特許第6179088号(P6179088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コベルコ建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6179088-建設機械の機器冷却装置 図000002
  • 特許6179088-建設機械の機器冷却装置 図000003
  • 特許6179088-建設機械の機器冷却装置 図000004
  • 特許6179088-建設機械の機器冷却装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179088
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】建設機械の機器冷却装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/50 20160101AFI20170807BHJP
   B60W 10/30 20060101ALI20170807BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20170807BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20170807BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20170807BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   B60W20/50
   B60W10/30 900
   E02F9/20 ZZHV
   B60K6/48
   B60W10/08 900
   B60K11/04 A
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-243622(P2012-243622)
(22)【出願日】2012年11月5日
(65)【公開番号】特開2014-91445(P2014-91445A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 洋一郎
【審査官】 田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−106561(JP,A)
【文献】 特開平08−040088(JP,A)
【文献】 特開2008−084625(JP,A)
【文献】 特開2010−222815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60W 10/00 − 20/50
E02F 3/42 − 3/43
E02F 3/84 − 3/85
E02F 9/20 − 9/22
B60K 11/00 − 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象である被冷却機器と、冷却ポンプと、この冷却ポンプから吐出される冷媒を上記被冷却機器に送ってこれを冷却する冷却回路とを備えた建設機械の機器冷却装置において、上記被冷却機器の入口及び出口での上記冷媒の温度である入口温度及び出口温度を検出する温度検出手段と、制御手段とを具備し、この制御手段は、上記温度検出手段によって検出される入口温度と出口温度の差である検出温度差を求め、この検出温度差と、被冷却機器の発熱量が正常であることを示す温度差として予め設定された基準温度差とを比較して、上記被冷却機器の異常/正常を判定するように構成し、
上記制御手段は、上記冷却ポンプから上記被冷却機器に供給される冷媒の流量と上記基準温度差の関係について予め定めたマップを備え、上記被冷却機器に供給されている冷媒流量と上記マップに基づき、上記冷媒流量に対応する基準温度差を決定し、上記検出温度差が上記基準温度差以上であれば、上記被冷却機器は異常と判定し、上記検出温度差が上記基準温度差未満であれば、上記被冷却機器は正常と判定するように構成したことを特徴とする建設機械の機器冷却装置。
【請求項2】
複数の被冷却機器を備え、上記制御手段は、各被冷却機器の検出温度差と機器ごとの基準温度差を比較してそれぞれの異常/正常を判定するように構成したことを特徴とする請求項1記載の建設機械の機器冷却装置。
【請求項3】
上記制御手段は、異常判定時に、発熱量を抑制するための安全処理を実行するように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の建設機械の機器冷却装置。
【請求項4】
表示手段を備え、上記制御手段は、上記安全処理として上記表示手段によって異常発生を表示するように構成したことを特徴とする請求項3記載の建設機械の機器冷却装置。
【請求項5】
被冷却機器として、作業装置を駆動側または回生側に作動させる電動機と、この電動機に対する作動指令を出す電動機制御器と、上記作業装置の回生側の作動時に上記電動機の回生電力を蓄える蓄電器を備え、上記制御手段は、上記安全処理として、上記電動機制御器から上記電動機に出される指令値を抑制するように構成したことを特徴とする請求項3または4記載の建設機械の機器冷却装置。
【請求項6】
冷却対象である被冷却機器と、冷却ポンプと、この冷却ポンプから吐出される冷媒を上記被冷却機器に送ってこれを冷却する冷却回路とを備えた建設機械の機器冷却装置において、上記被冷却機器の入口及び出口での上記冷媒の温度である入口温度及び出口温度を検出する温度検出手段と、制御手段とを具備し、この制御手段は、上記温度検出手段によって検出される入口温度と出口温度の差である検出温度差を求め、この検出温度差と、被冷却機器の発熱量が正常であることを示す温度差として予め設定された基準温度差とを比較して、上記被冷却機器の異常/正常を判定するように構成し、
複数の被冷却機器を備え、上記制御手段は、最も許容温度が低い特定機器について、検出温度差が上記基準温度差を超えて、予め設定された流量増加温度差まで上昇したときに、上記特定機器を保護するための保護処理として、作業装置を駆動側に作動させる電動機の運転を継続しながら上記冷却ポンプの冷媒吐出量を増加させるように構成したことを特徴とする建設機械の機器冷却装置。
【請求項7】
冷却対象である被冷却機器と、冷却ポンプと、この冷却ポンプから吐出される冷媒を上記被冷却機器に送ってこれを冷却する冷却回路とを備えた建設機械の機器冷却装置において、上記被冷却機器の入口及び出口での上記冷媒の温度である入口温度及び出口温度を検出する温度検出手段と、制御手段とを具備し、この制御手段は、上記温度検出手段によって検出される入口温度と出口温度の差である検出温度差を求め、この検出温度差と、被冷却機器の発熱量が正常であることを示す温度差として予め設定された基準温度差とを比較して、上記被冷却機器の異常/正常を判定するように構成し、
複数の被冷却機器を備え、上記制御手段は、最も許容温度が低い特定機器について、検出温度差が上記基準温度差を超えて、予め設定された停止温度差まで上昇したときに、上記特定機器を保護するための保護処理として、作業装置を駆動側に作動させる電動機の運転を停止させるように構成したことを特徴とする建設機械の機器冷却装置。
【請求項8】
冷却対象である被冷却機器と、冷却ポンプと、この冷却ポンプから吐出される冷媒を上記被冷却機器に送ってこれを冷却する冷却回路とを備えた建設機械の機器冷却装置において、上記被冷却機器の入口及び出口での上記冷媒の温度である入口温度及び出口温度を検出する温度検出手段と、制御手段とを具備し、この制御手段は、上記温度検出手段によって検出される入口温度と出口温度の差である検出温度差を求め、この検出温度差と、被冷却機器の発熱量が正常であることを示す温度差として予め設定された基準温度差とを比較して、上記被冷却機器の異常/正常を判定するように構成し、
複数の被冷却機器を備え、上記制御手段は、最も許容温度が低い特定機器について、上記基準温度差よりも高い流量増加温度差と、この流量増加温度差よりも高い停止温度差をそれぞれ設定し、上記特定機器を保護するための保護処理として、同機器の検出温度差が上記流量増加温度差まで上昇したときに、作業装置を駆動側に作動させる電動機の運転を継続しながら上記冷却ポンプの冷媒吐出量を増加させ、かつ、検出温度差が上記停止温度差まで上昇したときに、上記電動機の運転を停止させるように構成したことを特徴とする建設機械の機器冷却装置。
【請求項9】
上記制御手段は、上記作業装置の回生側の作動時に上記電動機の回生電力を蓄える蓄電器を上記特定機器として上記保護処理を行うように構成したことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の建設機械の機器冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド式または電動式の建設機械において発熱機器を冷却する機器冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッドショベルにおける旋回駆動系の冷却装置を例にとって背景技術を説明する。
【0003】
ハイブリッドショベルにおいては、動力源としてのエンジンに発電電動機を接続し、発電電動機の発電機作用によって蓄電器に充電し、適時、この蓄電器電力により発電電動機に電動機作用を行わせてエンジンをアシストするように構成される。
【0004】
このハイブリッドショベルにおいて、上部旋回体を旋回駆動する旋回駆動システムとして、旋回用油圧モータを駆動源とする油圧旋回ユニットに代えて、あるいは加えて、旋回用電動機を駆動源とする電動旋回ユニットを設け、旋回駆動時(起動を含む加速時及び加速後の定常運転時。力行時ともいう)には、発電電動機または蓄電器の電力によって上部旋回体を旋回駆動し、旋回減速時には旋回用電動機を発電機として作動させ、ブレーキ力を発揮させるとともに、その回生電力を蓄電器に充電する構成をとるものが公知である。
【0005】
この旋回駆動システムにおいて、蓄電器を高温状態で使用し続けると、蓄電器の劣化が早くなるため、適温を超えないように冷却する必要がある。
【0006】
また、旋回電動機や、同電動機の作動を制御する電動機制御器といった他のハイブリッド機器も使用中に発熱するため、これらについても一定の性能を維持するために冷却する必要がある。
【0007】
これら蓄電器等の冷却を要する機器(被冷却機器)の冷却技術として、特許文献1に示されているように、旋回駆動システムの各被冷却機器をポンプ付きの冷却回路でつないで機器冷却装置を構成し、水等の冷媒(以下、本発明の実施形態を含めて水の場合で説明する)を循環させて冷却する技術が公知である。
【0008】
この公知技術においては、冷却回路を循環する冷却水の温度を検出し、この冷却水温度が予め設定された温度以上になった場合に異常発熱状態と判定し、運転継続のための安全処理として、電動機に対する指令値(電動機電流)を抑制してそれ以上の温度上昇を抑える構成がとられている。
【0009】
なお、異常発熱は、高負荷での連続運転のほか、機器の故障や、劣化に伴う内部抵抗の増加等によって発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−222815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、冷却水温度は、季節(冬季、夏季)や場所(寒冷地、温暖地)によって変わり、かつ、機器に供給される冷却水量によっても変わるため、必ずしも機器の発熱量を正確に反映したものとはならない。
【0012】
このため、公知技術のように冷却水温度のみを基準とすると、機器の発熱状態を正確に把握できない。
【0013】
従って、異常/正常の判定を正確に行うことができず、異常判定に基づく安全処理も適正に行うことができない。
【0014】
そこで本発明は、被冷却機器の発熱状態を正確に把握し、適正な異常判定を行うことができる建設機械の機器冷却装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する手段として、本発明においては、冷却対象である被冷却機器と、冷却ポンプと、この冷却ポンプから吐出される冷媒を上記被冷却機器に送ってこれを冷却する冷却回路とを備えた建設機械の機器冷却装置において、上記被冷却機器の入口及び出口での上記冷媒の温度である入口温度及び出口温度を検出する温度検出手段と、制御手段とを具備し、この制御手段は、上記温度検出手段によって検出される入口温度と出口温度の差である検出温度差を求め、この検出温度差と、被冷却機器の発熱量が正常であることを示す温度差として予め設定された基準温度差とを比較して、上記被冷却機器の異常/正常を判定するように構成し、
上記制御手段は、上記冷却ポンプから上記被冷却機器に供給される冷媒の流量と上記基準温度差の関係について予め定めたマップを備え、上記被冷却機器に供給されている冷媒流量と上記マップに基づき、上記冷媒流量に対応する基準温度差を決定し、上記検出温度差が上記基準温度差以上であれば、上記被冷却機器は異常と判定し、上記検出温度差が上記基準温度差未満であれば、上記被冷却機器は正常と判定するように構成したものである。
【0016】
機器の発熱量は、冷媒流量と、入口、出口の温度差とによって把握でき、冷媒流量を一定とすると温度差に比例する。
【0017】
この点、本発明によれば、被冷却機器の入口、出口の温度差(検出温度差)を基準温度差と比較するため、被冷却機器の発熱状態を正確に把握し、適正な異常判定を行うことができる。
【0019】
前記のように機器の発熱量は、冷媒流量と温度差によって把握できる。いいかえれば同じ発熱量でも冷媒流量によって生じる温度差が変わる。
【0020】
そこで請求項の発明のように、冷媒流量に応じた基準温度差と検出温度差とを比較することにより、異常判定をより高精度で行うことができる。
【0021】
また本発明において、複数の被冷却機器を共通の冷却回路によって冷却する場合に、各被冷却機器の検出温度差と機器ごとの基準温度差を比較してそれぞれの異常/正常を判定するように構成するのが望ましい(請求項)。
【0022】
この構成によると、被冷却機器ごとに基準温度を設定し、検出温度差と比較するため、基準温度差を一律に定めた場合と比べて、各機器についてより正確な異常判定を行うことができる。
【0023】
本発明において、上記制御手段は、異常判定時に、発熱量を抑制するための安全処理を実行するように構成するのが望ましい(請求項3〜5)。
【0024】
こうすることにより、それ以上の発熱を抑制して運転を継続することが可能となる。
【0025】
この場合、請求項の発明によると、異常表示することにより、オペレータに発熱を抑制する運転(速度低下等)を促すことができる。
【0026】
一方、請求項の発明によると、ハイブリッド式または電動式の建設機械において、電動機指令値を抑制することにより、システム(たとえば旋回駆動システム)全体の発熱を自動的に抑えることができる。
【0027】
本発明において、複数の被冷却機器を備え、上記制御手段は、最も許容温度が低い特定機器(たとえば請求項の蓄電器)について、検出温度差が上記基準温度差を超えて、予め設定された流量増加温度まで上昇したときに、上記特定機器を保護するための保護処理として、上記電動機の運転を継続しながら上記ポンプの冷媒吐出量を増加させるように構成するのが望ましい(請求項)。
【0028】
このように、最も許容温度が低い、いいかえれば最も発熱に弱い特定機器の検出温度差が基準温度差を超えて上昇したときに、電動機の運転を継続しながらポンプの冷媒吐出量を増加させることにより、特定機器の保護(発熱抑制)と作業能率を両立させることができる。
【0029】
あるいは本発明において、複数の被冷却機器を備え、上記制御手段は、最も許容温度が低い特定機器(たとえば請求項の蓄電器)について、検出温度差が上記基準温度差を超えて、予め設定された停止温度差まで上昇したときに、上記特定機器を保護するための保護処理として、上記電動機の運転を停止させるように構成してもよい(請求項)。
【0030】
こうすれば、特定機器の温度が許容温度を超えて致命的な損傷に至る危険を回避することができる。
【0031】
ここで、検出温度差の上昇に応じて、上記冷媒吐出量の増加、電動機停止を順次実行するようにしてもよいし(請求項)、いずれか一方のみを実行するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、被冷却機器の発熱状態を正確に把握し、適正な異常判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態を示すシステム構成図である。
図2】実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。
図3】実施形態における冷却水量と基準温度差の関係を示す図である。
図4】実施形態における検出温度差と冷却水量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
実施形態はハイブリッドショベルの旋回駆動システムを適用対象としている。
【0035】
図1は実施形態のシステム構成を示す。
【0036】
駆動系
図示のようにエンジン1に発電機作用と電動機作用を行う発電電動機2が接続され、エンジン1によりこの発電電動機2が駆動されて発電機作用を行い、発生した電力が蓄電器3に送られた充電される一方、適時、この蓄電器3の電力により発電電動機2が電動機作用を行ってエンジン1をアシストする。
【0037】
なお、エンジン1には図示しない油圧ポンプが発電電動機2とパラレルまたはタンデムに接続され、この油圧ポンプの吐出油によりコントロールバルブを介して油圧アクチュエータが駆動される。
【0038】
また、他のハイブリッド機器として、電動機制御器4と、旋回駆動源としての旋回電動機5と、制御手段としてのコントロールユニット6が設けられ、図示しない旋回操作レバーの操作状態等に基づいて、このコントロールユニット6と電動機制御器4により蓄電器3及び旋回電動機5の作動(蓄電器3の充放電、旋回電動機4の運転/停止等)が制御される。
【0039】
ここで、旋回電動機5は、発電電動機2で発生した電力または蓄電器3の電力によって駆動(力行駆動)される一方、減速時に回生作用を行い、その回生電力が蓄電器3または発電電動機2に充電電力またはエンジンアシストのための駆動電力として送られる。
【0040】
冷却系
冷却対象である被冷却機器としての蓄電器3、電動機制御器4、旋回電動機5の三者は冷却回路Aによって直列に接続され、この冷却回路Aの一端側が、可変容量型(吐出量が可変の)冷却ポンプ7の吐出側に、他端側がクーラー8を介してポンプ7の吸い込み側にそれぞれ接続されることによって機器冷却装置9が構成されている。
【0041】
冷却回路Aには冷却媒体としての冷却水が通され、この冷却水がポンプ7−蓄電器3−電動機制御器4−旋回電動機5−クーラー8−ポンプ7の順で循環して三者を冷却する。以下、蓄電器3、電動機制御器4、旋回電動機5の三者を「被冷却機器」と総称する場合がある。
【0042】
なお、冷却ポンプ7は、通常、エンジン1によって駆動されるが、エンジン始動とともにポンプ用電動機によって駆動する構成をとってもよい。
【0043】
また、必要に応じて発電電動機2及びコントロールユニット6をも被冷却機器としてこの機器冷却装置9に組み込んでもよい。
【0044】
一方、検出手段として、各被冷却機器3,4,5の入口温度及び出口温度を検出する温度検出手段としての第1〜第4各温度センサ10,11,12,13と、冷却ポンプ7の回転数を検出する回転数センサ14が設けられている。
【0045】
第1温度センサ10は蓄電器3の入口温度を、第2温度センサ11は蓄電器3の出口温度であって電動機制御器4の入口温度を、第3温度センサ12は電動機制御器4の出口温度であって旋回電動機5の入口温度を、第4温度センサ13は旋回電動機5の出口温度をそれぞれ検出し、各温度センサ10〜13で検出された温度情報と、回転数センサ14で検出された回転数情報がそれぞれコントロールユニット6に送られる。
【0046】
また、コントロールユニット6に表示器15が接続され、異常判定時に、この表示器15によってオペレータに『異常発生』が音声や画像等で表示される。
【0047】
コントロールユニット6は、回転数センサ14からの回転数情報に基づいて冷却ポンプ7の吐出流量(各被冷却機器3〜5に供給される冷却水量)を演算するとともに、各温度センサ10〜13からの温度情報に基づいて各被冷却機器3〜5の入口、出口の温度差を求め、これらの数値に基づいて異常判定と冷却水量制御、旋回電動機5の作動制御を行う。
【0048】
このコントロールユニット6の作用を図2のフローチャート及び図3,4によって説明する。
【0049】
各被冷却機器3〜5の発熱量は、冷却ポンプ7の吐出量(被冷却機器3〜5に供給される冷却水量)Wと、機器入口と出口の温度差によって把握することができる。
【0050】
図3は、この冷却水量Wと、機器発熱量が正常であることを示す温度差(基準温度差)T1の関係を示し、この図3のマップが予めコントロールユニット6に設定・記憶されている。
【0051】
なお、冷却水量/基準温度差の関係は被冷却機器ごとに異なるため、図3のマップは被冷却機器3〜5ごとに設定・記憶されている。
【0052】
図3中、斜線を付した領域は正常な発熱量範囲である。また、図中、T1aは一例として冷却水量がWaのときの基準温度差である。
【0053】
さらに、コントロールユニット6には、制御を行う指標となる温度差として、各被冷却機器3〜5のうち最も許容温度が低い機器である蓄電器3について、基準温度差T1のほか、図4に示すように、冷却水量を増加させるべき温度差である水量増加温度差(請求項7,9の「流量増加温度差」)T2、及び旋回電動機5を停止させるべき温度差である停止温度差T3が設定・記憶され、各温度差T1,T2,T3に応じて次のような異なる処理が行われる。
【0054】
運転開始とともにステップS1でそのときの冷却水量Wが、
冷却水量W=ポンプ回転数N×ポンプ容量q
によって演算される。
【0055】
次いで、ステップS2で、図3のマップに基づいて、演算された冷却水量Wに対する基準温度差T1が求められ、ステップS3で検出温度差Trが基準温度差T1よりも小さいか否かが比較される。
【0056】
この比較は各被冷却機器3〜5について行われ、ここでYES(Tr<T1)の場合はステップS1に戻る。
【0057】
これに対し、少なくともいずれか一つの機器についてNO(Tr≧T1)となると、異常発生と判定してステップS4に移り、発熱量を抑制するための安全処理として、図1中の表示器15によって異常発生をオペレータに向けて表示するとともに、旋回電動機5に対する指令値が抑制される。具体的には、電動機制御器4に送られる電動機電流の指令値が抑えられる。
【0058】
これにより、旋回電動機5の出力が抑制され、これが電動機制御器4及び蓄電器3に波及して各被冷却機器3〜5(図1の旋回駆動システム全体)の発熱量が減少し、温度上昇が抑えられる。
【0059】
こうして、異常発生を警告する一方、運転を継続させて作業の連続性を確保するようにしている。
【0060】
この後、ステップS5において、蓄電器3の検出温度差Trが流量増加温度差T2以上か否かが判断され、YES(Tr≧T2)の場合、すなわち、電動機電流を減少させたにもかかわらず発熱が進んだ場合は、蓄電器3を保護するための保護処理として、冷却ポンプ7からの冷却水吐出量(冷却水量)を予め設定した値まで増加させる制御が行われる。
【0061】
この冷却水量増加制御により、機器冷却装置9の冷却能力が高められ、蓄電器3のさらなる発熱が抑制されながら作業の連続性が確保される。
【0062】
この場合、検出温度差Trと流量増加温度差T2の差に応じて冷却水量増加の程度を変えるように制御してもよい。
【0063】
なお、ステップS5でNO(Tr<T2)の場合は、ステップS7で、冷却水量を基準値のままとする(増加させない)処理が行われた後、ステップS1に戻る。
【0064】
ステップS8では、蓄電器3の検出温度差Trが停止温度差T3以上か否かが判断される。ここでNO(Tr<T3)の場合はステップS1に戻り、YES(Tr≧T3)の場合に、旋回電動機5を停止させる指令が出されて制御が終了する(ステップS9)。
【0065】
この電動機停止制御により、蓄電器3が許容温度を超えて致命的な損傷に至ることが防止される。
【0066】
この機器冷却装置9によると、次の効果を得ることができる。
【0067】
(i) 機器の発熱量は冷却水量と、入口、出口の温度差とによって把握できる.点に着目し、被冷却機器3〜5の検出温度差Trを、正常な発熱状態での基準温度差T1と比較してその異常/正常を判定するため、被冷却機器3〜5の発熱状態を正確に把握して適正な異常判定を行うことができる。
【0068】
(ii) 機器の発熱量は、冷却水量と温度差によって把握できること、いいかえれば同じ発熱量でも冷却水量によって生じる温度差が変わる点に着目し、冷却水量に応じた基準温度差Trを設定し、これと検出温度差とを比較するため、異常判定をより高精度で行うことができる。
【0069】
(iii) 各被冷却機器3〜5の検出温度差Trと機器ごとの基準温度差T1を比較してそれぞれの異常/正常を判定するため、各機器について高制度な異常判定を行うことができる。
【0070】
(iv) 異常判定時に、電動機指令値を抑制するため、旋回駆動システム全体の発熱を自動的に抑えることができる。
【0071】
(v) 最も許容温度が低い、いいかえれば最も発熱に弱い特定機器としての蓄電器3の検出温度差T1が基準温度差Trを超えて予め設定された流量増加温度T2まで上昇したときに、旋回電動機5の運転を継続しながら冷却ポンプ7の冷媒吐出量を増加させるため、蓄電器3の保護(発熱抑制)と作業能率を両立させることができる。
【0072】
(vi) 蓄電器3の検出温度差Trが流量増加温度差T2を超えてさらに停止温度差T3まで上昇したときに、旋回電動機5の運転を停止させるため、蓄電器3の温度が許容温度を超えて致命的な損傷に至る危険を回避することができる。
【0073】
他の実施形態
(1) 上記実施形態では、図2のフローチャートのステップS1,S2として、図3のマップに基づいて冷却水量に対する各被冷却機器3〜5の基準温度差T1を求める構成をとったが、基準温度差T1を冷却水量に関係なく一定値として設定してもよい。
【0074】
この場合、図2のフローチャートにおいて、制御開始後、すぐにステップS3の処理が行われる。
【0075】
(2) 各被冷却機器のうち最も許容温度が低い特定機器は、上記実施形態の蓄電器3に限らず、被冷却機器の組み合わせによって適宜変更してもよい。
【0076】
(3) 本発明は上記実施形態で挙げたハイブリッドショベルの旋回駆動システムに好適であるが、ショベル以外のハイブリッド建設機械または電動ショベルの旋回駆動システムにも適用することができる。
【0077】
また、旋回駆動システムに限らず、ハイブリッドまたは電動式の建設機械における他の駆動システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
3 被冷却機器である蓄電器
4 同、旋回電動機
5 同、旋回電動機
6 制御手段としてのコントロールユニット
A 冷却回路
7 冷却ポンプ
8 クーラー
9 機器冷却装置
10〜13 温度検出手段としての温度センサ
14 回転数センサ
15 表示器
図1
図2
図3
図4