に挿入口を閉じることで、木質系ブレースの端部を保持筒部に保持させることができる。
【0016】
それ故に、保持筒部の挿入口が架構の構面に対して直交する正面側や背面側を向く姿勢で前記保持具を架構に取付けることで、保持具を架構に取り付けた状態からの木質系ブレースの取付けが可能になるから、木質系ブレースの設置作業を容易に行うことができる。
【0017】
また、木質系ブレースの設置後において保持具を架構に残したままでの木質系ブレースの取外しも可能になるから、木質系ブレースの修理や交換等のメンテナンス作業も容易に行うことができる。
【0018】
本発明の第3特徴構成は、前記ブレースの軸方向における前記保持具と前記ブレースの端部との対向面間に緩衝材を介在させてある点にある。
【0019】
つまり、地震時において木質系ブレースに対して圧縮側となる架構の変形が生じたとき、前記保持具によるブレース端部の近接移動の規制により保持具を介して木質系ブレースに圧縮力を伝達するが、架構の変形初期において木質系ブレースの突っ張り力が架構の保持具取付け部位に初動的に一挙に作用し、そのことで、架構の保持具取付け部位(又はブレースの端部)に損傷が生じる虞がある。
【0020】
これに対して、上記構成によれば、木質系ブレースの軸方向における前記保持具と前記ブレースの端部との対向面間に緩衝材を介在させてあるから、この緩衝材の緩衝作用により、架構の変形初期における初動的な木質系ブレースの突っ張り力によって架構の保持具取付け部位(又はブレースの端部)に損傷が生じるのを抑止することができる。
【0021】
本発明の第4特徴構成は、前記ブレースを、所定の重量毎で組付け可能に分割した分割ブレース部材から構成してある点にある。
【0022】
上記構成によれば、所定の重量(例えば、作業車一人で運搬可能な重量等)の分割ブレース部材単位で施工場所に運搬することができるから、前記ブレースの運搬を容易に行うことができる。
【0023】
本発明の第5特徴構成は、前記ブレースは、その木質繊維が前記ブレースの軸方向に沿う状態に形成してあると共に、ブレース端面が前記ブレースの軸方向に対して垂直又は略垂直となるように形成してあり、
前記保持具は、前記ブレース端面に対する対向面が、前記ブレース端面と平行又は略平行となるように形成してある点にある。
【0024】
上記構成によれば、ブレース端面に対して保持具から作用する軸力が、ブレースの木質繊維に沿って作用することになり、木質系ブレースが備えた軸耐力を、フルに発揮することができ、架構全体とした耐震性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】耐震架構構造の正面図
図2】耐震架構構造の要部の縦断面図
図3図2におけるIII−III線断面図
図4図2におけるIV−IV線断面図
図5】(a)ブレースの要部の分解斜視図、(b)ブレースの要部の斜視図
図6】耐震架構構造の分解図
図7】耐震架構構造の拡大分解図
図8】(a)地震時の耐震架設構造の変形(圧縮側)を示す模式図、(b)地震時の耐震架設構造の変形(引張側)を示す模式図
図9】別実施形態の耐震架構構造の正面図
図10】別実施形態の耐震架構構造の正面図
図11】別実施形態の耐震架構構造の正面図
図12】別実施形態の耐震架構構造におけるブレースの横断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、鉄筋コンクリート造の柱1と梁2とからなる架構3の構面内に木質系素材からなるブレース4を設けてある耐震架構構造を示し、この耐震架構構造は、架構3の内面における柱1と梁2の接続箇所である仕口部5のうち、対角方向に分散位置する二箇所の仕口部5に金属製の保持具6を接着剤Jで取付けるとともに、該保持具6の各々にブレース4の端部4Aの各々を保持させて構成してある。なお、架構3は、鉄筋コンクリート造に限らず、鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄骨造等であってもよい。
【0027】
前記保持具6は、図2図3図6図7に示すように、仕口部5の内面における柱1の上端部に対する取付け面7aと梁の端部との取付け面7bとを外面に備えた側面視L字状の取付け板部7(取付け部の一例)と、ブレース4の端部4Aを内装状態で保持する保持筒部8(保持部の一例)とを一体的に備えてなる。
【0028】
そして、仕口部5の内面に対して取付け板部7の各取付け面7a、7bをエポキシ樹脂系の接着剤Jで接着接合するとともに、前記保持筒部8の内部に前記ブレース4の端部4Aをブレース4の軸方向に対応する筒長さ方向の一定範囲で移動自在な状態で保持させてある。
【0029】
つまり、前記保持筒部8の内周面(後述する側板部8a〜8dの内側面)は、前記ブレース4の端部4Aをブレース4の軸方向に沿って移動案内する移動ガイド面を構成する。
【0030】
なお、9は取付け板部7と保持筒部8とに亘る連結板部であり、10は該連結板部9を補強する板状の補強リブである。
【0031】
図2図7に示すように、前記保持筒部8の一端側(取付け板部7の側)の奥側部位には、ブレース4の端部4Aの近接移動を規制する底板部8A(移動規制部の一例)が設けられている。
【0032】
つまり、この保持筒部8は、ブレース4の端部4Aと底板部8Aとの当接によりブレース4の軸方向に圧縮力を伝達可能な状態で、且つ、底板部8Aから保持筒部8の開口面8Dまでの長さ寸法Lの範囲(厳密には、長さ寸法Lから後述する緩衝材11の厚みを差し引いた長さ範囲)でブレース4の端部4Aの離間移動を自由に許容する状態で、ブレース4の端部4Aを保持する。
【0033】
尚、底板部8Aの表面8Aa(ブレース端面に対する対向面に相当)は、ブレース端面4Aaと平行又は略平行となるように形成してあり、且つ、ブレース4の軸方向に対して垂直又は略垂直となるように形成してある。また、ブレース4は、前述のとおり、木質系素材で形成してあり、その木質繊維4cは、図2に示すように、ブレース4の軸方向に沿う状態で形成してある。従って、底板部8Aから作用する圧縮力の作用方向と繊維方向とが一致(又は略一致)し、木質系素材に備えた軸耐力を、フルに発揮することができる。
【0034】
また、図3図6図7に示すように、保持具6の保持筒部8の周壁を構成する4つの側板部8a〜8dのうちの一つの側板部8a、本例では、取付け板部7を仕口部5に取付けた姿勢で架構3の正面側(正面側又は背面側の一例)を向く横側面側の側板部8aを着脱操作自在な蓋部材9(開閉手段の一例)から構成してある。
【0035】
つまり、保持具6は、蓋部材9を残余の保持具本体13から着脱操作することにより、前記ブレース4の端部4Aを架構3の構面に直交する方向に沿って保持筒部8の内部に挿入(又は、保持筒部8の内部から離脱)するための挿入口8Bを開閉操作自在な構成にしてある。
【0036】
前記蓋部材9は、前記側板部8aを構成する基板部9Aと、これの両端部から直交方向の一方側に延びる一対の取付け板部9Bとを備えた横断面視略コの字状の金具から構成してあり、図3に示すように、前記挿入口8Bの開口縁を構成する一対の側板部8b、8dの夫々に対して各取付け板部9Bを外方から重合させた姿勢でビス等の取付け手段Bで取り付けることで、保持具本体13に対して着脱自在に取付けてある。
【0037】
図3図7に示すように、前記保持筒部8の底板部8Aの内面とブレース4の端部4Aとの対向面間には、シーリング材等からなる緩衝材11を介在させてあり、当該底板部8Aとブレース4の端部4Aとの間での初動的な圧縮力の伝達(逆言すれば、初動的な突っ張り力の伝達)を緩衝材11で緩衝し、この初動的な圧縮力で、架構3の仕口部5に損傷が生じるのを抑止するようにしてある。
【0038】
なお、この緩衝材11は、前記保持筒部8の周壁を構成する各側壁部8a〜8dの内面とブレース4の端部4Aの外周面との対向面間にも介在させてある。
【0039】
前記ブレース4は、図4図7に示すように、作業者一人で運搬可能な重量(所定の重量の一例)の4本の分割ブレース部材4aから構成してあり、図5に示すように、これら4本の分割ブレース部材4aを組んだ状態から外周面の各面における一方側に偏倚した箇所の夫々で厚み方向に隣接する二本の分割ブレース部材4aを固定釘12(固定手段の一例)で縫い付けることで、施工現場等の適所で組み付けて構成してある。なお、分割ブレース部材4aは、本例では集成材から構成してある。また、分割ブレース部材4aを固定する固定手段は、固定釘12に限らず、ねじやビス等であってもよい。
【0040】
そして、地震が発生したとき、架構3には、木質系素材製のブレース4に対して圧縮側となる揺れと、ブレース4に対して引張側となる揺れが交互に生じるが、この耐震架構構造では圧縮側及び引張側の各揺れに対して以下のように作用する。
【0041】
まず、前記ブレース4に対して圧縮側となる架構3の揺れについては、前記保持具6に形成された底板部8Aによるブレース4の端部4Aの近接移動の接当規制(図2参照)により、図8(a)に示すように、保持具6を介してブレース4に軸方向に沿う圧縮力を伝達し、ブレース4に圧縮力を負担させる状態で架構3の揺れに対して抵抗力を発揮する。
【0042】
一方、前記ブレース4に対して引張側となる架構3の揺れについては、図8(b)に示すように、ブレース4の端部4Aは架構3の変形に追従せずに保持具6だけが架構3の変形に追従することで、ブレース4の端部4Aと保持具6の底板部8Aとが寸法Aの分だけ相対的に離間移動し、これにより、架構3とブレース4の端部4Aとの接合部(つまり、保持具6と仕口部5との接合箇所)に引張力が作用するのを回避する。
【0043】
従って、この耐震架構構造によれば、軽量且つ加工が容易な木質系素材製のブレース4に圧縮力を負担させる状態で架構3の耐震化を美麗且つ簡便に行うことができるとともに、地震時において架構3とブレース4の端部4Aとの接合部に引張力が作用して該接合部が破損する不都合が生じるのを抑止することができる。
【0044】
上述の如く構成された耐震架構構造は、例えば、以下のようにして構築することができる(図5図7を参照)。
【0045】
前記保持具6と前記分割ブレース部材4aとを施工現場(耐震化の対象となる新設又は既設の架構3の側)に運搬する。前述の如く、分割ブレース部材4aは一人で運搬可能な重量に設定してあるので、容易に運搬することができる。
【0046】
次に、図6に示すように、架構3の二箇所の仕口部5の各々に対して、各保持具6の保持具本体13を、それの挿入口8Bが架構3の正面側を向く同一姿勢で取り付けるとともに、図5に示すように、各分割ブレース部材4aを組み付けてブレース4を構成する。
【0047】
この保持具本体13の取付け作業は、取付け板部7を仕口部5の内面に接着剤Jで接着接合するだけであるので、容易に取り付けることができる。
【0048】
そして、ブレース4の各端部4Aと保持筒部8の内面との間に緩衝材11が介在するように保持筒部8の各内面8a〜8dに緩衝材11を設けた状態で、図6に示すように、架構3の正面側からブレース4を架構3に近接操作してブレース4の各端部4Aを保持具本体13の挿入口8Bを通じて保持筒部8の内部に挿入し、更に、各保持具本体13に対して蓋部材9を取り付け、図1に示す耐震架設構造が完成する。
【0049】
〔別実施形態〕
(1)前記ブレース4を構成する木質系素材は、前述の実施形態で示した集成材に限らず無垢材等であってもよく、要するに、木材繊維を少なくとも一部に含むものであればよい。
【0050】
(2)前述の実施形態では、前記ブレース4の両方の端部4Aを前記保持具6に保持させる場合を例に示したが、前記ブレース4の一方の端部4Aを前記保持具6に保持させれば、他方の端部4Aは別途の接合構造(例えば、鋼材等で剛接合)を採用してもよい。
【0051】
(3)前述の実施形態では、保持具6におけるブレース4の端部4Aを保持する保持部を、ブレース4の端部4Aを内装状態で保持する保持筒部8から構成する例を示したが、例えば、ブレース4の端部4Aの外周面の各面(4面)の夫々の一部(幅方向中間部)に接当する板状又は棒状の接当片を設け、この4本の接当片により、ブレース軸芯に交差する方向への移動を接当規制する状態でブレース4の端部4Aを保持させるようにしてもよい。
【0052】
(4)前述の実施形態では、架構3の二箇所の仕口部5に対し一本の木質系素材製のブレース4を配する場合を例に挙げて説明したが、例えば、図9に示すように、4箇所の仕口部5に対してX字状に二本の前記ブレース4、4´を配してもよい。
【0053】
この場合、例えば、ブレース4、4´の交差箇所において一方のブレース4´を二分割し、それの対向端面間に他方のブレース4の長さ方向中間部を配置した状態で、表側に着脱自在な蓋部材14aを備えた変形筒状の継手部材14で該交差箇所を保持させるようにしてもよい。
【0054】
(5)前述の実施形態では、前記ブレース4を所定重量毎で分割した分割ブレース4aとして、前記ブレース4を縦割した細角形のものを例に示したが、前記ブレース4を横割した短尺のものであってもよい。
【0055】
この場合、例えば、図10に示すように、両端側に有底筒状(又は、無底筒状)の保持筒部15aを備えた継手部材15で分割ブレース部材4aの端面どうしを組み付け保持する構成にしてもよい。
【0056】
また、例えば、図11に示しように、一方の端面に凹部4bを形成し、且つ、他方の端面に凸部4dを形成した分割ブレース部材4aの複数本を、隣接端面間において一方の分割ブレース材4aの凹部4bと他方の分割ブレース4aの凸部4dとを嵌合させる状態で組み付ける構成にしてもよい。
【0057】
(6)前述の実施形態では、前記ブレース4を縦割した分割ブレース4aが、断面正方形の細角形の角材を断面正方形となる状態に組み付ける例を示したが、例えば、図12(a)に示すように、断面長方形の4本の細角形の角材を断面十字形となる状態に組み付けたり、図12(b)に示すように、断面正方形の9本の細角形の角材を断面正方形となる状態に組み付けたり、図12(c)に示すように、複数枚の板材を断面正方形となる状態に組み付けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
3 架構
4、4´ ブレース
4Aa ブレース端面
4a 分割ブレース部材
4c 木質繊維
6 保持具
8 保持筒部
8Aa ブレース端面に対する対向面
8B 挿入口
11 緩衝材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12