特許第6179043号(P6179043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179043
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】液化天然ガス運搬船の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/16 20060101AFI20170807BHJP
   B63B 9/06 20060101ALI20170807BHJP
   F17C 3/00 20060101ALI20170807BHJP
   F17C 13/08 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   B63B25/16 101Z
   B63B25/16 101B
   B63B9/06 Z
   F17C3/00 A
   F17C13/08 302B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-161704(P2011-161704)
(22)【出願日】2011年7月25日
(65)【公開番号】特開2013-23129(P2013-23129A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年4月25日
【審判番号】不服2016-9815(P2016-9815/J1)
【審判請求日】2016年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】506261143
【氏名又は名称】森元 信吉
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】森元 信吉
【合議体】
【審判長】 氏原 康宏
【審判官】 出口 昌哉
【審判官】 尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−236583(JP,A)
【文献】 特開2003−252287(JP,A)
【文献】 特開2000−177681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 9/06
B63B 25/16
F17C 3/00
F17C 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上の本船外において、躯体容器の外面に外方に突出する補強用の躯体容器側桁材を縦横に設けて前記躯体容器を組み立てる第1の工程と、
地上の本船外において、前記躯体容器の内面を保冷材及びメンブレンで覆う保冷防壁工事を行って液化天然ガスタンクを形成する第2の工程と、
前記第2の工程後に、前記液化天然ガスタンクを、内殻と外板とを有する二重船殻構造を持った本船の船倉内に搭載する第3の工程と、
前記躯体容器の外面に前記第1の工程により予め設けた躯体容器側桁材を、二重船殻構造を持った前記本船の内殻の底板及び縦隔壁に予め溶接により固定した内方に突出する内殻側桁材に接合する第4の工程を含む液化天然ガス運搬船の製造方法。
【請求項2】
一つの船倉に液化天然ガスタンクを左右に並べて設置した請求項1に記載の液化天然ガス運搬船の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液化天然ガス運搬船の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日建造されるLNG運搬船のタンク構造方式は大きく分けて、自立球形タンク、自立角型タンク(SPB)方式、メンブレンタンクに分類することができる。独立球形タンクは、アルミ合金で作られた自立式の球形タンクであり、その赤道部から伸びるスカートを介して、二重船殻で作られた船倉内に支持される。保冷工事はタンクの外面に施される。球形タンクは球形であるが故に、船体の大きさの割に十分なタンク容積を稼ぐことができないという欠点がある。この方式では、荒天時に積荷が波立っても、タンクに損傷が生ずることはほとんどない。
【0003】
自立角型タンクは、二重船殻構造の船倉内に方形タンクを収めたもので、アルミ合金製の方形タンクの外面に保冷材が設けられ、方形タンクを補強する桁材は、タンク内側に設けられる。このものでは、方形タンクと内殻の間にボイドスペースが必要であり、その分、タンクの容積効率が小さくなる。他方、タンク内に桁材を有するので、液荷のスロッシングが起こりにくいという利点がある。
【0004】
次にメンブレン方式であるが、これは二重船殻構造で作られた船倉内面に、保冷材を間に挟んでニッケル鋼やステンレス鋼の薄板(メンブレン)を張ってLNGタンクを形成する。この方式では、船倉容積のほとんどをタンク容積として利用することができる利点がある。反面、液荷のスロッシングによって、メンブレンや保冷材が損傷を受けやすいという欠点がある。また、保冷工事、特にメンブレン同士の溶接が複雑であり、建造に長い工期を要するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、荒天時における液荷のスロッシングに強く、しかも、短い工期で建造することのできるLNG運搬船を提供とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の液化天然ガス運搬船の製造方法は、地上の本船外において、躯体容器の外面に外方に突出する補強用の躯体容器側桁材を縦横に設けて前記躯体容器を組み立てる第1の工程と、
地上の本船外において、前記躯体容器の内面を保冷材及びメンブレンで覆う保冷防壁工事を行って液化天然ガスタンクを形成する第2の工程と、
前記第2の工程後に、前記液化天然ガスタンクを、内殻と外板とを有する二重船殻構造を持った本船の船倉内に搭載する第3の工程と、
前記躯体容器の外面に前記第1の工程により予め設けた躯体容器側桁材を、二重船殻構造を持った前記本船の内殻の底板及び縦隔壁に予め溶接により固定した内方に突出する内殻側桁材に接合する第4の工程を含む点に特徴がある。
【0007】
このLNG船は、LNGタンクの保冷およびメンブレン工事を、地上で行うことができるので、従来に比べて建造のための工期を大幅に短縮することができることが特徴である。また、船倉内にLNGタンクを2列に配置すれば、個々のLNGタンクの水平断面積が小さくなり、スロッシングが生じ難くなる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】LNG運搬船の船体中央部横断面である。
図2】LNG運搬船の船体中央部水平断面図である。
図3】建造中のLNG運搬船の船体中央部横断面である。
図4】他の実施例を示すLNG運搬船の船体中央部横断面図である。
図5】鉱石原油兼用船から改装したLNG運搬船の船体中央部横断面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図3に示すように、このLNG運搬船は二重船殻構造を有し、内殻1(すなわち、内底板1aおよび縦隔壁1b)で囲まれるかたちで船倉2が形成される。内殻1と外板3の間のスペースはバラストタンク4として用いられる。
これらの船倉2の各々に、予め地上で組み立てられたLNGタンク5が搭載される。この種のタンクは小さいほど本船への搭載が容易になるので、この実施例では、図1および図2に示すように、各船倉2に小型のLNGタンク5が4個ずつ搭載されている。また、タンクを小型にすると、水平断面積が小さくなり、荒天時にタンク内で液荷が激しく波打つ現象(スロッシング)が生じにくくなり、タンク内面の保冷材の損傷が少なくなる長所もある。
【0010】
各LNGタンク5は、躯体容器6を備えており、その容器の内面に保冷材7(例えば、補強ポリウレタンフォーム)を張り、さらにその上をインバーなどの低温材で作られたメンブレン(一次防壁)8で隙間なく覆う。なお、必要に応じ、保冷材7を二層構造にして、その間に二次防壁バリアを設けることができる。従来のメンブレン式LNGタンクでは、二重船殻構造の内殻(すなわち、内底板および縦隔壁)の表面に直に保冷材とメンブレンを張り付けていたが、この実施例の船では、同様の保冷防壁工事を、内殻でなく躯体容器の内面に施すが特徴である。
【0011】
LNGタンク5を本船に搭載するために吊り上げたときや、液荷を積んだときにタンクが変形しないよう、躯体容器6には十分な剛性を持たせることが必要である。このため、躯体容器6の外面に縦横に桁材9を設け、それら桁材と桁材の間には小骨(スティフナ)10を密に取り付けて補強する。躯体容器6は、液荷(LNG)に直に接することはないので、アルミ合金など低温材で作る必要はなく、鋼製タンクとすることができる。
【0012】
地上で組み立てられたLNGタンク5はクレーンでつり上げ、船倉2の中に吊り下ろすようにして本船に搭載する(図3)。船倉内の内底板1aおよび縦隔壁1bには、前もって桁材11を溶接しておき、これら桁材に、LNGタンク5の外面に取り付けてある桁材9を重ね合わせるように、または、突き合わせるように溶接する。また、図2に示すように、船倉2と船倉2を分ける横隔壁12にも、前もって桁材11を取り付けておき、それら桁材に、タンクの前面または後面に取り付けておいた桁材9を溶接する。さらに、左右タンク5,5の対向面および前後タンク5,5の対向面からそれぞれ突出する桁材9同士も互いに溶接する。このようにLNGタンクの据付時、現場溶接が必要となるので、躯体容器6と内殻1の間、躯体容器6と横隔壁12の間、さらには隣接するタンク5とタンク5の間に、それぞれ、作業員が溶接作業するための作業空間13を残しておくようにする。
【0013】
各LNGタンクの躯体容器6は、このように、桁材9,11を介して二重船殻構造と結合され、LNGタンク5は船殻に強固に支持される。また、タンク5同士が隣接する箇所では、桁材9同士が結合され、同様に強度の一体性が保たれる。このように、この船のLNGタンクは一つ一つが完全な独立タンクではないで、躯体容器6は上記の自立角型独立タンクほどの強度は必要としない。
船倉2にLNGタンク5を搭載し終わったら、鋼板14を張ってタンクの上を塞ぐ(図3)。
【0014】
図4は、一つの船倉2に一つだけLNGタンク5を収めた場合を示しており、比較的小さな船に向いた構造である。
【0015】
以上説明したタンク構造は、既存の船をLNG船に改装するときにも適用することができる。この場合、本船が改装のためにドックに入る前に、本船に搭載すべきLNGタンク5をドックにおいて作って準備しておくことができ、改装のための工事日数が大いに短縮できるという特徴がある。
【0016】
LNG船に改装しやすい船として、鉱石専用船または鉱石原油油兼用船が挙げられる。図5は鉱石原油兼用船から改装する場合を示したもので、左右縦隔壁15,15の間に形成されている鉱石艙をそのまま船倉16として利用し、その中にLNGタンク5をいくつか、例えば2列2行、合計4個を配置する。鉱石船は上甲板にハッチウエイ17を有しているので、これを利用して、ここからLNGタンク5を船倉の中に搭載することができる。ハッチウエイは後で塞ぐ。
【符号の説明】
【0017】
1 内殻
2 船倉
5 LNGタンク
6 躯体容器
7 保冷材
8 メンブレン
9 桁材
11 桁材
13 空間
図1
図2
図3
図4
図5