(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179071
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】近接覚センサ
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20170807BHJP
G01B 11/26 20060101ALI20170807BHJP
B25J 19/02 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
G01B11/00 A
G01B11/26 Z
B25J19/02
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-118481(P2012-118481)
(22)【出願日】2012年5月24日
(65)【公開番号】特開2013-245987(P2013-245987A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】小川 博教
(72)【発明者】
【氏名】飛田 和輝
(72)【発明者】
【氏名】下条 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽介
(72)【発明者】
【氏名】有田 輝
【審査官】
梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4882077(JP,B2)
【文献】
特開2011−053115(JP,A)
【文献】
特表平04−501175(JP,A)
【文献】
有田輝,外4名,物体までの方位・仰角を検出可能な光学式近接覚センサの開発,ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集 2012,日本,The Japan Society of Mechanical Engineers,2012年 5月27日,1A1-B01,1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 − 11/30
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列に接続された複数の第1光センサ素子を含み、複数の前記第1光センサ素子が円環状に配置される第1リング状センサと、
互いに並列に接続された複数の第2光センサ素子を含み、複数の前記第2光センサ素子が前記複数の第1光センサ素子と同じ円環状に配置される第2リング状センサと、
前記第1リング状センサと前記第2リング状センサとを、前記第1光センサ素子が前記第2光センサ素子よりも上に位置するように固定する基台と、
前記基台に固定された状態の、前記第1リング状センサと前記第2リング状センサとから出力された電圧を演算処理し、前記被検知物の位置を方位角または仰角によって検知する検知処理部と、を含み、
前記基台は、前記第1リング状センサを前記基台に固定した状態において第1リング状センサの中心点を挟んで対向する一対の前記第1光センサ素子を結んだ直線を示す軸と、前記第2リング状センサを前記基台に固定した状態において第2リングセンサの中心点を挟んで対向し、かつ、前記一対の第1光センサ素子に対応する一対の前記第2光センサ素子を結んだ直線を示す軸と、が二つの前記円環の平面視で互いに90度の角度をなすように前記第1リング状センサと前記第2リング状センサとを固定することを特徴とする近接覚センサ。
【請求項2】
前記第1リング状センサは、
複数の前記第1光センサ素子の一端に接続される第1共通端子と、
前記一端と異なる他端に接続される第2共通端子と、
複数の前記第1光センサ素子の各々と対応し、対応する前記第1光センサ素子と直列に接続される複数の抵抗素子と、をさらに含み、
前記検知処理部は、前記抵抗素子を介して出力された電圧を演算処理することを特徴とする請求項1に記載の近接覚センサ。
【請求項3】
前記検知処理部は、
前記第1リング状センサから出力された電圧を、前記第1リング状センサに対する被検知物の方位角の余弦成分に変換し、前記第2リング状センサから出力された電圧を前記方位角の正弦成分に変換し、前記方位角の前記余弦成分と前記正弦成分とから、前記方位角を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の近接覚センサ。
【請求項4】
前記検知処理部は、
前記第1リング状センサを流れる全電流Iall1と、前記第2リング状センサを流れる全電流Iall2と、を用い、以下の式によって前記第1リング状センサ、前記第2リング状センサに対する被検知物の仰角θを算出することを特徴とする請求項1または2に記載の近接覚センサ。
θ=c(Iall1−Iall2)/(Iall1+Iall2)+d
ただし、c、dは定数。
【請求項5】
前記検知処理部は、さらに、
前記第1リング状センサを流れる全電流Iall1と、前記第2リング状センサを流れる全電流Iall2と、を用い、以下の式によって前記第1リング状センサ及び前記第2リング状センサによって受光される光の強度Pを算出することを特徴とする請求項1または2に記載の近接覚センサ。
P=e(Iall1+Iall2)
ただし、eは定数。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的近距離にある被検知物を検知する、近接覚センサに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、被検知物となる物体の位置を検知するセンサには、物体の位置を二次元の座標で表すものがある。このようなセンサとしては、例えば、特許文献1に記載の発明がある。特許文献1記載の発明は、触覚センサであって、平面にかかった荷重の二次元的な分布を検知している。
ところで、現在、被検知物の荷重がかかる以前(接触する以前)に被検知物を検知する、近接覚センサがある。近接覚センサは、人間の動作を補助するロボットに適用されることがある。ロボットに適用される近接覚センサは、例えば、人間がロボットを操作するためのレバーやハンドル(以下、レバー等と記す)に手を近づけたとき、手の位置を検知し、検知された位置をレバー等の駆動部に通知する。
【0003】
上記した構成に特許文献1記載の物体の位置を二次元の座標で表すセンサを適用すると、手の位置がx、y座標で検知される。このとき、レバー等の制御装置は、検知された手の位置の座標を変換してレバー等に対する手の位置の角度(方位角)や方向(以下、方位とも記す)を示す極座標を算出することが必要になる。座標変換を行うためには、制御装置が大型化、複雑化、さらには高コスト化することが考えられる。
【0004】
特許文献1記載のセンサを使って直接手の位置を極座標として検知するためには、センサを円筒状に並べて手の位置を極座標によって表すことが考えられる。しかし、このような構成では、センサ端部の継ぎ目に座標を検出することができない点(特異点)が生じ、座標の誤検知が起こる。このため、特許文献1記載のセンサは、手の方位を検出するセンサには不向きである。
【0005】
特異点なしに手の位置を直接極座標で検知する近接覚センサは、例えば、特許文献2に記載されている。特許文献2に記載の近接覚センサは、フォトリフレクタを2次元平面上に配置し、被検知物の方位を検知することができる。被検知物の位置を方位によって検知できる特許文献2記載の発明は、手の位置に追従してレバー等を駆動する構成に好適であるといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4882077
【特許文献2】特開2011−53115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、レバー等を手の動きに追従してスムーズに駆動するためには、手の方位に加えて、手がレバー等に近接してくる角度である仰角をも検知することが望ましい。このため、特許文献2記載の発明は、手の動きに追従してレバー等を駆動する構成に用いられる近接覚センサとして、さらに改良の余地がある。
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、被検知物の位置を方位角及び仰角により検知することができる近接覚センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上説明した近接覚センサは、互いに並列に接続された複数の第1光センサ素子(例えば
図3に示したセンサ素子311a〜316a、311b〜316b)を含み、複数の前記第1光センサ素子が円環状に配置される第1リング状センサ(例えば
図1に示したリング状センサ101)と、互いに並列に接続された複数の第2光センサ素子(例えば
図3に示したセンサ素子311a〜316a、311b〜316b)を含み、複数の前記第2光センサ素子が
前記複数の第1光センサ素子と同じ円環状に配置される第2リング状センサ(例えば
図1に示したリング状センサ102)と、前記第1リング状センサと前記第2リング状センサとを
、前記第1光センサ素子が前記第2光センサ素子よりも上に位置するように固定する基台(例えば
図1に示した基台2)と、前記基台に固定された状態の、前記第1リング状センサと前記第2リング状センサとから出力された電圧を演算処理し、前記被検知物の位置を方位角または仰角によって検知する検知処理部(例えば
図3に示した検知処理部340)と、を含むことを特徴とする。
これに加え、以上説明した近接覚センサは、前記基台が、前記第1リング状センサを前記基台に固定した状態において第1リング状センサの中心点(例えば図4に示した中心点o)を挟んで対向する一対の前記第1光センサ素子を結んだ直線を示す軸と、前記第2リング状センサを前記基台に固定した状態において第2リングセンサの中心点(例えば図4に示した中心点o)を挟んで対向し、かつ、前記一対の第1光センサ素子に対応する一対の前記第2光センサ素子を結んだ直線を示す軸と、が二つの前記円環の平面視で互いに90度の角度をなすように前記第1リング状センサと前記第2リング状センサとを固定することを特徴とする。
【0009】
このように構成すれば、2つのリング状センサを使い、リング状センサに対する被検知物の方位角または仰角を算出することができる。また、検知処理部は、被検知物の位置を方位角または仰角によって検知することができる。このため、本発明は、検出された被検知物の位置を直接ロボット等の駆動制御部に出力し、駆動制御に使用することが可能になる。
【0010】
また、本発明は、上記近接覚センサにおいて、上記第1リング状センサは、複数の上記第1光センサ素子の一端に接続される第1共通端子(例えば電源端子331)と、上記一端と異なる他端に接続される第2共通端子(例えば端子332)と、複数の上記第1光センサ素子の各々と対応し、対応する上記第1光センサ素子と直列に接続される複数の抵抗素子(例えば
図3に示した抵抗素子321a〜321h)と、をさらに含み、上記検知処理部は、上記抵抗素子を介して出力された電圧を演算処理するようにしてもよい。
このような構成によれば、比較的簡易な回路構成により、上記した本発明の近接覚センサを実現することができる。
【0011】
また、本発明は、上記近接覚センサにおいて、上記検知処理部が、上記第1リング状センサから出力された電圧を、上記第1リング状センサに対する被検知物の方位角の余弦成分に変換し、上記第2リング状センサから出力された電圧を上記方位角の正弦成分に変換し、上記方位角の上記余弦成分と上記正弦成分とから、上記方位角を算出するようにしてもよい。
このような発明によれば、比較的簡易な演算処理によって近接覚センサに対する被検知物の方位角を算出することができる。このため、本発明は、検知処理部を簡易化、小型化することに有利である。
【0012】
また、本発明は、上記近接覚センサにおいて、上記検知処理部が、上記第1リング状センサを流れる全電流I
all1と、上記第2リング状センサを流れる全電流I
all2と、を用い、以下の式によって上記第1リング状センサ、上記第2リング状センサに対する被検知物の仰角θを算出するようにしてもよい。
θ=c(I
all1−I
all2)/(I
all1+I
all2)+d
ただし、c、dは定数。
このような発明によれば、比較的簡易な演算処理によって近接覚センサに対する被検知物の仰角を算出することができる。このため、本発明は、検知処理部を簡易化、小型化することに有利である。
【0013】
また、本発明は、上記近接覚センサにおいて、上記検知処理部が、さらに、上記第1リング状センサを流れる全電流I
all1と、上記第2リング状センサを流れる全電流I
all2と、を用い、以下の式によって上記第1リング状センサ及び上記第2リング状センサによって受光される光の強度Pを算出するようにしてもよい。
P=e(I
all1+I
all2)
ただし、eは定数。
このような発明によれば、比較的簡易な演算処理によって近接覚センサに入射される光強度を算出することができる。このため、本発明は、検知処理部を簡易化、小型化することに有利である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明した本発明の近接覚センサは、被検知物の位置を方位角及び仰角により検知することができる。本発明は、本発明の近接覚センサに近づく手等を、方位角、仰角、反射光強度(距離)によって検知することができるので、人間の動作に追従してレバー等を駆動する構成に対し、検知された方位角及び仰角をそのまま出力することができる。
また、本発明は、レバー等に手を触れることなくロボット等を操作することができる。このような本発明は、手またはレバー等が汚れている場合にも他方を汚すことなくロボットを操作することができるから、衛生面において高い効果を得ることができる。また、駆動するロボットに手を触れる必要がないから、安全面においても有利である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態の近接覚センサの外観を説明するための図である。
【
図2】
図1に示した近接覚センサが被検知物を検知する際の座標と、この座標が求められる原理とを説明するための図である。
【
図3】本発明の一実施形態のリング状センサの回路構成を説明するための図である。
【
図4】
図3に示したリング状センサを基台に固定した状態を示した模式図である。
【
図5】
図4に示したx座標を実際の方位角φに変換するための表を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
[全体構成]
図1は、本実施形態の近接覚センサ1の外観を説明するための図である。
近接覚センサ1は、2つのリング状センサ101、102を備えている。リング状センサ101、102は、基台2上に高さが異なるように固定されていて、リング状センサ101は、リング状センサ102よりも上になるように設けられる。また、リング状センサ101、102は、後述する複数のセンサ素子を備えている。
【0017】
本実施形態のセンサ素子は、いずれもフォトリフレクタセンサである。フォトリフレクタセンサは、フォトリフレクタセンサ自身から出力される赤外線の反射光を読み取るセンサである。フォトリフレクタセンサによって読みとられた反射光の強度は、アナログ値、またはデジタル値として出力される。フォトリフレクタセンサから出射された赤外線は、周囲にある物体(以下、本実施形態では被検知物と記す)で反射される。反射光は、出射した際の光路を通ってフォトリフレクタセンサに受光される。
【0018】
[原理]
図2(a)は、
図1に示した近接覚センサ1が被検知物Aを検知する際の座標を説明するための図である。
図2(b)は、座標が、2つのリング状センサ101、102によって検知できることを説明するための図である。なお、
図2(a)、(b)中に示した「o」は、いずれもリング状センサ101によって形成される円環の中心点、リング状センサ102によって形成される円環の中心点を示す。中心点oは、リング状センサ101、102とで一致している。本実施形態の近接覚センサ1によって検出される座標は、この中心点oを中心にして定められる。
【0019】
図2(a)に示したように、本実施形態の近接覚センサ1は、被検知物Aからの反射光量の重心を、角度(以下、方位角と記す)φ、角度(以下、仰角と記す)θ、反射光強度Pの3つの要素で表し、被検知物Aの位置を示す。本明細書では、3つの要素を(φ、θ、P)と記し、このような座標を「球座標」と記す。
図2(a)において、リング状センサ101、102は、それぞれがx軸を有している。なお、リング状センサ101、102のx軸については、後述するものとする。
【0020】
x軸には、リング状センサ101のx軸
1とリング状センサ102のx軸
2とがあり、x軸
1とx軸
2とが90度の角度をなしているのは、リング状センサ101とリング状センサ102とが、その方位角φが90度の角度をなすように固定されているためである。このようなリング状センサ101とリング状センサ102との配置を、本実施形態では、「リング状センサの位相が90度ずれている」とも表現する。
【0021】
また、
図2(b)に示すように、高さが異なるように固定されているリング状センサ101、102は、その赤外線の出射、入射の仰角θの範囲が相違する。なお、
図2(b)では、リング状センサ101のセンサ素子の出射、入射の仰角範囲を範囲Bで示し、リング状センサ102のセンサ素子の出射、入射の仰角範囲を範囲Cで示す。
図2(b)に示した範囲Dは、範囲Bと範囲Cとが重なる部分であり、近接覚センサ1が被検知物Aを検知できる範囲である。
赤外線の出射、入射の範囲の相違により、リング状センサ101とリング状センサ102とは、被検知物Aに対する仰角θが相違する。本実施形態は、以上説明したリング状センサ101とリング状センサ102の取り付け位置、あるいは取り付け角度の相違によって被検知物の方位角φ、仰角θを検知することができる。
【0022】
[リング状センサ]
図3は、リング状センサ101の回路構成を説明するための図である。なお、リング状センサ102は、リング状センサ101と同様に構成されている。このため、本実施形態では、リング状センサ101を図示及び説明を、リング状センサ102の図示及び説明に代えるものとする。なお、
図3に示したリング状センサ101は、m×n個のセンサ素子が2次元に分布する既存のセンサ(例えば特許文献2記載の近接覚センサ)の、mまたはnを1個としたものと等価である。このため、本実施形態の近接覚センサは、一次元の近接覚センサということができる。本実施形態は、一次元の近接覚センサを用いて構成されるため、比較的簡易な演算処理によって被検知物の位置を極座標で表すことができるようになる。
【0023】
リング状センサ101は、センサ素子311a〜316a、311b〜316b(以下、センサ素子311a、311b〜316a、316b)を備えている。
前記したように、センサ素子311a、311b〜316a、316bは、いずれもフォトリフレクタセンサであり、フォトリフレクタセンサは、その抵抗値が反射光の強度によって変化する可変抵抗素子である。本実施形態では、可変抵抗素子としてフォトトランジスタを使用した。フォトトランジスタでは、反射光の強度によってエミッタ、コレクタ間の抵抗値が変化する。
【0024】
また、リング状センサ101においては、センサ素子316bとセンサ素子311aとの間に、抵抗値が一定の抵抗素子321aが接続されている。また、センサ素子311bとセンサ素子312aとの間に抵抗素子321bが、センサ素子312bとセンサ素子313aとの間に抵抗素子321cが、センサ素子313bとセンサ素子314aとの間に抵抗素子321dが、センサ素子314bとセンサ素子315aとの間に抵抗素子321eが、センサ素子315bとセンサ素子316aとの間に抵抗素子321fがそれぞれ接続されている。
【0025】
さらに、抵抗素子321gはセンサ素子316bと直列に接続され、抵抗素子321hはセンサ素子316aと直列に接続される。以上のセンサ素子311a、316a〜311b、316bと、抵抗素子321a〜321hとは、図示しない電源の電源端子331と基準電圧(GND)端子332との間に接続されている。また、直列に接続される抵抗素子321a〜321fの一端をリング状センサ101の一方の端子301とし、他方の一端を端子302とする。端子301から出力される電圧の電圧値をV1、端子302から出力される電圧の電圧値をV2とする。
さらに、リング状センサ101は、リング状センサ102と共通の検知処理部340を備えている。電圧値V1、電圧値V2は、検知処理部340に入力され、検知処理部340における座標の算出に用いられる。
【0026】
(座標の算出)
次に、本実施形態の近接覚センサ1による、被検知物の位置を示す座標の算出について説明する。なお、座標の算出は、
図3に示した検知処理部340によって行われる。
・方位角φ
図3に示したリング状センサ101を流れる全電流I
all1は、以下の式(1)によって求められる。
I
all1=a(V1+V2) …式(1)
【0027】
また、全電流I
all1の分布のx軸まわりの一次モーメントI
x1は、以下の式(2)によって求められる。
I
x1=b(V1−V2) …式(2)
なお、式(1)、(2)において、a、bは、近接覚センサの特性等に応じて適宜設定される定数である。
【0028】
以上の式(1)、(2)から、リング状センサ101の各センサ素子311a〜316a、311b〜316bに流れる電流の分布の中心位置を示す座標x
c1が、以下のように求められる。なお、電流分布の中心を示す座標がx座標だけで表されるのは、前記したように、本実施形態の近接覚センサが、センサ素子を一次元に配置した構成を有するからである。
x
c1=I
x/I
all1 …式(3)
【0029】
図4(a)、(b)は、
図3に示したリング状センサ101、102を基台2に固定した状態を示す模式図である。
図4(a)はリング状センサ101を示し、
図4(b)はリング状センサ101と90度位相がずれた状態で基台2に固定されたリング状センサ102を示している。
図4(a)、(b)によれば、位相がずれた状態とは、リング状センサ101のx軸とリング状センサ102のx軸とが、90度の角度をなす状態を指すことが明らかである。
【0030】
また、
図4(a)、(b)中に破線で示した円c1は、センサ素子311a、311b〜316a、316bが、全て中心点oから等しい距離にあることを示すための仮想的な線である。また、破線で示した円c2は、近接覚センサによって被検知物Aが被検知物であると検知される範囲を示す。
なお、本実施形態では、リング状センサ101を基台2に固定した状態において、センサ素子316aと316bとを結んだ直線の延長線をリング状センサ101のx軸
1とする。また、リング状センサ102を基台2に固定した状態において、センサ素子316aと316bとを結んだ直線の延長線をリング状センサ102のx軸
2とする。そして、x軸
1、x軸
2のいずれにあっても、センサ素子316aとセンサ素子316bとを結んだ直線を二等分する点を中心点oとする。
【0031】
図5(a)、(b)は、
図4(a)、(b)に示したx座標と実際の方位角φとの対応を示した表である。
図5(a)は、
図4(a)に示したリング状センサ101で検出されたx座標x
c1を方位角φに変換するためのグラフであり、
図5(b)は、
図4(b)に示したリング状センサ102で検出されたx座標x
c2を方位角φに変換するためのグラフである。
【0032】
図5(a)、(b)のいずれにおいても、縦軸はx座標x
c1またはx座標x
c2を示し、横軸は方位角φを示す。
図5(a)によれば、x座標x
c1が「1」であるとき方位角は0度であり、x座標x
c1が「−1」であるとき方位角は180度であることが分かる。また、
図5(b)によれば、x座標x
c2が「1」であるとき方位角は90度であり、x座標x
c2が「−1」であるとき方位角は270度であることが分かる。
【0033】
図2(a)に示したように、x座標x
c1はcos(φ)、x座標x
c2はsin(φ)に相当する。このため、方位角φは、以下の式(4)によって求められる。
φ=atan2(x
c2,x
c1) …式(4)
以上の処理は、検知処理部340において、リング状センサ101から出力された電圧を、リング状センサ101の中心点oに対する被検知物の方位角である方位角φの余弦成分cosφに変換し、第2リング状センサ102から出力された電圧を方位角φの正弦成分sinφに変換し、cosφとsinφとから、方位角φを算出するものである。
【0034】
・仰角θ
本実施形態のリング状センサ102の全電流I
all2は、前述した式(1)により、全電流I
all1と同様に求められる。本実施形態では、
図3に示した検知処理部340が、全電流I
all1、全電流I
all2を用い、以下の式(5)によって、リング状センサ101、102に対する被検知物の仰角θを算出する。
θ=c(I
all1−I
all2)/(I
all1+I
all2)+d …式(5)
なお、式(5)中のc、dは、近接覚センサの特性等に応じて適宜設定される定数である。
【0035】
上記式(5)において、(I
all1−I
all2)は、リング状センサ101と被検知物との距離とリング状センサ102と被検知物との距離との差に関係する量を示す。(I
all1−I
all2)を(I
all1+I
all2)で除算することにより、本実施形態は、被検知物の反射率に依存しない無次元量としてリング状センサ101、102の中心点oと被検知物との距離を扱って仰角θを求めることができる。
【0036】
・反射光強度P
リング状センサ101、リング状センサ102によって受光される反射光強度Pは、以下の式(6)によって求められる。
P=e(I
all1+I
all2) …式(6)
なお、式(6)中のeは、近接覚センサの特性等に応じて適宜設定される定数である。
【0037】
また、本実施形態の検知覚センサは、被検知物の反射率pが既知である場合、以下の式(7)によってリング状センサ101、102の中心点oと被検知物との距離rを算出することができる。
r= f・sqrt(p) …式(7)
なお、式(7)中のfは、被検知物の材質や表面状態等によって決定される定数である。「sqrt」はスクエアルートを示す。なお、中心点oと被検知物との距離rは、式(7)によって求められるものに限定されるものでなく、変換テーブルによって実測値を変換して求めることもできる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の近接覚センサは、一次元の2つの近接覚センサを、互いに位相を90度ずらし、かつ高さが異なるように取り付けている。そして、このような簡易な構成により、リング状センサ101、102の中心点oに対する被検知物の位置を方位角φ、仰角θ、反射光強度Pの球座標によって検出することができる。このため、本発明は、近接覚センサを人間の補助をするロボット等に適用した場合、ロボットの駆動制御部に対し、近接覚センサによって検出された球座標をそのまま出力することができる。このような本発明は、ロボットの駆動制御にかかる構成を簡易化、小型化することに有利である。
【0039】
また、本実施形態は、以上説明した実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、以上説明した実施形態では、1つのリング状センサがセンサ素子を12個備えるものとした。しかし、本実施形態は、リング状センサに設けられるセンサ素子の数を12個に限定するものではなく、リング状センサは任意の数(例えば6個)のセンサ素子を備えるものであってもよい。また、本実施形態は、抵抗素子321a〜321fが2つのセンサ素子を挟んで設けられる構成に限定されるものではなく、センサ素子の間の任意の位置に設けられるものであってもよい。
【0040】
さらに、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、特許請求の範囲により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ヒューマンインターフェース装置の一種として利用することができる。そして、このような本発明は、特に、直接触れることが望ましくない物体に手等が近づいたことを検知し、この物体を停止させる、または警告音を発する装置に好適である。
【符号の説明】
【0042】
1 近接覚センサ
2 基台
101、102 リング状センサ
301、302 端子
311a〜316a、311b〜316b センサ素子
321a〜321h 抵抗素子
331 電源端子
332 端子
340 検知処理部