特許第6179046号(P6179046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サーティ エス.ピー.エー.の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179046
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】フレキシブル回路を作る方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/08 20060101AFI20170807BHJP
   B23K 26/351 20140101ALI20170807BHJP
   B23K 26/57 20140101ALI20170807BHJP
   C23C 14/20 20060101ALI20170807BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20170807BHJP
   D06M 10/00 20060101ALI20170807BHJP
   D06M 11/83 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   H05K3/08 D
   B23K26/351
   B23K26/57
   C23C14/20 Z
   C23C14/14 D
   D06M10/00 K
   D06M11/83
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-530499(P2015-530499)
(86)(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公表番号】特表2015-536038(P2015-536038A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】IB2012001724
(87)【国際公開番号】WO2014037755
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2015年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】512200310
【氏名又は名称】サーティ エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】カノニコ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】ルシグナノ,カルミネ
【審査官】 小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−508831(JP,A)
【文献】 特開2007−184457(JP,A)
【文献】 特開2011−076991(JP,A)
【文献】 特開昭57−115785(JP,A)
【文献】 特開2000−273762(JP,A)
【文献】 特開平11−350350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/08
B23K 26/351
B23K 26/57
C23C 14/14
C23C 14/20
D06M 10/00
D06M 11/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基板上にフレキシブル回路作るため方法であって、
密着し、均一なメッシュの正方形開口部を有する精密な織物であって、第1の面および第2の面を有する織物に基づく単繊維を用意すること、および、
前記第1の面および前記第2の面の一方または両方に金属被覆を施し、所望の回路のパターンを形成する為に、織物の燃焼、溶融または劣化現象を生じさせないかつ、ポリマーバルクまたはポリマーバルクの表面を修正せずに前記金属被覆によって吸収されるように適応されレーザービームによる迅速かつ局所的な蒸によって前記織物から前記金属被覆を除去することを含み、
前記織物は、糸/cm(4〜600)、糸直径(100〜500ミクロン)、織り合わせ、重量(15〜300g/平方メートル)、厚さ(15〜1,000ミクロン)の繊維構造を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記レーザービームは、100MHz〜500MHzの周波数、200ns〜20フェムト秒のレーザーパルス持続時間によって、連続動作方式またはパルス動作方式のどちらかで動作し、それによって、前記金属被覆の蒸が容易になり、熱拡散を制限する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザービームは1,080nm〜354nmのレーザービーム波長を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザービームは5〜100Wのレーザービーム出力を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザービームは、スポットサイズが10〜200ミクロンであるレーザービームスポットを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記レーザービームは、ダイオードレーザー、固体レーザー、二酸化炭素レーザーである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
変位マイクロメーター調整手段を含む合焦レンズシステムによって前記レーザービームを前記織物に焦点を合わせることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
デカルト軸、ロボットアーム、レンズシステム、および、1つまたは複数の検流計ヘッド反射鏡によって前記レーザービームを駆動することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザービームおよび織物を、請求項8に記載の前記レーザービームおよび前記織物の組み合わせた変位によって、かつ、前記織物の同時変位によって形成される変位経路から変位させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属被覆は、前記織物の片面または両面から同時に除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザービームによって前記金属被覆の蒸中に前記織物が劣化しないようにするための冷却システムを設けることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記金属被覆は10〜5,000nmの厚さを有し、前記被覆は単層または多層被覆である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記金属被覆は、ニッケル、金、鋼鉄、銅、銀、アルミニウム、クロム、チタン、スズ、インジウム−スズ酸化物、亜鉛−アルミニウム酸化物、スズ−フッ素酸化物、スズ−アンチモン酸化物から選択される、金属、それらの合金および半導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記織物は、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンの単糸から作られ、2,500ミクロンから0ミクロンまでのメッシュ開口を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記織物は発汗性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記織物は導電性パターン織物である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル回路を作る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、フレキシブル回路は主に、導電パターンをポリエステルおよびポリイミドなどのポリマー材料の薄膜上に析出した後、作られる回路に関連しない部分を除去するための化学的除去プロセスを行うことによって作られる。
【0003】
フレキシブル回路を、適切に金属化された繊維基板によっても作ることができる。
【0004】
本明細書では、材料が主に、基板との化学的ラジカル反応によって除去される周知のエッチングプロセスについても述べる。
【0005】
金属化織物素材上にあらかじめ設定されたパターンを作成するためのエッチング化学プロセスが行われる。
【0006】
化学エッチングプロセスの第1段階は、所望のパターンを金属化織物上に形成するための機能性マスクを準備することである。
【0007】
フォトリソグラフィープロセスまたはフォトエッチングプロセスによって、このように作られたパターンは、そのマスクから、繊維基板の表面を覆う紫外線放射感応性材料の薄層に転写される。
【0008】
対象のフレキシブル電子的要素を生成するために、金属層を覆う織物素材の非マスク部を選択的に除去するためのエッチングプロセスまたは化学プロセスが行われる。
【0009】
フォトリソグラフィーステップは、
−基板に感光性薄膜(レジスト)を施すこと、
−レジスト薄膜を、基板に接触しているフォトリソグラフィーマスク上で画定されるパターンによって覆われていないその領域において紫外線放射に露光させること、
−レジスト薄膜をその露光領域において現像すること(いわゆるポジプロセス)、
−感光薄膜の下にある金属薄膜を当該感光薄膜によって覆われていない領域においてエッチングすること、
−ストリッピングを行うこと、である。
【0010】
現像は、主としてパターンの品質に影響を及ぼす動作ステップである。
【0011】
エッチングは、余分な金属を取り除き、かつ、設計された回路接続のみを残すことから成る、トレーシング要素に対して使用されるプロセスである。
【0012】
酸浴槽によって除去が行われる。
【0013】
エッチング試薬、エッチング時間および関連する温度、ならびに、撹拌は、このプロセスを制御する主な因子である。
【0014】
ストリッピングは、依然存在する感光性薄膜を除去するために行われるプロセスである。
【0015】
ストリッピング手順が、下にある金属薄膜に負の影響を及ぼさず、それによる異物混入を引き起こさないことが重要である。
【0016】
特許文献1は、請求項1の全文を明らかにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国再発行特許発明第2011/217892号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の趣旨は、今までにないフレキシブル回路、および、当該フレキシブル回路を作るための今までにないプロセスを提供することである。
【0019】
上述した趣旨の範囲内において、本発明の主な目的は、電子機器を、これまで使用されなかった応用分野および場所において使用可能にするフレキシブル回路を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、今までにない、興味深いアスペクト比を有するフレキシブル回路を作る方法を提供することである。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、電子機器のさらなる小型化および改良を可能にするような方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の一態様によると、上述した趣旨および目的、ならびに、以下でより明らかとなるさらなる他の目的は、導電パターンが集積されている、合成単糸の正方形メッシュの精密な織物を含むフレキシブル回路の基盤を含むことを特徴とするフレキシブル回路によって実現される。
【0023】
上記フレキシブル回路を作る方法は、合成単糸織物の表面全体にわたって金属材料を施すための施すステップと、その後に行う、あらかじめ設定されたパターンを実現するために余分な金属を除去するための除去ステップとを含む。
【0024】
本発明のさらなる特性および利点は、以下の開示において示されるが限定はされない例によって示される、本発明の好ましくはあるが排他的でない実施形態の以下の開示から、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0025】
述べたように、本発明によるフレキシブル回路は、合成単糸の均一なメッシュの精密な織物素材に基づく。
【0026】
非常に均一な繊維は、織物全体にわたって密着したメッシュ開口、および、高い機械的強度の加工特性を有し、これによって、主題の精密な単糸織物素材は、非常に良好な弾性、軽量、発汗性、精密さ、性能の均一性を要する応用全てに対する基本的材料として理想的な解決法となる。
【0027】
上記の非常に均一な織物素材は、重量、厚さ、表面特性、温度性能に関して、ポリマー薄膜、TNT、多重糸織物、紙などの他のフレキシブル基板よりもさらに高い一定の性質を示す。
【0028】
特徴的な均一性は、織物ロール全体に沿って、バッチごとに一定に保持される。
【0029】
上記の織物は、非常に厳密な許容差で作られることによって、あらかじめ設定された高い流れ透過性、および、調節可能かつ再現可能な電気的特性を有する繊維基板が提供される。
【0030】
特徴的な均一性は、対応して均一な細孔サイズの単糸性質、および、織り合わせる際に使用される単糸によってもたらされる。
【0031】
また、主題の精密な織物は、大気中物質、水分および湿気に対して非常に良好な抵抗力を有し、工業規模で安定した再生可能な品質で作ることができる。
【0032】
さらに、本発明のフレキシブル回路に使用される主題の織物は、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンの単糸を根幹として作られ、2,500ミクロンから0ミクロンまでのメッシュ開口を有する。あるいは、アラミドファイバー素材から作られた多重糸織物を使用することも可能である。
【0033】
単糸織物素材の繊維構造は以下の特性:4〜600糸/cm、10〜500ミクロンの糸直径、織り構造、15〜300g/平方メートルの重量、15〜1,000ミクロンの厚さを有することができる。
【0034】
主題織物のいくつかの変形は、本発明のフレキシブル回路を作るための基板として使用されてよく、本明細書で開示された方法によって作られた織物は、発汗性があり、モジュール式で、高度なフレキシブル特性を有し、さらに、改良された持続期間および耐疲労性をもたらす機械的特性も有する。出発織物素材として、洗浄され熱的に固定された「白」織物、着色織物、プラズマ加工された織物、または、疎水性、親水性、抗菌性加工された織物などを使用することができる。
【0035】
本発明によると、本明細書において、繊維基盤上の集積フレキシブル回路を作るための方法も提供される。
【0036】
本明細書において、「フレキシブル電子機器」という表現を用いた場合、フレキシブル電気および電子回路が意図される。
【0037】
主題の精密な合成単糸織物においてフレキシブル導電要素を集積させるために使用されるシステムは、いくつかの技術の組み合わせに基づいた今までにないプロセスである。
【0038】
その結果には、対象応用分野に向けて設計された機能性、ならびに、改良された柔軟性、軽さがあり、集積する性質、形状およびサイズ性質を有する、複数の電気および電子要素が含まれる。
【0039】
プロセスは、合成単糸織物の片面または両面上に金属材料を施すステップを含む。当該ステップは、本発明に従って、スパッタリングもしくはガルバニック析出によって、CVD、PVDのプロセスを交互に行うことによって、化学析出によって、または、合成単糸織物上に異なる金属シート要素を交互に積層することによって実行されるのが好ましい。
【0040】
織物に施された金属被覆は、10nmから5,000nmまで幅がある厚さを有することができ、被覆は、単層または多層被覆配置構成であってよい。
【0041】
上述した金属被覆は、好ましくは、ニッケル、金、鋼鉄、銅、銀、アルミニウム、チタン、クロム、スズ、インジウム−スズ酸化物、亜鉛−アルミニウム酸化物、スズ−フッ素酸化物、スズ−アンチモン酸化物から選択される、さまざまな金属、それらの合金および半導体で構成されてよい。
【0042】
金属除去ステップは、上記で開示された方法によって金属被覆された織物に施すことができるいわゆる「レーザーエッチング」プロセスによって、前記金属の迅速かつ局所的な蒸発によって実行される。
【0043】
本発明による、今までにない合成単糸の正方形メッシュの織物を作るための方法は、開始糸表面(その織り合わせ前)が金属化されていないこと、織物の2つの表面のうちの少なくとも1つが少なくとも部分的に金属化されていること、および、重なっている糸の接触面の一部が前記表面の端部で金属コレットを形成するために金属化されていないことを特徴とする。
【0044】
合成単糸織物は、主題方法によって作られることで、2つの表面のうちの少なくとも1つにおける任意の配置構成またはパターンの当該織物の部分的な金属化は、重なり合う糸接触面の端部で形成する金属コレットと共に、同じ糸上で選択された二箇所間、同じ方向だが異なる糸上で選択された二箇所間、異なる糸で任意の織物箇所間の異なる方向と考えられる二箇所間に、所望の導通/電気伝導性をもたらす。
【0045】
よって、主題方法によって、重なり合う糸間の非金属化接触面部分、および、前記面の端部間の金属コレットによって、所望の電気伝導性質、改良されたサイズ安定性、および、同じ金属合金によって作られ、かつ、重なり合う糸接触面上でも金属化されている同じタイプの金属化織物に対する重量の低減がもたらされる。
【0046】
これに関連して、主題方法によって、エッチングレーザー方法によって作られた金属化正方形メッシュの単糸織物から金属物質を除去することによって、すなわち、迅速かつ局所的な蒸発によって金属を織物から除去することによって、パターン、すなわち、フレキシブル回路が作られることを指摘しなければならない。
【0047】
このことは、結果として、特異的に設計されたレーザー光源が、織物の燃焼、溶融または劣化現象が生じないように選択されることによって実現される。
【0048】
上記で開示されたプロセスを、比較的広範な合成単糸織物に応用することができる。当該合成単糸織物は、PET、PA、PES、PI、PAI、PPS、PEEK、PTFEといった、織り合わせにおいて使用される単糸の化学的性質によって、ならびに、仕上げおよび表面加工動作(洗浄された熱硬化性の「白」織物、着色織物、プラズマ加工された織物、金属化織物など)のための繊維の織り構成(糸/cm、糸直径、織り合わせ、重量、厚さ)によって、互いに区別されている。
【0049】
上記で開示された2つのプロセス段階および開連の方法を、実行される応用に基づいてフレキシブル回路を実現するために、最も適した組み合わせで応用することができる。
【0050】
スパッタリング被覆は、繊維表面上の金属または非金属被覆を物理的に析出するための、最もフレキシブルな方法のうちの1つである。
【0051】
被覆材料は、金属プレートの形で、陰極として真空チャンバに導入される。
【0052】
当該チャンバを真空化した後、そのチャンバにプロセスガスが供給される(本明細書では、その大きい原子量に起因して従来使用されているアルゴンである)。その後、高電圧を印加し、ガスが導入される。
【0053】
アルゴン陽イオンに陰極で加速プロセスを施し、その後、原子を金属プレートから放出して、チャンバにおいて均質的にかつ均一に配置された単糸織物上で析出する。
【0054】
多数の他の真空析出方法とは異なって、材料の溶融は生じず、それゆえに、材料(主に、金属および合金であるが、有機材料も含む)を高効率および高度な制御によって析出することができる。
【0055】
使用に好ましい金属および合金は、鉄鋼、チタン、銅、アルミニウム、クロム、貴金属である。
【0056】
より具体的には、反磁性合金および金属のスパッタリングを行うことによって析出することができる。
【0057】
上記と同じ技術および機器によって、反応性スパッタリングを行うことができる。プロセスガスに加えて、プロセスチャンバには、TiOまたはTiNなど、析出した金属を窒化物または酸化物にして基板上に形成するために、窒素または酸素といった反応性ガスが供給される。
【0058】
これに関連して、絶縁性または導電性を有する両方の単糸織物上で、スパッタリングを行うことができることを指摘しなければならない。
【0059】
さまざまな材料で構成されるさまざまな陰極をスパッタリングシステムに供給することができ、それによって、多層システムを作ることもできる。
【0060】
さらに、反応性ガスの組み合わせを変化させることによって、単層の組み合わせを修正することができる。
【0061】
この方法によって作られた外被の厚さは、数10nmから数10ミクロンまで変化する。
【0062】
プロセス速度は、作られる金属化パターンの厚さに応じて、0〜20m/分の範囲で変化してもよい。
【0063】
いわゆる「マグネトロンスパッタリング」方法において、析出システムは、静磁場を生成するために設計された受動デバイスを使用する。
【0064】
(ローレンツ力を受けた)荷電粒子およびイオンは、特定の界磁束線によってオフセットされ、それによって、層が析出されるべき対象に対して数回衝突し、より多くの材料がプラズマに導入されるため、プロセス歩留まりを大幅に向上させる。
【0065】
マグネトロンスパッタリング装置は、4マグネトロンまで含むことができる。
【0066】
プロセスパラメータは、さまざまな性質の金属層(作られたパターンのさまざまな伝導性値ならびに析出された層のさまざまな厚さおよび重量(g/m))を得るように変更される。
【0067】
金属層の特性は、プロセスパラメータを適正に設計することによって調節可能である。
【0068】
スパッタリングプロセスを、環境条件(圧力/真空度、プロセスガス)といった、加工チャンバにおいて配置された対象に対するそのパラメータ(基板が加工される速度、発生器電力など)によって制御することができる。
【0069】
スパッタリング析出は、非常に良品質の導電薄膜を実現可能とし、また、特異的に設計されたアプローチにより、集団状態(on−mass)の位相における出発原料とは異なる表面および審美性を実現可能とする。
【0070】
スパッタリングによって、無比の利点の組み合わせが提供される。スパッタリングは、他の被覆技法の中で最も清潔な方法であり、経済効率が良く、可能な限り薄い被覆厚をもたらす。スパッタリングは、乾燥低温プロセスであり、それゆえに、繊維基板に化学的または熱的影響を与えず、その基本特性を維持する。
【0071】
また、この方法は、薄膜と基板との間を、ファンデルワールスの力によって分子レベルで溶接するため、破壊できない結合をもたらす。当該方法は、冷間転写タイプのプロセスであり、所望タイプの単糸織物それぞれにおける広範な導電材料または絶縁材料のどちらかを析出するために使用可能であるため、他の被覆方法よりも大きい動作上の柔軟性をもたらす一方、基板全体にわたって、較正された均一な伝導性をもたらす。
【0072】
さらには、ガルバニック電着金属化は、電流を利用することによって所定の表面上に金属被覆を作るためのプロセスを表す。
【0073】
金属および金属合金電着は、水溶液に、被覆を形成するために使用される金属塩類である主要構成要素を電解することで構成される。
【0074】
いわゆるガルバニック槽を構成し、析出される金属塩の水溶液を含むバットまたはたらいにおいて、2つの電極が配置される。
【0075】
前記2つの電極に対して、電流発生器によって電位差が加えられる。
【0076】
このような条件下で、析出される金属のカチオンは、(負に帯電している)陰極の方へ変位することになるのに対し、アニオンは、(正に帯電している)陽極の方へ変位することになる。
【0077】
2つの発生器電極間に加えられた電位差によって生成された電界の効果の下で、カチオンは負極(陰極)の方へ移動し、アニオンは正極(陽極)の方へ移り、それによって、電流が溶液を通るようにする。
【0078】
電極に接触すると、電子の受け渡しによって、陰極還元および陽極酸化に対して、溶液内イオンに対する2つの酸化還元反応が生じる。
【0079】
このプロセスはいわゆる「電気分解」である。
【0080】
電解槽において、被覆する物品をDC電流源の負極に接続して陰極を形成し、それに対して、陽極を当該電流源の正極に連結して電気回路を閉じる。
【0081】
自由に移動可能な溶液中の金属カチオンは、陰極表面上に放電され、その陰極表面は薄い金属層によってゆっくりと覆われる。
【0082】
一般的に、陽極は、析出される金属のプレートまたは棒によって構成され、電気分解中、陰極上に放電される溶液中のイオンを供給するために消費される。
【0083】
電極プロセスは、銀および金などの貴金属、ならびに、ニッケル、鉄、亜鉛および銅などの常金属の両方を含むことができる。
【0084】
析出された結晶構造、ならびに、導電性、表面硬さ、耐摩耗性および均一性などのその機械的および物理的性質は、以下の主要動作パラメータに左右される。
【0085】
−槽中の電解液の組成および濃度
−電流密度
−電極に印加される電圧
−温度
−pH
−ガルバニック槽の撹拌
槽が動作する所定の電流密度値(A/dmで表される)に対して、通常は数10ミクロン以下の析出される金属層に対して、析出する速度または割合を知っていることで、所望のまたは対象の厚さを析出するために必要な時間を設定するのに十分である。
【0086】
金属箔または金属シートを積層することによる金属の応用は、特異的に設計された圧力および温度を使用することによって、複合多層構造を作ることで構成される。
【0087】
積層された銅層は、典型的には、18、35または70μmの一定のあらかじめ設定された厚さを有する。
【0088】
以下、上記の技法または方法のうちの1つを応用することによって金属化された合成単糸織物におけるレーザーアブレーションプロセスについて開示する。
【0089】
片面または両面のどちらかに対して同時に実行可能である所望の金属を、迅速かつ局所的方法で、織物の燃焼、溶融または劣化現象が生じないように適応された、特異的に設計されかつ選択されたレーザー光源によって蒸発するための方法が提供される。
【0090】
レーザーアブレーションプロセスを受けた材料は、片面または両面上に金属被覆を施したポリマー単糸織物を含む。当該ポリマー単糸織物は、さまざまな繊維構成、重量、厚さ、および、金属化タイプ(好ましくは、ニッケル、金、鋼鉄、銅、銀、アルミニウム、クロム、チタン、スズ、インジウム−スズ酸化物、亜鉛−アルミニウム酸化物、スズ−フッ素酸化物、スズ−アンチモン酸化物から選択されるさまざまな金属、その合金および半導体)を有する。
【0091】
使用されるレーザービームは、ポリマーバルクがレーザービーム自体に対して透明であるため、当該ポリマーバルクを修正せずに金属被覆を施すことによって吸収されるように設計されなければならない。
【0092】
さらに、前記レーザービームは、低出力密度および高出力密度のビームであるのが好ましく、好ましくは、約1,000nm、または、1,080nmから354nmの波長を有する。当該レーザービームは、好ましくは100Hz〜500MHzの周波数によって、連続方式またはパルス方式のどちらかで動作することができる。
【0093】
パルス持続時間は、好ましくは、200ns〜10フェムト秒であり、それによって、金属層の蒸発が容易になり、熱拡散を下部基板に制限する。
【0094】
上記応用に対して、ダイオードレーザーが使用されるのが好ましいが、適切な修正によって、固体レーザー、ファイバーレーザー、または、二酸化炭素レーザーを使用することもできる。
【0095】
レーザービームは、移動または変位のマイクロメーター調整を行って、レンズ組立体またはシステムによって金属化織物に焦点が合わせられ、織物全体のビームの移動は、デカルト軸、ロボットアーム、レンズシステム、および/または、1つもしくは複数の、検流計ヘッドと併せた反射鏡によって実現可能である。
【0096】
さらに、織物全体のレーザービームの変位は、ビームおよび織物の組み合わせた変位によって、すなわち、それぞれの場合2つの支持部材間でわずかに張力をかけて保持されなければならない織物の変位と同時に、上記で示した方法のいずれかによって、実現可能である(好ましくは、けん引力および逆方向けん引力によってわずかに張力をかけられた織物ロールをレーザーヘッド下に摺動させる)。
【0097】
多層金属被覆または他の大きいサイズの織物がアブレーションされる場合、設計された金属の被覆厚および蒸発時の潜熱の組み合わせは、(伝導によって)ポリマー基板への伝熱を生じさせるようなレベルを実現する。これによって、バルクポリマーの劣化または溶融が引き起こされる場合があるため、迅速な熱放散をもたらす冷却システムを設ける必要がある。
【0098】
強制空気もしくは冷凍流体冷却システム、または、冷却槽を使用することができ、すなわち、冷却たらいにおいて織物を部分的に浸漬させることによって使用することができる。場合によっては、厚さ、または、一般に、除去される物量は大きいものであり、除去された金属粒子がプロセスの煙霧によって伝達されないように、かつ、再び織物表面上で析出されないようにすることで、パターンの審美性に負の影響を及ぼさないようにする、特異的に設計された吸気システムを使用するべきである。
【0099】
金属化単糸織物に施されたレーザーアブレーションプロセスは、最適な波長の選択に基づいている。その最適な波長は、金属によって吸収され、(合成単糸を構成する)ポリマーを通り、ポリマーによって吸収されない。
【0100】
レーザービームは好ましくは、1,080nm〜354nmの波長、5〜100Wのレーザー出力、および、好ましくはスポットサイズが10〜200ミクロンであるレーザースポットを有する。
【0101】
上述した波長を有するレーザービームは、単糸織物の両側で衝突/動作してもよい。当該レーザービームは、金属によって吸収され、蒸発によって金属を除去し、エッチングまたは修正されることなく、選択されたレーザー波長に対して透明であるポリマーを通り、下にある金属によって吸収されて、蒸発によって金属を除去する。
【0102】
さまざまなタイプの織物上で実験的に使用されたレーザー光源は、仕上げおよび金属化動作のためにそれら糸の化学組成、繊維構成(糸/cm、糸直径、織り合わせ、重量、厚さ)により区別されており、それらレーザー光源は次の2つ:最大出力が10W、レーザー発振波長が1,065nm、最小スポットサイズが50ミクロンのレーザー光源、および、最大出力が30W、発振波長が1,070nm、最小スポットサイズが80ミクロンのファイバーレーザー光源とされている。
【0103】
レーザースポットサイズが小さくなるほど、使用される基板によって、すなわち、糸/cm数および糸サイズによって最終結果が大幅に影響を受けたとしても、より高い解像度値を実現することができる。
【0104】
また、糸直径が小さくなり、かつ、糸/cmの数が増えると、解像度は高くなる。
【0105】
両方の光源は、パルス方式で動作し、検流計タイプのレーザービーム変位システムを含む。
【0106】
そのため、上記で開示した方法によって、レーザー加工の特有の利点全て、つまり、良好な画像およびパターン外形精度ならびに鮮明度レベル、良好なパターン繰り返し精度、非常に短い動作時間、加工される材料のための簡易な取り付けおよび取り外しシステム(加工される繊維材料がロールである場合、先に巻き取り/巻き戻しシステムを使用することができる)、コンピュータによって再生されるパターンを迅速に変更かつ修正することを可能にする大きい機器の電子制御柔軟性を維持することができる。
【0107】
これは、例えば、はるかに緩慢で、ロールの加工を可能とせず、さまざまなパターンを作るための専用マスクを準備することを必要とする化学エッチングプロセスとは非常に異なっている。
【0108】
さまざまな糸化学組成、繊維構成(糸/cm、糸直径、織り合わせ、重量、厚さ)、および、金属化を有する生地タイプについて、上記で開示した2つのレーザーシステムによって多くのサンプルが作られており、特徴づけられる。当該金属化には、ステンレス鋼によって金属化されるPES90.64、ステンレス鋼によって金属化されるPES150.27、ステンレス鋼によって金属化されるPES180.27、ステンレス鋼によって金属化されるPES190.31、ニッケルによって金属化されるPES90.40、ニッケルによって金属化されるPES165.34、ニッケルによって金属化されるPA43.61、銅によって金属化されるPES90.64、銅によって金属化されるPES190.31、銅によって金属化されるPA43.61、アルミニウムによって金属化されるPES90.64、アルミニウムによって金属化されるPES150.27、アルミニウムによって金属化されるPES180.27、アルミニウムによって金属化されるPES190.31、チタンによってカレンダーがけされかつ金属化されるPES40.90、チタンによって金属化されるPES90.64、チタンによって金属化されるPES150.27、チタンによって金属化されるPES180.27、および、チタンによって金属化されるPES190.31が含まれる。
【0109】
上述のコードにおいて、略語を示すポリマーの後の最初の桁は織物の糸/cm数を特定するのに対し、第2の桁は糸直径を特定する。
【0110】
個々それぞれの場合、最初に実験室法が使用され、最適な動作条件の組み合わせ範囲を特定するために、プロセスパラメータを変更することによって正方形サンプルを生成する。
【0111】
動作試験から、ポリマーを何ら損壊せずに金属が十分に除去されることが見いだされた。
【0112】
上述されるように、スポットサイズが小さくなると、除去される物質トレースの最小サイズも小さくなり、いずれの場合でも、基板として使用される織物素材の機能であることが見いだされた。
【0113】
特定のタイプの織物および金属に対して実証目的のために最適なプロセスパラメータが選択されると、さらに多くの複雑なパターンが作られた。
【0114】
例えば、より複雑な集積機能回路が実証目的のために作られた。すなわち、USBから供給される高輝度LED電源のスイッチを入れて作動する回路、USB電力供給される「フリップフロップ回路」、および、電熱回路である。
【0115】
簡易なLEDスイッチオン回路の目的は、通常の電子ボードの代わりに主題織物を使用すること、および、USBポートを通してPCからの電力供給を確認することが効果的に可能であることを示すことである。
【0116】
導電トレースまたはトラックは、上記で開示した技術または方法によって作られた。
【0117】
第2の応用例は、交流のブリンキング回路(「フリップフロップ回路」)を作ることであった。
【0118】
このような回路において、2つのコンデンサのキャパシタンスに応じたスイッチングオン周波数を有する2つの駆動トランジスタによって2つのLCD(赤および緑)のスイッチオン/オフが交互に行われる。
【0119】
最初の場合のように、回路の電力供給はUSB(5V)を通して実現された。
【0120】
より複雑な構成にもかかわらず、前述の回路を作ることによって実現されるデータを利用することによって、導電トレースは非常に簡易かつ迅速な方法で作られた。
【0121】
本発明は、意図した趣旨および目的を十分に実現することが見いだされた。
【0122】
実際、本発明によって、必要とされる構造強度および動作柔軟性を有し、かつ、不変の透過特性および均一特性を保持する織物を根幹とするフレキシブル回路を作る方法が提供される。
【0123】
その基本特性に加えて、本発明は、受動的な繊維要素から繊維の「スマート」で能動的な要素に変質させることができるため、機能的性質も有する。
【0124】
これは、音響、自動車、家庭電化製品、健康管理、診断、医療、化学的消費財、軍関係、電子、ロジスティックス、広告、および、出版といったいくつかの分野における工業的応用にとって非常に有用である場合があり、一般に、高い動作柔軟性、重量および厚さなどの特徴的な均一性、高精度かつ良好な発汗性、ならびに、良好な熱放散が必要とされる全ての応用分野において適切に使用可能である。
【0125】
本発明による方法によって、これまで使用され得なかった応用分野において専用電子機器を使用することが可能になる。
【0126】
さらに、主題方法によって、新しく興味深いアスペクト比または形状パラメータが実現可能である一方、電子機器の小型化および進歩が可能になる。
【0127】
主題織物は、ポリマー材料の単糸組成で構成されている。当該ポリマー材料の単糸組成は、導電性被覆によって、一種の電気ケーブルに変質し、それによって、紙、TNTまたは多重糸織物といった他の基板とは異なって、精密な高解像度回路を作ることができる。
【0128】
織物の技術的および構造的特性である均一性によって、最終製品の性質を適正に調整し、かつ、当該織物の信頼できる均一な動作を実現することができる。
【0129】
また、主題織物の発汗性によって、温度が高くなるにつれて性能が変化することに関連した問題全てが取り除かれるため、薄膜とは異なって、最適な熱散逸によって効率的な温度制御を行うことが可能になる。
【0130】
幅広い製品範囲は、選別目的などのためのモジュール式アプローチをもたらす。すなわち、回路および意図される応用のためのより良い解決法を提供する基板の選択である(メッシュ開口、糸直径、糸/cm数)。
【0131】
織物の柔軟性および機械的性質は、先行する薄膜よりもはるかに向上している。
【0132】
これによって、曲げ半径が所定の値より大きい場合に薄膜上で析出された導電層は損傷し、それによって、デバイスは適正に動作せず、構造を損壊し、さらなる動作が不可能になる場合がある、低い機械的強度およびその制限された動作柔軟性による先行する印刷回路板の使用制限を克服することができる。
【0133】
合成単糸織物を、(溶接、切断、ドリル加工などによって)非常に容易に加工または機械加工することができる。これは、設備の良好な取り付けおよび組み付け性能を伴う。
【0134】
また、金属化織物を、切断する、折り畳むまたは折り曲げる、および、結合用接着剤またはステッチによって組み付けることができる。
【0135】
当該方法によって、全ての電気および電子構成要素の簡略された効率的な集積化が可能になる。
【0136】
主題織物にはフレキシブルプラットフォームがもたらされ、全ての電気および電子構成要素を集積させることができ、デバイスは、固有の機能性電子構成要素から、電気回路、関連の接続および電力供給まで、適正に動作することができる。
【0137】
本発明を実践する際に、使用される材料ならびにそれに伴うサイズおよび形状は、要件に応じて任意のものとすることができる。