特許第6179097号(P6179097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許6179097-多層電子部品及び集合基板 図000002
  • 特許6179097-多層電子部品及び集合基板 図000003
  • 特許6179097-多層電子部品及び集合基板 図000004
  • 特許6179097-多層電子部品及び集合基板 図000005
  • 特許6179097-多層電子部品及び集合基板 図000006
  • 特許6179097-多層電子部品及び集合基板 図000007
  • 特許6179097-多層電子部品及び集合基板 図000008
  • 特許6179097-多層電子部品及び集合基板 図000009
  • 特許6179097-多層電子部品及び集合基板 図000010
  • 特許6179097-多層電子部品及び集合基板 図000011
  • 特許6179097-多層電子部品及び集合基板 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179097
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】多層電子部品及び集合基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20170807BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   H05K1/02 S
   H05K3/00 X
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-280793(P2012-280793)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-127486(P2014-127486A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年9月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】浅田 智史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真也
(72)【発明者】
【氏名】村岡 邦義
(72)【発明者】
【氏名】上田 健士
【審査官】 ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−019749(JP,A)
【文献】 特開2011−210912(JP,A)
【文献】 特開2012−134396(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/092969(WO,A1)
【文献】 特開2008−270671(JP,A)
【文献】 特開昭61−181186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00−1/03
H05K 3/00
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層が積層されてなる多層基板を備えた多層電子部品において、
前記多層基板は一主面に配置された表層と、該表層に接して配置された第2層とを含み、
前記第2層が前記表層とは異なる色を有し、
前記表層には前記第2層には達しない部分的な凹部が形成されており、前記凹部において前記第2層の色が前記表層を透過することにより該凹部から前記第2層が識別可能であること、
を特徴とする多層電子部品。
【請求項2】
前記表層は前記第2層の色よりも薄い色を有していること、を特徴とする請求項1に記載の多層電子部品。
【請求項3】
前記第2層は金属膜であること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多層電子部品。
【請求項4】
前記金属膜は多層基板に内蔵された配線又は電極であること、を特徴とする請求項3に記載の多層電子部品。
【請求項5】
前記金属膜は銅を主成分とするものであること、を特徴とする請求項3又は請求項4に記載の多層電子部品。
【請求項6】
前記表層は、SiをSiOに換算して48〜75重量%、BaをBaOに換算して20〜40重量%、及び、AlをAlに換算して5〜20重量%含有する主成分セラミック材料と、Mnと、Ti及びFeから選ばれる少なくとも1種と、Mgとを含有する副成分セラミック材料とを含み、実質的にCe酸化物、Cr酸化物及びB酸化物のいずれをも含まないこと、を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の多層電子部品。
【請求項7】
前記凹部の形状は、平面視で、文字、数字又は記号の形状を有し、
前記第2層は、平面視で、前記凹部の全体と重なり、
前記凹部を透過して識別される情報は文字、数字又は記号であること、を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の多層電子部品。
【請求項8】
複数の層が積層されてなる多層基板を備えた多層電子部品を製造するに際して中間品として作製される、1単位の多層電子部品を構成する多層基板をマトリクス状に集合した集合基板において、
前記集合基板は一主面に配置された表層と、該表層に接して配置された第2層とを含み、
前記第2層が前記表層とは異なる色を有し、
前記表層には前記第2層には達しない部分的な凹部が形成されており、前記凹部において前記第2層の色が前記表層を透過することにより該凹部から前記第2層が識別可能であり、
前記凹部は多層基板として切り出される部分以外の余白部分に形成されていること、
を特徴とする集合基板。
【請求項9】
前記凹部の形状は、平面視で、バーコードの形状を有し、
前記第2層は、平面視で、前記凹部の全体と重なり、
前記凹部を透過して識別される情報はバーコードであること、を特徴とする請求項8に記載の集合基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層電子部品、特に、複数の層が積層されてなる多層基板を備えた多層電子部品、及び、該多層電子部品の製造に際して中間部品として作製される集合基板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、多層電子部品を構成する多層基板にあって、該多層電子部品に関する情報を有する識別標識が付与されている。この種の識別標識として、特許文献1には、多層基板の表層の直下に、表層とは異なる色の材料又は金属膜を第2層として積層し、該表層に第2層まで貫通する貫通孔を形成し、電子部品の極性の識別マークとして使用することが記載されている。
【0003】
しかしながら、表層に第2層までの貫通孔を形成すると、第2層が空気に触れて酸化し、時間の経過に伴って第2層の色が変化し、識別が困難になるおそれがある。また、特許文献1には、貫通孔に表層とは異なった色の材料を充填して極性識別マークとすることも記載されている。しかし、これでは、識別マークの充填工程が増加し、コストアップの要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−7573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、識別標識を設けることによる酸化などの第2層の劣化を防止するとともに充填工程の必要がない多層電子部品及び集合基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の形態である多層電子部品は、
複数の層が積層されてなる多層基板を備えた多層電子部品において、
前記多層基板は一主面に配置された表層と、該表層に接して配置された第2層とを含み、
前記第2層が前記表層とは異なる色を有し、
前記表層には前記第2層には達しない部分的な凹部が形成されており、前記凹部において前記第2層の色が前記表層を透過することにより該凹部から前記第2層が識別可能であること、
を特徴とする。
【0007】
本発明の第2の形態である集合基板は、
複数の層が積層されてなる多層基板を備えた多層電子部品を製造するに際して中間品として作製される、1単位の多層電子部品を構成する多層基板をマトリクス状に集合した集合基板において、
前記集合基板は一主面に配置された表層と、該表層に接して配置された第2層とを含み、
前記第2層が前記表層とは異なる色を有し、
前記表層には前記第2層には達しない部分的な凹部が形成されており、前記凹部において前記第2層の色が前記表層を透過することにより該凹部から前記第2層が識別可能であり、
前記凹部は多層基板として切り出される部分以外の余白部分に形成されていること、
を特徴とする。
【0008】
前記多層電子部品及び集合基板においては、表層に形成した凹部の底から第2層の色を、例えば撮像素子によって観察することにより、第2層の色が識別標識として機能する。表層には第2層に達しない部分的な凹部が形成されているため、凹部の底が第2層のための保護層としての機能を有し、第2層の酸化などによる劣化が防止される。また、ことさら凹部に材料を充填する余分な工程を必要とすることもない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、識別標識を設けることによる酸化などの第2層の劣化を防止でき、しかも充填工程が必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施例である多層電子部品を示し、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図2】第2実施例である多層電子部品を示す平面図である。
図3】第3実施例である多層電子部品を示す平面図である。
図4】第4実施例である多層電子部品を示し、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図5】第5実施例である多層電子部品を示し(A)は平面図、(B)は断面図である。
図6】第6実施例である多層電子部品を示し、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図7】第7実施例である多層電子部品を示す平面図である。
図8】第8実施例である多層電子部品を示す平面図である。
図9】第9実施例である集合基板を示す平面図である。
図10】第2層である電極の形状示す平面図である。
図11】レーザ加工を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る多層電子部品及び集合基板の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において、同じ部材、部分については共通する符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
(第1実施例、図1参照)
第1実施例である多層電子部品1Aは、図1に示すように、複数のセラミック層11及び金属膜15が積層されてなる多層基板10を備えものである。多層基板10は一主面に配置されたセラミック層である表層11aと、該表層11aに接して配置された第2層15aとを含む。そして、第2層15aが表層11aとは異なる色を有し、表層11aには第2層15aには達しない部分的な凹部12が平面視で円形状に形成されており、該凹部12から第2層15aが識別可能である。本第1実施例での凹部12は、多層電子部品1Aの例えば極性識別標識、実装方向の識別標識として使用される。
【0013】
前記多層電子部品1Aにおいては、表層11aに形成した凹部12の底から第2層15aの色を、例えば撮像素子によって観察することにより、第2層15aの色が識別標識として機能する。凹部12は表層11aに第2層15aには達しないように形成されているため、凹部12の底が第2層15aのための保護層としての機能を有し、第2層15aの酸化などによる劣化が防止される。また、ことさら凹部12に材料を充填する余分な工程を必要とすることもない。
【0014】
表層11aとして用いられているセラミックは、第2層15aの色を透過させて浮き出させるために、第2層15aよりも薄い色を有していること、特に、白色ないし乳白色であることが好ましい。これにより、表層11aを透過できる光量が増し、撮像素子により第2層15aが認識されるようになる。表層11aは、例えば、SiをSiOに換算して48〜75重量%、BaをBaOに換算して20〜40重量%、及び、AlをAlに換算して5〜20%重量%含有する主成分セラミック材料と、Mnと、Ti及びFeから選ばれる少なくとも1種と、Mgとを含有する副成分セラミック材料とを含み、実質的にCe酸化物、Cr酸化物及びB酸化物のいずれをも含まない材料である。
【0015】
第2層15aとして用いられる材料は、多層電子部品1Aとしての構成上、金属膜である場合が一般的である。金属膜としての材料は銅を主成分とするものが、比較的明るい色彩であることから好適に用いることができる。金属膜は多層基板10に内蔵された配線や電極をそのまま識別標識として利用すればよい。例えば、図10に示すように、セラミック層11上に種々のインダクタ配線31やビアホール導体32が形成されている場合、インダクタ配線31やビアホール導体32のいずれかを識別標識として利用することができる。
【0016】
図11に示すように、前記凹部12は多層基板10を構成する各層を積層した後に、表層11aにレーザ発振器40からレーザビームbを照射することにより形成される。表層11aの厚みは30〜80μmであり、凹部12の底部は10〜60μmの厚みとして残されている。これにより、表層11aを通過できる光量がさらに増し、撮像素子により第2層15aが、より認識されるようになる。
【0017】
(第2実施例、図2参照)
第2実施例である多層電子部品1Bは、図2に示すように、凹部12を平面視で矩形形状に形成したものである。他の構成及び凹部12による作用効果は前記第1実施例に記載のとおりである。
【0018】
(第3実施例、図3参照)
第3実施例である多層電子部品1Cは、図3に示すように、平面視で円形状の凹部12を2個並置したものである。他の構成及び凹部12による作用効果は前記第1実施例に記載のとおりである。
【0019】
(第4実施例、図4参照)
第4実施例である多層電子部品1Dは、図4に示すように、凹部12を平面視で円環状に形成したものである。他の構成及び凹部12による作用効果は前記第1実施例に記載のとおりである。
【0020】
(第5実施例、図5参照)
第5実施例である多層電子部品1Eは、図5に示すように、平面視で矩形形状の凹部12を3個並置したものである。他の構成及び凹部12による作用効果は前記第1実施例に記載のとおりである。
【0021】
(第6実施例、図6参照)
第6実施例である多層電子部品1Fは、図6に示すように、平面視で矩形形状の凹部12を4個並置したものである。他の構成及び凹部12による作用効果は前記第1実施例に記載のとおりである。
【0022】
(第7実施例、図7参照)
第7実施例である多層電子部品1Gは、図7に示すように、凹部12を平面視で「A11」の文字、数字の組み合わせとして形成したものである。他の構成及び凹部12による作用効果は前記第1実施例に記載のとおりである。本第7実施例のように、凹部12を文字、数字又は記号として形成すれば、多層電子部品1Gの種類などの情報を付加することができる。
【0023】
(第8実施例、図8参照)
第8実施例である多層電子部品1Hは、図8に示すように、「A11」の周囲を溝部とした凹部12を形成したものである。他の構成及び凹部12による作用効果は前記第1実施例に記載のとおりである。
【0024】
(第9実施例、図9参照)
第9実施例である集合基板2は、図9に示すように、多層電子部品を製造するに際して中間品として作製される、1単位の多層電子部品を構成する多層基板10をマトリクス状に集合した集合基板2である。従って、集合基板2は、前記多層基板10と同様の積層構造を備えている。この場合、識別標識として機能する凹部12は、集合基板10の周辺部の余白部分に形成される。つまり、1単位ずつ切り出されて多層基板10とされる部分以外の部分に凹部12が形成されている。
【0025】
本第9実施例において、凹部12は集合基板2自体の種類の識別標識として使用されるため、凹部12を透過して識別される情報はバーコードであることが好ましい。
【0026】
(他の実施例)
なお、本発明に係る多層電子部品及び集合基板は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0027】
例えば、表層は必ずしもセラミック材である必要はない。また、第2層は必ずしも金属膜である必要はない。さらに、識別標識としては前記実施例に掲げた以外の種々の形態を採用できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明は、多層電子部品や集合基板に有用であり、特に、識別標識を設けることによる酸化などの第2層の劣化を防止でき、充填工程の必要がない点で優れている。
【符号の説明】
【0029】
1A〜1H…多層電子部品
2…集合基板
10…多層基板
11…セラミック層
11a…表層
12…凹部
15…金属膜
15a…第2層
31…インダクタ配線
32…ビアホール導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11